説明

水田作業機

【課題】種々の作業状況の違いに応じて整地装置により適切な整地性能を発揮できる状態に切り換えることが可能となる水田作業機を提供する。
【解決手段】走行機体と作業装置との間に横軸芯周りで駆動回転される回転式の整地装置が大径の整地用回転体62Aと小径の整地用回転体62Bとを備え、且つ、センサフロート9の機体前方側に対応する領域に小径の整地用回転体62Bを備えて構成され、整地制御手段が、小径の整地用回転体62Bの下端部t1をセンサフロート9の底面位置t2よりも上方に位置させる第1制御状態、それらを同じ高さに位置させる第2制御状態、小径の整地用回転体62Bの下端部t1をセンサフロート9の底面位置t2よりも下方に位置させる第3制御状態の夫々に切り換え可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後部に駆動手段により昇降自在に作業装置が備えられるとともに、前記走行機体と前記作業装置との間に機体横幅方向に沿って延び且つ横軸芯周りで駆動回転される回転式の整地装置が備えられ、前記作業装置に後部の横向き軸芯周りで上下揺動自在にセンサフロートが支持され、前記センサフロートの接地追従に伴う上下動に基づいて前記作業装置の田面に対する高さが設定値になるように前記駆動手段を制御する昇降制御手段と、前記整地装置の田面に対する高さを変更調整自在な整地高さ調整手段と、前記整地高さ調整手段の作動を制御する整地制御手段とが備えられている水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業機の一例である乗用型田植機において、従来では、特許文献1に開示されているように、整地装置が機体横幅方向に沿う整地作業領域の略全域に亘り同一外径である整地用回転体を備えて構成され、この整地用回転体は、横軸芯周りで駆動回転されて田面の整地(代掻き)を行うようになっており、しかも、整地制御手段が、整地用回転体の下端部が田面の下側に入り込む整地深さを任意に変更調整できるように構成され、整地用回転体は常に田面の内部に入り込む状態で整地を行うように構成されていた。
【0003】
ところで、特許文献1では、前記整地装置として、外径寸法が互いに異なる大径の整地用回転体と小径の整地用回転体とを備え、且つ、機体横幅方向に沿う整地作業領域のうちでセンサフロートの機体前方側に対応する領域に小径の整地用回転体を備える構成についても記載されているが、整地制御手段は、整地用回転体は常に田面の内部に入り込む状態で整地を行うように構成されるものであり、小径の整地用回転体を備える構成においても、整地用回転体、すなわち、大径の整地用回転体及び小径の整地用回転体の夫々が常に田面の内部に入り込む状態で整地を行うように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−207434号公報〔(段落(0058)〜(0060),(0088)、図5、図7、図17参照〕
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来構成において、整地装置が機体横幅方向に沿う整地作業領域の全域に亘り同一外径である整地用回転体を備えて構成されるものでは、機体横幅方向に沿う整地作業領域の全域において、田面の整地(代掻き)を良好に行うことができるが、例えば、水分が多く軟弱な圃場であれば、整地装置によって圃場の軟弱な泥土が整地作業領域の左右両側外方に多量に押し流されてしまうことがある。
【0006】
そうすると、例えば、乗用型田植機であれば、機体横幅方向外方側に多量に押し流される泥土が既植苗を押し倒してしまう不利があり、又、整地装置の進行方向後方側に位置するセンサフロートが検知作用する箇所は、泥土が押し退けられて田面におけるその他の領域に比べて表面の高さが低いレベルになることがあり、その結果、センサフロートの検知高さが、田面におけるその他の領域における表面の高さに対応する適正な値よりも低めの値となり、作業装置の対地高さが適正な高さとならずに昇降制御が良好に行えないものとなるおそれがある。
【0007】
そこで、このような不利を解消するために、従来では、上述したように、整地装置として、外径寸法が互いに異なる大径の整地用回転体と小径の整地用回転体とを備え、且つ、機体横幅方向に沿う整地作業領域のうちでセンサフロートの機体前方側に対応する領域に小径の整地用回転体を備える構成が示されている。
【0008】
このように小径の整地用回転体を備える構成にすると、田面におけるセンサフロートが検知作用する箇所では、小径の整地用回転体による整地が行われるので、大径の整地用回転体に比べて、圃場の泥土を整地作業領域の左右両側外方に押し流す泥土の量を少なくして、例えば既植苗を押し倒したり、田面におけるその他の領域に比べて表面の高さが低いレベルになる等の不利を回避し易いものとなるが、上記従来構成では、小径の整地用回転体を備える構成においても、整地用回転体すなわち大径の整地用回転体及び小径の整地用回転体の夫々が常に田面の内部に入り込む状態で整地を行うものであるから、次のような不利な面があり、改善の余地があった。
【0009】
すなわち、上記従来構成によれば、小径の整地用回転体が常に田面の内部に入り込む状態で整地を行うので、比較的硬めの圃場であり大きめの凹凸が存在している箇所等においては田面を均して均平化させるようにしたり、夾雑物を田面の内部に押し込むこと等により、センサフロートにより良好な検知作動を行うことが可能となるものであるが、実際の圃場では、上記したような作業状況だけではなく種々の作業状況が存在すると考えられる。
【0010】
例えば、田面に小さい凹凸が存在するが圃場全体としては略平坦な田面であり、田面がそれほど軟弱ではない場合、あるいは、凹凸が少なく圃場全体としては略平坦な田面であるが、田面上にワラ屑等の夾雑物が存在しているような場合には、作業者ができるだけ単時間で作業を終了するために走行速度を高速にした状態で作業を行うことがある。
【0011】
このような作業状況においては、整地用回転体による整地作業は必要でないにもかかわらず、整地用回転体が田面の内部に入り込む状態で整地が行われると、整地用回転体の整地作動によって田面の表面に軟弱な層が形成されることになる。
田面の表面に軟弱な層があると、センサフロートが接地した状態で水田作業機が高速で走行すると、センサフロートが上下にバタついて姿勢が不安定になり、センサフロートにより良好な検知作動を行うことができないおそれがある。
【0012】
又、別の代掻き装置で代掻き作業が行われて均平化された直後の圃場や、田面の泥土が非常に軟かく表面が滑らかである圃場等、田面に凹凸が殆ど無く整地装置による整地作業が必要とされない場合がある。
代掻き作業が行われた直後の圃場では、整地用回転体が田面の内部に入り込む状態で整地が行われると、田面が整地用回転体の整地によって不必要に荒らされることになり、上述したように、整地用回転体の整地によって田面の表面に軟弱な層が形成され、高速で走行するときには、センサフロートが上下にバタついて姿勢が不安定になり、センサフロートにより良好な検知作動を行うことができないおそれがある。
田面が非常に軟かくて表面が滑らかである圃場であれば、上述したように、整地用回転体の整地によって泥土が機体横幅方向外方側に押し流されるといった不利もある。
【0013】
本発明の目的は、種々の作業状況の違いに応じて整地装置により適切な整地性能を発揮できる状態に切り換えることが可能となる水田作業機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る水田作業機は、走行機体の後部に駆動手段により昇降自在に作業装置が備えられるとともに、前記走行機体と前記作業装置との間に機体横幅方向に沿って延び且つ横軸芯周りで駆動回転される回転式の整地装置が備えられ、
前記作業装置に後部の横向き軸芯周りで上下揺動自在にセンサフロートが支持され、
前記センサフロートの接地追従に伴う上下動に基づいて前記作業装置の田面に対する高さが設定値になるように前記駆動手段を制御する昇降制御手段と、前記整地装置の田面に対する高さを変更調整自在な整地高さ調整手段と、前記整地高さ調整手段の作動を制御する整地制御手段とが備えられているものであって、その第1特徴構成は、
