説明

水素援用による酸素燃料燃焼

【課題】燃焼排気ガス中の窒素酸化物NOxおよび一酸化炭素COの排出量を確実に低下させるとともに、火炎安定性を維持するシステムを提供する。
【解決手段】システム50は、燃焼器14と、空気分離ユニット12と、燃料流源54と、凝縮器16とを含む。燃焼器14は、酸素入力ポート42と、燃料流入力ポート44と、二酸化炭素入力ポート48と、排気出力ポート46とを含む。空気分離ユニット12は、燃焼器14の酸素入力ポート42を介して燃焼器14と流体連通している。燃料流源54は、燃料流入力ポート44を介して燃焼器14と流体連通しており、燃料源および水素源を含む。凝縮器16は、排気出力ポート46を介して燃焼器14から排気を受け入れ、かつ二酸化炭素入力ポート48を介して出力流を燃焼器14に戻すように配置される。方法は、酸化剤が存在する状態で燃焼器内で燃料流を燃焼して、排気ガスを発生させるステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、酸素燃料燃焼のシステムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、補助として水素を利用する(hydrogen assisted)酸素燃料燃焼に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば発電システムにおいて、化石燃料の燃焼によって発生する排気流は、燃焼中の副産物として窒素酸化物(NOx)および一酸化炭素(CO)を含む。化石燃料を利用する発電所からのNOxおよびCOの排出は、国内規制および国際規制によるペナルティが次第に課せられるようになっている。NOxおよびCOを排出するためのコストの増加と相まって、排出の削減は経済的な発電のために重要である。
【0003】
NOx排出を削減する1つの方法は、選択的接触還元によってNOxを排気ガスから除去するというものである。NOxを排気ガスから除去する必要なしに、ほぼゼロに近いNOxを達成する方法は、酸素燃料燃焼プロセスである。この方法では、空気を使用するのとは対照的に、純酸素(一般的に、二酸化炭素などの二次的ガスと組み合わせる)が酸化剤として使用され、それによってNOxの排出量が無視できる程度の燃焼ガスが得られる。酸素燃料プロセスでは、酸化剤中の酸素(O2)濃度を可能な限り低くした状態で燃焼炎を安定させることができれば、生成される排気COの排出を少なくすることができる。しかし、酸素燃料のO2濃度を特定のレベルよりも低減することは、火炎安定性の問題に結び付く場合がある。
【0004】
したがって、NOxおよびCOの排出量を確実に低下させるとともに、火炎安定性を維持する、発電のためのシステムおよび方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,909,898号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡潔には、一実施形態では、方法が提供される。方法は、酸化剤が存在する状態で燃焼器内で燃料流を燃焼して、排気ガスを発生させるステップと、排気ガスを凝縮して、少なくとも95体積%の二酸化炭素を含む出力流を得るステップと、出力流の少なくとも一部分を燃焼器へと送るステップとを含む。燃焼器に入る燃料流は主要燃料および水素を含む。酸化剤は、酸素および二酸化炭素を含み、窒素はほぼ含まない。
【0007】
一実施形態では、システムが提供される。システムは、燃焼器と、空気分離ユニットと、燃料流源と、凝縮器とを含む。燃焼器は、酸素入力ポートと、燃料流入力ポートと、二酸化炭素入力ポートと、排気出力ポートとを含む。空気分離ユニットは、燃焼器の酸素入力ポートを介して燃焼器と流体連通している。燃料流源は、燃料流入力ポートを介して燃焼器と流体連通しており、燃料源および水素源を含む。凝縮器は、排気出力ポートを介して燃焼器から排気を受け入れ、二酸化炭素入力ポートを介して出力流を燃焼器に戻すように配置される。
【0008】
一実施形態では、システムが提供される。システムは、燃焼器と、空気分離ユニットと、水素富化(hydrogen enrichment)ユニットと、タービンと、凝縮器とを含む。燃焼器は、酸素入力ポートと、燃料流入力ポートと、二酸化炭素入力ポートと、排気出力ポートとを含む。空気分離ユニットは、燃焼器の酸素入力ポートを介して燃焼器と流体連通している。水素富化ユニットは、燃料入力ポートを介して燃焼器と流体連通している。タービンは、排気出力ポートを介して燃焼器と連通している。凝縮器は、タービンから排気を受け入れ、二酸化炭素入力ポートを介して出力流を燃焼器に戻すように、タービンの下流側に配置される。
