説明

水素化ブロック共重合体及びその樹脂組成物、並びに該樹脂組成物を含むフィルム及び容器

【課題】透明性、光学特性、柔軟性、機械物性、成形性、耐熱性、ガスバリア性、低吸湿性、並びに薬液非吸着性のバランスに優れた水素化ブロック共重合体を提供する。また、該水素化ブロック共重合体を樹脂成分として含有する樹脂組成物及び該組成物を含むフィルム及び容器を提供する。
【解決手段】水素化ビニル芳香族重合体ブロックAと、イソブチレンを主体とする重合体のブロックBとを有することを特徴とする水素化ブロック共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、光学特性、柔軟性、機械物性、成形性、耐熱性、ガスバリア性、低吸湿性、並びに薬液非吸着性にバランスよく優れた水素化ブロック共重合体に関する。本発明はまた、該水素化ブロック共重合体を樹脂成分として含有する樹脂組成物及び該組成物を含むフィルム及び容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスバリア性、透明性、柔軟性、薬液非吸着性に優れた材料として、スチレンなどのビニル芳香族化合物とイソブチレンとのブロック共重合体が知られており、その製造方法についての提案もなされている(特許文献6)。
また、このブロック共重合体の、成形性が悪く、射出成形により成形すると表面外観が良くないなどの欠点を改良するために、ポリプロピレンなどのポリオレフィンやパラフィンオイルなどの軟化剤との組成物とすることが知られている(特許文献1、2)
【0003】
一方、ポリスチレンなどのビニル芳香族系重合体の芳香環を水素化して得られるビニル芳香族系重合体水素化物が知られており、このものは、低複屈折性に優れていることから、光学レンズや光ディスクとして使用できることが知られている(特許文献3)。
これに対し、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を水素化することにより、柔軟性に優れたビニル芳香族系共重合体水素化物が得られることが知られている(特許文献4、5、7、8)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−187722号公報
【特許文献2】特開2005−105164号公報
【特許文献3】特開平1−317728号公報
【特許文献4】特表2002−540229号公報
【特許文献5】特表2003−502470号公報
【特許文献6】特開平11−100420号公報
【特許文献7】特開2007−16217号公報
【特許文献8】国際公開WO2003−18656号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの詳細な検討によれば、前記特許文献6に記載されているような共重合体は成形性が悪く、射出成形により成形すると表面外観が良くないなどの欠点を有していることが見出された。また、この特許文献6のブロック共重合体の欠点を改良する前記特許文献1又は2では、ポリオレフィンや軟化剤の配合で柔軟性、透明性、ガスバリア性が悪化する問題がある。
また、前記特許文献3に記載されているようなビニル芳香族系重合体水素化物は、弾性率が高い反面、脆いという欠点がある。さらに、前記特許文献4、5、7及び8に記載されているようなビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を水素化したものは、ビニル芳香族系重合体水素化物に比べて透明性がやや悪くなる場合があり、さらにガスバリア性とのバランスが両立しないという欠点がある。
【0006】
本発明は、透明性、光学特性、柔軟性、機械物性、成形性、耐熱性、ガスバリア性、低吸湿性、並びに薬液非吸着性にバランスよく優れた水素化ブロック共重合体を提供することを課題とする。本発明はまた、該水素化ブロック共重合体を樹脂成分として含有する樹脂組成物及び該組成物を含むフィルム及び容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討し、特定の組成を持つビニル芳香族系ブロック共重合体を水素化することにより、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の[1]〜[10]を要旨とする。
【0009】
[1] 水素化ビニル芳香族重合体ブロックAと、イソブチレンを主体とする重合体のブロックBとを有することを特徴とする水素化ブロック共重合体。
【0010】
[2] 前記水素化ブロック共重合体の重量平均分子量が10000以上、200000以下であることを特徴とする[1]に記載の水素化ブロック共重合体。
【0011】
[3] 前記水素化ビニル芳香族重合体ブロックAが、芳香族環を水素化した水素化ポリスチレンブロックであることを特徴とする[1]または[2]に記載の水素化ブロック共重合体。
【0012】
[4] 前記水素化ビニル芳香族重合体ブロックAの芳香族環の水素化率が50モル%以上であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の水素化ブロック共重合体。
【0013】
[5] 前記イソブチレンを主体とする重合体のブロックBが、単量体成分として、イソブチレンを70質量%以上含有するものであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の水素化ブロック共重合体。
【0014】
[6] 前記水素化ブロック共重合体が、前記水素化ビニル芳香族重合体ブロックAを2つと、前記イソブチレンを主体とする重合体のブロックBを1つ有する構造であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の水素化ブロック共重合体。
【0015】
[7] 前記水素化ブロック共重合体の全質量に対する前記水素化ビニル芳香族重合体ブロックAの含有割合が、40質量%以下であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の水素化ブロック共重合体。
【0016】
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の水素化ブロック共重合体を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【0017】
[9] [8]に記載の樹脂組成物を含むフィルム。
【0018】
[10] [8]に記載の樹脂組成物を含む容器。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、透明性、光学特性、柔軟性、機械物性、成形性、耐熱性、ガスバリア性、低吸湿性、薬液非吸着性のバランスに優れた水素化ブロック共重合体と、該水素化ブロック共重合体を樹脂成分として含有する樹脂組成物及び該組成物を含むフィルム及び容器が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
【0021】
[水素化ブロック共重合体]
