説明

水田作業機

【課題】水田作業機において操作レバーを所定角度に保持する機構を適切に備える。
【解決手段】操縦ハンドル45の下側に備えられた走行用の操作レバー35の操作を回転として伝達する操作ロッド37を、操作レバー35からハンドルポスト32に沿ってハンドルポスト32の下部に延出し、操作ロッド37の下部と走行用の被操作部69とを連係機構55により接続して、操作レバー35により被操作部69を操作可能に構成する。操作ロッド37を保持することにより操作レバー35を所定角度に保持可能な保持機構68を、操作ロッド37の下部に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乗用型田植機や乗用型直播機等の水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
水田作業機の一例である乗用型田植機では、特許文献1に開示されているように、前輪の操向操作を行う操縦ハンドルをハンドルポストに回転自在に備え、変速レバー及びアクセルレバーを操縦ハンドルの回転軸芯と平行な軸芯周りに操作自在に操縦ハンドルの下側に備えたものがある。これにより、操縦ハンドルの近傍に変速レバー及びアクセルレバーが備えられることになって、変速レバー及びアクセルレバーの操作性が良いものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−276779号公報(図1,2,6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、変速レバーやアクセルレバー等の操作レバーを備えた場合に、走行時の振動等により操作レバーの位置が変化しないように、操作レバーを所定角度に保持する機構が必要になる。
本発明は、水田作業機において操作レバーを所定角度に保持する機構を適切に備えることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、水田作業機において次のように構成することにある。
前輪の操向操作を行う操縦ハンドルを回転自在に支持するハンドルポストを備え、前記操縦ハンドルの回転軸芯と平行な軸芯周りに操作自在に前記操縦ハンドルの下側に備えられた走行用の操作レバーを備えて、
前記操作レバーの操作を回転として伝達する操作ロッドを、前記操作レバーから前記ハンドルポストに沿って前記ハンドルポストの下部に延出し、前記操作ロッドの下部と走行用の被操作部とを連係機構により接続して、前記操作レバーにより前記被操作部を操作可能に構成し、
前記操作ロッドを保持することにより前記操作レバーを所定角度に保持可能な保持機構を、前記操作ロッドの下部に備えてある。
【0006】
(作用及び効果)
本発明の第1特徴によると、操作レバーの操作が操作ロッドの回転として操作レバーから操作ロッドの下部に伝達され、操作ロッドの下部から向きを変えて連係機構により被操作部に伝達されて、被操作部が操作されるのであり、保持機構により操作ロッドを保持することにより、操作ロッドに接続される操作レバーを所定角度に保持することができる。
【0007】
本発明の第1特徴によると、操作ロッドが操作レバーからハンドルポストに沿ってハンドルポストの下部に延出されているので、操作ロッドの下部に備えられる保持機構もハンドルポストの下部に備えられるのであり、空間的に比較的余裕のあるハンドルポストの下部に保持機構を、構造的な無理を施すことなく配置することができるようになって、保持機構の作動の信頼性を向上させることができた。
【0008】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記操作ロッドの下部に備えられた操作アームに前記連係機構を接続して、前記操作ロッドの回転による前記操作アームの揺動により、前記連係機構が押し引き操作されて、前記被操作部が操作されるように構成し、
前記操作アームにバネによる摩擦力を与えることにより前記操作レバーを所定角度に保持可能に、前記保持機構を構成してある。
【0009】
(作用及び効果)
本発明の第2特徴によると、操作レバーの操作により操作ロッドが回転すれば、操作ロッドの下部の操作アームは操作ロッドを中心として揺動する状態となり、円弧軌跡を描く状態となる。
