説明

水硬性固化材液の垂れ受け装置および該装置を用いた水硬性固化材液置換コラムの施工方法

【課題】 置換コラムの施工が終了して、施工装置が次の施工位置に移動する場合等において、掘削オーガに付着したり、掘削オーガの供給通路内に残存する水硬性固化材液が地表面に垂れ落ちることを回避可能にし、以って水硬性固化材液が地表面を汚すことを防止できるとともに、掘削爪に付着した粘性の掘削土砂が落下して未だ固化しない置換コラム中に混入して置換コラムの品質を劣化させるという課題を回避できる水硬性固化材液の垂れ受け装置および水硬性固化材液置換コラムの施工方法を提供する。
【解決手段】 掘削オーガ6の先端部に、上方に開口する垂れ受け容器12を、吊り下げ手段13を介し着脱可能に吊持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性固化材液置換コラム(以下、置換コラムとも称す。)の施工時に使用する水硬性固化材液の垂れ受け装置および該水硬性固化材液の垂れ受け装置を使用しての水硬性固化材液置換コラムの施工方法に関する。特に、本発明は、戸建住宅や低層建築物、土間スラブ等の比較的軽微な構造物の基礎に用いられる水硬性固化材液置換コラムの施工が終了して掘削オーガを地上に引き上げたら、掘削オーガの先端部に吊り下げて、掘削オーガから垂れ落ちる水硬性固化材液や掘削土を受け止め、地表面に散乱したり、築造した未だ固まらない水硬性固化材液置換コラムの中に落下しないようにする水硬性固化材液の垂れ受け装置および該装置を用いた水硬性固化材液置換コラムの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の水硬性固化材液置換コラムの施工方法の標準的な施工工程を、工程順に示す図5(a)〜(d)について説明する。この水硬性固化材液置換コラムの施工に使用する掘削オーガ6は、内部に水硬性固化材液の供給通路を有し、先端部に少なくとも掘削爪7と該水硬性固化材液の吐出口(図示省略)を備える。掘削オーガ6には、図1に示すような側面が平坦な掘削オーガおよび図2に示すようなスパイラルスクリューオーガ等がある。
まず、図5(a)に示すように施工装置1のオーガモータ3に掘削オーガ6を取り付け、掘削オーガ6をリーダ2に沿って鉛直に据え、掘削オーガ6の掘削爪7の中心と削孔位置(コラム心)が一致するように合わせてセットする。
次に、図5(b)に示すように掘削オーガ6を回転(正回転または逆回転)させながら掘進する。これはオーガモータ3の駆動で回転させ、スライド板5をリーダ2に沿って下方向に移動させることで実施される。
【0003】
図5(b)に示すように掘進が所定深度に達したら、もしくは所定深度近傍から、水硬性固化材液の吐出口よりの吐出を開始する。掘削オーガ6が所定の深度に達した時点で、図5(c)に示すように掘削オーガ1を回転(正回転または逆回転)させ、または回転させないで、水硬性固化材液8を吐出しながら掘削オーガ6を引き上げ、所定区間の水硬性固化材液8の充填が終了すると、さらに掘削オーガ6を引上げ、水硬性固化材液置換コラムの築造を完了する。ここでいう所定区間とは、築造する置換コラム長であるが、水硬性固化材液8のブリーディング量を考慮した水硬性固化材液8の充填区間としてもよい。掘削オーガ6の引上げは、スライド板5をリーダ2に沿って上方に移動させることでオーガモータ3が一緒に引き上げられることで行われる。
【0004】
このとき、単位時間当りに掘削オーガ6の引上げによる掘削爪7の下に生ずる孔容積に対し、水硬性固化材液8の吐出量(体積)が1.0〜1.5倍になるように引上げ速度を調整する。これは掘削オーガ6の引上げにより掘削爪7の下に空隙が生じないように、常に水硬性固化材液8で充満するようにするためである。水硬性固化材液8の吐出量が少ないと、サクションを誘発し、サクションが生じるとサクションを解消するために孔壁崩壊を誘発し、置換コラム中に土塊が混入するのみならず、場合によっては、所要のコラム形状を確保できなくなることもあり、置換コラムの品質が低下し好ましくない。
【0005】
