説明

水系ポリウレタン樹脂

【課題】塗工性、乾燥性および初期接着性のいずれにも優れる水系ポリウレタン樹脂およびそれを含有する水系ポリウレタン樹脂組成物の提供。
【解決手段】樹脂粒子表面に温度応答性ポリマーを有する水系ポリウレタン樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系ポリウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
溶剤系接着剤を使用する生産ラインにおいて、職場環境の改善や、製品のVOC対策等の観点から、接着剤の無溶剤化の技術が開発されてきている。この無溶剤化の技術としては、水系ポリウレタンエマルジョン(水系ポリウレタン樹脂)を用いることが知られている。
しかしながら、水系ポリウレタンエマルジョンを用いた場合は、ライン上での初期接着性(セット性)が劣り、また、溶剤系のウレタン接着剤と同等レベルのライン速度を維持できない、すなわち、乾燥性が劣るという問題があった。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1では、「親水性基含有イソシアネート末端プレポリマーを、リン酸塩及び必要に応じて中和剤を含有する水に分散せしめた後に、鎖伸長剤と反応せしめるか、又は親水性基含有イソシアネート末端プレポリマーを、リン酸塩、鎖伸長剤さらに必要に応じて中和剤を含有する水と混合せしめて、鎖伸長反応と水性媒体への分散を同時に行うことを特徴とするポリウレタン樹脂水性分散液の製造方法。」が提案され、特許文献2では、「(1)親水性基含有イソシアネート末端プレポリマーの疎水性有機溶剤溶液に、必要に応じて中和剤を含有する水を機械的せん断力下で混合せしめて水性媒体に分散させた後、鎖伸長剤と反応せしめるか、又は親水性基含有イソシアネート末端プレポリマーの疎水性有機溶剤溶液に、鎖伸長剤及び必要に応じて中和剤を含有する水を機械的せん断力下で混合せしめて、鎖伸長反応と水性媒体への分散を同時に行い、ついで(2)減圧下で脱溶剤を行うことを特徴とする高固形分ポリウレタン樹脂水性分散液の製造方法。」が提案されている。
しかしながら、特許文献1および2に記載の製造方法で得られるポリウレタン樹脂水性分散液を用いた場合であっても、乾燥性は不十分であり、また、高固形分化に伴って粒子同士の凝集が起こることにより、高速ライン(フィルムラミネーション)等では塗工性(塗布性)が劣る場合があった。
【0004】
一方、特許文献3には、「(a) 数平均分子量500〜5000のポリオール化合物:30〜90重量%、(b) ポリイソシアネート化合物:1〜50重量%、(c) イソシアネート基と反応性の基およびイオン性基を有する化合物:0.1〜20重量%、(d) イソシアネート基と反応性の基を有するエチレン性不飽和単量体:0.1〜25重量%、および(e) 有機スズ系硬化触媒:0〜5重量%を反応させて得られるウレタンプレポリマー[A-1] :100重量部と、(f) イソシアネート基と非反応性のエチレン性不飽和単量体:25〜600重量部とを、ラジカル重合開始剤の存在下に、水媒体中で重合させることを特徴とする水系ポリウレタン樹脂の製造方法。」が記載されている。
しかしながら、特許文献3に記載の製造方法で得られる水系ポリウレタン樹脂は、乾燥性が不十分であった。
【0005】
また、特許文献4には、「ポリマー骨格中にポリエステル骨格とポリエーテル骨格とを有し、さらに酸基を有するウレタン樹脂からなるエマルジョン(A)と、エチレン含有量が5〜40重量%であり、かつ、乾燥皮膜のトルエンによる未溶解物(トルエン不溶分)が70重量%以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるエマルジョン(B)とを配合してなる主剤100重量部に対して、硬化剤として酸基と反応可能な官能基を2個以上有する化合物2〜20重量部が配合されていることを特徴とする接着剤組成物。」が記載されている。
しかしながら、特許文献4に記載の接着剤組成物は、初期接着性および乾燥性が不十分であった。
【0006】
【特許文献1】特開平5−306317号公報
【特許文献2】特開平5−320361号公報
【特許文献3】特開平8−165318号公報
【特許文献4】特開平10−140126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、塗工性、乾燥性および初期接着性のいずれにも優れる水系ポリウレタン樹脂およびそれを含有する水系ポリウレタン樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、樹脂粒子の表面に温度応答性ポリマーを有する水系ポリウレタン樹脂が、塗工性、乾燥性および初期接着性のいずれにも優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、下記(1)〜(7)に記載の水系ポリウレタン樹脂および水系ポリウレタン樹脂組成物を提供する。
(1)樹脂粒子表面に温度応答性ポリマーを有する水系ポリウレタン樹脂。
(2)上記温度応答性ポリマーが、共有結合を介して樹脂粒子表面に存在する、上記(1)に記載の水系ポリウレタン樹脂。
(3)上記温度応答性ポリマーが、アクリルアミド系ポリマーである、(1)または(2)に記載の水系ポリウレタン樹脂。
(4)上記アクリルアミド系ポリマーが、ポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N−アクリロイルモルホリン、ポリ−N−メトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−エトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロポキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、ポリ−N−1−メチル−2−メトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−1−メトキシメチルプロピルアクリルアミド、ポリ−N−ジ(2−メトキシエチル)アクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−メトキシエトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、ポリ−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−ピロリジノメチルアクリルアミド、ポリ−N−ピペリジノメチルアクリルアミド、ポリ−N−2−モルホリノエチルアクリレート、ポリ−N−2−モルホリノエトキシエチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種である、上記(3)に記載の水系ポリウレタン樹脂。