これにより、保持機構においてバネにより操作ロッドの操作アームに摩擦力を与える場合、操作ロッドの操作アームの円弧軌跡に沿ってバネ力を作用させるように構成することによって、操作ロッドの操作アームを安定して保持することができるのであり、操作レバーを所定角度に安定して保持することができるようになって、走行時の振動等により操作レバー及び被操作部の位置が変化する状態を少なくすることができた。
【0010】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第2特徴の水田作業機において次のように構成することにある。
前記連係機構をワイヤにより構成し、前記被操作部を前記ハンドルポストの後方に備えられたエンジンの上部のアクセル操作部として、
前記ワイヤを前記操作アームから後方に延出し、前記エンジンの下側から前記エンジンの後側を通して、前記アクセル操作部に接続してある。
【0011】
(作用及び効果)
ハンドルポストの後方にエンジンを備え、エンジンの上部に走行用の被操作部としてのアクセル操作部を備えた場合、本発明の第3特徴によると、ハンドルポストの下部(操作ロッドの操作アーム)から連係機構としてのワイヤが後方に延出され、エンジンの下側及び後側を比較的大きな円弧を描きながら上方に延出されて、エンジンのアクセル操作部に接続される。
【0012】
これにより、ワイヤがエンジンの下側を通ることによりエンジンの上部の各部に干渉することがなく、ワイヤを特に小さな半径で屈曲させることなくエンジンのアクセル操作部に無理なく接続することができるので、操作レバーによりワイヤの操作が支障なく行え、操作レバーによりエンジンのアクセル操作部の操作が支障なく行えるようになって、操作レバーによるエンジンのアクセル操作部の操作の安定性及び確実性を向上させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】乗用型田植機の全体左側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】エンジン、ミッションケース、前輪支持ケース及び後輪支持ケースの付近の全体平面図である。
【図4】保持機構及び操作アームからアクセル操作部へのワイヤの配置を示す平面図である。
【図5】保持機構及び操作アームからアクセル操作部へのワイヤの配置を示す右側面図である。
【図6】保持機構及び操作アームの付近の右側面図である。
【図7】保持機構及び操作アームの付近の平面図である。
【図8】運転席及び昇降レバーの付近の正面図である。
【図9】発明の実施の第3別形態の運転席の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1]
図1及び図2に示すように、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2により機体が支持され、機体にステップ25及び運転席16が支持され、機体の後部にリンク機構3及びリンク機構3を昇降駆動する油圧シリンダ11が備えられており、リンク機構3に3条植型式の苗植付装置4が支持されて、水田作業機の一例である乗用型田植機が構成されている。
【0015】
図1及び図2に示すように、苗植付装置4は、植付ケース17及び支持ケース18、植付ケース17及び支持ケース18に回転駆動自在に支持されたクランク型式の3つの植付アーム19、左右に往復横送り駆動される苗のせ台20及びフロート21等を備えて、3条植型式に構成されている。
【0016】
図1及び図2に示すように、田面に接地追従するフロート21に対して苗植付装置4が上下動すると、この動作がワイヤ(図示せず)を介して制御弁(図示せず)に伝達され、制御弁から油圧シリンダ11に作動油が給排操作されて、田面(フロート21)から苗植付装置4までの高さが設定値に維持されるように、油圧シリンダ11により苗植付装置4が自動的に昇降するのであり、これにより植付アーム19による苗の植付深さが設定深さに維持される(昇降制御機能)。
【0017】
図1及び図2に示すように、運転席16の右横側に昇降レバー9が備えられており、昇降レバー9は上昇位置、中立位置、下降位置及び植付位置に操作自在に構成されている。昇降レバー9を上昇位置に操作すると、苗植付装置4に動力を伝達する植付クラッチ(図示せず)が遮断状態に操作され、前述の昇降制御機能が停止した状態で、油圧シリンダ11により苗植付装置4が上昇する。
【0018】
