説明

水系・水溶性潤滑組成物

【課題】安全性、潤滑性、冷却性の良い水系・水溶性潤滑組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)及び(B)より合成されてなる安全性が高く、水への溶解性、分散性に優れ、潤滑性の良いオリゴマーエステルを含有することにより、安全性、潤滑性、冷却性の良い水系・水溶性潤滑組成物を提供する。
(A)炭素数2〜36の直鎖、分岐鎖、若しくは環状構造を含む二価カルボン酸1種又は
2種以上。
(B)水酸基価から算出した平均重合度が2〜15のポリグリセリン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性が高く、水への溶解性、分散性に優れ、潤滑性の良いオリゴマーエステルを含有する安全性、潤滑性、冷却性の良い水系・水溶性潤滑組成物に関する。より具体的には、次の成分(A)及び(B)より合成されてなるオリゴマーエステルを含有することを特徴とする安全性、潤滑性、冷却性の良い水系・水溶性潤滑組成物に関する。
(1)次の成分(A)及び(B)より合成されたオリゴマーエステルを含有する水系・水溶性潤滑組成物。
(A)炭素数2〜36の直鎖、分岐鎖、若しくは環状構造を含む二価カルボン酸1種又は
2種以上。
(B)水酸基価から算出した平均重合度が2〜15のポリグリセリン。
(2)成分(A)が、炭素数2〜22の直鎖、分岐鎖、若しくは環状構造を含む二価カルボン酸1種又は2種以上である(1)に記載の潤滑組成物。
(3)オリゴマーエステルが、ポリグリセリン1モルに対し0.3〜1.5モルの二価カルボン酸を使用して合成されるオリゴマーエステルである(1)〜(2)に記載の潤滑組成物。
【背景技術】
【0002】
一般に潤滑剤は、液体潤滑剤、半固体潤滑剤、固体潤滑剤に大別され、この中の液体潤滑剤は、更に動植物油・石油系潤滑剤、合成潤滑剤、水系・水溶性潤滑剤に分類される。水系・水溶性潤滑剤には、金属の切削加工・研削加工・伸線加工等に用いられる金属加工液、油圧システム等における圧力伝達媒体である油圧作動液、機械・装置等の作動部分の潤滑液又は作動液、機械・装置等の加工時において使用する潤滑液、洗浄システムで使用される防錆潤滑液、金属の洗浄・研削・切削・塑性加工、鋼の焼入れ焼き戻しに使用されるクーラント液等がある。水系・水溶性潤滑剤の溶液の形態としては、透明型、O/W乳化型、W/O乳化型、W/O/W乳化型、O/W/O乳化型等の乳化型などがある。
【0003】
特に近年水系・水溶性潤滑剤が用いられるようになったのは、消防法規制の保管や運搬で安全性が高いこと、金属の切削加工、研削加工、伸線加工時に加工部位や加工工具が非常に高温になるため不燃性や冷却性の潤滑液が求められること、金属の切削加工、研削加工、伸線加工時に潤滑液が飛散しても安全性、汚染性、環境負荷の優れている潤滑液が求められていること、鉄鋼設備、ダイカストマシン、自動車組立設備の溶接ロボット等の油圧設備用油圧作動液も万一の火災時の事故防止として難燃性が求められることなどためである。鉄系素材などの水系洗浄システムでは、洗浄後の素材表面上に油性成分を残し、水によるすすぎを行わない洗浄システムが注目され、さらに、食器や医療用機器・器具を洗浄した後、乾燥すると水滴の後が残ることがあり、これを防止するために使用される潤滑剤や、金属の機器・器具が乾燥後腐食しないように防錆の目的で使用される防錆潤滑剤等もある。また、高炭素鋼、合金鋼、低炭素鋼の焼入れや焼き戻しに使用する冷却剤、または保温材として難燃性水溶性熱処理剤があるが、この用途にも使用できる。これらの用途で使用される水系・水溶性潤滑剤は、炭素0.3%以下の炭素鋼、炭素0.3%以上の炭素鋼、低合金炭素鋼、高合金炭素鋼、ステンレス鋼、耐熱鋼、鋳鉄、マレアブル鋳鉄、鋼、チタン及びチタン合金、アルミニウム及びアルミニウム合金、マグネシウム及びマグネシウム合金、リン青銅、黄銅などの金属を対象としている。
【0004】
近年、このような目的で用いられている水系・水溶性潤滑成分としては、プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド構造ブロック型ポリアルキレンオキサイド(特許文献1)、アルコールのエチレンオキサイド付加型非イオン界面活性剤、アルコールのプロピレンオキサイド末端付加型非イオン界面活性剤(特許文献2、4)、ポリアルキレングリコール(特許文献3)などのポリアルキレングリコール系油剤が知られている。しかしながら、アルコールのエチレンオキサイド付加型非イオン界面活性剤の場合は化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)に該当する化学物質であるという問題があり、又、これらポリアルキレングリコール系油剤でもまだ安全性、潤滑性などが十分ではなく、更に安全性、潤滑性の高い潤滑組成物が望まれていた。