前記整地装置が、外径寸法が互いに異なる大径の整地用回転体と小径の整地用回転体とを備え、且つ、機体横幅方向に沿う整地作業領域のうちで前記センサフロートの機体前方側に対応する領域に前記小径の整地用回転体を備えて構成され、
前記整地制御手段が、
前記小径の整地用回転体の下端部を前記センサフロートの底面位置よりも上方に位置させるように前記整地高さ調整手段の作動を制御する第1制御状態、
前記小径の整地用回転体の下端部を前記センサフロートの底面位置と同じ高さに位置させるように前記整地高さ調整手段の作動を制御する第2制御状態、
前記小径の整地用回転体の下端部を前記センサフロートの底面位置よりも下方に位置させるように前記整地高さ調整手段の作動を制御する第3制御状態の夫々に切り換え可能に構成されている点にある。
【0015】
第1特徴構成によれば、センサフロートの機体前方側に対応する領域に小径の整地用回転体が備えられ、作業状況の違いに応じて、整地制御手段を第1制御状態、第2制御状態、第3制御状態のうちのいずれかに切り換えて作業を行うことになる。
【0016】
例えば、別の代掻き装置により代掻き作業が行われた直後の圃場や、田面が非常に軟弱で表面に凹凸がなく平坦になっている圃場等で作業する場合には、整地制御手段を第1制御状態に切り換えることにより、小径の整地用回転体の下端部がセンサフロートの底面位置よりも上方に位置する状態で整地作業を行うことになる。この場合には、小径の整地用回転体による不要な整地は行わないので不要な泥押しが発生しない状態で、平坦な田面に対してセンサフロートが検知作用する。
【0017】
例えば、田面の一部に凹凸が存在するが圃場全体としては略平坦な田面である場合、あるいは、凹凸は殆ど無いが田面上にワラ屑等の夾雑物が存在する場合には、整地制御手段を第2制御状態に切り換えることにより、小径の整地用回転体の下端部がセンサフロートの底面位置と同じ高さに位置する状態で整地作業を行うことになる。この場合には、田面に存在する凹凸に作用して整地しその凹凸を均して均平化する。又、田面にワラ屑等の夾雑物が存在するときは、その夾雑物を小径の整地用回転体によって田面の内部に押し込むことになる。
凹凸や夾雑物が存在しない平坦な田面では、小径の整地用回転体による整地は行われないので、整地作業により田面の表面に軟弱な層が形成されることがない。
そして、このようにして小径の整地用回転体によって均平化された平坦な田面や小径の整地用回転体による整地が行われない平坦な田面に対してセンサフロートが検知作用する。
【0018】
例えば、田面が比較的硬めであり大きめの凹凸が存在しているような場合には、整地制御手段を第3制御状態に切り換えることにより、小径の整地用回転体の下端部がセンサフロートの底面位置よりも下方に位置する状態で整地作業を行うことになる。この場合には、小径の整地用回転体が田面の内部に入り込んで充分に均した状態で田面を均平化させることができる。又、田面に夾雑物があれば、田面の内部に押し込むことになる。そして、このようにして小径の整地用回転体によって均平化された平坦な田面に対してセンサフロートが検知作用する。
【0019】
従って、種々の作業状況のいずれにおいても、平坦な田面に対してセンサフロートが検知作用することになり、センサフロートにより良好な検知作動を行うことが可能となるのであり、種々の作業状況の違いに応じて整地装置により適切な整地性能を発揮できる状態に切り換えることが可能となる水田作業機を提供できるに至った。
【0020】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、
前記作業装置における前記大径の整地用回転体の後方側に整地フロートが備えられ、
前記整地制御手段が前記第1制御状態、前記第2制御状態及び前記第3制御状態のいずれに切り換えられていても、前記大径の整地用回転体の下端部が前記整地フロートの底面位置よりも下方に位置するように構成されている点にある。
【0021】
第2特徴構成によれば、整地制御手段が、第1制御状態、第2制御状態、及び、第3制御状態のいずれに切り換えられても、大径の整地用回転体の下端部が整地フロートの底面位置よりも下方に位置することになるから、大径の整地用回転体は田面の内部に入り込んで充分に均した状態で田面を均平化させることができる。又、田面に夾雑物があれば、田面の内部に押し込むことになる。そして、このようにして大径の整地用回転体によって整地された箇所を整地フロートにて整地する。
【0022】
センサフロートの機体前方側に対応する領域には小径の整地用回転体が備えられるので、常に整地機能を発揮する大径の整地用回転体が備えられるものであっても、軟弱な泥土が整地作業領域の左右両側外方に押し流されることを抑制できる。
【0023】
従って、軟弱な泥土が整地作業領域の左右両側外方に押し流されることを抑制しながら、大径の整地用回転体により整地機能を発揮できるものとなる。
【0024】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、
前記整地制御手段が、前記小径の整地用回転体の下端部を前記センサフロートの底面位置よりも上方に位置させ、且つ、前記大径の整地用回転体の下端部を前記整地フロートの底面位置よりも上方に位置させるように前記整地高さ調整手段の作動を制御する退避用制御状態に切り換え可能に構成されている点にある。
【0025】
第3特徴構成によれば、整地制御手段が退避用制御状態に切り換えられると、小径の整地用回転体の下端部がセンサフロートの底面位置よりも上方に位置し、大径の整地用回転体の下端部が整地フロートの底面位置よりも上方に位置することになる。
【0026】
整地装置による整地が必要でない場合には、整地制御手段を退避用制御状態に切り換えておくことで、小径の整地用回転体及び大径の整地用回転体の夫々が田面に対する整地を行なわない状態にできる。
【0027】
又、圃場における作業走行中には、整地装置による整地作業を行うが、圃場の畦際で旋回するときに、整地制御手段を退避用制御状態に切り換えておくと、小径の整地用回転体及び大径の整地用回転体の夫々による不必要な泥押しを回避できる。
【0028】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、
前記整地装置が前記作業装置に対して昇降自在に支持され、
前記作業装置に対する前記センサフロートの揺動支点位置を上下に位置変更する作業深さ設定手段が備えられ、
前記整地制御手段が、
前記第1制御状態、前記第2制御状態、及び、前記第3制御状態の夫々において、前記整地装置の前記作業装置に対する高さが予め設定した目標値になるように前記整地高さ調整手段の作動を制御するように構成され、且つ、前記作業深さ設定手段により前記センサフロートの揺動支点位置が上下に変更されると、前記小径の整地用回転体の下端部と前記センサフロートの底面位置とが前記各制御状態に対応する位置関係になるように、前記整地装置の前記作業装置に対する高さの目標値を変更調整するように構成されている点にある。
【0029】
第4特徴構成によれば、作業深さ設定手段により作業装置に対するセンサフロートの揺動支点位置を上下に位置変更することができる。このことにより田面に対する作業装置の高さを変更できるのであり、例えば、作業装置として苗植付装置が備えられるものでは田面に対する苗の植付け深さを変更することができる。
【0030】
整地制御手段は、第1制御状態、第2制御状態、及び、第3制御状態の夫々において、夫々の制御状態に対応した位置関係となるように整地装置の作業装置に対する高さの目標値が設定され、整地装置の作業装置に対する高さがその目標値になるように整地高さ調整手段を制御する。
【0031】
そして、作業深さ設定手段によりセンサフロートの揺動支点位置が上下に変更されると、整地制御手段が前記目標値を変更調整することにより、小径の整地用回転体の下端部とセンサフロートの底面位置とが各制御状態に対応する位置関係に調整されることになる。
【0032】
従って、上記各制御状態のいずれの制御状態においても、作業装置に対するセンサフロートの揺動支点位置の位置変更にかかわらず、小径の整地用回転体の下端部とセンサフロートの底面位置との位置関係を常に適正な状態に維持することができ、整地作業を良好に行うことができる。
