説明

水生生物の減量化処理装置および減量化処理方法

【課題】安価かつ簡易に水生生物を処理可能な装置を提供することを目的とする。
【解決手段】減量化処理装置1における処理槽2の内部は、仕切り板4によって2つに区分され、その一方は収容槽11、他方は消泡槽12とされている。仕切り板4の下部には、切り欠き部6および消泡槽12の内部に設置された止め板7によって、水分は通過できるが処理対象である水生生物が通過できない通路5が形成されている。消泡槽12の内部には、泡捕捉材としてのサランロックフィルタ13が充填されている。また、消泡槽12には、エアレーション装置14が設けられている。このような構成の処理装置1によれば、泡立ちを抑えつつ安価かつ簡易に水生生物を処理可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水生生物の減量化処理装置、および減量化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の冷却水を必要とする火力発電所においては、海水を工業用冷却水として利用していることが多い。この海水を取水するための取水口には、海水中に浮遊するクラゲ等の水生生物が工業用冷却水に混入しないよう、スクリーン等を配設して捕獲することが一般的である。捕獲された水生生物は、従来、水揚げ回収され、埋め立て処理等により処分されていた。
【0003】
しかし、近年では、海洋汚染および海洋災害の防止に関する法律の改正により、水揚げされた水生生物を産業廃棄物として処分することが要請される。このため、水生生物の廃棄処理に要するコストの増大が電力会社において大きな負担となっている。この問題を解決するため、水生生物に温風を吹き付けることによる乾燥処理、熱水中を通過させることによる減量化処理等、種々の処理方法が提案されている(例えば特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開平11−316008公報
【特許文献2】特開平11−138146公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、いずれの処理方法も、大掛かりな処理装置が必要であったりして、コスト削減の要請に充分にこたえうるものではなかった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、安価かつ簡易に水生生物を処理可能な装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の水生生物の減量化処理装置は、水生生物を収容可能な収容槽と、水分が通過可能であるが前記水生生物は通過不能とされた通路によって前記収容槽と連通された消泡槽と、前記消泡槽の内部に充填されることでこの消泡槽の内部に気泡を捕捉し潰すための多数の隙間を形成する泡捕捉材と、前記消泡槽内に空気を供給する空気供給装置と、を備えるものである。
また、本発明の水生生物の減量化処理方法は、水生生物から滲出する水分を、内部に泡捕捉材を充填することで気泡を捕捉し潰すための多数の隙間を形成させた消泡槽に導く水分導入工程と、前記消泡槽に通気を行う通気工程とを含むものである。
泡捕捉材としては、メンテナンスや取り扱いの簡便さから合成繊維を三次元的な網目状に形成したフィルタ材を利用することが最も好ましい。また、空気供給装置に加熱手段を備えて空気を常温から加熱しておくと、処理速度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、安価かつ簡易に水生生物を減量化できる処理装置および方法を提供できる。本発明の処理装置および方法においては消泡槽を使用するため、特に、処理中に泡立ちが生じるような水生生物(例えばクラゲ)の処理に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の減量化処理装置および方法を具体化した実施形態について、図1および図2を参照しつつ詳細に説明する。
【0008】
図1には、本実施形態の減量化処理装置1の側断面図を示す。この減量化処理装置1は、水生生物、特にクラゲ等の水を大量に含む生物を減量化するためのものである。この減量化処理装置1には、処理槽2が備えられている。処理槽2は、例えば、地面に埋め込まれ、上面が開放された矩形箱型に形成されている。この処理槽2の内壁部3は、海水によるさび等を回避するため、ステンレス鋼、プラスチックまたはコンクリートにより形成されている。
【0009】
処理槽2の内部は、仕切り板4によって2つに区分され、その一方は収容槽11、他方は消泡槽12とされている。仕切り板4の高さは、処理槽2の側壁高さよりもやや低くされている。
【0010】