【特許文献1】特開平8−239683号公報
【特許文献2】特開2002−212584号公報
【特許文献3】特開2006−83378号公報
【特許文献4】特開2006−96826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明が解決しようとしている課題は、安全性が高く、水への溶解性、分散性に優れ、潤滑性の良いオリゴマーエステルを含有する安全性、潤滑性、冷却性の良い水系・水溶性潤滑組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、安全性、潤滑性、冷却性の良い水系・水溶性潤滑組成物を提供するために鋭意検討を行ったところ、次に示す成分(A)及び(B)より合成されたオリゴマーエステルが安全性が高く、水への溶解性、分散性に優れ、潤滑性の良い物質であることを見出し、更に、これらのオリゴマーエステルを含有する水系・水溶性潤滑組成物が、安全性、潤滑性、冷却性の良い潤滑組成物であることを発見し、本発明を完成した。
(A)炭素数2〜36の直鎖、分岐鎖、若しくは環状構造を含む二価カルボン酸1種又は
2種以上。
(B)水酸基価から算出した平均重合度が2〜15のポリグリセリン。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水系・水溶性潤滑組成物は、安全性が高く、水への溶解性、分散性に優れ、潤滑性の良いオリゴマーエステルを含有する安全性、潤滑性、冷却性の良い潤滑組成物を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のオリゴマーエステルの製造に用いることができるカルボン酸としては、炭素数2〜36の直鎖、分岐鎖、若しくは環状構造を含む二価カルボン酸であり、実質的に一価カルボン酸を含有しないことが本発明の特徴である。使用することができる二価カルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,4−ジエチルペンタン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、8−エチルオクタデカン二酸、エイコサン二酸、ジメチルエイコサン二酸、不飽和脂肪酸を重合して得られるダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等を例示することができる。これらの二価カルボン酸は、単独でも2種以上を混合してもよい。
【0009】
二価カルボン酸の平均炭素数(単独使用の場合はその炭素数)が少ないと、二価カルボン酸の炭化水素基による潤滑性が低下するため、平均炭素数は6以上が好ましい。一方、平均炭素数が多すぎると反応温度におけるポリグリセリンとの相溶性に欠けるため、界面における局所反応が起こり、結果、部分的に高重合物が生成してしまう。このような局所反応を起こさないためには、二価カルボン酸1種又は2種以上の平均炭素数が19以下であることが好ましい。従って、本発明に使用されるより好ましい二価カルボン酸1種又は2種以上としては、炭素数2〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状構造を含む二価カルボン酸1種又は2種以上であり、かつ、その平均炭素数が6〜19となるものである。具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,4−ジエチルペンタン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、8−エチルオクタデカン二酸、エイコサン二酸、ジメチルエイコサン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸から選ばれることがより好ましい。ここで、平均炭素数とは、次式で得られる数値とする。
(式1)
平均炭素数=Σ[(各二価カルボン酸の炭素数)×(各二価カルボン酸のモル分率)]
【0010】
本発明のオリゴマーエステルの製造に用いるポリグリセリンとしては、水酸基価から算出した平均重合度が2〜15のポリグリセリンである。このようなポリグリセリンとしては、例えば、阪本薬品工業(株)製のジグリセリンS、ポリグリセリン#310、同#500、同#750等が市販品として入手できる。平均重合度が低いと未反応水酸基の数も少なくなり親水性が乏しくなり、平均重合度が高いと潤滑性能が低下する傾向にあるため、好ましくは水酸基価から算出した平均重合度が4〜12のポリグリセリンである。ここで、水酸基価から算出した平均重合度とは、次式で得られる数値とする。
(式2)
A=56.1×1000/水酸基価 とすると
平均重合度 =(2×A−18.0)/(74.1−A)
【0011】
本発明の、1種又は2種以上の二価カルボン酸とポリグリセリンとのオリゴマーエステ
ルの製造方法は、特に限定されないが、1種又は2種以上の二価カルボン酸とポリグリセ
