説明

水系コーティング組成物

【課題】 塩ビ樹脂やPET樹脂等の疎水性の高い基材との濡れ性がよく、密着性に優れた塗膜を形成し得る水系コーティング組成物を提供すること。
【解決手段】 水系樹脂、安息香酸ベンジル、一般式R1−O−(CH2−CH(R2)−O−)nH(式中、R1はC1〜C6アルキル基、C3〜C6シクロアルキル基又はフェニル基であり、R2はH又はCH3であり、nは1〜3の数である)で示される溶剤、着色剤及び水を含む水系コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水系コーティング組成物に関し、より詳しくは塩ビ樹脂やPET樹脂等の疎水性の高い基材との濡れ性がよく、密着性に優れた塗膜を形成し得る水系コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂、溶剤、着色剤、水及び種々の添加剤を含有し、種々の特性を有する種々の水系コーティング組成物が提案されている。可塑剤兼湿潤剤としてケトン類、スルホン類、エステル類、アルコール類から選択される少なくとも1つの官能基を有する芳香族化合物、例えば安息香酸ベンジルを含有する接着組成物(例えば、特許文献1参照。)、少なくとも1種類の芳香族ジアミンを含む2種類以上のジアミン成分と芳香族テトラカルボン酸を含む2種類以上の酸ジ無水物との反応生成物からなるブロック共重合ポリイミド樹脂の中和塩と共に該樹脂を溶解する油溶性溶剤として1−アセトナフトン、アセトフェノン、ベンジルアセトン、メチルアセトフェノン、ジメチルアセトフェノン、プロピオフェノン、バレロフェノン、アニソール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ベンジル、又はこれらの混合物を含有する電着用組成物(例えば、特許文献2参照。)、成膜助剤として疎水性のジエチレングリコールジアルキルエーテル、疎水性のジエチレングリコールモノアルキルエーテルモノカルボキシレート、芳香族エステル、例えば安息香酸ベンジルを用いたポリウレタンコーティング組成物(例えば、特許文献3参照。)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−518526号公報
【特許文献2】特開2003−327907号公報
【特許文献3】特開2005−068276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明もまた安息香酸ベンジルを含有する水系コーティング組成物に関するものであるが、塩ビ樹脂やPET樹脂等の疎水性の高い基材との濡れ性がよく、密着性に優れた塗膜を形成し得る水系コーティング組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、水系コーティング組成物において安息香酸ベンジルと特定の溶剤とを併用することにより上記目的が達成されることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明の水系コーティング組成物は、水系樹脂、安息香酸ベンジル、一般式
1−O−(CH2−CH(R2)−O−)n
(式中、R1はC1〜C6アルキル基、C3〜C6シクロアルキル基又はフェニル基であり、R2はH又はCH3であり、nは1〜3の数である)
で示される溶剤、着色剤及び水を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水系コーティング組成物は塩ビ樹脂やPET樹脂等の疎水性の高い基材との濡れ性がよく、密着性に優れた塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の水系コーティング組成物は水系樹脂、安息香酸ベンジル、上記一般式で示される溶剤、着色剤及び水を含むものであり、それらの個々の成分は公知のものである。
【0009】
本発明の水系コーティング組成物で用いることができる水系樹脂としては水に溶解又は分散状態にある樹脂であればどのような樹脂を用いても良い。例えば、水溶性アクリル、水溶性ポリエステル、水溶性ポリウレタン、水溶性アルキド、水溶性エポキシ、アクリルディスパージョン、ポリエステルディスパージョン、ウレタンディスパージョン、アクリルエマルション、ポリエステルエマルション、ウレタンエマルション等を挙げることができる。また、これらの中に架橋剤を添加することも可能である。本発明の水系コーティング組成物においては水系樹脂を水系コーティング組成物の全量を基準にして1〜40質量%の量で配合することが好ましい。
【0010】
