水素結合サロゲートをベースとする人工ヘリックスによるウイルス宿主膜融合の制御
本発明は、1つまたは複数の安定な内部拘束HBSα−ヘリックスを有するペプチドに関し、当該ペプチドは、ウイルス(例えば、HIV−I)のコイルドコイルアセンブリーのクラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する。これらのペプチドを投与することにより対象におけるウイルス感染性を阻害する方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2007年12月31日出願の米国仮出願第61/018,118号の利益を主張するものである。
【0002】
[0002] 本発明は、いずれもNIH(National Institutes of Health)により与えられた助成金番号GM073943およびAI42382の下で政府の援助によってなされた。政府は、本発明における特定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
[0003] エンベロープを持ったウイルスは、宿主細胞へウイルスの遺伝物質を送達し、それによって宿主細胞への感染を開始することを、ウイルス膜(具体的なウイルスに応じて、原形質膜または細胞内膜)と宿主細胞膜の間の融合に依存している(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006))。この膜融合反応は、ウイルス膜融合タンパク質に依存している(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006))。少なくとも2つのクラスの膜融合タンパク質が同定されている(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006))。クラスI融合タンパク質は、疎水性「融合ペプチド」領域と膜貫通ドメインの間に、N末端ヘプタッド領域およびC末端ヘプタッド領域と呼ばれる2つのヘプタッド反復領域を含有する(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612(2000))。膜融合の間に、これらのヘプタッド反復領域は、極めて安定なコイルドコイルアセンブリーを最終的に選び、その中では、N末端ヘプタッド反復領域が、C末端ヘプタッド反復領域からのヘリックスにより支えられている内部三量体コイルドコイルを形成する(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612(2000))。このコイルドコイルアセンブリーの形成を阻害する薬剤は、ウイルス−宿主細胞膜融合を防ぎ、それによって、新たな宿主細胞の感染を阻害することができる。
【0004】
[0004] ウイルス感染性のためにクラスIコイルドコイルアセンブリーを使用するウイルスは、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、例えば、インフルエンザウイルス(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612 2000);KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006));パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、例えば、シミアンウイルス(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612(2000);KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006))および呼吸器合胞体ウイルス(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612(2000);Shepherdら, "Modular α-Helical Mimetics with Antiviral Activity Against Respiratory Syncitial Virus," J. Am. Chem. Soc. 128:13284-9(2006));フィロウイルス科(Filoviridae)、例えば、エボラウイルス(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612(2000);KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006));レトロウイルス科(Retroviridae)、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(「HIV-1」)、およびヒトT細胞白血病ウイルス(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612(2000);KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006));コロナウイルス科(Coronaviridae)、例えば、マウス肝炎ウイルスおよびSARSウイルス(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006));およびヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Englishら, "Rational Development of β-Peptide Inhibitors of Human Cytomegalovirus Entry," J. Biol. Chem. 281:2661-7(2006))を包含する。
【0005】
[0005] HIV−1は、クラスI融合タンパク質を使用するウイルスの例である。HIVは、免疫系の破壊および生命にかかわる日和見感染を撃退できないことを特徴とする致命的疾患である後天性免疫不全症候群(「AIDS」)の原因である病原因子として同定されている。最近の統計は、世界中で3300万もの人々がこのウイルスに感染していることを示している(AIDS EPIDEMIC UPDATE at 1, United Nations Programme on HIV/AIDS(Dec. 2007))。すでに感染している多数の個体に加えて、ウイルスは広がり続けている。2007年からの推定値は、その年だけで250万に近い新たな感染を指摘している(AIDS EPIDEMIC UPDATE at 1, United Nations Programme on HIV/AIDS(Dec. 2007))。同年には、HIVおよびAIDSに関係するおよそ210万の死亡があった(AIDS EPIDEMIC UPDATE at 1, United Nations Programme on HIV/AIDS(Dec. 2007))。
【0006】
[0006] 感染を確立するためのその標的細胞へのHIV−1の侵入は、ウイルスのエンベロープ糖タンパク質(「Env」)および細胞表面受容体(CD4およびCXCR4またはCCR5などの共受容体)により媒介される(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、EckertおよびKim, "Mechanisms of Viral Membrane Fusion and Its Inhibition," Annu. Rev. Biochem. 70:777-810(2001))。成熟Env複合体は、3つのgp120糖タンパク質が3つのウイルス膜固定型gp41サブユニットと非共有結合的に会合している三量体である。細胞受容体とのgp120/gp41の結合は、gp41における一連の立体配座の変化を引き起こし、融合後ヘアピン三量体構造の形成および膜融合に最終的につながる(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Chanら, "Core Structure of gp41 from the HIV Envelope Glycoprotein," Cell 89:263-73(1997);Weissenhornら, "Atomic Structure of the Ectodomain from HIV-1 gp41," Nature 387:426-30(1997);Tanら, "Atomic Structure of a Thermostable Subdomain of HIV-1 gp41," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 94:12303-8(1997))。図1Aおよび1Cに示すように、融合後ヘアピン三量体構造のコアは、6本のα−ヘリックスの束であり、3本のN−ペプチドヘリックスは、内部の平行なコイルドコイル三量体を形成し、一方、3本のC−ペプチドヘリックスは、コイルドコイル表面上の疎水性の溝の中に逆平行に詰まっている(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Chanら, "Core Structure of gp41 from the HIV Envelope Glycoprotein," Cell 89:263-73(1997);Weissenhornら, "Atomic Structure of the Ectodomain from HIV-1 gp41," Nature 387:426-30(1997);Tanら, "Atomic Structure of a Thermostable Subdomain of HIV-1 gp41," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 94:12303-8(1997))。N−ペプチド領域は、図1Bに示すように、C−ペプチド残基W628、W631、およびI635の標的にされる疎水性ポケットを特徴とする(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Chanら, "Evidence That a Prominent Cavity in the Coiled Coil of HIV Type 1 gp41 Is an Attractive Drug Target," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 95:15613-7(1998))。gp41コイルドコイル六量体の形成を妨害する薬剤は、ワクチンおよび薬品開発の第一標的である(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dengら, "Protein Design of a Bacterially Expressed HIV-1 gp41 Fusion Inhibitor," Biochem. 46:4360-9(2007))。N末端疎水性ポケットと結合し、6本のヘリックス束の形成を阻害するペプチドおよび合成分子は、gp41媒介性HIV融合を効果的に阻害することが明らかにされている(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Wildら, "Peptides Corresponding to a Predictive α-Helical Domain of Human Immunodeficiency Virus Type 1 gp41 Are Potent Inhibitors of Virus Infection," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 91:9770-4(1994);Ferrerら, "Selection of gp41-mediated HIV-1 Cell Entry Inhibitors from Biased Combinatorial Libraries of Non-natural Binding Elements," Nat. Struct. Biol. 6:953-60(1999);Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9(2002);もともとはAngew. Chem. 114:282-91(2002)で公表されたErnstら, "Design of a Protein Surface Antagonist Based onα-Helix Mimicry: Inhibition of gp41 Assembly and Viral Fusion," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 41:278-81(2002);Freyら, "Small Molecules That Bind the Inner Core of gp41 and Inhibit HIV Envelope-mediated Fusion," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 103:13938-43(2006);Stephensら, "Inhibiting HIV Fusion with a β-Peptide Foldamer," J. Am. Chem. Soc. 127:13126-7(2005);Dengら, "Protein Design of a Bacterially Expressed HIV-1 gp41 Fusion Inhibitor," Biochem. 46:4360-9(2007))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007] しかしながら、すべての患者が既存の療法に応答するとは限らず、ウイルスは、すべてではないが、大部分の公知の薬剤に対して耐性を発現しつつある。したがって、クラスI融合タンパク質を使用するHIVおよび他のウイルスに対する新たな抗ウイルス剤が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008] 本発明の第一の態様は、1つまたは複数の安定な内部拘束されている(internally-constrained)水素結合サロゲート(「HBS」)α−ヘリックスを有するペプチドであって、ウイルスのコイルドコイルアセンブリーのC−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはN−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣しているペプチドに関する。一実施形態において、本発明は、安定な内部拘束アルファ−ヘリックスを有するペプチドであって、前記アルファヘリックスは、炭素間結合形成反応により形成される架橋により拘束されており、さらに、該ペプチドが、クラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣し、ウイルス感染性の阻害剤であるペプチドを提供する。炭素間結合形成反応は、例えば、メタセシスであってよい。他の実施形態において、クラスI C−ペプチドヘリックスまたはクラスI N−ペプチドヘリックスは、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、レトロウイルス科、コロナウイルス科、ヘルペスウイルス科、インフルエンザウイルス、シミアンウイルス5、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、マウス肝炎ウイルス、SARSウイルス、およびヒトサイトメガロウイルスの群から選択されるウイルスに由来する。例えば、ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスである。本発明のペプチドは、gp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはgp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣することができる。一実施形態において、ペプチドは、gp41C−ペプチドヘリックスのWWI領域などのgp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する。
【0009】
[0009] 別の実施形態において、本発明のペプチドまたは本発明の方法で使用するためのペプチドは、式
【0010】
【化1】
を含み、
式中、
【0011】
【化2】
は、一重または二重の炭素間結合であり;
【0012】
【化3】
は、一重結合であって、
【0013】
【化4】
が二重結合である場合にシスまたはトランスであり;
nは、1または2であり;
mは、ゼロまたは任意の正の整数であり;
Rは、水素、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R1は、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R2は、アミノ酸、第二のペプチド、−OR、−CH2NH2、アルキル基、アリール基、水素、または式
【0014】
【化5】
を有する基であり;
R4は、アミノ酸、第三のペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基であり;
R3は、第四のペプチドである。R3は、例えば、式−WXXWXXXIXXYXXXI−R4(Xは、任意のアミノ酸である)を含むことができる。
【0015】
[0010] ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列を含むことができ、配列番号9の残基1〜4にまたがる内部拘束アルファ−ヘリックスを有することができる。他の実施形態において、gp41 C−ペプチドヘリックスは、配列番号11のアミノ酸配列を有する。あるいは、ペプチドは、gp41 N−ペプチドヘリックスの疎水性ポケットなどのgp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する。gp41 N−ペプチドヘリックスは、例えば、配列番号12のアミノ酸配列を有することができる。
【0016】
[0011] 本発明は、本発明のペプチドおよび薬学的に許容できるビヒクルを含む医薬組成物も提供する。
【0017】
[0012] 別の態様において、本発明は、対象においてウイルスの感染性を阻害する方法であって、安定な内部拘束アルファ−ヘリックスを有するペプチドを含む組成物を対象に有効量投与することを含み、前記アルファヘリックスは、炭素間結合形成反応により形成される架橋により拘束されており、さらに、ペプチドが、クラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する方法を提供する。炭素間結合形成反応は、例えば、メタセシスであってよい。一部の実施形態において、ウイルスは、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、レトロウイルス科、コロナウイルス科、ヘルペスウイルス科、インフルエンザウイルス、シミアンウイルス5、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、マウス肝炎ウイルス、SARSウイルス、およびヒトサイトメガロウイルスの群から選択される。
【0018】
[0013] さらに別の態様において、本発明は、ウイルス感染性の阻害剤であるペプチドを合成する方法であって、クラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を含む前駆体ペプチドを選択する工程と、および炭素間結合の形成を促進する工程とを含み、前記結合形成が、安定な内部拘束アルファ−ヘリックスをもたらす方法を提供する。そのような結合形成は、例えば、非天然の炭素間結合を導入することができる。一実施形態において、結合形成は、メタセシスにより達成される。一部の実施形態において、ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスであり、ペプチドは、gp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはgp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣している。例えば、ペプチドは、式WXXWXXXIXXYXXXI−R4を含むことができ、Xは、任意のアミノ酸であり、R4は、アミノ酸、第三のペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基である。例えば、ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列を含むことができ、配列番号9の残基1〜4にまたがる内部拘束アルファ−ヘリックスを有する。別の実施形態において、ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列を有するgp41 C−ペプチドヘリックスを含む。
【0019】
[0014] 本明細書に記述されているすべての刊行物、特許、および特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に指示されていた場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0020】
