説明

水田作業機

【課題】水田作業の作業条件が変更する毎に薬剤散布量を変更するための調整動作が必要となる等の煩わしさがなく、使い勝手のよい水田作業機を提供する。
【解決手段】走行機体の後部に備えられた薬剤散布装置13が、貯留ホッパー24の下部出口から供給経路を通して供給される薬剤を拡散散布する拡散手段27と、供給経路を閉塞する閉状態と薬剤通過用開口を形成する開状態とにわたりスライド移動自在なシャッター部材33と、そのシャッター部材33を切り換えるアクチュエータ34とを備え、閉状態を維持する時間と開状態を維持する時間とを合せた周期が一定となるように閉状態と開状態とに交互に切り換える形態で、且つ、車速検出手段にて検出される車速が大であるほど開状態を維持する時間の比率を大にする形態で、アクチュエータ34の作動を制御するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後部に薬剤散布装置が備えられている水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記構成の水田作業機の一例としての乗用型田植機において、従来では、次のように構成されたものがあった。
すなわち、貯留ホッパーに貯留されている薬剤が供給経路を通して供給されて、回転羽根式の拡散手段によって拡散散布させるように構成され、ソレノイドによって駆動されて供給経路を閉塞する閉状態と供給経路内に薬剤通過用開口を形成する開状態とにわたりスライド移動自在なシャッター部材が備えられて、乗用型田植機に保持されている植付け対象苗における複数株の苗を送り出し供給する動作に同調させて、シャッター部材を一定時間開状態に操作するように構成され、さらに、シャッター部材のソレノイドに対する取り付け位置を変更調整することにより、シャッター部材が開状態に操作されるときの薬剤の供給量を変更調整することができるように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−151559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、乗用型田植機に保持されている植付け対象苗における複数株の苗を送り出し供給する動作に同調させて、シャッター部材を一定時間開状態に操作する構成であるから、苗の植え付け間隔が一定であれば、圃場の単位面積に対する薬剤の散布量は走行機体の速度に拘わらず同じになるが、例えば、走行機体の進行方向に沿う苗の植え付け間隔(以下、株間距離という場合がある)を変更させると、圃場の単位面積に対する薬剤の散布量が変化することになる。
【0005】
その結果、従来構成によれば、株間距離を変更させる場合には、単位面積に対する薬剤の散布量が予め設定した設定量になるように、例えばシャッター部材の位置を調整することにより薬剤通過用開口の開口面積を変更調整する等の調整動作が必要であり、株間距離を変更させる毎に、このような煩わしい開口面積の調整操作が必要となるものであった。
【0006】
つまり、従来構成では、株間距離を変更させる等、水田作業の作業条件が変更する毎に、薬剤通過用開口の開口面積を変更調整する等の薬剤散布量を変更するための煩わしい調整動作が必要であり、この点で改善の余地があった。
【0007】
本発明の目的は、水田作業の作業条件が変更する毎に薬剤散布量を変更するための調整動作が必要となる等の煩わしさがなく、使い勝手のよい水田作業機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水田作業機は、走行機体の後部に薬剤散布装置が備えられているものであって、その第1特徴構成は、
前記薬剤散布装置が、貯留ホッパーの下部出口から供給経路を通して供給される薬剤を拡散散布する拡散手段と、前記供給経路を閉塞する閉状態と前記供給経路内に薬剤通過用開口を形成する開状態とにわたりスライド移動自在なシャッター部材と、そのシャター部材を前記閉状態と前記開状態とに切り換えるアクチュエータとを備えて構成され、
前記アクチュエータの作動を制御する制御手段と、前記走行機体の車速を検出する車速検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、前記閉状態を維持する時間と前記開状態を維持する時間とを合せた周期が一定となるように前記閉状態と前記開状態とに交互に切り換える形態で、且つ、前記車速検出手段にて検出される車速が大であるほど前記開状態を維持する時間の比率を大にする形態で、前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、アクチュエータの作動により、シャッター部材が、閉状態を維持する時間と開状態を維持する時間とを合せた周期が一定となるように閉状態と開状態とに交互に切り換えられて、貯留ホッパーの下部出口から供給経路を通して薬剤が拡散手段に供給されて、薬剤が圃場に拡散散布される。
【0010】
そして、車速検出手段にて検出される車速が大であるほど、シャッター部材が開状態を維持する時間の比率(以下、開時間比率という場合がある)が大になる、言い換えると、供給経路を通して供給される薬剤の量が増えて薬剤散布量が大になるようにアクチュエータの作動が制御されることになる。
つまり、車速に応じて薬剤散布量が変化するものとなり、車速が変化しても、走行機体が単位距離走行する間に散布される薬剤の量が略同じになるように調整することが可能となる。
【0011】
このように走行機体の走行速度に応じて薬剤散布量を設定するようにしたので、例えば、水田作業として苗の植え付け作業を行うような場合に株間距離を変更させる等の水田作業の作業条件が変更することがあっても、特別な供給量調整用の作業を行わなくても、単位面積当たりの薬剤散布量を設定量に維持することが可能となる。
