説明

水硬性材料、及び、充填材

【課題】 炭酸カルシウムを主成分とする増量材を用いた場合よりも硬化体の熱抵抗を低減することができ、埋設される電力ケーブル等の発熱体の熱を効果的に放散させることができる硬化体を形成する水硬性材料、及び、充填材を提供することを課題とする。
【解決手段】 発熱体が埋設される硬化体を形成する水硬性材料であって、二酸化ケイ素を主成分とするフィラーを含有する増量材と、セメントを主成分とする固化材とから構成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル等の発熱体が埋設される硬化体を形成する水硬性材料、及び、前記発熱体の周囲に形成された空間に充填されて前記硬化体を形成する充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地中に埋設される電力ケーブルは、地中に埋設された推進管の内側に配置された送電管に収容される。そして、送電管(内管)と推進管(外管)との間には、水硬性材料が水と混練されてなる充填材が充填され、該充填材が硬化することで硬化体が形成される。このような硬化体が形成されることで、外管内に内管が固定されると共に、地震や地中の圧力等から内管(具体的には、電力ケーブル)が保護されている。
【0003】
上記のようにして地中に埋設された電力ケーブルに電流が流れると、電力ケーブルが発熱し、発生した熱が硬化体に蓄積されて電力ケーブルの周囲の温度が経時的に上昇する。このように電力ケーブルの周囲の温度が上昇すると、電力ケーブルの熱が硬化体を介して周囲に放散され難い環境となり、電力ケーブル自体の温度も経時的に上昇することとなる。このため、電力ケーブルの電気抵抗が増加し、電流の供給量が低下したり、電力ケーブルに破損が生じたりする虞がある。
【0004】
このため、電力ケーブルで発生した熱を効果的に放散させるべく、硬化体の熱抵抗を低減する試みがなされている。例えば、セメントを主成分とする固化材と、炭酸カルシウムからなる増量材とを含有し、炭酸カルシウムの含有量を混練される水量に対して所定の値に設定した水硬性材料が提案されている(特許文献1参照)。斯かる水硬性材料を用いて形成された硬化体は、熱抵抗値が低いものとなるため、埋設された電力ケーブルの熱が蓄積され難くなる。これにより、電力ケーブルの周囲の温度が経時的に上昇して電力ケーブルの熱が放散され難い環境となるのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−1446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、埋設される電力ケーブルの本数や、充填される充填材の体積等の影響によっては、特許文献1のような水硬性材料を用いた硬化体であっても、電力ケーブルの熱を効果的に放散させることができず、電力ケーブルの周囲に熱が蓄積されてしまう場合がある。このため、硬化体の熱抵抗をよりいっそう低減することが求められている。
【0007】
そこで、本発明は、炭酸カルシウムを主成分とする増量材を用いた場合よりも硬化体の熱抵抗を低減することができ、埋設される電力ケーブル等の発熱体の熱を効果的に放散させることができる硬化体を形成する水硬性材料、及び、充填材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水硬性材料は、発熱体が埋設される硬化体を形成する水硬性材料であって、二酸化ケイ素を主成分とするフィラーを含有する増量材と、セメントを主成分とする固化材とから構成されてなることを特徴とする。
【0009】
斯かる構成によれば、発熱体が埋設される硬化体を形成する水硬性材料であって、二酸化ケイ素を主成分とするフィラーを含有する増量材と、セメントを主成分とする固化材とから構成されてなることで、水と混練されて硬化した際に形成される硬化体の熱抵抗を従来(具体的には、炭酸カルシウムを主成分とする増量材を用いる場合)よりも低くすることができる。これにより、発熱体から放出される熱が硬化体に蓄積されるのを抑制することができ、発熱体の周囲の温度が経時的に上昇してしまうのを抑制することができる。
【0010】
例えば、硬化体中に埋設された電力ケーブルに電流が流れることで電力ケーブルが発熱した場合であっても、電力ケーブル(発熱体)から放出される熱が硬化体に蓄積されるのが抑制されるため、電力ケーブルの周囲の温度が経時的に上昇してしまうのを抑制することができる。これにより、電力ケーブルの温度が経時的に上昇してしまうのを抑制することができ、電力ケーブルを流れる電流の供給量が不安定となるのを抑制することができると共に、電力ケーブルが熱によって損傷してしまうのを抑制することができる。