本発明の水素化ブロック共重合体は、水素化ビニル芳香族重合体ブロックAと、イソブチレンを主体とする重合体のブロックBとを有することを特徴とする。
【0022】
本発明の水素化ブロック共重合体の水素化ビニル芳香族重合体ブロックAを構成する、水素化前の単量体のビニル芳香族類としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、フェナントレン環等の芳香環にビニル基が結合したものが挙げられ、この芳香環にはビニル基以外の置換基が結合していてもよい。具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、4−クロロメチルスチレン、4−ヒドロキシメチルスチレン、4−t−ブトキシスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられ、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、ビニルナフタレンが好ましく用いられ、さらにスチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレンが好ましく用いられる。最も好ましくはスチレンが用いられる。これらのビニル芳香族類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
なお、水素化ビニル芳香族重合体ブロックAは、通常、単量体として水素化されたビニル芳香族類のみで構成されるブロックであるが、本発明の目的を損なうことのない範囲において、例えば水素化ビニル芳香族重合体ブロックAの全重量の50質量%以下の割合でビニル芳香族類以外の単量体成分を含んでいてもよい。
【0024】
一方、イソブチレンを主体とする重合体のブロックBは、単量体成分としてイソブチレンを、イソブチレンを主体とする重合体のブロックBの全重量の50質量%より多く含有するものであり、好ましくは55質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80〜100質量%含有するものであり、上記の範囲において、他の単量体が共重合されていてもよい。イソブチレンを主体とする重合体のブロックB中に単量体成分としてイソブチレンを上記の範囲で含むことにより、透明性、光学特性、柔軟性、機械物性、ガスバリア性、低吸湿性、薬液非吸着性にバランスよく優れた水素化ブロック共重合体が得られる。イソブチレンを主体とする重合体のブロックBがイソブチレン以外の他の単量体成分を含む場合、他の単量体としては、イソブチレンとカチオン重合可能な単量体であれば特に限定されないが、例えば、上記のビニル芳香族類、脂肪族オレフィン類、ジエン類、ビニルエーテル類、β−ピネン等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0025】
本発明の水素化ブロック共重合体は、1以上のセグメントA(水素化ビニル芳香族重合体ブロックA)と1以上のセグメントB(イソブチレンを主体とする重合体のブロックB)を有し、その組み合わせは、本発明の効果を得られる範囲であれば特に限定されず、具体的にはA−B、A−(B−A)、(A−B)、B−A−(B−A)−B(ただし、nは1以上の整数、mは2以上の整数を表す)等の構造が挙げられる。
この中でも、2以上のセグメントAと1以上のセグメントBを有することが本発明の効果を得るためには好ましく、これらのうち、A−(B−A)、特にA−B−Aの構造を有するものがさらに好ましい。
【0026】
また、本発明の水素化ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの任意の組合せのいずれであってもよい。
【0027】
本発明の水素化ブロック共重合体の水素化ビニル芳香族重合体ブロックAの含有量は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上で、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。水素化ブロック共重合体の水素化ビニル芳香族重合体ブロックAの含有量が上記上限値以下であることにより、柔軟性や弾力性が良好なものとなり、耐衝撃性に優れる傾向にあり、一方、上記下限値以上であることにより、耐熱性が良好なものとなる傾向にある。
【0028】
なお、本発明の水素化ブロック共重合体は、水素化ビニル芳香族重合体ブロックAと、イソブチレンを主体とする重合体のブロックBを有するものであればよく、水素化ビニル芳香族重合体ブロックAとイソブチレンを主体とする重合体のブロックB以外の他の重合体又は共重合体ブロックCを有していてもよい。この場合、他のブロックCとしては、例えば、イソブチレンを主体とする重合体のブロックBにおいて、イソブチレンの含有量が50質量%未満である重合体又は共重合体ブロックや、脂肪族オレフィン類、ジエン類、ビニルエーテル類、β−ピネンの1種又は2種以上よりなる重合体又は共重合体ブロックが挙げられる。
ただし、本発明の水素化ブロック共重合体中の他のブロックCの含有量が多過ぎると、水素化ビニル芳香族重合体ブロックAとイソブチレンを主体とする重合体のブロックBとを含有することによる本発明の水素化ブロック共重合体の効果が損なわれるおそれがあるため、本発明の水素化ブロック共重合体が他のブロックCを含有する場合、その含有量は、水素化ブロック共重合体の全重量に対して40質量%以下、特に20質量%以下であることが好ましい。
【0029】
本発明の水素化ブロック共重合体の製造方法としては、上記の構造が得られるものであればどのような製造方法を用いてもよい。例えば、前掲の特許文献6(特開平11−100420号公報)に記載される方法により、ルイス酸触媒等を用いて有機溶媒中でカチオン重合を行うことによって得られるビニル芳香族系ブロック共重合体の芳香環を水素化することによって得ることができる。
【0030】
ビニル芳香族系ブロック共重合体の芳香環の水素化方法や反応形態などは特に限定されず、公知の方法に従って行えばよいが、水素化率を高くすることができ、また、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような好ましい水素化方法としては、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウムなどから選ばれる少なくとも1種の金属を含む触媒を用いて行う方法が挙げられる。この水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒のいずれも使用可能であり、水素化反応は有機溶媒中で行うことが好ましい。
【0031】
不均一系触媒は、金属又は金属化合物のままで、又は適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素、フッ化カルシウムなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。触媒成分の担持量は、触媒成分と担体との合計量に対して通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上で、通常60質量%以下、好ましくは50質量%以下である。