【0009】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明を添付図面と併せ読むことにより、より十分に理解されるであろう。なお、図面全体を通して同様の符号は同様の部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態によるシステムを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による水素富化システムの一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態によるシステムを示す図である。
【図4】本発明の一実施形態によるシステムを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による、燃料の水素富化による一酸化炭素削減の成果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は、水素富化燃料(hydrogen enriched fuel)を使用する酸素燃料燃焼を含む。
【0012】
以下の明細書およびそれに続く請求項では、文脈において特段の指定がない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は複数形を含む。
【0013】
ガスタービン用途における酸素燃料燃焼は、NOx排出ゼロの燃焼のための主要な手段の1つである。酸素燃料燃焼は、二酸化炭素(CO2)の捕捉および隔離を可能にするものであり、酸素汚染を伴わないCO2を必要とする用途にとって魅力的な技術である。酸素燃料プロセスを手段として作動するガスタービンでは、燃焼排気の主成分が主としてCO2および水(H2O)を含むため、CO2分離ユニットは不要である。H2Oを凝縮するか、または排気流を熱回収蒸気発生(HRSG)プロセスに使用することによって、CO2の高濃度流が生成され、かつCO2隔離または他のCO2用途に使用されてもよい。
【0014】
一般に、システム10は主に、図1に示されるように、空気分離ユニット(ASU)12と、燃焼器14と、冷却システム16とを含む。ASU 12は、酸素を空気から分離して、酸素供給を酸化剤として燃焼器14に提供する。ASUの代わりに、酸素を提供する他の技術を使用できることが当業者には理解される。燃焼器14は、燃焼器14へと送られる酸素が存在する状態で、燃料流をCO2と別個に、またはCO2と混合した後に燃やすように構成される。燃料は炭化水素燃料であってもよい。燃料の非限定例としては、重炭化水素、天然ガス、メタン、およびエタノールが挙げられる。ASU 12からの窒素は、リザーバ管理ユニット18に貯蔵されるか、かつ/または、例えばガス田から天然ガスを回収するなど、他の用途に使用されてもよい。燃焼生成物は、通常、主にCO2、H2O、および微量のCOおよびO2排出を含む。冷却システム16はH2Oを凝縮し、その結果、95%のCO2組成を上回る排気ガスが得られる。一実施形態では、図1の酸素燃料燃焼プロセスの効率は、ASU 12によって送達されるO2に応じて決まる。ASU 12からの酸素に対する要求が高まっていることにより、ASU 12システムが比較的高価なためにプロセスコストが増加することがある。したがって、比較的少量の酸素を使用して酸素燃料燃焼を安定させる方法を決定することが関心事となるであろう。
【0015】
一実施形態では、排気O2の削減は、酸素をほぼ含まない高含量CO2流を必要とする用途にとって望ましい。本明細書で使用するとき、「高含量CO2流」は、約90体積%を超えるCO2を有する流れとして定義される。別の実施形態では、高含量CO2流は約95体積%を超えるCO2を含有する。さらなる実施形態では、高含量CO2流は約99体積%を超えるCO2を含有する。
【0016】
「ほぼ酸素を含まない」流れは、約1体積%未満の酸素を含有する流れとして定義される。本発明者らによる平衡計算および実験研究に基づいて、酸化剤中のO2濃度が低い状態で燃焼炎が安定すると、排気O2およびCOの低排出量が生じ得る。より低い酸素濃度を維持する1つの方法は、酸素およびCO2の混合物を酸化剤として使用することによるものである。しかし、CO2濃度を増加させ、酸化剤中のO2を特定のレベルよりも低下させることで、火炎安定性は低減されることがある。
【0017】
メタン(CH4)を燃料として使用する燃焼に関して本発明者らが行った過去の平衡計算および試験により、CH4・空気燃焼の火炎温度に一致させるため、酸素燃料燃焼においてO2が少なくとも約30体積%の酸化剤レベルが望ましいことが示されている。
