説明

水素発生剤及びその用途

【課題】水道水などの飲料水と接触して数十分以内で、活性酸素の消去効果が期待できる溶存水素濃度の高い且つ蒸発残渣の少ない飲料に適した水素水が簡便に調整できる水素発生剤を提供する。
【解決手段】CaH2などの水素化金属化合物とクエン酸などの固体酸をポリエチレンなどの水不溶性高分子化合物を溶融してその中に混合して冷却固化させることで目的の水素発生剤を得ることが出来た。本発明の水素発生剤を水道水と接触させると30分以内で溶存水素濃度が0.2ppm以上で且つ蒸発残渣が500ppm以下の飲料に適した水素水が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水道水などの飲料水と接触させることにより、短時間で水中に水素を溶解させて飲料用の水素水を調整するのに適した水素発生剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素を高濃度に溶解した水(以下水素水と呼ぶ)は抗酸化作用があるために飲用すれば体内で発生する活性酸素を消去して生理的に健康に資するといわれている。この水素水は酸化還元電位(以下ORPと省略する)が還元サイドの値を示すため還元水とも呼ばれている。このような水素水を調整するために
(1)水を電気分解して陰極で発生する水素を水に溶解させる方法
(2)水素ガスを直接、水に溶解させる方法
などが知られている。
【0003】
(2)の方法は高価な設備を必要としないため最近各種の方法が提案されている。その一つは金属マグネシウム(Mg)と水を接触させて水素を発生させて水素水を調整する方法である(特許文献1)。また、Mgと水の反応で得られる水素水はアルカリ性となるために、あるいはMgと水の反応を促進して水素発生を容易にするために、Mg粉末と固体酸をコーンスターチ等の水溶性賦形剤を用いて錠剤状に成型した酸性還元水生成錠剤が開示されている(特許文献2)。
【0004】
本発明者も水素化カルシウムなどの水素化金属化合物をポリエチレングリコールや糖などの固体状の水溶性化合物中に包埋した水素発生剤を調整して、それを水中で溶解させることにより簡便に水素水を調整する方法を先に提案した(特許文献3)。
特許文献1:特開2002−336877号公報
特許文献2:特開2005−052811号公報
特許文献3:WO/2007/055146公報

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素水が活性ラジカルなど酸化剤と反応してそれを無害化するいわゆる抗酸化機能は水中に溶存している溶存水素濃度(以下DHと省略する)が大きいほど優れているといわれている。特許文献1や2に開示されているMgを用いる方法はMgと水の反応が遅く、多量のMgを用いても得られる水素水中のDHを0.2ppm以上にするためには数時間以上水と接触させて反応させる必要がある。飲料水に水素発生剤を添加して高濃度の水素を含む水素水を調整するために数時間も待つことは非常に不便である。
【0006】
本発明者はこの欠点を解決すべく特許文献3で水との反応が瞬時に進行する水素化カルシウム(CaH2)などの水素化金属化合物の利用を提案した。しかしながら特許文献3に開示された技術は水溶性の化合物でCaH2などを包埋して水素発生剤とするため、それを飲料水などの水に溶解した場合、DHの高い水素水が短時間で調整できるが、包埋時に使用した水溶性化合物も水に溶解してしまうために得られた水素水は蒸発残留物の多い水となってしまう。
【0007】
一方、水道法によるとその水質基準値として蒸発残留物が500ppm以下であることが規定されている。したがって水素発生剤を用いて調整された水素水を安全に飲料水として利用するには少なくとも蒸発残留物が500ppm以下の水素水を調整することが望ましい。したがって本発明の課題は数十分以内の水との接触でDHの高い且つ飲料水として安全な水素水を与える水素発生剤の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は特許文献3で使用した水溶性化合物に替えて水不溶性の高分子化合物を用いれば、その中に水素化金属化合物を分散・包埋することで、水素化金属化合物と水の反応を適度に遅延させて発生する水素を有効に水に溶解させ、DHの高い且つ蒸発残渣の少ない水素水が得られないかと考えた。この場合、水素化金属化合物と高分子化合物の粉末を単に固体状態で混合して加圧成型する方法を試みたが、高分子の可塑剤などを使用することなく錠剤状に成型することは不可能であった。一方、高分子化合物を溶融して水素化金属化合物をその溶融体に分散して冷却・固化すれば、水素化金属化合物を安定に包埋した成型物を得ることが出来た。