【0032】
均一系触媒としては、ニッケル、コバルト、チタン又は鉄などの金属化合物と、有機アルミニウムや有機リチウムのような有機金属化合物とを組み合わせた触媒;ロジウム、パラジウム、ルテニウム、レニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウムなどの有機金属錯体などを用いることができる。
【0033】
上記金属化合物としては、各金属のアセチルアセトン塩、ナフテン酸塩、シクロペンタジエニル化合物、シクロペンタジエニルジクロロ化合物などが用いられる。有機アルミニウムとしては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリドなどのハロゲン化アルキルアルミニウム;ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの水素化アルキルアルミニウムなどが使用される。
【0034】
有機金属錯体としては、上記各金属のγ−ジクロロ−π−ベンゼン錯体、ジクロロ−トリス(トリフェニルホスフィン)錯体、ヒドリド−クロロ−トリス(トリフェニルホスフィン)錯体などが挙げられる。
【0035】
これらの水素化触媒は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。水素化触媒の使用量は、ビニル芳香族系ブロック共重合体100質量部当たりの触媒有効成分量として、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上で、通常50質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
【0036】
水素化反応は、5〜25MPaの圧力、100〜200℃の温度下にて、溶媒としてシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−オクタン、デカリン、テトラリン、ナフサ等の飽和炭化水素系溶媒あるいは、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒を用いて行なうことが好ましい。溶媒の使用量には特に制限はないが、通常、ビニル芳香族系ブロック共重合体100質量部に対して100質量部以上、1000質量部以下である。
【0037】
ビニル芳香族系ブロック共重合体の芳香環の水素化率は、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。水素化率が上記下限値以上であることにより、透明性、耐熱性、成形性に優れたものとなる。芳香環の水素化率は例えば、H−NMRにより、0.5〜2.5ppm付近の脂肪族由来のピークと6.0−8.0ppm付近の芳香環由来のピークの積分値から算出することができる。
【0038】
上記水素化反応終了後に水素化ブロック共重合体を回収する方法は、特に限定されない。回収方法としては、通常、濾過、遠心分離等の方法により水素化触媒残渣を除去した後、水素化ブロック共重合体が溶解した溶液から、スチームストリッピングにより溶媒を除去するスチーム凝固法、減圧加熱下で溶媒を除去する直接脱溶媒法、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、水、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の、水素化ブロック共重合体の貧溶媒中に溶液を注いで水素化ブロック共重合体を析出、凝固させる凝固法などの公知の方法を採用することができる。
【0039】
本発明の水素化ブロック共重合体は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、好ましくは10000以上、より好ましくは30000以上、更に好ましくは50000以上で、好ましくは200000以下、より好ましくは150000以下、更に好ましくは130000以下である。水素化ブロック共重合体のMwが上記下限値以上であることにより、得られる成形体の機械強度、耐熱性、成形性が良好なものとなり、上記上限値以下であることにより、加工時の溶融粘度が下がり、成形性が良好なものとなる傾向にある。
【0040】
本発明の水素化ブロック共重合体の分子量分布は、使用目的に応じて適宜選択できるが、上記のGPCにより測定されるポリスチレン換算のMwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、特に好ましくは2以下である。Mw/Mnが上記上限値以下であると、成形性や耐熱性、透明性などに優れた成形体が得られ易いために好ましい。
【0041】
本発明の水素化ブロック共重合体は、230℃(ノズル径2mm)のメルトフローレート(MFR)の下限値が、通常0.01、好ましくは0.1、より好ましくは0.5、最も好ましくは1であり、該MFRの上限値が通常500、好ましくは200、より好ましくは100、最も好ましくは50である。MFRが上記下限値以上であることにより、成形及び製造に適した粘度で製造が容易となり、上記上限値以下であることにより、加工時の成形性が良好となり、製品の機械物性が十分となり易いため好ましい。
【0042】
本発明の水素化ブロック共重合体の射出成形性及び透明性は、全ヘーズ及び内部ヘーズの値から評価することができる。特に、全ヘーズは成形体の表面凹凸(粗さ)を反映するため、射出成形性を評価することができる。全ヘーズ及び内部ヘーズの測定方法は実施例に記載した方法を用いることができる。実施例に記載した方法で測定したときに、本発明の水素化ブロック共重合体の全ヘーズは、表面凹凸(粗さ)の観点から30%以下であることが好ましく、25%以下であることが更に好ましい。また、下限はなく、小さいほうが好ましい。
また、実施例に記載した方法で測定したときに、本発明の水素化ブロック共重合体の内部ヘーズは、透明性の観点から10%以下であることが好ましく、8%以下であることが更に好ましい。また、下限はなく、小さいほうが好ましい。
【0043】
本発明の水素化ブロック共重合体のA硬度は、用途に応じ適宜調整することができる。
A硬度の測定方法は実施例に記載した方法を用いることができる。実施例に記載した方法により測定された本発明の水素化ブロック共重合体のA硬度は15以上であることが好ましく、30以上であることがさらに好ましい。また、99以下であることが好ましく、97以下であることが更に好ましい。A硬度が上記下限値以上であることにより、成形性や耐熱性に優れた成形体を得ることができる傾向があり、一方、上記上限値以下であることにより、柔軟性、耐衝撃性に優れた成形体を得られやすくなる傾向にある。
【0044】
本発明の水素化ブロック共重合体のガスバリア性は、実施例に記載した方法で測定したときに、5g/(m・24h)以下であることが好ましく、3g/(m・24h)以下であることが更に好ましい。また、下限はなく、小さいほうが好ましい。この値が上記上限値以下であることにより、ガスバリア性(水蒸気バリア性)が良好となる傾向にある。