[0015] 本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲で詳細に説明される。本発明の特徴および利点に関するより良い理解は、本発明の原理が利用されている例示的実施形態を説明する下記の「発明を実施するための形態」、および添付の図面を参照することにより得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】[0016]図1A−Cは概念図である。図1Aは、HIV−1 gp41コアの6本のヘリックス束を示す。「N」は、N−ペプチド領域を示し、「C」は、C−ペプチド領域を示している。図1Bは、C−ペプチド残基W628、W631、およびI635の、N−ペプチド(PDBコード:1AIK)との相互作用を示す概略図である(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Chanら, "Core Structure of gp41 from the HIV Envelope Glycoprotein," Cell 89:263-73(1997))。図1Cは、C−ペプチドコイルドコイルドメインとN−ペプチドコイルドコイルドメインの間の相互作用を示すヘリックスホイールダイアグラムである。C−ペプチド領域の残基624〜642にまたがる配列(配列番号1)も示されている。
【図2】[0017]図2は、HBSアプローチを図示する概略図である。HBSα−ヘリックスは、iおよびi+4水素結合に代わる炭素間結合を特徴とする。R=アミノ酸側鎖。
【図3】[0018]図3は、XMTWMEWDREINNYT(配列番号2、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス2の概略図である。
【図4】[0019]図4は、XWAAWDKKI(配列番号3、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス3の概略図である。
【図5】[0020]図5は、XAAAWEEWDKKI(配列番号4、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス4の概略図である。
【図6】[0021]図6は、XWAAWDREINNYT(配列番号5、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス5の概略図である。
【図7】[0022]図7は、XMTWEEWDKKIEEYT(配列番号6、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス6の概略図である。
【図8】[0023]図8は、XEMAWEEWDKKIEEYT(配列番号7、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス7の概略図である。
【図9】[0024]図9は、XNEMTWEEWDKKIEEYT(配列番号8、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス8の概略図である。
【図10】[0025]図10は、XMTWEEWDKKIEEYTKKI(配列番号9、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス9の概略図である。
【図11】[0026]図11A−Lは、ペプチド1−12のHPLC解析プロットである。HPLC条件。C18逆相カラム;3分で5%B〜15%B、20分で15%B〜35%B、7分で35%B〜100%B;A:0.1%TFA水溶液、B:アセトニトリル;流速:1.0mL/分;275nmにてモニターした。
【図12】[0027]図12A−Jは、10%TFE/PBS緩衝液中のペプチド1−10のCDスペクトルである。
【図13】[0028]図13は、ペプチド12(すなわち、Suc−MTWMEWDERINNYTCFlu−NH2(配列番号10))の概略図である。
【図14】[0029]図14は、25℃におけるPBS緩衝液中のIZN17とのフルオレセイン標識ペプチド12の飽和結合曲線を示すグラフである。
【図15】[0030]図15は、リガンド結合親和性の関数としての結合プローブ対リガンド濃度の割合を示すグラフである(下の実施例3を参照)。
【図16】[0031]図16Aは、PBS緩衝液中10%TFE中の1、2、5および9の円二色性スペクトルである。図16Bは、蛍光偏光アッセイによるIZN17に対するペプチド結合の決定を示すグラフである。図16Cは、HBSα−ヘリックス9およびペプチド10によるgp41媒介性細胞間融合の阻害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0032] 本発明は、ウイルスのクラスIコイルドコイルアセンブリーの形成を阻害する水素結合サロゲート(「HBS」)由来α−ヘリックスに関する。これらのHBSヘリックスは、ウイルス感染性に関与するクラスI融合タンパク質−タンパク質相互作用のin vivo阻害として機能できる。
【0023】
[0033] 本発明の第一の態様は、1つまたは複数の安定な内部拘束HBSα−ヘリックスを有するペプチドであって、ウイルスのコイルドコイルアセンブリーのクラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣しているペプチドに関する。
【0024】
[0034] 本発明のこの態様のペプチドは、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、レトロウイルス科、コロナウイルス科、ヘルペスウイルス科、インフルエンザウイルス、シミアンウイルス5、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス、HIV−1、ヒトT細胞白血病ウイルス、マウス肝炎ウイルス、SARSウイルス、およびヒトサイトメガロウイルスの群から選択されるウイルスのクラスI C−ペプチドヘリックスまたはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣することができる。
【0025】
[0035] 好ましい実施形態において、本発明のこの態様によるペプチドは、HIV−1 gp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはHIV−1 gp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣している。これらのペプチドは、宿主細胞へのHIV−1の侵入を媒介することが知られているgp41コイルドコイルアセンブリーの形成を妨害すると予想される。
【0026】
[0036] gp41 C−ペプチドヘリックスの一部を模倣している適当なペプチドは、gp41 C−ペプチドヘリックスのWWI領域を模倣しているペプチドを包含する。この領域は、コイルドコイル六量体の形成中に、対応するN−ペプチドヘリックス上の疎水性ポケットと相互作用する。したがって、この領域の人工α−ヘリックス模倣体は、この疎水性領域との結合に関して、天然のgp41 C−ペプチドヘリックスを競合的に妨害すると予想される。同様に、gp41 N−ペプチドヘリックスの一部を模倣している適当なペプチドは、gp41 N−ペプチドヘリックスの疎水性ポケットを模倣しているものを包含する。これらの人工α−ヘリックスは、天然のN−ペプチドヘリックスとの結合に関して、gp41 C−ペプチドヘリックスを競合的に妨害すると予想される。
【0027】
[0037] 一例として、本発明の人工α−ヘリックスは、表1に示すgp41 N−ペプチドおよびC−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣することができる。
【0028】
【表1】
【0029】
[0001] 一般的に、本発明の適当なペプチドは、式
【0030】
【化6】
を包含するものを包含し、
式中、
【0031】
【化7】
は、一重または二重の炭素間結合であり、
【0032】
【化8】
は、一重結合であり、
【0033】
【化9】
が二重結合である場合にシスまたはトランスであり、
nは、1または2であり、
mは、ゼロまたは任意の正の整数であり、
Rは、水素、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり、
R1は、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり、
R2は、アミノ酸、ペプチド、−OR、−CH2NH2、アルキル基、アリール基、水素、または式
【0034】
【化10】
を有する基であり、
R4は、アミノ酸、ペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基であり、R3は、第四のペプチドである。
【0035】
[0038] 一部の実施形態において、R3は、式−WXXWXXXIXXYXXXI(配列番号13)−R4を含むペプチドであり、Xは、任意のアミノ酸である。別の実施形態において、本発明のペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列を包含し、配列番号9の残基1〜4にまたがる内部拘束α−ヘリックス領域を有する。
【0036】
[0039] 当業者には明らかであるように、本発明の方法を使用し、高度に安定化され、内部拘束α−ヘリックスを有するペプチドを調製することができる。拘束は、N末端でなくても、ペプチド内のどの場所にも位置し得る。例えば、本発明の方法に従って調製される化合物は、式
【0037】
【化11】
を有し得る。
【0038】
[0040] 本発明の方法に従って製造されるペプチドは、例えば、15個未満のアミノ酸であってよく、例えば、10個未満のアミノ酸残基を包含する。
【0039】
[0041] 本発明は、1つまたは複数の安定な内部拘束α−ヘリックスを有するペプチドにも関する。1つまたは複数の安定な内部拘束二次構造は、下記のモチーフ
【0040】
【化12】
を包含し、
【0041】
【化13】
は、一重結合または二重結合であり、
【0042】
【化14】
は、一重結合であり、
【0043】
【化15】
が二重結合である場合にシスまたはトランスであり、nは、1または2であり、mは、任意の数である。そのようなモチーフの例は、
【0044】
【化16】
を包含する。
【0045】
[0042] 本発明のHBSα−ヘリックスは、図2に示すように、閉環メタセシス反応を通じてN末端主鎖のiおよびi+4水素結合を炭素間結合で置き換えることにより得られる(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Aroraらによる米国特許第7,202,332号;ChapmanおよびArora, "Optimized Synthesis of Hydrogen-bond Surrogate Helices: Surprising Effects of Microwave Heating on the Activity of Grubbs Catalyst," Org. Lett. 8:5825-8(2006);Chapmanら, "A Highly Stable Short α-Helix Constrained by a Main-chain Hydrogen-bond Surrogate," J. Am. Chem. Soc. 126:12252-3(2004);Dimartinoら, "Solid-phase Synthesis of Hydrogen-bond Surrogate-derived α-Helices," Org. Lett. 7:2389-92(2005))。水素結合サロゲートは、α−ターンを事前組織化し、α−ヘリックス立体配座でペプチド配列を安定化する。HBSα−ヘリックスは、様々な短ペプチド配列から安定なα−ヘリックス立体配座を選ぶことが明らかにされている(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Wangら, "Evaluation of Biologically Relevant Short α-Helices Stabilized by a Main-chain Hydrogen-bond Surrogate," J. Am. Chem. Soc. 128:9248-56(2006))。これらの人工α−ヘリックスは、高い親和性でそれらの予想されるタンパク質受容体を標的とすることができることも明らかにされている(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、もともとはAngew. Chem. 117:6683-7(2005)で公表されたWangら, "Enhanced Metabolic Stability and Protein-binding Properties of Artificial α-Helices Derived from a Hydrogen-bond Surrogate: Application to Bcl-xL," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 44:6525-9(2005))。
【0046】
[0043] 別の態様において、本発明の化合物を調製することは、ペプチド前駆体化合物を提供することおよび安定な内部拘束アルファ−ヘリックスをもたらすために炭素間結合形成を促進することを含む。
【0047】
[0044] 一実施形態において、前駆体は、式
【0048】
【化17】
を有する。
【0049】
[0045] 上の式の化合物は、炭素間結合の形成を促進するのに有効な条件下で反応させることができる。そのような反応は、例えば、メタセシスであってよい。ペプチド模倣体の調製における非天然の炭素間拘束の容易な導入のためのオレフィンメタセシス触媒により示される例外的な官能基許容性は、XおよびYが、スキーム2に示すように、オレフィンメタセシス反応を通じて連結される2個の炭素原子であってもよいことを示唆している(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Hoveydaら, "Ru Complexes Bearing Bidentate Carbenes: From Innocent Curiosity to Uniquely Effective Catalysts for Olefin Metathesis," Org. Biomolec. Chem. 2:8-23(2004);Trnkaら, "The Development of L2X2Tu=CHR Olefin Metathesis Catalysts: An Organometallic Success Story," Accounts Chem. Res. 34:18-29(2001))。
【0050】
[0046] 本発明のこの態様は、例えば、閉環オレフィンメタセシス反応を含み得る。オレフィンメタセシス反応は、2つの二重結合(オレフィン)をカップリングさせ、2つの新たな二重結合を提供する(それらのうちの1つは、典型的には、エチレンガスである)。閉環オレフィンメタセシスは、オレフィンメタセシス反応を利用してマクロサイクルを形成する。この反応において、鎖内の2つの二重結合が連結される。反応は、例えば、式
【0051】
【化18】
のメタセシス触媒で行うことができる。
【0052】
[0047] 他の実施形態において、メタセシス触媒は、式
【0053】
【化19】
である。
【0054】
[0048] メタセシス反応は、例えば、約25℃〜110℃の温度、より好ましくは、約50℃の温度にて行うことができる。
【0055】
[0049] メタセシス反応は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、またはトルエンなどの有機溶媒で行うことができる。
【0056】
[0050] 本明細書に開示されている反応は、例えば、固体支持体上で行うことができる。適当な固体支持体は、粒子、鎖、沈殿物、ゲル、シート、管類、球体、容器、毛細管、パッド、スライス、フィルム、プレート、スライド、ディスク、膜などを包含する。これらの固体支持体は、ポリマー、プラスチック、セラミック、多糖、シリカまたはシリカをベースとする材料、炭素、金属、無機ガラス、膜、またはそれらの複合材料を包含する多種多様な材料から作成することができる。基板は、平らであることが好ましいが、様々な代替表面形状をとることができる。例えば、基板は、その上で合成が起きる高くなったまたは低くなった領域を含有し得る。基板およびその表面は、その上で本明細書に記載されている反応を行うための強固な支持体を形成することが好ましい。他の基板材料は、本開示の再検討により当業者に容易に明らかであろう。
【0057】
[0051] 行われるメタセシス反応は、新たに形成される炭素間結合が二重結合である化合物を初めに与えることができる。続いて、この二重結合を、当技術分野において知られている水素化方法により一重結合に変換することができる。
【0058】
[0052] 本発明の第二の態様は、対象のウイルス感染性を阻害する方法に関する。この方法は、有効な量の、クラスI N−またはC−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣している本発明のペプチドを包含する組成物を対象に投与することを含む。好ましい実施形態において、本発明のこの態様の方法は、対象のHIV感染性を阻害する。この実施形態において、組成物は、gp41 N−ペプチドヘリックスまたはgp41 C−ペプチドヘリックスを模倣している本発明のペプチドを包含する。
【0059】
[0053] 本発明のこの態様に従って感染性を阻害することは、ウイルス伝播の速度および/または程度の任意の減少を指す。このことは、1つの個体から別の個体へのウイルスの伝播を阻害すること、ならびに感染した個体内でのウイルスのさらなる伝播を阻害することを包含するが、これらに限定されるものではない。
【0060】
[0054] 組成物は、ウイルスにすでに感染している個体に(他の個体へのウイルスの伝播を阻害するため、および/または感染した個体内でのウイルスのさらなる伝播を阻害するため)、ならびにウイルスにまだ感染していない個体に(個体へのウイルスの伝播を阻害するため)投与することができる。
【0061】
[0055] 当業者には明らかであるように、投与することは、一般的に知られている方法を使用して行うことができる。
【0062】
[0056] 投与は、対象への全身投与か罹患細胞への標的化投与のどちらかを介して達成することができる。例示的な投与経路は、気管内接種による、吸引、気道滴下、エアゾール化、噴霧化、鼻腔内滴下、経口または経鼻胃滴下、腹腔内注射、血管内注射、局所的に、経皮的に、非経口的に、皮下に、静脈内注射、動脈内注射(肺動脈を介するなど)、筋肉内注射、胸膜内滴下、脳室内に、病巣内に、粘膜(鼻、咽喉、気管支、生殖器、および/または肛門の粘膜など)への塗布により、または持続放出ビヒクルの埋め込みを包含するが、これらに限定されるものではない。
【0063】
[0057] 典型的には、本発明のペプチドは、治療用薬剤および任意の薬学的に許容できる補助剤、担体、賦形剤、および/または安定化剤を包含する医薬製剤として哺乳動物に投与され、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、または乳剤などの固体または液体形態であってよい。組成物は、補助剤、担体および/または賦形剤と一緒に、好ましくは、治療用薬剤約0.01〜約99重量パーセント、より好ましくは、約2〜約60重量パーセントを含有する。そのような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、適当な用量単位が得られるようになっている。
【0064】
[0058] 薬剤を、例えば、不活性な希釈剤と共に、または同化できる食用担体と共に経口投与することができ、または、薬剤を、硬質または軟質のシェルカプセルに入れることができ、または、薬剤を、錠剤に圧縮することができ、または、薬剤を、ダイエット食品と共に直接組み入れることができる。経口治療用投与については、これらの活性化合物を、賦形剤と共に組み入れ、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤などの形態で使用することができる。そのような組成物および調製物は、薬剤少なくとも0.1%を含有するべきである。これらの組成物中の薬剤の割合は、言うまでもなく、変わることがあり、好都合には単位の重量の約2%〜約60%であってよい。そのような治療上有用な組成物中の薬剤の量は、適当な用量が得られるようになっている。
【0065】
[0059] 錠剤、カプセル剤などは、ガムトラガカント、アカシア、トウモロコシデンプン、またはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、またはアルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;およびスクロース、ラクトース、またはサッカリンなどの甘味料を含有することもできる。用量単位形態がカプセルである場合、上のタイプの材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有することができる。
【0066】
[0060] 様々な他の材料が、コーティングとして、または用量単位の物理的形態を改変するために存在し得る。例えば、錠剤は、シェラック、糖、または両方でコーティングすることができる。シロップは、1つまたは複数の活性成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素、およびサクランボまたはオレンジ香料などの矯味剤を含有することができる。
【0067】