掘削オーガ6を引上げ、水硬性固化材液8を吐出して所定区間の水硬性固化材液8の充填が終了したら、この水硬性固化材液の吐出を停止し、さらに掘削オーガ6を地上まで引き上げる。図5(d)は、施工が完了した状態を示している。こうして充填された水硬性固化材液8が固化することによって置換コラムが形成される。
このような置換コラムの築造方法は、例えば、特許文献1および非特許文献1等にも示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−191857
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】地下連続壁工法 設計・施工ハンドブック 社団法人日本建設機械化協会編 技報堂出版株式会社発行(第427頁〜第430頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような水硬性固化材液置換コラムの施工方法においては、次のような課題がある。
(1)1本の水硬性固化材液置換コラムの築造が終了すると、施工装置1は次の施工位置に移動させる。置換コラムの築造が終了すると、掘削オーガ6は地上に引き上げられている。従って、施工装置1を次の施工位置に移動させる際に、掘削オーガ6の吐出口の逆止弁から漏れ落ちる水硬性固化材液のみならず掘削オーガ6に付着した水硬性固化材液が地上に垂れ落ちて地表面を汚すとともに固化してしまう課題がある。この部位の地表の土砂は、水硬性固化材液の固化物が混在するため、産業廃棄物扱いになって廃棄処理費用がかかるという課題もある。
(2)また、この水硬性固化材液置換コラムの築造方法では、水硬性固化材液の吐出口が掘削オーガ6の下端面にあるため、水硬性固化材液の重量を直接受けることになり、吐出口の弁から掘削オーガ6の供給通路内に残存する水硬性固化材液が漏れ出て垂れ落ち、施工装置の移動時等に地表面を汚してしまうという課題もある。
【0009】
(3)加えて、置換コラムの施工が終了して、掘削オーガ6の先端に固設されている掘削爪7に粘性の掘削土砂が付着したまま地上に引き上げられ、掘削オーガ6がまだ掘削孔上にあるときに、その掘削土砂が落下して未だ固化しない置換コラム中に混入することがある。その掘削土砂を除去しないまま水硬性固化材液が固化すると、置換コラムの品質劣化をきたすという課題もある。
(4)因みに、従来、掘削オーガの泥土飛散を防止するものとして、掘削オーガを取り囲んで設ける泥土飛散防止カバーの技術(例えば、実開昭58−33592号、特許第2835188号、特開2003−227287号)が開示されているが、これらは掘削オーガに付着している水硬性固化材液や泥土を周辺に撒き散らすことは防止できるが、施工装置を移動させる際に、掘削オーガから垂れ落ちる水硬性固化材液や泥土を受け止めて地表面が汚れることを防止することはできない。
【0010】
本発明は、前記課題を解決せんと提案されたものであり、その目的は、置換コラムの施工が終了して、施工装置が次の施工位置に移動する場合等において、掘削オーガ下端面の固化材液吐出口から水硬性固化材液が漏れ落ちるのみならず掘削オーガに付着した水硬性固化材液が地表面に垂れ落ちることを回避可能にし、以って水硬性固化材液が地表面を汚すことを防止できるとともに、掘削爪に付着した粘性の掘削土砂が落下して未だ固化しない置換コラム中に混入して置換コラムの品質を劣化させるという課題を回避できる水硬性固化材液の垂れ受け装置および水硬性固化材液置換コラムの施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係る水硬性固化材液の垂れ受け装置は、上方に開口する垂れ受け容器と、該垂れ受け容器を、水硬性固化材液置換コラムの施工装置に取り付けた掘削オーガの先端部に吊持させる吊下げ手段と、を備え、垂れ受け容器は、吊り下げ手段を介し掘削オーガの先端部に着脱可能となっていることを特徴とする。
【0012】