【0018】
酸化剤の酸素をほぼすべて使用して燃料流を燃やすことによって、排気ガス中の酸素含量を大幅に削減することができる。したがって、化学量論的な燃料対酸素比(Φ=1)付近で、即ちわずかに濃い燃料を用いて燃焼プロセスを操作することで、排気中のO2が最小限に抑えられて、下流プロセスのためにCO2を高濃度にすることが可能になる。一実施形態では、CO2排気流中の酸素レベルが10ppm未満であることが望ましい。一般的に高含量のCO2流を指定する用途の一例は、CO2流の注入が油回収率の向上に結び付く、劣化油回収ウェルからの油回収である。
【0019】
高いCO2排気ガスの一部分はまた、ASU 12から分離されたO2と混合するため、燃焼器14に再循環させてもよい。燃焼によるCO排出を最小限に維持することは、高燃焼効率を維持する助けとなる。
【0020】
ASUによって供給される酸素中に存在する窒素は極低濃度なので、酸素燃料を使用した燃焼におけるNOx生成は最小限であることが予期される。本発明者らが実施した実験によって、酸化剤中の窒素が約4%以下のとき、生成されるNOxは約5ppm以下であることが示された。一実施形態では、燃焼に使用される酸化剤は窒素をほぼ含まない。本明細書で使用するとき、「ほぼ含まない」という用語は、酸化剤中の窒素が、空気分離ユニットによって達成できるような低量であることを意味する。一実施形態では、酸化剤中に存在する窒素は酸化剤の約1体積%未満である。
【0021】
「安定火炎」という概念は当該分野において一般に知られている。本発明の文脈では、安定火炎とは、約2700°F(1482℃)〜3700°F(2038℃)の範囲内の温度で、燃焼器の動作中の酸素含量が酸化剤の約20〜30体積%の範囲のとき、酸化剤の不足によって消滅しないものである。
【0022】
本出願では、本発明者らは、酸化剤中のO2濃度が低い状態で火炎安定性を改善することを可能にするものとして、酸素燃料燃焼における燃料の水素富化を使用することを開示する。本明細書で使用するとき、「水素富化」という用語は、主要燃料と比較して燃料流中の水素量を増加させることを意味する。例えば、主要燃料がメタン(CH4)の場合、燃料流の水素富化には多量の水素を含むことが必要となる。燃料流中に存在する水素は、水素分子の形態であってもよく、または燃料混合物の一部として存在してもよい。一実施形態では、水素は主要燃料の成分として存在する。主要燃料流は、様々な方法を使用して供給または生成される水素を用いて富化されてもよい。一実施形態では、水素は主要燃料とは別個に貯蔵され、燃料流を燃焼する前にある比で主要燃料と混合される。水素を生成するためのいくつかの方法が存在し、その例としては特に、水蒸気改質、水電解、熱部分酸化、およびプラズマ改質を含むことが当業者には理解される。一実施形態では、燃料流を富化するための水素は、接触部分酸化(CPO)を使用することによって提供される。
【0023】
蒸気、空気、および天然ガス(NG)を利用する接触部分酸化プロセスの一例が図2に示される。このプロセスでは、主要燃料22流の一部は蒸気24と混合され、空気26と反応して水素28を生成する。部分酸化反応は、一般的に約1800°F(982.2℃)の温度以下で、空気/蒸気と燃料の混合物を部分燃焼するものである。部分酸化反応は、触媒が存在する状態実施されてもされなくてもよい。任意の触媒を関与させることなく部分酸化が実施される場合、水素28を作り出す酸化プロセスは熱部分酸化(TPO)と呼ばれる。レニウム・セリウム、レニウム・アルミナ、またはレニウム・ルテニウムを含む貴金属/合金などの触媒の使用は、水素28生成の体積%を向上させるとともに、水素28生成に必要な反応温度を低減させることが見出されている。この水素28は、燃料流58としてシステム10に供給する前に主要燃料22と混合される。したがって、上記に詳述したCPOプロセスの例は、主要燃料の一部分を利用して、主要燃料22の富化に使用されるH2を作り出す。一実施形態では、CPOプロセスからの出力流(図示なし)は、微量の体積%の主要燃料を含有することがある。H2の発生および主要燃料の水素富化に適用可能な様々なCPOシステムが当業者には理解される。
【0024】