【0045】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、本発明の水素化ブロック共重合体を含むものであり、必要に応じて本発明の水素化ブロック共重合体と他の樹脂成分、各種添加剤などを含む樹脂組成物とすることができる。
以下、本発明の水素化ブロック共重合体を「水素化ブロック共重合体(X)」と表すことがある。
【0046】
本発明の樹脂組成物が含有する他の樹脂成分(Y)としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体のようなエチレン・α−オレフィン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1樹脂、非晶性を有するポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、アラミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、変性ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサンなどのケイ素含有軟質重合体、ポリスチレンなどのビニル芳香族重合体、エチレン・プロピレン共重合ゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレン・ブテン共重合ゴム(EBM)、エチレン・プロピレン・ブテン共重合ゴム等のエチレン系エラストマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー、ポリブタジエン、水素化ビニル芳香族重合体、水素化スチレン/ブタジエン又はスチレン/イソプレンブロック共重合体を含むその他の水素化ビニル芳香族ブロック共重合体、シクロオレフィン重合体、シクロオレフィン共重合体などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
なかでも、透明性、耐熱性、ガスバリア性、並びに薬液非吸着性のバランスに優れることから、水素化ビニル芳香族重合体、水素化ビニル芳香族ブロック共重合体、シクロオレフィン重合体、シクロオレフィン共重合体、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0048】
[樹脂組成物の添加剤]
本発明の樹脂組成物が含んでいても良い添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、フィラーなどの充填剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、架橋剤、架橋助剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤、有機拡散剤や無機拡散剤等の光拡散剤等が挙げられる。
【0049】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物は、例えば上記の各成分を機械的に溶融混練する方法によって製造することができる。ここで用いることができる溶融混練機としては、例えば単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ロールミル等を挙げることができる。混練温度の下限は、通常100℃以上、好ましくは145℃以上、より好ましくは160℃以上である。混練温度の上限は、通常350℃、好ましくは300℃、より好ましくは250℃である。混練に際しては、各成分を一括して混練しても、また任意の成分を混練した後、他の残りの成分を添加して混練する多段分割混練法を用いてもよい。
【0050】
[樹脂組成物の成形方法]
本発明の樹脂組成物は、例えば射出成形(インサート成形法、二色成形法、サンドイッチ成形法、ガスインジェクション成形法等)、押出成形法、インフレーション成形法、Tダイフィルム成形法、ラミネート成形法、ブロー成形法、中空成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法等の成形法により種々の成形体に加工することができる。成形体の形状には特に制限はなく、シート、フィルム、板状、粒子状、塊状体、繊維、棒状、多孔体、発泡体等が挙げられ、好ましくはシート、フィルム、板状である。また、成形されたフィルムは一軸あるいは二軸延伸することも可能である。延伸法としては、ロール法、テンター法、チューブラー法等が挙げられる。さらに、通常工業的に利用されるコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施すこともできる。
【0051】
[用途]
本発明の成形体の用途は特に限定されないが、一例として、下記のような用途を挙げることができる。すなわち、電気・電子部品分野における電線、コード類、ワイヤーハーネス等の被覆材料、絶縁シート、OA機器のディスプレイやタッチパネル、メンブレンスイッチ、写真カバー、リレー部品、コイルボビン、ICソケット、ヒューズケース、カメラ圧板、FDDコレット、フロッピーハブ、光学部品分野における光ディスク基板、光ディスク用ピックアップレンズ、光学レンズ、LCD基板、PDP基板、プロジェクションテレビ用テレビスクリーン、位相差フィルム、フォグランプレンズ、照光スイッチレンズ、センサースイッチレンズ、フルネルレンズ、保護メガネ、プロジェクションレンズ、カメラレンズ、サングラス、導光板、カメラストロボリフレクター、LEDリフレクター、自動車部品におけるヘッドランプレンズ、ウインカーランプレンズ、テールランプレンズ、樹脂窓ガラス、メーターカバー、外板、ドアハンドル、リアパネル、ホイールキャップ、バイザー、ルーフレール、サンルーフ、インパネ、パネル類、コントロールケーブル被覆材、エアーバッグ・カバー、マッドガード、バンパー、ブーツ、エアホース、ランプパッキン類、ガスケット類、ウィンドウモール等の各種モール、サイトシールド、ウェザーストリップ、グラスランチャンネル、グロメット類、制震・遮音部材、建材分野における目地材、手すり、窓、テーブルエッジ材、サッシ、浴槽、窓枠、看板、照明カバー、水槽、階段腰板、カーポート、高速道路遮音壁、マルチウォールシート、鋼線被覆材、照明灯グローブ、スイッチブレーカー、工作機械の保護カバー、工業用深絞り真空成形容器、ポンプハウジング、家電、弱電分野における各種パッキン類、グリップ類、ベルト類、足ゴム、ローラー、プロテクター、吸盤、冷蔵庫等のガスケット類、スイッチ類、コネクターカバー、ゲーム機カバー、パチンコ台、OAハウジング、ノートPCハウジング、HDDヘッド用トレー、計器類の窓、透明ハウジング、OA用ギア付きローラー、スイッチケーススライダー、ガスコックつまみ、時計枠、時計輪列中置、アンバーキャップ、OA機器用各種ロール類、ホース、チューブ等の管状成形体、異型押し出し品、レザー調物品、咬合具、ソフトな触感の人形類等の玩具類、ペングリップ、ストラップ、吸盤、時計、傘骨、化粧品ケース、ハブラシ柄等の一般雑貨類、ハウスウェア、タッパーウェア等の容器類、結束バンド、ブロー成形による輸液ボトル、食品用ボトル、ウォーターボトル、化粧品用等のパーソナルケア用のボトル等各種ボトル、医療用部品におけるカテーテル、シリンジ、シリンジガスケット、点滴筒、チューブ、ポート、キャップ、ゴム栓、ダイヤライザー、血液コネクター、義歯、ディスポーザブル容器等、が挙げられ、また、発泡成形による用途にも適用可能である。