リンとをエステル化反応させることにより得ることができる。本発明のオリゴマーエステ
ルの製造において、二価カルボン酸とポリグリセリンのそれぞれの仕込み比を変えること
により、得られるオリゴマーエステルの重合度を調整することができる。その仕込み比の
好ましい範囲は、ポリグリセリン1モル当量に対して二価カルボン酸が0.3〜1.5モ
ル当量である。二価カルボン酸が少ないと潤滑性能が低くなるため、ポリグリセリン1モル当量に対して二価カルボン酸は0.5モル当量以上が好ましい。一方、重合度に対応して粘度も高くなり、粘度が高すぎると製造が困難になるため、仕込み比はポリグリセリン1モル当量に対して二価カルボン酸が1.2モル当量以下であることが好ましい。従って、より好ましい仕込み比の範囲は、ポリグリセリン1モル当量に対して二価カルボン酸が0.5〜1.2モル当量である。
【0012】
エステル化反応の条件は特に限定されず、通常用いられる方法で行われる。例えば、触媒としてパラトルエンスルホン酸、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸、三フッ化硼素ジエチルエーテル錯体等を用い、適当な溶媒を用いて、50〜260℃で行うことができる。あるいは無溶剤、無触媒でも150〜260℃でエステル化を行うことができる。より好ましい方法としては、無溶剤、無触媒で150〜260℃でエステル化を行う方法である。このようにして得られたオリゴマーエステルは、そのまま水系・水溶性潤滑組成物に使用できるが、更に必要に応じて通常の方法により蒸留、脱色、脱臭などの精製をして使用することもできる。
【0013】
上記のようにして得られたオリゴマーエステルは、生分解性が高く環境負荷の小さい構造を有し、化粧品にも使用されるように人への安全性も高く、又、親水性が高く水を含有する水系・水溶性潤滑組成物に容易に配合できるため、安全性、潤滑性、冷却性の良い潤滑組成物を提供することができる。
【0014】
一方、本発明のオリゴマーエステルを含有する水系・水溶性潤滑組成物は、本発明の好ましい効果を損なわない範囲で、本オリゴマーエステルの他、水、防腐剤などを配合しても良い。さらに、一般的に潤滑剤に配合される添加成分、例えば極圧剤、腐食防止剤、防錆剤、潤滑添加剤、pH調整剤、金属イオン封鎖剤、界面活性剤、溶剤、増粘剤、酸化防止剤、消泡剤、着色剤等を配合することができる。本発明のオリゴマーエステルの水系・水溶性潤滑組成物への配合量は、特に限定されないが、0.1〜90重量%程度が好ましく、より好ましくは1〜60重量%である。
【0015】
これらの配合成分を例示すると、防腐剤としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のヒドロキシ安息香酸及びその塩若しくはそのエステル;ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン類;1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾリンオン誘導体;o−フェニルフェノール、o−フェニルフェノールナトリウム、2,3,4,6−テトラクロロフェノール、フェノール、イソプロピルフェノール、クレゾール、チモール、パラクロロフェノール等のフェノール類;トリクロサン等のハロゲン化ビスフェノール類、酸アミド類、四級アンモニウム塩類;トリクロロカルバニド、ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、ハロカルバン、ヘキサクロロフェン、ヒノキチオール、サリチル酸;安息香酸ナトリウム;フェノキシエタノール;1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等の1,2−ジオール;フェニルエチルアルコール;イミダゾリニウムウレア;デヒドロ酢酸及びその塩が好ましいものとして挙げられる。
【0016】
極圧剤としては、ジベンジルジサルファイド、硫化脂肪エステルなどのイオウ化合物、トリクレジルフォスフェートなどのリン化合物などがあり、腐食防止剤としてはベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、グルコン酸ナトリウム、コハク酸エステル系などがあり、防錆剤としては、カルボン酸及びその塩、スルホン酸及びその塩、アミン及びその塩、エステル、エーテル、油脂などがある。
【0017】