[0061] 薬剤は、非経口的に投与することもできる。薬剤の液剤または懸濁剤は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混ぜられた水の中で調製することができる。分散剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、および油中のそれらの混合物の中で調製することもできる。例示的な油は、石油、動物、野菜、または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、または鉱油である。一般に、水、食塩水、水性ブドウ糖および関連する糖溶液、ならびにプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールが、特に注射用液剤にとって、好ましい液体担体である。保存および使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含有する。
【0068】
[0062] 注射用使用に適している医薬形態は、無菌の水性の液剤または分散剤および無菌の注射用の液剤または分散剤をその場で調製するための無菌の散剤を包含する。すべての場合において、形態は、無菌でなければならず、容易な注射針通過性(syringability)が存在する程度まで流動性でなければならない。形態は、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から守られていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、それらの適当な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であってよい。
【0069】
[0063] 本発明のこの態様による薬剤は、エアゾールの形態で気道に直接投与することもできる。エアゾール剤としての使用については、溶液または懸濁液中の本発明の化合物を、従来の補助剤と共に、適当な噴射剤、例えば、プロパン、ブタン、またはイソブタンのような炭化水素噴射剤と一緒に、加圧エアゾール容器内に包装することができる。本発明の材料は、ネブライザーまたはアトマイザーにおけるなどの非加圧形態で投与することもできる。
【0070】
[0064] 本発明の薬剤は、標的組織、例えば、ウイルスによる感染を起こしやすい組織に直接投与することができる。さらにおよび/またはあるいは、薬剤は、標的組織、器官、または細胞への薬剤の移動(および/または標的組織、器官、または細胞による取り込み)を容易にする1個または複数の薬剤と一緒に非標的領域に投与することができる。標的組織は、ウイルスによる感染を受けやすい任意の組織であってよいが、HIV−1感染を阻害する場合に好ましい標的組織は、口、生殖器、および直腸の粘膜を包含する。当業者には明らかであるように、治療用薬剤自体を修飾し、望ましい組織、器官、または細胞への輸送(および、望ましい組織、器官、または細胞による取り込み)を容易にすることができる。
【0071】
[0065] 例示的な送達装置は、ネブライザー、アトマイザー、リポソーム、経皮パッチ、インプラント、埋め込み用または注射用タンパク質デポー組成物、および注射器を包含するが、これらに限定されるものではない。当業者に知られている他の送達系を用い、in vivoで望ましい器官、組織、または細胞への治療用薬剤の望ましい送達を達成し、本発明のこの態様を行うことができる。
【0072】
[0066] 薬剤を送達するための任意の適当なアプローチを利用し、本発明のこの態様を実施することができる。典型的には、薬剤は、標的細胞、組織、または器官へ1つまたは複数の薬剤を送達するビヒクルで患者に投与されるであろう。
【0073】
[0067] 細胞中に薬剤を送達するための1つのアプローチは、リポソームの使用を含む。基本的に、このことは、送達するべき1つまたは複数の薬剤を包含するリポソームを提供し、次いで、細胞、組織、または器官に薬剤を送達するのに有効な条件下で、標的細胞、組織、または器官をリポソームと接触させることを含む。
【0074】
[0068] リポソームは、水相を封入する1または複数の同心円状に並んだ脂質二重層からなる小胞である。それらは、通常は漏出性ではないが、穴または細孔が膜に生じる場合、膜が溶かされるか分解する場合、または膜温度が相転移温度まで増加する場合に漏出性になることがある。リポソームを介する薬物送達の現行方法は、リポソーム担体が、最終的に透過性になり、標的部位において封入された薬物を放出することを必要とする。このことは、例えば、リポソーム二重層が身体内の様々な作用因子の作用を通じて時間と共に分解する受動的様式で達成することができる。あらゆるリポソーム組成物は、循環内または身体内の他の部位において特徴的な半減期を有するはずであり、したがって、リポソーム組成物の半減期を制御することにより、二重層が分解する速度を幾分かは調節することができる。
【0075】
[0069] 受動的薬物放出と対照的に、能動的薬物放出は、リポソーム小胞の透過性変化を誘導する薬剤を使用することを含む。リポソーム膜は、環境がリポソーム膜の近くで酸性になる場合にそれらが不安定化するように構築することができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、WangおよびHuang, "pH-Sensitive Immunoliposomes Mediate Target-cell-specific Delivery and Controlled Expression of a Foreign Gene in Mouse," Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 84:7851-5(1987)を参照)。例えば、リポソームが標的細胞によりエンドサイトーシスされる場合、リポソームは、リポソームを不安定化して薬物放出をもたらす酸性エンドソームに送られることがある。
【0076】
[0070] あるいは、リポソーム膜を、酵素が膜上のコーティングとして置かれるように化学的に修飾することができ、酵素は、リポソームをゆっくりと不安定化する。薬物放出の制御は、膜内に最初に置かれた酵素の濃度に依存することから、薬物放出を調節するか変化させて「オンデマンド」薬物送達を達成するための真に有効な方法はない。同じ問題は、リポソーム小胞が標的細胞と接触するとすぐに、リポソーム小胞が飲み込まれ、pHの低下が薬物放出につながるという点で、pH感受性リポソームについても存在する。
【0077】
[0071] このリポソーム送達系を作成し、能動的標的化を介して標的器官、組織、または細胞に蓄積することができる(例えば、リポソームビヒクルの表面上に抗体またはホルモンを組み入れることにより)。このことは、知られている方法に従って達成することができる。
【0078】
[0072] 様々なタイプのリポソームを、Banghamら、「Diffusion of Univalent Ions Across the Lamellae of Swollen Phospholipids」、J.Mol.Biol.13:238〜52(1965);Hsuによる米国特許第5,653,996号;Leeらによる米国特許第5,643,599号;Hollandらによる米国特許第5,885,613号;DzauおよびKanedaによる米国特許第5,631,237号;およびLoughreyらによる米国特許第5,059,421号に従って調製することができ、それらの各々は、全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0079】
[0073] これらのリポソームは、それらが、本発明の治療用薬剤に加えて、抗炎症剤などの他の治療用薬剤を含有し、次いで、標的部位において放出されるように製造することができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Wolffら, "The Use of Monoclonal Anti-Thy1 IgG1 for the Targeting of Liposomes to AKR-A Cells in Vitro and in Vivo," Biochim. Biophys. Acta 802:259-73(1984))。
【0080】
[0074] タンパク質またはポリペプチド薬剤(例えば、本発明のペプチド)を送達するための代替アプローチは、コンジュゲートしたタンパク質またはポリペプチドの酵素分解を避けるために安定化されたポリマーへの、望ましいタンパク質またはポリペプチドのコンジュゲーションを含む。このタイプのコンジュゲートしたタンパク質またはポリペプチドは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Ekwuribeによる米国特許第5,681,811号に記載されている。
【0081】
[0075] タンパク質またはポリペプチド薬剤を送達するためのさらに別のアプローチは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Heartleinらによる米国特許第5,817,789号によるキメラタンパク質の調製を含む。キメラタンパク質は、リガンドドメインおよびポリペプチド薬剤(例えば、本発明の人工α−ヘリックス)を包含することができる。リガンドドメインは、標的細胞上に位置している受容体に特異的である。したがって、キメラタンパク質が、静脈内に送達されるか、さもなければ血液またはリンパ内に導入される場合、キメラタンパク質は、標的化細胞に吸着し、標的化細胞は、キメラタンパク質を内部移行するであろう。
【0082】
[0076] 投与は、必要なだけ頻繁に、ウイルス感染に対する有効な治療を提供するのに適している期間にわたって行うことができる。例えば、投与は、単一の持続放出用量製剤または複数の1日投与量で行うことができる。投与は、ウイルスへの対象の暴露前、暴露と同時に、および/または暴露後に行うことができる。
【0083】
[0077] 投与すべき量は、治療レジメンに応じて変わることは言うまでもない。一般的に、薬剤は、ウイルスの感染性の低下に有効な量(すなわち、治療上有効な量)を達成するために投与される。したがって、治療上有効な量は、対象へのウイルスの伝播、または対象内でのウイルスの蔓延を少なくとも部分的に防ぐことが可能である量であってよい。有効量を得るのに必要とされる投与量は、薬剤、製剤、ウイルス、および薬剤が投与される個体に応じて変わることがある。
【0084】
[0078] 有効量の決定は、in vivoで必要とされる濃度を計算するために、様々な投与量の薬剤を培養液中の細胞に投与し、感染性を阻害するのに有効な薬剤の濃度を決定する、in vitroアッセイを含むこともできる。治療上有効な量は、当業者により経験的に決定することができる。
【実施例】
【0085】
(実施例1)
ペプチド1〜11の合成およびペプチド1〜12の特徴付け。
[0079] ペプチド1〜11は、スキーム1に示すように合成した。ペプチド1(すなわち、AcMTWMEWDREINNYT−NH2(配列番号14))、10(すなわち、AcMTWEEWDKKIEEYTKKI−NH2(配列番号15))、および11(すなわち、ペプチドIZN17、AcIKKEIEAIKKEQEAIKKKIEAIEKLLQLTVWGIKQLQARIL−NH2(配列番号16))、ならびに樹脂に結合したビス−オレフィン(17)は、従来のFmoc固相化学反応により、N(アリル)−ジペプチド13〜16および4−ペンテン酸の適切な置換により、0.05〜0.15mmolスケールで、RinkアミドHMBA樹脂(NovaBiochem)上で合成した。各カップリング工程において、Fmoc基は、NMP中20%ピペリジンによる処理(2×20分)により除去した。配列中の次のFmocアミノ酸(4当量)を、15分にわたって5%DIPEA/NMP溶液中でHBTU(3.6当量)によって活性化し、遊離アミンを持つ樹脂に加えた。得られた混合物を60分にわたって振盪させた。各工程についてのカップリング効率は、ニンヒドリン試験によりモニターした。ペプチドが樹脂上に構築された後、樹脂を、それぞれDMF、メタノール、およびジクロロメタンで洗浄し、一夜にわたって真空下で乾燥した。
【0086】
【化20】
【0087】
[0080] 樹脂に結合したビス−オレフィン(17)におけるマイクロ波支援閉環メタセシス反応は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、ChapmanおよびArora、「Optimized Synthesis of Hydrogen−bond Surrogate Helices:Surprising Effects of Microwave Heating on the Activity of Grubbs Catalysts」、Org.Lett.8:5825〜8(2006)に記載されているように、ジクロロエタン中でHoveyda−Grubbs触媒(0.15当量)を用いて行った。以下の設定:250Wの最大電力、120℃、5分のランプ時間、および10分のホールド時間で反応混合物に照射した。樹脂に結合したペプチドを、1.5時間にわたって切断カクテル(CF3CO2H:H2O:トリイソプロピルシラン、95:2.5:2.5)で処理することにより樹脂から切断し、逆相HPLCにより精製すると、図3〜10に示すHBSα−ヘリックス2〜9が得られた。ペプチド1〜12についてのHPLCプロットを図11A〜Lに示す。
【0088】
[0081] ペプチド1〜12を、液体クロマトグラフィー−質量分析法(「LCMS」)を使用して調べた。LCMSデータは、Agilent1100シリーズで得た。LCMS結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
(実施例2)
ペプチド1〜10の円二色性分光法。
[0082] CDスペクトルは、1mm長のセルを使用する温度調節器を備えたAVIV 202SF CD分光計および5nm/分のスキャン速度で記録した。スペクトルを、試料についての条件と類似した条件から減算されたベースラインで10回のスキャンを平均した。試料は、50〜100μMの最終ペプチド濃度で、10%トリフルオロエタノールを含有する0.1×リン酸緩衝食塩水(13.7mM NaCl、1mMホスフェート、0.27mM KCl、pH7.4)中で調製した。折り畳まれていないペプチドの濃度は、6.0Mグアニジン塩酸塩水溶液中の276nmにおけるチロシン残基のUV吸収により決定した。各ペプチドのヘリックス含有量は、アミノ酸の数について補正された222nmにおける平均残基CD、[θ]222(deg cm2 dmol-1)から決定した。らせん度パーセントは、比[θ]222/[θ]max([θ]max=(−44000+250T)(1−k/n)、k=4.0およびn=残基の数)から計算した。HBSヘリックスについてのθmax計算に関する詳細については、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Wangら、「Evaluation of Biologically Relevant Short α−Helices Stabilized by a Main−chain Hydrogen−bond Surrogate」、J.Am.Chem.Soc.128:9248〜56(2006)を参照されたい。ペプチド1〜10についてのCDスペクトルを図12A〜Jに示す。
【0091】
(実施例3)
IZN17に対するペプチド12の親和性。
[0083] IZN17(すなわち、ペプチド11)に対するペプチド1〜10の相対的親和性を、図13に示すようなフルオレセイン標識ペプチド12による蛍光偏光をベースとする競合的結合アッセイ(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、EckertおよびKim, "Design of Potent Inhibitors of HIV-1 Entry from the gp41 N-Peptide Region," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 98:11187-92(2001);Stephensら, "Inhibiting HIV Fusion with a β-Peptide Foldamer," J. Am. Chem. Soc. 127:13126-7(2005))を使用して決定した。図14は、25℃におけるPBS緩衝液中のIZN17に対するフルオレセイン標識ペプチド12の飽和結合曲線を示すグラフである。
【0092】
[0084] すべての試料は、0.1%プルロニックF−68(Sigma)を含む1×リン酸緩衝食塩水(137mM NaCl、10mMホスフェート、2.7mM KCl、pH7.4)中の96ウェルプレートで調製した。25μM IZN17および15nMフルオレセイン標識ペプチド12の溶液を25℃にてインキュベートした。1時間後、適切な濃度(10nM〜500μM)のアンタゴニスト(ペプチド1〜10)を加えた。インキュベーション溶液の総容積は、60μLとした。1時間後、解離した蛍光プローブ12の量を、それぞれ485および525nmの励起波長および発光波長で、25℃にてDTX880 Multimode Detector(Beckman)を使用して決定した。
【0093】
[0085] 各ペプチドについて表3に報告されている結合親和性(KD)値(実施例6を参照)は、3〜5個の個別測定値の平均であり、実験データを、GraphPad Prism 4.0上のシグモイド用量反応非線形回帰モデルにフィットさせることにより決定した。
【0094】
[0086] この競合的結合アッセイは、蛍光プローブの結合値よりもかなり低いKd値を正確に推定することはできないことに留意されたい。図15は、リガンド結合親和性の関数としての結合したプローブの割合対リガンド濃度のグラフを示している。5μMのKd未満では曲線間の間隔が狭くなっており、これは、このアッセイの限界を描き出している。
【0095】
(実施例4)
細胞間融合阻害アッセイ。
[0087] 細胞間融合(すなわち、融合細胞形成)は、様々な濃度のペプチド1〜10の存在下で、HXB2エンベロープおよびtatを発現するCHO[HIVe](クローン7d2)細胞をU373−MAGI細胞(M.EmermanおよびA.Geballe、National Institutes of Health AIDS Research and Reference Reagent Program)と共培養することによりアッセイした。細胞融合は、U373−MAGI指標細胞系からの核β−ガラクトシダーゼの発現を可能にし、β−ガラクトシダーゼ活性をモニターすることにより定量化することができる。共培養後の37℃における一夜にわたるインキュベーション後、β−ガラクトシダーゼ酵素活性を、Mammalianβ−ガラクトシダーゼChemiluminescent Assay Kit(Applied BiosystemsからのGal−Screen)で測定した。活性が、ペプチド阻害剤を欠く対照試料に比べて50%低下するペプチド阻害剤濃度(IC50)は、Prismプログラムを使用して可変勾配シグモイド(variable-slope-sigmoid)式にデータをフィットさせることにより計算した。
【0096】
(実施例5)
U373−MAGIに対するペプチドの細胞傷害性。
[0088] U373−MAGI細胞に対するペプチド1〜10の細胞傷害効果を、6日にわたって一連の希釈阻害剤の存在下で測定し、細胞生存度を、MTTアッセイ(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Mosmann, "Rapid Colorimetric Assay for Cellular Growth and Survival: Application to Proliferation and Cytotoxicity Assays," J. Immunol. Meth. 65:55-63(1983))で定量化した。200μMまでの濃度のペプチドについて、細胞傷害性は観察されなかった。
【0097】
(実施例6)
ペプチド設計。
[0089] 本発明のgp41標的化試験は、表3に示すように、残基W628、W631、およびI635を含有するgp41に由来する14残基C−ペプチド(1)を模倣することにより開始した。この配列は、その結晶構造(図1Bに示す)に基づいてgp41疎水性ポケットと結合すると予想されるが(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Chanら, "Core Structure of gp41 from the HIV Envelope Glycoprotein," Cell 89:263-73(1997))、細胞間融合アッセイでは効果がないことが以前に明らかにされている(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9 (2002))。
【0098】
【表3】
【0099】
