説明

水系接着剤組成物

【課題】相溶性および乾燥性に優れ、金属材料との接着性も良好な水系接着剤組成物の提供。
【解決手段】樹脂粒子表面にアクリル系温度応答性ポリマーを有する水系ポリウレタン樹脂と、アクリルエマルジョンとを含有する、水系接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系接着剤組成物に関し、より詳しくは、水系ポリウレタン樹脂とアクリルエマルジョンとを含有する水系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
溶剤系接着剤を使用する生産ラインにおいて、職場環境の改善や、製品のVOC対策等の観点から、接着剤の無溶剤化の技術が開発されてきている。この無溶剤化の技術としては、水系ポリウレタンエマルジョン(水系ポリウレタン樹脂)を用いることが知られている。
また、この水系ポリウレタン樹脂は、金属材料への密着性(接着性)の観点から、アクリルエマルジョンとブレンドして用いることが知られている。
しかしながら、このブレンド物は、水系ポリウレタン樹脂とアクリルエマルジョンとの相溶性(以下、単に「相溶性」ともいう。)が悪いことから、充分な接着剤皮膜となり得ず、接着性に劣る場合があった。
【0003】
これに対し、相溶性を改善させる観点から、ウレタンプレポリマーとエチレン性不飽和単量体とを水媒体中で重合させて得られる水系ポリウレタン樹脂や、ポリウレタン系エマルジョンの存在下でエチレン性不飽和モノマーを乳化重合して得られる複合樹脂エマルジョン等が知られている(例えば、特許文献1〜3等参照。)。
また、特許文献4には、「(A)水性ポリウレタンエマルジョンと(B)水性アクリルエマルジョンからなる水性エマルジョン組成物において、(A)/(B)が固形分重量比で2/1〜1/20であり、かつ、
(A)の水性ポリウレタンエマルジョンが、
(イ)有機ポリイソシアネート。
(ロ)低分子ポリオールと、芳香族ポリカルボン酸及び脂肪族ポリカルボン酸から製造されるポリエステルポリオールを含有する高分子ポリオール。
(ハ)多官能ヒドラジド化合物を含有する活性水素基含有化合物。
(ニ)親水性極性基及び活性水素基含有化合物。から製造されるポリマーを含有し、
(B)の水性アクリルエマルジョンが、ケトン基又はアルデヒド基を有する重合性不飽和単量体を含有する重合性不飽和単量体混合物。から製造されるポリマーを含有することを特徴とする水性ポリウレタン−アクリルエマルジョン組成物。」が提案されている。
【0004】
しかしながら、このような水系ポリウレタン樹脂および複合樹脂エマルジョンならびに水性ポリウレタン−アクリルエマルジョン組成物を用いた場合であっても、相溶性は良好となるものの、溶剤系接着剤と同等レベルのライン速度を維持できない、すなわち、乾燥性が劣るため、金属材料との接着性が不十分であるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平8−165318号公報
【特許文献2】特開2001−302714号公報
【特許文献3】特開2004−269700号公報
【特許文献4】特開平10−265735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、相溶性および乾燥性に優れ、金属材料との接着性も良好な水系接着剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、樹脂粒子の表面にアクリル系温度応答性ポリマーを有する水系ポリウレタン樹脂と、アクリルエマルジョンとを含有する、水系接着剤組成物が、相溶性および乾燥性に優れ、金属材料との接着性も良好となることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明は、下記(1)〜(6)に記載の水系接着剤組成物を提供する。
(1)樹脂粒子表面にアクリル系温度応答性ポリマーを有する水系ポリウレタン樹脂と、アクリルエマルジョンとを含有する、水系接着剤組成物。
(2)上記アクリル系温度応答性ポリマーが、共有結合を介して樹脂粒子表面に存在する、上記(1)に記載の水系接着剤組成物。
(3)上記アクリル系温度応答性ポリマーが、アクリルアミド系ポリマーである、上記(1)または(2)に記載の水系接着剤組成物。
(4)上記アクリルアミド系ポリマーが、ポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N−アクリロイルモルホリン、ポリ−N−メトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−エトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロポキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、ポリ−N−1−メチル−2−メトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−1−メトキシメチルプロピルアクリルアミド、ポリ−N−ジ(2−メトキシエチル)アクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−メトキシエトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、ポリ−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−ピロリジノメチルアクリルアミド、ポリ−N−ピペリジノメチルアクリルアミド、ポリ−N−2−モルホリノエチルアクリレート、ポリ−N−2−モルホリノエトキシエチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種である、上記(3)に記載の水系接着剤組成物。
(5)上記水系ポリウレタン樹脂が、
イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物(A)、水酸基を2個以上有するポリオール化合物(B)、イソシアネート基と反応性を有する基およびイオン性基を有する化合物(C)ならびにイソシアネート基と反応性を有する基を有するエチレン性不飽和単量体(D)を共重合させて生成するウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られるウレタンエマルジョンと、
