説明

水田用除草機

【課題】横方向に広い除草装置の左右にて負荷抵抗が異なる等により、除草機が曲がって走行する傾向となる。
【解決手段】機体の前方ブラケット17に、ウェイト19を載置・固定したプレート53を左右揺動自在に支持し、かつ機体の左右バランスが良好に保持される位置に該プレートを調節して固定する。1輪の車輪により走行しつつ除草作業を行っている際、曲がって走行する傾向があっても、機体の左右バランスを良好に保持して、作業者のハンドルによるコントロールを容易にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田において立毛中に発生した雑草を除草する除草機に係り、詳しくは1輪で自走するタイプの水田用除草機におけるバランス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、水稲栽培において、減農薬、無農薬或いは有機栽培が実施されており、これに伴い、植付け後の除草においても、除草剤を用いずに、機械的に除草する水田用除草機が注目されている。
【0003】
従来、エンジンにより自走する車輪と、田面との接地抵抗により自転するロータを有する除草装置とを備え、車輪により走行しつつ、ロータが自転して株間及び株ぎわの雑草を掻込むようにした水田用除草機が案出されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、上記車輪を1輪として、圃場端において植付苗を傷付けることなく回向できるようにした水田用除草機も提案されており、このものは、複数の植付条(例えば4条、6条)の株間又は条間を除草するように横(幅)方向に広い除草装置を備えている(例えば特願2004−302456号;本願出願時未公開)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−204603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記水田用除草機は、作業者がハンドルを握ってコントロールしつつ、車輪の回転により自走して、ロータが田面に接触して自転することにより多数の植付条に亘って除草するが、横方向に広い除草装置の左右にて作業負荷抵抗が異なる場合、1輪である車輪にて走行する関係上、除草機が、負荷抵抗の大きい方向に曲がって走行する傾向となる。
【0007】
特に、畦際に沿う端の植付条部分は、畦際が圃場内側より硬くなっている場合が多く、この場合も除草機が曲がって走行する傾向となり、最悪の場合、除草機が植付条を横切って走行し、植付苗を傷付けてしまうこともある。また、除草機の製造等の個体差によっても、曲がって走行する傾向となるものもある。
【0008】
一方、上記1輪タイプの水田用除草機は、圃場端においてハンドルを持ち上げ、除草装置が植付苗を倒さないように上げた状態で回向する必要があるが、前記車輪後方に配置される除草装置は重力物である関係上、上記ハンドルの持ち上げ力を軽減するため、機体の前方位置にバランスウェイトを設置することも考えられる。
【0009】
しかし、上記バランスウェイトは、車軸に対して前後重力バランスがとれるように、機体の所定位置に固定されており、このため、上述したように除草機が曲がって走行する傾向を生じる場合、上記ウェイトがそれを増長する方向に作用し、作業者のハンドルによるコントロールを面倒なものにしている。
【0010】
そこで、本発明は、機体前方にウェイトを左右方向移動自在に設け、機体の左右バランスを保つようにし、もって上述した課題を解決した水田用除草機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る本発明は、1輪からなる走行用の車輪(2)にて支持される機体(3)と、該機体に搭載されて前記車輪を駆動するエンジン(4)と、前記機体の前記車輪の後方に配置されかつ複数の植付条に亘って除草するように横方向に複数の除草部材(40,42,45)を有する除草装置(5)と、前記機体の後方に延びるハンドル(13)と、を備えてなる水田用除草機(1)において、
前記機体(3)の前方位置に、ウェイト(19)を、前記機体(17)に対して左右方向移動自在にかつ所定移動位置にて固定自在に配置してなる、
ことを特徴とする水田用除草機にある。
【0012】