酸素燃料燃焼プロセスにおける燃料流の水素富化は、主要燃料と反応する酸化剤中の酸素含量を低減させると同時に、酸素燃料燃焼における希薄吹き消え(lean blow off)(LBO)マージンを改善(低減)する。燃料流中の水素含量が増加することで、酸素燃料燃焼プロセスにおける燃料供給の反応性が向上する。水素富化はさらに、酸素燃料燃焼の火炎温度を下げるのに役立つことがある。具体的には、水素富化は、別の方法では特に低い火炎温度で一酸化炭素(CO)を発生させる酸素分子を消費することによって、より低温でより少ない一酸化炭素を生成する。したがって、燃料流の水素富化は、排気ガス中の酸素および一酸化炭素含量を下げ、それによって、水を凝縮した後に「より清浄な」二酸化炭素排気流を提供してもよい。
【0025】
上述したように、燃料流の水素富化は、COおよびNOxなどの排出汚染物質の望ましくない増加を伴うことなく、酸素燃料燃焼の温度を低下させるのに役立つ。一実施形態では、水素富化燃料流およびCO2+O2酸化剤流を使用する酸素燃料燃焼の火炎温度は、約3000°F(1650℃)未満である。一実施形態では、火炎温度は約2900°F(1600℃)未満である。さらなる実施形態では、火炎温度は約2800°F(1540℃)未満である。
【0026】
空気燃焼と比較して、酸素燃料燃焼における一般的な燃料対酸化剤比は高くてもよい。しかし、燃料流に水素を添加することは、酸素燃料燃焼における使用可能な燃料対酸化剤比を下げるのに役立つことが見出されている。一実施形態では、酸素燃料燃焼は化学量論的な燃料対酸化剤比で行われる。本発明の一実施形態では、燃料流の燃焼は約0.9以下の当量比で行われる。本明細書で使用するとき、「当量比」は、化学量論的な燃料/酸化剤体積比に対する燃焼の燃料/酸化剤体積比として定義される。一実施形態では、酸素燃料燃焼は、約0.7以下の当量比で水素富化燃料流に対して行われる。一実施形態では、酸化剤中に存在する酸素量は、酸化剤全体に対して約25体積%未満である。
【0027】
一実施形態では、主要燃料に加える水素量は燃料流の少なくとも約5体積%である。一実施形態では、水素富化は燃料流の少なくとも約10体積%である。一実施形態では、燃料流の水素富化は燃料流の約15体積%である。
【0028】
一実施形態では、図3および図4に示されるようなシステム50が提供される。システム50は、酸素出力を提供するASU 12と、酸素入力ポート42を通して酸素を受け入れ、燃料流入力ポート44を通して燃料流58を受け入れるように構成された燃焼器14と、排気ガス62を発生させる安定火炎(図示なし)を維持するように、主要燃料および水素を含む燃料流58を燃焼器14に供給する、燃焼器14の上流側にある水素富化ユニット54とを含む。ASUの代わりに、酸素を提供する他の技術を使用できることが当業者には理解される。
【0029】
冷却システム16は、燃焼器14によって生成された排気ガス62を受け入れることによって、燃焼器14に流体結合することができる。一実施形態では、冷却システム16は、燃焼器14の下流側にあるタービン64を通して燃焼器14に流体結合される。タービン64は、排気出力ポート46を通して燃焼器14から出力流(排気ガス)62を受け入れ、排気ガス62と関連付けられたエネルギーの少なくとも一部を使用して電気を発生させて、使い切った排気流66を放出する。タービン64からの排気流66は、例えば水分凝縮システムまたはHRSGなどの冷却システム16に通されて、排気流66からの水を凝縮し、二酸化炭素流70を作り出してもよい。二酸化炭素流70は、CO2捕捉システム72で部分的にまたは完全に捕捉され、貯蔵されてもよい。アミンCO2ユニットはCO2捕捉システムの非限定例である。別の実施形態では、二酸化炭素流70は、例えば油回収システム74など、高含量の二酸化炭素を使用する用途へと送られてもよい。
【0030】
一実施形態では、二酸化炭素流70の少なくとも一部は、二酸化炭素入力ポート48を通して燃焼器14へと再び送られる。二酸化炭素流は、CO2圧縮機76内で任意に圧縮されて、燃焼器14中の酸素と混合されてもよい。
【0031】
通常、燃焼器への反応物流の圧力を最小限に維持するため、圧縮酸素を燃焼器14へと送って燃料流58と混合することが望ましい。圧縮酸素は様々なやり方で得られてもよい。圧縮機は、空気および/または酸素を含むガス流を圧縮するのに使用されてもよい。例えば、図3では、空気はASU 12に通され、分離された酸素は、燃焼器14へと送られる前に、ASUの下流側に載置された酸素圧縮機78を通して圧縮される。別の実施形態では、図3に示されるように、空気は、ASU 12に供給される前に、ASUの上流側に載置された空気圧縮機80中で圧縮される(本明細書で使用されるASUは、通常、圧縮空気から圧縮酸素を分離できるものである)。あるいは、酸素圧縮機78(例えば、図3を参照)は、図4に示されるシステムの下流側に追加されてもよい。
【0032】