潤滑添加剤としては、アルファオレフィンオリゴマー、ポリブテン、アルキルベンゼン、シクロアルカン類などの炭化水素系化合物;2−エチルヘキサン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,4−ジエチルペンタン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ダイマー酸などの脂肪族カルボン酸;2−エチルヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ダイマージオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族アルコール;前記脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル、ポリオールエステル、リン酸エステルなどのエステル系化合物;ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、フェニルエーテルなどのエーテル系化合物;ポリシロキサン、シリケートエステルなどのシリコーン系化合物;フッ化カーボン系化合物;鉱物油、大豆油、菜種油、ひまし油、やし油、牛脂などの動植物油などがある。
【0018】
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸ナトリウム、セスキ炭酸カリウム、酸化ホウ素、メタホウ酸ナトリウムなどの無機アルカリ、エチルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルモノエタノールアミン、N−エチルモノエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピリジン、ピペラジン、モルホリンなどの有機アルカリが挙げられる。
【0019】
金属イオン封鎖剤としては、EDTA、EDTA2Na、EDTA3Na、EDTA4Na等のエデト酸塩(エチレンジアミン四酢酸塩);HEDTA3Na等のヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩;ペンテト酸塩(ジエチレントリアミン五酢酸塩);フィチン酸;エチドロン酸等のホスホン酸及びそのナトリウム、カリウム塩等の塩類;シュウ酸ナトリウム;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸等のポリポリアミノ酸類;ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、リン酸;クエン酸ナトリウム、クエン酸、アラニン、ジヒドロキシエチルグリシン、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸などが挙げられる。
【0020】
界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールプロピレングリコール、ポリエチレングリコールプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、石油スルホネート塩、脂肪酸塩などがある。
【0021】
溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトールなどがある。
【0022】
増粘剤としては、ポリカルボン酸及びその塩、ポリビニルアルコール、アルコールのアルキレンオキサイド付加物、ポリアミンアルキレンオキサイド付加物、セルロース誘導体などがある。
【0023】
酸化防止剤としては、2,4−ジメチル−6−tertブチルフェノール、2,6−ジtertブチル−4−メチルフェノールなどのフェノール系化合物、N−フェニル−4−オクチルフェニルアミン、N−フェニルアルファナフチルアミン、フェノチアジンなどのアミン系化合物、ジアリルジチオリン酸亜鉛などのリン酸亜鉛化合物など、消泡剤としてはシリコン化合物、ポリエーテル系非イオン活性剤など、着色剤としては、有機系染料などが用いられる。
【0024】
これらの他、一般的に水系・水溶性潤滑組成物として配合される成分、日本国及び諸外国特許公報及び特許公開公報(公表公報・再公表を含む)に記載されている成分等を、公知の組み合わせ及び配合比・配合量で配合することが可能である。
【0025】
本発明の水系・水溶性潤滑組成物は、金属の切削加工・研削加工・伸線加工等に用いられる金属加工液、油圧システム等における圧力伝達媒体である油圧作動液、機械・装置等の作動部分の潤滑液又は作動液、機械・装置等の加工時において使用する潤滑液、洗浄システムで使用される防錆潤滑液、金属の洗浄・研削・切削・塑性加工、鋼の焼入れ焼き戻しに使用されるクーラント液等として使用することができる。
【0026】
本発明の水系・水溶性潤滑組成物は、水中油(O/W)型、油中水(W/O)型、W/O/W型、O/W/O型等の乳化型、透明可溶化型等の剤型で使用できる。又、得られた水系・水溶性潤滑組成物は、そのまま使用しても良いが、必要に応じて水や溶剤で1.1〜100倍に希釈して使用しても良い。
【実施例】
【0027】