請求項2に係る本発明は、前記ウェイト(19)を載置・固定したプレート(53)を、前記機体(17)に左右方向に揺動自在に支持し、
前記プレート(53)を所定位置にて固定自在とした、
請求項1記載の水田用除草機にある。
【0013】
請求項3に係る本発明は、前記ハンドルにウェイト操作手段(66)を設け、
該ウェイト操作手段にて、前記ウェイト(19)を左右方向に移動すると共に所定移動にて固定し得るように構成した、
請求項1又は2記載の水田用除草機にある。
【0014】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る本発明によると、機体の前方位置に、ウェイトを配置したので、機体の前後重量バランスを良好にして回向時のハンドルの持ち上げ力を軽減できるものでありながら、該ウェイトは、左右方向に移動自在かつ所定移動位置にて固定自在としたので、除草装置の左右にて負荷抵抗が相違する等により曲がって走行する傾向があっても、機体の左右バランスを良好に保持して、作業者のハンドルによるコントロールの容易化を図ることができる。
【0016】
請求項2に係る本発明によると、ウェイトをプレートに載置・固定して、該プレートを機体に対して左右方向揺動自在に支持したので、ウェイトの機体に対する左右方向の移動調節が容易となり、かつ例えば長孔とボルトにより、プレートを機体に固定することにより、ウェイトの所定位置での固定も容易となる。
【0017】
請求項3に係る本発明によると、ハンドルに設けたウェイト操作手段によりウェイトを左右に移動操作できるので、除草作業中に、機体が曲がって走行する傾向となっても、該曲がり方向と反対方向にウェイトを移動するように操作して、機体の左右バランスを保ち、正確な除草作業を、ハンドルに大きな力をかけることなく容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。図1及び図2において、1は、本発明に係る1輪自走タイプの水田用除草機であり、本除草機1は、1輪の走行用水田車輪2と、該車輪により支持される機体3と、該車輪の駆動源となるエンジン4と、除草装置5と、を備える。
【0019】
前記機体3は、前後方向に平面視平行に延びている2本のフレーム9,9と、これらフレームから車輪2を挟むように垂下して延びている2枚の連結プレート12とを有しており、更に前記各フレームの後端に固着され、後方に延びてループ状に形成されたハンドル13が一体に設けられており、これら左右のフレーム及びハンドルは、パイプ10及びプレート11により互に連結されて一体に構成されている。前記2枚の連結プレート12,12の下部には前記車輪2の車軸2aが回転自在に支持されており、かつ一方の連結フレーム12には車軸2aに連動するギヤボックス15が設けられている。
【0020】
前記一方のフレーム9とギヤボックス15に亘ってシャフトケース16が固定されており、該シャフトケース16は機体3の前・上方に向って斜めに延びて、その先端部に前記エンジン4が配設されている。該エンジン4からの動力は、前記シャフトケース16内のシャフトを介してギヤボックス15に伝達され、更に車輪2に伝達される。また、前記フレーム9,9の先端部には、前方に延びて取付けブラケット17が一体に固定されて、機体3の一部を構成しており、該ブラケット17には本発明の要部であるウェイト19が左右方向に位置調節自在に固定されている。なお、平面図(図2参照)において、ブラケット17がフレーム9,9に対して右斜め方向に延びているが、これは、エンジン4と合せて機体全体で前後バランスを図るためであり、また側面視(図1参照)フレーム9,9に対して斜め上方に延びているが、これは、機体回向時に除草装置5を上げるため、機体を前下り傾斜する際、田面Dと干渉しないためである。前記ウェイト及びその位置調節手段を含めたバランス装置Wについては、後に詳細に述べる。
【0021】
前記除草装置5は、株間及び株ぎわを除草する株間除草部20と、条間を除草する条間除草部21とからなり、車輪2の後方でかつハンドル13の下方において、前記機体3に上下方向位置及び前後の回転方向位置を調節自在に配置されている。即ち、該除草装置5は、横(左右)方向に延びる支持杆(角パイプ)23及び該支持杆の所定箇所に固定されて上方向に延びる連結杆25を有しており、支持杆23と左右連結プレート12との間に連結ロッド26,26がピン結合により連結されていると共に、上記連結杆25の上部と一方の連結プレート12との間に伸縮杆27がピン結合により連結されており、これにより支持杆23を上下方向に移動自在に支持する平行リンクを構成している。また、伸縮杆27はハンドル29が設けられて、該ハンドルを回動操作することにより伸縮杆27が伸縮して支持杆23の回動位置を調節し得る。