【0012】
従って、水田作業の作業条件が変更する毎に薬剤散布量を変更するための調整動作が必要となる等の煩わしさがなく、使い勝手のよい水田作業機を提供できるに至った。
【0013】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記車速検出手段にて検出される車速が作業状態判定用の下限値未満であれば、前記閉状態を維持するように前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている点にある。
【0014】
第2特徴構成によれば、車速が作業状態判定用の下限値未満であれば、シャッター部材は閉状態を維持し、薬剤散布は行われないことになる。
車速が作業状態判定用の下限値未満であるときは、作業開始位置を微調節するために低速で移動走行したり、畦と圃場との間での出入りのために低速で移動走行する等、水田作業を行わないで走行している状態であるから、このような場合には、シャッター部材を閉状態に維持することで薬剤散布が行われることがなく、薬剤の無駄な消費を抑制できる。
【0015】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記車速検出手段にて検出される車速が、前記作業状態判定用の下限値以上であり、且つ、低速作業用領域判定用の上限値未満であれば、前記開状態を維持する時間の比率の目標値を予め設定した基準値に設定して、前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている点にある。
【0016】
第3特徴構成によれば、車速が作業状態判定用の下限値以上であって水田作業を行っている状態であるが、車速が低速作業用領域判定用の上限値未満であって車速が遅い場合には、その速度範囲内で車速が変化しても、開時間比率が一定の値(基準値)に維持されることになる。
【0017】
例えば、このように水田作業を行っているものの車速が遅い場合であっても、一律に車速に応じて開状態を維持する時間を変更設定する構成にすると、開状態に維持する時間が短か過ぎて薬剤が円滑に供給されずに薬剤散布が適正に行われないおそれがあるが、上記したように、作業状態判定用の下限値以上で低速作業用領域判定用の上限値未満である速度範囲内で車速が変化しても開時間比率を基準値に維持するようにしたから、車速が遅くても薬剤散布を適正に行うことが可能となる。
【0018】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成に加えて、前記制御手段が、前記車速検出手段にて検出される車速が、前記低速作業用領域判定用の上限値以上であれば、前記開状態を維持する時間の比率の目標値を、前記基準値を最低値とし予め設定した設定上限値を最大値として前記車速検出手段にて検出される車速が大であるほど大となるように比例して変化する形態で定めて、前記開状態を維持する時間の比率が前記目標値になるように、前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている点にある。
【0019】
第4特徴構成によれば、車速が低速作業用領域判定用の上限値以上であれば、基準値を最低値とし設定上限値を最大値として、車速が大であるほど大となるように比例して変化する形態で開時間比率の目標値が定められて、開時間比率が目標値になるようにアクチュエータの作動が制御される。
【0020】
すなわち、車速が低速作業用領域判定用の上限値以上であって、通常の作業用の速度で作業走行している状態においては、開時間比率を車速に対して比例して変化するように設定することで、単位面積当たりの薬剤散布量を一定に維持することが可能となるのである。
【0021】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成に加えて、前記開状態を維持する時間の比率の目標値に対する設定上限値を変更調整自在な手動操作式の調整手段が備えられている点にある。
【0022】
第5特徴構成によれば、手動操作式の調整手段によって前記設定上限値を変更調整することによって、前記開時間比率の目標値に対する設定上限値を変更設定することができるから、車速が単位量変化するときの前記開時間比率の変化量を異なる値に調整することができる。
【0023】
つまり、前記開状態を維持する時間の比率の目標値を、車速が大であるほど大となるように比例して変化する形態で定めるにあたり、設定上限値を大側に変更すると、車速が単位量変化するのに対する前記開時間比率の変化の割合が大きいものとなり、設定上限値を小側に変更すると、車速が単位量変化するのに対する前記開時間比率の変化の割合が小さいものとなる。
【0024】
従って、例えば、供給する薬剤の種類が異なり、圃場の単位面積当たりの薬剤の必要量が異なる別の種類に変更したような場合には、手動操作式の調整手段によって前記設定上限値を変更調整することにより、前記開時間比率の目標値を薬剤の種類に対応した適切な値に調整することが可能となる。
【0025】
本発明の第6特徴構成は、第1特徴構成〜第5特徴構成のいずれかに加えて、前記供給経路内に形成される前記薬剤通過用開口が、前記シャッター部材のスライド移動方向に沿う開口幅よりもスライド移動方向と直交する方向に沿う開口幅が大となる横長形状である点にある。
【0026】