昇降レバー9を中立位置に操作すると、植付クラッチが遮断状態に操作され、昇降制御機能が停止した状態で、油圧シリンダ11による苗植付装置4の昇降が停止する。昇降レバー9を下降位置に操作すると、植付クラッチが遮断状態に操作され、昇降制御機能が停止した状態で、油圧シリンダ11により苗植付装置4が下降し、フロート21が田面に接地すると、前述の昇降制御機能が作動する。昇降レバー9を植付位置に操作すると、昇降制御機能が作動した状態において、植付クラッチが伝動状態に操作される。
【0019】
図8に示すように、運転席16の背もたれ部16bの右及び左の上部に開口部16cが形成されて、開口部16cの外周部が取っ手部16dとなっており、運転者が運転席16の取っ手部16dを持って乗降が行えるようにしている。
運転席16において座部16aと背もたれ部16bとの接続部分に、右及び左の凹部16eが形成されており、右の凹部16eが昇降レバー9の握り部9aの高さに位置している。これにより、運転席16に着座する運転者が昇降レバー9の握り部9aを持って前述のように昇降レバー9を操作する際に、運転席16の背もたれ部16bが運転者の右手の邪魔にならないようにしている。
【0020】
[2]
次に、エンジン22の付近の構造について説明する。
図1,3,5に示すように、ミッションケース5及び後輪支持ケース6が、一体的に構成されて機体の後部に配置されており、後輪支持ケース6に対してミッションケース5が斜め上方前方に位置している。右及び左の前輪1を左右に操向自在に支持する前輪支持ケース12が備えられており、前輪支持ケース12と後輪支持ケース6(ミッションケース5)とに亘って、支持フレーム13が連結されている。支持フレーム13は丸パイプ状に構成されて、機体の左右中央に位置しており、支持フレーム13の内部に伝動軸14が配置されている。
【0021】
図3,4,5に示すように、断面コ字状で機体左右方向の横フレーム15が支持フレーム13の中央部分に固定されて、側面視でアーチ状の右及び左の支持フレーム10が横フレーム15の右及び左側部と後輪支持ケース6の右及び左側部に亘って連結されている。右及び左の支持フレーム10の前部に運転席16が支持され、右及び左の支持フレーム10の後部に燃料タンク8が支持されている。
【0022】
図3,4,5に示すように、運転席16の下方にエンジン22及びミッションケース5が配置されて、エンジン22のクランクケース22aが防振ゴム23を介して横フレーム15の中間部に支持されている。エンジン22のクランクケース22aが前側で、エンジン22のシリンダ22bが後側に位置するように、エンジン22が後方に傾斜して配置されている。ミッションケース5がエンジン22の後方の下方に位置しており、ミッションケース5の上部が前側で、ミッションケース5の下部が後側に位置するように、ミッションケース5が前方に傾斜して配置されている。
【0023】
図3及び図4に示すように、エンジン22のシリンダ22bの上部及びミッションケース5の上部に、機体左右方向の支持板24が固定されており、右及び左の防振ゴム26a,26bが支持板24の間に取り付けられて、エンジン22のシリンダ22bが右及び左の防振ゴム26a,26bを介してミッションケース5の上部に支持されている。
【0024】
[3]
次に、エンジン22からミッションケース5への伝動構造について説明する。
図3及び図4に示すように、支持フレーム13及びエンジン22のクランクケース22aに対して、防振ゴム23が平面視で右横側に配置されており、エンジン22のクランクケース22aの左横部に出力用としてカム軸22cが出ている。ミッションケース5の左横側から入力軸5aが出ており、エンジン22のカム軸22cに固定されたプーリー27とミッションケース5の入力軸5aに固定されたプーリー28とに亘って、伝動ベルト29が巻回されている。エンジン22のクランクケース22aに支持アーム30が揺動自在に支持され、支持アーム30にテンションプーリー30aが支持されており、テンションプーリー30aが伝動ベルト29に押圧されるように、支持アーム30がバネ(図示せず)により付勢されている。
【0025】