本発明の水系コーティング組成物において安息香酸ベンジルを配合することにより塩ビ樹脂やPET樹脂等の疎水性の高い基材と水系コーティング組成物の樹脂成分との密着性が向上し、従って疎水性の高い基材とコーティング塗膜との密着性が向上する。本発明の水系コーティング組成物においては安息香酸ベンジルを水系コーティング組成物の全量を基準にして0.01〜10質量%の量で配合することが好ましく、0.05〜7質量%の量で配合することがより好ましく、0.1〜4質量%の量で配合することが更に好ましい。安息香酸ベンジルの配合量が0.01質量%未満の場合には疎水性の高い基材と水系コーティング組成物の樹脂成分との密着性が不十分となることがある。また、10質量%を超える場合には安息香酸ベンジルが水系コーティング組成物中に完全には溶解し得なくなる場合がある。
【0011】
本発明の水系コーティング組成物において一般式
1−O−(CH2−CH(R2)−O−)n
(式中、R1はC1〜C6アルキル基、C3〜C6シクロアルキル基又はフェニル基であり、R2はH又はCH3であり、nは1〜3の数である)
で示される溶剤を配合することにより塩ビ樹脂やPET樹脂等の疎水性の高い基材に対する水系コーティング組成物の濡れ性が良くなる。本発明の水系コーティング組成物においては上記一般式で示される溶剤を水系コーティング組成物の全量を基準にして5〜50質量%の量で配合することが好ましい。
【0012】
本発明の水系コーティング組成物においては上記一般式で示される溶剤を1種単独で用いてもよいが、上記一般式で示される溶剤であって、n−オクタノール/水での分配係数LogPが1未満であるものとn−オクタノール/水での分配係数LogPが1以上であるものとの混合溶剤を用いることにより水と安息香酸ベンジルとの相溶性並びに水系樹脂の成膜性を向上させることが出来る。なお、n−オクタノール/水での分配係数LogPは Journal of Chemical Information and Computer Sciences,1987, 27 (1), pp 21-35の論文を基にして求めた値である。
【0013】
本発明の水系コーティング組成物で用いることができる上記一般式で示される溶剤として、エチレングリコールメチルエーテル(LogP=−0.43)、エチレングリコールエチルエーテル(LogP=−0.33)、エチレングリコールプロピルエーテル(LogP=0.4)、エチレングリコールブチルエーテル(LogP=0.79)、エチレングリコールペンチルエーテル(LogP=1.23)、エチレングリコールヘキシルエーテル(LogP=1.65)、エチレングリコールシクロヘキシルエーテル(LogP=1.12)、エチレングリコールフェニルエーテル(LogP=1.39)、ジエチレングリコールメチルエーテル(LogP=−0.58)、ジエチレングリコールエチルエーテル(LogP=−0.25)、ジエチレングリコールプロピルエーテル(LogP=0.24)、ジエチレングリコールブチルエーテル(LogP=0.66)、ジエチレングリコールペンチルエーテル(LogP=1.07)、ジエチレングリコールヘキシルエーテル(LogP=1.49)、ジエチレングリコールシクロヘキシルエーテル(LogP=0.96)、ジエチレングリコールフェニルエーテル(LogP=1.23)、トリエチレングリコールメチルエーテル(LogP=−0.74)、トリエチレングリコールエチルエーテル(LogP=−0.4)、トリエチレングリコールプロピルエーテル(LogP=0.08)、トリエチレングリコールブチルエーテル(LogP=0.5)、トリエチレングリコールペンチルエーテル(LogP=0.92)、トリエチレングリコールヘキシルエーテル(LogP=1.34)、トリエチレングリコールシクロヘキシルエーテル(LogP=0.81)、トリエチレングリコールフェニルエーテル(LogP=1.08)、プロピレングリコールメチルエーテル(LogP=−0.11)、プロピレングリコールエチルエーテル(LogP=0.23)、プロピレングリコールプロピルエーテル(LogP=0.71)、プロピレングリコールブチルエーテル(LogP=1.13)、プロピレングリコールペンチルエーテル(LogP=1.55)、プロピレングリコールヘキシルエーテル(LogP=1.97)、プロピレングリコールシクロヘキシルエーテル(LogP=1.44)、プロピレングリコールフェニルエーテル(LogP=1.71)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(LogP=0.05)、ジプロピレングリコールエチルエーテル(LogP=0.39)、ジプロピレングリコールプロピルエーテル(LogP=0.88)、ジプロピレングリコールブチルエーテル(LogP=1.29)、ジプロピレングリコールペンチルエーテル(LogP=1.71)、ジプロピレングリコールヘキシルエーテル(LogP=2.13)、ジプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル(LogP=1.6)、ジプロピレングリコールフェニルエーテル(LogP=1.87)、トリプロピレングリコールメチルエーテル(LogP=0.22)、トリプロピレングリコールエチルエーテル(LogP=0.55)、トリプロピレングリコールプロピルエーテル(LogP=1.04)、トリプロピレングリコールブチルエーテル(LogP=1.46)、トリプロピレングリコールペンチルエーテル(LogP=1.87)、トリプロピレングリコールヘキシルエーテル(LogP=2.29)、トリプロピレングリコールシクロヘキシルエーテル(LogP=1.76)、トリプロピレングリコールフェニルエーテル(LogP=2.03)、及びR1の置換基が異なる構造異性体等を挙げることができる。
【0014】
本発明の水系コーティング組成物で用いる着色剤については、特に制限は無く、コーティング組成物に一般的に用いられている種々の無機及び有機の顔料ならびに染料を用いることができる。本発明の水系コーティング組成物においては着色剤を水系コーティング組成物の全量を基準にして0.5〜25質量%程度の量で配合することが好ましく、2〜15質量%程度の量で配合することがより好ましい。着色剤の配合量が0.5質量%未満である場合には光学濃度が低すぎる傾向があり、逆に25質量%を超える場合には保存安定性の問題が生ずる場合がある。
【0015】
本発明の水系コーティング組成物で用いる着色剤として、例えば、無機顔料のカーボンブラック(例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック等)、酸化チタン、酸化鉄、亜鉛華、炭酸カルシウム、マンガンバイオレット等、また、有機顔料のアゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン30顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等を挙げることができる。
【0016】
本発明の水系コーティング組成物で用いる染料として、例えば、黄色系染料のてオイルイエロー129(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントイエロー29)、オレオゾルブリリアントイエロー5G(商品名、田岡化学工業株式会社製、C.I.ソルベントイエロー150)、アイゼンゾットイエロー1(商品名、保土谷化学工業株式会社製、C.I.ソルベントイエロー56)、オラゾールイエロー3R(商品名、チバガイギー社製、C.I.ソルベントイエロー25)等、赤色系染料のオイルレッド5B(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントレッド27)、バリファストレッド1306(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントレッド109)、オレオゾルファストレッドBL(商品名、田岡化学工業株式会社製、C.I.ソルベントレッド132)、アイゼンゾットレッド1(商品名、保土谷化学工業株式会社製、C.I.ソルベントレッド24)、オラゾールレッド3GL(商品名、チバガイギー社製、C.I.ソルベントレッド130)、フィラミッドレッドGR(商品名、チバガイギー社製、C.I.ソルベントレッド225)、アルコールピンクP−30(商品名、中央合成化学株式会社製)等、青色系染料のオイルブルー2N(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブルー35)、バリファストブルー1605(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブルー38)、オレオゾルファストブルーELN(商品名、田岡化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブルー70)、アイゼンゾットブルー1(商品名、保土谷化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブルー25)、オラゾールブルーGN(商品名、チバガイギー社製、C.I.ソルベントブルー67)、アルコールブルーB−10(商品名、中央合成化学株式会社製)等、黒色系染料のオイルブラックHBB(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブラック3)、バリファストブラック3804(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブラック34)、スピリットブラックSB(商品名、オリエント化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブラック5)、オレオゾルファストブラックRL(商品名、田岡化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブラック27)、アイゼンゾットブラック8(商品名、保土谷化学工業株式会社製、C.I.