【0011】
前記増量材は、前記フィラーに加えて、水砕スラグ、銅砕スラグ、クリンカーアッシュ、又は、フライアッシュのうちから選択される少なくとも一種を更に含有してなることが好ましい。
【0012】
斯かる構成によれば、上記の物質と共にフィラーを増量材として用いることで、従来の増量材(炭酸カルシウムを主成分とするもの)と共に上記の物質を増量材として用いた場合よりも、硬化体の熱抵抗を低減することができる。このため、産業廃棄物となるような上記の物質を増量材として活用することができ、産業廃棄物の有効利用を図ることができる。
【0013】
本発明に係る充填材は、発熱体の周囲に形成された空間に充填される充填材であって、上記の水硬性材料と水とが混練されてなることを特徴とする。更に、本発明に係る充填材は、発熱体の周囲に形成された空間に充填されて硬化体を形成する充填材であって、二酸化ケイ素を主成分とするフィラーを含有する増量材と、セメントを主成分とする固化材と、水とが混練されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、炭酸カルシウムを主成分とする増量材を用いた場合よりも硬化体の熱抵抗を低減することができ、埋設される発熱体の熱を効果的に放散させることができる硬化体を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
本発明に係る水硬性材料は、発熱体を埋設する硬化体を形成する際に用いられるものである。具体的には、前記水硬性材料は、水と混練された状態で、発熱体の周囲に形成された空間(以下、充填空間とも記す)に充填されて硬化することで硬化体を形成するものである。例えば、電力ケーブル(発熱体)を地中に埋設する際には、水と混練された水硬性材料(以下、充填材とも記す)は、地中に埋設された推進管(外管)と、該推進管の内側に配置されて電力ケーブルを収容する送電管との間に充填されて硬化体を形成する。
【0017】
前記水硬性材料は、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とするフィラーを含有する増量材と、セメントを主成分とする固化材とから構成されている。水硬性材料中の固化材の含有量としては、7wt%以上であることが好ましく、10wt%以上であることがより好ましい。また、水硬性材料中の固化材の含有量としては、25wt%以下であることが好ましく、18wt%以下であることがより好ましい。また、固化材を構成するセメントとしては、特に限定されるものではなく、要求される圧縮強度や硬化時間などに応じて適宜選択することができる。例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、高炉セメント等を用いることができる。
【0018】
また、固化材を構成するセメントとしては、熱抵抗値が低いものを選択することが好ましい。具体的には、固化材を構成するセメントの熱抵抗値としては、1.0K・m/W以下であることが好ましく、0.8K・m/W以下であることがより好ましい。上記の各種セメントにおいては、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、高炉セメントの順位に熱抵抗値が高くなるが、水硬性材料と水とを混練してスラリー状の充填材を形成した際の充填空間への充填性等を考慮すると、普通ポルトランドセメントを用いることが好ましい。
【0019】
増量材の配合量としては、固化材100重量部に対して、350重量部以上であることが好ましく、400重量部以上であることがより好ましい。また、増量材の配合量としては、1300重量部以下であることが好ましく、800重量部以下であることがより好ましい。また、増量材を構成するフィラーとしては、珪砂、珪石粉等を用いることができる。増量材中のフィラーの含有量としては、50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。また、フィラーの平均粒径としては、レーザー回折・散乱式粒度分布計(日機装社製 MT3300)に基づいて測定される平均粒径(メジアン径)が30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましい。また、フィラーの平均粒径としては、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。