【0033】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成に加えて、
前記センサフロートの底面位置が前記センサフロートの揺動支点位置の直下に対応する底面の位置である点にある。
【0034】
第5特徴構成によれば、センサフロートの揺動支点位置の直下に対応する底面の位置が、小径の整地用回転体の下端部との位置関係を定める基準の位置となる。
センサフロートは揺動支点位置を中心として上下に揺動するので、揺動支点位置以外では底面は上下に位置が変動するが、揺動支点位置の直下に位置する部位に対応する底面の位置は変動することはなく、この位置と小径の整地用回転体の下端部との位置関係を定めることにより、整地装置の田面に対する高さが適正な状態になるように、整地高さ調整手段の作動を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】苗植付装置及び整地装置の側面図である。
【図3】苗植付装置及び整地装置の正面図である。
【図4】苗植付装置及び整地装置の平面図である。
【図5】昇降操作機構の側面図である。
【図6】整地用回転体の斜視図である。
【図7】フロート高さ検出機構の側面図である。
【図8】整地具配設部の側面図である。
【図9】整地具配設部の正面図である。
【図10】整地具配設部の平面図である。
【図11】伝動ケースの斜視図である。
【図12】制御ブロック図である。
【図13】昇降制御手段の作動の流れを示す図である。
【図14】ローリング制御手段の作動の流れを示す図である。
【図15】整地制御手段の作動の流れを示す図である。
【図16】第1制御状態の動作説明図である。
【図17】第2制御状態の動作説明図である。
【図18】第3制御状態の動作説明図である。
【図19】整地装置と接地フロートの配置状態を示す平面図である。
【図20】別実施形態の苗植付装置及び整地装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面に基づいて、本発明に係る水田作業機の実施形態を乗用型田植機に適用した場合について説明する。
【0037】
図1に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2で支持された走行機体Aの後部に、リンク機構3により6条植型式の苗植付装置5(作業装置に相当)が昇降自在に支持され、リンク機構3を昇降駆動する駆動手段としての油圧式の昇降シリンダ4が備えられて、水田作業機の一例である乗用型田植機が構成されている。後述するように、苗植付装置5が、田面Gに接地する作業位置と田面Gから大きく離れて上方する非作業位置(リンク機構3の上限位置)とにわたって昇降シリンダ4により昇降自在に構成されている。
【0038】
次に、苗植付装置5について説明する。
図1,2,4に示すように、苗植付装置5は、1個のフィードケース17、3個の伝動ケース6、伝動ケース6の後部に回転駆動自在に支持された一対の回転ケース7、回転ケース7の両端に備えられた一対の植付アーム8、センサフロートとして機能する左右中央に位置する接地フロート(以下、センターフロートという)9、及び、左右両側に位置する接地フロート(以下、サイドフロートという)11、6個の苗のせ面を備えて左右方向に往復横送り駆動される苗のせ台10、苗のせ台10の苗のせ面の各々に備えられた縦送り機構25等を備えて構成されている。左右方向に延びる角筒状のメインフレーム18に、フィードケース17及び伝動ケース6が固定されており、フィードケース17がリンク機構3の後部下部の前後軸芯P1(図3参照)周りに左右揺動自在に支持されている。
【0039】
図4に示すように、フィードケース17から横送り軸19が延出され、横送り軸19の端部が支持部材20を介してメインフレーム18に支持されて、横送り軸19の回転に伴って往復横送り駆動される送り部材21が横送り軸19に外嵌されており、送り部材21が苗のせ台10に接続されている。伝動ケース6にガイドレール38が左右方向に支持されて、苗のせ台10の下部がガイドレール38に沿って横移動自在に支持されている。図2及び図3に示すように、メインフレーム18の右及び左の端部に縦支持部材26が固定され上方に延出されて、縦支持部材26の上部に亘って横支持部材50が固定されており、苗のせ台10の上部の前面にガイドレール27が固定され、横支持部材50に支持されたローラー51にガイドレール27が横移動自在に支持されている。
【0040】
図1及び図4に示すように、エンジン49の動力が植付クラッチ87(図12参照)及びPTO軸22を介して、フィードケース17に備えられた入力軸28に伝達され、入力軸28の動力が横送り変速機構29を介して横送り軸19に伝達されており、横送り軸19が回転駆動される。入力軸28の動力が伝動チェーン30、伝動ケース6に亘って架設された伝動軸23、伝動ケース6に備えられた入力軸32に伝達されており、入力軸32の動力がトルクリミッター33、伝動チェーン34、少数条クラッチ24及び駆動軸35を介して回転ケース7に伝達されている。伝動ケース6に亘って円筒状のカバー60が固定されており、カバー60により伝動軸23が覆われている。
【0041】
これにより、植付クラッチ87が伝動状態に操作されると、苗のせ台10が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース7が図2の紙面反時計方向に回転駆動され、苗のせ台10の下部から植付アーム8が交互に苗を取り出して田面Gに植え付ける。植付クラッチ87が遮断状態に操作されると、苗のせ台10の往復横送り駆動及び回転ケース7の回転駆動が停止される。
【0042】
図2に示すように、苗のせ台10の6個の苗のせ面の各々に、ベルト式の縦送り機構25が備えられている。図4に示すように、フィードケース17から縦送り軸36が延出され、縦送り軸36の端部が支持部材37を介してメインフレーム18に支持されて、入力軸28の動力により縦送り軸36が回転駆動されており、縦送り軸36に一対の駆動アーム36aが固定されている。6個の縦送り機構25に動力を伝達する入力部(図示せず)が苗のせ台10に備えられており、入力部が縦送り軸36の駆動アーム36aの間に位置している。これにより、苗のせ台10が往復横送り駆動の右又は左端部に達すると、入力部が縦送り軸36の一方の駆動アーム36aに達して、縦送り軸36の一方の駆動アーム36aにより入力部が駆動され、6個の縦送り機構25により苗のせ台10の苗が下方に送られる。
【0043】
図1及び図2に示すように、運転座席31の後側に、肥料を貯留するホッパー12及び各々が2つの植付条に対応した3個の繰り出し部13が備えられており、運転座席31の下側にブロア14が備えられている。センターフロート9及びサイドフロート11に2個の作溝器15が固定されて、6個の作溝器15が備えられており、繰り出し部13と作溝器15とに亘って6本のホース16が接続されている。これにより、前述のような苗の植え付けに伴って、ホッパー12から肥料が所定量ずつ繰り出し部13によって繰り出され、ブロア14の送風により肥料がホース16を通って作溝器15に供給されるのであり、作溝器15を介して肥料が田面Gに供給される。
【0044】
図12に示すように、繰り出し部13に動力を伝動及び遮断自在な施肥クラッチ90と、施肥クラッチ90を伝動及び遮断状態に操作する電動モータ91とが備えられており、植付クラッチ87を伝動及び遮断状態に操作する電動モータ89が備えられている。これにより、電動モータ89,91により植付及び施肥クラッチ87,90を伝動及び遮断状態に操作することによって、苗植付装置5(植付アーム8による苗の植え付け)及び繰り出し部13の作動及び停止を行う。
【0045】
次に、整地装置53について説明する。
図4に示すように、メインフレーム18の左の端部には、ボス部材64が固定され、ボス部材64に対して、伝動軸23及び入力軸32の横軸芯P2周りに上下に揺動自在に伝動ケース81が支持されている。一方、メインフレーム18の右の端部には、ブラケット82が固定され、ブラケット82の横軸芯P2(伝動軸23及び入力軸32の横軸芯P2)周りに支持アーム83が上下に揺動自在に支持されており、伝動ケース81及び支持アーム83に亘って断面正方形状の駆動軸61が回転自在に支持されている。