【0009】
しかしながら、この方法は水素化金属化合物の量が少ない場合、それが高分子化合物の海の中に浮かんだ島のような存在であるために水との接触が起こらず水素が発生するには長時間を要することが解った。一方、水素化金属化合物と水の反応で生成するアルカリ金属塩を中和するために水溶性の固体酸を同時に高分子化合物に分散・包埋させると、水と接触させた場合に比較的短時間で水素が発生することを見出して本発明を完成することが出来た。
【0010】
即ち、本発明の課題は粉末状の水素化アルカリ金属又は水素化アルカリ土類金属と水溶性の固体酸が溶融状態の水不溶性高分子中に混合され冷却固化されてなる水素発生剤を用いることによって解決される。この水素化金属化合物の中で水素化カルシウム又は水素化マグネシウムの少なくとも1種を用いるのが好ましい。また、これらの水素発生剤に用いる固体酸としては無水クエン酸を用いるのが好ましい。さらに、これらの水素発生剤に用いる水不溶性高分子としてはポリエチレンが好ましい。そしてこれらの水素発生剤の形態としては粉末状のものが好ましい。
【0011】
水素水を調整するためには上記の水素発生剤を水と接触させて水素発生剤から発生する水素を水中に溶解させることで達成される。この場合、水素発生剤を粉末状の形態として、それを水透過性であり且つ粉末粒子が不透過性の容器に充填して水と接触させるのが好ましい。さらに、粉末状の水素発生剤を充填した容器が水中に沈降して水との接触が容易になるように、容器内に比重が1より大きい水不溶性物質を共存させることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
CaH2などの水と激しく反応する水素化金属化合物と水溶性の固体酸をポリエチレンなどの水不溶性高分子化合物を溶融させて混合・分散させることで、水素化金属化合物と水の反応を遅延させた水素発生剤を得ることが出来た。本発明の水素発生剤を水道水と数十分接触させることでDHが0.2ppm以上、且つ蒸発残渣が500ppm以下の水素水を調整することが出来た。従って、この水素水は蒸発残渣の観点からは水道法に規定された水質基準値を満たしており、人体の健康を促進する安全な飲料水として有益な利用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で用いる水素化アルカリ金属としては水素化リチウム(LiH)、水素化ナトリウム(NaH)、水素化カリウム(KH)などが例示される。また、水素化アルカリ土類金属としては水素化マグネシウム(MgH2)、水素化カルシウム(CaH2)、水素化バリウム(BaH2)、水素化ベリリウム(BeH2)などが例示される。これらの水素化金属化合物の中でMgH2、CaH2が比較的に取り扱いが容易であり、また水中に溶解した場合、Mgイオン、Caイオンとなるため安全で好ましい化合物である。これらの水素化金属化合物は混合して使用することも出来る。代表的な例であるCaH2の場合、水と下記の反応式に従って反応して水素を発生する。
【0014】
【化1】

【0015】
CaH2やMgH2はこの反応式から明らかなように1モルのCaH2から2モルのH2を生成するが、Mgは1モルから1モルのH2しか生成しない。本発明ではこれらの水素化金属化合物を含む水素発生剤を水と接触させて、発生するH2をそのまま溶解して水素水を調整するのでH2の発生量が多い水素化金属化合物を用いるのが効率的である。
【0016】
その場合、CaH2などの水素化金属化合物は水と瞬時に反応するために発生するH2は空気中に気散してしまい水に溶解し難い。高濃度のH2を水に溶解させるためには、水との反応を遅延させる必要があり、そのために本発明では後述する水に溶解しない高分子化合物中に水素化金属化合物と水溶性の固体酸を包埋することでこの課題を解決した。また、高分子化合物で包埋することで反応性の高い水素化金属化合物を直接空気と接触することがないため安定に保つことが可能となり取り扱いも容易なものとすることが出来た。高分子化合物中に均一に包埋するためにこれらの水素化金属化合物は粉末状のものを用いることが必要である。
【0017】
一方、化学式1から分かるようにこの反応でCa(OH)2等のアルカリ金属塩が生成するために得られた水素水はアルカリ性を示すので飲料には不適である。したがって、金属塩を中和するために水溶性の固体酸を水素発生剤に添加する。これらの固体酸としてはクエン酸、アジピン酸、コハク酸、無水コハク酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸などの有機酸が好ましい。特にアジピン酸、クエン酸は食品添加物として認定されているので本発明の主用途である飲料用の水素水調整に用いる水素発生剤には好ましい固体酸である。これらの固体酸は高分子化合物中に均一に混合させるために粉末状のものを使用するのが好ましい。また、無水の酸を使用するのが好ましい。さらに、高分子化合物の溶融温度以下で分解しない酸を用いるのが好ましい。