[0090] 前に記載されている蛍光偏光アッセイを利用し、残基W628、W631、およびI635のための結合部位を含有するgp41 N末端3本鎖コイルドコイルの安定なモデルであるIZN17への、非拘束ペプチドおよびHBSヘリックスのin vitro結合親和性を決定した(上の実施例3を参照)(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、EckertおよびKim, "Design of Potent Inhibitors of HIV-1 Entry from the gp41 N-Peptide Region," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 98:11187-92(2001))。gp41の残基628〜641を含有するフルオレセイン標識C−ペプチド誘導体(すなわち、Suc−MTWMEWDREINNYTCFlu(配列番号10);ペプチド12)をプローブとして使用した。HBSヘリックスによるこのプローブの競合的置換は、表3および図16Bに示す各ペプチドについてのKd値を与えた(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Stephensら, "Inhibiting HIV Fusion with a β-Peptide Foldamer," J. Am. Chem. Soc. 127:13126-7(2005))。ペプチド12は、24μMのKd値でIZN17と結合し、前に報告された値の範囲内であった(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9(2002);Stephensら, "Inhibiting HIV Fusion with a β-Peptide Foldamer," J. Am. Chem. Soc. 127:13126-7(2005))。競合アッセイは、ペプチド1について37μMの結合親和性を提供し、報告されている値の範囲内であったが、ペプチドの凝集は、正確なKd値を得ることを困難にした。
【0100】
[0091] 円二色性分光法(上の実施例2を参照)は、1が、PBS緩衝液中10%トリフルオロエタノール(「TFE」)中で構造化されていないか極めて弱いヘリックスであることを示唆した(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9(2002))。HBSアプローチによるヘリックス立体配座におけるこのペプチドの安定化は、そのらせん度およびIZN17に対する親和性を高めることが推測された。HBSα−ヘリックス2は、図16Aに示すように、1よりもおおよそ4倍ヘリックスであるが、表3に示すように、高い親和性で標的タンパク質と結合しなかった。このことは、ペプチドのらせん度と標的に対するその結合親和性との間に複雑な相互作用があることを示唆している(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Martin, "Preorganization in Biological Systems: Are Conformational Constraints Worth the Energy?," Pure Appl. Chem. 79:193-200(2007);もともとはAngew. Chem. 118:6984-9(2006)で公表されたBenfieldら, "Ligand Preorganization May Be Accompanied by Entropic Penalties in Protein-ligand Interactions," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 45:6830-5(2006))。短ペプチドおよび拘束ヘリックスによる結果は、Kimおよび共同研究者(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9(2002))により観察された結果を映しており、高い親和性でIZN17と結合する配列を同定するためのHBSα−ヘリックスの小ライブラリーの設計を促した。これらのHBSヘリックスの代表的選択(すなわち、ペプチド2〜9)を表3に示す。
【0101】
[0092] 水溶液における短C−ペプチドの制限された溶解性は、それらの不活性についての重要な理由として提案されてきた(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、もともとはAngew. Chem. 114:3061-4(2002)で公表されたOtakaら, "Remodeling of gp41-C34 Peptide Leads to Highly Effective Inhibitors of the Fusion of HIV-1 with Target Cells," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 41:2937-40(2002))。拘束C−ペプチドの溶解性およびらせん度を改善するため、IZN17との結合に関与することが予想されない位置に荷電残基が組み入れられた(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、もともとはAngew. Chem. 114:3061-4(2002)で公表されたOtakaら, "Remodeling of gp41-C34 Peptide Leads to Highly Effective Inhibitors of the Fusion of HIV-1 with Target Cells," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 41:2937-40(2002))。HBSα−ヘリックス3は、結合に必要なTrp/Trp/Ileモチーフを含有するように設計された最短のペプチドである。2個のリシン残基をこの配列内に加え、ペプチドの溶解性を改善した。HBSα−ヘリックス4は、HBS拘束の潜在的立体効果を探索するために拘束の外側にTrp/Trp/Ileモチーフが位置するように設計した。潜在的塩−架橋相互作用を通じてα−ヘリックス立体配座をさらに安定化するために、一対のグルタミン酸およびリシン残基がiおよびi+4位に置かれた(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、MarquseeおよびBaldwin, "Helix Stabilization by Glu-…Lys+ Salt Bridges in Short Peptides of de Novo Design," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 84:8898-902(1987);Shiら, "Stabilization of α-Helix Structure by Polar Side-chain Interactions: Complex Salt Bridges, Cation-pi Interactions, and C-H Em Leader O H-bonds," Biopolymers 60:366-80(2001))。これらの2つのHBSヘリックスのどちらもIZN17と結合せず、コイルドコイル複合体を標的とするには、より多くの接触点が必要であることを示唆していた。HBSα−ヘリックス5は、Trp/Trp/Ile残基に加えて、チロシン−638を含有する。Tyr−638は、ヘプタッド中のd位を占有し、図1Cに示すように、N末端3本鎖コイルドコイルに直接接触することが予想される。HBSα−ヘリックス5の配列は、親化合物1および2の配列と類似しているが、N末端のメチオニン−626およびスレオニン−627残基を失っている。この化合物も、IZN17に対して無視できる親和性を示し、これが意外だったのは、5は、2について観察されたのと同様の親和性でIZN17と結合すると予想されていたからである。CD分光法は、2および5が、図16Aに示すように、同等にヘリックスを有することを示唆している。2と比べて5の低い結合親和性は、図1Cに示すように、ヘプタッド中のg位を占有し、結合に対して有意に寄与するとは予測されなかったスレオニン−627の潜在的役割を浮き彫りにしている。Met−626およびThr−627残基の再導入ならびに結合に関与することが予想されない位置における荷電残基の組み入れは、親HBSα−ヘリックス2よりも高い親和性でIZN17と結合するHBSα−ヘリックス6を提供した。HBSヘリックスの結合におけるThr−627の役割も、この残基がアラニン残基で置き換えられているHBSα−ヘリックス7により浮き彫りにされた。HBSα−ヘリックス7は、6よりも20倍低い親和性でIZN17と結合した。
【0102】
[0093] ヘリックスマクロダイポールを潜在的に安定化するために、HBSα−ヘリックス7および8のN末端にグルタミン酸残基を置いた。しかしながら、この残基の組み入れは、これらのペプチドの結合親和性に影響を及ぼさなかった。
【0103】
[0094] HBSα−ヘリックス8および9を調製し、アミノおよびカルボキシ末端上の追加接触点(ヘプタッド中のaまたはd位を占有する残基)の効果を探求した。HBSα−ヘリックス8と9は共に、ヘプタッド中のaまたはd位を占有する5個の残基からなり、<5μMのKd値でIZN17と結合する。8および9についての値が、本IZN17アッセイにおける上限に相当するのは、競合的結合分析が、蛍光プローブの結合親和性よりかなり低いKd値を正確に推定することができないからである(上の実施例3を参照)(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Roehrlら, "A General Framework for Development and Data Analysis of Competitive High-throughput Screens for Small-molecule Inhibitors of Protein-protein Interactions by Fluorescence Polarization," Biochemistry 43:16056-66(2004))。IZN17アッセイは、最良のHBSヘリックスについての正確な値を提供しなかったが、本明細書に記載されている様々な構築物の定性的評価を可能にした。IZN17結合アッセイとgp41媒介性細胞間融合アッセイの組合せは、HIV融合の阻害剤としてのHBSヘリックスの有効性の優れた尺度を提供すると判断された(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Eckertら, "Inhibiting HIV-1 Entry: Discovery of D-Peptide Inhibitors That Target the gp41 Coiled-coil Pocket," Cell 99:103-15(1999))。
【0104】
[0095] 細胞間融合(すなわち、融合細胞形成)を、様々な濃度のペプチド阻害剤の存在下で、HXB2エンベロープおよびtatを発現するCHO[HIVe](クローン7d2)細胞(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Kozarskyら, "Glycosylation and Processing of the Human Immunodeficiency Virus Type 1 Envelope Protein," J. Acquir. Immune Defic. Syndr. 2:163-9(1989))をU373−MAGI細胞と共培養することによりアッセイした。細胞融合は、U373−MAGI指標細胞系からの核β−ガラクトシダーゼの発現を可能にし、β−ガラクトシダーゼ活性をモニターすることにより定量化することができる。
【0105】
[0096] 短ペプチドによるgp41媒介性細胞融合の阻害は、困難な妙技であり、ほんの一握りの合成ペプチドで行われてきたに過ぎない(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9(2002);Stephensら, "Inhibiting HIV Fusion with a β-Peptide Foldamer," J. Am. Chem. Soc. 127:13126-7(2005);Eckertら, "Inhibiting HIV-1 Entry: Discovery of D-Peptide Inhibitors That Target the gp41 Coiled-coil Pocket," Cell 99:103-15(1999))。HBSα−ヘリックス9のみが、図16Cに示すように、43μMのEC50値で細胞融合を阻害することが分かった。この値は、側鎖で拘束α−ヘリックス(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9(2002))、環状D−ペプチド(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Eckertら, "Inhibiting HIV-1 Entry: Discovery of D-Peptide Inhibitors That Target the gp41 Coiled-coil Pocket," Cell 99:103-15(1999))、芳香族フォルダマー(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、もともとはAngew. Chem. 114:282-91(2002)で公表されたErnstら, "Design of a Protein Surface Antagonist Based on α-Helix Mimicry: Inhibition of gp41 Assembly and Viral Fusion," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 41:278-81(2002))、およびβ−ペプチドフォルダマー(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Stephensら, "Inhibiting HIV Fusion with a β-Peptide Foldamer," J. Am. Chem. Soc. 127:13126-7(2005))について測定されたものに匹敵する。他のHBSα−ヘリックス(2〜8)は、200μMまでの濃度において細胞融合阻害のいかなる気配も提供しなかった。9と類似した親和性でIZN17と結合した拘束されていないペプチド10は、細胞培養アッセイにおいて無効のままであった。α−ヘリックス立体配座におけるペプチドの安定化が、プロテアーゼに対するそれらの抵抗性を増強することが予想されることから(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Tyndallら, "Proteases Universally Recognize β Strands in Their Active Sites," Chem. Rev. 105:973-99(2005))、この結果は、拘束されていないペプチドのタンパク質分解不安定性を反映している可能性がある。それらの拘束されていない対応物と比較したHBSα−ヘリックスのタンパク質分解安定性の改善は、以前に報告されている(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、もともとはAngew. Chem. 117:6683-7(2005)で公表されたWangら, "Enhanced Metabolic Stability and Protein-binding Properties of Artificial α-Helices Derived from a Hydrogen-bond Surrogate: Application to Bcl-xL," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 44:6525-9(2005))。
【0106】
[0097] 要約すると、合理的な設計および合成を通じて、gp−41媒介性細胞融合を阻害する人工α−ヘリックス(9)を開発した。コイルドコイルアセンブリーの形成は、いくつかのクラスのウイルスのそれらの宿主細胞との融合にとっての必要条件であることから(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dimitrov, "Virus Entry: Molecular Mechanisms and Biomedical Applications," Nat. Rev. Microbiol. 2:109-22(2004))、この仕事は、HBSヘリックスが、これらのウイルスに対する小分子阻害剤または抗原を作製するための有効な足場であることを示唆している(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Englishら, "Rational Development of β-Peptide Inhibitors of Human Cytomegalovirus Entry," J. Biol. Chem. 281:2661-7 (2006);Shepherdら, "Modular α-Helical Mimetics with Antiviral Activity Against Respiratory Syncitial Virus," J. Am. Chem. Soc. 128:13284-9 (2006))。
【0107】
[0098] 本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し記載してきたが、そのような実施形態がほんの一例として提供されていることは当業者には明白であろう。多くの変形形態、変更形態、および置換形態が、本発明を逸脱することなく当業者に思いつくであろう。本発明を実施するにあたって、本明細書に記載されている本発明の実施形態の様々な代替策を用いることができることが理解されるべきである。下記の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義しており、これらの特許請求項の範囲内の方法および構造ならびに均等物は、それらによりカバーされることが意図されている。
【技術分野】
【0001】
[0001] 本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2007年12月31日出願の米国仮出願第61/018,118号の利益を主張するものである。
【0002】
[0002] 本発明は、いずれもNIH(National Institutes of Health)により与えられた助成金番号GM073943およびAI42382の下で政府の援助によってなされた。政府は、本発明における特定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
[0003] エンベロープを持ったウイルスは、宿主細胞へウイルスの遺伝物質を送達し、それによって宿主細胞への感染を開始することを、ウイルス膜(具体的なウイルスに応じて、原形質膜または細胞内膜)と宿主細胞膜の間の融合に依存している(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006))。この膜融合反応は、ウイルス膜融合タンパク質に依存している(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006))。少なくとも2つのクラスの膜融合タンパク質が同定されている(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006))。クラスI融合タンパク質は、疎水性「融合ペプチド」領域と膜貫通ドメインの間に、N末端ヘプタッド領域およびC末端ヘプタッド領域と呼ばれる2つのヘプタッド反復領域を含有する(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612(2000))。膜融合の間に、これらのヘプタッド反復領域は、極めて安定なコイルドコイルアセンブリーを最終的に選び、その中では、N末端ヘプタッド反復領域が、C末端ヘプタッド反復領域からのヘリックスにより支えられている内部三量体コイルドコイルを形成する(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612(2000))。このコイルドコイルアセンブリーの形成を阻害する薬剤は、ウイルス−宿主細胞膜融合を防ぎ、それによって、新たな宿主細胞の感染を阻害することができる。
【0004】