(5)イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物(A)、水酸基を2個以上有するポリオール化合物(B)、イソシアネート基と反応性を有する基およびイオン性基を有する化合物(C)ならびにイソシアネート基と反応性を有する基を有するエチレン性不飽和単量体(D)を共重合させて生成するウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られるウレタンエマルジョンと、
上記温度応答性ポリマーを生成するモノマー(E)と、
を共重合させて得られる、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の水系ポリウレタン樹脂。
(6)上記モノマー(E)が、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−メトキシプロピルアクリルアミド、N−エトキシプロピルアクリルアミド、N−イソプロポキシプロピルアクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、N−1−メチル−2−メトキシエチルアクリルアミド、N−1−メトキシメチルプロピルアクリルアミド、N−ジ(2−メトキシエチル)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−エチルアクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メトキシエトキシプロピルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−ピロリジノメチルアクリルアミド、N−ピペリジノメチルアクリルアミド、N−2−モルホリノエチルアクリレート、N−2−モルホリノエトキシエチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種であり、
上記ウレタンエマルジョンと、上記モノマー(E)とを、生成する温度応答性ポリマーの相転移温度より低い温度で共重合させて得られる、上記(5)に記載の水系ポリウレタン樹脂。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の水系ポリウレタン樹脂を含有する水系ポリウレタン樹脂組成物。
【発明の効果】
【0010】
以下に示すように、本発明によれば、塗工性、乾燥性および初期接着性のいずれにも優れる水系ポリウレタン樹脂を提供することができ、これにより、生産ラインにおける職場環境の改善や、製品のVOC対策を図ることができるため非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の水系ポリウレタン樹脂は、樹脂粒子表面に温度応答性ポリマーを有する水系ポリウレタン樹脂である。
本発明において、上記温度応答性ポリマーは、相転移温度を有し、該相転移温度よりも低い温度ではランダムコイル状構造となり水溶性を示し、該相転移温度よりも高い温度では凝集したグロビュール状態となり非水溶性を示す温度応答性を有するポリマーであれば特に限定されず、アクリルアミド系ポリマーであるのが好ましい。
アクリルアミド系ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N−アクリロイルモルホリン、ポリ−N−メトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−エトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロポキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、ポリ−N−1−メチル−2−メトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−1−メトキシメチルプロピルアクリルアミド、ポリ−N−ジ(2−メトキシエチル)アクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−メトキシエトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、ポリ−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−ピロリジノメチルアクリルアミド、ポリ−N−ピペリジノメチルアクリルアミド、ポリ−N−2−モルホリノエチルアクリレート、ポリ−N−2−モルホリノエトキシエチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートならびにこれらの混合物等が挙げられる。
また、本発明においては、上記温度応答性ポリマーは、共有結合を介して水系ポリウレタン樹脂の樹脂粒子表面に存在していることが好ましい。
【0012】
本発明においては、このような温度応答性ポリマーを樹脂粒子表面に有することによって、得られる水系ポリウレタン樹脂の塗工性、乾燥性および初期接着性がいずれも良好なものとなる。
これは、本発明の水系ポリウレタン樹脂を上述した相転移温度よりも低い温度、即ち樹脂粒子表面に存在する温度応答性ポリマーが水溶性の状態で塗布することにより、その塗工性を良好なものとすることができ、また、塗布後においては、相転移温度よりも高い温度で乾燥することにより、非水溶性となった温度応答性ポリマー同士が、分子間または分子内での疎水性相互作用により凝集して水の放出が促進され、乾燥速度が向上するためであると考えられる。