本明細書で使用するとき、「上流側」および「下流側」という用語は内容物のフローを示す。例えば、「ASUの上流側にある圧縮機」は、動作中に圧縮機の内容物がASU「へと」移動することを指し、「ASUの下流側にある圧縮機」は、動作中に圧縮機の内容物がASU「から」移動することを指す。「上流側」および「下流側」という用語は、この例では圧縮機およびASUなど、示される部品間が流体連通していることを示すが、本明細書中で具体的に言及しない限り、間に介在部品を何ら有することなく部品が直接流体連通していることに何ら限定するものではない。
【0033】
いくつかの実施形態では、ガスタービンを含む発電所においてエネルギーを発生させる方法が提供される。方法は、ASU 12(図4)を作動させて空気から酸素を分離するステップと、燃料を燃焼器14に送るステップと、空気圧縮機80および/または酸素圧縮機78(図3)を使用することによって圧縮酸素を燃焼器14に提供するステップと、酸化剤が存在する状態で燃焼器14内で燃料流58を燃焼するステップとを含む。このようにして、二酸化炭素および水を含む排気ガス62が発生する。燃焼器14の排気ガス62は、例えば、タービン64を作動させるのに使用されて、電気を発生させてもよい。タービン64の排気流66は、水凝縮システム16に通されて、排気流66から水を分離し、高含量二酸化炭素流70を生成してもよい。高含量二酸化炭素流70は、酸素が存在することが望ましくないような状況における安全上の考慮のため、酸素をほぼ含まない。上述したように、二酸化炭素流70は、貯蔵され、他の用途へと送られ、かつ/または圧縮され、例えば圧縮酸素と組み合わせて、燃焼器14へと戻されてもよい。
【0034】
最初に、燃焼器14内の火炎は通常、酸素を用いて安定化され、二酸化炭素が添加物として酸素に緩やかに導入される。CO2流量が依然として比較的低いままで、水素富化が燃料流へと徐々に導入される。このようにして、燃焼器14供給物中のCO2濃度は約70体積%未満で維持されてもよい。酸化剤中のCO2レベルは徐々に増加され、火炎を消滅させることができるレベルで調節される。それに応じて、燃料流の水素富化はその特定のCO2レベルで火炎を安定させるように調節される。したがって、CO2流量は存在する酸化剤の体積の70%を上回るレベルまで増加され、それに応じて水素富化は連続的に動作する水素富化レベルに達するまで増加される。
【0035】
「動作水素富化レベル(operating hydrogen enrichment level)」は、燃焼器14中で求められる火炎温度によって決まる。求められる火炎温度における酸化剤中の酸素比率によって、燃焼器14へと再循環するCO2体積流量が決まる。燃料流に水素富化を適用することによって、約70体積%を超える二酸化炭素レベルで安定火炎が維持されてもよい。換言すれば、火炎は、酸化剤の約30体積%未満の酸素レベルで燃焼器14内で安定化されてもよい。
【実施例】
【0036】
以下の例は、特定の実施形態による方法、材料、および結果を例証するものであり、そのため、請求項を限定するものとして解釈すべきではない。すべての構成要素は、特段の指定がない限り、一般的な化学製品供給業者から市販で入手可能である。
【0037】
火炎安定性に対するH2富化の影響、および希薄吹き消え(LBO)火炎温度の改善について、約300psia(21.1kgf/cm2)の圧力および850°F(454.4℃)の温度に耐え得る直径8インチ(20.3cm)の試験装置を使用して評価した。燃料および空気は、燃焼器への吸気に先立ってチューブバンドル内で予混合し、火炎は火炎安定化装置プレートを使用して固定した。長さ5インチ(12.7cm)、直径2インチ(5.1cm)の燃焼器を火炎安定化装置の下流側に配置した。燃焼器冷却に使用される予熱空気も利用して、チューブバンドルの外側の燃料/空気混合物を予熱した。燃焼用空気はベンチュリを使用して計量し、天然ガスはコリオリ型質量流量計を使用して計量した。水素は、水素流を正確に制御するため、熱式質量流量計/コントローラを用いて計量した。空気流量は約0.05ポンド/秒(22.68g/秒)であった。吸気条件は、178〜185psia(12.5〜13.0kgf/cm2)および550〜660°F(287.8〜315.6℃)で比較的一定に保った。水素は5%の増分で5%から25%まで天然ガスに添加した。燃焼生成物を、火炎安定化装置の4.2インチ(10.7cm)下流側に配置した水冷ガスサンプリングプローブを使用して、ほぼ等速の条件でサンプリングした。次に、サンプルの流れを冷却し、乾燥させ、CO2、O2、未燃炭化水素(UHC)、およびCOの測定のため、ガスサンプリングシステムに送った。