第6特徴構成によれば、薬剤通過用開口が、シャッター部材のスライド移動方向に沿う開口幅よりもスライド移動方向と直交する方向に沿う開口幅が大となる横長形状であるから、薬剤を円滑に供給するのに充分大きな開口面積を確保するようにしながら、シャッター部材のスライド移動方向に沿う開口幅を小さめのものにすることができる。
【0027】
つまり、アクチュエータによりシャッター部材をスライド操作させるスライド移動距離が短いもので済み、アクチュエータを小型化させることが可能であり、電気式のアクチュエータであれば消費電力を抑制することも可能となる。
【0028】
又、スライド移動距離が短くなると、シャッター部材の閉状態と開状態との切り換え操作を極力速く行うことができ、シャッター部材が開状態と閉状態との中間位置で存在する時間をできるだけ減らすことができるから、例えば車速の変化に応じて開時間比率を変更するような場合等において、実際に開状態に維持される時間と目標値との誤差が少ない状態でアクチュエータを制御することが可能となり、薬剤の散布量を精度よく調整することが可能となる。
【0029】
本発明の第7特徴構成は、第1特徴構成〜第6特徴構成のいずれかに加えて、前記薬剤通過用開口の開口面積を変更調整自在な開口面積調整機構が備えられている点にある。
【0030】
第7特徴構成によれば、薬剤通過用開口の開口面積を開口面積調整機構によって変更調整自在であるから、アクチュエータの作動条件が同じであっても開口面積を変更することによって薬剤散布量を変更させることが可能であり、薬剤散布量の変更調整範囲を、アクチュエータの作動制御による調整可能範囲よりもさらに広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】薬剤散布装置の背面図である。
【図4】薬剤散布装置の縦断側面図である。
【図5】薬剤散布装置の底面図である。
【図6】拡散放出機構の横断平面図である。
【図7】繰出し機構の縦断側面図である。
【図8】繰出し機構の横断平面図である。
【図9】繰出し機構の縦断正面図である。
【図10】繰出し機構の分解斜視図である。
【図11】薬剤散布装置の電気回路図である。
【図12】車速と開時間比率の関係を示す図である。
【図13】開閉動作のタイミングチャートである。
【図14】別実施形態の繰出し機構の縦断側面図である。
【図15】(a)は別実施形態の繰出し機構の横断平面図、(b)は繰出し機構の分解斜視図である。
【図16】別実施形態の繰出し機構の縦断側面図である。
【図17】(a)は別実施形態の繰出し機構の横断平面図、(b)は繰出し機構の分解斜視図である。
【図18】別実施形態の貯留ホッパーとケーシングとの接続状態を示す縦断側面図である。
【図19】別実施形態の開口面積調整機構を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づいて、本発明に係る水田作業機の一例として、薬剤散布装置を装備した乗用型田植機について説明する。
図1に示すように、乗用型田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、エンジン4及びミッションケース5を備え、走行機体3の中央部にステアリングハンドル6等を装備した操縦部7と運転座席8とを備えて構成され、又、走行機体3の左右両側に予備苗のせ台9が配設されている。走行機体3の後方には、リフトシリンダ10の操作によりリンク機構11を介して昇降操作自在に苗植付装置12が連結され、その苗植付装置12の後方に、例えば除草剤等の薬剤を散布する薬剤散布装置13が備えられている。図2に示すように、苗植付装置12は4条植型式に構成されている。ミッションケース5には、変速レバー16を操作することにより変速操作される静油圧式の無段変速装置(図示せず)が備えられている。
【0033】
図1及び図2に示すように、苗植付装置12は、1個のフィードケース14に連結された機体左右方向に延びる支持フレーム(図示せず)に、2個の伝動ケース15が後向きに片持ち状に連結されている。伝動ケース15の後部の左右両側部に植付アーム18がクランク機構17により上下に揺動自在に支持され、植付アーム18に植付爪22が備えられており、苗植付装置12の下部には接地フロート19が支持されている。
又、苗植付装置12には、苗のせ台20が左右に一定ストロークで往復横送り駆動自在に備えられており、苗のせ台20がストロークエンドに達する毎に、載置された苗を所定量だけ下方に送るベルト式の縦送り装置21が苗のせ台20に備えられている。
【0034】
そして、フィードケース14に伝達される動力が伝動ケース15に伝達されて、植付アーム18が駆動される一方、フィードケース14に伝達される動力により苗のせ台20が往復横送り駆動されて、苗のせ台20の下部から上下に揺動運動する植付アーム18が、その先端部に備えられた植付爪22により1株ずつ苗を取り出して田面に植え付けるのであり、苗のせ台20が往復横送りのストロークエンドに達すると、フィードケース14に伝達される動力により縦送り装置21が駆動されて、苗のせ台20に載置された苗が下方に送られる構成となっている。
【0035】
次に、薬剤散布装置13について説明する。
図1〜図3に示すように、薬剤散布装置13は、苗植付け状態において田面から設定距離上方に位置する状態で、2個の伝動ケース15から固定立設した支柱23に支持される構成となっている。そして、図4及び図5に示すように、薬剤散布装置13は、薬剤を貯留する貯留部としての貯留ホッパー24と、その貯留ホッパー24の下部に位置して貯留される薬剤を繰り出す繰出し手段としての繰出し機構25と、繰り出されて供給経路としての案内通路26を通して落下供給される薬剤を拡散させる回転式の拡散手段としての拡散放出機構27と、繰出し機構25の作動を制御するための電気制御ユニット28とを備えて構成されている。