具体的には、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドおよびポリ−N,N−ジエチルアクリルアミドは、相転移温度が32℃であることから、これらのポリマーを樹脂粒子表面に有する水系ポリウレタン樹脂を、例えば、室温(25℃)で塗布し、80℃程度の温度で乾燥させることにより、塗工性および乾燥性がいずれも良好となる。
【0013】
本発明の水系ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、10000〜500000であるのが好ましく、50000〜200000であるのがより好ましい。
また、本発明の水系ポリウレタン樹脂は、固形分質量が30〜60質量%であるのが好ましく、40〜55質量%であるのがより好ましい。
【0014】
本発明の水系ポリウレタン樹脂の製造方法は特に限定されないが、その具体例としては、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物(A)、水酸基を2個以上有するポリオール化合物(B)、イソシアネート基と反応性を有する基およびイオン性基を有する化合物(C)ならびにイソシアネート基と反応性を有する基を有するエチレン性不飽和単量体(D)を共重合させて生成するウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られるウレタンエマルジョンと、上記温度応答性ポリマーを生成するモノマー(E)と、を共重合させる方法;等が好適に挙げられる。
以下、ポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)、化合物(C)、エチレン性不飽和単量体(D)およびこれらを共重合させて得られるウレタンエマルジョン(ウレタンプレポリマー)ならびにモノマー(E)について詳述する。
【0015】
<ポリイソシアネート化合物(A)>
上記ポリイソシアネート化合物(A)は、イソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;上記各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、または、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0016】
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、これらのうち、TDI、IPDI、MDI、HDIであるのが、比較的安価で入手しやすい理由から好ましい。
【0017】
<ポリオール化合物(B)>
上記ポリオール化合物(B)は、水酸基を2個以上有するポリオール化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
【0018】
ここで、ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ポリオキシテトラメチレンオキサイドなどから選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。
【0019】
ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、その他の低分子ポリオールなどから選ばれる少なくとも1種と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、その他の低分子脂肪族カルボン酸やオリゴマー酸などから選ばれる少なくとも1種との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体;等が挙げられる。
【0020】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどの低分子ポリオール:等が挙げられる。
【0021】
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、重量平均分子量が100〜10000程度であるポリオールが好ましく、500〜5000であるポリオールがより好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、得られるウレタンプレポリマーの硬度および粘度が良好となる。
【0022】
なお、上記で例示した製造方法において、後述する化合物(C)が、イオン性基以外にイソシアネート基と反応性を有する基として水酸基を2個以上有する場合には、ポリオール化合物(B)は必須成分ではなく、所望により用いることができる。
【0023】
<化合物(C)>
上記化合物(C)は、イソシアネート基と反応性を有する基およびイオン性基を有する化合物であれば特に限定されない。
ここで、イソシアネート基と反応性を有する基としては、具体的には、例えば、水酸基、第1級アミノ基(−NH2)、第2級アミノ基(−NH−)、メルカプト基等が挙げられる。なお、本発明においては、化合物(C)におけるイソシアネート基と反応性を有する基としてカルボキシ基を含まないものとする。
また、イオン性基としては、具体的には、例えば、カルボキシ基、スルホ基などのアニオン性基;第3級アミノ基(≡N)などのカチオン性基;等が挙げられる。
【0024】
このような化合物(C)としては、具体的には、例えば、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸などの脂肪族モノヒドロキシカルボン酸;ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシエチル安息香酸、ヒドロキシけい皮酸などの芳香族モノヒドロキシカルボン酸;ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸などのジヒドロキシカルボン酸;ヒドロキシベンゼンスルホン酸などのヒドロキシスルホン酸;メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト安息香酸などのメルカプトカルボン酸;3N−メルカプトエタンスルホン酸などのメルカプトスルホン酸;アミノアジピン酸、アミノ安息香酸などのアミノカルボン酸;アミノベンゼンスルホン酸などのアミノスルホン酸;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
<エチレン性不飽和単量体(D)>
