説明

水系導電性プライマ

【課題】下地への良好な接着力と塗膜強度とを兼ね備える上、これまでにない低い抵抗値、すなわち高い導電性を有する導電性プライマ層を形成しうる水系導電性プライマを提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂エマルション、水溶性エポキシ硬化剤、および平均粒径3μm以上、8μm以下の人造黒鉛を配合した水系導電性プライマである。前記水系導電性プライマは、
(1) 前記エポキシ樹脂エマルションと人造黒鉛とを含む主剤組成物、および
(2) 水溶性エポキシ硬化剤を含む硬化剤組成物
の2液タイプとするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止塗り床を構成する導電性プライマ層のもとになる、水系導電性プライマに関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場をはじめとする各種生産設備等の床として、単層の、または多層構造の塗り床が広く採用されている。かかる塗り床は、工場等で使用する薬品や溶剤に対する耐性に優れている必要がある。
また、例えば半導体素子等の電子部品の製造工程に使用するクリーンルーム等の、高度の防塵性能が要求される床や、あるいは有機溶剤やガス等を取り扱うため静電気スパークの発生を高度に防止することが求められる床などに適用する塗り床は、前記耐性に加えて、さらに導電性を有し帯電を防止する機能に優れている必要もある。
【0003】
すなわち電気抵抗の高い絶縁体からなる塗り床は、作業者がその上を歩行するだけで帯電しやすい上、帯電によって塗り床それ自体や作業者に蓄積される静電気を漏洩しにくいため、塗り床に導電性を付与してかかる帯電を防止しなければならない。
前記帯電を防止する機能を有する塗り床、つまり帯電防止塗り床は、通常の塗り床と同様に、モルタルやコンクリート等からなる下地上に、現場施工でプライマ層等を形成した上に、さらに仕上げ層を積層することで構成される。
【0004】
そして、前記仕上げ層のもとになるバインダ樹脂を含む塗り床材中に、黒鉛、カーボンブラック等の導電性付与材を配合することで、帯電防止塗り床に、導電性および帯電防止機能が付与される。
ただし、仕上げ層は塗り床のカラーリングをも担うため、塗り床材には、前記黒鉛等の黒色の導電性付与剤を多量に配合することができない。そのため、前記塗り床材を用いて形成される仕上げ層は、特に面方向の導電性が不足する傾向がある。
【0005】
そこで、帯電防止塗り床の導電性を安定させるべく、前記仕上げ層の直下に、導電性付与剤を多量に配合して面方向の導電性を確保した導電性プライマ層を積層する場合がある。
前記導電性プライマ層のもとになる導電性プライマとして、従来は、有機溶剤を用いた溶剤型の塗料に前記黒鉛等を配合したものが広く用いられてきた。
【0006】
しかし近年、塗布作業時の臭気の問題や換気確保の問題等を考慮して、有機溶剤を用いた塗料が敬遠され、溶剤として水を用いた水系の塗料が好んで使用される傾向にあり、導電性プライマについても、水系導電性プライマの実用化が検討されている。
水系導電性プライマには、当然ながら良好な導電性が求められるだけでなく、有機溶剤型の導電性プライマと同等程度、あるいはそれ以上の、下地への良好な接着力と塗膜強度とを兼ね備えた導電性プライマ層を形成できることも求められる。
【0007】
特許文献1には、前記の要求を満足する水系導電性プライマを提供するために、使用する樹脂や導電性付与剤の種類の選定、あるいは導電性付与剤の粒径範囲の設定が肝要であることが記載されている。
そして液状エポキシ樹脂、自己乳化型エポキシ硬化剤、および導電性付与剤としての人造黒鉛を組み合わせるとともに、前記人造黒鉛の平均粒径を10μm以上、40μm以下の範囲に限定することが提案されている。
【0008】
人造黒鉛の平均粒径を10μm以上に限定しているのは、前記併用系に10μm未満の微小な人造黒鉛を使用した場合、水系導電性プライマの凝集力が低下する結果、導電性プライマ層の、下地との接着力や塗膜強度が低下するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−262254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
電子部品の製造工場等に施工する帯電防止塗り床には、蓄積された静電気の作用で作業者の体に埃等が付着してクリーンルーム内に持ち込まれたり電子部品の製造工程に混入したりするのを防止するいわゆる防塵性能を付与するべく、先に説明したように導電性が付与される。