この仕切り板4の下部には、収容槽11から消泡槽12へ水を通すための通路5が形成されている。その通路5は、仕切り板4の下端に設けられた切り欠き部6と、消泡槽12の内部に設置された止め板7とによって形成されている。切り欠き部6は、仕切り板4の下端縁から、その左右両側を少し残して上方に向かって側面視矩形状に切り欠くことで形成されている。また止め板7は、縦板部8と横板部9とを備えて断面L字型に形成されている。縦板部8は、仕切り板4における切り欠き部6の形状よりも一回り大きくされ、消泡槽12の底面上に、仕切り板4との間に水分は通過できるが処理対象である水生生物が通過できない程度の隙間を空けて立設されている。そして横板部9は、この縦板部8の上端から消泡槽12において仕切り板4と対向する側壁部に到達するまで延設されている。横板部9には、板厚方向(上下方向)に貫通して空気が通過可能な空気穴10が多数形成されている。
【0011】
消泡槽12の内部には、泡捕捉材としてのサランロック(登録商標)フィルタ13が充填されている。このサランロックフィルタ13は、合成繊維により3次元の網目状に形成されたものであって、繊維同士の間に水および気体が通過可能な無数の隙間が存在している。
【0012】
また、消泡槽12には、空気供給装置としてのエアレーション装置14が設けられている。このエアレーション装置14は、消泡槽12の内部に設置された吐出管15と、この吐出管15に接続された空気ポンプPと、空気ポンプPから吐出される空気を加熱する電気ヒータ等からなる加熱手段16を備える。吐出管15は、消泡槽12の底面上であって止め板7によって囲まれた領域に設置されたものであって、3分岐状に形成された接続管15Aを介して加熱手段16に連なる。3本の吐出管15には、それぞれ管壁を貫通して気体が通過可能な吐出孔17が多数設けられている。接続管15Aは消泡槽12の側壁を貫通して外部に延出され、加熱手段16及び空気ポンプPに接続されている。空気ポンプPとしては、例えばドライエアポンプを使用することができる。
【0013】
次に、上記した減量化処理装置1を用いた水生生物の減量化処理方法について説明する。
【0014】
まず、水揚げ回収された水生生物を収容槽11内に収容する。このとき、吹きこぼれ防止のため、水生生物の収容量が、消泡槽12に充填されているサランロックフィルタ13の充填高さを超えないようにする。クラゲ等の水生生物は95%程度が水分であり、かつ、自己分解酵素を有して徐々に体が分解するから、ほとんど水化し、その水分は通路5を通って消泡槽12へと導入される(水分導入工程)。この状態で、空気ポンプPおよび加熱手段16を運転し、常温の空気を加熱して消泡槽12内に送り込む(通気工程)。すると、消泡槽12内での通気により水分は蒸発し、サランロックフィルタ13の隙間を通過して上部の開口部から外部へ排出される。これにより、水生生物の減量化が行われる。
【0015】
ここで、特に処理対象にクラゲが含まれている場合には、大量の泡が発生し、槽から吹きこぼれてしまうことがあるため、通気処理による乾燥・減量化が困難であり、従来では大掛かりな乾燥装置等によって乾燥を行うか、天日にさらして自然に乾燥するのを待つなどの長期間を要する方法に頼らざるを得なかった。しかし、本実施形態の減量化処理装置および減量化処理方法においては、消泡槽12内に泡捕捉材としてのサランロックフィルタ13が充填されており、クラゲから出る水分をこの消泡槽12の内部に導入しつつ加熱空気を送り込んで水分を蒸発させる。このような構成によれば、発生した泡はサランロックフィルタ13の隙間に捕捉され、潰されることで除去されるから、大量の泡による吹きこぼれを回避できる。これにより、安価かつ簡易な通気処理によって短期間で減量化処理が実現できる。
【0016】
なお、泡捕捉材としては、上記したサランロックフィルタ13の他に砂利20(図3参照)を使用しても良く、その他にクリンカアッシュ等も好適に使用することができる。
【実施例】
【0017】
1.試験方法
<実施例1−1>
縦230mm、横380mm、高さ270mm(容量20L)の水槽を用意した。この水槽を仕切り板により2室に仕切り、一方を収容槽、他方を消泡槽とした。仕切り板の下端には切り欠き部を設け、かつ、断面L字型の邪魔板を消泡槽の内部に仕切り板から僅かに離して設置した。これにより、収容槽内部の水分は切り欠き部、および仕切り板と邪魔板との隙間を通過して消泡槽へ移動できるが、クラゲは移動できないようにした。消泡槽の底部には観賞魚飼育用のエアレーション装置を設置し、その上に泡捕捉材を充填した。泡捕捉材としては、サランロックフィルタを使用した。
【0018】
火力発電所の簗場から水揚げ回収したクラゲを収容槽に投入し、エアレーション装置により5L/minで5日間通気し、減量化を行った。
【0019】
<実施例1−2>
通気条件を15L/minとした他は、実施例1−1と同様に試験を行った。
【0020】
<実施例1−3>