ソルベントブラック7)、オラゾールブラックCN(商品名、チバガイギー社製、C.I.ソルベントブラック28)、アルコールブラックBk−10(商品名、中央合成化学株式会社製)等、また、分散染料のオラセットイエロー8GF(商品名、チバガイギー社製、C.I.ディスパースイエロー82)、アイゼンゾットイエロー5(商品名、保土谷化学工業株式会社製、C.I.ディスパースイエロー3)、スミプラスイエローHLR(商品名、住友化学工業株式会社製、C.I.ディスパースイエロー54)、カヤセットイエローA−G(商品名、日本化薬株式会社製、C.I.ディスパースイエロー54)、スミプラスレッドB−2(商品名、住友化学工業株式会社製、C.I.ディスパースレッド191)、フィレスターバイオレットBA(商品名、チバガイギー社製、C.I.ディスパースバイオレット57)等を挙げることができる。
【0017】
なお、着色剤の分散剤として天然高分子又はその誘導体を用いることができ、その具体例としてにかわ、ゼラチン、カゼイン、アルブミン等のタンパク質類、アラビアゴム、トラガントゴム等の天然ゴム類、サポニン等のグルコシド類、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸誘導体、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、ヒドロキシアルキルデンプン、酢酸デンプン、リン酸デンプン、架橋デンプン、デキストリン、デキストラン等のデンプン誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の水溶性セルロース誘導体等を挙げることができる。
【0018】
また、着色剤の分散剤として合成高分子を用いることができ、その具体例としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル類、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリアミド、ポリアリールアミン、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等のアクリル系樹脂等を挙げることができる。また、本発明の水系コーティング組成物で用いることができる上記した水系樹脂を用いて着色剤の分散を行うこともできる。
【0019】
本発明の水系コーティング組成物は水系であるので当然に水を含有する。水としてイオン交換水、蒸留水等の純水、超純水を用いることができる。また、水系コーティング組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止するために、紫外線照射等により滅菌した水を用いることもできる。水を水系コーティング組成物の全量を基準にして20〜90質量%の量で配合することが好ましい。
【0020】
本発明の水系コーティング組成物には、必要に応じて、表面張力調整剤、アミン類等のpH調整剤、尿素およびその誘導体等のヒドロトロピー剤、防カビ・防腐剤、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤、防錆剤等を添加することも可能である。
【0021】
本発明の水系コーティング組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば単色を塗布するのであればエアースプレー、エアレススプレー、ロールコーター、カーテンフローコーターによる塗装や刷毛に塗りによる方法があり、多色を塗布するのであればマスキングを行ないエアースプレー、エアレススプレー、刷毛塗り等で塗り重ねる方法や各色をドットとして塗布するディスペンサーやインクジェット装置を用いた方法がある。また、塗布厚は乾燥膜厚で0.5〜800μm程度が望ましい。0.5μm未満では膜性能及び色濃度が十分ではなく、逆に800μmを超えると膜厚が厚く、乾燥過程で塗膜にクラックが生じる可能性があるので好ましくない。
【0022】
本発明の水系コーティング組成物の塗布後の乾燥温度は特に限定されないが、塗布後の水系コーティング組成物が凍る温度や水の気化により気泡を発生させる温度では問題が生じるため、常識的には0〜100℃の範囲で乾燥させる。
【0023】
実施例1〜8及び比較例1〜4
実施例1〜8及び比較例1〜4で用いた成分は以下の通りである。
【0024】
水系樹脂:ウレタンディスパージョン(密度=1.1cm3、NV=40%、pH=7.5、酸化=15mg−KOH/g−Solid、Tg=約−45℃)、