ところが近年では、作業者が床上を歩いたり作業をしたりした際に発生する静電気それ自体によって電子部品が破壊されることをも防止するため、前記帯電防止塗り床に、これまでに比べてより一層高い導電性が求められるようになってきている。
【0011】
例えば100V以下の静電気で破壊される電子部品を扱う工場では、床上を歩いたり作業をしたりした際の帯電により作業者に蓄積される静電気の電位を数十V以下に抑えることが求められる。そのため、特許文献1に記載された抵抗値20kΩ以下の範囲内でも、特に10kΩ以下という低い抵抗値、すなわち高い導電性を有する導電性プライマ層を形成する必要がある。
【0012】
ところが、特許文献1に記載の水系導電性プライマでは、かかる高い導電性を有する導電性プライマ層を形成することはできない。これは、先に説明したように特許文献1においては、導電性付与剤として、平均粒径10μm以上の比較的大きな人造黒鉛を限定的に用いているためである。
発明者の検討によると、導電性プライマ層に現状よりも高い導電性を付与するためには、特許文献1に記載された範囲よりも平均粒径が小さく、比表面積の大きい人造黒鉛を使用しなければならない。特に、前記のように10kΩ以下という低い抵抗値、高い導電性を有する導電性プライマ層を形成するためには、平均粒径が8μm以下という微小な人造黒鉛を使用する必要がある。
【0013】
しかしその場合、特許文献1の構成では、水系導電性プライマの凝集力が大幅に低下して、下地との接着力に優れるとともに塗膜強度にも優れた導電性プライマ層を形成することができないのである。
本発明の目的は、下地への良好な接着力と塗膜強度とを兼ね備える上、これまでにない低い抵抗値、すなわち高い導電性を有する導電性プライマ層を形成しうる水系導電性プライマを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明者は、特許文献1の構成において平均粒径8μm以下の小さい人造黒鉛を使用した際に、水系導電性プライマの凝集力が低下する原因について検討した。
その結果、特許文献1の構成では、
(a) 水系導電性プライマ中での、液状エポキシ樹脂を主体とする樹脂分の分散粒径が大きいこと、および
(b) 自己乳化型エポキシ硬化剤が、前記水系導電性プライマ中で、樹脂分とは別個に粒状に分散していること、
が、前記の原因であることが明らかとなった。
【0015】
すなわち液状エポキシ樹脂は、人造黒鉛の微小粒子間に介在して前記微小粒子同士を結合するとともに、前記多数の人造黒鉛を、プライマ層やベースコート層等の下地層上に固定して導電性プライマ層を形成するバインダとして機能する。
前記結合や固定をより強固にするためには、液状エポキシ樹脂を、人造黒鉛の微小粒子よりも小さい分散粒子の状態で前記微小粒子間に介在させるとともに、前記人造黒鉛の表面のごく微小な凹みや下地層の表面の凹みに隙間なく浸透させた状態で、その隅々まで行き渡らせたエポキシ硬化剤の作用によって十分に硬化反応させなければならない。
【0016】
しかし発明者が検討したところ、特許文献1の構成から人造黒鉛のみを除いた各成分を混合して乳化させた場合、樹脂分の分散粒径の平均値は8μm程度であって、今回組み合わせようとしている平均粒径8μm以下の人造黒鉛と同等またはそれ以上の大きさを有している。人造黒鉛を加えても、樹脂分の分散粒径には大きな変化はないと考えられる。
そのため液状エポキシ樹脂を、前記人造黒鉛の微小粒子間に、小さい分散粒子の状態で介在させたり、前記人造黒鉛の表面のごく微小な凹みや下地層の表面の凹みに隙間なく浸透させたりすることは困難である。
【0017】
しかも自己乳化型エポキシ硬化剤は、水系導電性プライマ中で、前記のように樹脂分とは別個に粒子状を呈するため、前記人造黒鉛の微小粒子間や、その表面のごく微小な凹み内、あるいは下地層の表面の凹み内にまで広く行き渡らせて、エポキシ樹脂を十分に硬化反応させることも困難である。
したがって、特許文献1の構成において平均粒径8μm以下の小さい人造黒鉛を使用すると水系導電性プライマの凝集力が低下してしまい、下地との接着力に優れるとともに塗膜強度にも優れた導電性プライマ層を形成することができないのである。
【0018】
そこで、発明者はさらに検討した結果、下記の事実を見出し、本発明を完成するに至った。
(i) 平均粒径8μm以下の微小な人造黒鉛と組み合わせるバインダとして、あらかじめ分散媒中にエポキシ樹脂を微小分散させたエポキシ樹脂エマルションを使用する。そうすると、前記エポキシ樹脂を、前記人造黒鉛の微小粒子間に、より小さい分散粒子の状態で介在させることができるとともに、前記人造黒鉛の表面のごく微小な凹みや下地層の表面の凹みに隙間なく浸透させることもできる。
