説明

水硬性粉体の製造方法

【課題】水硬性組成物の硬化時の圧縮強度を向上させるセメント等の水硬性粉体が得られる、水硬性粉体の製造方法を提供する。
【解決手段】グリセリン及びグリセリンモノ酢酸エステルから選ばれる1種以上の化合物Aと、硫酸アルカリ金属塩Bとを水硬性化合物に添加して粉砕する水硬性粉体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕助剤を用いて水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水硬性化合物、例えばポルトランドセメントクリンカ、高炉スラグ等を粉砕して種々の水硬性粉体が製造されている。例えば、ポルトランドセメントは、石灰石、粘土、鉄さい等の原料を焼成して得られたクリンカに適量の石膏を加え、粉砕して製造される。その際、水硬性化合物の粉砕効率を高めるために、ジエチレングリコールやトリエタノールアミンなどの粉砕助剤が用いられている。粉砕工程においては、得られる水硬性粉体を用いた硬化体の強度を低下させることなく、水硬性化合物をできるだけ能率良く所望の粒径にすることが望ましい。
【0003】
水硬性化合物の粉砕助剤としてグリセリンが用いられている。例えば、特許文献1には、セメントの圧縮強さを向上させるためにセメント添加物として未処理グリセリンを使用し、未処理グリセリンが、重量%にして、1〜10%のアルカリ金属無機塩を含んでいることが記載されている。そして、その未処理グリセリンは、クリンカの粉砕処理中に添加できることが記載されている。
【0004】
また、コンクリートの7日強度及び28日強度を向上するために、無機塩を用いる技術がある。例えば、特許文献2には、高級トリアルカノールアミンと、水溶性アルカリ金属塩よりなる強度増強性添加剤が記載されており、この添加剤はセメント粉末との混合物であってよく、仕上げミル加工中にセメントクリンカと相互磨砕してもよいことが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、粉砕効率や、得られる水硬性粉体から製造した水硬性組成物の強度を向上させるために、(A)多価アルコール及び多価アルコールのアルキレンオキシド付加物から選ばれる1種以上と(B)硫酸化剤とを反応させて得られる化合物(a)の存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を経て水硬性粉体を製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−519752号公報
【特許文献2】特開平3−183647号公報
【特許文献3】特開2010−42986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、水硬性粉体の生産性の向上、コンクリート二次製品の生産性向上及びコンクリート硬化体の強度向上等の理由により、水硬性粉体の製造方法では、グリセリン等の粉砕助剤の水硬性化合物の粉砕性を低下させることなく、得られる水硬性粉体を用いた水硬性組成物の硬化時の圧縮強度をさらに向上させることが望まれる。
【0008】
本発明の課題は、水硬性組成物の硬化時の圧縮強度(水硬性粉体が水に接してから24時間後の圧縮強度、以後24時間強度という)を向上させるセメント等の水硬性粉体が得られる水硬性粉体の製造方法を提供することである。例えば、24時間強度は、コンクリート二次製品の生産サイクルに関連する脱型可能な時間の指標となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、硫酸アルカリ金属塩を、粉砕助剤であるグリセリン及び/又はグリセリンモノ酢酸エステルと共に、水硬性化合物に添加して粉砕することで、粉砕助剤の粉砕性を低下させることなく、得られた水硬性粉体を用いた水硬性組成物の硬化時の圧縮強度が大きく向上することを見出した。
【0010】