図4に示すように、駆動軸61には、一体回転自在に支持される状態で整地用回転体62が外嵌装着され、この整地用回転体62として、外径寸法が互いに異なる大径の整地用回転体62Aと小径の整地用回転体62Bとを備えて構成されている。
そして、機体横幅方向に沿う整地作業領域のうちの機体横幅方向の中央側であって、且つ、センターフロート9の機体前方側に対応する領域に、小径の整地用回転体62Bを備え、且つ、その小径の整地用回転体62Bの左右両側に大径の整地用回転体62Aを備えて構成されている。
【0046】
大径の整地用回転体62A及び小径の整地用回転体62Bの夫々は、合成樹脂により一体的に成形された大径の単位回転体62Aa及び小径の単位回転体62Baを軸芯方向に複数個並べて構成されている。
【0047】
図6に示すように、大径の単位回転体62Aaは、ボス部62a、ボス部62aに形成された断面正方形状の取付孔62b、ボス部62aに接続されたフランジ部62c、フランジ部62cの外周部に接続された凸状の整地部62dを備えて構成されている。図示はしないが、小径の単位回転体62Baは、異なる大きさで大径の単位回転体62Aaと同様な構成となっている。
【0048】
図5に示すように、複数の大径の単位回転体62Aa及び複数の小径の単位回転体62Baのボス部62a(取付孔62b)に駆動軸61が挿入されて、夫々の整地用回転体62A,62Bが駆動軸61に一体回転自在に外嵌装着されており、駆動軸61にスペーサ63が外嵌されて夫々の単位回転体62Aa,62Baの軸芯方向の位置が決められている。
そして、図4及び図19に示すように、機体横幅方向中央部に位置する小径の整地用回転体62Bと、左右両側に位置する大径の整地用回転体62Aとの間には、夫々、機体横幅方向に間隔が形成されており、この間隔により泥水通過用の隙間S1が形成されている。
【0049】
図4に示すように、伝動ケース81及び支持アーム83にブラケット65が固定され、各ブラケット65に亘って丸パイプ状の支持フレーム67が固定されている。そして、この支持フレーム67に、泥水が苗植付装置5に飛散するのを防止する軟質の合成樹脂製の泥除けカバー66が取り付け固定されている。
【0050】
図19に示すように、泥除けカバー66における小径の整地用回転体62Bに対応する小径用カバー部分66Bの後端部が、その後端部の位置を大径の整地用回転体62Aに対応する大径用カバー部分66Aの後端部の位置よりも機体前方側に位置させる状態で設けられ、泥除けカバー66における小径用カバー部分66Bと大径用カバー部分66Aとが分割式のカバーで構成され、小径用カバー部分66Bと大径用カバー部分66Aとの間に泥水通過用の隙間S2が形成されている。
【0051】
図2に示すように、泥水通過用の隙間S2は、小径用カバー部分66Bの外端と大径用カバー部分66Aの内端との間に所定の左右幅を有する形態で、小径用カバー部分66Bの外端が大径用カバー部分66Aの内端より前方に位置する形態で形成されている。
【0052】
泥水通過用の隙間S2は、図19に示すものでは、小径の整地用回転体62Bと大径の整地用回転体62Aとの間の泥水通過用の隙間S1の左右幅と同じ左右幅に設定されているが、泥水通過用の隙間S2の左右幅を泥水通過用の隙間S1よりも大に設定してもよく、泥水通過用の隙間S2の左右幅を泥水通過用の隙間S1よりも小に設定してもよい。
【0053】
小径用カバー部分66Bの後端部の位置を大径の整地用回転体62Aに対応する大径用カバー部分66Aの後端部の位置よりも機体前方側に位置させるための具体構成としては、図2に示すように、支持フレーム67に設けられたカバー取付部67Aに各カバー部分66A,66Bが取り付けられるが、この各カバー部分66A,66Bのカバー取付部67Aに対する取付位置を前後にずらすことで対応できる。
又、各カバー部分66A,66Bの夫々に対応するカバー取付部67Aの突出長さを異ならせることで、前後にずらすこともできる。さらには、カバー取付部67Aの支持フレーム67に対する取り付け角度を異ならせることによっても、前後にずらすこともできる。
【0054】
又、図19に示すように、小径用カバー部分66Bが大径用カバー部分66Aよりも機体前方側に位置している分だけ、センターフレーム9の前端部の位置を左右のサイドフロート11(他の接地フロート)の前端部の位置よりも機体前方側に位置させる状態で設けられている。
【0055】
従って、駆動軸61、整地用回転体62(62A,62B)、泥除けカバー66、支持フレーム67、伝動ケース81及び支持アーム83等により整地装置53が構成されており、苗植付装置5におけるセンターフロート9及びサイドフロート11の前部に整地装置53が支持され、後輪2の後方に整地装置53が配置されており、伝動ケース81及び支持アーム83が横軸芯P2周りに上下に揺動することによって、整地装置53が苗植付装置5の前部に昇降自在に支持される構成となっている(機体と水田作業装置との間に整地装置を備えた状態に相当)。従って、伝動ケース81及び支持アーム83が、整地装置53を苗植付装置5に対して支持する支持部Fに対応する。
【0056】
整地装置53を支持する伝動ケース81及び支持アーム83の下端部には、図11に示すように、田面Gの泥土が摺接して付着堆積することを防止すべく、平面視で三角形状であり、先端部が鋭角となるように板材を屈曲形成して構成される泥除け部材92が設けられている。この泥除け部材92を設けることで、伝動ケース81、及び、支持アーム83の下端部が、田面Gに接当して泥押ししたり、田面Gとの接当により損傷することを回避できる。
【0057】
平面視で支持部F(伝動ケース81及び支持アーム83)と重複する状態で、田面Gに対する整地を行う整地具93が配備されている。
すなわち、図8,図9,図10に示すように、メインフレーム18の左右両側端部から横側外方に延長突出する状態で設けられた枠部94に、支持ブラケット95を介して横軸芯周りで揺動自在に且つ捻りバネ96により下方に揺動付勢する状態でレーキ状の整地具93が支持されている。
この整地具93による整地作用領域は、上述したように平面視で伝動ケース81及び支持アーム83と重複する状態で配備されるが、この整地具93による整地作用領域は、図示しない補助車輪が装備された場合において、その補助車輪の通過跡を整地するように整地領域が設定されている。
【0058】
支持ブラケット95は、枠部94に取り付けるための取付け部95Aと、整地具93を揺動自在に枢支するための平面視コの字形の枢支部95Bとを備えて構成され、整地具93は、レーキ状の整地作用部93Aと、その整地作用部93Aに一体的に連なる取り付け用の縦板部93Bと、この縦板部93Bに対してネジ止め固定され、且つ、枢支部95Bに対して支軸97により揺動自在に枢支される平面視コの字形の連結部93Cとを備えて構成されている。
【0059】
そして、支軸97には捻りバネ96が外嵌され、捻りバネ96の一端が整地具93に接当作用し、捻りバネ96の他端側を係止保持できるように構成されている。つまり、捻りバネ96の他端部は枢支部95Bに形成された開口を通して外方に延出しているが、開口に形成されたバネ受け部98に係止保持されるように構成され、連結部93Cが、捻りバネ96の付勢力に抗して枢支部95Bに接当して整地具93が下方に自由揺動することが規制されている。
つまり、整地具93は、捻りバネ96の付勢力により下方に移動付勢される状態で、且つ、所定位置で位置保持される状態で支持されることになり、バネ受け部98に対する保持位置を変更することで、下方付勢力を3段階に変更調整することができる。
【0060】
又、整地作用部93Aは連結部93Cにネジ止めされて固定されるが、整地作用部93Aに設けられたネジ通過孔99が上下方向に長い長孔に形成され、ネジを緩めて整地作用部93Aを上下方向にスライドさせて相対位置を変更できるように構成され、前記所定位置を上下に変更調整することができるようになっている。
従って、圃場の状況に応じて整地具93の上下位置並びに下方付勢力を変更調整することが可能な構成となっており、上記したような整地具93の位置調整のための位置調整機構K2が整地具93用の位置調整手段に対応する。