(ii) エポキシ硬化剤として、水溶性であるため粒状に凝集せずに水系導電性プライマ中に広く行き渡る水溶性エポキシ硬化剤を用いる。そうすると、前記のように人造黒鉛の微小粒子間に介在させたり、前記人造黒鉛の表面のごく微小な凹みや下地層の表面の凹みに隙間なく浸透させたりしたエポキシ樹脂を、隅々まで十分に硬化反応させることができる。
【0019】
そのため、先に説明した問題を全て解消して、下地への良好な接着力と塗膜強度とを兼ね備える上、10kΩ以下という低い抵抗値、高い導電性を有する導電性プライマ層を形成することが可能となる。
したがって本発明は、エポキシ樹脂エマルション、水溶性エポキシ硬化剤、および平均粒径3μm以上、8μm以下の人造黒鉛を含むことを特徴とする水系導電性プライマである。
【0020】
なお人造黒鉛の平均粒径が3μm以上に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち通常の粉砕法では、平均粒径が3μm未満である微小な人造黒鉛を製造するのが難しい上、かかる微小な人造黒鉛を製造できたとしても、平均粒径が3μm以上のものを用いた場合と、導電性プライマ層の抵抗値を低下させる効果の点で大きな差が見られないためである。
【0021】
また人造黒鉛の平均粒径が8μm以下に限定されるのは、先に説明したように、かかる範囲を超える大きな人造黒鉛を使用した場合に比べて、導電性プライマ層の抵抗値を大幅に低減できるためである。
前記本発明において、エポキシ樹脂エマルションとしては、エポキシ樹脂の分散粒径の平均値が0.5μm以上、1.5μm以下であるものを用いるのが好ましい。
【0022】
エポキシ樹脂の分散粒径の平均値を前記1.5μm以下の範囲とすることで、前記エポキシ樹脂を、人造黒鉛の微小粒子間に、より小さい分散粒子の状態で介在させるとともに、前記人造黒鉛の表面のごく微小な凹みや下地層の表面の凹みに隙間なく浸透させる効果をさらに向上できる。
そのため、本発明の水系導電性プライマを用いて形成する導電性プライマ層の、下地への接着力と塗膜強度とをさらに向上することができる。
【0023】
なおエポキシ樹脂の分散粒径の平均値が0.5μm以上であるのが好ましいのは、下記の理由による。
すなわち、エポキシ樹脂の分散粒径の平均値が0.5μm未満では、導電性プライマ層の、下地への接着力と塗膜強度とを向上する効果が十分に得られないおそれがある。また、エポキシ樹脂の分散粒径の平均値を0.5μm未満とするためには、分散工程に多大な時間を要するため、エポキシ樹脂エマルションの、ひいては水系導電性プライマの生産性が低下するおそれもある。
【0024】
また本発明の水系導電性プライマは、
(1) 前記エポキシ樹脂エマルションと人造黒鉛とを含む主剤組成物、および
(2) 水溶性エポキシ硬化剤を含む硬化剤組成物
の2液タイプとするのが好ましい。
特許文献1においては、エポキシ樹脂と自己乳化型エポキシ硬化剤と人造黒鉛とをかく拌機を用いて混合した後、さらに水を追加して混合することで1液タイプの水系導電性プライマを調製している。
【0025】
しかしエポキシ樹脂と自己乳化型エポキシ硬化剤とは接触した時点で硬化反応が開始されるため、前記硬化反応が進行して塗布ができなくなるまでの時間、すなわち水系導電性プライマのポットライフを考慮すると、施工現場において前記各成分を混合して水系導電性プライマを調製しなければならない。
そのため人造黒鉛を、前記のように平均粒径の小さい粉末状のままで施工現場に持ち込む必要があり、混合作業時に多量の人造黒鉛が飛散して施工現場の周囲の美観を損ねたり、粉塵による安全衛生上の問題を生じたりするおそれがある。また施工現場での配合では、人造黒鉛の配合割合がどうしてもばらつきやすいという問題もある。
【0026】
これに対し、前記2液タイプの水系導電性プライマによれば、主剤組成物を硬化剤組成物と混合した時点で硬化反応が開始されるため、前記主剤組成物中に、あらかじめ、その製造工場において所定量の人造黒鉛を配合しておくことができる。そのため、施工現場に粉末状の人造黒鉛を持ち込む必要がなくなり、上記の問題が発生するのを全て防止することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、下地への良好な接着力と塗膜強度とを兼ね備える上、これまでにない低い抵抗値、すなわち高い導電性を有する導電性プライマ層を形成しうる水系導電性プライマを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の水系導電性プライマは、エポキシ樹脂エマルション、水溶性エポキシ硬化剤、および平均粒径3μm以上、8μm以下の人造黒鉛を含むことを特徴とする。