上記エチレン性不飽和単量体(D)は、イソシアネート基と反応性を有する基を1個以上有している。
イソシアネート基と反応性を有する基としては、具体的には、例えば、水酸基、第1級アミノ基(−NH2)、第2級アミノ基(−NH−)、メルカプト基、カルボキシ基、アミド基等が挙げられる。
【0026】
このようなエチレン性不飽和単量体(D)としては、具体的には、例えば、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−ペンテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、4−ヘキセン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、5−ヘプテン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、6−オクテン−1−オール、7−オクテン−1−オール、7−ノネン−1−オール、8−ノネン−1−オール、2−メチルアリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、4−メチル−4−ペンテン−1−オール、5−メチル−5−ヘキセン−1−オール、6−メチル−ヘプテン−1−オール、7−メチル−7−オクテン−1−オール、8−メチル−8−ノネン−1−オールなどの脂肪族不飽和アルコール;ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチルスチレン、ヒドロキシプロピルスチレンなどのヒドロキシアルキルスチレン;ビニル安息香酸とジオールとのモノエステル;2−ヒドロキシエチルアクリレート(アクリル酸2−ヒドロキシエチル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ(メタ)アクリレート;1,4−ブタンジオールモノアクリレート、1,4−ブタンジオールモノメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸とジオールとのモノエステル;アクリルアミド、3−アクリルアミド−N,N−ジメチルプロピルアミン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、3−メタクリルアミド−N,N−ジメチルプロピルアミンなどのメタクリルアミド誘導体;メルカプトスチレン;アミノスチレン;等が挙げられ、これらを、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
<ウレタンエマルジョン(ウレタンプレポリマー)>
上記ウレタンエマルジョンは、上述したポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)、化合物(C)およびエチレン性不飽和単量体(D)を共重合させてウレタンプレポリマーを得た後に、該ウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られる。
【0028】
ここで、上記共重合には、ポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)、化合物(C)およびエチレン性不飽和単量体(D)を同時に(一時に)かくはん等して重合させる態様(第1態様)以外に、例えば、ポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)および化合物(C)の共重合により、イオン性基を含有するイソシアネート末端プレポリマーを生成した後に、該プレポリマーにエチレン重合性不飽和単量体(D)を付加させる態様(第2態様)等も含むものである。なお、本発明においては、第1態様であるのが好ましい。
【0029】
また、上記共重合は、必要に応じて有機錫化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒の存在下で行うことができ、有機錫化合物の存在下で行うのが好ましい。
有機錫化合物としては、具体的には、例えば、酢酸第一錫、オクタン酸第一錫、ラウリン酸第一錫、オレイン酸第一錫などのカルボン酸第一錫;ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジ−2−エチル-ヘキソエート、ジラウリル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテートなどのカルボン酸のジアルキル錫塩;水酸化トリメチル錫、水酸化トリブチル錫、水酸化トリオクチル錫などの水酸化トリアルキル錫:酸化ジブチル錫、酸化ジオクチル錫、酸化ジラウリル錫などの酸化ジアルキル錫;二塩化ジブチル錫、二塩化ジオクチル錫などの塩化ジアルキル錫;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫マレエートであるのが、比較的安価で取り扱いやすい理由から好ましい。
【0030】
更に、上記共重合は、得られるウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量(NCO%)が0.3〜3%となるように行うのが好ましく、また、ポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)、化合物(C)およびエチレン性不飽和単量体(D)の合計質量に対して、ポリイソシアネート化合物(A)を1〜50質量%、ポリオール化合物(B)を30〜90質量%、化合物(C)を0.1〜20質量%、エチレン性不飽和単量体(D)を0.1〜25質量%含有させ、これらを不活性ガス雰囲気下、60〜90℃下で2〜8時間程度かくはんして行うのが好ましい。ここで、NCO%とは、ウレタンプレポリマーの全質量に対するNCO基の質量%を表す。
【0031】
このような共重合により得られるウレタンプレポリマーの重量平均分子量は、1500〜30000であるのが好ましく、3000〜20000であるのがより好ましい。