【0061】
次に、整地装置53の駆動構造について説明する。
図4に示すように、伝動ケース6に備えられた入力軸32に接続された伝動軸75が、ボス部材64及び伝動ケース81の内部に配置されている。伝動ケース81の内部において、伝動軸75にスプロケット78が相対回転自在に外嵌され、駆動軸61にスプロケット79が固定されて、スプロケット78,79に亘って伝動チェーン80が巻回されており、伝動軸75とスプロケット78との間にトルクリミッター77が備えられている。
【0062】
図1及び図4に示すように、エンジン49の動力が植付クラッチ87及びPTO軸22を介して、入力軸28、伝動チェーン30、伝動軸23及び入力軸32に伝達されると、入力軸32の動力が伝動軸75、トルクリミッター77及び伝動チェーン80を介して駆動軸61に伝達されて、駆動軸61及び整地用回転体62A,62Bが図2の紙面反時計方向に回転駆動される。
【0063】
この場合、駆動軸61及び整地用回転体62A,62Bが、機体の走行速度よりも高速で回転駆動される(右及び左の後輪2の外周部の周速度よりも整地用回転体62A,62Bの外周部の周速度が高速になるように回転駆動される)。これにより、植付アーム8の前方の田面Gが駆動軸61及び整地用回転体62A,62Bによって整地(代掻き)されるのであり、駆動軸61及び整地用回転体62A,62Bから後方の苗植付装置5への泥の飛散が、泥除けカバー66によって防止される。
【0064】
電動モータ89,91により植付及び施肥クラッチ87,90を伝動及び遮断状態に操作することによって、苗植付装置5及び繰り出し部13の作動及び停止を行うのと同時に、整地装置53の作動及び停止を行う。駆動軸61や整地用回転体62A,62Bに石等の異物が噛み込まれるなどして、駆動軸61及び整地用回転体62A,62Bに大きな負荷が発生すると、トルクリミッター77により駆動軸61及び整地用回転体62A,62Bへの動力が遮断されて、駆動軸61及び整地用回転体62A,62Bが停止する。
【0065】
図3及び図5に示すように、小径の整地用回転体62Bと進行方向に向かって左側に位置する大径の整地用回転体62Aとの間には、整地装置53を苗植付装置5に対して昇降操作自在な昇降操作機構K1(整地装置用の位置調節手段の一例)が備えられている。
【0066】
次に、昇降操作機構K1について説明する。
図5に示すように、メインフレーム18に支持フレーム52が固定され、支持フレーム52の横軸芯P3周りに扇型の昇降ギヤ54が上下に揺動自在に支持されており、ピニオンギヤ55aを備えたギヤ機構55及びギヤ機構55を駆動する整地高さ調整手段としての電動モータ56が支持フレーム52に固定されている。
小径の整地用回転体62Bと進行方向に向かって左側に位置する大径の整地用回転体62Aとの間において、ボス部材57がベアリング(図示せず)により相対回転自在に駆動軸61に外嵌されている。そして、ギヤ機構55のピニオンギヤ55aが昇降ギヤ54に咬合しており、昇降ギヤ54とボス部材57とに亘って連結部材58が接続され、電動モータ56によりピニオンギヤ55aを回転駆動することで、連結部材58が昇降操作されて、整地装置53が昇降操作されるように構成されている。
【0067】
つまり、電動モータ56によりギヤ機構55のピニオンギヤ55aを正逆に回転駆動して、昇降ギヤ54を横軸芯P3周りに上下に揺動駆動することにより、整地装置53を苗植付装置5に対して昇降駆動することができるように構成されている。
【0068】
図19に示すように、小径の整地用回転体62Bと左右両側に位置する大径の整地用回転体62A夫々との間には、泥水通過用の隙間S1が形成されており、機体横幅方向外方側に泥水が押し流されることがなく、この泥水通過用の隙間S1を通してセンターフロート9の左右両側に向けて前後方向に案内することができる。
【0069】
図12に示すように苗植付装置5が作業位置に位置している状態において、小径の整地用回転体62B及び大径の整地用回転体62Aの夫々が田面Gの上方に位置する退避位置A3及び田面Gに接地する作業位置A4の範囲において、電動モータ56により整地装置53を昇降駆動することができる。
苗植付装置5が大きく上方に揺動した非作業位置に位置していると、整地装置53が作業位置A4に下降駆動されても、整地装置53は田面Gに接地しない。
【0070】
因みに、左右両側において、ブラケット65と支持部材26とに亘ってコイルバネ59が接続されており、コイルバネ59の付勢力により整地装置53が上昇側に付勢されている。
【0071】
図5及び図12に示すように、整地高さ検出器74が横軸芯P3に位置するように支持フレーム52に固定されて、整地高さ検出器74と昇降ギヤ54とが接続されており、整地高さ検出器74の検出値が制御装置40に入力されている。これにより、整地高さ検出器74によって、支持フレーム52に対する昇降ギヤ54の角度を検出することにより、苗植付装置5に対する整地装置53の高さが検出される。
【0072】
又、図12に示すように、人為的に操作可能なダイヤル式の整地高さ設定器84が備えられて、整地高さ設定器84の操作位置が制御装置40に入力されており、後述するように、整地高さ設定器84を操作することにより整地目標高さB3(整地深さ)を任意に設定することができる。
【0073】
図5に示すように、伝動ケース6の下部の横軸芯P4周りに支持軸41が回転自在に支持されて、支持軸41に固定された支持アーム41aが後方に延出されており、支持アーム41aの後端の横軸芯P5周りに、センターフロート9及びサイドフロート11の後部が上下に揺動自在に支持されている。図3及び図7に示すように、人為的に操作可能な作業深さ設定手段としての植付設定高さレバー42が支持軸41に固定されて前方上方に延出されており、メインフレーム18に固定されたレバーガイド43に、植付設定高さレバー42が挿入されている。
【0074】
植付設定高さレバー42により支持軸41及び支持アーム41aを回動操作し、植付設定高さレバー42をレバーガイド43に係合させることにより、横軸芯P5(センターフロート9及びサイドフロート11の揺動支点)の位置を上下に変更することによって、苗植付装置の田面に対する高さ、すなわち、植付アーム8による苗植付け深さを変更することができる。
【0075】
図12に示すように、支持軸41の角度を検出するポテンショメータ式の植付深さ検出器44がメインフレーム18に固定されて、植付深さ検出器44の検出値が制御装置40に入力されている。植付深さ検出器44により支持軸41の角度を検出することによって、横軸芯P5(センターフロート9及びサイドフロート11の揺動支点)の位置を検出することができるのであり、前述のように、植付設定高さレバー42により設定高さA1(設定深さ)を設定した場合、植付深さ検出器44の検出値により設定高さA1(設定深さ)が制御装置40に認識される。
【0076】
制御装置40はマイクロコンピュータを備えて構成され、この制御装置40は、センターフロート9の接地圧変動に伴う上下動に基づいて苗植付装置5の田面Gに対する高さを設定高さA1(設定深さ)に維持するように昇降シリンダ4を制御する昇降制御、苗植付装置5の左右傾斜角を設定角に維持するローリング制御、及び、昇降操作用の電動モータ56の作動を制御する整地制御の各種の制御を実行するように構成されている。つまり、制御装置40を利用して、昇降制御手段100、ローリング制御手段101、整地制御手段102が構成されている。
【0077】
次に、昇降制御を実行するための構成について説明する。
図7に示すように、小径の整地用回転体62Bと進行方向に向かって右側に位置する大径の整地用回転体62Aとの間の隙間S2に、センターフロート9の接地圧変動に伴って変位する上下高さ位置を検出するためのフロート高さ検出機構K3が備えられている。
【0078】
図19に示すように、小径の整地用回転体62Bを、その機体横幅方向の中心位置CL2がセンターフロート9の機体横幅方向の中心位置CL1に対して進行方向に向かって機体横幅方向一方側(図19では左側)に位置ずれする状態で配備してあり、そのようにセンターフロート9の機体横幅方向の中心位置CL1に対して小径の整地用回転体62Bの機体横幅方向の中心位置CL2を左側にオフセットすることにより、機体横幅方向の中心位置に近づく状態で設けられる前記隙間S2を有効利用して、フロート高さ検出機構K3が設けられている。