前記のうちエポキシ樹脂エマルションとしては、特に水系の分散媒中に、分散質としてエポキシ樹脂を微小分散させた種々のエポキシ樹脂エマルションがいずれも使用可能である。中でも、前記分散質としてのエポキシ樹脂の、分散媒中での分散粒径の平均値が0.5μm以上、特に0.7μm以上であるものが好ましく、1.5μm以下、特に1.2μm以下であるものが好ましい。
【0029】
エポキシ樹脂の分散粒径の平均値を前記1.5μm以下の範囲とすることで、前記エポキシ樹脂を、人造黒鉛の微小粒子間に、より小さい分散粒子の状態で介在させるとともに、前記人造黒鉛の表面のごく微小な凹みや下地層の表面の凹みに隙間なく浸透させる効果をさらに向上できる。
そのため、本発明の水系導電性プライマを用いて形成する導電性プライマ層の、下地への接着力と塗膜強度とをさらに向上することができる。
【0030】
なおエポキシ樹脂の分散粒径の平均値が0.5μm以上であるのが好ましいのは、下記の理由による。
すなわち、エポキシ樹脂の分散粒径の平均値が0.5μm未満では、導電性プライマ層の、下地への接着力と塗膜強度とを向上する効果が十分に得られないおそれがある。また、エポキシ樹脂の分散粒径の平均値を0.5μm未満とするためには、分散工程に多大な時間を要するため、エポキシ樹脂エマルションの、ひいては水系導電性プライマの生産性が低下するおそれもある。
【0031】
なおエポキシ樹脂の分散粒径の平均値を、本発明では、レーザー回折散乱式粒度分布測定器〔(株)セイシン企業製のSKレーザーマイクロンサイザー PRO−7000S〕を用いて測定した粒度分布の結果から求めた50%累積径D50でもって表すこととする。
前記エポキシ樹脂エマルション中に含まれるエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有する樹脂が、いずれも使用可能である。
【0032】
かかるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、これらエポキシ樹脂の水素添加物、メタキシレンジアミンやヒダントインをエポキシ化した含窒素エポキシ樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。
液状のエポキシ樹脂は単独で使用できるが、固形のエポキシ樹脂を使用する場合や、液状のエポキシ樹脂の粘度を低下させる場合は、例えばモノグリシジルエステル系等の反応性希釈剤で希釈すればよい。
【0033】
エポキシ樹脂エマルションの具体例としては、例えば大都産業(株)製の商品名ダイトサイザーシリーズのエポキシ樹脂エマルションのうちダイトサイザーDT−119W50〔有効成分(エポキシ樹脂)濃度:50%、エポキシ樹脂の分散粒径の平均値:1μm〕、ダイトサイザーDT−80B〔有効成分(エポキシ樹脂)濃度:50%、エポキシ樹脂の分散粒径の平均値:1.5μm〕等が挙げられる。
【0034】
また、例えば前記分散粒径の平均値が1μmであるエポキシ樹脂エマルションの、分散の強度を強くする(混合時のせん断力を上げたり、混合時間を長くしたりする)と、前記分散粒径の平均値を、前記1μmよりも小さくすることができ、逆に分散の強度を弱くする(混合時のせん断力を下げたり、混合時間を短くしたりする)と、前記分散粒径の平均値を、前記1μmよりも大きくすることができる。
【0035】
エポキシ樹脂エマルションとしては、このようにして分散粒径の平均値を調整したものを用いることもできる。
ただし分散の強度を強くしても、分散粒径の平均値はある程度までしか小さくならず、それよりもさらに小さくするためには、乳化剤の種類や量を変える等の工夫をする必要がある。その場合は、グレードの異なるエポキシ樹脂エマルションを使用すればよい。
【0036】
水溶性エポキシ硬化剤としては、水溶性を有し、水系導電性プライマ中に広く行き渡ってエポキシ樹脂を硬化反応させることができる種々の硬化剤がいずれも使用可能である。
前記水溶性エポキシ硬化剤としては、例えばポリエチレンポリアミン変性物、イソフォロンジアミン変性物、メタキシレンジアミン変性物、ポリオキシプロピレンアミン変性物、ポリアミドアミン変性物等のアミン型エポキシ硬化剤の1種または2種以上が挙げられる。
【0037】
前記水溶性エポキシ硬化剤の具体例としては、例えば前記水溶性エポキシ硬化剤の水溶液として供給され、そのままで2液タイプの水系導電性プライマのうち硬化剤組成物として使用可能な、大都産業(株)製の商品名ダイトクラールシリーズのダイトクラールI−5996A〔有効成分濃度:30.2%〕、ダイトクラールI−6002A〔有効成分濃度:28.7%〕、ダイトクラールI−6003A〔有効成分濃度:25.8%〕、ダイトクラールI−6018A〔有効成分濃度:30.8%〕等の1種または2種以上が挙げられる。
【0038】