上記アクリル系温度応答性ポリマーを生成するモノマー(E)と、
を共重合させて得られる、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
(6)上記モノマー(E)が、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−メトキシプロピルアクリルアミド、N−エトキシプロピルアクリルアミド、N−イソプロポキシプロピルアクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、N−1−メチル−2−メトキシエチルアクリルアミド、N−1−メトキシメチルプロピルアクリルアミド、N−ジ(2−メトキシエチル)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−エチルアクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メトキシエトキシプロピルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−ピロリジノメチルアクリルアミド、N−ピペリジノメチルアクリルアミド、N−2−モルホリノエチルアクリレート、N−2−モルホリノエトキシエチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種であり、
上記ウレタンエマルジョンと、上記モノマー(E)とを、生成するアクリル系温度応答性ポリマーの相転移温度より低い温度で共重合させて得られる、上記(5)に記載の水系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
以下に示すように、本発明によれば、相溶性および乾燥性に優れ、金属材料との接着性も良好な水系接着剤組成物を提供することができ、これにより、生産ラインにおける職場環境の改善や、製品のVOC対策を図ることができるため非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の水系接着剤組成物は、樹脂粒子表面にアクリル系温度応答性ポリマーを有する水系ポリウレタン樹脂と、アクリルエマルジョンとを含有する組成物である。
以下、水系ポリウレタン樹脂およびアクリルエマルジョンについて詳述する。
【0011】
[水系ポリウレタン樹脂]
本発明においては、上記水系ポリウレタン樹脂は、樹脂粒子表面にアクリル系温度応答性ポリマーを有する。
上記アクリル系温度応答性ポリマーは、相転移温度を有し、該相転移温度よりも低い温度ではランダムコイル状構造となり水溶性を示し、該相転移温度よりも高い温度では凝集したグロビュール状態となり非水溶性を示す温度応答性を有するポリマーであれば特に限定されず、アクリルアミド系ポリマーであるのが好ましい。
アクリルアミド系ポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N−アクリロイルモルホリン、ポリ−N−メトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−エトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロポキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、ポリ−N−1−メチル−2−メトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−1−メトキシメチルプロピルアクリルアミド、ポリ−N−ジ(2−メトキシエチル)アクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−メトキシエトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、ポリ−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−ピロリジノメチルアクリルアミド、ポリ−N−ピペリジノメチルアクリルアミド、ポリ−N−2−モルホリノエチルアクリレート、ポリ−N−2−モルホリノエトキシエチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートならびにこれらの混合物等が挙げられる。
また、上記アクリル系温度応答性ポリマーは、共有結合を介して水系ポリウレタン樹脂の樹脂粒子表面に存在していることが好ましい。
【0012】
本発明においては、このようなアクリル系温度応答性ポリマーを樹脂粒子表面に有することによって、得られる水系ポリウレタン樹脂と後述するアクリルエマルジョンとの相溶性が良好なものとなり、また、この水系ポリウレタン樹脂を含有する水系接着剤組成物の乾燥性も良好なものとなる。
これは、水系ポリウレタン樹脂の樹脂粒子表面にアクリル系温度応答性ポリマーを有することによって相溶性が改善され、また、水系ポリウレタン樹脂を含有する水系接着剤組成物を上述した相転移温度よりも低い温度、即ち、含有する水系ポリウレタン樹脂の樹脂粒子表面に存在するアクリル系温度応答性ポリマーが水溶性の状態で塗布し、塗布後においては相転移温度よりも高い温度で乾燥することにより、非水溶性となったアクリル系温度応答性ポリマー同士が、分子間または分子内での疎水性相互作用により凝集して水の放出が促進され、乾燥速度が向上するためであると考えられる。
具体的には、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドおよびポリ−N,N−ジエチルアクリルアミドは、相転移温度が32℃であることから、これらのポリマーを樹脂粒子表面に有する水系ポリウレタン樹脂を含有する水系接着剤組成物を、例えば、室温(25℃)で塗布し、80℃程度の温度で乾燥させることにより、相溶性および乾燥性がいずれも良好となる。
【0013】
上記水系ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、10000〜500000であるのが好ましく、50000〜200000であるのがより好ましい。
また、上記水系ポリウレタン樹脂は、固形分質量が30〜60質量%であるのが好ましく、40〜55質量%であるのがより好ましい。
【0014】
上記水系ポリウレタン樹脂の製造方法は特に限定されないが、その具体例としては、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物(A)、水酸基を2個以上有するポリオール化合物(B)、イソシアネート基と反応性を有する基およびイオン性基を有する化合物(C)ならびにイソシアネート基と反応性を有する基を有するエチレン性不飽和単量体(D)を共重合させて生成するウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られるウレタンエマルジョンと、上記アクリル系温度応答性ポリマーを生成するモノマー(E)と、を共重合させる方法;等が好適に挙げられる。
以下、ポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)、化合物(C)、エチレン性不飽和単量体(D)およびこれらを共重合させて得られるウレタンエマルジョン(ウレタンプレポリマー)ならびにモノマー(E)について詳述する。
【0015】
<ポリイソシアネート化合物(A)>
上記ポリイソシアネート化合物(A)は、イソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;上記各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、または、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0016】
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、これらのうち、TDI、IPDI、MDI、HDIであるのが、比較的安価で入手しやすい理由から好ましい。
【0017】
<ポリオール化合物(B)>
上記ポリオール化合物(B)は、水酸基を2個以上有するポリオール化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
【0018】
ここで、ポリエーテルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタエリスリトールなどの多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ポリオキシテトラメチレンオキサイドなどから選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。
【0019】
ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、その他の低分子ポリオールなどから選ばれる少なくとも1種と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、その他の低分子脂肪族カルボン酸やオリゴマー酸などから選ばれる少なくとも1種との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体;等が挙げられる。
【0020】
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールなどの低分子ポリオール:等が挙げられる。
【0021】
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、重量平均分子量が100〜10000程度であるポリオールが好ましく、500〜5000であるポリオールがより好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、得られるウレタンプレポリマーの硬度および粘度が良好となる。
【0022】
なお、上記で例示した製造方法において、後述する化合物(C)が、イオン性基以外にイソシアネート基と反応性を有する基として水酸基を2個以上有する場合には、ポリオール化合物(B)は必須成分ではなく、所望により用いることができる。
【0023】
<化合物(C)>
上記化合物(C)は、イソシアネート基と反応性を有する基およびイオン性基を有する化合物であれば特に限定されない。
ここで、イソシアネート基と反応性を有する基としては、具体的には、例えば、水酸基、第1級アミノ基(−NH2)、第2級アミノ基(−NH−)、メルカプト基等が挙げられる。なお、本発明においては、化合物(C)におけるイソシアネート基と反応性を有する基としてカルボキシ基を含まないものとする。
また、イオン性基としては、具体的には、例えば、カルボキシ基、スルホ基などのアニオン性基;第3級アミノ基(≡N)などのカチオン性基;等が挙げられる。
【0024】
このような化合物(C)としては、具体的には、例えば、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸などの脂肪族モノヒドロキシカルボン酸;ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシエチル安息香酸、ヒドロキシけい皮酸などの芳香族モノヒドロキシカルボン酸;ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸などのジヒドロキシカルボン酸;ヒドロキシベンゼンスルホン酸などのヒドロキシスルホン酸;メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト安息香酸などのメルカプトカルボン酸;3N−メルカプトエタンスルホン酸などのメルカプトスルホン酸;アミノアジピン酸、アミノ安息香酸などのアミノカルボン酸;アミノベンゼンスルホン酸などのアミノスルホン酸;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
<エチレン性不飽和単量体(D)>
上記エチレン性不飽和単量体(D)は、イソシアネート基と反応性を有する基を1個以上有している。