【0018】
本発明で用いる水不溶性高分子化合物としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリー1−ブテンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンセバケート、ポリデカメチレンアジペートなどのポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレートなどのメタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、などが例示される。
【0019】
これらの高分子を溶融状態にして上述の水素化金属化合物と固体酸をその溶融体中に均一に分散させる。この場合、溶融体の粘度が低い方が水素化金属化合物や固体酸との撹拌混合が容易となるため分子量の比較的小さい高分子を用いるのが好ましい。しかしながらあまりにも小さいと賦形性が悪くなるので好ましくない。また、固体酸の熱分解などが起こらない温度で溶融するために、溶融温度は低い方が好ましい。これらの観点から粘度が融点で急激に低下する結晶性高分子を用いるのが好ましく、ポリエチレン(PEと略す)が好ましい例である。
【0020】
次にこれらの材料を用いて本発明の水素発生剤の製造方法について説明する。高分子化合物を加熱して溶融させその溶融体に固体酸と水素化金属化合物の粉末を加えて均一に撹拌して混合する。この混合物を乾燥した雰囲気中で冷却することで溶融混合物は固化して水素発生剤が得られる。その際、原料の高分子化合物と固体酸は事前に脱水乾燥しておくことが好ましい。原料中に水分があると混合時に水素化金属化合物と反応して水素を発生するので得られた水素発生剤中の水素化金属化合物の有効成分が低下するので好ましくない。
【0021】
工業的には溶融押出機を利用すれば容易に本発明の水素発生剤を製造することが出来る。即ち、1軸ないしは2軸のスクリューと温度制御機能のあるバレルを装備した押出機により、原料投入口から高分子化合物と固体酸、水素化金属化合物を混合して投入し、押出機先端のダイスより溶融体混合物を押出して冷却すればよい。その際、ダイスの形状を選択することでストランド状、フイルム状などの任意の形態を有する水素発生剤を製造することが出来る。
【0022】
本発明の水素発生剤を水と接触させて数十分という比較的に短時間で中性付近のpHを有する水素水を調整するためには、水不溶性の高分子化合物に包埋されている固体酸が容易に水に溶出すると同時に水素化金属化合物が水と反応することが必要である。この課題は水と水素発生剤の接触面積を大きくすること及び水素発生剤中の組成を適切に選択することで解決することが出来た。前者の解決手段の一つは冷却・固化した水素発生剤を粉末化することである。即ち、上述の方法で製造した水素発生剤を適切な粉砕機で粉砕することで達成される。
【0023】
次に組成の選択について説明する。水素発生剤中の高分子化合物の量は20〜50質量%の範囲が好ましい。20%以下の少量になると水素発生剤の賦形性が悪くなるので好ましくない。50%以上では包埋された固体酸の水への溶出速度や水素化金属合物と水の反応が遅くなりすぎて好ましくない。水素化金属化合物の量は化合物の種類にもよるが5〜30%の範囲が好ましい。5%以下ではDHの高い水素水が調整しにくく、また、30%以上では賦形性が悪くなると共に、中和に必要な固体酸の添加量を多く必要とするため下記に述べる理由で好ましくない。なお、ここで言う賦形性とは水素化金属化合物や固体酸が高分子化合物中に均一に分散・包埋される状態を意味し、そのためには溶融混合体が撹拌や混練り可能な状態を保持していることが好ましい。
【0024】
水素化金属化合物と水の反応で生成するアルカリ金属塩は固体酸で中和されるので中性の水素水を調整するためには理論的には化学反応式に従って中和に必要な固体酸を水素発生剤に分散混合すればよい。一方、水素水の水素発生剤の添加にもとづく蒸発残渣の増加分は理論的にはこれら水溶性の固体酸と水素化金属化合物の金属イオンの和となるため、この観点から水素発生剤中の固体酸と水素化金属化合物の量は少ない量にすることが好ましい。
【0025】