本発明において、導電性付与剤として人造黒鉛を使用しているのは、下記の理由による。
すなわち、導電性付与剤として一般的な天然黒鉛の多くは疎水性であり、分散媒としての水をはじいたり空気を巻き込んだりしやすい。そのため天然黒鉛を使用した場合には、水系導電性プライマの凝集力が低下して、導電性プライマ層の、下地との接着力や塗膜強度が低下してしまう。
【0039】
これに対し、前記天然黒鉛を薬品処理、加熱処理等して製造される人造黒鉛は疎水性が抑制されており、水をはじいたり空気を巻き込んだりしにくい。したがって、水系導電性プライマの凝集力を低下させるおそれがなく、導電性プライマ層の、下地との接着力や塗膜強度が低下するのを防止することができる。
前記人造黒鉛の平均粒径は、3μm以上、8μm以下である必要がある。その理由は先に説明したとおりである。
【0040】
すなわち通常の粉砕法では、平均粒径が3μm未満である微小な人造黒鉛を製造するのが難しい上、かかる微小な人造黒鉛を製造できたとしても、平均粒径が3μm以上のものを用いた場合と、導電性プライマ層の抵抗値を低下させる効果の点で大きな差が見られない。したがって、人造黒鉛の平均粒径は3μm以上である必要がある。
また平均粒径が8μm以下の人造黒鉛を使用すると、先に説明したように、かかる範囲を超える大きな人造黒鉛を使用した場合に比べて、導電性プライマ層の抵抗値を大幅に低減することができる。したがって、人造黒鉛の平均粒径は8μm以下である必要がある。
【0041】
なお人造黒鉛の平均粒径を、本発明では、先に説明したレーザー回折散乱式粒度分布測定器〔(株)セイシン企業製のSKレーザーマイクロンサイザー PRO−7000S〕を用いて測定した粒度分布の結果から求めた50%累積径D50でもって表すこととする。
前記人造黒鉛としては、固定炭素が90%以上であるものを用いるのが、導電性プライマ層の抵抗値を低減する上で好ましい。
【0042】
本発明の水系導電性プライマは、先に説明したように、
(1) 前記エポキシ樹脂エマルションと人造黒鉛とを含む主剤組成物、および
(2) 水溶性エポキシ硬化剤を含む硬化剤組成物
の2液タイプとするのが好ましい。
前記2液タイプの水系導電性プライマは、主剤組成物を硬化剤組成物と混合した時点で硬化反応が開始されるため、前記主剤組成物中に、あらかじめ、その製造工場において所定量の人造黒鉛を配合しておくことができる。そのため、施工現場に粉末状の人造黒鉛を持ち込む必要がなくなり、前記人造黒鉛の飛散や配合割合のばらつき等の問題が発生するのを全て防止することができる。
【0043】
本発明の水系導電性プライマにおいては、前記各成分を任意の割合で配合することができる。
例えばエポキシ樹脂エマルションと水溶性エポキシ硬化剤とは、前記エポキシ樹脂エマルションの有効成分であるエポキシ樹脂の官能基(エポキシ基)当量と、前記水溶性エポキシ硬化剤の官能基当量とがあらかじめ設定された所定の当量比となるように、その配合割合を設定することができる。
【0044】
また樹脂分、すなわちエポキシ樹脂と水溶性エポキシ硬化剤の総量に対する人造黒鉛の配合割合は70質量%以上であるのが好ましく、120質量%以下であるのが好ましい。
人造黒鉛の配合割合が前記範囲未満では、たとえ人造黒鉛として、平均粒径が8μm以下の、比表面積の大きいものを用いたとしても、抵抗値が10kΩ以下の、高い導電性を有する導電性プライマ層を形成できないおそれがある。
【0045】
また前記範囲を超えてもそれ以上、抵抗値を小さくすることはできない上、相対的にエポキシ樹脂の配合割合が少なくなるため、水系導電性プライマの凝集力が低下して、導電性プライマ層の、下地との接着力や塗膜強度が低下するおそれがある。
本発明の水系導電性プライマは、前記エポキシ樹脂エマルション、水溶性エポキシ硬化剤、および平均粒径3μm以上、8μm以下の人造黒鉛の3成分のみで構成することができるが、必要に応じて、例えば水等の水溶性溶剤等を加えて濃度、流動性等を調整してもよい。
【0046】
また、水系導電性プライマの凝集力を阻害しない範囲で、人造黒鉛とともに他の導電性付与剤を併用することもできる。かかる他の導電性付与剤としては、例えば炭素繊維が挙げられる他、スズ、アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛、アンチモン、チタン等の金属酸化物等の1種または2種以上が挙げられる。
本発明の水系導電性プライマを用いて導電性プライマ層を形成することにより、帯電防止塗り床に、これまでにない高い導電性を付与することができる。
【0047】
前記帯電防止塗り床は、前記導電性プライマ層を有する以外は従来同様に構成できる。