本発明は、グリセリン及びグリセリンモノ酢酸エステルから選ばれる1種以上の化合物A〔以下、化合物Aという〕と、硫酸アルカリ金属塩Bとを水硬性化合物に添加して粉砕する水硬性粉体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、グリセリン及び/又はグリセリンモノ酢酸エステルと硫酸アルカリ金属塩とを添加して粉砕することで、グリセリン等の粉砕助剤の水硬性化合物の粉砕性を低下させることなく、得られる水硬性組成物の硬化時の圧縮強度を向上させるセメント等の水硬性粉体が得られる水硬性粉体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明では、グリセリン及び/又はグリセリンモノ酢酸エステルと硫酸アルカリ金属塩を、水硬性化合物の粉砕時に添加することで、グリセリン及び/又はグリセリンモノ酢酸エステルと、硫酸アルカリ金属塩が、水硬性粉体の表面に偏りなく均一に付着する。水硬性粉体と水との混練時には、グリセリン及び/又はグリセリンモノ酢酸エステルと硫酸アルカリ金属塩が互いに近傍に存在するため、効率良く水硬性粉体を構成する鉱物の水和反応が促進され、効果的に強度向上効果を発現することができると推定される。そして、水硬性化合物の粉砕時に硫酸アルカリ金属塩を存在させてもグリセリンやグリセリンモノ酢酸エステルによる粉砕効率の向上を阻害しないため、本発明のように粉砕時に硫酸アルカリ金属塩を存在させることでより有利な効果が得られることになる。
【0013】
一方、粉砕助剤であるグリセリン及び/又はグリセリンモノ酢酸エステルを用いて水硬性粉体を得た後に、硫酸アルカリ金属塩を混合した場合は、水硬性粉体の表面にグリセリンやグリセリンモノ酢酸エステルが付着しているが、硫酸アルカリ金属塩は、水硬性粉体の表面に局所的に付着しているものや、水硬性粉体には付着しないものが存在することになる。その結果、得られた水硬性粉体と水との混練時には、グリセリンやグリセリンモノ酢酸エステルと、硫酸アルカリ金属塩とが協調した効果を発現しにくくなるために、硬化強度の向上の程度が劣ると推定される。
【0014】
グリセリンやグリセリンモノ酢酸エステルと、硫酸アルカリ金属塩の作用に関しては、グリセリン及び/又はグリセリンモノ酢酸エステルが、水硬性粉体のカルシウムイオンの溶出を促進し、水硬性粉体の水和反応速度及び水和反応率の両者を向上し、硫酸アルカリ金属塩から生じる硫酸イオンが適度に存在することで硫酸イオンを構成要素とする水和結晶鉱物の生成が促進され、硬化強度が向上すると推定される。
【0015】
さらに、硫酸アルカリ金属塩から生じるアルカリ金属イオンは、水硬性粉体と水との混練時には、水和反応により生じる水硬性粉体の表面に生じるゲル層等を破壊することで水和反応率が高められ硬化強度を向上する推定される。
【0016】
化合物Aのグリセリン及びグリセリンモノ酢酸エステルは市販品を用いることができる。グリセリンとしては、市販品の精製グリセリン、例えば、ヤシ由来の油脂のエステル交換で得られたグリセリンを用いることができる。また、牛脂や植物油脂の加水分解によって得られた粗かん水、粗かん水から不純物を除去した精製かん水等を用いることができる。24時間強度及び7日強度を向上する観点から、粗かん水、精製グリセリンが好ましく、精製グリセリンがより好ましい。
【0017】
硫酸アルカリ金属塩Bは市販品を用いることができる。硫酸アルカリ金属塩Bとしては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム及び硫酸リチウムが挙げられる。中でも24時間強度及び7日強度を向上する観点から硫酸ナトリウムを用いることが好ましい。
【0018】
化合物Aの添加量は、粉砕性の向上と24時間強度及び7日強度の向上の観点から、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物、例えばセメントクリンカ100重量部に対して、0.01〜1.50重量部、更に0.02〜1.50重量部用いることが好ましく、0.04〜1.00重量部用いることがより好ましく、0.11〜0.70重量部となるように用いることが更に好ましい。また、化合物Aは、粉砕性の向上の観点から、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物、例えばセメントクリンカ100重量部に対して、0.04重量部以上、更に0.11重量部以上用いることが好ましく、また、1.20重量部以下が好ましく、0.60重量部以下がより好ましく、更に0.50重量部以下が更に好ましく、0.25重量部以下用いることがより更に好ましい。また、化合物Aは、24時間強度及び7日強度を向上する観点から、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物、例えばセメントクリンカ100重量部に対して、0.12重量部以上が好ましく、0.15重量部以上がより好ましく、0.35重量部以上が更に好ましい。また、1.80重量部以下が好ましく、1.40重量部以下がより好ましく、1.20重量部以下が更に好ましい。