イソシアネート基と反応性を有する基としては、具体的には、例えば、水酸基、第1級アミノ基(−NH2)、第2級アミノ基(−NH−)、メルカプト基、カルボキシ基、アミド基等が挙げられる。
【0026】
このようなエチレン性不飽和単量体(D)としては、具体的には、例えば、アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−ペンテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、4−ヘキセン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、5−ヘプテン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、6−オクテン−1−オール、7−オクテン−1−オール、7−ノネン−1−オール、8−ノネン−1−オール、2−メチルアリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、4−メチル−4−ペンテン−1−オール、5−メチル−5−ヘキセン−1−オール、6−メチル−ヘプテン−1−オール、7−メチル−7−オクテン−1−オール、8−メチル−8−ノネン−1−オールなどの脂肪族不飽和アルコール;ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチルスチレン、ヒドロキシプロピルスチレンなどのヒドロキシアルキルスチレン;ビニル安息香酸とジオールとのモノエステル;2−ヒドロキシエチルアクリレート(アクリル酸2−ヒドロキシエチル)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ(メタ)アクリレート;1,4−ブタンジオールモノアクリレート、1,4−ブタンジオールモノメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸とジオールとのモノエステル;アクリルアミド、3−アクリルアミド−N,N−ジメチルプロピルアミン、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミドなどのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、3−メタクリルアミド−N,N−ジメチルプロピルアミンなどのメタクリルアミド誘導体;メルカプトスチレン;アミノスチレン;等が挙げられ、これらを、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
<ウレタンエマルジョン(ウレタンプレポリマー)>
上記ウレタンエマルジョンは、上述したポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)、化合物(C)およびエチレン性不飽和単量体(D)を共重合させてウレタンプレポリマーを得た後に、該ウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られる。
【0028】
ここで、上記共重合には、ポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)、化合物(C)およびエチレン性不飽和単量体(D)を同時に(一時に)かくはん等して重合させる態様(第1態様)以外に、例えば、ポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)および化合物(C)の共重合により、イオン性基を含有するイソシアネート末端プレポリマーを生成した後に、該プレポリマーにエチレン重合性不飽和単量体(D)を付加させる態様(第2態様)等も含むものである。なお、本発明においては、第1態様であるのが好ましい。
【0029】
また、上記共重合は、必要に応じて有機錫化合物、有機ビスマス、アミン等のウレタン化触媒の存在下で行うことができ、有機錫化合物の存在下で行うのが好ましい。
有機錫化合物としては、具体的には、例えば、酢酸第一錫、オクタン酸第一錫、ラウリン酸第一錫、オレイン酸第一錫などのカルボン酸第一錫;ジブチル錫アセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジ−2−エチル-ヘキソエート、ジラウリル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジアセテートなどのカルボン酸のジアルキル錫塩;水酸化トリメチル錫、水酸化トリブチル錫、水酸化トリオクチル錫などの水酸化トリアルキル錫:酸化ジブチル錫、酸化ジオクチル錫、酸化ジラウリル錫などの酸化ジアルキル錫;二塩化ジブチル錫、二塩化ジオクチル錫などの塩化ジアルキル錫;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫アセテート、ジブチル錫マレエートであるのが、比較的安価で取り扱いやすい理由から好ましい。
【0030】
更に、上記共重合は、得られるウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量(NCO%)が0.3〜3%となるように行うのが好ましく、また、ポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)、化合物(C)およびエチレン性不飽和単量体(D)の合計質量に対して、ポリイソシアネート化合物(A)を1〜50質量%、ポリオール化合物(B)を30〜90質量%、化合物(C)を0.1〜20質量%、エチレン性不飽和単量体(D)を0.1〜25質量%含有させ、これらを不活性ガス雰囲気下、60〜90℃下で2〜8時間程度かくはんして行うのが好ましい。ここで、NCO%とは、ウレタンプレポリマーの全質量に対するNCO基の質量%を表す。
【0031】
このような共重合により得られるウレタンプレポリマーの重量平均分子量は、1500〜30000であるのが好ましく、3000〜20000であるのがより好ましい。