【0036】
繰出し機構25及び拡散放出機構27は、ケーシング29に収納される構成となっており、このケーシング29は、合成樹脂材からなり、拡散放出機構27に薬剤を落下供給する案内通路26を構成する筒部30が一体形成されている。図5に示すように、ケーシング29は、左右両側の分割ケーシング部分29a,29bを合わせ面同士で接続する左右2つ割り構造となっている。
【0037】
図7〜図10に示すように、繰出し機構25は、薬剤通過用の開口31が形成された金属製の開口形成板32と、薬剤通過用の開口31を閉塞する閉状態と薬剤通過用の開口31を開放する開状態とにわたりスライド移動自在な金属製のシャッター部材33と、そのシャッター部材33を閉状態と開状態とに切り換えるアクチュエータとしてのソレノイド34とを備えて構成されている。
【0038】
開口形成板32とシャッター部材33とが上下に重なる状態で設けられ、シャッター部材33が開口形成板32に形成された薬剤通過用の開口31を閉じると閉状態となり、薬剤の落下供給が停止され、シャッター部材33が薬剤通過用の開口31を開放する位置までスライドすると、薬剤通過用の開口31が開放されて開状態となり、この開状態では、薬剤通過用の開口31を通して薬剤が下方に落下供給される構成となっている。
この構成では、薬剤通過用の開口31の下方側では、シャッター部材33だけが存在しており、シャッター部材33の下方には他の部材が存在しないので、薬剤が詰まり難い構成となっている。
【0039】
薬剤通過用の開口31は、図10に示すように、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動方向に沿う方向での開口幅L1が移動方向と直交する方向での開口幅L2よりも小になるように横長の長方形状に形成され、開口面積を充分大きくしながらも、ソレノイド34によるシャッター部材33の移動操作量を短くすることができるようにしている。
【0040】
開口形成板32には、薬剤通過用の開口31が形成される水平面部分32aの開口側端部に下方に向けて屈曲する下向き屈曲片32bが形成され、それと反対のソレノイド34側端部には上方に向けて屈曲する上向き屈曲片32cが形成されている。又、水平面部分32aの開口側端部とソレノイド34側端部との中間部における幅方向両側部夫々に、シャッター部材33が下方に離間するのを防止するために、シャッター部材33を上下から囲うように略コ字状に屈曲する保持部32dが形成されている。
【0041】
この開口形成板32は、下向き屈曲片32bがケーシング29の筒部30の内側に形成された係止凹部35に係合して、シャッター部材33がソレノイド34に近接する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制され、且つ、上向き屈曲片32cがケーシング29の筒部30の外側の端縁部36に係合して、シャッター部材33がソレノイド34から離間する方向にスライド移動することによって連なって移動することが規制される構成となっている。
【0042】
シャッター部材33は、帯板状に形成されて、ソレノイド34の操作ロッド37に対して連結ピン38で枢支連結される構成となっており、開口形成板32の下側に接する状態で備えられ、保持部32dによって開口形成板32から上下に離間することを阻止する構成となっている。又、図7及び図10に示すように、シャッター部材33の開口遮蔽箇所33Aよりもソレノイド34側に寄った箇所に、開口形成板32とシャッター部材33との間に嵌まり込む薬剤を下方に落下させるために上下方向に貫通する掻き出し孔39が形成されている。
【0043】
図4に示すように、ケーシング29における筒部30の横一側箇所には、ソレノイド34を収納するためのソレノイド収納室40が形成されており、反対側箇所には、拡散放出機構27における電動モータ41を収納するためのモータ収納室42が形成されている。
ソレノイド収納室40側の筒部30の側壁には、シャッター部材33と開口形成板32とを挿通するためのスリット孔43が形成されている。このスリット孔43の上側には、開口形成板32とシャッター部材33とを水平姿勢で保持するための幅広案内部44が形成されており、この幅広案内部44の上面には、薬剤通過用の開口31に向かうほど下方に傾斜する傾斜面45が全幅にわたって形成されている。又、スリット孔43の上側における幅方向両側部には、開口形成板32の浮き上がりを防止する両側ガイド部46が形成されている。
【0044】
スリット孔43の下部側には、幅方向両側部にシャッター部材33を受止め支持する下側ガイド部47が形成されるとともに、シャッター部材33を開状態に切り換えたときに、掻き出し孔39の下方から排出される薬剤を拡散放出機構27に案内できるように幅広の排出用空間48が形成されている(図7参照。)。
【0045】
シャッター部材33は、ソレノイド34に内装されるコイルバネ49が座金50を介して連結ピン38に作用することにより閉位置(薬剤通過用の開口31を閉じる位置)に移動付勢され、ソレノイド34に通電することによりコイルバネ49の付勢力に抗して引き操作することにより開位置(薬剤通過用の開口31を開放する位置)に移動操作することができるように構成されている。
【0046】
図4及び図6に示すように、拡散放出機構27は、横向き姿勢の受止め面51Aを備えるとともに縦向きの回転軸芯周りで駆動回転される受止め体51と、その受止め体51の受止め面51Aに立設された拡散用羽根体52と、受止め体51を縦向きの回転軸芯Y周りで回転駆動する電動モータ41とを備えて構成されている。
【0047】