【0019】
また、硫酸アルカリ金属塩Bの添加量は、24時間強度及び7日強度を向上する観点から、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物、例えばセメントクリンカ100重量部に対して、0.02〜2.0重量部が好ましく、0.12〜1.7重量部がより好ましく、0.25〜0.95重量部がより更に好ましく、0.35〜0.80重量部がより更に好ましい。
【0020】
化合物A及び硫酸アルカリ金属塩Bの添加量の合計量は、24時間強度及び7日強度を向上する観点から、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物、例えばセメントクリンカ100重量部に対して合計の固形分で0.04〜3.5重量部が好ましく、0.14〜3.2重量部がより好ましく、0.30〜2.00重量部が更に好ましく、0.40〜1.80重量部がより更に好ましく、0.65〜1.30重量部がより更に好ましい。
【0021】
本発明では、水硬性化合物の粉砕性の向上の観点から、化合物Aと硫酸アルカリ金属塩Bとの重量比は、化合物A/硫酸アルカリ金属塩Bで、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましい。また、24時間強度及び7日強度を向上する観点から、化合物Aと硫酸アルカリ金属塩Bとの重量比は、化合物A/硫酸アルカリ金属塩Bで、10以下が好ましく、8.0以下がより好ましく、2.0以下がより好ましく、1.0以下がより好ましく、0.3以下が更に好ましく、0.2以下がより更に好ましい。以上2つの観点から、グリセリン及びグリセリンモノ酢酸エステルから選ばれる化合物Aと、硫酸アルカリ金属塩Bとの重量比は、化合物A/硫酸アルカリ金属塩Bで、0.1〜8.0が好ましく、0.1〜2.0がより好ましく、0.2〜1.0が更に好ましく、0.2〜0.3がより更に好ましい。
【0022】
本発明に係る化合物Aは、通常、その混合物が常温、例えば20℃において、液状であるので、水硬性化合物を粉砕に用いる際の秤量や添加操作等の作業性に優れるものである。化合物Aは、濃度100重量%の液状として用いることができるが、更に取扱いを容易にする観点から、水溶液として用いても良い。その場合の化合物Aの水溶液中の合計の濃度は30〜99重量%が好ましく、40〜99重量%がより好ましく、50〜99重量%が更に好ましい。
【0023】
化合物Aを含有する水溶液を用いる場合は、水硬性化合物の粉砕性の向上と硬性化合物の粉砕に用いる際の秤量や添加操作等の作業性の観点から、水硬性化合物100重量部に対して当該水溶液の水の量が0.001〜2.0重量部であること好ましく、0.005〜1.0重量部であることがより好ましく、0.001〜0.50重量部であることが更に好ましい。
【0024】
本発明に係る硫酸アルカリ金属塩Bは、通常、粉末状である。水硬性化合物を粉砕に用いる際に、添加される石膏と同様に、粉末で添加することができる。
【0025】
本発明では、粉砕時に、別々に用意した化合物Aと硫酸アルカリ金属塩Bを添加できるため、水硬性組化合物への添加量の調整や、化合物Aと硫酸アルカリ金属塩Bの重量比の調整などが容易となる。
【0026】
本発明の水硬性粉体の製造方法では水硬性化合物を粉砕し水硬性粉体を得る。水硬性化合物とは、水と反応して硬化する性質をもつ物質、及び単一物質では硬化性を有しないが2種以上を組み合わせると水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する化合物をいう。一般に、水硬性化合物はアルカリ土類金属の酸化物とSiO2、Al23、Fe23、TiO2、P25、ZnOなどの酸化物が常温又は水熱条件下で水和物を形成する。水硬性化合物としては、例えば、セメントに含有される鉱物(C3S、C2S、C3A、C4AF)、スラグ、フライアッシュ、石灰石、鉄さい、アルミナ、焼却灰等が挙げられ、水硬性粉体の原料として用いることができる。
【0027】
水硬性粉体としてポルトランドセメントを得る場合、例えば、ポルトランドセメントは、石灰石、粘土、鉄さい等の原料を焼成して得られた水硬性化合物であるクリンカを予備粉砕し、必要に応じて石膏を加え、仕上粉砕して、ブレーン値2500cm2/g以上の比表面積を有する粉体として製造される。
【0028】
本発明に係る化合物A及び硫酸アルカリ金属塩Bは、前記水硬性化合物、好ましくはクリンカ粉砕の際の粉砕助剤として用いることが好ましい。また、本発明に係る化合物A及び硫酸アルカリ金属塩Bは、仕上粉砕での粉砕助剤として用いることが好ましい。