【0022】
前記支持杆23の中央部にはピン30により回動自在にかつ上方に延びてノッチプレート31が連結されており、該ノッチプレート31はトーションバネ34により図1の反時計方向に付勢されている。該ノッチプレート31には、複数の位置決め用ノッチを有する溝31a形成されていると共に、上端に後方に延びる操作レバー32が一体に固定されている。また、ハンドル13に固定されたパイプ10にノッチピン33が設けられており、該ノッチピン33が上記溝31aに嵌挿して、所定ノッチに係合することにより、除草装置5の上下位置が調節・固定される。
【0023】
前記支持杆23には、植付条列Uに対応する間隔でボルト35により取付アーム36が4本(4条対応)その中央部で固定されており、これら取付アームの両端部にはそれぞれブラケット37を介して株間除草用ロータ40が支持されている。該ロータ40は、上記ブラケット37の下端に所定角度傾斜して回転自在に支持されるロータ軸40aと、該ロータ軸に放射状に取付けられたロータ刃40bとを有しており、ロータ刃40bが田面Dと接触することにより除草機1の自走に伴って自転する。また、取付アーム36は、支持杆23に対してボルト35により取付角度を調節することができ、これによりロータ40の植付条列Uに対する位置を調節し得る。
【0024】
前記支持杆23には、中央側の3条間B,B,Bに対応してブラケット41が固定されており、該ブラケットは後方に延び、その後端部に条間除草用ロータ42が回転自在に支持されている。該ロータは、横(水平)方向に延びるロータ軸42aと、該ロータ軸に放射状に取付けられかつ該ロータ軸と平行部分を有するカゴ状のロータ杆42bとを有しており、ロータ杆42bが田面に接触することにより除草機1の自走に伴って自転する。前記支持杆23の左右端には、条間B,Bに対応してブラケット43が固定されており、これらブラケットは後方に延び、その後端部にフロート45が固定されている。これらフロート45は、後部分が一部切欠かれており、前記ブラケット43に固定されたスタンドバー46が上記切欠き45aを通って後・下方に向けて延びている。
【0025】
前記株間除草用ロータ(除草部材)40が前記株間除草部20を構成し、前記条間除草用ロータ(除草部材)42及びフロート(除草部材)45が前記条間除草部21を構成する。条間除草部21は株間除草部20の走行方向後方に配置されており、かつフロート45は、その中央部が条間除草用ロータ42の後方でかつその前端部側が、側面視一部条間除草用ロータ42にオーバラップするように配置されている。
【0026】
そして、株間除草部20は、平面視(図2参照)において、1輪からなる走行用車輪2の走行平面V−Vに対して右側にある取付アーム36が時計方向に所定角度傾斜し、左側にある取付アームが反時計方向に所定角度傾斜して配置されている。従って、各取付アーム36に取付けられている1対のロータ40は、車輪右側にあってはその前側のロータが条列Uに対して右側にかつその後側のロータが条列Uに対して左側に位置し、車輪左側にあってはその前側のロータが条列Uに対して左側にかつその後側のロータが条列Uに対して右側に位置することになる。即ち、車輪2が位置する平面V−Vに対して、左右の各ロータ40は、各取付アーム36に取付けられた1対のロータの前後関係が鏡面対称となるように配置される。特に、車輪が走行する条間Bの右側の植付条Uを除草する1対のロータ40f,40rは、前側のロータ40fが植付条Uの右側にかつ後側のロータ40rが植付条Uの左側に位置し、上記条間Bの左側の植付条Uを除草する1対のロータ40f,40rは、前側のロータ40fが植付条Uの左側にかつ後側のロータ40rが植付条Uの右側に位置することになる(上記2対のロータを以下40,40と記す)。
【0027】
