説明

水溶性PQQグルコース脱水素酵素の生産方法

【課題】 水溶性PQQGDHの新規製造方法を提供すること。
【解決手段】 補酵素PQQの生合成能力を有するKlebsiellapneumoniaeを宿主としてPQQGDHを生産する。

【発明の詳細な説明】
【発明の属する技術分野】本発明はピロロキノリンキノン(PQQ)を補酵素とするグルコース脱水素酵素(GDH)の生産方法に関する。
【従来の技術】PQQGDHはこれまでに当該酵素を生産するAcinetobacter calcoaceticusを培養し、当該培養物からPQQGDHを抽出する方法と、さらにAcinetobacter calcoaceticus由来のPQQGDHをコードする構造遺伝子を汎用的に用いられている大腸菌の発現ベクターに挿入し、これを大腸菌に形質転換し、形質転換された大腸菌を培養したのち、その培養物からPQQGDHを抽出する方法がしられていた。
【発明が解決しようとする課題】PQQGDHを大量に生産するためには組み換えDNA技術にもとづいたPQQGDHを含む形質転換された大腸菌を用いる方法がすぐれていた。しかし、大腸菌はPQQGDHの補酵素であるPQQを生合成する能力を有していないことから、活性を有するPQQGDHを生産するためには高価なPQQを培養液に添加する必要があった。
【課題を解決するための手段】本発明者はこれまで組み換えDNA実験に用いられていた微生物を検索した結果、大腸菌の発現ベクターが用いることのできる微生物のうちでKlebsiellla属の細菌がPQQを合成できることに注目した。すなわち、Klebsiella属の細菌に大腸菌でPQQGDHの生産に用いていた発現ベクターを形質転換すれば、Klebsiella属の菌体が生産するPQQによって組み換え生産されるPQQGDHが補酵素と結合した活性のあるPQQGDHとして生産できることを見いだした。
【発明の実施の形態】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1大腸菌発現ベクター、pTrc99Aに抗生物質カナマイシン耐性遺伝子を導入したpTrc99Kを作成した。このベクターのマルチクローニングサイトにAcinetobactercalcoaceticus由来水溶性PQQGDHの構造遺伝子を挿入し、これをKlebsiellapneumoniaeNCTC418株にエレクトロポレーション法によって形質転換した。得られた形質転換体Klebsiella pneumoniae NCTC418はカナマイシン耐性株として選択した。
実施例2大腸菌発現ベクターpTrc99KにAcinetobacter calcoaceticus由来水溶性PQQGDHの構造遺伝子が挿入されたベクターが形質転換されたKlebsiella pneumoniaeNCTC418をPQQを含まない培地、例えばL−培地にて培養し、培養液から遠心分離などで菌体を回収した後、菌体をフレンチプレスなどで破砕する。これを超遠心分離し、PQQGDHを含む水溶性画分をえることができる。得られた水溶性画分をイオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィーなどにより精製する。生産されるPQQGDHの量は同じ条件で大腸菌を宿主として用いて培養したときの生産量とほぼ同等であった。しかし、大腸菌を宿主として生産した場合、培地にPQQを添加しない限り、生産されたPQQGDHは活性を示す、活性型としては生産されない。しかし、本発明によって生産されたKlebsiella pneumoniaeを宿主として生産されたPQQGDHは培地にPQQを添加していないにもかかわらず、当該細菌が生産しているPQQによってPQQと結合した活性型PQQGDHとして生産される。
実施例3Klebsiella pneumoniaeを宿主として生産されたPQQGDHのN−末端配列を解析したところ、グラム陰性細菌のペリプラズムに分泌生産されるためのPQQGDHのN−末端に存在するシグナルペプチドは切除され、大腸菌あるいはAcinetobactercalcoaceticusにおいて生産されているPQQGDHと同じN−末端配列であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 Acinetobacter calcoaceticus由来の水溶性ピロロキノリンキノングルコース脱水素酵素(PQQGDH)の構造遺伝子を含む大腸菌発現ベクターが形質転換されたKlebsiella pneumoniae。
【請求項2】 請求項1において大腸菌発現ベクターが高発現ベクターpTrc99AであるKlebsiella pneumoniae形質転換体。
【請求項3】 請求項1においてAcinetobacter calcoaceticus由来の水溶性ピロロキノリンキノングルコース脱水素酵素(PQQGDH)の構造遺伝子を含む大腸菌発現ベクターが形質転換されたKlebsiella pneumoniaeが特にNCTC418株である形質転換体。
【請求項4】 請求項1〜3に記載の形質転換体をもちいて生産されたPQQGDH。

【公開番号】特開2001−61476(P2001−61476A)
【公開日】平成13年3月13日(2001.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−284650
【出願日】平成11年8月30日(1999.8.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成11年9月16日〜9月18日 社団法人日本生物工学会開催の「平成11年度日本生物工学会大会」において文書をもって発表
【出願人】(596153357)
【Fターム(参考)】