【0038】
図5は、本発明の一実施形態による、より低い火炎温度と関連付けられた希薄吹き消え状態における水素富化による火炎温度および一酸化炭素削減の成果を示す。5%、10%、および15%などの様々な水素富化レベルに関して、火炎温度およびCO排出の低下をグラフに示す。
【0039】
具体的には、H2富化がない状態(100%天然ガス)では、安定火炎は2620°F(1437.8℃)を超える火炎温度でのみ得られる。15%の水素富化を添加すると、安定火炎のための最低火炎温度は約2500°F(1371.1℃)まで低下する。この例では、15%のH2富化で、安定火炎状態において120°F(66.7℃)の改善が得られる。それに加えて、H2富化の導入により、低温で非常に低い(平衡)COレベルが得られる。
【0040】
本発明の特定の特徴のみを本明細書に例証し記載してきたが、多数の修正および変更が当業者には想起されるであろう。したがって、添付の請求項は、本発明の真の趣旨内にあるものとして、かかる修正および変更をすべて包含するものとすることを理解されたい。
【符号の説明】
【0041】
10 システム
12 ASU
14 燃焼器
16 冷却システム
18 リザーバ管理ユニット
22 主要燃料流
24 蒸気
26 空気
28 水素
42 酸素入力ポート
44 蒸気入力ポート
46 排気出力ポート
48 CO2入力ポート
50 システム
58 燃料流
62 排気ガス
64 タービン
66 使い切った排気流
70 二酸化炭素流
72 CO2捕捉システム
74 油回収システム
76 CO2圧縮機
78 酸素圧縮機
80 空気圧縮機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素を実質的に含まず酸素および二酸化炭素を含む酸化剤が存在する状態で、燃焼器(14)内で主要燃料および水素を含む燃料流(22)を燃焼させ、排気ガス(62)を発生させるステップと、
前記排気ガス(62)を凝縮して、少なくとも95体積%の二酸化炭素を含む出力流を得るステップと、
前記出力流の少なくとも一部分を前記燃焼器へと送るステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記排気ガス(62)が酸素を実質的に含まない、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記燃料流(22)中の水素量が前記燃料流の少なくとも約5体積%である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記燃焼するステップが燃料および酸化剤の化学量論比以下で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記燃焼するステップが約0.9以下の当量比で行われる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記燃焼するステップが約1650℃(3000°F)未満の火炎温度で前記燃料流を燃焼することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記酸化剤中に存在する酸素量が酸化剤全体に対して約25体積%未満である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記出力流の少なくとも一部分を油高次回収システム(74)へと送るステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記燃焼器(14)へと送る前に前記出力流の前記少なくとも一部分を圧縮するステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
酸素入力ポート(42)、燃料流入力ポート(44)、二酸化炭素入力ポート(48)、および排気出力ポート(46)を備える燃焼器(14)と、
前記酸素入力ポート(42)を介して前記燃焼器(14)と流体連通している空気分離ユニット(12)と、
前記燃焼器(14)と流体連通しており、燃料源および水素源を備える燃料流(58)源と、
前記排気出力ポート(46)を介して前記燃焼器から排気を受け入れ、かつ前記二酸化炭素入力ポート(48)を介して出力流を前記燃焼器(14)に戻すように配置された凝縮器(16)と
を備える、システム(50)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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