例えばコンクリート、モルタル等からなる下地上にプライマ層を形成した上に前記水系導電性プライマを塗布し、静置して乾燥させるとともにエポキシ樹脂を硬化反応させて導電性プライマ層を形成する。
そして前記導電性プライマ層上に仕上げ層を積層、形成することにより、帯電防止塗り床が施工される。
【0048】
前記のうちプライマ層は、硬化性のバインダ樹脂を少なくとも含むプライマを塗布したのち硬化反応させることによって形成される。前記バインダ樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の1種または2種以上が挙げられる。特に現場施工での作業性を考慮して室温(5〜35℃)で硬化反応させることができるラジカル重合性樹脂、2液硬化型樹脂、湿気硬化型樹脂等が好ましい。
【0049】
また仕上げ層は、前記と同様の硬化性のバインダ樹脂と、任意の導電性付与材と、さらに必要に応じて塗り床をカラーリングするための顔料等の着色剤とを含む塗り床材を、前記導電性プライマ層上に塗布したのち降下させることによって形成される。
【実施例】
【0050】
〈実施例1〉
(主剤組成物の調製)
エポキシ樹脂エマルション〔前出の大都産業(株)製のダイトサイザーDT−119W50、有効成分(エポキシ樹脂)濃度:50%、エポキシ樹脂の分散粒径の平均値:1μm〕40質量部と、人造黒鉛〔(株)小林商事製のAGP−特Sの平均粒径3μm分級品、固定炭素:97.0%〕23.76質量部とを、汎用かく拌機〔リョービ(株)製のパワーミキサーPM850、羽根径φ150mm〕を用いて混合して主剤組成物を調製した。
【0051】
(硬化剤組成物)
硬化剤組成物としては、前出の大都産業(株)製のダイトクラールI−6018A〔水溶性エポキシ硬化剤の水溶液、有効成分(水溶性エポキシ硬化剤)濃度:30.8%〕を用いた。
(水系導電性プライマ)
前記主剤組成物と硬化剤組成物とで2液タイプの水系導電性プライマを構成した。
【0052】
両者の配合割合は、主剤組成物中のエポキシ樹脂エマルションの質量と、硬化剤組成物の質量とが同じになるように設定した。かかる設定において樹脂分、すなわちエポキシ樹脂と水溶性エポキシ硬化剤の総量に対する人造黒鉛の配合割合は73.5質量%であった。
〈実施例2〉
人造黒鉛として、(株)小林商事製のAGP−特Sの平均粒径6μm分級品〔固定炭素:97.0%〕を同量使用したこと以外は実施例1と同様にして主剤組成物を調製し、実施例1で使用したのと同じ硬化剤組成物と組み合わせて2液タイプの水系導電性プライマとした。
【0053】
両者の配合割合は、主剤組成物中のエポキシ樹脂エマルションの質量と、硬化剤組成物の質量とが同じになるように設定した。かかる設定において樹脂分、すなわちエポキシ樹脂と水溶性エポキシ硬化剤の総量に対する人造黒鉛の配合割合は73.5質量%であった。
〈実施例3〉
人造黒鉛として、(株)小林商事製のAGP−特Sの平均粒径8μm分級品〔固定炭素:97.0%〕を同量使用したこと以外は実施例1と同様にして主剤組成物を調製し、実施例1で使用したのと同じ硬化剤組成物と組み合わせて2液タイプの水系導電性プライマとした。
【0054】
両者の配合割合は、主剤組成物中のエポキシ樹脂エマルションの質量と、硬化剤組成物の質量とが同じになるように設定した。かかる設定において樹脂分、すなわちエポキシ樹脂と水溶性エポキシ硬化剤の総量に対する人造黒鉛の配合割合は73.5質量%であった。
〈実施例4〉
エポキシ樹脂エマルションとして、実施例1で使用したのと同じダイトサイザーDT−119W50の分散の強度を強くして分散粒径の平均値を0.5μmに調整したものを同量使用したこと以外は実施例2と同様にして主剤組成物を調製し、実施例1で使用したのと同じ硬化剤組成物と組み合わせて2液タイプの水系導電性プライマとした。
【0055】
両者の配合割合は、主剤組成物中のエポキシ樹脂エマルションの質量と、硬化剤組成物の質量とが同じになるように設定した。かかる設定において樹脂分、すなわちエポキシ樹脂と水溶性エポキシ硬化剤の総量に対する人造黒鉛の配合割合は73.5質量%であった。
〈実施例5〉
エポキシ樹脂エマルションとして、実施例1で使用したのと同じダイトサイザーDT−119W50の分散の強度を弱くして分散粒径の平均値を1.5μmに調整したものを同量使用したこと以外は実施例2と同様にして主剤組成物を調製し、実施例1で使用したのと同じ硬化剤組成物と組み合わせて2液タイプの水系導電性プライマとした。
【0056】
両者の配合割合は、主剤組成物中のエポキシ樹脂エマルションの質量と、硬化剤組成物の質量とが同じになるように設定した。かかる設定において樹脂分、すなわちエポキシ樹脂と水溶性エポキシ硬化剤の総量に対する人造黒鉛の配合割合は73.5質量%であった。
〈実施例6〉