[0004] ウイルス感染性のためにクラスIコイルドコイルアセンブリーを使用するウイルスは、オルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)、例えば、インフルエンザウイルス(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612 2000);KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006));パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、例えば、シミアンウイルス(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612(2000);KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006))および呼吸器合胞体ウイルス(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612(2000);Shepherdら, "Modular α-Helical Mimetics with Antiviral Activity Against Respiratory Syncitial Virus," J. Am. Chem. Soc. 128:13284-9(2006));フィロウイルス科(Filoviridae)、例えば、エボラウイルス(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612(2000);KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006));レトロウイルス科(Retroviridae)、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(「HIV-1」)、およびヒトT細胞白血病ウイルス(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dutchら, "Virus Membrane Fusion Proteins: Biological Machines That Undergo a Metamorphosis," Biosci. Rep. 20(6):597-612(2000);KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006));コロナウイルス科(Coronaviridae)、例えば、マウス肝炎ウイルスおよびSARSウイルス(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、KielianおよびRay, "Virus Membrane-fusion Proteins: More Than One Way to Make a Hairpin," Nat. Rev. 4:67-76(2006));およびヘルペスウイルス科(Herpesviridae)、例えば、ヒトサイトメガロウイルス(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Englishら, "Rational Development of β-Peptide Inhibitors of Human Cytomegalovirus Entry," J. Biol. Chem. 281:2661-7(2006))を包含する。
【0005】
[0005] HIV−1は、クラスI融合タンパク質を使用するウイルスの例である。HIVは、免疫系の破壊および生命にかかわる日和見感染を撃退できないことを特徴とする致命的疾患である後天性免疫不全症候群(「AIDS」)の原因である病原因子として同定されている。最近の統計は、世界中で3300万もの人々がこのウイルスに感染していることを示している(AIDS EPIDEMIC UPDATE at 1, United Nations Programme on HIV/AIDS(Dec. 2007))。すでに感染している多数の個体に加えて、ウイルスは広がり続けている。2007年からの推定値は、その年だけで250万に近い新たな感染を指摘している(AIDS EPIDEMIC UPDATE at 1, United Nations Programme on HIV/AIDS(Dec. 2007))。同年には、HIVおよびAIDSに関係するおよそ210万の死亡があった(AIDS EPIDEMIC UPDATE at 1, United Nations Programme on HIV/AIDS(Dec. 2007))。
【0006】
[0006] 感染を確立するためのその標的細胞へのHIV−1の侵入は、ウイルスのエンベロープ糖タンパク質(「Env」)および細胞表面受容体(CD4およびCXCR4またはCCR5などの共受容体)により媒介される(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、EckertおよびKim, "Mechanisms of Viral Membrane Fusion and Its Inhibition," Annu. Rev. Biochem. 70:777-810(2001))。成熟Env複合体は、3つのgp120糖タンパク質が3つのウイルス膜固定型gp41サブユニットと非共有結合的に会合している三量体である。細胞受容体とのgp120/gp41の結合は、gp41における一連の立体配座の変化を引き起こし、融合後ヘアピン三量体構造の形成および膜融合に最終的につながる(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Chanら, "Core Structure of gp41 from the HIV Envelope Glycoprotein," Cell 89:263-73(1997);Weissenhornら, "Atomic Structure of the Ectodomain from HIV-1 gp41," Nature 387:426-30(1997);Tanら, "Atomic Structure of a Thermostable Subdomain of HIV-1 gp41," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 94:12303-8(1997))。図1Aおよび1Cに示すように、融合後ヘアピン三量体構造のコアは、6本のα−ヘリックスの束であり、3本のN−ペプチドヘリックスは、内部の平行なコイルドコイル三量体を形成し、一方、3本のC−ペプチドヘリックスは、コイルドコイル表面上の疎水性の溝の中に逆平行に詰まっている(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Chanら, "Core Structure of gp41 from the HIV Envelope Glycoprotein," Cell 89:263-73(1997);Weissenhornら, "Atomic Structure of the Ectodomain from HIV-1 gp41," Nature 387:426-30(1997);Tanら, "Atomic Structure of a Thermostable Subdomain of HIV-1 gp41," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 94:12303-8(1997))。N−ペプチド領域は、図1Bに示すように、C−ペプチド残基W628、W631、およびI635の標的にされる疎水性ポケットを特徴とする(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Chanら, "Evidence That a Prominent Cavity in the Coiled Coil of HIV Type 1 gp41 Is an Attractive Drug Target," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 95:15613-7(1998))。gp41コイルドコイル六量体の形成を妨害する薬剤は、ワクチンおよび薬品開発の第一標的である(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dengら, "Protein Design of a Bacterially Expressed HIV-1 gp41 Fusion Inhibitor," Biochem. 46:4360-9(2007))。N末端疎水性ポケットと結合し、6本のヘリックス束の形成を阻害するペプチドおよび合成分子は、gp41媒介性HIV融合を効果的に阻害することが明らかにされている(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Wildら, "Peptides Corresponding to a Predictive α-Helical Domain of Human Immunodeficiency Virus Type 1 gp41 Are Potent Inhibitors of Virus Infection," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 91:9770-4(1994);Ferrerら, "Selection of gp41-mediated HIV-1 Cell Entry Inhibitors from Biased Combinatorial Libraries of Non-natural Binding Elements," Nat. Struct. Biol. 6:953-60(1999);Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9(2002);もともとはAngew. Chem. 114:282-91(2002)で公表されたErnstら, "Design of a Protein Surface Antagonist Based onα-Helix Mimicry: Inhibition of gp41 Assembly and Viral Fusion," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 41:278-81(2002);Freyら, "Small Molecules That Bind the Inner Core of gp41 and Inhibit HIV Envelope-mediated Fusion," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 103:13938-43(2006);Stephensら, "Inhibiting HIV Fusion with a β-Peptide Foldamer," J. Am. Chem. Soc. 127:13126-7(2005);Dengら, "Protein Design of a Bacterially Expressed HIV-1 gp41 Fusion Inhibitor," Biochem. 46:4360-9(2007))。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007] しかしながら、すべての患者が既存の療法に応答するとは限らず、ウイルスは、すべてではないが、大部分の公知の薬剤に対して耐性を発現しつつある。したがって、クラスI融合タンパク質を使用するHIVおよび他のウイルスに対する新たな抗ウイルス剤が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008] 本発明の第一の態様は、1つまたは複数の安定な内部拘束されている(internally-constrained)水素結合サロゲート(「HBS」)α−ヘリックスを有するペプチドであって、ウイルスのコイルドコイルアセンブリーのC−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはN−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣しているペプチドに関する。一実施形態において、本発明は、安定な内部拘束アルファ−ヘリックスを有するペプチドであって、前記アルファヘリックスは、炭素間結合形成反応により形成される架橋により拘束されており、さらに、該ペプチドが、クラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣し、ウイルス感染性の阻害剤であるペプチドを提供する。炭素間結合形成反応は、例えば、メタセシスであってよい。他の実施形態において、クラスI C−ペプチドヘリックスまたはクラスI N−ペプチドヘリックスは、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、レトロウイルス科、コロナウイルス科、ヘルペスウイルス科、インフルエンザウイルス、シミアンウイルス5、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、マウス肝炎ウイルス、SARSウイルス、およびヒトサイトメガロウイルスの群から選択されるウイルスに由来する。例えば、ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスである。本発明のペプチドは、gp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはgp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣することができる。一実施形態において、ペプチドは、gp41C−ペプチドヘリックスのWWI領域などのgp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する。
【0009】
[0009] 別の実施形態において、本発明のペプチドまたは本発明の方法で使用するためのペプチドは、式
【0010】
【化1】
を含み、
式中、
【0011】
【化2】
は、一重または二重の炭素間結合であり;
【0012】
【化3】
は、一重結合であって、
【0013】
【化4】
が二重結合である場合にシスまたはトランスであり;
nは、1または2であり;
mは、ゼロまたは任意の正の整数であり;
Rは、水素、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R1は、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R2は、アミノ酸、第二のペプチド、−OR、−CH2NH2、アルキル基、アリール基、水素、または式
【0014】
【化5】
を有する基であり;
R4は、アミノ酸、第三のペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基であり;
R3は、第四のペプチドである。R3は、例えば、式−WXXWXXXIXXYXXXI−R4(Xは、任意のアミノ酸である)を含むことができる。
【0015】
[0010] ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列を含むことができ、配列番号9の残基1〜4にまたがる内部拘束アルファ−ヘリックスを有することができる。他の実施形態において、gp41 C−ペプチドヘリックスは、配列番号11のアミノ酸配列を有する。あるいは、ペプチドは、gp41 N−ペプチドヘリックスの疎水性ポケットなどのgp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する。gp41 N−ペプチドヘリックスは、例えば、配列番号12のアミノ酸配列を有することができる。
【0016】
[0011] 本発明は、本発明のペプチドおよび薬学的に許容できるビヒクルを含む医薬組成物も提供する。
【0017】
[0012] 別の態様において、本発明は、対象においてウイルスの感染性を阻害する方法であって、安定な内部拘束アルファ−ヘリックスを有するペプチドを含む組成物を対象に有効量投与することを含み、前記アルファヘリックスは、炭素間結合形成反応により形成される架橋により拘束されており、さらに、ペプチドが、クラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する方法を提供する。炭素間結合形成反応は、例えば、メタセシスであってよい。一部の実施形態において、ウイルスは、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、レトロウイルス科、コロナウイルス科、ヘルペスウイルス科、インフルエンザウイルス、シミアンウイルス5、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、マウス肝炎ウイルス、SARSウイルス、およびヒトサイトメガロウイルスの群から選択される。
【0018】
[0013] さらに別の態様において、本発明は、ウイルス感染性の阻害剤であるペプチドを合成する方法であって、クラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を含む前駆体ペプチドを選択する工程と、および炭素間結合の形成を促進する工程とを含み、前記結合形成が、安定な内部拘束アルファ−ヘリックスをもたらす方法を提供する。そのような結合形成は、例えば、非天然の炭素間結合を導入することができる。一実施形態において、結合形成は、メタセシスにより達成される。一部の実施形態において、ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスであり、ペプチドは、gp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはgp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣している。例えば、ペプチドは、式WXXWXXXIXXYXXXI−R4を含むことができ、Xは、任意のアミノ酸であり、R4は、アミノ酸、第三のペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基である。例えば、ペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列を含むことができ、配列番号9の残基1〜4にまたがる内部拘束アルファ−ヘリックスを有する。別の実施形態において、ペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列を有するgp41 C−ペプチドヘリックスを含む。
【0019】
[0014] 本明細書に記述されているすべての刊行物、特許、および特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に指示されていた場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0020】
[0015] 本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲で詳細に説明される。本発明の特徴および利点に関するより良い理解は、本発明の原理が利用されている例示的実施形態を説明する下記の「発明を実施するための形態」、および添付の図面を参照することにより得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】[0016]図1A−Cは概念図である。図1Aは、HIV−1 gp41コアの6本のヘリックス束を示す。「N」は、N−ペプチド領域を示し、「C」は、C−ペプチド領域を示している。図1Bは、C−ペプチド残基W628、W631、およびI635の、N−ペプチド(PDBコード:1AIK)との相互作用を示す概略図である(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Chanら, "Core Structure of gp41 from the HIV Envelope Glycoprotein," Cell 89:263-73(1997))。図1Cは、C−ペプチドコイルドコイルドメインとN−ペプチドコイルドコイルドメインの間の相互作用を示すヘリックスホイールダイアグラムである。C−ペプチド領域の残基624〜642にまたがる配列(配列番号1)も示されている。
【図2】[0017]図2は、HBSアプローチを図示する概略図である。HBSα−ヘリックスは、iおよびi+4水素結合に代わる炭素間結合を特徴とする。R=アミノ酸側鎖。
【図3】[0018]図3は、XMTWMEWDREINNYT(配列番号2、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス2の概略図である。
【図4】[0019]図4は、XWAAWDKKI(配列番号3、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス3の概略図である。
【図5】[0020]図5は、XAAAWEEWDKKI(配列番号4、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス4の概略図である。
【図6】[0021]図6は、XWAAWDREINNYT(配列番号5、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス5の概略図である。
【図7】[0022]図7は、XMTWEEWDKKIEEYT(配列番号6、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス6の概略図である。
【図8】[0023]図8は、XEMAWEEWDKKIEEYT(配列番号7、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス7の概略図である。
【図9】[0024]図9は、XNEMTWEEWDKKIEEYT(配列番号8、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス8の概略図である。
【図10】[0025]図10は、XMTWEEWDKKIEEYTKKI(配列番号9、Xは、ペンテン酸残基である)のアミノ酸配列を有するHBSα−ヘリックス9の概略図である。
【図11】[0026]図11A−Lは、ペプチド1−12のHPLC解析プロットである。HPLC条件。C18逆相カラム;3分で5%B〜15%B、20分で15%B〜35%B、7分で35%B〜100%B;A:0.1%TFA水溶液、B:アセトニトリル;流速:1.0mL/分;275nmにてモニターした。
【図12】[0027]図12A−Jは、10%TFE/PBS緩衝液中のペプチド1−10のCDスペクトルである。
【図13】[0028]図13は、ペプチド12(すなわち、Suc−MTWMEWDERINNYTCFlu−NH2(配列番号10))の概略図である。