60℃に加温した空気を15L/minで通気した他は、実施例1−1と同様に試験を行った。
【0021】
<実施例2−1>
泡捕捉材としてクリンカアッシュを使用した他は、実施例1−1と同様に試験を行った。
【0022】
<実施例2−2>
泡捕捉材としてクリンカアッシュを使用した他は、実施例1−2と同様に試験を行った。
【0023】
<実施例2−3>
泡捕捉材としてクリンカアッシュを使用した他は、実施例1−3と同様に試験を行った。
【0024】
<実施例3−1>
泡捕捉材として砂利を使用し、通気を4日間とした他は、実施例1−1と同様に試験を行った。
【0025】
<実施例3−2>
泡捕捉材として砂利を使用し、通気を4日間とした他は、実施例1−2と同様に試験を行った。
【0026】
<実施例3−3>
泡捕捉材として砂利を使用し、通気を4日間とした他は、実施例1−3と同様に試験を行った。
【0027】
<比較例1>
通気を行わなかった他は、実施例1−1と同様に試験を行った。
【0028】
<比較例2>
通気を行わなかった他は、実施例2−1と同様に試験を行った。
【0029】
<比較例3>
通気を行わなかった他は、実施例3−1と同様に試験を行った。
【0030】
2.試験結果
各実施例および比較例における、泡捕捉材の種類、通気条件、試験開始時および終了時のクラゲの重量および減量率を表1に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
表1より、4〜5日間の通気を行うことで、クラゲを約30%減量化できることが分かった。風量を増大させると減量率も大きくなった。また加温した空気を通気することにより、さらに減量率を大きくすることができた。
【0033】
泡捕捉材の種類によって減量率に大きな差は見られなかった。いずれの泡捕捉材でも消泡効果が得られたが、特に目の細かいクリンカアッシュが有効であった。但し、交換等、メンテナンスに伴う作業性の観点からは、上述したサランロックフィルタのような合成樹脂製のフィルタ材が優れている。また今回の試験では試験日数は4日または5日であったが、処理日数をさらに伸ばすことで減量率の増大が見込めると考えられる。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)空気供給装置の構成は上記実施形態の限りではなく、例えば消泡槽内に送風を行う送風機であっても構わない。また、空気供給装置に乾燥装置を備えて乾燥空気を消泡槽内に供給するようにすると、一層、処理速度を向上させることができる。
【0035】
(2)通路の構成は上記実施形態の限りではなく、例えば仕切り板の切り欠き部を金網で覆うことによって構成しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態の減量化処理装置の側断面図
【図2】本実施形態の減量化処理装置の上面図
【図3】変形例の減量化処理装置の側断面図
【符号の説明】
【0037】
1…減量化処理装置
5…通路
11…収容槽
12…消泡槽
13…サランロックフィルタ(泡捕捉材)
14…エアレーション装置(空気供給装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生生物を収容可能な収容槽と、
水分が通過可能であるが前記水生生物は通過不能とされた通路によって前記収容槽と連通された消泡槽と、
前記消泡槽の内部に充填されることでこの消泡槽の内部に気泡を捕捉し潰すための多数の隙間を形成する泡捕捉材と、
前記消泡槽内に空気を供給する空気供給装置と、を備える水生生物の減量化処理装置。
【請求項2】
前記泡捕捉材が合成繊維を三次元的な網目状に形成したフィルタ材である、請求項1に記載の水生生物の減量化処理装置。
【請求項3】
前記空気供給装置には加熱手段が備えられて常温の空気を加熱して前記消泡槽内に供給することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水生生物の減量化処理装置。
【請求項4】
水生生物から滲出する水分を、内部に泡捕捉材を充填することで気泡を捕捉し潰すための多数の隙間を形成させた消泡槽に導く水分導入工程と、
前記消泡槽に通気を行う通気工程とを含む、水生生物の減量化処理方法。
【請求項5】
前記通気工程において常温の空気を加熱して前記消泡槽に通気する、請求項4に記載の水生生物の減量化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−110668(P2010−110668A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283541(P2008−283541)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】