以下、本技術につき実施例を用いてより詳細に説明するが、本技術はこれら実施例に限定されるものでない。尚、以下に記載の数平均分子量は、DMF溶媒にて、既知分子量のポリエチレンオキシドを標準としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定された値である。
【0028】
実施例1
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた1Lの反応器に、水酸基価から算出した平均重合度
が10のポリグリセリン90%水溶液(阪本薬品工業社製、ポリグリセリン#750)2
92g(0.35モル)を仕込み、減圧脱水後、エイコサン二酸(岡村製油社製、SL−
20)71.8g(0.21モル)、テトラデカン二酸(コグニス社製、EMEROX1
14)36.1g(0.14モル)を仕込み、窒素気流中210〜220℃に加熱し、生
成する水を留去しながら24時間エステル化反応を行い、常温で固形状の化合物Aを34
1g得た。得られた化合物Aの酸価は0.2、数平均分子量は3900であった。
【0029】
実施例2
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた1Lの反応器に、水酸基価から算出した平均重合度
が10のポリグリセリン90%水溶液(阪本薬品工業社製、ポリグリセリン#750)4
15g(0.5モル)を仕込み、減圧脱水後、オクタデカン二酸(コグニス社製、EME
ROX118)78.5g(0.25モル)を仕込み、窒素気流中210〜220℃に加
熱し、生成する水を留去しながら24時間エステル化反応を行い、常温でペースト状の化
合物Bを420g得た。得られた化合物Bの酸価は0.3、数平均分子量は1400であ
った。
【0030】
実施例3
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた1Lの反応器に、水酸基価から算出した平均重合度
が10のポリグリセリン90%水溶液(阪本薬品工業社製、ポリグリセリン#750)2
92g(0.35モル)を仕込み、減圧脱水後、エイコサン二酸(岡村製油社製、SL−
20)50.3g(0.15モル)、テトラデカン二酸(コグニス社製、EMEROX1
14)25.3g(0.10モル)を仕込み、窒素気流中210〜220℃に加熱し、生
成する水を留去しながら24時間エステル化反応を行い、常温で固形状の化合物Fを310g得た。得られた化合物Fの酸価は0.3、数平均分子量は2400であった。
得られたオリゴマーエステルの潤滑性能を次の方法で評価した。
【0031】
実施例4
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた1Lの反応器に、水酸基価から算出した平均重合度
が4のポリグリセリン95%水溶液(阪本薬品工業社製、ポリグリセリン#310)39
2g(1.2モル)を仕込み、減圧脱水後、エイコサン二酸(岡村製油社製、SL−20
)123g(0.36モル)、テトラデカン二酸(コグニス社製、EMEROX114)
61.9g(0.24モル)を仕込み、窒素気流中210〜220℃に加熱し、生成する
水を留去しながら24時間エステル化反応を行い、常温で固形状の化合物Dを504g得
た。得られた化合物Dの酸価は0.3、数平均分子量は1700であった。
【0032】
実施例5
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた1Lの反応器に、ジグリセリン(阪本薬品工業社製
、ジグリセリンS)266g(1.6モル)、セバシン酸(小倉合成工業社製、セバシン酸)162g(0.8モル)を仕込み、窒素気流中210〜220℃に加熱し、生成する水を留去しながら24時間エステル化反応を行い、常温で粘性液状の化合物Eを375g得た。得られた化合物Eの酸価は0.3、数平均分子量は1400であった。
【0033】
実施例6
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた1Lの反応器に、水酸基価から算出した平均重合度
が10のポリグリセリン(青木油脂工業社製、グリサーフ10)300g(0.40モル)、セバシン酸(小倉合成工業社製、セバシン酸)56.6g(0.28モル)を仕込み、窒素気流中210〜220℃に加熱し、生成する水を留去しながら9時間エステル化反応を行い、常温で粘性液状の化合物Fを344g得た。得られた化合物Fの酸価は0.7であった。次いで、化合物F120gに水79.6g、p−ヒドロキシ安息香酸メチル0.4gを加え、均一に溶解させることで、組成物FWを200g得た。また、化合物F120gにグリセリン80gを加え、均一に溶解させることで、組成物FGを200g得た。
【0034】
実施例7
得られたオリゴマーエステルの潤滑性能を次の方法で評価した。
(潤滑性能評価方法)
社団法人石油学会の潤滑油の耐摩耗性試験方法(シェル四球式) JPI−5S−32−90に準じて、次の条件で試験を行い、摩耗痕径を測定してその平均値を算出した。