以上の構造により、図3及び図4に示すように、エンジン22の動力が伝動ベルト29を介してミッションケース5に伝達され、ミッションケース5に内装されたギヤ変速装置(図示せず)、右の後輪2に動力を伝動及び遮断自在な右のサイドクラッチ53、左の後輪2に動力を伝動及び遮断自在な左のサイドクラッチ53を介して、右及び左の後輪2に伝達されるのであり、ミッションケース5のギヤ変速装置から分岐した動力が伝動軸14から前輪支持ケース12を介して、右及び左の前輪1に伝達される。ミッションケース5に伝達された動力がミッションケース5に内装された植付クラッチ及びPTO軸31(図1参照)を介して、苗植付装置4に伝達される。
【0026】
図3,4,5に示すように、支持フレーム13において前輪支持ケース12の少し後側の部分に支持ブラケット60が固定され、支持ブラケット60の機体左右方向の横軸芯P1周りに、ペダルアーム61が上下に揺動自在に支持されて前方に延出されており、ペダルアーム61の前部にペダル部61aが固定され、ペダルアーム61の前端に取っ手部61bが備えられている。ペダルアーム61に操作アーム62が固定されて、支持アーム30と操作アーム62とに亘って操作ロッド63が接続されており、ペダルアーム61を上方に付勢するバネ(図示せず)が備えられている。前車軸ケース12にブレーキ49が内装されており、ブレーキ49の操作アーム64と操作アーム62とに亘って操作ロッド65が接続されている。
【0027】
図2,3,5に示す状態は、ペダルアーム61を上方の戻し位置に操作している状態であり、支持アーム30及びテンションプーリー30aが伝動ベルト29に押圧操作され、エンジン22の動力が伝動ベルト29を介してミッションケース5に伝達されて、ブレーキ49が制動解除側に操作されている。
【0028】
図2,3,5に示すように、ペダルアーム61を下方の踏み位置に操作すると、操作ロッド63が押し操作されて、支持アーム30及びテンションプーリー30aが伝動ベルト29から離間操作され、エンジン22からミッションケース5への動力が遮断されて、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2、苗植付装置4が停止するのであり、これと同時に操作ロッド65が押し操作されてブレーキ49が制動側に操作される。ブレーキ49が制動側に操作されると、右及び左の前輪1に制動が掛かるのであり、伝動軸14を介して右及び左の後輪2に制動が掛かる。この場合、ペダルアーム61を下方の踏み位置に操作した状態で、保持レバー66をペダルアーム61に係合させることにより、ペダルアーム61を下方の踏み位置に操作した状態に保持することができる。
【0029】
[4]
次に、右及び左の前輪1の操向構造について説明する。
図3,5,6に示すように、前輪支持ケース12における機体左右中央の前部に、支持フレーム38が斜め前方上向きに固定され、支持フレーム38の斜めの縦軸芯P2周りに支持軸39が回転自在に支持されて、扇型のギヤ状の操向部材40が支持軸39の下部に連結されている。支持フレーム38は鋳鉄により一体的に形成されており、支持フレーム38がバランスウェイトとして機能している。右及び左の前輪支持部33から後向きにナックルアーム33aが延出され、操向部材40と右及び左の前輪支持部33のナックルアーム33aとに亘って、右及び左のタイロッド41が接続されている。
【0030】
図3に示すように、右(左)のサイドクラッチ53は、摩擦多板式に構成されて右(左)の後輪2に動力を伝動及び遮断自在に構成されており、バネにより伝動状態に付勢されている。右及び左のサイドクラッチ53を遮断状態に操作する右及び左の操作アーム48が、後輪支持ケース6の下部に揺動自在に備えられており、右及び左の操作アーム48に右及び左の操作ロッド42が接続されている。縦軸芯P2を中心とする一対の円弧状の長孔40aが操向部材40に開口されており、右及び左の操作ロッド42の前端部が操向部材40の長孔40aに挿入されている。
【0031】
図5,6,7に示すように、丸パイプ状のハンドルポスト32及び半円筒状の後カバー43が備えられ、支持板57にハンドルポスト32及び後カバー43の下部が連結されており、支持板57が支持フレーム38にボルト連結されている。レバーガイドを兼ねる支持板34がハンドルポスト32の上部と後カバー43の上部とに亘って連結されており、後カバー43の前部に半円筒状の着脱自在な前カバー47が取り付けられている。支持フレーム38及びハンドルポスト32の内部にステアリング操作軸44が回転自在に支持されて、ハンドルポスト32の上端においてステアリング操作軸44に操縦ハンドル45が連結されており、ステアリング操作軸44の下端に形成されたピニオンギヤ44aが、操向部材40のギヤ部に咬合している。これにより、操縦ハンドル45を操作することにより、操向部材40が縦軸芯P2周りに揺動操作されて、右及び左の前輪1が左右に操向操作される。
