説明

水砕スラグ層の締め固め性改良工法

【課題】本発明は、上述したような従来技術の問題を解消し、水砕スラグ層の締め固め性を向上させて、支持力の高い地盤をつくるための優れた工法を提供することをその課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
前掲の課題を解決するためになされた本発明の要旨とする構成は、高炉水砕スラグ等の水砕スラグからなる層の上部にまさ土等の土砂を敷設して層となし、この重合層の上方より押圧することを特徴とする水砕スラグ層の締め固め性改良工法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水砕スラグを用いて盛土、埋め立て、裏込め、覆土などを実施する場合の締め固め性の改良工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤、路盤等の盛土、埋め立て、裏込め、覆土などに製鉄所や金属精錬工場からの副生物として産出される水砕スラグが用いられている。この場合、現場密度を増加させるために一般的に、ブルドーザ、タイヤムローラなどの重機を用いて水砕スラグの上部(表層部)の締め固め作業が行われている。
【0003】
しかし、水砕スラグはその粒度曲線が滑らかでない単粒度であることより、重機で締め固めしても、水砕スラグ粒子が側方に移動するため締め固め性が悪くCBR値等で表される支持力も出にくいという欠点がある。また、重機で締め固めた直後の水砕スラグ層の表層部はその充填密度が低く、車両が通行すると轍が発生したり、人が通行すれば足跡が残る。また、手指で押すと容易にへこむ等表層部の緻密度が悪いため平坦性が確保されにくいという問題を有している。
【0004】
水砕スラグとして水硬性を有し、経時とともに硬化する性質がある高炉水砕スラグが多用されているが、高炉水砕スラグを用いた場合には、該スラグ層の表面から内部方向約15 cm 程度の表層部が空気と接触することによって炭酸化して水和反応が阻害される。このため経時変化を起こさず水砕スラグ層が固結しないと言う問題もある。
【特許文献1】特開2003−12363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述したような従来技術の問題を解消し、水砕スラグ層の締め固め性を向上させて、支持力の高い地盤をつくるための優れた工法を提供することをその課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前掲の課題を解決するためになされた本発明の要旨とする構成は以下の通りである。
【0007】
すなわち、第一発明は、水砕スラグからなる層の上部に土砂を敷設して層となし、この重合層の上方より押圧することを特徴とする水砕スラグ層の締め固め性改良工法である。
【0008】
また、第二発明は、前記第一発明において、水砕スラグ層と土砂からなる層とによって構成される重合層が複数層敷設されるものである水砕スラグ層の締め固め性改良工法である。
【0009】
そして、第三発明は、前記第一発明又は第二発明において、水砕スラグが高炉水砕スラグである水砕スラグ層の締め固め性改良工法である。
【0010】
さらに、第四発明は、前記第一発明乃至第三発明のいずれかにおいて、土砂がまさ土である水砕スラグ層の締め固め性改良工法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡便な工法で水砕スラグ層の締め固め性を改善できるため容易に支持力の高い地盤を得ることができる。また本発明では製鉄所や金属精錬工場から多量に副生する水砕スラグを利用するため、施工コストを下げることができるとともに資源の有効活用の面からも有用な効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは、前述の従来技術の問題点を解決し、水砕スラグを使用した盛土、地盤等の締め固め性を向上させる手段としてまさ土等の土砂を併用することを検討してきた結果、水砕スラグの上面に滑らかな粒度分布を有し、かつ、水砕スラグに対して充填密度が高いまさ土等の土砂の薄層で覆土することが有効であることを見出し本発明に至った。