即ち、上記2対のロータ40,40と40,40は、両方とも車輪2が位置する条間Bにあっては車輪2の後方に後側のロータ40r,40rが位置し、前側のロータ40f,40fは、共に上記条間Bに隣接する条間B,Bに位置して、車輪2と干渉することはない。その結果、株間除草部20を車輪2(車軸2a)に近づくように配置することができ、具体的には、上記2対のロータの前側のロータ40f,40fが、側面視(図1参照)、車輪1と少なくとも一部がオーバラップするように配置される。更に、株間除草部20の後方に位置する条間除草部21(条間除草部材42,45)を含めた除草装置5全体が、車輪2に近づくように配置される。
【0028】
前記バランス装置Wを、図3及び図4に基づき説明するに、まず、ブラケット17は、図4(d)に示すように、前端が円弧状になっている平行のウェイトプレート50と、これらを一体に橋絡するプレート51,52とを有しており、一方のプレート51には孔51aが、他方のプレート52には上記孔を中心とした円弧状の長孔(軌道レール)52aが形成されている。また、上記バランス装置Wは、図4(b),(c)に詳示するように、前記ウェイト19を載置・固定し得る載置プレート53を有している。該プレート53の上面には、長手方向中心線上L−Lに孔53a、大ナット53b及び位置決め板53cが設けられており、該プレートの下面には上記大ナット53bを挟む位置に小ナット53d,53dが形成されている。
【0029】
そして、上記載置プレート53の上面には、円筒状のウェイト19が位置決め板53cにより位置決めされて、上面に固定プレート55を介在して長尺ボルト56,56を小ナット53d,53dに螺合することにより一体に固定される。そして、該ウェイト19を一体に載置したプレート53は、ブラケット(機体)17上に載置され、その小径側端部に位置する孔53aをブラケットプレートの孔51aに合せて、これら孔にボルト57を挿入してブラケット下側からナットを螺合して、該ボルト57を中心に左右方向揺動自在に支持される。この状態で、ブラケットプレート52の下側からボルト59を長孔52aに差込み、大ナット53bに螺合する。該ボルト59を緩めることにより、ウェイト19を載置したプレート53を左右方向に揺動し得、かつボルト59を締めることにより所定移動位置にて固定し得る。なお、60は、ボルト抜け止め用ナットである。
【0030】
ついで、以上構造からなる本水田用除草機1の作用について説明する。
【0031】
圃場内に本水田用除草機1を入れると、まず、水田の深さHに応じてハンドル29を回転することにより、除草装置5の角度が調節される。これにより、作業水田の深さHに対応して、前後の株間除草用ロータ40,40、条間除草用ロータ42が略々同レベルで田面に接する。また、操作レバー32によりノッチプレート31をトーションバネ34に抗して回動して、ハンドル13の高さを作業者に合せて高さ調節し、ノッチピン33を適宜のノッチに係合することにより固定する。
【0032】
また、圃場状況及び/又は除草機の個体差により、ボルト59を緩めてウェイト19を載置したプレート53を左右方向に揺動し、左右バランスがとれた状態でボルト59を締付けて、上記プレートを機体3に固定する。特に、圃場端(畦際)に沿う植付条に沿って除草する1回目の作業にあっては、畦際が圃場内側より硬く、除草機1が、畦際に向う方向に曲がって走行する傾向があるので、予め、ウェイト19を畦際方向に所定量オフセットして固定する。
【0033】
この状態で、エンジン4の回転を車輪2に伝達して、除草機1を植付条列Uに沿って走行する。株間除草部20は、取付アーム36に取付けられた1対のロータ40,40がそれぞれ各植付条列Uを挟むようにして、株間及び株ぎわの田面に接触して回転して、雑草を掻込むようにして除草する。なおこの際、植付苗Pは、茎も太くなっており、ロータ40により掻込まれることはなく、更に1対のロータ40,40は前後方向に所定間隔を隔てて配置されているので、植付苗Pに対して左右から同時にロータが作用することはなく、1個のロータの作用方向に対して植付苗が反対方向に逃げることができ、ロータにより植付苗を傷つけることを防止できる。
【0034】
また、条間除草部21は、ロータ42が水平軸であるロータ軸42aを中心に、各条間Bを所定幅にて田面に接触して回転し、各条間Bの雑草を掻込むと共に、上記株間除草用ロータ40で掻込まれた雑草と共に田面中に埋込む。同時に、左右端のフロート45,45は、各条間Bの雑草を、上記株間除草用ロータ40で掻込まれた雑草と共に田面中に埋込む。この際、左右のフロート45は、田面上を滑走して、1輪からなる水田用除草機1の左右の傾きを防止して除草機1の走行を安定させる。これにより、4条の植付条列Uの株間及び株ぎわ、並びに各植付条間の条間B及び植付条に隣接する条間Bの雑草が除草される。