【0032】
図3に示す状態は、右及び左の前輪1を直進位置に操向操作している状態であり、右及び左のサイドクラッチ53が伝動状態に操作されて、右及び左の前輪1、右及び左の後輪2に動力が伝達されている。操縦ハンドル45により操向部材40を揺動操作して、右及び左の前輪1を直進位置から右及び左の設定角度の範囲で操向操作しても、操向部材40の長孔40aの融通により、右及び左の操作ロッド42は操作されず、右及び左のサイドクラッチ53は伝動状態に維持されている。
【0033】
図3に示すように、操縦ハンドル45により操向部材40を揺動操作して、右及び左の前輪1を右の設定角度を越えて右に操向操作すると、操向部材40により右の操作ロッド42が引き操作されて、右のサイドクラッチ53が伝動状態から遮断状態に操作される(右及び左の前輪1、左の後輪2には動力が伝達されている)。操縦ハンドル45により操向部材40を揺動操作して、右及び左の前輪1を左の設定角度を越えて左に操向操作すると、操向部材40により左の操作ロッド42が引き操作されて、左のサイドクラッチ53が伝動状態から遮断状態に操作される(右及び左の前輪1、右の後輪2には動力が伝達されている)。
【0034】
以上のように、右及び左の前輪1を右(左)の設定角度を越えて右(左)に操向操作すると、右及び左の前輪1、旋回外側の後輪2に動力が伝達された状態で、旋回中心側の後輪2が自由回転状態となる。これにより、旋回に伴って旋回中心側の後輪2がゆっくり回転する状態となるのであり、旋回中心側の後輪2によって田面が荒らされる状態が少なくなる。
【0035】
図1及び図2に示すように、丸パイプを縦長のアーチ型に折り曲げて操作アーム46が構成され、操作アーム46の右及び左の下部が支持フレーム38に連結されている。これにより、機体から地上に降りた運転者が操作アーム46を持つことによって、機体の前部の浮き上がりを操作アーム46により押さえながら、畦を越えて水田に入ったり水田から出たりすることが安定して行える。
【0036】
[5]
次に、変速レバー52について説明する。
図7に示すように、前及び後カバー47,43の内部において1本の丸棒状の操作ロッド36が、ハンドルポスト32及びステアリング操作軸44と平行で、且つ、ハンドルポスト32及びステアリング操作軸44の左横側に位置するように、支持板34,57に亘って回転自在に支持されている。
【0037】
図1,2,7に示すように、操作ロッド36の上部が横向きに折り曲げられて変速レバー52が構成され、変速レバー52が操縦ハンドル45の左横側の下側に位置して左横外方に延出されている。操作ロッド36の下部に操作アーム36aが連結されて、後カバー43の横側の開口部43aに操作ロッド36の操作アーム36aが臨んでおり、ミッションケース5の変速操作部(図示せず)と操作ロッド36の操作アーム36aとに亘って連係ロッド54が接続されている。
【0038】
これにより、変速レバー52を操作ロッド36の軸芯周りに揺動操作することにより、操作ロッド36(操作アーム36a)及び連係ロッド54を介して、ミッションケース5のギヤ変速装置を後進位置、中立位置、植付走行位置(中速位置)、畦越え位置(低速位置)及び移動位置(高速位置)に操作することができる。
【0039】
[6]
次に、アクセルレバー35(走行用の操作レバーに相当)について説明する。
図6及び図7に示すように、前及び後カバー47,43の内部においてハンドルポスト32の下部に支持板50が連結されており、1本の丸棒状の操作ロッド37が、ハンドルポスト32及びステアリング操作軸44と平行で、且つ、ハンドルポスト32及びステアリング操作軸44の右横側に位置するように、支持板34,50,57に亘って回転自在に支持されている。
【0040】
図2及び図5に示すように、操作ロッド37の上部が横向きに折り曲げられてアクセルレバー35が構成されており、アクセルレバー35が操縦ハンドル45の右横側の下側に位置して右横外方に延出されている。これにより、アクセルレバー35を前後に操作することによって、操作ロッド37が操縦ハンドル45(ステアリング操作軸44)の回転軸芯と平行な軸芯周りに回転操作される。