【0052】
本発明の成形体のフィルム・シート分野における用途は特に限定されないが、一例として、下記のような用途を挙げることができる。すなわち、包装用ストレッチフィルム、業務用又は家庭用ラップフィルム、パレットストレッチフィルム、ストレッチラベル、シュリンクフィルム、シュリンクラベル、シーラント用フィルム、レトルト用フィルム、レトルト用シーラントフィルム、保香性ヒートシールフィルム、A−PET用シーラント、冷凍食品用容器・蓋、キャップシール、熱溶着フィルム、熱接着フィルム、熱封緘用フィルム、バッグ・イン・ボックス用シーラントフィルム、レトルトパウチ、スタンディングパウチ、スパウトパウチ、ラミネートチューブ、重袋、繊維包装フィルム等の食品、雑貨等包装分野、ハウス用フィルム、マルチフィルム等の農業用フィルム分野、輸液バッグ、高カロリー輸液や腹膜透析用(CAPD)等の複室容器、腹膜透析用の排液バッグ、血液バッグ、尿バッグ、手術用バッグ、アイス枕、アンプルケース、PTP包装等の医療用フィルム・シート分野、土木遮水シート、止水材、マット、目地材、床材、ルーフィング、化粧フィルム、表皮フィルム、壁紙等の建材関連分野、レザー、天井材、トランクルーム内張、内装表皮材、制震シート、遮音シート等の自動車部品分野、ディスプレーカバー、バッテリーケース、マウスパッド、携帯電話ケース、ICカード入れ、フロッピーディスクケース、CD−ROMケース等の弱電分野、ハブラシケース、パフケース、化粧品ケース、目薬等医薬品ケース、ティッシュケース、フェイスパック等のトイレタリー又はサニタリー分野、文具用フィルム・シート、クリアファイル、ペンケース、手帳カバー、デスクマット、キーボードカバー、ブックカバー、バインダー等の事務用品関連分野、家具用レザー、ビーチボール等の玩具、傘、レインコート等の雨具、テーブルクロス、ブリスターパッケージ、風呂蓋、タオルケース、ファンシーケース、タグケース、ポーチ、お守り袋、保険証カバー、通帳ケース、パスポートケース、刃物ケース等の一般家庭用、雑貨分野、再帰反射シート、合成紙等が挙げられる。また、粘着剤組成物として、あるいは基材に粘着材が塗布されて粘着性が付与されたフィルム・シート分野として、キャリアテープ、粘着テープ、マーキングフィルム、半導体又はガラス用ダイシングフィルム、表面保護フィルム、鋼鈑・合板保護フィルム、自動車保護フィルム、包装・結束用粘着テープ、事務・家庭用粘着テープ、接合用粘着テープ、塗装マスキング用粘着テープ、表面保護用粘着テープ、シーリング用粘着テープ、防食・防水用粘着テープ、電気絶縁用粘着テープ、電子機器用粘着テープ、貼布フィルム、バンソウコウ基材フィルム等医療・衛生材用粘着テープ、識別・装飾用粘着テープ、表示用テープ、包装用テープ、サージカルテープ、ラベル用粘着テープ等が挙げられる。
【0053】
本発明の成形体の繊維、不織布分野における用途は特に限定されないが、一例として、下記のような用途を挙げることができる。すなわち、連続紡糸、連続捲縮糸、短繊維、モノフィラメント等の繊維、フラットヤーン、メルトブロー法、スパンボンド法による不織布にすることにより、紙おむつ等の衛材、手術用衣服、手袋等の医療用、インナーグローブ、カーペット、その裏地、ロープ等の用途が挙げられる。また、これら不織布やモノフィラメント、フラットヤーン、スリットテープ等の編物と、フィルム・シートのラミネートによる、帆布、テント材、幌、フレキシブルコンテナー、レジャーシート、ターポリン等が挙げられる。
【0054】
[フィルム]
本発明の樹脂組成物は、特にその優れた機械的強度及び透明性とガスバリア性から、上記の各種用途のうち、フィルムの成形材料として有用である。
【0055】
本発明の樹脂組成物を成形してなる本発明のフィルムは、本発明の樹脂組成物を含む単層フィルムであってもよく、他の樹脂組成物との共押出により成形された2層以上の積層フィルムであってもよい。
このようなフィルムは、後述の容器に加工成形するための原反フィルムとして、或いは、電子機器や携帯電話、スマートフォン等の表示面の保護フィルム等として有用であり、その優れた透明性によりフィルム下の表示面の視認性を損なうことがなく、また、その優れた機械的強度とガスバリア性から機器類の保護効果に優れたものとなる。
【0056】
[容器]
本発明の樹脂組成物は、特にその優れた機械的強度及び透明性とガスバリア性から、上記各種用途のうち、容器の成形材料として有用であり、その優れた透明性により内容物を容易に確認することができ、また、その優れたガスバリア性と機械的強度により、外部応力や、外気からの透過物、或いは内容物の気散による内容物の劣化や組成変化を防止して内容物を安定に保存することができる。特に、プレフィルドシリンジやアンプル、輸液バッグ等の医薬品容器の接液部材、さらに、それらが多層で構成される積層体の場合は、その内層材、中間層材として最適である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0058】
以下の実施例及び比較例において、各種物性の測定は、下記の方法に従って行った。
【0059】
(1)分子量:
水素化ブロック共重合体又はブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用し、下記条件で標準ポリスチレン換算にて求めた。
装置:日本ウォーターズ(株)製Waters 2690
検出器(RI検出):日本ウォーターズ(株)製Waters 2410
カラム:昭和電工株式会社製Shodex KF−604・KF−603・
KF−602.50の各1本を3本直列に連結したものを用いた。
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.7mL/min
温度:40℃
【0060】
(2)水素化率:
水素化ブロック共重合体の芳香環の水素化率(モル%)は、H−NMRスペクトルを測定して算出した。
【0061】
(3)全ヘーズ(射出成形性):
水素化ブロック共重合体又はブロック共重合体を射出成形して得られた試験片を用いて、JIS K7105に準拠し、全ヘーズを測定して射出成形における表面平滑性を評価した。
【0062】
(4)内部ヘーズ(透明性):
水素化ブロック共重合体又はブロック共重合体を射出成形して得られた試験片にオイルを塗布し、表面凹凸の影響をなくして、JIS K7105に準拠し、内部ヘーズを測定して透明性を評価した。
【0063】
(5)A硬度:
水素化ブロック共重合体又はブロック共重合体を射出成形して得られた試験片を用いて、JIS K6253に準拠し、デュロ硬度Aを測定した。
【0064】
(6)MFR:
水素化ブロック共重合体又はブロック共重合体のMFRをJIS K7210に準拠して、230℃、21.2N荷重の条件で測定した。
【0065】
(7)ガスバリア性(水蒸気バリア性):