【0079】
このように前記隙間S2を有効利用してフロート高さ検出機構K3が設けられることから、フロート高さ検出機構K3とセンターフロート9とを近距離に配備させた状態でレイアウトできるものとなり、フロート高さ検出機構K3による検出精度を高めることができるとともに、センシング時間の遅れを少なくできる。又、センサフロートとして機能するセンターフロート9が最も敏感で重要な機体中心位置には小径の整地用回転体62Bを配置するので、整地することにより検出精度を高めることができる。
【0080】
前記フロート高さ検出機構K3は、図7に示すように、ブラケット67にポテンショメータ式のフロート高さ検出器68が固定され、フロート高さ検出器68の操作軸に一体回動自在に且つその操作軸の軸芯周りで天秤揺動自在に検出アーム68aが取り付けられ、この検出アーム68aの一端部とセンターフロート9の前部とに亘って押し引きロッド69が連動連結され、センターフロート9の上下動をフロート高さ検出器68により検出できるように構成されている。検出アーム68aの他端部には押し引きロッド69を下方に付勢するコイルバネ86が備えられ、コイルバネ86によりセンターフロート9の前部が下方に付勢されている。
【0081】
そして、図12に示すように、フロート高さ検出器68の検出値C1が制御装置40に入力され、人為的に操作可能なダイヤル式の感度設定器70が備えられ、この感度設定器70の操作位置が制御装置40に入力されている。
【0082】
次に、昇降制御手段100の作動について図13に基づいて説明する。
先ず、苗植付装置5が作業位置に位置している状態において、植付深さ検出器44の検出値により設定高さA1(設定深さ)を検出し(ステップS1)、設定高さA1(設定深さ)に対応する昇降目標値B1を設定する(ステップS2)。
【0083】
この昇降目標値B1を感度設定器70により変更することができる。すなわち、感度設定器70を敏感側及び鈍感側の中央の中立位置Nに操作していると、昇降目標値B1に変更はないが、感度設定器70を中立位置Nから鈍感側に操作すると、昇降目標値B1が感度設定器70の操作位置に対応して高い側に変更され、感度設定器70を中立位置Nから敏感側に操作すると、昇降目標値B1が感度設定器70の操作位置に対応して少し低側に変更される(ステップS3〜S5)。
【0084】
このことにより、感度設定器70を中立位置Nから敏感側に操作すると、フロート高さ検出器68の検出値C1が昇降目標値B1と同じ高さになったときにセンターフロート9の底面が少し前下がり姿勢となり、センターフロート9が田面Gに敏感に追従するようになるので、昇降シリンダ4による苗植付装置5の昇降駆動が敏感なものに設定される。
又、感度設定器70を中立位置Nから鈍感側に操作すると、フロート高さ検出器68の検出値C1が昇降目標値B1と同じ高さになったときにセンターフロート9の底面が少し前上がり姿勢となり、センターフロート9の田面Gへの接地面積が小さくなって、センターフロート9が田面Gに鈍感に追従するようになるので、昇降シリンダ4による苗植付装置5の昇降駆動が鈍感なものに設定される。
【0085】
センターフロート9が田面Gに接地追従するのに対して、苗植付装置5が上下動すると、これに伴って田面G(センターフロート9)から苗植付装置5までの高さ(植付アーム8による苗の植付深さ)が変化しようとして、センターフロート9の前部側が上下揺動して押し引きロッド69によりその上下揺動量がフロート高さ検出器68に伝えられる。
そこで、田面G(センターフロート9)から苗植付装置5までの高さ(植付アーム8による苗の植付深さ)をフロート高さ検出器68の検出値により検出し(ステップS6)、昇降目標値B1とフロート高さ検出器68の検出値C1との差E1を求める(ステップS7)。
【0086】
フロート高さ検出器68の検出値C1が昇降目標値B1よりも高い場合(ステップS8)、昇降シリンダ4に作動油を給排操作する制御弁71を操作して、昇降シリンダ4により苗植付装置5を下降駆動させる(ステップS9)。
フロート高さ検出器68の検出値C1が昇降目標値B1と同じ高さの場合(ステップS8)、制御弁71を操作して、苗植付装置5の昇降駆動を停止する(ステップS10)。
フロート高さ検出器68の検出値C1が昇降目標値B1よりも低い場合(ステップS8)、制御弁71を操作して、昇降シリンダ4により苗植付装置5を上昇駆動させる(ステップS11)。
つまり、フロート高さ検出器68の検出値C1が昇降目標値B1となるように、昇降シリンダ4により苗植付装置5が昇降駆動されて、苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さが設定深さに維持される。
【0087】
上記したような昇降制御を実行することで、植付設定高さレバー42により横軸芯P5(センターフロート9及びサイドフロート11の揺動支点)の位置を変更すると、新たな設定高さA1(設定深さ)が設定されることから、これに伴い新たな設定高さA1(設定深さ)に対応する新たな昇降目標値B1が設定されるのであり、これにより苗植付装置5(植付アーム8)による苗の植付深さを変更することができる。
【0088】
次に、ローリング制御を実行するための構成について説明する。
図3に示すように、フィードケース17がリンク機構3の後部下部の前後軸芯P1周りにローリング自在に支持されている(苗植付装置5がリンク機構3の後部下部の前後軸芯P1周りにローリング自在に支持されている)。図3及び図7に示すように、フィードケース17に傾斜センサー48が固定されて、水平面(田面G)に対する苗植付装置5の左右方向の傾斜角度が傾斜センサー48によって検出されており、傾斜センサー48の検出値C2が制御装置40に入力されている。
【0089】
図3に示すように、リンク機構3の後部上部にローリング機構46が備えられており、ローリング機構46は、左右方向に押し引き操作される一対のワイヤ46a、ワイヤ46aを押し引き駆動するギヤ機構(図示せず)及びギア機構を操作する電動モータ46bを備えて構成されている。
ガイドレール27の右及び左の端部にブラケット27aが固定されて、ローリング機構46に固定されたアーム46cとガイドレール27のブラケット27aとに亘って、バランスバネ47が接続されており、ローリング機構46のワイヤ46aと横支持部材50の右及び左側部とに亘ってバネ39が接続されている。苗のせ台10が往復横送り駆動されるのに伴って、右又は左のバランスバネ47が引き延ばされるのであり、苗のせ台10が右(左)に横送り駆動されると、右(左)のバランスバネ47が引き延ばされて、右(左)のバランスバネ47の付勢力により苗植付装置5の右(左)への傾斜が抑えられる。
【0090】
次に、ローリング制御手段100の作動について図14に基づいて説明する。
苗植付装置5が作業位置に位置している状態において、水平面(田面G)に対する苗植付装置5の左右方向の傾斜角度が傾斜センサー48により検出し(ステップS12)、水平面と傾斜センサー48の検出値C2との差E2を求める(ステップS13)。
【0091】
苗植付装置5が水平面から右傾斜側に変位していると(ステップS14)、ローリング機構46の電動モータ46bを作動操作し、ローリング機構46のワイヤ46aを押し引き駆動して苗植付装置5を前後軸芯P1周りで左にローリング駆動させる(ステップS15)。
【0092】
苗植付装置5が水平面から左傾斜側に変位していると(ステップS14)、ローリング機構46の電動モータ46bを作動操作し、ローリング機構46のワイヤ46aを押し引き駆動して苗植付装置5を前後軸芯P1周りに右にローリング駆動させる(ステップS16)。苗植付装置5が水平面と同じ傾斜角度であると、苗植付装置5のローリング駆動を停止する(ステップS17)。このようにして、苗植付装置5が水平に維持される(田面Gと左右方向で平行に維持される)。
【0093】
次に、整地制御手段102について説明する。