【0041】
図6及び図7に示すように、操作ロッド37の下部に平面視L字状の操作アーム51が連結されて、操作アーム51が支持板50の下面に接するように配置されている。操作アーム51の第1アーム部分51aに、側面視L字状のブラケット56がピン56aにより縦軸芯P3周りに回転自在に支持されて、ワイヤ55(連係機構に相当)のアウタ55bの端部がブラケット56に取り付けられており、支持板50のアーム部50aにワイヤ55のインナ55aの先端部が取り付けられている。
【0042】
図6及び図7に示すように、操作軸37の位置を中心とする円弧状の長孔50bが支持板50の形成されている。操作アーム51の第2アーム部分51bにボルト58が連結されて、支持板50の長孔50bに下側から挿入されており、ボルト58の上部にナット59が取り付けられている。ナット59と支持板50の上面との間に位置するように、コイル型式のバネ64と座金67がボルト58に外嵌され、操作アーム51の第2アーム部分51bと支持板50の下面との間に位置するように、座金67がボルト58に外嵌されている。
【0043】
これにより、図6及び図7に示すように、アクセルレバー35を前後に操作することにより、操作ロッド37及び操作アーム51が回転操作(揺動操作)されて、ワイヤ55のアウタ55bが押し引き操作されるのであり、支持板50の長孔50bによりアクセルレバー35(操作ロッド37及び操作アーム51)の操作範囲が決められる。
【0044】
図6及び図7に示すように、バネ64の付勢力により座金67の間に支持板50(長孔50b)が挟まれる状態となっているので、手を離してもアクセルレバー35、操作ロッド37及び操作アーム51が所定角度に摩擦保持されるのであり、ナット59を回転操作することによりバネ64の押圧力を変更して、摩擦力を大小に調節することができる。このようにボルト58、ナット59、バネ64及び座金67により保持機構68が構成されている。
【0045】
[7]
次に、アクセルレバー35とアクセル操作部69(被操作部に相当)との連係構造について説明する。
図6及び図7に示すように、ワイヤ55が後カバー43の開口部にゴム製のグロメット70により取り付けられて後方に延出されている。図4及び図5に示すように、ワイヤ55が前車軸ケース12及びペダルアーム61の上側を通りながら、支持フレーム13の右横側を後方に延出されている。横フレーム15において右の支持フレーム10と防振ゴム23との間の部分に樹脂製の取付部材71が取り付けられており、ワイヤ55が取付部材71に取り付けられている。
【0046】
図4及び図5に示すように、エンジン22(クランクケース22a)の右横側部に冷却ファン(図示せず)及び冷却ファンを覆うカバー22dが備えられている。燃料排出用のホース72が燃料タンク8の底部から下方に延出されて、燃料コック73が支持フレーム13の右横側部(エンジン22のシリンダ22bの下方)にステー74を介して連結されており、ホース72が燃料コック73に接続されている。
【0047】
図4及び図5に示すように、ワイヤ55が取付部材71からエンジン22のカバー22dの下側を通り、ステー74の下側で燃料コック73とホース72(支持フレーム13)との間を通って、エンジン22の後側に入り込んでいる。ワイヤ55はエンジン22(シリンダ22b)とミッションケース5との間を通って、ミッションケース5と支持板24との間において左の防振ゴム26bとホース72との間を通り、燃料タンク8の下側においてホース72の後側に入り込んでいる。ホース72の後側に入り込んだワイヤ55は、Uターンするようにしてホース72の右側に入り込み、支持板24の上側を前方に延出されて、エンジン22の上部に備えられたアクセル操作部69に接続されている。
【0048】
これにより、図2,6,7に示すように、アクセルレバー35を後方に操作すると、操作ロッド37及び操作アーム51が図7の紙面時計方向に回転操作(揺動操作)されて、ワイヤ55のアウタ55bが後方に押し操作され、ワイヤ55のインナ55aが引き操作されて、アクセル操作部69が高速側に操作される。アクセルレバー35を前方に操作すると、操作ロッド37及び操作アーム51が図7の紙面反時計方向に回転操作(揺動操作)されて、ワイヤ55のアウタ55bが後方に引き操作され、ワイヤ55のインナ55aが押し操作されて、アクセル操作部69が低速側に操作される(アクセル操作部69が低速側に付勢されていることによる)。