【0035】
そして、例え田面D及び耕盤の傾斜、並びに横方向に広い除草装置の左右の負荷抵抗が相違して、除草機1が曲がって走行する傾向にあっても、バランス装置Wにより予め機体の左右バランスがとれるように調整されているので、1輪の車輪2による走行に拘らず、除草機1が一方向の曲がろうとする強い力が作用することはなく、作業者は、ハンドル13を持って容易にコントロールして、植付条列に沿って走行することができる。なお、除草作業中において、除草機1に、作業者によるコントロールが不可能な程の大きな曲がり力が作用した場合又は作用する予想が立った場合、作業者は、直ちに除草機1の走行を停止して、バランス装置Wをウェイト19が上記曲がり方向と反対方向に移動するように調整して、再び除草機1を走行することにより条外れを生じることなく除草作業を続けることができる。
【0036】
水田用除草機1が、上述したように株間及び条間の雑草を除草しつつ走行して圃場端に至ると、作業者は、操作レバー32を操作して、図1の2点鎖線に示すように、ハンドル13を下げ位置に固定する。この状態で、作業者は、ハンドルを持ち上げて、除草装置5を田面から離して所定高さに上げ、1輪の車輪2を株間を通して機体を回向し、つぎの4条の植付条に合せる。この際、前記ウェイト19が前後の重量バランスをとるように機体3の前方に配置されているので、作業者は、ハンドル13に大きな持ち上げ力を作用することなく、軽く操作することができる。
【0037】
更に、株間除草用ロータ40の前述した配置により、除草装置5が車輪2(車軸2a)に近づくように配設されており、この結果、車軸2aを中心にして機体3を前下り状態に傾斜して除草装置5を持ち上げる際の回転モーメントが小さくなって、ハンドル13を持ち上げる力が軽くなる。反面、ハンドル13の持ち上げストロークに対する除草装置5の上昇量は小さくなるが、上述したようにハンドル13を一旦下げてから持ち上げることにより、除草装置の充分な上昇量を確保できる。前記バランス装置Wと該除草装置5の配置とが相俟って、回向時のハンドル13の持ち上げ力を軽くして操作を容易としているが、上記除草装置の配置によりウェイト19の重さを軽くすることができ、除草機1全体の重量を軽減して、作業性の向上をも図っている。
【0038】
ついで、同様に、車輪2を回転して除草機1を反対方向から走行して、隣の4条分の株間及び条間の雑草を除草する。なおこの際、作業が隣り合う条間は、フロート45が往復滑走して、2重に作業することになる。これを繰返すことにより、すべての植付条の株間及び条間の除草が行われる。
【0039】
図5は、一部変更したバランス装置Wを示す図である。なお、先の示したバランス装置Wと同じ部分は、同一符号を付して説明を省略する。本バランス装置Wは、電動アクチュエータ65を付設して、ウェイト19を載置したプレート53を動力にて左右方向に移動し固定すると共に、上記電動アクチュエータ6をハンドル13に設けたスイッチ(操作手段)66により操作する。
【0040】
電動アクチュエータ65は、電気モータ67と、雄ネジ部69a及び雌ネジ部69bからなるネジ伝動装置69とからなり、かつモータケース65aが機体ブラケット17に支軸70により回動自在に支持されている。雄ネジ部と雌ネジ部とは互に螺合していると共に、雄ネジ部69aの一端がリンク71を介して載置プレート53に連結されており、雌ネジ部69bはケース65aに回転自在に支持されかつギヤ72を介して電気モータ67の出力軸に連動している。また、電気モータ67からの配線がハンドル13に延びて、ハンドル13に設けられたトグルスイッチ等からなるウェイト操作手段66に連接している。なお、電動アクチュエータ65は、操作手段66がオフされている場合、電磁ブレーキ又はウォームとウォームホィールの自己係止等によりその位置に固定状態となり、また操作手段66の一方向の操作により一方向に回転し、操作手段66の他方向の操作により他方向に回転する。
【0041】