受止め体51は縦軸芯周りで回転する状態で板面が横向き姿勢となるように設けられた円板形状になっており、拡散用羽根体52が、周方向に沿って分散配置される状態で且つ受止め体51における回転軸芯Yから径方向外方側に寄った状態で放射状に複数備えられている。従って、受止め体51における回転軸芯Yを含むその周囲の領域は、周方向全域にわたって拡散用羽根体52が存在しない羽根無し領域Qとして形成されている。
【0048】
具体的には、図6に示すように、拡散用羽根体52は、周方向に沿って約60度ずつ等間隔をあけて分散配置される状態で6個備えられており、各拡散用羽根体52は、受止め体51の半径の約半分の距離に相当する横幅を有し、且つ、横幅の略半分の距離に相当する高さを有する状態で、受止め体51の径方向外方側に寄った位置に立設される構成となっている。
【0049】
尚、受止め体51及び拡散用羽根体52は合成樹脂材にて一体形成される構成となっており、受止め体51には、電動モータ41の駆動軸53に外嵌する筒軸部80も一体形成されており、筒軸部80は、電動モータ41の駆動軸53に外嵌装着されてそれに横向きに装着されたビスbiを駆動軸53に圧接して受止め体51が駆動軸53と一体回転するように連結されている。
【0050】
図4に示すように、ケーシング29により一体形成された筒部30により構成される案内通路26が、受止め体51における羽根無し領域Qに薬剤を案内するように形成されている。
説明を加えると、上述したように、受止め体51における回転軸芯Yを含むその周囲の領域は周方向全域にわたって拡散用羽根体52が存在しない羽根無し領域Qとして形成されるが、図6に示すように、案内通路26の下端の出口54が平面視で羽根無し領域Qに対応する位置に設けられている。さらに説明すると、案内通路26の下端の出口54は、羽根無し領域Qにおける最も径方向外方側に位置する箇所に対応する位置に設けられている。
【0051】
羽根無し領域Qにおける最も径方向外方側箇所に薬剤を落下供給することで、落下した薬剤を周方向に均すようにしながら、極力迅速に拡散用羽根体52による拡散放出作用を行えるようにしている。ちなみに、回転軸芯Yに近い位置に落下することもできるが、そうすると、薬剤を周方向に均す機能は発揮し易いが、滞留時間が長くなって拡散用羽根体52による拡散放出作用が遅れて薬剤の拡散放出タイミングが遅れるおそれがある。
【0052】
図4に示すように、円板形状の受止め体51は中央部が下向きに突出する形状となっており、受止め体51の上部側の位置する受止め面51Aが回転軸芯Y側ほど下方に位置する中凹み状の傾斜面に形成されている。このように構成することで薬剤を周方向に均す機能をより発揮させ易いようにしている。
【0053】
案内通路26が、繰出し機構25側の開口面積を出口54側の開口面積より大にする形態で形成されている。説明を加えると、この案内通路26は、平面視で横断面形状が略四角形状に形成されており、この案内通路26を形成する4つの内面のうち径方向外方側に位置する内面55(図4参照)の上下途中箇所に、出口54側に向かうほど径方向に沿う方向での案内通路26の幅が順次幅狭になるように傾斜面56が形成されている。但し、受止め体51の径方向内方側に位置する内面57は上下方向に沿って平坦面に形成されている。
【0054】
このような構成により、繰出し機構25から繰り出されて下方に案内される薬剤は、傾斜面56により径方向内方側に向けて流下案内されるので、拡散用羽根体52の通過箇所に向けて案内されることを回避して、羽根無し領域Qに落下供給させ易いものとなる。
【0055】
受止め体51を縦向きの回転軸芯Y周りで回転駆動する電動モータ41が、受止め体51の上方に位置する状態で備えられ、繰出し機構25に備えられたソレノイド34が、電動モータ41の横側箇所に位置する状態で備えられている。このように電動モータ41とソレノイド34とを横方向に並ぶ状態で配備することで、薬剤散布装置13の上下方向の外形寸法をコンパクト化することができる。
【0056】
そして、受止め体51における上方側には上部側を仕切る天井壁部58Aが設けられ、又、受止め体51の外周側には、周方向の一部の領域から薬剤が外方に拡散放出されるのを規制する規制用縦壁58Bが備えられ、且つ、この規制用縦壁58Bの両側部の夫々に、受止め体51における周方向の他の領域から外方に拡散放出される薬剤の拡散放出方向を調整する拡散方向調整板59,60が備えられている。
【0057】
拡散方向調整板59,60は、ボルトBoにより天井壁部58Aに取り付けられており、ボルトBoを緩めて、左右回動位置を変更させて再度締め付けることで薬剤の拡散放出方向(開き角度)を変更調整することが可能なように構成されている。
薬剤の拡散放出方向(開き角度)を変更調整するにあたって、ボルトBoの緩み操作により位置調整する構成に代えて、拡散方向調整板59,60を、天井壁部58Aに対して縦軸芯周りで回動自在に且つ摩擦により位置保持する状態で取り付け、手動操作にて摩擦保持力に抗して位置変更可能に構成するものでもよい。
【0058】
規制用縦壁58Bは、ケーシング29に一体成形される状態で設けられ、受止め体51の外周縁の近傍に、周方向に沿って約半周にわたり受止め体51の外周部を覆うように、所定の上下幅を有する状態で且つ外周縁に沿うように平面視で半円弧状に形成されている。
【0059】
又、規制用縦壁58Bの両側端部に、規制用縦壁58Bの上下幅と略同じ上下幅を有し、且つ、前後方向に延びる状態で拡散方向調整板59,60が取り付けられている。この調整板59,60は、規制用縦壁58Bの内面に連なる状態で設けられ、受止め体51の回転に伴って遠心力が作用する薬剤を案内して拡散放出方向を調整することができるように構成されている。ちなみに、図6に示すものでは、左右の拡散方向調整板59,60の長さは略同じ長さに設定されている。