また、このようなウレタンプレポリマーとしては、上記で例示した各種のポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)、化合物(C)およびエチレン性不飽和単量体(D)を反応させて得られる反応生成物が挙げられ、具体的には、ポリイソシアネート化合物(A)としてトリレンジイソシアネート(TDI)、ポリオール化合物(B)としてペンタンジオール、化合物(C)としてジメチロールブタン酸またはジメチロールプロピオン酸、エチレン性不飽和単量体(D)として2−ヒドロキシエチルメタクリレートまたは2−ヒドロキシエチルアクリレートを用いて反応させて得られるウレタンプレポリマーが好適に例示される。
【0032】
一方、共重合により得られたウレタンプレポリマーの水媒体中での分散は、塩基性化合物、必要に応じて添加される粘度調整剤、鎖延長剤の存在下で行われる。この分散により、上記エチレン性不飽和単量体(D)に由来のエチレン性不飽和二重結合を粒子表面に有するウレタンエマルジョンが得られる。
ここで、塩基性化合物は、ウレタンプレポリマーの水性化(中和)のために必要な化合物である。塩基性化合物としては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モルホリン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、所望により添加する粘度調整剤としては、水と相溶する有機溶剤が挙げられ、具体的には、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等が好適に例示される。
また、所望により添加する鎖延長剤は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、ピペラジンなどの脂環式ジアミン;ジフェニルジアミンなど芳香族ジアミン;トリアミン;等が挙げられる。
【0033】
<モノマー(E)>
上記モノマー(E)は、上記ウレタンエマルジョンまたはウレタンプレポリマーと共重合することができる単量体成分であって、上記温度応答性ポリマーを生成するモノマーである。
このようなモノマー(E)としては、具体的には、例えば、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−メトキシプロピルアクリルアミド、N−エトキシプロピルアクリルアミド、N−イソプロポキシプロピルアクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、N−1−メチル−2−メトキシエチルアクリルアミド、N−1−メトキシメチルプロピルアクリルアミド、N−ジ(2−メトキシエチル)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−エチルアクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メトキシエトキシプロピルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−ピロリジノメチルアクリルアミド、N−ピペリジノメチルアクリルアミド、N−2−モルホリノエチルアクリレート、N−2−モルホリノエトキシエチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートならびにこれらの混合物等が挙げられる。
また、8−アクリロイル−1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4,5]デカンのようなスピロ型化合物も用いることができる。
これらのうち、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドが、入手が容易である点で好ましい。
【0034】
本発明においては、このようなモノマー(E)は、他の単量体、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸のような不飽和カルボン酸;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−アセトアセトキシエチルアクリレート、2−アセトアセトキシプロピルアクリレート、3−アセトアセトキシプロピルアクリレート、4−シアノアセトアセトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレートのようなアクリル酸エステル類および対応するメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルアクリルアミドのようなアクリルアミド類及び対応するメタクリルアミド類;N−アクリロイルベンズヒドラジド、N−メタクリロイルベンズヒドラジドのような不飽和ヒドラジド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのような不飽和ニトリル類;酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルイミダゾール、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルのようなビニル化合物類;等を併用することができる。
【0035】
上記モノマー(E)と、上記ウレタンエマルジョンとの共重合は、重合開始剤の存在下、得られる本発明の水系ポリウレタン樹脂の樹脂粒子表面に形成する温度応答性ポリマーの相転移温度より低い温度、具体的には、使用するモノマーおよび重合開始剤の種類により異なるが、通常5〜50℃の範囲内で選ばれ、より具体的には、例えばモノマー(E)としてN−イソプロピルアクリルアミドやN,N−ジエチルアクリルアミドを用いた場合には32℃よりも低い温度、好ましくは5〜25℃の下で、上記モノマー(E)と上記ウレタンエマルジョンとをかくはんすることにより行われる。
ここで、上記重合開始剤としては、具体的には、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルペロキシ−2−エチルヘキサナート等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、上述したように、相転移温度よりも低い温度で共重合させる必要性、上記モノマー(E)としてN−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドが好適に用いられる観点から、亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウムからなる群から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0036】