また、このようなウレタンプレポリマーとしては、上記で例示した各種のポリイソシアネート化合物(A)、ポリオール化合物(B)、化合物(C)およびエチレン性不飽和単量体(D)を反応させて得られる反応生成物が挙げられ、具体的には、ポリイソシアネート化合物(A)としてトリレンジイソシアネート(TDI)、ポリオール化合物(B)としてペンタンジオール、化合物(C)としてジメチロールブタン酸またはジメチロールプロピオン酸、エチレン性不飽和単量体(D)として2−ヒドロキシエチルメタクリレートまたは2−ヒドロキシエチルアクリレートを用いて反応させて得られるウレタンプレポリマーが好適に例示される。
【0032】
一方、共重合により得られたウレタンプレポリマーの水媒体中での分散は、塩基性化合物、必要に応じて添加される粘度調整剤、鎖延長剤の存在下で行われる。この分散により、上記エチレン性不飽和単量体(D)に由来のエチレン性不飽和二重結合を粒子表面に有するウレタンエマルジョンが得られる。
ここで、塩基性化合物は、ウレタンプレポリマーの水性化(中和)のために必要な化合物である。塩基性化合物としては、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モルホリン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、所望により添加する粘度調整剤としては、水と相溶する有機溶剤が挙げられ、具体的には、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等が好適に例示される。
また、所望により添加する鎖延長剤は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、ピペラジンなどの脂環式ジアミン;ジフェニルジアミンなど芳香族ジアミン;トリアミン;等が挙げられる。
【0033】
<モノマー(E)>
上記モノマー(E)は、上記ウレタンエマルジョンまたはウレタンプレポリマーと共重合することができる単量体成分であって、上記アクリル系温度応答性ポリマーを生成するモノマーである。
このようなモノマー(E)としては、具体的には、例えば、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−メトキシプロピルアクリルアミド、N−エトキシプロピルアクリルアミド、N−イソプロポキシプロピルアクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、N−1−メチル−2−メトキシエチルアクリルアミド、N−1−メトキシメチルプロピルアクリルアミド、N−ジ(2−メトキシエチル)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−エチルアクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メトキシエトキシプロピルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−ピロリジノメチルアクリルアミド、N−ピペリジノメチルアクリルアミド、N−2−モルホリノエチルアクリレート、N−2−モルホリノエトキシエチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートならびにこれらの混合物等が挙げられる。
また、8−アクリロイル−1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4,5]デカンのようなスピロ型化合物も用いることができる。
これらのうち、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドが、入手が容易である点で好ましい。
【0034】
本発明においては、このようなモノマー(E)は、他の単量体、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸のような不飽和カルボン酸;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−アセトアセトキシエチルアクリレート、2−アセトアセトキシプロピルアクリレート、3−アセトアセトキシプロピルアクリレート、4−シアノアセトアセトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレートのようなアクリル酸エステル類および対応するメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルアクリルアミドのようなアクリルアミド類及び対応するメタクリルアミド類;N−アクリロイルベンズヒドラジド、N−メタクリロイルベンズヒドラジドのような不飽和ヒドラジド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのような不飽和ニトリル類;酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルイミダゾール、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルのようなビニル化合物類;等を併用することができる。
【0035】
上記モノマー(E)と、上記ウレタンエマルジョンとの共重合は、重合開始剤の存在下、得られる本発明の水系ポリウレタン樹脂の樹脂粒子表面に形成するアクリル系温度応答性ポリマーの相転移温度より低い温度、具体的には、使用するモノマーおよび重合開始剤の種類により異なるが、通常5〜50℃の範囲内で選ばれ、より具体的には、例えばモノマー(E)としてN−イソプロピルアクリルアミドやN,N−ジエチルアクリルアミドを用いた場合には32℃よりも低い温度、好ましくは5〜25℃の下で、上記モノマー(E)と上記ウレタンエマルジョンとをかくはんすることにより行われる。
ここで、上記重合開始剤としては、具体的には、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルペロキシ−2−エチルヘキサナート等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、上述したように、相転移温度よりも低い温度で共重合させる必要性、上記モノマー(E)としてN−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドが好適に用いられる観点から、亜硫酸水素ナトリウム、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0036】