【0060】
この乗用型田植機の走行機体3には充電式のバッテリーが搭載されておらず、エンジン4によって駆動される発電機61(例えば、前照灯等を点灯させるために設けられる発電機等)にて発電された電力が薬剤散布装置13における電気制御ユニット28に供給されるように構成されている。ちなみに、バッテリーが搭載されていないので、エンジン4はリコイル式の始動装置(図示せず)により始動される構成となっている。
【0061】
図11に示すように、電気制御ユニット28は、電源入切スイッチ62を介して供給される発電機51からの交流電力を整流回路63により整流したのち第1レギュレータ回路64により直流12Vに電圧調整して、その直流12Vの電力を電動モータ41及びソレノイド34の駆動用の電力として利用するように構成され、さらに、第1レギュレータ回路64の出力を第2レギュレータ回路65により直流5Vに電圧調整して制御手段としての制御装置66の駆動用電力として利用するように回路が構成されている。尚、直流12Vの電力は、制御装置66によりオンオフ制御されるスイッチングトランジスタ67を介してソレノイド34に供給されるように構成されている。
【0062】
走行機体3における後輪2の車軸(図示せず)の回転数を検出することにより、走行機体の車速を検出する車速検出手段としての車速センサ68が備えられており、この車速センサ68の検出結果が制御装置66に入力されている。
制御装置66は、マイクロコンピュータからなり、閉状態を維持する時間と開状態を維持する時間とを合せた周期が一定となるように閉状態と開状態とに交互に切り換える形態で、且つ、車速センサ68にて検出される車速が大であるほど開状態を維持する時間の比率を大にする形態で、ソレノイド34の作動を制御するように構成されている。
【0063】
又、制御装置66は、車速センサ68にて検出される車速Vxが作業状態判定用の下限値Vs1未満であれば、開状態を維持する時間の比率(以下、開時間比率という)Pxの目標値を零に設定し、車速センサ68にて検出される車速Vxが、作業状態判定用の下限値Vs1以上であり、且つ、低速作業用領域判定用の上限値Vs2未満であれば、開時間比率Pxの目標値を基準値Ps2に設定し、さらに、車速センサ68にて検出される車速Vxが、低速作業用領域判定用の上限値Vs2以上であれば、開時間比率Pxの目標値を、基準値Ps2を最低値とし予め設定した設定上限値(Pmax、Ps1)を最大値として車速センサ68にて検出される車速Vxが大であるほど大となるように比例して変化する形態で定めて、開時間比率Pxが目標値になるように、ソレノイド34の作動を制御するように構成されている。
【0064】
開時間比率Pxの目標値に対する前記設定上限値を変更調整自在な手動操作式の調整手段としての散布量調整器69が備えられている。この散布量調整器69はポテンショメータにて構成され、図5に示すように、ケーシング29の外部から手動操作可能に設けられている。
【0065】
次に、制御装置66による具体的な処理動作について説明する。
制御装置66には、図12に示すような車速Vxの変化に対する開時間比率Pxの相関関係が予め設定されて記憶されている。
図12(a)は、散布量調整器69が変更操作可能な操作範囲の最大位置に操作された状態における車速Vxと開時間比率Pxとの相関関係であり、図12(b)は、散布量調整器69が変更操作可能な操作範囲の中間位置に設定された状態における車速Vxと開時間比率Pxとの相関関係である。
【0066】
これらの図について説明すると、散布量調整器69が最大位置に操作されると、図12(a)に示すように、車速Vxが最大車速であるときの開時間比率Pxの目標値が最大値Pmaxに設定される。散布量調整器69が最小位置と最大位置との中間位置に設定されると、図12(b)に示すように、車速Vxが最大車速であるときの開時間比率Pxの目標値が中間値Ps1に設定され、又、散布量調整器69の操作位置が最大位置と中間位置の間の位置にあれば、開時間比率Pxの目標値も中間の間が設定される。
要するに、散布量調整器69が操作されると、車速Vxが最大車速にあるときの開時間比率Pxの目標値として設定できる範囲の上限値(図12で示す直線の右側端部の値)が無段階に変更され、車速Vxと開時間比率Pxとの相関関係が変化することになる。
【0067】
作業状態判定用の下限値Vs1、及び、開時間比率Pxの目標値の基準値Ps2(図12参照)は、常に一定の値として予め設定されており、変化することはない。しかし、低速作業用領域判定用の上限値Vs2は、散布量調整器69が操作されて開時間比率Pxの目標値として設定できる範囲の上限値が変更すると、それに伴って変化することになる。
【0068】
低速作業用領域判定用の上限値Vs2の定め方について説明を加えると、散布量調整器69が操作されて前記上限値が定まると、その上限値と原点(車速Vx及び開時間比率Pxがいずれも零である点)とを結ぶ直線が定まる。そして、その直線上の開時間比率Pxが基準値Ps2になるときの車速が低速作業用領域判定用の上限値Vs2として設定されることになる。
【0069】
従って、開時間比率Pxを中間値Ps1よりも下げる方向に散布量調整器69が操作されて、開時間比率Pxが基準値Ps2にまで下がると、低速作業用領域判定用の上限値Vs2と最大車速Vmaxとが同じ値になるが、一般的に使用される薬剤を用いる場合には、散布量調整器69の操作位置としては、図12(a)で示される操作位置と図12(b)で示される操作位置との中間の位置で使用されることになる。
【0070】