例えば水素化金属化合物としてCaH2を60mg使用した場合、CaH2のモル数は1.43x10−3となる。これと同じモル数の水酸化カルシウムが水との反応で生成するのでこれを中和する固体酸の量は例えば3塩基酸であるクエン酸を用いた場合、(2/3)x1.43x10−3モルとなる。従ってクエン酸を183mg添加すれば中和量となる。一方、これらの化合物がすべて水に溶出した場合、60x0.95+183=240mgの溶出量となるため1Lの水に対しては240ppmの量となり、これらは蒸発残渣として残ることが想定される。しかしながら、後述の実施例で示すように本発明の水素発生剤を水と接触させた場合、数十分の接触ではすべての固体酸が溶出しないため蒸発残渣は上述の計算値より少ないことが分かった。
【0026】
本発明者の検討では固体有機酸の種類によって中和量を添加しても水素水のpHは弱酸性になったり、逆にアルカリ性なることが判明した。これは有機酸とPEの混合状態が有機酸の種類によって異なるためと推定される。クエン酸の場合、中和量に等しい量を添加しても水素水は弱酸性を示す傾向があるが、アジピン酸の場合はアルカリ性を示した。即ち、クエン酸の場合はPEとの親和性が良くないため、水と接触させた場合、酸が初期段階では比較的速やかに溶出してくるためと想定される。
【0027】
従って、DHの高い水素水を得るには水素発生剤へ添加する水素化金属化合物の量を大きくする必要があるが、それを中和する固体酸の添加も増加するため水素水の蒸発残渣が増加することになる。この相反する現象並びに固体酸の溶出速度を考慮して水素発生剤の組成を決めることが必要である。
【0028】
次に本発明の水素発生剤を用いて水素水を調整する方法について説明する。今まで述べてきたことから明らかなように、水素発生剤を水と接触させることで水素水を調整することが出来る。その場合、発生する水素が空気中に気散しないように密閉した容器中で水と接触させるのが望ましい。例えばPETボトルに水と水素発生剤を入れてボトルの蓋を密閉する方法などが好ましい。さらに、水素発生剤から発生する水素の気泡が水と良く接触するように水素発生剤がボトルの底に沈降している状態が好ましい。
【0029】
水素発生剤が粉体の場合、粉体をそのまま使用すると水中に微粉が分散するので水素水を飲む場合それを分離する必要がある。この不便を除くために粉体を水は透過するが粉体粒子を透過しない容器内に充填して水と接触させる方法が好ましい。このような容器としては不織布からなる袋状容器、セラミックやプラスチックからなる微多孔質体で形成された容器などが例示される。また、水素発生剤は水と接触して水素の気泡を発生するために、またポリエチレンなどの密度が1より低い高分子化合物を包埋材として使用した場合、水面に浮上する傾向がある。従って、水底に沈めるために比重が1より大きく且つ水に溶けない物質を水素発生剤と共に容器内に入れておくことが好ましい。このような物質としては麦飯石、トルマリン石、サンゴなどの天然石、ガラスやセラミックなどが例示される。
【0030】
以下に実施例を援用して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例で使用したORPの測定はORPメーター(Toko Chemical Laboratories)を用いて測定し標準電極基準に補正した値である。また、DHの測定は溶存水素電極を用いてポータブル溶存水素計(東亜ディーケーケー株式会社)で測定した。また、実施例で使用したポリエチレン(PE)は商品名サンワックス131−P(三洋化成工業製)である。また、%は断りの無い限り質量%である。
【実施例1】
【0031】
粉末状のPEと粉末状の固体酸をアルミ皿に所定量秤量して表面温度を150℃に調整したホットプレート上でPEを溶融して匙で撹拌して固体酸を分散・混合した。次いで水素化金属化合物として所定量の粉末状のCaH2を添加して撹拌混合した。均一に混合した後、アルミ皿をホットプレートから下ろしてデシケータ中で冷却し溶融混合物を固化させた。ブロック状に固化した水素発生剤を卓上ミキサーで粉砕して目開き0.74mmの篩を通過した粉体状の水素発生剤を調整した(A〜E)。
【0032】
この水素発生剤をA,BについてはCaH2が45mgになるように、C,D,Eについては50mgになるように所定量秤量して薄い不織布の3辺を熱融着して作成した袋に入れ、同時に直径1cmの麦飯石を2個入れて袋の開口部を熱融着して密閉した。500mlPETボトルに上記の袋を入れて、水道水500mlを注入して蓋で密閉し20分間水と接触させた。袋は水底に沈降して水素と想定される気泡が袋から発生するのが観察された。20分経過後にこの水素水中のDH、ORP、pHを測定した。水素発生剤の組成を表1に、特性の評価結果を表2に纏めて示した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【実施例2】