溶剤1系列(n−オクタノール/水での分配係数LogPが1未満であるもの):
溶剤1−A:エチレングリコールブチルエーテル(LogP=0.79)、
溶剤1−B:ジエチレングリコールブチルエーテル(LogP=0.66)、
溶剤1−C:トリエチレングリコールブチルエーテル(LogP=0.5)、
溶剤2系列(n−オクタノール/水での分配係数LogPが1以上であるもの):
溶剤2−A:プロピレングリコールブチルエーテル(LogP=1.13)、
溶剤2−B:ジプロピレングリコールブチルエーテル(LogP=1.29)、
溶剤2−C:トリプロピレングリコールブチルエーテル(LogP=1.46)、
溶剤2−D:プロピレングリコールシクロヘキシルエーテル(LogP=1.44)、
溶剤2−E:プロピレングリコールフェニルエーテル(LogP=1.71)、
顔料:フタロシアニンブルー(Pigmente Blue 15:4)。
【0025】
上記の水系樹脂と顔料と水とを下記第1表に示す量比で混合し、練合を行った後、その練合した混合物に下記第1表に示す量比で混合した安息香酸ベンジルと溶剤1系列の溶剤と溶剤2系列の溶剤との混合液を徐々に添加して実施例1〜8及び比較例1〜4の水系コーティング組成物を得た。
【0026】
上記の各々の水系コーティング組成物を塗装機(HEK−1、コニカミノルタ社製)により塩ビ樹脂板上に塗布し、下記の評価法で塩ビ樹脂板に対する水系コーティング組成物の濡れ性を評価した。その評価結果は下記第1表に示す通りであった。また、上記の各々の水系コーティング組成物を塩ビ樹脂板上に乾燥膜厚で5μm程度となるように塗布し、50℃で20分間乾燥させた。その塗膜の塩ビ樹脂板に対する密着性を下記の評価法で評価した。その評価結果は下記第1表に示す通りであった。
【0027】
<塩ビ樹脂板に対する濡れ性>
塩ビ樹脂板に対する水系コーティング組成物の濡れ性を目視により下記の基準で評価した。
○:塩ビ樹脂板全体に水系コーティング組成物が均一に広がり、ハジキやピンホール等の発生がない。
△:膜厚に若干のばらつきが生じるものの、水系コーティング組成物が均一に広がる。
×:ハジキ・ピンホールが発生する。
【0028】
<塗膜の塩ビ樹脂板に対する密着性>
塩ビ樹脂板上の表面塗膜を2mm巾碁盤目ガイドを用いてカッターナイフでカットし、カット部分の塗膜面に粘着セロハンテープを貼り付け強く剥離した後の塗膜面を下記評価基準にて評価した。
○:剥離なし
△:若干剥離有り
×:著しい剥離有り
【0029】
また、実施例1〜8の水系コーティング組成物を透明なガラス瓶に入れ、24時間静置した後の水系コーティング組成物の状態を目視で観察した。その結果は下記第1表に示す通りであった。
【0030】
【表1】

【0031】
上記第1表に示すデータから明らかなように、本発明の水系コーティング組成物は濡れ性に優れ、24時間静置した後にも均一であり、本発明の水系コーティング組成物を用いて得られた塗膜は密着性に優れている。一方、比較例の水系コーティング組成物の濡れ性は不十分であり、比較例の水系コーティング組成物を用いて得られた塗膜の密着性は不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系樹脂、安息香酸ベンジル、一般式
1−O−(CH2−CH(R2)−O−)n
(式中、R1はC1〜C6アルキル基、C3〜C6シクロアルキル基又はフェニル基であり、R2はH又はCH3であり、nは1〜3の数である)
で示される溶剤、着色剤及び水を含むことを特徴とする水系コーティング組成物。
【請求項2】
水系樹脂1〜40質量%、安息香酸ベンジル0.01〜10質量%、一般式
1−O−(CH2−CH(R2)−O−)n
(式中、R1はC1〜C6アルキル基、C3〜C6シクロアルキル基又はフェニル基であり、R2はH又はCH3であり、nは1〜3の数である)
で示される溶剤5〜50質量%、着色剤0.5〜25質量%及び水20〜90質量%を含む請求項1に記載の水系コーティング組成物。
【請求項3】
一般式
1−O−(CH2−CH(R2)−O−)n
(式中、R1はC1〜C6アルキル基、C3〜C6シクロアルキル基又はフェニル基であり、R2はH又はCH3であり、nは1〜3の数である)
で示される溶剤であって、n−オクタノール/水での分配係数LogPが1未満であるものとn−オクタノール/水での分配係数LogPが1以上であるものとの混合溶剤を用いる請求項1又は2に記載の水系コーティング組成物。

【公開番号】特開2010−235716(P2010−235716A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83626(P2009−83626)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】