そして、図12から明らかなように、基準値Ps2は、車速が、作業状態判定用の下限値Vs1以上で且つ低速作業用領域判定用の上限値Vs2未満の間であるときは、車速Vxに比例して変化する開時間比率Pxの値(図12で直線で示す状態)よりも大きな値に設定されている。
【0071】
そして、エンジン4が作動している状態で電源入切スイッチ62がオン操作され、電源が供給されると、制御装置66は、車速センサ68の検出値を読み込み、車速センサ68の検出値と散布量調整器69の操作位置により設定される上記相関関係とから、開時間比率Pxの目標値を定める。
【0072】
そのときの車速Vxが作業状態判定用の下限値Vs1未満であれば、開時間比率Pxの目標値を零に設定する。このような極低速での走行は水田作業(苗植付け作業)ではなく、例えば、植付け開始位置を合わせるための移動操作等であることが想定されるからである。
【0073】
車速センサ68にて検出される車速Vxが、作業状態判定用の下限値Vs1以上であり、且つ、低速作業用領域判定用の上限値Vs2未満であれば、その速度範囲内で車速を変化させても開時間比率Pxの目標値を基準値Ps2に一定に維持する。このように低速での水田作業(苗植付け作業)を行っている場合には、開時間比率Pxとして基準値Ps2を確保することで、繰出し機構25により薬剤の繰出しを確実に行えるようにしている。
【0074】
車速センサ68にて検出される車速Vxが、低速作業用領域判定用の上限値Vs以上であれば、開時間比率Pxの目標値を、基準値Psを最低値とし予め設定した設定上限値(Pmax、Ps1)を最大値として車速センサ68にて検出される車速が大であるほど大となるように比例して変化する形態で設定する。
【0075】
そして、シャッター部材33の開時間比率Pxが上記したようにして定めた目標値になるように、図13に示すように、閉状態を維持する時間Tonと開状態を維持する時間Toffとを合せた周期Tpが一定となるように閉状態と開状態とに交互に切り換える形態でソレノイド34の作動を制御する。
このように車速Vxが大であるほど開時間比率Pxを大にする形態でソレノイド34の作動を制御することにより、機体進行方向に沿う苗の植付け間隔を変更させることがあっても、圃場の単位面積当たりの薬剤の散布量を一定に維持することができる。
【0076】
尚、圃場内で苗植付け作業が終了したのちに、貯留ホッパー24に薬剤が残っているような場合には、貯留ホッパー24に備えられた合成樹脂材からなる蓋体85を取り外して、排出口86を開放した薬剤を排出させることができる。
【0077】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、上記実施形態では、開口形成板32とシャッター部材33とにより、薬剤通過用の開口31を開閉させる構成としたが、このような構成に代えて、次の〈a〉〈b〉に記載するような構成としてもよい。
【0078】
〈a〉図14及び図15に示すように、薬剤通過用の開口31が形成された開口形成板32、ソレノイド34によってスライド移動自在なシャッター部材33、このシャッター部材33を下方側から弾性的に押し操作する板バネ式の押圧部材70の夫々を上下に重ね合わせた三層構造としてもよい。
【0079】
この構成では、開口形成板32と押圧部材70は、ケーシング29の筒部30の内壁に水平方向に嵌め込む構造となっており、押圧部材70は、薬剤供給用の開口31を迂回するとともに、シャッター部材33を上方に押圧する押圧片71が中央に形成される構成となっている。そして、シャッター部材33における開口遮蔽箇所33Aの先端部には、スライド移動方向と直交する方向に対して傾斜する状態で傾斜面33Bが形成されている。
【0080】
このように構成することで、シャッター部材33が開状態から閉状態にスライド移動するときに、シャッター部材33の先端部により押されて、シャッター部材33の先端部、開口形成板32、押圧部材70、及び、筒部30の内壁で囲まれた箇所に挟み込まれた薬剤を、前記傾斜面33Bによりスライド移動方向と直交する方向に押し出して、その箇所で堆積するのを防止するようにしている。
【0081】
〈b〉図16及び図17に示すように、薬剤通過用の開口31が形成された開口形成板32と、ソレノイド34によってスライド移動自在なシャッター部材33と、このシャッター部材33を下方側から弾性的に押し操作するように小型の押圧片72が一対形成された板バネ式の押圧部材70とを上下に重ね合わせた三層構造とする点は、上記〈a〉と同じであるが、開口形成板32は、シャッター板33のスライド方向の両側部にケーシング29の端縁に係止する係止片32eが形成され、スライド方向への連れ動きを規制してある。
【0082】
そして、この構成では、シャッター部材33が閉状態になったときに、シャッター部材33と筒部30の内壁との間に隙間Wが形成されて、それらの間に薬剤が挟み込まれるのを防止するようにしている。
【0083】
(2)上記実施形態では、貯留ホッパー24は常に同じものを用いるようにしたが、貯留ホッパー24を互いに異なる容量のものに付け替える構成とし、貯留ホッパー24の貯留量の大小に応じて、ソレノイド34の制御内容を変更するように構成してもよい。
【0084】
例えば、図18に示すように、貯留ホッパー24のケーシング29に対する接続箇所に、容量判別用の検出スイッチ74を設けておき、小容量の貯留ホッパー24aには、接続時に検出スイッチ74に作用する押圧作用部75が設けられ、大容量の貯留ホッパー24bは、接続しても検出スイッチ74に作用しないように構成しておき、制御装置66が、検出スイッチ74の検出情報に基づいて、ソレノイド34の制御内容を各ホッパーの貯留量に適した内容に切り換えるように構成されるものでもよい。尚、このときの制御内容の変更としては、ソレノイド34の制御内容の他、電動モータ41の回転数や拡散方向調整板59,60の角度等を変更調整するものでもよい。