【0020】
増量材を構成する他の成分としては、前記フィラーに加えて、水砕スラグ、銅砕スラグ、クリンカーアッシュ、又は、フライアッシュのうちから選択される少なくとも一種を用いることができる。これらの成分の配合量としては、フィラー100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、33質量部以下であることがより好ましい。また、これらの成分の水硬性材料1m3当りの含有量は、600kg以下であることが好ましく、300kg以下であることがより好ましい。また、これらの成分の平均粒径としては、レーザー回折・散乱式粒度分布計(日機装社製 MT3300)に基づいて測定される平均粒径(メジアン径)がフィラーの粒径よりも大きくても何ら支障はない。具体的には、これらの成分の平均粒径としては、50μm以上であることが好ましい。また、これらの成分の平均粒径としては、700μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態に係る水硬性材料は、上記の成分以外に、必要に応じて他の成分を含有してもよい。例えば、混和剤として、減水剤、増粘剤、遅延剤、促進剤等を含有させることができる。
【0022】
本実施形態に係る水硬性材料は、水と混練されて流動性を有するスラリー状で使用される。具体的には、水と混練された水硬性材料(充填材)は、ポンプ等を用いて充填空間へ圧送されて充填空間に充填される。このため、水硬性材料と水との混合割合は、充填材の流動性が良好なものとなるように設定されることが好ましい。具体的には、充填材のフロー値が200mm以上となるように、水硬性材料と水との混合割合が設定されることが好ましく、300mm以上となるように、設定されることがより好ましい。より詳しくは、水硬性材料と水との混合割合は、水硬性材料の重量に対して水が25wt%以上となることが好ましく、30wt%以上となることがより好ましい。また、水硬性材料と水との混合割合は、50wt%以下となることが好ましく、40wt%以下となることがより好ましい。
【0023】
上記のように水硬性材料と水との混合割合が設定されることで、充填材の流動性が良好なものとなり、充填材を圧送する際にポンプ等の圧送手段にかかる負荷を低減することができる。更に、充填空間に充填された充填材が充填空間の形状に追従し易くなるため、充填空間に充填材を隙間無く充填させることができる。また、水硬性材料と水との混合割合を上記のような割合とすることで、充填材が硬化する際に水分が蒸発して硬化体の内部に空隙が形成されるのを抑制することができる。また、水硬性材料と水との混合割合を上記のような割合とすることで、ブリーディングの発生を抑制することができる。
【0024】
本発明に係る水硬性材料は、水と混練されて充填空間に充填された状態で、硬化することで、従来よりも熱抵抗値が低い硬化体を形成する。硬化体の熱抵抗値としては、1.0K・m/W以下となることが好ましく、0.8K・m/W以下となることがより好ましい。また、前記硬化体の圧縮強度としては、従来の水硬性材料、充填材を用いて形成された硬化体の圧縮強度と同等程度であることが好ましい。具体的には、硬化体の圧縮強度としては、0.5N/mm2以上であることが好ましく、1.0N/mm2以上であることがより好ましい。
【0025】
以上のように、本発明に係る水硬性材料、及び、充填材によれば、炭酸カルシウムを主成分とする増量材を用いた場合よりも硬化体の熱抵抗を低減することができ、埋設される電力ケーブル等の発熱体の熱を効果的に放散させることができる硬化体を形成することができる。
【0026】
即ち、前記水硬性材料、及び、充填材は、二酸化ケイ素を主成分とするフィラーを含有する増量材と、セメントを主成分とする固化材とを含有してなることで、形成される硬化体の熱抵抗を従来(具体的には、炭酸カルシウムを主成分とする増量材を用いる場合)よりも低くすることができる。これにより、発熱体から放出される熱が硬化体に蓄積されるのを抑制することができ、発熱体の周囲の温度が経時的に上昇してしまうのを抑制することができる。
【0027】
例えば、硬化体中に埋設された電力ケーブルに電流が流れることで電力ケーブルが発熱した場合であっても、電力ケーブル(発熱体)から放出される熱が硬化体に蓄積されるのが抑制されるため、電力ケーブルの周囲の温度が経時的に上昇してしまうのを抑制することができる。これにより、電力ケーブルの温度が経時的に上昇してしまうのを抑制することができ、電力ケーブルを流れる電流の供給量が不安定となるのを抑制することができると共に、電力ケーブルが熱によって損傷してしまうのを抑制することができる。