整地制御手段102は、小径の整地用回転体62Bの下端部t1をセンターフロート9の底面位置t2よりも上方に位置させるように電動モータ56の作動を制御する第1制御状態、小径の整地用回転体62Bの下端部t1をセンターフロート9の底面位置t2と同じ高さに位置させるように電動モータ56の作動を制御する第2制御状態、小径の整地用回転体62Bの下端部t1をセンターフロート9の底面位置t2よりも下方に位置させるように電動モータ56の作動を制御する第3制御状態の夫々に切り換え可能に構成されている。
【0094】
又、整地制御手段102は、小径の整地用回転体62Bの下端部t1をセンターフロート9の底面位置t2よりも上方に位置させ、且つ、大径の整地用回転体62Aの下端部t3をサイドフロート11の底面位置t4よりも上方に位置させる前記退避位置A3に位置させるように電動モータ56の作動を制御する退避用制御状態に切り換え可能に構成されている。
【0095】
そして、整地制御手段102が前記第1制御状態、前記第2制御状態及び前記第3制御状態のいずれに切り換えられていても、大径の整地用回転体62Aの下端部t3がサイドフロート11の底面位置t4よりも下方に位置するように構成されている。
【0096】
説明を加えると、図17に示すように、整地高さ設定器84を「標準」位置に操作すると、標準状態に対応する整地目標高さB3が設定され、整地高さ設定器84を「標準」位置よりも左側に操作すると、標準状態に対応する整地目標高さ3よりも浅い整地目標高さB3が設定され、「標準」位置よりも右側に操作すると、標準状態に対応する整地目標高さB3よりも深い整地目標高さB3が設定されるように構成されている。
【0097】
前記標準状態というのは、図17に示すように、小径の整地用回転体62Bの下端部t1がセンターフロート9の底面位置t2と同じ高さに位置する状態である。整地高さ設定器84を「標準」位置よりも左側に操作した状態は、小径の整地用回転体62Bの下端部t1がセンターフロート9の底面位置t2よりも上方に位置する状態(図16参照)である。整地高さ設定器84を「標準」位置よりも右側に操作した状態というのは、小径の整地用回転体62Bの下端部t1がセンターフロート9の底面位置t2よりも下方に位置する状態(図18参照)である。ここで、センターフロート9の底面位置t2とは、センターフロート9の横向き軸芯P5(揺動支点位置)の直下に対応する底面の位置である。
【0098】
図15に基づいて整地制御手段102の作動について説明する。但し、この整地制御手段102の作動は、苗植付装置5が作業位置に位置し、整地装置53が作業位置A4に位置して、昇降制御手段100及びローリング制御手段101が作動した状態において実行されることになる。
【0099】
先ず、整地高さ設定器84が「標準」位置に設定されているか、それ以外の位置であるかを判定し(ステップS51)、「標準」位置に設定されていれば、植付深さ検出器44の検出値により設定高さA1(設定深さ)を求め(ステップS52)、小径の整地用回転体62Bの下端部t1とセンターフロート9の底面位置t2とが同じ高さになるための整地目標高さB3を設定する(ステップS53)。
【0100】
説明を加えると、図17に示すように、センターフロート9の揺動支点位置に相当する横向き軸芯P5の直下に対応する底面位置t2と小径の整地用回転体62Bの下端部t1とが同じ高さになるように、センターフロート9が水平姿勢になるときの設定高さA1から小径の整地用回転体62Bの下端部t1とセンターフロート9の底面位置t2とが同じ高さになるための整地目標高さB3を設定するのである。さらに説明すると、小径の整地用回転体62Bの下端部t1とセンターフロート9の底面位置t2とが同じ高さになるときの、設定高さA1と整地目標高さB3との関係式あるいはマップデータが予め求められて記憶されており、その関係式やマップデータと設定高さA1とから整地目標高さB3を設定することができる。
【0101】
整地高さ設定器84が「標準」位置以外の位置である場合、例えば、整地高さ設定器84が「標準」位置よりも右側に操作された場合(深い側に操作された場合)には、植付深さ検出器44の検出値により設定高さA1(設定深さ)を求め(ステップS54,55)、小径の整地用回転体62Bの下端部t1がセンターフロート9の底面位置t2よりも下方になるための整地目標高さB3を設定する(ステップS56)。
【0102】
説明を加えると、図18に示すように、小径の整地用回転体62Bの下端部t1が、センターフロート9の横軸芯P5の直下に対応する底面位置t2よりも下方に位置し、且つ、整地高さ設定器84の回動操作量が大きいほど下方側に位置するように、センターフロート9が水平姿勢になるときの設定高さA1及び整地高さ設定器84の回動操作量に基づいて整地目標高さB3を設定するのである。この場合にも、上述したようなマップデータ等を用いて整地目標高さB3を設定することになる。
【0103】
整地高さ設定器84が「標準」位置よりも左側に操作された場合(深い側に操作された場合)には、植付深さ検出器44の検出値により設定高さA1(設定深さ)を求め(ステップS57)、小径の整地用回転体62Bの下端部t1がセンターフロート9の底面位置t2よりも上方になるための整地目標高さB3を設定する(ステップS58)。
【0104】
説明を加えると、図16に示すように、小径の整地用回転体62Bの下端部t1が、センターフロート9の横軸芯P5の直下に対応する底面位置t2よりも上方に位置し、且つ、整地高さ設定器84の回動操作量が大きいほど上方側に位置するように、センターフロート9が水平姿勢になるときの設定高さA1及び整地高さ設定器84の回動操作量に基づいて整地目標高さB3を設定するのである。この場合にも、上述したようなマップデータ等を用いて整地目標高さB3を設定することになる。
【0105】
又、図16〜図18に示すように、整地高さ設定器84が「標準」位置よりも左側に最大操作された場合であっても、大径の整地用回転体62Aの下端部t3がサイドフロート11の底面位置t4よりも下方に位置するように調節範囲が設定されている。その結果、整地高さ設定器84が「標準」位置に設定されている場合、「標準」位置よりも左側に操作されている場合、「標準」位置よりも右側に操作されている場合のいずれの場合であっても、大径の整地用回転体62Aの下端部t3がサイドフロート11の底面位置t4よりも下方に位置するように構成されている。
ここで、サイドフロート11の底面位置t4とは、サイドフロート11の横向き軸芯P5(揺動支点位置)の直下に対応する底面の位置である。
【0106】
感度設定器70が中立位置Nに操作されていると、整地高さ設定器84によって設定された整地目標高さB3を維持するが、感度設定器70が鈍感側に操作されると、整地高さ設定器84によって設定された整地目標高さB3を少し低側に変更する(整地装置53の整地深さが深くなる状態)(ステップS59,S60)。又、感度設定器70が敏感側に操作されると、整地高さ設定器84によって設定された整地目標高さB3を少し高側に変更する(整地装置53の整地深さが浅くなる状態)(ステップS61)。
【0107】
そして、整地高さ検出器74の検出値により苗植付装置5に対する整地装置53の高さを検出し、整地目標高さB3と整地高さ検出器74の検出値C3との差E3を求める(ステップS62,63)。
整地高さ検出器74の検出値C3が整地目標高さB3よりも高い場合には(ステップS64)、検出値C3が整地目標高さB3になるように電動モータ56を操作して整地装置53を下降駆動させる(ステップS65)。
整地高さ検出器74の検出値C3が整地目標高さB3と同じ高さの場合には(ステップS64)、整地装置53の昇降駆動を停止する(ステップS66)。
整地高さ検出器74の検出値C3が整地目標高さB3よりも低い場合には(ステップS64)、検出値C3が整地目標高さB3になるように電動モータ56を操作して整地装置53を上昇駆動させる(ステップS67)。
【0108】
つまり、整地高さ検出器74の検出値C3が整地目標高さB3となるように、電動モータ56が駆動されて整地装置53の整地深さが整地目標高さB3に維持される。
そして、整地高さ設定器84が「標準」位置よりも左側に操作された状態が第1制御状態に対応し、整地高さ設定器84が「標準」位置に設定されている状態が第2制御状態に対応し、整地高さ設定器84が「標準」位置よりも右側に操作された状態が第3制御状態に対応する。