人造黒鉛の量を24.24質量部としたこと以外は実施例2と同様にして主剤組成物を調製し、実施例1で使用したのと同じ硬化剤組成物と組み合わせて2液タイプの水系導電性プライマとした。
【0057】
両者の配合割合は、主剤組成物中のエポキシ樹脂エマルションの質量と、硬化剤組成物の質量とが同じになるように設定した。かかる設定において樹脂分、すなわちエポキシ樹脂と水溶性エポキシ硬化剤の総量に対する人造黒鉛の配合割合は75.0質量%であった。
〈実施例7〉
人造黒鉛の量を33.29質量部とし、かつ水26.7質量部を加えたこと以外は実施例2と同様にして主剤組成物を調製し、実施例1で使用したのと同じ硬化剤組成物と組み合わせて2液タイプの水系導電性プライマとした。
【0058】
両者の配合割合は、主剤組成物中のエポキシ樹脂エマルションの質量と、硬化剤組成物の質量とが同じになるように設定した。かかる設定において樹脂分、すなわちエポキシ樹脂と水溶性エポキシ硬化剤の総量に対する人造黒鉛の配合割合は103.0質量%であった。
〈実施例8〉
人造黒鉛の量を36.52質量部とし、かつ水26.7質量部を加えたこと以外は実施例2と同様にして主剤組成物を調製し、実施例1で使用したのと同じ硬化剤組成物と組み合わせて2液タイプの水系導電性プライマとした。
【0059】
両者の配合割合は、主剤組成物中のエポキシ樹脂エマルションの質量と、硬化剤組成物の質量とが同じになるように設定した。かかる設定において樹脂分、すなわちエポキシ樹脂と水溶性エポキシ硬化剤の総量に対する人造黒鉛の配合割合は113.0質量%であった。
〈比較例1〉
人造黒鉛として、(株)小林商事製のAGP−300〔平均粒径:10μm、固定炭素:97.5%〕を同量使用したこと以外は実施例1と同様にして主剤組成物を調製し、実施例1で使用したのと同じ硬化剤組成物と組み合わせて2液タイプの水系導電性プライマとした。
【0060】
両者の配合割合は、主剤組成物中のエポキシ樹脂エマルションの質量と、硬化剤組成物の質量とが同じになるように設定した。かかる設定において樹脂分、すなわちエポキシ樹脂と水溶性エポキシ硬化剤の総量に対する人造黒鉛の配合割合は73.5質量%であった。
〈比較例2〉
人造黒鉛として、(株)小林商事製のAGP−H〔平均粒径:30μm、固定炭素:98.0%〕を同量使用したこと以外は実施例1と同様にして主剤組成物を調製し、実施例1で使用したのと同じ硬化剤組成物と組み合わせて2液タイプの水系導電性プライマとした。
【0061】
両者の配合割合は、主剤組成物中のエポキシ樹脂エマルションの質量と、硬化剤組成物の質量とが同じになるように設定した。かかる設定において樹脂分、すなわちエポキシ樹脂と水溶性エポキシ硬化剤の総量に対する人造黒鉛の配合割合は73.5質量%であった。
〈比較例3〉
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂〔三菱化学(株)製のjER(登録商標)828〕20質量部、自己乳化型エポキシ硬化剤〔大都産業(株)製のダイトクラールX−985A、有効成分濃度:70%〕15質量部、エポキシ硬化剤〔大都産業(株)製のダイトクラールHD−ACC43、3級アミン〕3.5質量部、および人造黒鉛〔(株)小林商事製のAGP−特Sの平均粒径3μm分級品、固定炭素:97.0%〕25質量部を、汎用かく拌機〔リョービ(株)製のパワーミキサーPM850、羽根径φ150mm〕を用いて混合し、さらに水36.5質量部を加えて混合して、特許文献1の構成で人造黒鉛の粒径のみを小さくした1液タイプの水系導電性プライマを調製した。
【0062】
樹脂分、すなわち液状エポキシ樹脂、自己乳化型エポキシ硬化剤中の有効成分、およびエポキシ硬化剤の総量に対する人造黒鉛の配合割合は73.5質量%であった。
また、人造黒鉛以外の各成分を同じ割合で配合し、混合した際の、樹脂分の分散粒径の平均値を、前記と同様にして求めたところ8μmであった。
〈比較例4〉
人造黒鉛として、(株)小林商事製のAGP−300〔平均粒径:10μm、固定炭素:97.5%〕を同量使用したこと以外は比較例3と同様にして、特許文献1の構成である1液タイプの水系導電性プライマを調製した。
【0063】
樹脂分、すなわち液状エポキシ樹脂、自己乳化型エポキシ硬化剤中の有効成分、およびエポキシ硬化剤の総量に対する人造黒鉛の配合割合は73.5質量%であった。
また、人造黒鉛以外の各成分を同じ割合で配合し、混合した際の、樹脂分の分散粒径の平均値を、前記と同様にして求めたところ8μmであった。
前記各実施例、比較例で調製した水系導電性プライマについて、温度23℃、相対湿度50%の環境下、下記の各試験を行なってその特性を評価した。
【0064】
〈導電性試験〉