一方、上記モノマー(E)と、上記ウレタンプレポリマーとの共重合は、上述した塩基性化合物、必要に応じて添加される粘度調整剤および鎖延長剤、ならびに上記重合開始剤の存在下、得られる本発明の水系ポリウレタン樹脂の樹脂粒子表面に形成するアクリル系温度応答性ポリマーの相転移温度より低い温度の下で、上記モノマー(E)と上記ウレタンプレポリマーとをかくはんすることにより行われる。
【0037】
このような共重合により、上記ウレタンエマルジョンの粒子表面に存する、エチレン性不飽和単量体(D)に由来のエチレン性不飽和二重結合と、上記モノマー(E)またはモノマー(E)の単独重合体の重合性部位(例えば、N−イソプロピルアクリルアミドの場合にはエチレン性不飽和二重結合)とが、共重合により結合し、樹脂粒子表面にアクリル系温度応答性ポリマーを有する水系ポリウレタン樹脂が得られる。
アクリル系温度応答性ポリマーの相転移温度より低い温度で共重合を行うことにより、樹脂粒子表面に存するアクリル系温度応答性ポリマーが水溶性となり、上述したように、得られる本発明の水系ポリウレタン樹脂の塗工性が優れたものとなる。
【0038】
[アクリルエマルジョン]
本発明においては、上記アクリルエマルジョンは、特に限定されず、従来公知のアクリルエマルジョンを用いることができる。
上記アクリルエマルジョンとしては、例えば、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、芳香族ビニル単量体、不飽和二トリル、共役ジオレフィン、多官能ビニル単量体、、アミド系単量体、水酸基含有単量体、カプロラクトン付加単量体、アミノ基含有単量体、グリシジル基含有単量体、酸系単量体、ビニル単量体等を、乳化分散剤を用いて重合(乳化重合)して得られる水性エマルジョン等が好適に挙げられる。
【0039】
上記乳化分散剤としては、例えば、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、乳化分散剤として、界面活性剤分子中に反応性の二重結合を有する反応性界面活性剤;ポリビニルアルコール、デンプンなどの水溶性高分子;等も用いることができる。これらのうち、水溶性高分子(特に、ポリビニルアルコール)を用いることが好ましい。
【0040】
上記メタクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられる。
上記アクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0041】
上記芳香族ビニル単量体としては、具体的には、例えば、パラメチルスチレン、α−メチルスチレン、パラクロロエチレン、クロルメチレンスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
上記不飽和二トリルとしては、具体的には、例えば、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等が挙げられる。
上記共役ジオレフィンとしては、ブタジエン、具体的には、例えば、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
上記多官能ビニル単量体としては、具体的には、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレンジグリコールジメタクリレート、メタクリル酸アリル、フタル酸ジアリル、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0042】
上記アミド系単量体としては、具体的には、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、n−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
上記水酸基含有単量体としては、具体的には、例えば、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシメタクリレート等が挙げられる。
上記カプロラクトン付加単量体としては、具体的には、例えば、ダイセル化学製のFA−1、FA−2、FA−3、FM−1などのβ−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシメタクリレート等が挙げられる。
上記アミノ基含有単量体としては、具体的には、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等が挙げられる。
グリシジル基含有単量体としては、具体的には、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸ジグリシジル等が挙げられる。
酸系単量体としては、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、パラビニル安息香酸等が挙げられる。
ビニル単量体としては、具体的には、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0043】
これらのうち、コスト、取扱い性、物性等の種々の観点から、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルであるのが好ましい。
【0044】
上記アクリルエマルジョンの重量平均分子量は、10000〜500000であるのが好ましく、50000〜200000であるのがより好ましい。
また、上記アクリルエマルジョンは、固形分質量が30〜60質量%であるのが好ましく、40〜55質量%であるのがより好ましい。
【0045】
本発明においては、上記アクリルエマルジョンとして市販品を用いてもよく、その具体例としては、レジテックス社製のA6001、日本ゼオン社製のLx823等が挙げられる。
【0046】