【図14】[0029]図14は、25℃におけるPBS緩衝液中のIZN17とのフルオレセイン標識ペプチド12の飽和結合曲線を示すグラフである。
【図15】[0030]図15は、リガンド結合親和性の関数としての結合プローブ対リガンド濃度の割合を示すグラフである(下の実施例3を参照)。
【図16】[0031]図16Aは、PBS緩衝液中10%TFE中の1、2、5および9の円二色性スペクトルである。図16Bは、蛍光偏光アッセイによるIZN17に対するペプチド結合の決定を示すグラフである。図16Cは、HBSα−ヘリックス9およびペプチド10によるgp41媒介性細胞間融合の阻害を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0032] 本発明は、ウイルスのクラスIコイルドコイルアセンブリーの形成を阻害する水素結合サロゲート(「HBS」)由来α−ヘリックスに関する。これらのHBSヘリックスは、ウイルス感染性に関与するクラスI融合タンパク質−タンパク質相互作用のin vivo阻害として機能できる。
【0023】
[0033] 本発明の第一の態様は、1つまたは複数の安定な内部拘束HBSα−ヘリックスを有するペプチドであって、ウイルスのコイルドコイルアセンブリーのクラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣しているペプチドに関する。
【0024】
[0034] 本発明のこの態様のペプチドは、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、レトロウイルス科、コロナウイルス科、ヘルペスウイルス科、インフルエンザウイルス、シミアンウイルス5、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス、HIV−1、ヒトT細胞白血病ウイルス、マウス肝炎ウイルス、SARSウイルス、およびヒトサイトメガロウイルスの群から選択されるウイルスのクラスI C−ペプチドヘリックスまたはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣することができる。
【0025】
[0035] 好ましい実施形態において、本発明のこの態様によるペプチドは、HIV−1 gp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはHIV−1 gp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣している。これらのペプチドは、宿主細胞へのHIV−1の侵入を媒介することが知られているgp41コイルドコイルアセンブリーの形成を妨害すると予想される。
【0026】
[0036] gp41 C−ペプチドヘリックスの一部を模倣している適当なペプチドは、gp41 C−ペプチドヘリックスのWWI領域を模倣しているペプチドを包含する。この領域は、コイルドコイル六量体の形成中に、対応するN−ペプチドヘリックス上の疎水性ポケットと相互作用する。したがって、この領域の人工α−ヘリックス模倣体は、この疎水性領域との結合に関して、天然のgp41 C−ペプチドヘリックスを競合的に妨害すると予想される。同様に、gp41 N−ペプチドヘリックスの一部を模倣している適当なペプチドは、gp41 N−ペプチドヘリックスの疎水性ポケットを模倣しているものを包含する。これらの人工α−ヘリックスは、天然のN−ペプチドヘリックスとの結合に関して、gp41 C−ペプチドヘリックスを競合的に妨害すると予想される。
【0027】
[0037] 一例として、本発明の人工α−ヘリックスは、表1に示すgp41 N−ペプチドおよびC−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣することができる。
【0028】
【表1】
【0029】
[0001] 一般的に、本発明の適当なペプチドは、式
【0030】
【化6】
を包含するものを包含し、
式中、
【0031】
【化7】
は、一重または二重の炭素間結合であり、
【0032】
【化8】
は、一重結合であり、
【0033】
【化9】
が二重結合である場合にシスまたはトランスであり、
nは、1または2であり、
mは、ゼロまたは任意の正の整数であり、
Rは、水素、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり、
R1は、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり、
R2は、アミノ酸、ペプチド、−OR、−CH2NH2、アルキル基、アリール基、水素、または式
【0034】
【化10】
を有する基であり、
R4は、アミノ酸、ペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基であり、R3は、第四のペプチドである。
【0035】
[0038] 一部の実施形態において、R3は、式−WXXWXXXIXXYXXXI(配列番号13)−R4を含むペプチドであり、Xは、任意のアミノ酸である。別の実施形態において、本発明のペプチドは、配列番号9のアミノ酸配列を包含し、配列番号9の残基1〜4にまたがる内部拘束α−ヘリックス領域を有する。
【0036】
[0039] 当業者には明らかであるように、本発明の方法を使用し、高度に安定化され、内部拘束α−ヘリックスを有するペプチドを調製することができる。拘束は、N末端でなくても、ペプチド内のどの場所にも位置し得る。例えば、本発明の方法に従って調製される化合物は、式
【0037】
【化11】
を有し得る。
【0038】
[0040] 本発明の方法に従って製造されるペプチドは、例えば、15個未満のアミノ酸であってよく、例えば、10個未満のアミノ酸残基を包含する。
【0039】
[0041] 本発明は、1つまたは複数の安定な内部拘束α−ヘリックスを有するペプチドにも関する。1つまたは複数の安定な内部拘束二次構造は、下記のモチーフ
【0040】
【化12】
を包含し、
【0041】
【化13】
は、一重結合または二重結合であり、
【0042】
【化14】
は、一重結合であり、
【0043】
【化15】
が二重結合である場合にシスまたはトランスであり、nは、1または2であり、mは、任意の数である。そのようなモチーフの例は、
【0044】
【化16】
を包含する。
【0045】
[0042] 本発明のHBSα−ヘリックスは、図2に示すように、閉環メタセシス反応を通じてN末端主鎖のiおよびi+4水素結合を炭素間結合で置き換えることにより得られる(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Aroraらによる米国特許第7,202,332号;ChapmanおよびArora, "Optimized Synthesis of Hydrogen-bond Surrogate Helices: Surprising Effects of Microwave Heating on the Activity of Grubbs Catalyst," Org. Lett. 8:5825-8(2006);Chapmanら, "A Highly Stable Short α-Helix Constrained by a Main-chain Hydrogen-bond Surrogate," J. Am. Chem. Soc. 126:12252-3(2004);Dimartinoら, "Solid-phase Synthesis of Hydrogen-bond Surrogate-derived α-Helices," Org. Lett. 7:2389-92(2005))。水素結合サロゲートは、α−ターンを事前組織化し、α−ヘリックス立体配座でペプチド配列を安定化する。HBSα−ヘリックスは、様々な短ペプチド配列から安定なα−ヘリックス立体配座を選ぶことが明らかにされている(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Wangら, "Evaluation of Biologically Relevant Short α-Helices Stabilized by a Main-chain Hydrogen-bond Surrogate," J. Am. Chem. Soc. 128:9248-56(2006))。これらの人工α−ヘリックスは、高い親和性でそれらの予想されるタンパク質受容体を標的とすることができることも明らかにされている(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、もともとはAngew. Chem. 117:6683-7(2005)で公表されたWangら, "Enhanced Metabolic Stability and Protein-binding Properties of Artificial α-Helices Derived from a Hydrogen-bond Surrogate: Application to Bcl-xL," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 44:6525-9(2005))。
【0046】
[0043] 別の態様において、本発明の化合物を調製することは、ペプチド前駆体化合物を提供することおよび安定な内部拘束アルファ−ヘリックスをもたらすために炭素間結合形成を促進することを含む。
【0047】
[0044] 一実施形態において、前駆体は、式
【0048】
【化17】
を有する。
【0049】
[0045] 上の式の化合物は、炭素間結合の形成を促進するのに有効な条件下で反応させることができる。そのような反応は、例えば、メタセシスであってよい。ペプチド模倣体の調製における非天然の炭素間拘束の容易な導入のためのオレフィンメタセシス触媒により示される例外的な官能基許容性は、XおよびYが、スキーム2に示すように、オレフィンメタセシス反応を通じて連結される2個の炭素原子であってもよいことを示唆している(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Hoveydaら, "Ru Complexes Bearing Bidentate Carbenes: From Innocent Curiosity to Uniquely Effective Catalysts for Olefin Metathesis," Org. Biomolec. Chem. 2:8-23(2004);Trnkaら, "The Development of L2X2Tu=CHR Olefin Metathesis Catalysts: An Organometallic Success Story," Accounts Chem. Res. 34:18-29(2001))。
【0050】
[0046] 本発明のこの態様は、例えば、閉環オレフィンメタセシス反応を含み得る。オレフィンメタセシス反応は、2つの二重結合(オレフィン)をカップリングさせ、2つの新たな二重結合を提供する(それらのうちの1つは、典型的には、エチレンガスである)。閉環オレフィンメタセシスは、オレフィンメタセシス反応を利用してマクロサイクルを形成する。この反応において、鎖内の2つの二重結合が連結される。反応は、例えば、式
【0051】
【化18】
のメタセシス触媒で行うことができる。
【0052】
[0047] 他の実施形態において、メタセシス触媒は、式
【0053】
【化19】
である。
【0054】
[0048] メタセシス反応は、例えば、約25℃〜110℃の温度、より好ましくは、約50℃の温度にて行うことができる。
【0055】
[0049] メタセシス反応は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、またはトルエンなどの有機溶媒で行うことができる。
【0056】
[0050] 本明細書に開示されている反応は、例えば、固体支持体上で行うことができる。適当な固体支持体は、粒子、鎖、沈殿物、ゲル、シート、管類、球体、容器、毛細管、パッド、スライス、フィルム、プレート、スライド、ディスク、膜などを包含する。これらの固体支持体は、ポリマー、プラスチック、セラミック、多糖、シリカまたはシリカをベースとする材料、炭素、金属、無機ガラス、膜、またはそれらの複合材料を包含する多種多様な材料から作成することができる。基板は、平らであることが好ましいが、様々な代替表面形状をとることができる。例えば、基板は、その上で合成が起きる高くなったまたは低くなった領域を含有し得る。基板およびその表面は、その上で本明細書に記載されている反応を行うための強固な支持体を形成することが好ましい。他の基板材料は、本開示の再検討により当業者に容易に明らかであろう。
【0057】
[0051] 行われるメタセシス反応は、新たに形成される炭素間結合が二重結合である化合物を初めに与えることができる。続いて、この二重結合を、当技術分野において知られている水素化方法により一重結合に変換することができる。
【0058】
[0052] 本発明の第二の態様は、対象のウイルス感染性を阻害する方法に関する。この方法は、有効な量の、クラスI N−またはC−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣している本発明のペプチドを包含する組成物を対象に投与することを含む。好ましい実施形態において、本発明のこの態様の方法は、対象のHIV感染性を阻害する。この実施形態において、組成物は、gp41 N−ペプチドヘリックスまたはgp41 C−ペプチドヘリックスを模倣している本発明のペプチドを包含する。
【0059】
[0053] 本発明のこの態様に従って感染性を阻害することは、ウイルス伝播の速度および/または程度の任意の減少を指す。このことは、1つの個体から別の個体へのウイルスの伝播を阻害すること、ならびに感染した個体内でのウイルスのさらなる伝播を阻害することを包含するが、これらに限定されるものではない。
【0060】
[0054] 組成物は、ウイルスにすでに感染している個体に(他の個体へのウイルスの伝播を阻害するため、および/または感染した個体内でのウイルスのさらなる伝播を阻害するため)、ならびにウイルスにまだ感染していない個体に(個体へのウイルスの伝播を阻害するため)投与することができる。
【0061】
[0055] 当業者には明らかであるように、投与することは、一般的に知られている方法を使用して行うことができる。
【0062】
[0056] 投与は、対象への全身投与か罹患細胞への標的化投与のどちらかを介して達成することができる。例示的な投与経路は、気管内接種による、吸引、気道滴下、エアゾール化、噴霧化、鼻腔内滴下、経口または経鼻胃滴下、腹腔内注射、血管内注射、局所的に、経皮的に、非経口的に、皮下に、静脈内注射、動脈内注射(肺動脈を介するなど)、筋肉内注射、胸膜内滴下、脳室内に、病巣内に、粘膜(鼻、咽喉、気管支、生殖器、および/または肛門の粘膜など)への塗布により、または持続放出ビヒクルの埋め込みを包含するが、これらに限定されるものではない。
【0063】
[0057] 典型的には、本発明のペプチドは、治療用薬剤および任意の薬学的に許容できる補助剤、担体、賦形剤、および/または安定化剤を包含する医薬製剤として哺乳動物に投与され、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤、または乳剤などの固体または液体形態であってよい。組成物は、補助剤、担体および/または賦形剤と一緒に、好ましくは、治療用薬剤約0.01〜約99重量パーセント、より好ましくは、約2〜約60重量パーセントを含有する。そのような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、適当な用量単位が得られるようになっている。
【0064】
[0058] 薬剤を、例えば、不活性な希釈剤と共に、または同化できる食用担体と共に経口投与することができ、または、薬剤を、硬質または軟質のシェルカプセルに入れることができ、または、薬剤を、錠剤に圧縮することができ、または、薬剤を、ダイエット食品と共に直接組み入れることができる。経口治療用投与については、これらの活性化合物を、賦形剤と共に組み入れ、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤などの形態で使用することができる。そのような組成物および調製物は、薬剤少なくとも0.1%を含有するべきである。これらの組成物中の薬剤の割合は、言うまでもなく、変わることがあり、好都合には単位の重量の約2%〜約60%であってよい。そのような治療上有用な組成物中の薬剤の量は、適当な用量が得られるようになっている。
【0065】
[0059] 錠剤、カプセル剤などは、ガムトラガカント、アカシア、トウモロコシデンプン、またはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、またはアルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;およびスクロース、ラクトース、またはサッカリンなどの甘味料を含有することもできる。用量単位形態がカプセルである場合、上のタイプの材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有することができる。
【0066】
[0060] 様々な他の材料が、コーティングとして、または用量単位の物理的形態を改変するために存在し得る。例えば、錠剤は、シェラック、糖、または両方でコーティングすることができる。シロップは、1つまたは複数の活性成分に加えて、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素、およびサクランボまたはオレンジ香料などの矯味剤を含有することができる。
【0067】
[0061] 薬剤は、非経口的に投与することもできる。薬剤の液剤または懸濁剤は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混ぜられた水の中で調製することができる。分散剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、および油中のそれらの混合物の中で調製することもできる。例示的な油は、石油、動物、野菜、または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、または鉱油である。一般に、水、食塩水、水性ブドウ糖および関連する糖溶液、ならびにプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールが、特に注射用液剤にとって、好ましい液体担体である。保存および使用の通常の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含有する。
【0068】
[0062] 注射用使用に適している医薬形態は、無菌の水性の液剤または分散剤および無菌の注射用の液剤または分散剤をその場で調製するための無菌の散剤を包含する。すべての場合において、形態は、無菌でなければならず、容易な注射針通過性(syringability)が存在する程度まで流動性でなければならない。形態は、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から守られていなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、それらの適当な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒であってよい。
【0069】
[0063] 本発明のこの態様による薬剤は、エアゾールの形態で気道に直接投与することもできる。エアゾール剤としての使用については、溶液または懸濁液中の本発明の化合物を、従来の補助剤と共に、適当な噴射剤、例えば、プロパン、ブタン、またはイソブタンのような炭化水素噴射剤と一緒に、加圧エアゾール容器内に包装することができる。本発明の材料は、ネブライザーまたはアトマイザーにおけるなどの非加圧形態で投与することもできる。
【0070】
[0064] 本発明の薬剤は、標的組織、例えば、ウイルスによる感染を起こしやすい組織に直接投与することができる。さらにおよび/またはあるいは、薬剤は、標的組織、器官、または細胞への薬剤の移動(および/または標的組織、器官、または細胞による取り込み)を容易にする1個または複数の薬剤と一緒に非標的領域に投与することができる。標的組織は、ウイルスによる感染を受けやすい任意の組織であってよいが、HIV−1感染を阻害する場合に好ましい標的組織は、口、生殖器、および直腸の粘膜を包含する。当業者には明らかであるように、治療用薬剤自体を修飾し、望ましい組織、器官、または細胞への輸送(および、望ましい組織、器官、または細胞による取り込み)を容易にすることができる。
【0071】
[0065] 例示的な送達装置は、ネブライザー、アトマイザー、リポソーム、経皮パッチ、インプラント、埋め込み用または注射用タンパク質デポー組成物、および注射器を包含するが、これらに限定されるものではない。当業者に知られている他の送達系を用い、in vivoで望ましい器官、組織、または細胞への治療用薬剤の望ましい送達を達成し、本発明のこの態様を行うことができる。
【0072】
[0066] 薬剤を送達するための任意の適当なアプローチを利用し、本発明のこの態様を実施することができる。典型的には、薬剤は、標的細胞、組織、または器官へ1つまたは複数の薬剤を送達するビヒクルで患者に投与されるであろう。
【0073】
[0067] 細胞中に薬剤を送達するための1つのアプローチは、リポソームの使用を含む。基本的に、このことは、送達するべき1つまたは複数の薬剤を包含するリポソームを提供し、次いで、細胞、組織、または器官に薬剤を送達するのに有効な条件下で、標的細胞、組織、または器官をリポソームと接触させることを含む。