この構成により、上方に開口する垂れ受け容器は、水硬性固化材液置換コラムの施工装置に取り付けた掘削オーガの先端部に、着脱自在に吊持させることができる。従って、水硬性固化材液置換コラムの施工が終了して掘削オーガを地上に引き上げたら、掘削オーガの先端部に上方に開口する垂れ受け容器を、吊り下げ手段で吊持させれば、それ以後は、掘削オーガから垂れ落ちる水硬性固化材液や掘削土は、地表面や掘削孔内に落下させることなく受け取ることができる。これにより施工装置の移動時に掘削オーガから垂れ落ちる水硬性固化材液で地表面を汚すことを防止できるし、掘削土が掘削オーガから削孔内に落下し、未だ固まらない置換コラム(水硬性固化材液)中に混入してその後固化する置換コラムの品質を低下させることも防止できる。
【0013】
また、本発明に係る水硬性固化材液の垂れ受け装置は、前記掘削オーガが、先端部に掘削爪を備え、該掘削爪は中抜け形状であり、この中抜け部分が係止孔となり垂れ受け容器は吊り下げ手段でこの係止孔に着脱自在に係止して吊持することを特徴とする。
【0014】
この構成により、垂れ受け装置は、掘削爪の係止孔に、フック部材等を引っ掛けて着脱自在に吊持することができるばかりでなく、掘削爪が掘削オーガの固化材液吐出口の下方に位置しても、中抜け形状であるため、固化材液吐出口からの水硬性固化材液の吐出を邪魔することが少なくなるし、吐出口の逆止弁の装着交換が容易となる。
【0015】
また、本発明に係る水硬性固化材液置換コラムの施工方法は、内部に水硬性固化材液の供給通路を有する掘削オーガの先端部に、少なくとも掘削爪と該水硬性固化材液の吐出口を備え、該掘削オーガをオーガモータを備えた施工装置で回転させながら所定深度まで掘進し、その後水硬性固化材液を該吐出口より吐出しつつ、該掘削オーガを回転させながら、または回転させないで引き上げ、掘削部の所定区間を該水硬性固化材液で充填する水硬性固化材液置換コラムの施工において、
施工が終了して掘削オーガを地上に引き上げたら、掘削オーガの先端部に、上方に開口する垂れ受け容器を、吊り下げ手段を介し着脱可能に吊持させることを特徴とする。
【0016】
この構成により、1本の水硬性固化材液置換コラムの施工が終了して掘削オーガを地上に引き上げたら、掘削オーガの先端部には、上方に開口する垂れ受け容器が吊持される。従って、次の水硬性固化材液置換コラムの施工位置に施工装置を移動させる際に、掘削オーガから水硬性固化材液が垂れ落ちても、垂れ受け容器が受け止めるので、地表面に散乱して汚すことがなく施工できる。これにより地表面に水硬性固化材液が散乱した土砂の産業廃棄物処理の問題も発生しない。
また、置換コラムの施工が終了して、掘削オーガに掘削土砂(主に粘性土)が付着したまま地上に引き上げられ、掘削オーガが掘削孔上にあるとき、その掘削土砂が落下しても垂れ受け容器が受け止めるので、掘削孔の未だ固化しない水硬性固化材液(置換コラム)中に落下混入することが防止でき、これにより高品質の置換コラムを施工(築造)できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水硬性固化材液の垂れ受け装置および水硬性固化材液置換コラムの施工方法によれば、次のような効果を奏する。
(1)掘削オーガに付着したり、掘削オーガの供給通路内に残存する水硬性固化材液が地上面に垂れ落ちることを回避し、以ってこの水硬性固化材液が地表面を汚すことを防止できる。
(2)水硬性固化材液や掘削土砂が地表面上に垂れ落ち汚すことがないので、その部分の産業廃棄物処理がなくなり、産業廃棄物処分費用を削減することができる。
(3)地上に引き上げられた掘削オーガが掘削孔上にあるとき、掘削オーガ(特に掘削爪)に付着した掘削土砂(主に粘性土)が掘削孔の未だ固化しない水硬性固化材液(置換コラム)中に落下混入することが防止でき、置換コラムの品質の低下を回避することができる。
(4)垂れ受け装置に回収した水硬性固化材液は、混入した土塊を除去すれば再利用が可能になるし、廃棄容器に集めれば廃棄が容易になる。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面と参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態による水硬性固化材液の垂れ受け装置を示す斜視図である。