本発明の水系接着剤組成物は、上記水系ポリウレタン樹脂と上記アクリルエマルジョンとを含有するものであり、これらの配合割合は、固形分比(水系ポリウレタン樹脂/アクリルエマルジョン)で、50/50〜80/20であるのが好ましく、60/40〜70/30であるのがより好ましい。
【0047】
本発明の水系接着剤組成物は、上記水系ポリウレタン樹脂および上記アクリルエマルジョン以外に、所望により、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、接着付与剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を含有することができる。
【0048】
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられる。
【0049】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0050】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩などの無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラックなどの有機顔料;等が挙げられる。
【0051】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル社製)、ディスパロン(楠本化成社製)等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0053】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、具体的には、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
【0054】
本発明の水系接着剤組成物の製造方法は、特に限定されないが、上記水系ポリウレタン樹脂および上記アクリルエマルジョンと、所望により添加する各種添加剤とを、混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混練する方法を用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
(合成例1および2)
ポリイソシアネート化合物(A1)、ポリオール化合物(B1)、化合物(C1)およびエチレン性不飽和単量体(D1)を、下記表1に示す質量部で、窒素気流下、60℃で3時間反応させ、ウレタンプレポリマーを合成した。
次いで、合成した各ウレタンプレポリマーを単離しない状態で、酢酸エチル(粘度調整剤)に溶解させた後に、水中で、トリエチルアミン(塩基性化合物)およびピペラジン6水和物(鎖延長剤)とともに、10℃で3時間分散させ、ウレタンエマルジョンを調整した。酢酸エチル、水、トリエチルアミンおよびピペラジン6水和物の各質量部ならびに得られた各ウレタンエマルジョンの酢酸エチルを除く固形分(%)を下記表1に示す。
次いで、調整した各ウレタンエマルジョンを単離しない状態で、重合開始剤1および2の存在下、5℃下で16時間モノマー(E1)と反応させ、水系ポリウレタン樹脂1および2を得た。重合開始剤1および2ならびにモノマー(E1)の各質量部を下記表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
上記表1中の各成分は、以下のものを使用した。
・ポリイソシアネート化合物(A1):TDI(コスモネートTDI100、三井武田ケミカル社製)
・ポリオール化合物(B1):3−メチルペンタンジオール/AA(クラレポリオールP2010、重量平均分子量2000、クラレ社製)
・化合物(C1):ジメチロールブタン酸(日本化成社製)
・エチレン性不飽和単量体(D1):ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA、共栄社化学社製)
・トリエチルアミン(塩基性化合物):関東化学社製
・ピペラジン6水和物(鎖延長剤):日本乳化剤社製
・酢酸エチル(粘度調整剤):関東化学社製
・モノマー(E1):N−イソプロピルアクリルアミド(興人社製)
・重合開始剤1:過硫酸アンモニウム(関東化学社製)
・重合開始剤2:亜硫酸水素ナトリウム(関東化学社製)
【0059】
(実施例1〜3、比較例1〜6および参考例1)
合成例1で得られた水系ポリウレタン樹脂1(固形分:44.6質量%)または合成例2で得られた水系ポリウレタン樹脂2(固形分:44.6質量%)と、アクリルエマルジョン1(A6001、固形分:60.6質量%、レヂテックス社製)とを、下記表2に示す質量部で、窒素気流下、60℃で3時間かくはんし、水系接着剤組成物を調整した。
なお、水系ポリウレタン樹脂1または2と、アクリルエマルジョン1との混合は、いずれの例においても良好であり、相溶性が優れていることが分かった。
【0060】
得られた各水系接着剤組成物について、以下に示す測定方法により各物性の評価を行った。その結果を下記表2に示す。なお、比較例1および2は、それぞれ水系ポリウレタン樹脂1および水系ポリウレタン樹脂2そのものについて同様の測定を行い、比較例6は、アクリルエマルジョン1そのものについて同様の測定を行い、参考例1として溶剤系の水性ポリウレタン−アクリルエマルジョン接着剤(AU−21、イサム塗料社製)について同様の測定を行った。
【0061】
<乾燥性(塗布量100g/m2)>
乾燥性の評価は、得られた各水系接着剤組成物を、JIS H4000に規定の1050材のアルミニウム板(サイズ:10cm×10cm)に塗布量が100g/m2となるように塗布し、20℃、40℃および80℃のそれぞれの温度下(いずれも相対湿度55%)で硬化させ、でのタックフリータイム(分)をJIS A5758に準拠して測定した。
【0062】
<金属との接着性(初期接着性)>
金属との接着性の評価をするために、JIS K6256:1999(剛板と加硫ゴムの90度はく離試験)に準じて、以下のはく離試験を行った。
得られた各水系接着剤組成物をアルミニウム板上に塗布し、溶剤系の接着剤での乾燥条件である80℃下30秒間の乾燥を施した後に、組成物の塗布面にポリプロピレンフィルムを圧着させた試験体を作製した。
試験体作成後、直ちに、アルミニウム板とポリプロピレンフィルムとを90度はく離させ、その際の引張強さ(N/25mm)を測定した。