【0049】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、アクセルレバー35及び操作ロッド37及びワイヤ55をハンドルポスト32及び支持フレーム13の左横側に備え、ワイヤ55が支持フレーム13の右横側からエンジン22のクランクケース22aの下側を通るように構成してもよい。
操作ロッド37の上部を折り曲げてアクセルレバー35を操作ロッド37に一体的に構成したが、操作ロッド37とは別部材のアクセルレバー35を操作ロッド37に溶接やボルト等により連結してもよい。ワイヤ55に代えて、操作ロッドにより連係機構を構成してもよい。
【0050】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]において、ワイヤ55がホース72や、ミッションケース5と支持板24との間を通らずに、エンジン22(シリンダ22b)とミッションケース5との間から、直接にアクセル操作部69に接続されるように構成してもよい。
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]及び[発明の実施の第2別形態]の構成を、変速レバー52に適用してもよい。
【0051】
[発明の実施の第3別形態]
図9に示すように、運転席16の背もたれ部16bに開口部16cを形成せずに、運転席16の背もたれ部16bに、運転席16の背もたれ部16bとは別部材の取っ手部16dを連結するように構成してもよい。
運転席16をブロー成形等により中空状に構成して、運転席16を燃料タンクとして使用してもよい。この場合、図1及び図2に示す燃料タンク8は不要になる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は乗用型田植機ばかりではなく、乗用型直播機や乗用型管理機等の水田作業機にも適用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 前輪
22 エンジン
32 ハンドルポスト
35 操作レバー
37 操作ロッド
45 操縦ハンドル
51 操作アーム
55 連係機構、ワイヤ
64 バネ
68 保持機構
69 被操作部、アクセル操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪の操向操作を行う操縦ハンドルを回転自在に支持するハンドルポストを備え、前記操縦ハンドルの回転軸芯と平行な軸芯周りに操作自在に前記操縦ハンドルの下側に備えられた走行用の操作レバーを備えて、
前記操作レバーの操作を回転として伝達する操作ロッドを、前記操作レバーから前記ハンドルポストに沿って前記ハンドルポストの下部に延出し、前記操作ロッドの下部と走行用の被操作部とを連係機構により接続して、前記操作レバーにより前記被操作部を操作可能に構成し、
前記操作ロッドを保持することにより前記操作レバーを所定角度に保持可能な保持機構を、前記操作ロッドの下部に備えてある水田作業機。
【請求項2】
前記操作ロッドの下部に備えられた操作アームに前記連係機構を接続して、前記操作ロッドの回転による前記操作アームの揺動により、前記連係機構が押し引き操作されて、前記被操作部が操作されるように構成し、
前記操作アームにバネによる摩擦力を与えることにより前記操作レバーを所定角度に保持可能に、前記保持機構を構成してある請求項1に記載の水田作業機。
【請求項3】
前記連係機構をワイヤにより構成し、前記被操作部を前記ハンドルポストの後方に備えられたエンジンの上部のアクセル操作部として、
前記ワイヤを前記操作アームから後方に延出し、前記エンジンの下側から前記エンジンの後側を通して、前記アクセル操作部に接続してある請求項2に記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−39091(P2013−39091A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179098(P2011−179098)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】