実施例1〜8、比較例1、2の2液タイプの水系導電性プライマは、主剤組成物と硬化剤組成物とを先に説明した配合割合で配合して混合したのち、PETフィルム〔帝人デュポンフィルム(株)製のマイラー(登録商標)〕の片面に塗布した。
また比較例3、4の1液タイプの水系導電性プライマは前記のようにして調製したのち、同じPETフィルムの片面に塗布した。
【0065】
塗布量は、いずれも0.15kg/mとした。
そして24時間静置して硬化反応させて、導電性プライマ層を形成した後、共立電機計器(株)製の絶縁抵抗計3023を用いて、前記導電性プライマ層の抵抗値を測定した。測定は、針状の2つの電極の先端を30cm離して導電性プライマ層に接触させた状態で、両電極間に100Vの電圧を印加して測定した。
【0066】
そして下記の基準で、導電性プライマ層の導電性を評価した。
○:10kΩ以下。
×:10kΩ超、20kΩ以下。
××:20kΩ超。
〈接着力および塗膜強度評価〉
コンクリート平板(縦300mm×横300mm×厚み60mm)の片面に、エポキシプライマ〔住友ゴム工業(株)製のC355/H355〕を塗布したのち硬化反応させてプライマ層を形成した。エポキシプライマの塗布量は0.2kg/mとした。
【0067】
次いで、実施例1〜8、比較例1、2の2液タイプの水系導電性プライマは、主剤組成物と硬化剤組成物とを先に説明した配合割合で配合して混合したのち、前記プライマ層の上に塗布した。
また比較例3、4の1液タイプの水系導電性プライマは前記のようにして調製したのち、同じプライマ層の上に塗布した。
【0068】
塗布量は、いずれも0.15kg/mとした。
そして24時間静置して硬化反応させて、導電性プライマ層を形成した後、前記導電性プライマ層の上に、導電ベースコート〔住友ゴム工業(株)製のC503/H506SD〕を塗布し、硬化反応させて仕上げ層を形成した。導電ベースコートの塗布量は1kg/mとした。
【0069】
塗布後1週間静置して養生させた後、建研式接着力試験(日本塗り床工業会試験方法)を実施して、下記の基準で、導電性プライマ層の接着力および塗膜強度を評価した。
○:下地としてのコンクリート平板が破壊された。
×:導電性プライマ層の凝集破壊、プライマ層と導電性プライマ層との間の層間剥離、または導電性プライマ層と仕上げ層との間の相間剥離を生じた。
【0070】
さらに総合評価として、前記導電性の評価、ならびに接着力およびはく離強度の評価がともに○であったものを○、いずれか一方でも○でなかったものを×として評価した。
以上の結果を表1〜表3に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
表3の比較例4の結果より、特許文献1に記載された従来の水系導電性プライマを用いて形成した導電性プライマ層は導電性が不十分であり、導電性を高めるために人造黒鉛の粒径を小さくした場合(比較例3)には、前記導電性プライマ層の、下地に対する接着力や塗膜強度が低下することが判った。
これに対し、表1、表2の実施例1〜8の結果より、本発明の水系導電性プライマによれば、下地への良好な接着力と塗膜強度とを兼ね備える上、10kΩ以下というこれまでにない低い抵抗値、すなわち高い導電性を有する導電性プライマ層を形成できることが判った。
【0075】
また実施例1〜3、比較例1、2の結果より、本発明の水系導電性プライマに配合する人造黒鉛の平均粒径は3μm以上、8μm以下である必要があることが判った。
さらに実施例2、実施例4〜8の結果より、エポキシ樹脂エマルションとしては、エポキシ樹脂の分散粒径の平均値が0.5μm以上、1.5μm以下であるものを用いるのが好ましいことが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂エマルション、水溶性エポキシ硬化剤、および平均粒径3μm以上、8μm以下の人造黒鉛を含むことを特徴とする水系導電性プライマ。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂エマルションは、エポキシ樹脂の分散粒径の平均値が0.5μm以上、1.5μm以下のエマルションである請求項1に記載の水系導電性プライマ。
【請求項3】
(1) 前記エポキシ樹脂エマルションと人造黒鉛とを含む主剤組成物、および
(2) 水溶性エポキシ硬化剤を含む硬化剤組成物
の2液タイプである請求項1または2に記載の水系導電性プライマ。

【公開番号】特開2012−126817(P2012−126817A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279059(P2010−279059)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】