水素化ブロック共重合体又はブロック共重合体の厚さ0.12mmのプレスシートを用いて、JIS K7129 B法(MOCON法)に準拠した赤外線センサー法にてガスバリア性(g/(m・24h))を求めた。
【0066】
<水素化ブロック共重合体又はブロック共重合体の評価>
[実施例1]
攪拌装置を備えたステンレス鋼製オートクレーブに、ポリスチレンブロック含有率(以下、PS含有量と表すことがある)が30質量%で、重量平均分子量(Mw)=111000、数平均分子量(Mn)=82100のスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(以下(A−1)と表すことがある)25質量部及びテトラヒドロフラン75質量部からなる溶液と、水素化触媒として5質量%パラジウム担持活性炭触媒4質量部を入れて混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素ガスを供給し、温度170℃、圧力10MPaにて4.5時間水素化反応を行った。
【0067】
水素化反応終了後、反応液をテトラヒドロフラン100質量部で希釈し、その溶液を濾過して水素化触媒を除去した。濾液をメタノール1200質量部中へ攪拌しながら注ぎ、析出した水素化ブロック共重合体を濾過により分離後、減圧乾燥機により乾燥させた。
【0068】
このようにして得られた水素化ブロック共重合体は、下記式で表され、重量平均分子量(Mw)は103000、数平均分子量(Mn)は78200であった(Mw/Mn=1.3)。また、水素化率は97%であった。以下、この水素化ブロック共重合体を(X−1)と表すことがある。
【0069】
【化1】

【0070】
得られた水素化ブロック共重合体(X−1)について、前記(6)、(7)の測定方法に基づき評価を行なった。
また、得られた水素化ブロック共重合体(X−1)を、射出成形機(DSM社Xploreマイクロコンパウンダーに射出成形ユニットを接続した)を用いて、シリンダー温度220℃、金型温度40℃にて射出成形して80mm×30mm、厚さ2mmの試験片を作製した。この試験片を用いて前記(3)〜(5)の測定方法に基づき評価を行なった。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例2]
スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−1)の代りに、ポリスチレンブロック含有率が30質量%で、重量平均分子量(Mw)=70000、数平均分子量(Mn)=57000のスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(以下(A−2)と表すことがある。)を用い、水素化反応時間を3.5時間に変更した以外は実施例1と同様にして水素化ブロック共重合体を得た。得られた水素化ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は66000、数平均分子量(Mn)は54000であった(Mw/Mn=1.2)。また、水素化率は96%であった。以下、この水素化ブロック共重合体を(X−2)と表すことがある。
【0072】
得られた水素化ブロック共重合体(X−2)について、前記(6)の測定方法に基づき評価を行なった。
また、得られた水素化ブロック共重合体(X−2)を、実施例1と同様の射出成形機を用いて、シリンダー温度180℃、金型温度40℃にて射出成形して、80mm×30mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた試験片について、前記(3)〜(5)の測定方法に基づき評価を行なった。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例3]
スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−1)の代りに、ポリスチレンブロック含有率が15質量%で、重量平均分子量(Mw)=112000、数平均分子量(Mn)=93600のスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(以下、(A−3)と表すことがある)を用い、水素化反応時間を4時間に変更した以外は実施例1と同様にして水素化ブロック共重合体を得た。得られた水素化ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は108000、数平均分子量(Mn)は89800であった(Mw/Mn=1.2)。また、水素化率は96%であった。以下、この水素化ブロック共重合体を(X−3)と表すことがある。
【0074】
得られた水素化ブロック共重合体(X−3)について、前記(6)の測定方法に基づき評価を行なった。
また、得られた水素化ブロック共重合体(X−3)を、実施例1と同様の射出成形機を用いて、シリンダー温度190℃、金型温度40℃にて射出成形して、80mm×30mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた試験片について、前記(3)〜(5)の測定方法に基づき評価を行なった。結果を表1に示す。
【0075】
[実施例4]
スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−1)の代りに、ポリスチレンブロック含有率が50質量%で、重量平均分子量(Mw)=67400、数平均分子量(Mn)=46200のスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(以下、(A−4)と表すことがある)を用いた以外は実施例1と同様にして水素化ブロック共重合体を得た。得られた水素化ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は59100、数平均分子量(Mn)は41500であった(Mw/Mn=1.4)。また、水素化率は94%であった。以下、この水素化ブロック共重合体を(X−4)と表すことがある。
【0076】
得られた水素化ブロック共重合体(X−4)について、前記(6)の測定方法に基づき評価を行なった。
また、得られた水素化ブロック共重合体(X−4)を、実施例1と同様の射出成形機を用いて、シリンダー温度190℃、金型温度40℃にて射出成形して、80mm×30mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた試験片について、前記(3)〜(5)の測定方法に基づき評価を行なった。結果を表1に示す。
【0077】
[比較例1]
実施例1で用いたスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−1)について、前記(6)、(7)の測定方法に基づき評価を行なった。