一方、上記モノマー(E)と、上記ウレタンプレポリマーとの共重合は、上述した塩基性化合物、必要に応じて添加される粘度調整剤および鎖延長剤、ならびに上記重合開始剤の存在下、得られる本発明の水系ポリウレタン樹脂の樹脂粒子表面に形成する温度応答性ポリマーの相転移温度より低い温度の下で、上記モノマー(E)と上記ウレタンプレポリマーとをかくはんすることにより行われる。
【0037】
このような共重合により、上記ウレタンエマルジョンの粒子表面に存する、エチレン性不飽和単量体(D)に由来のエチレン性不飽和二重結合と、上記モノマー(E)またはモノマー(E)の単独重合体の重合性部位(例えば、N−イソプロピルアクリルアミドの場合にはエチレン性不飽和二重結合)とが、共重合により結合し、樹脂粒子表面に温度応答性ポリマーを有する水系ポリウレタン樹脂が得られる。
温度応答性ポリマーの相転移温度より低い温度で共重合を行うことにより、樹脂粒子表面に存する温度応答性ポリマーが水溶性となり、上述したように、得られる本発明の水系ポリウレタン樹脂の塗工性が優れたものとなる。
【0038】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物は、上述した本発明の水系ポリウレタン樹脂を含有する樹脂組成物であり、本発明の水系ポリウレタン樹脂以外に、所望により、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を含有することができる。
【0039】
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられる。
【0040】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0041】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩などの無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラックなどの有機顔料;等が挙げられる。
【0042】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル社製)、ディスパロン(楠本化成社製)等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0044】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、具体的には、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
【0045】
本発明の水系ポリウレタン樹脂組成物の製造方法は、特に限定されないが、上述した本発明の水系ポリウレタン樹脂と、所望により添加する各種添加剤とを、混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混練する方法を用いることができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
(実施例1〜11、比較例1〜3および参考例1)
ポリイソシアネート化合物(A1)、ポリオール化合物(B1)、化合物(C1)およびエチレン性不飽和単量体(D1)を、下記表1に示す質量部で、窒素気流下、60℃で3時間反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した。
次いで、合成した各ウレタンプレポリマーを単離しない状態で、酢酸エチル(粘度調整剤)に溶解させた後に、水中で、トリエチルアミン(塩基性化合物)およびピペラジン6水和物(鎖延長剤)とともに、10℃で3時間分散させ、ウレタンエマルジョンを調整した。酢酸エチル、水、トリエチルアミンおよびピペラジン6水和物の各質量部ならびに得られた各ウレタンエマルジョンの酢酸エチルを除く固形分(%)を下記表1に示す。
次いで、調整した各ウレタンエマルジョンを単離しない状態で、重合開始剤1〜3の存在下、5℃下で16時間モノマー(E1)または(E2)と反応させ、水系ポリウレタン樹脂を得た。重合開始剤1〜3およびモノマー(E1)および(E2)の各質量部を下記表1に示す。
【0048】
得られた各水系ポリウレタン樹脂について、以下に示す測定方法により各物性の評価を行った。その結果を下記表1に示す。なお、参考例1として溶剤系のウレタン接着剤(エスダイン518A、積水フーラー社製)について同様の測定を行った。
【0049】
<乾燥性(塗布量100g/m2)>
乾燥性の評価は、得られた各水系ポリウレタン樹脂を、JIS H4000に規定の1050材のアルミニウム板(サイズ:10cm×10cm)に塗布量が100g/m2となるように塗布し、20℃、40℃および80℃のそれぞれの温度下(いずれも相対湿度55%)で硬化させ、でのタックフリータイム(分)をJIS A5758に準拠して測定した。
なお、アルミニウム板への塗布はいずれの水系ポリウレタン樹脂も良好であり、塗工性が優れていることが分かった。
【0050】
<乾燥皮膜物性>
各水系ポリウレタン樹脂を平滑なポリエチレン板上に流延して50℃下で1日乾燥することにより得られたフィルムをダンベル状に打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251に準拠して行い、破断強度(TB)[MPa]、および、破断伸び(EB)[%]を測定した。
【0051】
<耐水性>
乾燥皮膜物性の評価に用いたフイルムを20℃の水に48時間浸漬した後に、80℃で24時間乾燥し、浸漬前後の質量変化(%)を調べた。なお、下記表1中、実施例1において「−2.1(%)」とあるのは、浸漬前の質量を100.0とした場合に、浸漬後の質量が97.9となることを示す。
同様の試験を50℃の温水に48時間浸漬した後に、80℃で24時間乾燥し、浸漬前後の質量変化(%)を調べた。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
上記表1中の各成分は、以下のものを使用した。
・ポリイソシアネート化合物(A1):TDI(コスモネートTDI100、三井武田ケミカル社製)