【0035】

実施例1と同様にしてPE30%、固体酸として無水クエン酸50%、CaH2を20%を溶融混合して冷却固化した後、粉末化して水素発生剤Fを調整した。実施例1と同様にしてFを300mg(CaH2:60mg)(F−1)、350mg(CaH2:70mg)(F−2)含むように水素発生剤を秤量して麦飯石と共に袋に充填した試料を調整した。実施例1と同様にして500mlの水道水をいれたPETボトル中で所定時間水と接触させた。所定時間(10〜30分)経過後、同様にしてDH、ORP,pHを測定した。また、2.5時間及び4日間水と接触させた水素水を約30gアルミ皿に採取して蒸発残渣を測定した。結果を表3に纏めて示した。表3にはブランクとして袋に麦飯石(2個)のみを入れて調整した試料をPETボトルで水道水と接触させた水(水道水)について、同様に測定した結果も示した。
【0036】
【表3】

【実施例3】
【0037】
水素化金属化合物としてMgH2、LiHを用いて水素発生剤G,Hを実施例1と同様に製造した。所定量の粉末状水素発生剤と麦飯石を同様の袋に充填した試料を調整した。この場合、実施例2の試料(F−1)の特性と比較するために、水素発生剤の量は水との反応で生成する水素のモル数がCaH2の60mgから発生する水素量に等しくなるように調整した。一方、先行技術と比較するために金属Mg粉末(試薬、40メッシュ)350mgを石と共に袋に充填した試料(J)、及びMg粉末70mgと無水クエン酸370mgを石と共に袋に充填した試料(K)を調整した。
【0038】
試料KのMgの量70mgは水と反応して生成する水素のモル数がCaH2の60mgから同様に発生する水素のモル数に等しい量であり、水との反応を促進するためにあるいはアルカリ塩を中和するためにクエン酸を添加した試料である。また、試料JのMg量はすべて反応したとすればCaH2の60mgから発生する水素の5倍量の水素が発生する量に相当する。
【0039】
これらの水素発生剤を充填した袋を実施例1と同様にPETボトル中の水道水に30分浸漬して、水素水を調整してその特性を実施例2と同様に測定した。表4に水素発生剤G,Hの組成を、表5に得られた水素水の特性をまとめて示した。なお、表5に示した蒸発残渣は2.5時間浸漬後の水素水についての値である。これらの結果からMg金属粉末は水との反応が遅くて数十分以内でDHの高い水素水を得るのは困難であること、また、クエン酸を添加して酸性の水と接触させると反応は促進されるが、本発明の水素発生剤から得られる水素水に比べてDHが低いことなどが明らかになった。

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の水素発生剤並びにそれを用いた水素水の調整方法によれば、DHが0.2ppm以上含有し水道法で規定している蒸発残渣の少ない飲料用の水素水が数十分以内で調整できる。DHの高い水素水は活性酸素を消去するので人体の健康を促進する健康飲料水としての用途が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状の水素化アルカリ金属又は水素化アルカリ土類金属と水溶性の固体酸が溶融状態の水不溶性高分子中に均一に混合されて冷却固化されてなる水素発生剤。
【請求項2】
水素化アルカリ土類金属が水素化カルシウム又は水素化マグネシウムから選ばれた1種以上である請求項1の水素発生剤。
【請求項3】
固体酸が無水クエン酸である請求項1又は2の水素発生剤。
【請求項4】
水不溶性高分子がポリエチレンである請求項1又は2又は3の水素発生剤。
【請求項5】
水素発生剤が粉末状の形態である請求項1から5に記載の水素発生剤。
【請求項6】
請求項1から5に記載のいずれかの水素発生剤を水と接触させて水中に水素を溶解させる水素溶解水の調整方法。
【請求項7】
粉末状の水素発生剤が水透過性であり且つ粉末粒子不透過性の容器内に充填されている請求項6の水素溶解水の調整方法。
【請求項8】
容器内に比重が1より大きい水不溶性の物質を共存させて容器が水中に沈降するようにした請求項7の水素溶解水の調整方法。

【公開番号】特開2009−126736(P2009−126736A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−302344(P2007−302344)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(300052051)株式会社ヒロマイト (5)