【0109】
上記したような整地制御を実行することで、植付設定高さレバー42により横軸芯P5(センターフロート9及びサイドフロート11の揺動支点)の位置を変更すると、新たな設定高さA1に対応する新たな整地目標高さB3が設定されるのであり、これにより整地装置53の整地深さを変更することができる。
【0110】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、前記整地制御手段102が前記第1制御状態、前記第2制御状態及び前記第3制御状態のいずれに切り換えられていても、大径の整地用回転体62Aの下端部t3がサイドフロート11の底面位置t4よりも下方に位置する構成としたが、このような構成に代えて、大径の整地用回転体62Aの下端部t3がサイドフロート11の底面位置t4よりも上方に位置する状態になるものでもよい。
【0111】
(2)上記実施形態では、前記整地制御手段102が、小径の整地用回転体62Bの下端部t1をセンターフロート9の底面位置t2よりも上方に位置させ、且つ、大径の整地用回転体62Aの下端部t3をサイドフロート11の底面位置t4よりも上方に位置する退避位置A3にするように電動モータ56を操作して整地装置53を上昇駆動させる退避用制御状態に切り換え可能に構成したが、このような退避用制御状態への切り換えを行なわないものでもよい。
【0112】
(3)上記実施形態では、センターフロート9の機体前方側に対応する領域にのみ小径の整地用回転体62Bを備える構成としたが、センターフロート9の機体前方側に対応する領域の他、機体横幅方向に沿う整地作業領域のうちで左右両側端部の領域においても、小径の整地用回転体62Bを備える構成としてもよい。
このように構成することで、機体横幅方向外方側への泥押しを少なくして既植苗を押し倒す等の不利を回避し易いものとなる。
【0113】
(4)上記実施形態では、整地装置53が左右両側のコイルバネ59により上昇側に付勢される構成としたが、このような構成に代えて、図20に示すように、小径の整地用回転体62Bと進行方向に向かって右側に位置する大径の整地用回転体62Aとの間にコイルバネ59を設ける構成としてもよい。
つまり、ボス部材59Aがベアリング(図示せず)により相対回転自在に駆動軸61に外嵌され、このボス部材59Aとメインフレーム18に固定のブラケット59Bとに亘ってコイルバネ59が張設される構成である。この構成では、小径の整地用回転体62Bの機体横幅方向の中心から左右両側に略均等に離間した箇所に、昇降操作機構K1とコイルバネ59とが配備されているので、整地装置53全体の左右の重量バランスを良好に維持しながら、コイルバネ59の付勢力により整地装置53の荷重の一部を負担することにより、電動モータ56による駆動負荷(整地装置53の荷重負荷)を軽減することができる。
【0114】
(5)上記実施形態では、整地制御手段102による制御として、感度設定器70の設定値に応じて整地目標高さB3を変更して、整地高さ検出器74の検出値C3がその変更した整地目標高さB3になるように電動モータ56を作動させる処理(ステップ59〜67)を実行するように構成するものを示したが、このような処理を実行しない構成としてもよい。
【0115】
(6)上記実施形態では、作業装置として苗植付装置5を示したが、ペースト状の肥料を田面に供給する施肥装置、直播装置、薬剤散布装置及び米ぬか散布装置等を備えてもよい。
【0116】
(7)上記実施形態では、整地装置53を作業装置(苗植付装置5)に支持する構成としたが、整地装置53を作業装置(苗植付装置5)に支持するのではなく、機体の後部から延出されたリンク機構(図示せず)に整地装置53を支持するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、乗用型田植機等の走行機体の後部に駆動手段により昇降自在に作業装置が備えられた水田作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0118】
4 駆動手段
5 作業装置
9 センサフロート
11 整地フロート
42 作業深さ設定手段
53 整地装置
62A 大径の整地用回転体
62B 小径の整地用回転体
56 整地高さ調整手段
100 昇降制御手段
102 整地制御手段
A 走行機体
G 田面
P5 横向き軸芯
t1,t3 下端部
t2,t4 底面位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に駆動手段により昇降自在に作業装置が備えられるとともに、前記走行機体と前記作業装置との間に機体横幅方向に沿って延び且つ横軸芯周りで駆動回転される回転式の整地装置が備えられ、
前記作業装置に後部の横向き軸芯周りで上下揺動自在にセンサフロートが支持され、
前記センサフロートの接地追従に伴う上下動に基づいて前記作業装置の田面に対する高さが設定値になるように前記駆動手段を制御する昇降制御手段と、前記整地装置の田面に対する高さを変更調整自在な整地高さ調整手段と、前記整地高さ調整手段の作動を制御する整地制御手段とが備えられている水田作業機であって、
前記整地装置が、外径寸法が互いに異なる大径の整地用回転体と小径の整地用回転体とを備え、且つ、機体横幅方向に沿う整地作業領域のうちで前記センサフロートの機体前方側に対応する領域に前記小径の整地用回転体を備えて構成され、
前記整地制御手段が、
前記小径の整地用回転体の下端部を前記センサフロートの底面位置よりも上方に位置させるように前記整地高さ調整手段の作動を制御する第1制御状態、
前記小径の整地用回転体の下端部を前記センサフロートの底面位置と同じ高さに位置させるように前記整地高さ調整手段の作動を制御する第2制御状態、
前記小径の整地用回転体の下端部を前記センサフロートの底面位置よりも下方に位置させるように前記整地高さ調整手段の作動を制御する第3制御状態の夫々に切り換え可能に構成されている水田作業機。
【請求項2】
前記作業装置における前記大径の整地用回転体の後方側に整地フロートが備えられ、
前記整地高さ調整手段が、前記第1制御状態、前記第2制御状態、及び、前記第3制御状態のいずれにおいても、前記大径の整地用回転体の下端部を前記整地フロートの底面位置よりも下方に位置させるように構成されている請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記整地制御手段が、前記小径の整地用回転体の下端部を前記センサフロートの底面位置よりも上方に位置させ、且つ、前記大径の整地用回転体の下端部を前記整地フロートの底面位置よりも上方に位置させるように前記整地高さ調整手段の作動を制御する退避用制御状態に切り換え可能に構成されている請求項1又は2記載の水田作業機。
【請求項4】
前記整地装置が前記作業装置に対して昇降自在に支持され、
前記作業装置に対する前記センサフロートの揺動支点位置を上下に位置変更する作業深さ設定手段が備えられ、
前記整地制御手段が、
前記第1制御状態、前記第2制御状態、及び、前記第3制御状態の夫々において、前記整地装置の前記作業装置に対する高さが予め設定した目標値になるように前記整地高さ調整手段の作動を制御するように構成され、且つ、前記作業深さ設定手段により前記センサフロートの揺動支点位置が上下に変更されると、前記小径の整地用回転体の下端部と前記センサフロートの底面位置とが前記各制御状態に対応する位置関係になるように、前記整地装置の前記作業装置に対する高さの目標値を変更調整するように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の水田作業機。
【請求項5】
前記センサフロートの底面位置が前記センサフロートの揺動支点位置の直下に対応する底面の位置である請求項4記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−55183(P2012−55183A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199075(P2010−199075)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】