本実施の形態によると、作業者は、ハンドル13を握って除草機1を操作している際、除草装置の左右の負荷抵抗が相違する等により曲がり方向の大きな偏倚力が作用すると、作業者は、除草作業を継続した状態でウェイト操作手段66を操作することにより電動アクチュエータ65を駆動して、ウェイト19を上記曲がり方向と反対方向に移動する。これにより、除草機1は、圃場状況による曲り偏倚力とバランス装置Wによる曲り偏倚力が互に打消されて、左右バランスが維持されて直進走行が保たれる。
【0042】
従って、本実施の形態によると、除草作業中に圃場状況等により機体に曲がり走行力が作用しても、作業者は、ハンドル13を持ったままでバランス装置Wを操作して直進走行を維持することができ、除草作業を中断することなく効率よくかつ正確に走行することができる。
【0043】
なお、上述した水田用除草機は、4条タイプであるが、6条等の更に多条タイプとしてもよく、この場合、除草装置が横方向に長くなるので、本発明によるバランス装置は、更に有効に機能する。また、除草装置5は、どのようなものでもよく、本実施の形態のように、株間用ロータが前後方向に所定間隔を隔てて配置されるものに限るものではなく、例えば横方向に略々一列状に配置されているものでもよい。
【0044】
また、前述した図5に示すバランス装置Wは、図3に示すバランス装置Wを基礎としているが、載置プレート53上にバッテリBa(図5参照)を載置して、バッテリをウェイト又はその一部としてもよく、更に電動アクチュエータ65を載置プレート53に載置して、該アクチュエータ自体もウェイトの一部としてもよい。これにより、上述した除草作業中の左右バランス調整を行えるものでありながら、機体重量の軽減化を図ることができる。更に、ウェイト19を左右方向に移動するため、電動アクチュエータ又は油圧アクチュエータ等の動力を必要とせず、ボーデンワイヤ、リンク機構等の連係機構を介して、バランス装置のウェイトとハンドル13のウェイト操作手段を連係して、バッテリ又は油圧発生機構等を含めた動力源を必要とすることなく、簡単な構成にて除草作業中のウェイトの移動を可能にするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に適用し得る水田用除草機を示す側面図。
【図2】その平面図。
【図3】本発明に係るバランス装置を示す平面図。
【図4】バランス装置を示す図で、(a)はその縦断面図、(b)はその載置プレートを示す平面図、(c)は載置プレートの側面図、(d)は機体を構成するブラケットを示す平面図。
【図5】他の実施の形態によるバランス装置を示す平面図。
【符号の説明】
【0046】
1 水田用除草機
2 車輪
3 機体
4 エンジン
5 除草装置
17 機体(ブラケット)
19 ウェイト
20 株間除草部
21 条間除草部
40,42,45 除草部材(株間除草用ロータ、条間除草用ロータ、フロート)
52a 長孔
53 (載置)プレート
57 揺動支点(ボルト)
65 電動アクチュエータ
66 ウェイト操作手段(トグルスイッチ)
W,W バランス装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1輪からなる走行用の車輪にて支持される機体と、該機体に搭載されて前記車輪を駆動するエンジンと、前記機体の前記車輪の後方に配置されかつ複数の植付条に亘って除草するように横方向に複数の除草部材を有する除草装置と、前記機体の後方に延びるハンドルと、を備えてなる水田用除草機において、
前記機体の前方位置に、ウェイトを、前記機体に対して左右方向移動自在にかつ所定移動位置にて固定自在に配置してなる、
ことを特徴とする水田用除草機。
【請求項2】
前記ウェイトを載置・固定したプレートを、前記機体に左右方向に揺動自在に支持し、
前記プレートを所定位置にて固定自在とした、
請求項1記載の水田用除草機。
【請求項3】
前記ハンドルにウェイト操作手段を設け、
該ウェイト操作手段にて、前記ウェイトを左右方向に移動すると共に所定移動にて固定し得るように構成した、
請求項1又は2記載の水田用除草機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−116952(P2007−116952A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−311930(P2005−311930)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000147693)株式会社石井製作所 (17)
【Fターム(参考)】