【図2】図1に示す実施の形骸の変形例を示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態による水硬性固化材液の垂れ受け装置を示す斜視図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態による水硬性固化材液の垂れ受け装置を示す斜視図である。
【図5】従来の置換コラムの施工方法を工程順(a)(b)(c)(d)に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態による水硬性固化材液の垂れ受け装置を示す斜視図である。
【0021】
この図1に示す水硬性固化材液の垂れ受け装置11は、上方に開口する垂れ受け容器12が、吊り下げ手段13を介し掘削オーガ6の先端部に、着脱可能に吊持される構成となっている。図1では側面が平坦な掘削オーガ6で示している。また、垂れ受け容器12として、本例では矩形容器19で示している。該矩形容器19は、矩形の底板19aに4枚の側板19bを連設したものからなり、各側板19bが上方に向かって拡開する形態をなす。
【0022】
吊り下げ手段13は、主にフック部材16およびワイヤロープ18で構成される。詳しくは、フック部材16の下端にリング部材17が設けられ、このリング部材17の外周4箇所に等長のワイヤロープ18の各一端が等間隔で止着されている。この4本の各ワイヤロープ18の他端は、前記矩形容器19のコーナー部の上端に取り付けた耳部材20に止着(結着)されている。リング部材17は、フック部材16に回転可能に設けても、固設してもよいが、回転可能な方が矩形容器19に回転しようとする外力が加わっても、各ワイヤロープ18を介し矩形容器19が回転できるため、この回転力が掘削オーガ6に伝達されないので好ましい。なお、ワイヤロープに代えてチェーンを用いてもよい。
【0023】
一方、掘削オーガ6の先端には掘削爪7が設けられている。掘削爪7は、平板を鏃(やじり)状に形成し、これに係止孔14が貫通形成され中抜け形状となっており、この係止孔14の下部がV字状15となっている。この係止孔14のV字状15の尖った最下部(最低部)が掘削オーガ6の略中心線上に位置するように形成されている。
従って、水硬性固化材液の垂れ受け装置11では、垂れ受け容器12(矩形容器19)は、フック部材16を掘削爪7の係止孔14に引っ掛けることで、図1に示すように掘削オーガ6の先端に吊り下げることができる。この時、4本のワイヤロープ18の長さはそれぞれが等しく、フック部材16はV字状15の係止孔14により掘削オーガ6の略中心線上に位置するため、矩形容器19は、略水平状態にて掘削オーガを中心とした位置に吊持される。
なお、掘削爪7に係止孔14を形成し中抜け形状とすると、係止孔14を垂れ受け装置11のフック部材16の係止に使用できるばかりでなく掘削オーガ6下端面の固化材液吐出口からの水硬性固化材液の吐出を邪魔することが少なくなるし、吐出口の逆止弁の装着交換が容易となる。
【0024】
しかして、水硬性固化材液の垂れ受け装置11は、水硬性固化材液置換コラムの築造が終了し、掘削オーガ6を地上に引き上げた直後に、フック部材16を掘削爪7の係止孔14に引っ掛けることで、矩形容器19を掘削オーガ6の先端に吊持させることができ、これにより掘削オーガ6から垂れ落ちたり、落下する水硬性固化材液や掘削土砂を、その矩形容器19で受け止めることができる。このため、垂れ落ちた水硬性固化材液が地表面を汚し、固化することを未然に回避することができるし、掘削オーガ6が掘削孔上にある間に、掘削オーガ6に付着した掘削土砂が掘削孔内に落下し、未だ固化しない置換コラム(水硬性固化材液)中に混入することを防止できる。
【0025】
図2は、図1に示す実施の形態の変形例を示す斜視図である。