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1及び図2は、盛土又は覆土施工時の地盤の模式的断面を示すもので、図1において、基礎地盤1に盛土する場合、先ず、基礎地盤1の上面に水砕スラグを敷き均して一定の層厚さの水砕スラグ層2を形成する。次いで、この水砕スラグ層2の上部にまさ土を敷き均して一定層厚さのまさ土層3を形成する。つまり、まさ土層3と水砕スラグ層2とを上下に重ね合わせた重合層Aを形成する。その後、転圧機械等を用いて重合層Aの表層部を転圧し、矢印Fで示されるように該重合層Aの上方より層の全域を押圧する。
このようにして押圧作業を行うことにより、まさ土3の充填密度が高くなり、その締め固め性が改善され、その結果、地盤の支持力向上に繋がるのである。
【0015】
図2は、前記図1で示した重合層Aの上部に2層目の重合層A´を形成した場合の模式的断面を示すもので、図1で重合層Aの押圧作業が完了した後、該重合Aの上部に一定層厚さの水砕スラグ層2´を形成し、更に水砕スラグ層2´の上部に一定層厚さのまさ土層3´を形成する。このようにして水砕スラグ層とまさ土層から成る重合層A、A´を形成する。その後,重合層A´の表層部をその上方より矢印Fで示される方向に転圧機械等を用いて転圧することにより、2層目の重合層A´のみならず1層目の重合層Aにも押圧力が作用する。このようにして重合層A、A´は全体として締め固め性が改善されることによって高い支持力を有する地盤となる。
【0016】
上記実施形態の説明からもわかるように、本発明に係る工法においては骨材として用いられる水砕スラグの締め固め性を補うためにまさ土が重要な役割を担っている。
【0017】
一方、骨材である水砕スラグは、各種金属の精錬過程で生成する高温度の溶融スラグに加圧水をかけて急速に冷却することによって粒状化した砂状の物質で、製鉄所をはじめ各種金属の精錬工場において発生する副生物である。水砕スラグとしては高炉水砕スラグ、製鋼水砕スラグ、合金鉄水砕スラグ、銅精錬水砕スラグなど種々のものがあり、そのいずれの水砕スラグでも使用することができるが、特に本発明において好ましいものとして、高炉水砕スラグが推奨される。
【0018】
この高炉水砕スラグは、最大径が10mm以下の粒度構成を有しており、CaO、SiO2、Al2O3等の鉱物成分を豊富に含んでおり強度も比較的高く、透水性、保水性、水硬性に優れている。
【0019】
本発明において水砕スラグに高炉水砕スラグを用いた場合には、この高炉水砕スラグ層の上部にまさ土層が形成されるため、高炉水砕スラグ層の表層部は空気との接触を遮断される。したがって、高炉水砕スラグ層はその表層部が炭酸化して水和反応が阻害されることなく、層内全域にわたって水和反応が進行して硬化し、水砕スラグ層自身の支持力を強化するという有利な特性を備えるようになる。
【0020】
次に、実施の形態について、図1及び図2で説明したものは水砕スラグ層とまさ土層からなる重合層が1層及び2層の例を示したが、これら重合層は1層又は2層に限定されるものではなく、地盤、路盤等の盛土面、埋め立て面等の受圧荷重が大きくなる場合には、重合層が3層以上の多層構造が採用されることは当然である。
【0021】
本発明の優れた効果を明確にするため、以下に実施例について説明する。
【0022】
(実施例1)
室内試験において、本発明に係る工法の基礎的な効果を確認した。
φ15×12.5 cm のCBRモールド内の下層部に高炉水砕スラグを敷き均して水砕スラグ層を形成し、その上層部に粒度10mm以下のまさ土を敷き均してまさ土層を形成した。まさ土層と水砕スラグ層の厚さの組み合わせを表1に示す。水砕スラグ層とまさ土層の厚さを変えたM1からM5の5種類の試験体をJIS A1210のE - c 法によって締め固め、JIS A1211の設計CBR試験によってCBR 値を測定した。CBR 値は1試験体番号につき3体の測定結果の平均値をとったものである。その結果を表2及び図3に示す。図3は、各試験体のCBR値をまさ土層厚さとの対比で示したグラフである。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
表2及び図3より気中養生及び水中養生いずれの養生条件でもまさ土層と水砕スラグ層を重合した重合層を形成した場合には、まさ土層の厚さに比例してCBR値が上昇していることがわかる。
(実施例2)
次に、現場施工試験により本発明工法の実際の効果を確認した。
【0026】