また、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−1)の水素化を行なわず、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−1)そのままをシリンダー温度220℃、金型温度40℃にて射出成形した以外は実施例1と同様に射出成形を行った。しかし、流動性が悪く成形できなかったため、シリンダー温度を250℃に変更して射出成形を行い、80mm×30mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた試験片について、前記(3)〜(5)の測定方法に基づき評価を行なった。結果を表1に示す。
【0078】
[比較例2]
実施例2で用いたスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−2)について、前記(6)の測定方法に基づき評価を行なった。
また、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−2)の水素化を行わず、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−2)をそのままシリンダー温度200℃、金型温度40℃にて射出成形した以外は実施例2と同様に射出成形を行ない、80mm×30mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた試験片について、前記(3)〜(5)の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0079】
[比較例3]
実施例3で用いたスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−3)について、前記(6)の測定方法に基づき評価を行なった。
また、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−3)の水素化を行わず、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−3)をそのままシリンダー温度220℃、金型温度40℃にて射出成形した以外は実施例3と同様に射出成形を行い、80mm×30mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた試験片について、前記(3)〜(5)の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0080】
[比較例4]
実施例4で用いたスチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−4)について、前記(6)の測定方法に基づき評価を行なった。
また、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−4)の水素化を行わず、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(A−4)をそのままシリンダー温度210℃、金型温度40℃にて射出成形した以外は実施例4と同様に射出成形を行い、80mm×30mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた試験片について、前記(3)〜(5)の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0081】
[比較例5]
攪拌装置を備えたステンレス鋼製オートクレーブに、ポリスチレンブロック含有率が30質量%で、重量平均分子量(Mw)=70600、数平均分子量(Mn)=65000のスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(以下、(B−1)と表すことがある)25質量部及びテトラヒドロフラン75質量部からなる溶液と、水素化触媒として5質量%パラジウム担持活性炭触媒6質量部を入れて混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素ガスを供給し、温度170℃、圧力10MPaにて5.5時間水素化反応を行った。
水素化反応終了後、得られた水素化ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は68200、数平均分子量(Mn)は63000であった(Mw/Mn=1.1)。また、水素化率は99%であった。以下、この水素化ブロック共重合体を(Y−1)と表すことがある。
【0082】
得られた水素化ブロック共重合体(Y−1)について、前記(6)、(7)の測定方法に基づき評価を行なった。
また、得られた水素化ブロック共重合体(Y−1)を、シリンダー温度220℃、金型温度40℃にて射出成形した以外は実施例1と同様に、80mm×30mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた試験片について、前記(3)〜(5)の測定方法に基づき評価を行なった。結果を表1に示す。
【0083】
[比較例6]
比較例5で用いたスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(B−1)について、前記(6)、(7)の測定方法に基づき評価を行なった。
また、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(B−1)の水素化を行わず、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(B−1)をそのままシリンダー温度270℃、金型温度40℃にて射出成形した以外は実施例1と同様にして、80mm×30mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた試験片について、前記(3)〜(5)の評価を行なった。結果を表1に示す。なお、上記ブチレンはn−ブチレンを指し、他の比較例においてもブチレンはn−ブチレンを指す。
【0084】
[比較例7]
攪拌装置を備えたステンレス鋼製オートクレーブに、ポリスチレンブロック含有率が30質量%で、重量平均分子量(Mw)=94300、数平均分子量(Mn)=86500のスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(以下、(B−2)と表すことがある)23質量部及びテトラヒドロフラン77質量部からなる溶液と、水素化触媒として5質量%パラジウム担持活性炭触媒6質量部を入れて混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素ガスを供給し、温度170℃、圧力10MPaにて7時間水素化反応を行った。
水素化反応終了後、得られた水素化ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は90500、数平均分子量(Mn)は82400であった(Mw/Mn=1.1)。また、水素化率は92%であった。以下、この水素化ブロック共重合体を(Y−2)と表すことがある。
【0085】
得られた水素化ブロック共重合体(Y−2)について、前記(6)の測定方法に基づき評価を行なった。