図2に示す水硬性固化材液の垂れ受け装置11は、図1に示すフック部材16を吊り環16aとし、掘削オーガ6の先端の掘削爪7に係止部材28を固設し、吊り環16aを該係止部材28に係止して吊り下げるようにしたものであって、他は図1に示す実施の形態と同様であるので、同様な構成要素には同一符号を付して他の詳細な説明は省略する。
図2では係止部材28は、掘削爪7の両側面に設けた場合を示しているが、係止部材28は掘削爪7の片側面だけに設けてもよい。
この構成によれば、係止部材28は掘削爪7に後付けで取り付けることができる。
【0026】
図3は、本発明の他の実施の形態を示す水硬性固化材液の垂れ受け装置の斜視図である。この図3に示す水硬性固化材液の垂れ受け装置11Aは、垂れ受け容器12が中華なべ型の容器21であって、他は前記実施の形態と同様であるので、同様な構成要素は同一符号を付して説明する。
【0027】
この図3に示す水硬性固化材液の垂れ受け装置11Aは、上方に開口する垂れ受け容器12が、吊り下げ手段13を介し掘削オーガ6の先端部に、着脱可能に吊持される構成であり、フック部材16と、このフック部材16の下端に回転可能に取り付けられたリング部材17と、このリング部材17の外周の3箇所に、等間隔に一端が止着された3本の等長のワイヤロープ18と、この各ワイヤロープ18の他端に支持された垂れ受け容器12としての中華なべ型の容器21とを備える。各ワイヤロープ18の他端は、中華なべ型の容器21の上端部内周に等間隔で取付部材27を介し取り付けられた耳部材20に止着されている。なお、図3では、掘削オーガ6としてスパイラルスクリューオーガで示している。
【0028】
このため、水硬性固化材液の垂れ受け装置11Aでは、中華なべ型の容器21は、フック部材16を掘削爪7の係止孔14に引っ掛けることで、図3に示すように掘削オーガ6の先端に吊り下げることができる。この時、3本のワイヤロープ18の長さはそれぞれが等しく、フック部材16はV字状15の係止孔14により掘削オーガ6の略中心線上に位置するため、中華なべ型の容器21は、略水平状態にて掘削オーガを中心とした位置に吊持される。
【0029】
従って、水硬性固化材液の垂れ受け装置11Aは、水硬性固化材液置換コラムの築造が終了し、掘削オーガ6を地上に引き上げた直後に、フック部材16を掘削爪7の係止孔14に引っ掛けることで、中華なべ型の容器21を掘削オーガ6の先端に吊持させることができ、これにより掘削オーガ6から垂れ落ちたり、落下する水硬性固化材液や掘削土砂を、その中華なべ型の容器21で受け止めることができる。このため、垂れ落ちた水硬性固化材液が地表面を汚し、固化することを未然に回避することができるし、掘削オーガ6が掘削孔上にある間に、掘削オーガ6に付着した掘削土砂が掘削孔内に落下し、未だ固化しない置換コラム(水硬性固化材液)中に混入することを防止できる。
【0030】
図4は、本発明のさらに他の実施の形態を示す水硬性固化材液の垂れ受け装置の斜視図である。この図4に示す水硬性固化材液の垂れ受け装置11Bは、吊り下げ手段13の構成を前記実施の形態と異にするものであり、他は前記実施の形態と同様であるので、同様な構成要素には同一符号を付して説明する。
【0031】
この図4に示す水硬性固化材液の垂れ受け装置11Bは、上方に開口する垂れ受け容器12が、吊り下げ手段13を介し掘削オーガ6の先端部に、着脱可能に吊持される構成を有し、中央部付近にU字部22aを、また一端部にL字状に曲折されたL字部22bをそれぞれ有する水平棒状の吊り竿22と、中央部付近にU字部23a、24aを有し、その吊り竿22の二箇所に懸垂支持される略コ字状をなす吊り棒23、24と、これらの吊り棒23、24の下端に取り付けられた矩形容器25とを備える。この水平棒状の吊り竿22と、略コ字状をなす吊り棒23、24が、吊り下げ手段13を構成する。
前記吊り竿22はU字部22aが掘削爪7の係止孔14に係止支持される。吊り棒23、24はこれらの中央部に形成されたU字部23a、24aが吊り竿22の二箇所、具体的にはU字部22aから等距離離れた二位置に係止支持される。なお、吊り竿22の吊り棒24を支持する部位には、矩形容器25の重量バランスをとる目印となるカラー26が装着されている。