表3に示すように、試験工区(場所)として平坦な40m2(10m×4m)の地盤を4箇所選定(A〜D工区)し、バックホーを用いて高炉水砕スラグを一層1mの厚さで敷き均して層形成した。この上(表面)にまさ土を0cm(A工区)、5cm(B工区)、10cm(C工区)及び15cm(D工区)の厚さに敷き固めて被覆した路床地盤を施工、形成した。まさ土の敷き固めはマカダムローラー(12t)を用いた転圧作業を6回行なった。
【0027】
【表3】

【0028】
この施工試験に基づく試験体のCBR試験結果を図4及び図5に示す。
【0029】
図4は施工直後に測定した各工区の路床地盤表面のCBR値をA工区の値を1として比(各工区のCBR値/A工区CBR値)で表したもので、また図5は材令を変化させた場合すなわち施工直後、施工後3ヶ月及び施工後6ヶ月に各工区のまさ土層を掘削して水砕スラグ層の、同様に各工区のCBR値をA工区の施工直後の値を1として比(各工区のCBR値/A工区の施工直後のCBR値)で表したものである。
【0030】
図4から、まさ土層を水砕スラグ層の上に被覆、重合させた路床地盤の場合(B、C及びD工区)はまさ土層を被覆しない水砕スラグ単層(A工区)に比較してCBR値が増大していることが分る。
【0031】
また5図の結果から、水砕スラグ単層(A工区)の場合は材令が増えてもそのCBR値に変化は見られないが、まさ土層を重合させた場合(B、C及びD工区)は水砕スラグ層表面のCBR値がまさ土層の何れの厚みにおいても材令が増えるにつれて増加する傾向がはっきり認められる。これは前述のように被覆したまさ土層によって水砕スラグ層の表層部が空気との接触が遮断されるため、水和反応が阻害されること無く、十分に進行して硬化し、水砕スラグ層の支持力が強化されるためである。
【0032】
このまさ土層の厚さについては、上記実施例の結果からもその厚さを増加すれば締め固め性すなわち地盤の支持力は向上するが、一方でまさ土の使用量の増加によりコストも上昇することになるため、その両面を勘案すれば、3〜20cmの厚さで用いることが好ましく、7〜15cmの厚さが特に好ましいものである。
【0033】
なお、本発明の実施形態並びに実施例においては、土砂の例として特に好ましいまさ土を用いた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、他の土砂を適用した場合も本発明の前記目的を達成できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る改良工法の実施形態を示す地盤の模式的断面図。
【図2】本発明に係る改良工法の他の実施形態を示す地盤の模式的断面図。
【図3】本発明の実施例1における各種試験体のCBR値を示すグラフ。
【図4】本発明の実施例2における各工区の施工直後における路床地盤表面のCBR値(相対値)を示すグラフ。
【図5】本発明の実施例2におけるまさ土層を掘削した各工区の水砕スラグ層表面のCBR値(相対値)を示すグラフ。
【符号の説明】
【0035】
1 : 基礎地盤
2、2´:水砕スラグ層
3、3´:まさ土層
A、A´:重合層
F ; 押圧力


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水砕スラグからなる層の上部に土砂を敷設して層となし、この重合層の上方より押圧することを特徴とする水砕スラグ層の締め固め性改良工法。
【請求項2】
前記水砕スラグ層と土砂からなる層とによって構成される重合層が複数層敷設されるものである請求項1に記載の水砕スラグ層の締め固め性改良工法。
【請求項3】
前記水砕スラグが高炉水砕スラグである請求項1又は請求項2に記載の水砕スラグ層の締め固め性改良工法。
【請求項4】
前記土砂がまさ土である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水砕スラグ層の締め固め性改良工法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−40095(P2007−40095A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176855(P2006−176855)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(505124867)神鋼スラグ製品株式会社 (3)
【出願人】(591146125)住金鉱化株式会社 (5)
【出願人】(393010307)建設サービス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】