【0028】
水砕スラグ等の産業廃棄物と共にフィラーを増量材として用いることで、従来の増量材(炭酸カルシウムを主成分とするもの)と共に上記の物質を増量材として用いた場合よりも、硬化体の熱抵抗を低減することができる。このため、産業廃棄物となるような上記の物質を増量材として活用することができ、産業廃棄物の有効利用を図ることができる。
【0029】
なお、本発明に係る水硬性材料、及び、充填材は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、上記した複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0030】
例えば、上記実施形態では、固化材と増量材とを含有する水硬性材料が水と混練されて充填材が構成されているが、これに限定されるものではなく、固化材と増量材とを別々に用意し、固化材と増量材と水とが混練されて充填材が構成されてもよい。具体的には、水、混和剤(減水剤等)、固化材(セメント)、増量材(フィラー、及び、水砕スラグ等)の順にミキサーに各材料を投入し、所定時間混練することで充填材を形成してもよい。または、セメントとフィラーのみを混合した中間材料に、水砕スラグ等の他の増量材、及び、水を添加して混練することで充填材を形成してもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、発熱体の例として、電力ケーブルを挙げてあるがこれに限定されるものではなく、他の発熱体であってもよい。具体的には、高温の蒸気等の流体が流通する配管等であってもよい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0033】
<使用材料>
・固化材:NC(住友大阪セメント社製 普通ポルトランドセメント)
・増量材:フィラー(主成分:SiO2、住友大阪セメント社製 フィラー9号砂)
・増量材:TG(主成分:炭酸カルシウム、住友大阪セメント社製 スミシールド)
・増量材:水砕スラグ(新日本製鐵社製 高炉スラグ)
・増量材:銅砕スラグ(小名浜製錬社製 銅鉱砕スラグ)
・増量材:フライアッシュ(成分:石炭灰、東北発電工業社製 JIS外品)
・増量材:クリンカーアッシュ(成分:石炭灰、東北発電工業社製)
・混和材:ベントナイト(ホージュン社製 製品名:浅間)
・混和剤:減水剤(花王社製 製品名:マイティ150)
【0034】
<実施例1〜7>
1.配合
上記使用材料から選択した材料を下記表1に示す配合割合で水と混練して充填材を作製した。
2.フロー値
各実施例の充填材のフロー値をJIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠して測定した。各実施例における充填材のフロー値については、下記表2に示す通りである。
3.熱抵抗値
(1)各実施例の充填材を型枠内に流し込み、260mm×260mm×100mmのサイズの直方体状の硬化体を作製し、材齢7日と28日の硬化体を試験体とした。
(2)得られた試験体を室温20℃の環境下で、加熱装置上に載置し、下面全体の温度が60℃となるように加熱した。なお、試験体の上面と下面との間の間隔hは、100mmとした。
(3)上面及び下面の温度が安定した後、上面及び下面の温度を温度計(東京測器研究所社製 TDS−102)を用いて測定した。また、上面に設置した熱流計(京都電子工業社製 HFM−115)を用いて、熱流量を30秒間隔で10回測定した。
(4)得られた温度、熱流量の結果から(1)式及び(2)式を用いて熱抵抗値を算出し、その熱抵抗値の相加平均を各試験体の熱抵抗値とした。各実施例における試験体の熱抵抗値については、下記表2に示す通りである。

k=Q/(t/h)・・・(1)

熱抵抗値(K・m・W-1)=1/k・・・(2)

k:熱伝導率(W・K-1・m-1
Q:熱流量(W・m2
t:上面の温度と下面の温度との差(℃)
h:上面と下面との間隔(m)

4.圧縮強度
各実施例の充填材を用いて、直径50mm×高さ100mmの試験体を6本ずつ作製し、各試験体に対してJIS A 1108に準拠した圧縮強度の測定を行った。そして、各試験体について圧縮強度の相加平均を算出し、各試験体の圧縮強度とした。各実施例における試験体の圧縮強度については、下記表2に示す通りである。
【0035】
<比較例1〜7>
1.配合
上記使用材料から選択した材料を下記表1に示す配合割合で水と混練して充填材を作製した。