【0032】
かかる水硬性固化材液の垂れ受け装置11Bでは、先ず、吊り竿22を掘削オーガ6の掘削爪7に形成された係止孔14に通し、V字状15の底部にU字部22aを係止させる。また、このように係止された吊り竿22に対して矩形容器25に取り付けられた吊り棒23,24のU字部23a、24aを支持させる。この場合に、L字部22bを保持して掘削オーガ6の揺れを抑えながら、矩形容器25を移動させ、カラー26上にU字部24aが支持されるようにする。これにより矩形容器25を吊り竿22に対してバランスよく水平支持させることができる。
【0033】
従って、水硬性固化材液の垂れ受け装置11Bは、水硬性固化材液置換コラムの築造が終了し、掘削オーガ6を地上に引き上げた直後に、吊り竿22を掘削爪7の係止孔14に通し、係止孔14に通された吊り竿22に前述のように吊り棒23、24を吊り下げることにより、矩形容器25を掘削オーガ6の先端部に吊持させることができる。
これにより掘削オーガ6から垂れ落ちたり、落下する水硬性固化材液や掘削土砂を、その矩形容器25で受け止めることができる。このため、垂れ落ちた水硬性固化材液が地表面を汚し、固化することを未然に回避することができるし、掘削オーガ6が掘削孔上にある間に、掘削オーガ6に付着した掘削土砂が掘削孔内に落下し、未だ固化しない置換コラム(水硬性固化材液)中に混入することを防止できる。
【0034】
次に、本発明の実施の形態にかかる水硬性固化材液置換コラムの施工方法について説明する。
本発明の水硬性固化材液置換コラムの施工方法は、内部に水硬性固化材液の供給通路を有する掘削オーガの先端部に、少なくとも掘削爪と該水硬性固化材液の吐出口を備え、該掘削オーガをオーガモータを備えた施工装置で回転させながら所定深度まで掘進し、その後水硬性固化材液を該吐出口より吐出しつつ、該掘削オーガを回転させながら、または回転させないで引き上げ、掘削部の所定区間を該水硬性固化材液で充填する水硬性固化材液置換コラムの施工において、
施工が終了して掘削オーガを地上に引き上げた直後に、掘削オーガ6の先端部に、水硬性固化材液の垂れ受け装置を吊持させることを特徴とする。
【0035】
具体的には、水硬性固化材液置換コラムの築造は、図5(a)〜(d)に示す従来と同様の施工方法で行う。図5(a)〜(d)において説明すると、まず、図5(a)に示すように施工装置1のオーガモータ3に掘削オーガ6を取り付け、掘削オーガ6をリーダ2に沿って鉛直に据え、掘削オーガ6の掘削爪7の中心と削孔位置(コラム心)が一致するように合わせてセットする。
次に、図5(b)に示すように掘削オーガ6を回転(正回転または逆回転)させながら掘進する。これはオーガモータ3の駆動で回転させ、スライド板5をリーダ2に沿って下方向に移動させることで実施される。
【0036】
さらに、図5(b)に示すように掘進が所定深度に達したら、もしくは所定深度近傍から、水硬性固化材液の吐出口よりの吐出を開始する。掘削オーガ6が所定の深度に達した時点で、図5(c)に示すように掘削オーガ6を回転(正回転または逆回転)させ、または回転させないで、水硬性固化材液8を吐出しながら掘削オーガ6を引き上げ、所定区間の水硬性固化材液8の充填が終了すると、この水硬性固化材液の吐出を停止し、さらに掘削オーガ6を地上まで引き上げる。図5(d)は、施工が完了した状態を示している。
【0037】
このようにして水硬性固化材液置換コラムの築造が終了して、掘削オーガ6を地上に引き上げたら、その直後に、掘削オーガ6の先端部に、前記した水硬性固化材液の垂れ受け装置11、11A、11Bを吊持させ、施工装置1を次の施工位置に移動させる。次の施工位置に移動したら、掘削オーガ6の先端部より水硬性固化材液の垂れ受け装置11、11A、11Bを取り外し、再び前記図5(a)〜(d)に示す築造方法で水硬性固化材液置換コラムを築造する。
【0038】