【0074】
[0068] リポソームは、水相を封入する1または複数の同心円状に並んだ脂質二重層からなる小胞である。それらは、通常は漏出性ではないが、穴または細孔が膜に生じる場合、膜が溶かされるか分解する場合、または膜温度が相転移温度まで増加する場合に漏出性になることがある。リポソームを介する薬物送達の現行方法は、リポソーム担体が、最終的に透過性になり、標的部位において封入された薬物を放出することを必要とする。このことは、例えば、リポソーム二重層が身体内の様々な作用因子の作用を通じて時間と共に分解する受動的様式で達成することができる。あらゆるリポソーム組成物は、循環内または身体内の他の部位において特徴的な半減期を有するはずであり、したがって、リポソーム組成物の半減期を制御することにより、二重層が分解する速度を幾分かは調節することができる。
【0075】
[0069] 受動的薬物放出と対照的に、能動的薬物放出は、リポソーム小胞の透過性変化を誘導する薬剤を使用することを含む。リポソーム膜は、環境がリポソーム膜の近くで酸性になる場合にそれらが不安定化するように構築することができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、WangおよびHuang, "pH-Sensitive Immunoliposomes Mediate Target-cell-specific Delivery and Controlled Expression of a Foreign Gene in Mouse," Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 84:7851-5(1987)を参照)。例えば、リポソームが標的細胞によりエンドサイトーシスされる場合、リポソームは、リポソームを不安定化して薬物放出をもたらす酸性エンドソームに送られることがある。
【0076】
[0070] あるいは、リポソーム膜を、酵素が膜上のコーティングとして置かれるように化学的に修飾することができ、酵素は、リポソームをゆっくりと不安定化する。薬物放出の制御は、膜内に最初に置かれた酵素の濃度に依存することから、薬物放出を調節するか変化させて「オンデマンド」薬物送達を達成するための真に有効な方法はない。同じ問題は、リポソーム小胞が標的細胞と接触するとすぐに、リポソーム小胞が飲み込まれ、pHの低下が薬物放出につながるという点で、pH感受性リポソームについても存在する。
【0077】
[0071] このリポソーム送達系を作成し、能動的標的化を介して標的器官、組織、または細胞に蓄積することができる(例えば、リポソームビヒクルの表面上に抗体またはホルモンを組み入れることにより)。このことは、知られている方法に従って達成することができる。
【0078】
[0072] 様々なタイプのリポソームを、Banghamら、「Diffusion of Univalent Ions Across the Lamellae of Swollen Phospholipids」、J.Mol.Biol.13:238〜52(1965);Hsuによる米国特許第5,653,996号;Leeらによる米国特許第5,643,599号;Hollandらによる米国特許第5,885,613号;DzauおよびKanedaによる米国特許第5,631,237号;およびLoughreyらによる米国特許第5,059,421号に従って調製することができ、それらの各々は、全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0079】
[0073] これらのリポソームは、それらが、本発明の治療用薬剤に加えて、抗炎症剤などの他の治療用薬剤を含有し、次いで、標的部位において放出されるように製造することができる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Wolffら, "The Use of Monoclonal Anti-Thy1 IgG1 for the Targeting of Liposomes to AKR-A Cells in Vitro and in Vivo," Biochim. Biophys. Acta 802:259-73(1984))。
【0080】
[0074] タンパク質またはポリペプチド薬剤(例えば、本発明のペプチド)を送達するための代替アプローチは、コンジュゲートしたタンパク質またはポリペプチドの酵素分解を避けるために安定化されたポリマーへの、望ましいタンパク質またはポリペプチドのコンジュゲーションを含む。このタイプのコンジュゲートしたタンパク質またはポリペプチドは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Ekwuribeによる米国特許第5,681,811号に記載されている。
【0081】
[0075] タンパク質またはポリペプチド薬剤を送達するためのさらに別のアプローチは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Heartleinらによる米国特許第5,817,789号によるキメラタンパク質の調製を含む。キメラタンパク質は、リガンドドメインおよびポリペプチド薬剤(例えば、本発明の人工α−ヘリックス)を包含することができる。リガンドドメインは、標的細胞上に位置している受容体に特異的である。したがって、キメラタンパク質が、静脈内に送達されるか、さもなければ血液またはリンパ内に導入される場合、キメラタンパク質は、標的化細胞に吸着し、標的化細胞は、キメラタンパク質を内部移行するであろう。
【0082】
[0076] 投与は、必要なだけ頻繁に、ウイルス感染に対する有効な治療を提供するのに適している期間にわたって行うことができる。例えば、投与は、単一の持続放出用量製剤または複数の1日投与量で行うことができる。投与は、ウイルスへの対象の暴露前、暴露と同時に、および/または暴露後に行うことができる。
【0083】
[0077] 投与すべき量は、治療レジメンに応じて変わることは言うまでもない。一般的に、薬剤は、ウイルスの感染性の低下に有効な量(すなわち、治療上有効な量)を達成するために投与される。したがって、治療上有効な量は、対象へのウイルスの伝播、または対象内でのウイルスの蔓延を少なくとも部分的に防ぐことが可能である量であってよい。有効量を得るのに必要とされる投与量は、薬剤、製剤、ウイルス、および薬剤が投与される個体に応じて変わることがある。
【0084】
[0078] 有効量の決定は、in vivoで必要とされる濃度を計算するために、様々な投与量の薬剤を培養液中の細胞に投与し、感染性を阻害するのに有効な薬剤の濃度を決定する、in vitroアッセイを含むこともできる。治療上有効な量は、当業者により経験的に決定することができる。
【実施例】
【0085】
(実施例1)
ペプチド1〜11の合成およびペプチド1〜12の特徴付け。
[0079] ペプチド1〜11は、スキーム1に示すように合成した。ペプチド1(すなわち、AcMTWMEWDREINNYT−NH2(配列番号14))、10(すなわち、AcMTWEEWDKKIEEYTKKI−NH2(配列番号15))、および11(すなわち、ペプチドIZN17、AcIKKEIEAIKKEQEAIKKKIEAIEKLLQLTVWGIKQLQARIL−NH2(配列番号16))、ならびに樹脂に結合したビス−オレフィン(17)は、従来のFmoc固相化学反応により、N(アリル)−ジペプチド13〜16および4−ペンテン酸の適切な置換により、0.05〜0.15mmolスケールで、RinkアミドHMBA樹脂(NovaBiochem)上で合成した。各カップリング工程において、Fmoc基は、NMP中20%ピペリジンによる処理(2×20分)により除去した。配列中の次のFmocアミノ酸(4当量)を、15分にわたって5%DIPEA/NMP溶液中でHBTU(3.6当量)によって活性化し、遊離アミンを持つ樹脂に加えた。得られた混合物を60分にわたって振盪させた。各工程についてのカップリング効率は、ニンヒドリン試験によりモニターした。ペプチドが樹脂上に構築された後、樹脂を、それぞれDMF、メタノール、およびジクロロメタンで洗浄し、一夜にわたって真空下で乾燥した。
【0086】
【化20】
【0087】
[0080] 樹脂に結合したビス−オレフィン(17)におけるマイクロ波支援閉環メタセシス反応は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、ChapmanおよびArora、「Optimized Synthesis of Hydrogen−bond Surrogate Helices:Surprising Effects of Microwave Heating on the Activity of Grubbs Catalysts」、Org.Lett.8:5825〜8(2006)に記載されているように、ジクロロエタン中でHoveyda−Grubbs触媒(0.15当量)を用いて行った。以下の設定:250Wの最大電力、120℃、5分のランプ時間、および10分のホールド時間で反応混合物に照射した。樹脂に結合したペプチドを、1.5時間にわたって切断カクテル(CF3CO2H:H2O:トリイソプロピルシラン、95:2.5:2.5)で処理することにより樹脂から切断し、逆相HPLCにより精製すると、図3〜10に示すHBSα−ヘリックス2〜9が得られた。ペプチド1〜12についてのHPLCプロットを図11A〜Lに示す。
【0088】
[0081] ペプチド1〜12を、液体クロマトグラフィー−質量分析法(「LCMS」)を使用して調べた。LCMSデータは、Agilent1100シリーズで得た。LCMS結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
(実施例2)
ペプチド1〜10の円二色性分光法。
[0082] CDスペクトルは、1mm長のセルを使用する温度調節器を備えたAVIV 202SF CD分光計および5nm/分のスキャン速度で記録した。スペクトルを、試料についての条件と類似した条件から減算されたベースラインで10回のスキャンを平均した。試料は、50〜100μMの最終ペプチド濃度で、10%トリフルオロエタノールを含有する0.1×リン酸緩衝食塩水(13.7mM NaCl、1mMホスフェート、0.27mM KCl、pH7.4)中で調製した。折り畳まれていないペプチドの濃度は、6.0Mグアニジン塩酸塩水溶液中の276nmにおけるチロシン残基のUV吸収により決定した。各ペプチドのヘリックス含有量は、アミノ酸の数について補正された222nmにおける平均残基CD、[θ]222(deg cm2 dmol-1)から決定した。らせん度パーセントは、比[θ]222/[θ]max([θ]max=(−44000+250T)(1−k/n)、k=4.0およびn=残基の数)から計算した。HBSヘリックスについてのθmax計算に関する詳細については、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Wangら、「Evaluation of Biologically Relevant Short α−Helices Stabilized by a Main−chain Hydrogen−bond Surrogate」、J.Am.Chem.Soc.128:9248〜56(2006)を参照されたい。ペプチド1〜10についてのCDスペクトルを図12A〜Jに示す。
【0091】
(実施例3)
IZN17に対するペプチド12の親和性。
[0083] IZN17(すなわち、ペプチド11)に対するペプチド1〜10の相対的親和性を、図13に示すようなフルオレセイン標識ペプチド12による蛍光偏光をベースとする競合的結合アッセイ(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、EckertおよびKim, "Design of Potent Inhibitors of HIV-1 Entry from the gp41 N-Peptide Region," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 98:11187-92(2001);Stephensら, "Inhibiting HIV Fusion with a β-Peptide Foldamer," J. Am. Chem. Soc. 127:13126-7(2005))を使用して決定した。図14は、25℃におけるPBS緩衝液中のIZN17に対するフルオレセイン標識ペプチド12の飽和結合曲線を示すグラフである。
【0092】
[0084] すべての試料は、0.1%プルロニックF−68(Sigma)を含む1×リン酸緩衝食塩水(137mM NaCl、10mMホスフェート、2.7mM KCl、pH7.4)中の96ウェルプレートで調製した。25μM IZN17および15nMフルオレセイン標識ペプチド12の溶液を25℃にてインキュベートした。1時間後、適切な濃度(10nM〜500μM)のアンタゴニスト(ペプチド1〜10)を加えた。インキュベーション溶液の総容積は、60μLとした。1時間後、解離した蛍光プローブ12の量を、それぞれ485および525nmの励起波長および発光波長で、25℃にてDTX880 Multimode Detector(Beckman)を使用して決定した。
【0093】
[0085] 各ペプチドについて表3に報告されている結合親和性(KD)値(実施例6を参照)は、3〜5個の個別測定値の平均であり、実験データを、GraphPad Prism 4.0上のシグモイド用量反応非線形回帰モデルにフィットさせることにより決定した。
【0094】
[0086] この競合的結合アッセイは、蛍光プローブの結合値よりもかなり低いKd値を正確に推定することはできないことに留意されたい。図15は、リガンド結合親和性の関数としての結合したプローブの割合対リガンド濃度のグラフを示している。5μMのKd未満では曲線間の間隔が狭くなっており、これは、このアッセイの限界を描き出している。
【0095】
(実施例4)
細胞間融合阻害アッセイ。
[0087] 細胞間融合(すなわち、融合細胞形成)は、様々な濃度のペプチド1〜10の存在下で、HXB2エンベロープおよびtatを発現するCHO[HIVe](クローン7d2)細胞をU373−MAGI細胞(M.EmermanおよびA.Geballe、National Institutes of Health AIDS Research and Reference Reagent Program)と共培養することによりアッセイした。細胞融合は、U373−MAGI指標細胞系からの核β−ガラクトシダーゼの発現を可能にし、β−ガラクトシダーゼ活性をモニターすることにより定量化することができる。共培養後の37℃における一夜にわたるインキュベーション後、β−ガラクトシダーゼ酵素活性を、Mammalianβ−ガラクトシダーゼChemiluminescent Assay Kit(Applied BiosystemsからのGal−Screen)で測定した。活性が、ペプチド阻害剤を欠く対照試料に比べて50%低下するペプチド阻害剤濃度(IC50)は、Prismプログラムを使用して可変勾配シグモイド(variable-slope-sigmoid)式にデータをフィットさせることにより計算した。
【0096】
(実施例5)
U373−MAGIに対するペプチドの細胞傷害性。
[0088] U373−MAGI細胞に対するペプチド1〜10の細胞傷害効果を、6日にわたって一連の希釈阻害剤の存在下で測定し、細胞生存度を、MTTアッセイ(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Mosmann, "Rapid Colorimetric Assay for Cellular Growth and Survival: Application to Proliferation and Cytotoxicity Assays," J. Immunol. Meth. 65:55-63(1983))で定量化した。200μMまでの濃度のペプチドについて、細胞傷害性は観察されなかった。
【0097】
(実施例6)
ペプチド設計。
[0089] 本発明のgp41標的化試験は、表3に示すように、残基W628、W631、およびI635を含有するgp41に由来する14残基C−ペプチド(1)を模倣することにより開始した。この配列は、その結晶構造(図1Bに示す)に基づいてgp41疎水性ポケットと結合すると予想されるが(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Chanら, "Core Structure of gp41 from the HIV Envelope Glycoprotein," Cell 89:263-73(1997))、細胞間融合アッセイでは効果がないことが以前に明らかにされている(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9 (2002))。
【0098】
【表3】
【0099】
[0090] 前に記載されている蛍光偏光アッセイを利用し、残基W628、W631、およびI635のための結合部位を含有するgp41 N末端3本鎖コイルドコイルの安定なモデルであるIZN17への、非拘束ペプチドおよびHBSヘリックスのin vitro結合親和性を決定した(上の実施例3を参照)(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、EckertおよびKim, "Design of Potent Inhibitors of HIV-1 Entry from the gp41 N-Peptide Region," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 98:11187-92(2001))。gp41の残基628〜641を含有するフルオレセイン標識C−ペプチド誘導体(すなわち、Suc−MTWMEWDREINNYTCFlu(配列番号10);ペプチド12)をプローブとして使用した。HBSヘリックスによるこのプローブの競合的置換は、表3および図16Bに示す各ペプチドについてのKd値を与えた(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Stephensら, "Inhibiting HIV Fusion with a β-Peptide Foldamer," J. Am. Chem. Soc. 127:13126-7(2005))。ペプチド12は、24μMのKd値でIZN17と結合し、前に報告された値の範囲内であった(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9(2002);Stephensら, "Inhibiting HIV Fusion with a β-Peptide Foldamer," J. Am. Chem. Soc. 127:13126-7(2005))。競合アッセイは、ペプチド1について37μMの結合親和性を提供し、報告されている値の範囲内であったが、ペプチドの凝集は、正確なKd値を得ることを困難にした。
【0100】
[0091] 円二色性分光法(上の実施例2を参照)は、1が、PBS緩衝液中10%トリフルオロエタノール(「TFE」)中で構造化されていないか極めて弱いヘリックスであることを示唆した(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9(2002))。HBSアプローチによるヘリックス立体配座におけるこのペプチドの安定化は、そのらせん度およびIZN17に対する親和性を高めることが推測された。HBSα−ヘリックス2は、図16Aに示すように、1よりもおおよそ4倍ヘリックスであるが、表3に示すように、高い親和性で標的タンパク質と結合しなかった。このことは、ペプチドのらせん度と標的に対するその結合親和性との間に複雑な相互作用があることを示唆している(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Martin, "Preorganization in Biological Systems: Are Conformational Constraints Worth the Energy?," Pure Appl. Chem. 79:193-200(2007);もともとはAngew. Chem. 118:6984-9(2006)で公表されたBenfieldら, "Ligand Preorganization May Be Accompanied by Entropic Penalties in Protein-ligand Interactions," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 45:6830-5(2006))。短ペプチドおよび拘束ヘリックスによる結果は、Kimおよび共同研究者(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9(2002))により観察された結果を映しており、高い親和性でIZN17と結合する配列を同定するためのHBSα−ヘリックスの小ライブラリーの設計を促した。これらのHBSヘリックスの代表的選択(すなわち、ペプチド2〜9)を表3に示す。
【0101】