機器 : シェル四球型摩擦試験機(高千穂精機株式会社)
荷重 : 10kgf
回転速度 : 1,000rpm
総回転数 : 36,000回転
温度 : 室温
測定濃度 : 5%水溶液
得られた結果を次に示した。
化合物名 摩耗痕径(mm)
――――――――――――――――――――――――――――――
実施例の化合物
化合物A 0.60
化合物B 0.43
化合物C 0.45
化合物D 0.47
化合物E 0.68
比較例の化合物
PEG2000 0.88
C16−(EO)22−(PO)4 0.75
(C12−14)−(EO)9 0.76

尚、比較例の化合物は、次に示す化合物である。
PEG2000:ポリエチレングリコール2000
C16−(EO)22−(PO)4:ポリエチレンオキサイド(22)ポリプロピレンオキサイド(4)セチルエーテル
(C12−14)−(EO)9:ポリエチレンオキサイド(9)C12〜14アルキルエーテル
結果からわかるように、本発明の化合物は比較例の化合物よりも摩耗痕径が小さく、潤滑性能に優れることが見出された。更に、本発明のオリゴマーエステルを配合した潤滑組成物の例を次に示した。
【0035】
実施例8 金属加工潤滑液
成分 配合量(重量%)
1 化合物A 30.0
2 イソノナン酸 5.0
3 トリエタノールアミン 10.0
4 防腐剤 0.1
5 水 54.9
【0036】
実施例9 水溶性クーラント液
成分 配合量(重量%)
1 化合物B 15.0
2 カプリル酸 5.0
3 炭酸ナトリウム 10.0
4 メタホウ酸ナトリウム 1.0
5 防腐剤 0.1
6 水 68.9
【0037】
実施例10 油圧作動液
成分 配合量(重量%)
1 化合物C 40.0
2 ポリエチレングリコール 10.0
3 エチレングリコール 10.0
4 グリセリン 10.0
5 防錆剤 1.0
6 防腐剤 0.1
7 シリコン消泡剤 0.1
8 水 28.8
【0038】
実施例11 水溶性潤滑液
成分 配合量(重量%)
1 化合物FG 30.0
2 オレイン酸 5.0
3 オレイン酸アミド 1.0
4 トリエタノールアミン 1.0
5 水酸化カリウム 1.0
6 防腐剤 0.1
7 水 61.9
【0039】
実施例12 防錆潤滑液
成分 配合量(重量%)
1 化合物FW 20.0
2 オレイン酸 5.0
3 ジエタノールアミン 5.0
4 トリイソステアリン酸グリセリル1.0
5 防腐剤 0.1
6 EDTA4Na 2.0
7 水 66.9
【0040】
実施例13 食器、医療機器・器具用防錆潤滑液
成分 配合量(重量%)
1 化合物D 20.0
2 プロピレングリコール 40.0
3 グリセリン 10.0
4 エタノール 5.0
5 水 25.0
【0041】
実施例14 熱処理液
成分 配合量(重量%)
1 化合物E 25.0
2 ポリエチレングリコール 10.0
3 グリセリン 10.0
4 防腐剤 0.1
5 水 54.9
これらの潤滑組成物はいずれも安全性、潤滑性、冷却性に優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、安全性が高く、水への溶解性、分散性に優れ、潤滑性の良いオリゴマーエステルを含有する安全性、潤滑性、冷却性の良い水系・水溶性潤滑組成物を提供することができる。




























【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B)より合成されたオリゴマーエステルを含有する水系・水溶性潤滑組成物。
(A)炭素数2〜36の直鎖、分岐鎖、若しくは環状構造を含む二価カルボン酸1種又は
2種以上。
(B)水酸基価から算出した平均重合度が2〜15のポリグリセリン。
【請求項2】
成分(A)が、炭素数2〜22の直鎖、分岐鎖、若しくは環状構造を含む二価カルボン酸1種又は2種以上である請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
オリゴマーエステルが、ポリグリセリン1モルに対し0.3〜1.5モルの二価カルボン酸を使用して合成されるオリゴマーエステルである請求項1〜2に記載の潤滑組成物。




























【公開番号】特開2008−239917(P2008−239917A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86442(P2007−86442)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人発明協会、発明協会公開技報、公技番号2006−505668、2006年10月27日
【出願人】(000231497)日本精化株式会社 (60)
【Fターム(参考)】