【0085】
ソレノイド34の制御内容を各ホッパーの貯留量に適した内容に切り換えるにあたり、検出スイッチ74の検出情報に代えて、手動操作による切り換え操作に基づいて切り換える構成としてもよい。
【0086】
(3)上記実施形態では、薬剤通過用の開口31の開口面積は常に一定である構成としたが、この開口面積を手動操作あるいは自動操作で微調節することが可能な開口面積調整機構76を備えるように構成してもよい。
例えば、図19に示すように、開口面積調整機構76は、薬剤通過用の開口31に対して重なる状態でスライド調整板77を備え、このスライド調整板77をネジ送り機構78により少量ずつ位置を変更させることで薬剤通過用の開口31の開口面積を微調節する構成である。
【0087】
(4)上記実施形態では、車速検出手段として、後輪2の車軸の回転数を検出する車速センサ68を設ける構成としたが、車速検出手段としては、例えば、エンジン回転数の検出情報と変速レバー16の操作位置の検出情報により車速を検出するようにしたり、ギア式変速装置を備えるものであれば、変速操作具による変速切り換え位置の情報とエンジン回転数の検出情報とから車速を検出するようにしてもよく、車速を検出する構成は種々変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、乗用型田植機や施肥機等の水田作業機であって、走行機体の後部に薬剤散布装置が備えられている水田作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0089】
3 走行機体
13 薬剤散布装置
24 貯留ホッパー
26 供給経路
27 拡散手段
31 薬剤通過用開口
33 シャッター部材
34 アクチュエータ
66 制御手段
68 車速検出手段
69 調整手段
76 開口面積調整機構
Px 開状態を維持する時間の比率
Ps 基準値
Pmax 設定上限値
L1、L2 開口幅
Vx 車速
Vs1 作業状態判定用の下限値
Vs2 低速作業用領域判定用の上限値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に薬剤散布装置が備えられている水田作業機であって、
前記薬剤散布装置が、貯留ホッパーの下部出口から供給経路を通して供給される薬剤を拡散散布する拡散手段と、前記供給経路を閉塞する閉状態と前記供給経路内に薬剤通過用開口を形成する開状態とにわたりスライド移動自在なシャッター部材と、そのシャッター部材を前記閉状態と前記開状態とに切り換えるアクチュエータとを備えて構成され、
前記アクチュエータの作動を制御する制御手段と、前記走行機体の車速を検出する車速検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、前記閉状態を維持する時間と前記開状態を維持する時間とを合せた周期が一定となるように前記閉状態と前記開状態とに交互に切り換える形態で、且つ、前記車速検出手段にて検出される車速が大であるほど前記開状態を維持する時間の比率を大にする形態で、前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている水田作業機。
【請求項2】
前記制御手段が、前記車速検出手段にて検出される車速が作業状態判定用の下限値未満であれば、前記閉状態を維持するように前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記制御手段が、前記車速検出手段にて検出される車速が、前記作業状態判定用の下限値以上であり、且つ、低速作業用領域判定用の上限値未満であれば、前記開状態を維持する時間の比率の目標値を予め設定した基準値に設定して、前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている請求項2記載の水田作業機。
【請求項4】
前記制御手段が、前記車速検出手段にて検出される車速が、前記低速作業用領域判定用の上限値以上であれば、前記開状態を維持する時間の比率の目標値を、前記基準値を最低値とし予め設定した設定上限値を最大値として前記車速検出手段にて検出される車速が大であるほど大となるように比例して変化する形態で定めて、前記開状態を維持する時間の比率が前記目標値になるように、前記アクチュエータの作動を制御するように構成されている請求項3記載の水田作業機。
【請求項5】
前記開状態を維持する時間の比率の目標値に対する設定上限値を変更調整自在な手動操作式の調整手段が備えられている請求項4記載の水田作業機。
【請求項6】
前記供給経路内に形成される前記薬剤通過用開口が、前記シャッター部材のスライド移動方向に沿う開口幅よりもスライド移動方向と直交する方向に沿う開口幅が大となる横長形状である請求項1〜5のいずれか1項に記載の水田作業機。
【請求項7】
前記薬剤通過用開口の開口面積を変更調整自在な開口面積調整機構が備えられている請求項1〜6のいずれか1項に記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−100607(P2012−100607A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253192(P2010−253192)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】