【0063】
<相溶性(塗布後)>
得られた各水系接着剤組成物をアルミニウム板上に塗布し、80℃下で30秒間乾燥させてフィルム状態とした。その後、フィルム状の接着剤組成物における水系ポリウレタン樹脂1または2と、アクリルエマルジョン1との相分離の有無を目視により確認した。相分離が見られた場合を相溶性(塗布後)に劣るものとして「×」と評価し、相分離が見られなかった場合を相溶性(塗布後)に優れるものとして「○」と評価した。
なお、比較例1、2および6については、相溶性(塗布後)については評価せず、下記表2中においては「−」と記載した。
【0064】
【表2】

【0065】
上記表2に示す結果より、実施例1〜3の水系接着剤組成物は、その調整時における相溶性のみならず、塗布後における相溶性にも優れ、また、樹脂粒子表面にアクリル系温度応答性ポリマーを有していない水系ポリウレタン樹脂を用いた比較例3〜5ならびに比較例1、2および6の水系接着剤組成物に比べて、乾燥性に優れていることが分かり、更に、金属との接着性についても優れていることが分かった。また、実施例1〜3の水系接着剤組成物は、参考例1に記載の溶剤系接着剤と比較しても、同等以上の乾燥性、接着性および相溶性を有していることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子表面にアクリル系温度応答性ポリマーを有する水系ポリウレタン樹脂と、アクリルエマルジョンとを含有する、水系接着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル系温度応答性ポリマーが、共有結合を介して樹脂粒子表面に存在する、請求項1に記載の水系接着剤組成物。
【請求項3】
前記アクリル系温度応答性ポリマーが、アクリルアミド系ポリマーである、請求項1または2に記載の水系接着剤組成物。
【請求項4】
前記アクリルアミド系ポリマーが、ポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N−アクリロイルモルホリン、ポリ−N−メトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−エトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロポキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、ポリ−N−1−メチル−2−メトキシエチルアクリルアミド、ポリ−N−1−メトキシメチルプロピルアクリルアミド、ポリ−N−ジ(2−メトキシエチル)アクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−n−プロピルアクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−2−メトキシエチル−N−イソプロピルアクリルアミド、ポリ−N−メトキシエトキシプロピルアクリルアミド、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、ポリ−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、ポリ−N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−ピロリジノメチルアクリルアミド、ポリ−N−ピペリジノメチルアクリルアミド、ポリ−N−2−モルホリノエチルアクリレート、ポリ−N−2−モルホリノエトキシエチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項3に記載の水系接着剤組成物。
【請求項5】
前記水系ポリウレタン樹脂が、
イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物(A)、水酸基を2個以上有するポリオール化合物(B)、イソシアネート基と反応性を有する基およびイオン性基を有する化合物(C)ならびにイソシアネート基と反応性を有する基を有するエチレン性不飽和単量体(D)を共重合させて生成するウレタンプレポリマーを水媒体中で分散させて得られるウレタンエマルジョンと、
前記アクリル系温度応答性ポリマーを生成するモノマー(E)と、
を共重合させて得られる、請求項1〜4のいずれかに記載の水系接着剤組成物。
【請求項6】
前記モノマー(E)が、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−アクリロイルモルホリン、N−メトキシプロピルアクリルアミド、N−エトキシプロピルアクリルアミド、N−イソプロポキシプロピルアクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチルアクリルアミド、N−1−メチル−2−メトキシエチルアクリルアミド、N−1−メトキシメチルプロピルアクリルアミド、N−ジ(2−メトキシエチル)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−エチルアクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メトキシエトキシプロピルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−ピロリジノメチルアクリルアミド、N−ピペリジノメチルアクリルアミド、N−2−モルホリノエチルアクリレート、N−2−モルホリノエトキシエチルアクリレートおよびこれらに対応するメタクリレートからなる群から選択される少なくとも一種であり、
前記ウレタンエマルジョンと、前記モノマー(E)とを、生成するアクリル系温度応答性ポリマーの相転移温度より低い温度で共重合させて得られる、請求項5に記載の水系接着剤組成物。

【公開番号】特開2007−23235(P2007−23235A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211126(P2005−211126)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】