2.フロー値
各実施例と同様の方法で、各比較例の充填材を用いてフロー値の測定を行った。各比較例の充填材のフロー値については、下記表2に示す通りである。
3.熱抵抗値
各実施例と同様の方法で、各比較例の充填材について試験体を作製し、各実施例と同様の方法で、熱抵抗値を求めた。各比較例における試験体の熱抵抗値については、下記表2に示す通りである。
4.圧縮強度
各実施例と同様の方法で、各比較例の充填材について試験体を作製し、各実施例と同様の方法で、圧縮強度の測定を行った。各比較例における試験体の圧縮強度については、下記表2に示す通りである。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
<まとめ>
実施例1と比較例1〜4とを比較すると、実施例1の熱抵抗値の方が低いことが認められる。つまり、フィラー(SiO2を主成分とするもの)を増量材として用いた充填材の方が、従来技術であるTG(炭酸カルシウムを主成分とするもの)を増量材として用いた充填材や、水砕スラグ等の産業廃棄物のみを増量材として用いた充填材よりも、熱抵抗値の低い硬化体を形成することができると認められる。このため、硬化体中に埋設された発熱体の熱が硬化体における発熱体の周囲に蓄積されてしまうのを抑制することができる。これにより、例えば、発熱体として電力ケーブルを埋設した際に、電力ケーブルから放出される熱によって電力ケーブル周囲の温度が経時的に上昇し、それに伴って電力ケーブルの温度が上昇して、電力の供給量が不安定になってしまったり、電力ケーブルが損傷してしまったりするのを抑制することができる。
【0039】
また、実施例2〜7と比較例5〜7とを比較すると、各実施例の熱抵抗値の方が低いことが認められる。具体的には、実施例2と比較例3との関係や、実施例5と比較例4との関係を見てみると、TG(炭酸カルシウムを主成分とするもの)と、フィラー(SiO2を主成分とするもの)以外の増量材とを組み合わせた場合よりも、フィラーと、TG以外の増量材とを組み合わせた場合の方が、熱抵抗値の低い硬化体を形成することができると認められる。このため、上述のように、単体では熱抵抗値が高くなってしまった増量材(水砕スラグ等の産業廃棄物)であっても、フィラーと併用することで、増量材として用いることができ、水砕スラグ等を資源として有効に活用することができる。
【0040】
各実施例と比較例1とを比較すると、従来技術である比較例1のフロー値の方が高いことが認められるが、各実施例の充填材であっても、水や減水剤の添加量を調節することで、各実施例のような熱抵抗値を維持しつつ従来と同様のフロー値を得ることができる。
【0041】
また、実施例1と比較例1とを比較すると、圧縮強度に差がないことが認められる。つまり、TG(炭酸カルシウムを主成分とするもの)に代えてフィラー(SiO2を主成分とするもの)を増量材として含有する充填材を用いた場合には、従来と同等の圧縮強度を有する共に、熱抵抗値が低い硬化体を形成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体が埋設される硬化体を形成する水硬性材料であって、
二酸化ケイ素を主成分とするフィラーを含有する増量材と、セメントを主成分とする固化材とから構成されてなることを特徴とする水硬性材料。
【請求項2】
前記増量材は、前記フィラーに加えて、水砕スラグ、銅砕スラグ、クリンカーアッシュ、又は、フライアッシュのうちから選択される少なくとも一種を更に含有してなることを特徴とする請求項1に記載の水硬性材料。
【請求項3】
発熱体の周囲に形成された空間に充填される充填材であって、
請求項1又は2に記載の水硬性材料と水とが混練されてなることを特徴とする充填材。
【請求項4】
発熱体の周囲に形成された空間に充填されて硬化体を形成する充填材であって、
二酸化ケイ素を主成分とするフィラーを含有する増量材と、セメントを主成分とする固化材と、水とが混練されてなることを特徴とする充填材。
【請求項5】
前記増量材は、前記フィラーに加えて、水砕スラグ、銅砕スラグ、クリンカーアッシュ、又は、フライアッシュのうちから選択される少なくとも一種を更に含有してなることを特徴とする請求項4に記載の充填材。

【公開番号】特開2013−79164(P2013−79164A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219537(P2011−219537)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】