【0029】
化合物A及び硫酸アルカリ金属塩Bを添加して粉砕する方法として、水硬性化合物、例えばクリンカを含む原料に化合物A(好ましくは水溶液として)と、硫酸アルカリ金属塩B(好ましくは粉末状)を添加して行う。なお、この水溶液には、硫酸アルカリ金属塩Bを配合することができるが、硫酸アルカリ金属塩Bの水への溶解性の観点から、水溶液に配合せず別添することが好ましい。
【0030】
他の成分としては、消泡剤、水、化合物A以外の公知の粉砕助剤等を添加しても良い。
【0031】
本発明の水硬性粉体の製造方法では、原料、用途等により、適当な粒径の粉体が得られるよう、粉砕の条件を調整すればよい。得られる水硬性粉体の硬化時の圧縮強度、及び製造コストの観点から、比表面積、ブレーン値が2000〜5000cm2/gが好ましく、2500〜5000cm2/gがより好ましく、3000〜4000cm2/gが更に好ましい。比表面積が前記範囲を満たす粉体となるまで、水硬性化合物、例えばクリンカの粉砕を行うことが好ましい。目的のブレーン値は、例えば粉砕時間を調整することにより得ることができる。粉砕時間を長くするとブレーン値が大きくなり、短くするとブレーン値が小さくなる傾向がある。
【0032】
本発明において、水硬性化合物の粉砕に使用される粉砕装置は、特に限定されないが、例えばセメントなどの粉砕で汎用されているボールミルを挙げることができる。該装置の粉砕媒体(粉砕ボール)の材質は、被粉砕物(例えばセメントクリンカの場合、カルシウムアルミネート)と同等又はそれ以上の硬度を有するものが望ましく、一般に入用可能な市販品では、例えば鋼、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、チタニア、タングステンカーバイド等を挙げることができる。
【0033】
水硬性組成物中の空気量増大現象による強度低下を抑制する観点から、更に消泡剤を併用することができる。また、消泡剤を、水硬性化合物の粉砕時に存在させることで、得られる水硬性粉体の表面に消泡剤を均一に分布させ、前記抑制効果をより効果的に発現させることもできる。
【0034】
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤及びエーテル系消泡剤が好ましく、シリコーン系消泡剤ではジメチルポリシロキサンがより好ましく、脂肪酸エステル系消泡剤ではポリアルキレングリコール脂肪酸エステルがより好ましく、エーテル系消泡剤ではポリアルキレングリコールエーテルがより好ましい。
【0035】
本発明の製造方法により得られた水硬性粉体を用いた水硬性組成物は圧縮強度が向上されたものとなる。水硬性粉体としては、ポルトランドセメント、高炉スラグ、アルミナセメント等のセメント、フライアッシュ、石灰石、石膏等が挙げられる。
【0036】
本発明の製造方法により得られた水硬性粉体は、コンクリート構造物やコンクリート製品の材料として用いることができる。本発明の製造方法により得られた水硬性粉体を用いたコンクリートは、接水から24時間強度及び7日強度が向上するので、例えば、本発明の製造方法により得られた水硬性粉体に、接水後の初期材齢強度が低い水硬性粉体(高炉スラグ、フライアッシュ、石灰石等)を配合・置換しても、本発明未実施の水硬性粉体を用いた場合と比較して、同等以上の、24時間強度及び7日強度を得ることが出来る、等の利点を有する。
【実施例】
【0037】
(実施例1−1)
成分が、CaO:約68%、SiO2:約25%、Al23:約4%、Fe23:約3%、MgO他:約3%(重量基準)となるように、石灰石、粘土、けい石、酸化鉄原料等を組み合わせて焼成したものを、クラッシャー及びグラインダーにより一次粉砕し、3.5mmふるい通過により普通ポルトランドセメント用クリンカを得た。
【0038】
このクリンカ1000gと、SO3量45.93重量%の二水石膏30.3g(クリンカ100重量部に対してSO3量1.4重量部)と、グリセリン(花王(株)製、精製グリセリン)の50%水溶液3.2g(固形分1.6g)と、硫酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製、試薬)8.0gとを使用材料として用い、これらをボールミル(AXB−15、(株)セイワ技研製)に一括仕込みし、ボールミルにより粉砕を行った。ボールミルでの粉砕は、容量は18リットル(外径300mm)のステンレスポット、30mmφ(呼び1・1/4)30個と20mmφ(呼び3/4)70個(合計100個)のステンレスボールを使用し、ボールミルの回転数35rpmにて行った。