また、得られた水素化ブロック共重合体(Y−2)を、シリンダー温度240℃、金型温度40℃にて射出成形した以外は実施例1と同様に80mm×30mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた試験片について、前記(3)〜(5)の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0086】
[比較例8]
比較例7で用いたスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(B−2)について、前記(6)の測定方法に基づき評価を行なったが、流動性が悪く、測定できなかった。
また、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(B−2)の水素化を行わず、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体(B−2)をそのままシリンダー温度270℃、金型温度40℃にて射出成形したが、流動性が悪く成形できなかった。
【0087】
[比較例9]
攪拌装置を備えたステンレス鋼製オートクレーブに、ポリスチレンブロック含有率が30質量%で、重量平均分子量(Mw)=73900、数平均分子量(Mn)=69100のスチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(以下、(B−3)と表すことがある)25質量部及びテトラヒドロフラン75質量部からなる溶液と、水素化触媒として5質量%パラジウム担持活性炭触媒6質量部を入れて混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素ガスを供給し、温度170℃、圧力10MPaにて5時間水素化反応を行った。
水素化反応終了後、得られた水素化ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は71000、数平均分子量(Mn)は66000であった(Mw/Mn=1.1)。また、水素化率は97%であった。以下、この水素化ブロック共重合体を(Y−3)と表すことがある。
得られた水素化ブロック共重合体(Y−3)について、前記(6)の測定方法に基づき評価を行なった。
また、得られた水素化ブロック共重合体(Y−3)を、シリンダー温度210℃、金型温度40℃にて射出成形した以外は実施例1と同様に80mm×30mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた試験片について、前記(3)〜(5)の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0088】
[比較例10]
比較例9で用いたスチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(B−3)について、前記(6)の測定方法に基づき評価を行なった。
また、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(B−3)の水素化を行わず、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(B−3)をそのままシリンダー温度260℃、金型温度40℃にて射出成形した以外は実施例1と同様にして、80mm×30mm、厚さ2mmの試験片を作製した。得られた試験片について、前記(3)〜(5)の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
上記結果より、実施例1〜4の水素化ブロック共重合体は水素化していないビニル芳香族系ブロック共重合体(比較例1〜4)と比較して、射出成形性(全ヘーズ)、透明性(内部ヘーズ)が改善されており、耐熱性にも優れていた。
さらに、実施例1と比較例1を比較すると、水素化することによりガスバリア性も向上することがわかる。
また、実施例1〜4の水素化ブロック共重合体はイソブチレンブロックのかわりにエチレン・ブチレンブロックあるいはエチレン・プロピレンブロックを有する水素化ブロック共重合体(比較例5、7、9)と比較して、透明性、及びガスバリア性のバランスに優れていることがわかる。一方、イソブチレンブロックを有するブロック共重合体については、水素化することにより透明性が改善されるのに対し(実施例1〜4、比較例1〜4)、エチレン・ブチレンブロックあるいはエチレン・プロピレンブロックを有するブロック共重合体については、水素化することにより透明性が悪化することがわかる(比較例5、6、9、10)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化ビニル芳香族重合体ブロックAと、イソブチレンを主体とする重合体のブロックBとを有することを特徴とする水素化ブロック共重合体。
【請求項2】
前記水素化ブロック共重合体の重量平均分子量が10000以上、200000以下であることを特徴とする請求項1に記載の水素化ブロック共重合体。
【請求項3】
前記水素化ビニル芳香族重合体ブロックAが、芳香族環を水素化した水素化ポリスチレンブロックであることを特徴とする請求項1または2に記載の水素化ブロック共重合体。
【請求項4】
前記水素化ビニル芳香族重合体ブロックAの芳香族環の水素化率が50モル%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素化ブロック共重合体。
【請求項5】
前記イソブチレンを主体とする重合体のブロックBが、単量体成分として、イソブチレンを70質量%以上含有するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素化ブロック共重合体。
【請求項6】
前記水素化ブロック共重合体が、前記水素化ビニル芳香族重合体ブロックAを2つと、前記イソブチレンを主体とする重合体のブロックBを1つ有する構造であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水素化ブロック共重合体。
【請求項7】
前記水素化ブロック共重合体の全質量に対する前記水素化ビニル芳香族重合体ブロックAの含有割合が、40質量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水素化ブロック共重合体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の水素化ブロック共重合体を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の樹脂組成物を含むフィルム。
【請求項10】
請求項8に記載の樹脂組成物を含む容器。

【公開番号】特開2013−82912(P2013−82912A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−214388(P2012−214388)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】