・ポリオール化合物(B1):3−メチルペンタンジオール/AA(クラレポリオールP2010、重量平均分子量2000、クラレ社製)
・化合物(C1):ジメチロールブタン酸(日本化成社製)
・エチレン性不飽和単量体(D1):ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、共栄社化学社製)
・トリエチルアミン(塩基性化合物):関東化学社製
・ピペラジン6水和物(鎖延長剤):日本乳化剤社製
・酢酸エチル(粘度調整剤):関東化学社製
・モノマー(E1):N−イソプロピルアクリルアミド(興人社製)
・モノマー(E2):N,N−ジエチルアクリルアミド(興人社製)
・重合開始剤1:過硫酸アンモニウム(関東化学社製)
・重合開始剤2:亜硫酸水素ナトリウム(関東化学社製)
・重合開始剤3:アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)
【0055】
上記表1に示す結果より、実施例1〜11の水系ポリウレタン樹脂は、樹脂粒子表面に温度応答性ポリマーを有していない比較例1〜3のうち、比較例1および3に比べて乾燥性に優れることが分かり、比較例1〜3に比べて乾燥皮膜物性および耐水性が同等以上に優れることが分かった。また、実施例1〜11の水系ポリウレタン樹脂は、参考例1に記載の溶剤系のウレタン接着剤と比較しても、同等の乾燥性および初期接着性を有していることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子表面に温度応答性ポリマーを有する水系ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
前記温度応答性ポリマーが、共有結合を介して樹脂粒子表面に存在する、請求項1に記載の水系ポリウレタン樹脂。
【請求項3】
前記温度応答性ポリマーが、アクリルアミド系ポリマーである、請求項1または2に記載の水系ポリウレタン樹脂。
【請求項4】
前記アクリルアミド系ポリマーが、ポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N−アクリロイルモルホリン、ポリ−N−メトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−エトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロポキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、ポリ−N−1−メチル−2−メトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−1−メトキシメチルプロピルアクリルアミド、ポリ−N−ジ(2−メトキシエチル)アクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−メトキシエトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、ポリ−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−ピロリジノメチルアクリルアミド、ポリ−N−ピペリジノメチルアクリルアミド、ポリ−N−2−モルホリノエチルアクリレート、ポリ−N−2−モルホリノエトキシエチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項3に記載の水系ポリウレタン樹脂。
【請求項5】
イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物(A)、水酸基を2個以上有するポリオール化合物(B)、イソシアネート基と反応性を有する基およびイオン性基を有する化合物(C)ならびにイソシアネート基と反応性を有する基を有するエチレン性不飽和単量体(D)を共重合させて生成するウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られるウレタンエマルジョンと、
前記温度応答性ポリマーを生成するモノマー(E)と、
を共重合させて得られる、請求項1〜4のいずれかに記載の水系ポリウレタン樹脂。
【請求項6】
前記モノマー(E)が、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−メトキシプロピルアクリルアミド、N−エトキシプロピルアクリルアミド、N−イソプロポキシプロピルアクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、N−1−メチル−2−メトキシエチルアクリルアミド、N−1−メトキシメチルプロピルアクリルアミド、N−ジ(2−メトキシエチル)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−エチルアクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メトキシエトキシプロピルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−ピロリジノメチルアクリルアミド、N−ピペリジノメチルアクリルアミド、N−2−モルホリノエチルアクリレート、N−2−モルホリノエトキシエチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記ウレタンエマルジョンと、前記モノマー(E)とを、生成する温度応答性ポリマーの相転移温度より低い温度で共重合させて得られる、請求項5に記載の水系ポリウレタン樹脂。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の水系ポリウレタン樹脂を含有する水系ポリウレタン樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−23234(P2007−23234A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211020(P2005−211020)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】