【0039】
目標ブレーン値を3300±100cm2/gとし、粉砕開始から60分、75分、90分後に粉砕物を一部排出しサンプリングし、サンプルについてブレーン値を測定し、目標ブレーン値3300cm2/gに達する時間をマイクロソフト社製マイクロソフトエクセル2003の二次回帰式により求めた。その時間は最終到達時間(粉砕到達時間)として粉砕を終了し、セメントを得た。最終到達時間は108分であった。なお、グリセリン及び硫酸ナトリウムを添加しない場合の最終到達時間は120分であった。また、ブレーン値の測定は、セメントの物理試験方法(JIS R 5201)に定められるブレーン空気透過装置を使用した。
【0040】
次いで、得られたセメントをセメントの物理試験方法(JIS R 5201)附属書2(セメントの試験方法−強さの測定)に従ってモルタルを調製し、24時間強度と7日強度を測定した。コンクリート製品や構造物の製造の観点から、24時間強度と7日強度は大きいほど望ましい。
【0041】
(比較例1−1)
粉砕の使用材料として、硫酸ナトリウムを添加しないこと以外は、実施例1−1と同様にしてセメントを得た。最終到達時間は108分であった。得られたセメントに硫酸ナトリウム8.0g(クリンカ100重量部に対して0.80重量部)を添加混合して実施例1−1と同様にモルタルを調製し、24時間強度と7日強度を測定した。
【0042】
(比較例1−2)
粉砕の使用材料として、グリセリンを添加しないこと以外は、実施例1−1と同様にしてセメントを得た。最終到達時間は120分であった。得られたセメントにグリセリンの50%水溶液3.2g(固形分1.6g)(クリンカ100重量部に対して0.16重量部)を添加混合し、実施例1−1と同様にモルタルを調製し、24時間強度と7日強度を測定した。
【0043】
実施例1−1、比較例1−1及び比較例1−2の結果を表1に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
(実施例2−1及び比較例2−1)
グリセリンの代わりにモノアセチン(グリセリンモノ酢酸エステル、和光純薬工業(株)製、試薬)を用いたこと以外は、実施例1−1及び比較例1−1と同様にしてモルタルを調製し、24時間強度と7日強度を測定した。結果を表2に示した。なお、実施例2−1及び比較例2−1の最終到達時間はいずれも100分であった。
【0046】
【表2】

【0047】
(実施例3−1及び比較例3−1)
硫酸ナトリウムの添加量を16gとしたこと以外は、実施例1−1及び比較例1−1と同様にしてモルタルを調製し、24時間強度と7日強度を測定した。結果を表3に示した。なお、実施例3−1及び比較例3−1の最終到達時間はそれぞれ109分及び108分であった。
【0048】
【表3】

【0049】
(実施例4−1及び比較例4−1)
グリセリンの添加量を0.4g、硫酸ナトリウムの添加量を2.0gとしたこと以外は、実施例1−1及び比較例1−1と同様にしてモルタルを調製し、24時間強度と7日強度を測定した。結果を表4に示した。なお、実施例4−1及び比較例4−1の最終到達時間はそれぞれ102分及び101分であった。
【0050】
【表4】

【0051】
表1〜4より、グリセリン及びグリセリンモノ酢酸エステルから選ばれる1種以上の化合物(A)と硫酸アルカリ金属塩(B)の両方を水硬性粉体の粉砕時に添加して粉砕することで、24時間強度と7日強度が大きく向上することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリン及びグリセリンモノ酢酸エステルから選ばれる1種以上の化合物A〔以下、化合物Aという〕と、硫酸アルカリ金属塩Bとを水硬性化合物に添加して粉砕する水硬性粉体の製造方法。
【請求項2】
水硬性化合物100重量部に対する硫酸アルカリ金属塩Bの添加量が0.02〜2.0重量部である、請求項1記載の水硬性粉体の製造方法。
【請求項3】
水硬性化合物100重量部に対する化合物Aの添加量が0.01〜1.50重量部である請求項1又は2記載の水硬性粉体の製造方法。

【公開番号】特開2013−6738(P2013−6738A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140369(P2011−140369)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】