ここでの水硬性固化材液の垂れ受け装置11、11A、11Bは、前記図1、図2、図3および図4に示すもので、上方に開口する垂れ受け容器12と、該垂れ受け容器12を掘削オーガ6の先端部に着脱可能に吊持させる吊り下げ手段13とを備える。垂れ受け容器12および吊り下げ手段13は、図1乃至図4に示す実施の形態で詳細に説明したので、ここでは省略する。
【0039】
従って、本発明の水硬性固化材液置換コラムの施工方法によれば、1本の置換コラムの施工が終了し、地上に引き上げられた掘削オーガ6の先端部には、垂れ受け容器12が吊り下げ手段13で吊持されているので、1本の置換コラムの施工が終了して、施工装置1を次の施工位置に移動させる場合等において、掘削オーガ6から水硬性固化材液が垂れ落ちても垂れ受け容器12が受け取るので、垂れ落ちる水硬性固化材液で地表面を汚し、これが固化することを防止して施工できる。また、掘削オーガ6が掘削孔上にある間に、掘削オーガ6に付着した掘削土砂(特に、掘削オーガ6の掘削爪7に付着した粘性の高い掘削土砂)が、掘削孔の未だ固化しない置換コラム(水硬性固化材液)中に落下混入することを防止でき、これにより高品質の置換コラムの築造が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、水硬性固化材液置換コラムの築造が終了し、掘削オーガを地上に引き上げてから次の施工位置に移動させる間に、掘削オーガ6から水硬性固化材液が垂れ落ちたり、掘削オーガ6に付着した掘削土砂が落下するのを、垂れ受け容器12で受け取り、地表面を汚したり、置換コラムの品質を低下させることを防止できる効果を有し、水硬性固化材液置換コラムの施工に用いて有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 施工装置
6 掘削オーガ
7 掘削爪
8 水硬性固化材液
11、11A、11B 水硬性固化材液の垂れ受け装置
12 垂れ受け容器
13 吊り下げ手段
14 係止孔
15 V字状
16 フック部材
16a 吊り環
17 リング部材
18 ワイヤロープ
19、25 矩形容器
20 耳部材
21 中華なべ型の容器
22 吊り竿
23、24 吊り棒
28 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する垂れ受け容器と、該垂れ受け容器を、水硬性固化材液置換コラムの施工装置に取り付けた掘削オーガの先端部に吊持させる吊り下げ手段と、を備え、垂れ受け容器は、吊下げ手段を介し掘削オーガの先端部に着脱可能となっていることを特徴とする水硬性固化材液の垂れ受け装置。
【請求項2】
前記掘削オーガは、先端部に掘削爪を備え、該掘削爪は中抜け形状であり、この中抜け部分が係止孔となり垂れ受け容器は吊り下げ手段でこの係止孔に着脱自在に係止して吊持することを特徴とする請求項1記載の水硬性固化材液の垂れ受け装置。
【請求項3】
内部に水硬性固化材液の供給通路を有する掘削オーガの先端部に、少なくとも掘削爪と該水硬性固化材液の吐出口を備え、該掘削オーガをオーガモータを備えた施工装置で回転させながら所定深度まで掘進し、その後水硬性固化材液を該吐出口より吐出しつつ、該掘削オーガを回転させながら、または回転させないで引き上げ、掘削部の所定区間を該水硬性固化材液で充填する水硬性固化材液置換コラムの施工において、
施工が終了して掘削オーガを地上に引き上げたら、掘削オーガの先端部に、上方に開口する垂れ受け容器を、吊り下げ手段を介し着脱可能に吊持させることを特徴とする水硬性固化材液置換コラムの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−47003(P2012−47003A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191723(P2010−191723)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000133881)株式会社テノックス (62)
【出願人】(301033053)株式会社日本住宅保証検査機構 (9)
【Fターム(参考)】