[0092] 水溶液における短C−ペプチドの制限された溶解性は、それらの不活性についての重要な理由として提案されてきた(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、もともとはAngew. Chem. 114:3061-4(2002)で公表されたOtakaら, "Remodeling of gp41-C34 Peptide Leads to Highly Effective Inhibitors of the Fusion of HIV-1 with Target Cells," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 41:2937-40(2002))。拘束C−ペプチドの溶解性およびらせん度を改善するため、IZN17との結合に関与することが予想されない位置に荷電残基が組み入れられた(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、もともとはAngew. Chem. 114:3061-4(2002)で公表されたOtakaら, "Remodeling of gp41-C34 Peptide Leads to Highly Effective Inhibitors of the Fusion of HIV-1 with Target Cells," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 41:2937-40(2002))。HBSα−ヘリックス3は、結合に必要なTrp/Trp/Ileモチーフを含有するように設計された最短のペプチドである。2個のリシン残基をこの配列内に加え、ペプチドの溶解性を改善した。HBSα−ヘリックス4は、HBS拘束の潜在的立体効果を探索するために拘束の外側にTrp/Trp/Ileモチーフが位置するように設計した。潜在的塩−架橋相互作用を通じてα−ヘリックス立体配座をさらに安定化するために、一対のグルタミン酸およびリシン残基がiおよびi+4位に置かれた(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、MarquseeおよびBaldwin, "Helix Stabilization by Glu-…Lys+ Salt Bridges in Short Peptides of de Novo Design," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 84:8898-902(1987);Shiら, "Stabilization of α-Helix Structure by Polar Side-chain Interactions: Complex Salt Bridges, Cation-pi Interactions, and C-H Em Leader O H-bonds," Biopolymers 60:366-80(2001))。これらの2つのHBSヘリックスのどちらもIZN17と結合せず、コイルドコイル複合体を標的とするには、より多くの接触点が必要であることを示唆していた。HBSα−ヘリックス5は、Trp/Trp/Ile残基に加えて、チロシン−638を含有する。Tyr−638は、ヘプタッド中のd位を占有し、図1Cに示すように、N末端3本鎖コイルドコイルに直接接触することが予想される。HBSα−ヘリックス5の配列は、親化合物1および2の配列と類似しているが、N末端のメチオニン−626およびスレオニン−627残基を失っている。この化合物も、IZN17に対して無視できる親和性を示し、これが意外だったのは、5は、2について観察されたのと同様の親和性でIZN17と結合すると予想されていたからである。CD分光法は、2および5が、図16Aに示すように、同等にヘリックスを有することを示唆している。2と比べて5の低い結合親和性は、図1Cに示すように、ヘプタッド中のg位を占有し、結合に対して有意に寄与するとは予測されなかったスレオニン−627の潜在的役割を浮き彫りにしている。Met−626およびThr−627残基の再導入ならびに結合に関与することが予想されない位置における荷電残基の組み入れは、親HBSα−ヘリックス2よりも高い親和性でIZN17と結合するHBSα−ヘリックス6を提供した。HBSヘリックスの結合におけるThr−627の役割も、この残基がアラニン残基で置き換えられているHBSα−ヘリックス7により浮き彫りにされた。HBSα−ヘリックス7は、6よりも20倍低い親和性でIZN17と結合した。
【0102】
[0093] ヘリックスマクロダイポールを潜在的に安定化するために、HBSα−ヘリックス7および8のN末端にグルタミン酸残基を置いた。しかしながら、この残基の組み入れは、これらのペプチドの結合親和性に影響を及ぼさなかった。
【0103】
[0094] HBSα−ヘリックス8および9を調製し、アミノおよびカルボキシ末端上の追加接触点(ヘプタッド中のaまたはd位を占有する残基)の効果を探求した。HBSα−ヘリックス8と9は共に、ヘプタッド中のaまたはd位を占有する5個の残基からなり、<5μMのKd値でIZN17と結合する。8および9についての値が、本IZN17アッセイにおける上限に相当するのは、競合的結合分析が、蛍光プローブの結合親和性よりかなり低いKd値を正確に推定することができないからである(上の実施例3を参照)(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Roehrlら, "A General Framework for Development and Data Analysis of Competitive High-throughput Screens for Small-molecule Inhibitors of Protein-protein Interactions by Fluorescence Polarization," Biochemistry 43:16056-66(2004))。IZN17アッセイは、最良のHBSヘリックスについての正確な値を提供しなかったが、本明細書に記載されている様々な構築物の定性的評価を可能にした。IZN17結合アッセイとgp41媒介性細胞間融合アッセイの組合せは、HIV融合の阻害剤としてのHBSヘリックスの有効性の優れた尺度を提供すると判断された(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Eckertら, "Inhibiting HIV-1 Entry: Discovery of D-Peptide Inhibitors That Target the gp41 Coiled-coil Pocket," Cell 99:103-15(1999))。
【0104】
[0095] 細胞間融合(すなわち、融合細胞形成)を、様々な濃度のペプチド阻害剤の存在下で、HXB2エンベロープおよびtatを発現するCHO[HIVe](クローン7d2)細胞(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Kozarskyら, "Glycosylation and Processing of the Human Immunodeficiency Virus Type 1 Envelope Protein," J. Acquir. Immune Defic. Syndr. 2:163-9(1989))をU373−MAGI細胞と共培養することによりアッセイした。細胞融合は、U373−MAGI指標細胞系からの核β−ガラクトシダーゼの発現を可能にし、β−ガラクトシダーゼ活性をモニターすることにより定量化することができる。
【0105】
[0096] 短ペプチドによるgp41媒介性細胞融合の阻害は、困難な妙技であり、ほんの一握りの合成ペプチドで行われてきたに過ぎない(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9(2002);Stephensら, "Inhibiting HIV Fusion with a β-Peptide Foldamer," J. Am. Chem. Soc. 127:13126-7(2005);Eckertら, "Inhibiting HIV-1 Entry: Discovery of D-Peptide Inhibitors That Target the gp41 Coiled-coil Pocket," Cell 99:103-15(1999))。HBSα−ヘリックス9のみが、図16Cに示すように、43μMのEC50値で細胞融合を阻害することが分かった。この値は、側鎖で拘束α−ヘリックス(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Siaら, "Short Constrained Peptides That Inhibit HIV-1 Entry," Proc. Nat'l Acad. Sci. U.S.A. 99:14664-9(2002))、環状D−ペプチド(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Eckertら, "Inhibiting HIV-1 Entry: Discovery of D-Peptide Inhibitors That Target the gp41 Coiled-coil Pocket," Cell 99:103-15(1999))、芳香族フォルダマー(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、もともとはAngew. Chem. 114:282-91(2002)で公表されたErnstら, "Design of a Protein Surface Antagonist Based on α-Helix Mimicry: Inhibition of gp41 Assembly and Viral Fusion," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 41:278-81(2002))、およびβ−ペプチドフォルダマー(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Stephensら, "Inhibiting HIV Fusion with a β-Peptide Foldamer," J. Am. Chem. Soc. 127:13126-7(2005))について測定されたものに匹敵する。他のHBSα−ヘリックス(2〜8)は、200μMまでの濃度において細胞融合阻害のいかなる気配も提供しなかった。9と類似した親和性でIZN17と結合した拘束されていないペプチド10は、細胞培養アッセイにおいて無効のままであった。α−ヘリックス立体配座におけるペプチドの安定化が、プロテアーゼに対するそれらの抵抗性を増強することが予想されることから(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Tyndallら, "Proteases Universally Recognize β Strands in Their Active Sites," Chem. Rev. 105:973-99(2005))、この結果は、拘束されていないペプチドのタンパク質分解不安定性を反映している可能性がある。それらの拘束されていない対応物と比較したHBSα−ヘリックスのタンパク質分解安定性の改善は、以前に報告されている(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、もともとはAngew. Chem. 117:6683-7(2005)で公表されたWangら, "Enhanced Metabolic Stability and Protein-binding Properties of Artificial α-Helices Derived from a Hydrogen-bond Surrogate: Application to Bcl-xL," Angew. Chem. Int'l Ed. Engl. 44:6525-9(2005))。
【0106】
[0097] 要約すると、合理的な設計および合成を通じて、gp−41媒介性細胞融合を阻害する人工α−ヘリックス(9)を開発した。コイルドコイルアセンブリーの形成は、いくつかのクラスのウイルスのそれらの宿主細胞との融合にとっての必要条件であることから(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Dimitrov, "Virus Entry: Molecular Mechanisms and Biomedical Applications," Nat. Rev. Microbiol. 2:109-22(2004))、この仕事は、HBSヘリックスが、これらのウイルスに対する小分子阻害剤または抗原を作製するための有効な足場であることを示唆している(それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、Englishら, "Rational Development of β-Peptide Inhibitors of Human Cytomegalovirus Entry," J. Biol. Chem. 281:2661-7 (2006);Shepherdら, "Modular α-Helical Mimetics with Antiviral Activity Against Respiratory Syncitial Virus," J. Am. Chem. Soc. 128:13284-9 (2006))。
【0107】
[0098] 本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し記載してきたが、そのような実施形態がほんの一例として提供されていることは当業者には明白であろう。多くの変形形態、変更形態、および置換形態が、本発明を逸脱することなく当業者に思いつくであろう。本発明を実施するにあたって、本明細書に記載されている本発明の実施形態の様々な代替策を用いることができることが理解されるべきである。下記の特許請求の範囲は、本発明の範囲を定義しており、これらの特許請求項の範囲内の方法および構造ならびに均等物は、それらによりカバーされることが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定な内部拘束アルファ−ヘリックスを有するペプチドであって、前記アルファヘリックスは、炭素間結合形成反応により形成される架橋により拘束されており、さらに、前記ペプチドは、クラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣し、且つ、ウイルス感染性の阻害剤である、ペプチド。
【請求項2】
前記炭素間結合形成反応がメタセシスである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記クラスI C−ペプチドヘリックスまたは前記クラスI N−ペプチドヘリックスが、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、レトロウイルス科、コロナウイルス科、ヘルペスウイルス科、インフルエンザウイルス、シミアンウイルス5、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、マウス肝炎ウイルス、SARSウイルス、およびヒトサイトメガロウイルスからなる群より選択されるウイルスに由来する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ウイルスがヒト免疫不全ウイルスである、請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
gp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはgp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する、請求項4に記載のペプチド。
【請求項6】
gp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
gp41 C−ペプチドヘリックスのWWI領域を模倣する、請求項6に記載のペプチド。
【請求項8】
ペプチドが、式
【化1】
を含み、
式中、
【化2】
は、一重または二重の炭素間結合であり;
【化3】
は、一重結合であって、
【化4】
が二重結合である場合にシスまたはトランスであり;
nは、1または2であり;
mは、ゼロまたは任意の正の整数であり;
Rは、水素、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R1は、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R2は、アミノ酸、第二のペプチド、−OR、−CH2NH2、アルキル基、アリール基、水素、または式
【化5】
を有する基であり;
R4は、アミノ酸、第三のペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基であり;
R3は、第四のペプチドである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
R3が、式−WXXWXXXIXXYXXXI−R4(Xは任意のアミノ酸である)を含む、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号9の残基1〜4にまたがる内部拘束アルファ−ヘリックスを有する、請求項6に記載のペプチド。
【請求項11】
前記gp41 C−ペプチドヘリックスが配列番号11で表されるアミノ酸配列を有する、請求項6に記載のペプチド。
【請求項12】
gp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する、請求項5に記載のペプチド。
【請求項13】
gp41 N−ペプチドヘリックスの疎水性ポケットを模倣する、請求項12に記載のペプチド。
【請求項14】
前記gp41 N−ペプチドヘリックスが配列番号12のアミノ酸配列を有する、請求項12に記載のペプチド。
【請求項15】
請求項1に記載のペプチドおよび薬学的に許容できるビヒクルを含む医薬組成物。
【請求項16】
対象においてウイルスの感染性を阻害する方法であって、安定な内部拘束アルファ−ヘリックスを有するペプチドを含む組成物を対象に有効量投与することを含み、前記アルファヘリックスは、炭素間結合形成反応により形成される架橋により拘束されており、さらに、ペプチドは、クラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する、方法。
【請求項17】
前記炭素間結合形成反応が、メタセシスである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ウイルスが、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、レトロウイルス科、コロナウイルス科、ヘルペスウイルス科、インフルエンザウイルス、シミアンウイルス5、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、マウス肝炎ウイルス、SARSウイルス、およびヒトサイトメガロウイルスの群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ウイルスが、ヒト免疫不全ウイルスであり、前記ペプチドが、gp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはgp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣している、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ペプチドが、式
【化6】
を含み、
式中、
【化7】
は、一重または二重の炭素間結合であり;
【化8】
は、一重結合であって、
【化9】
が二重結合である場合にシスまたはトランスであり;
nは、1または2であり;
mは、ゼロまたは任意の正の整数であり;
Rは、水素、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R1は、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R2は、アミノ酸、第二のペプチド、−OR、−CH2NH2、アルキル基、アリール基、水素、または式
【化10】
を有する基であり;
R4は、アミノ酸、第三のペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基であり;
R3は、第四のペプチドである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
R3が、式−WXXWXXXIXXYXXXI−R4(Xは任意のアミノ酸である)を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ペプチドが、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号9の残基1〜4にまたがる内部拘束アルファ−ヘリックスを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記gp41 C−ペプチドヘリックスが配列番号11で表されるアミノ酸配列を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
ウイルス感染性の阻害剤であるペプチドを合成する方法であって、クラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を含む前駆体ペプチドを選択する工程と、炭素間結合の形成を促進する工程と、を含み、前記結合形成が、安定な内部拘束アルファ−ヘリックスをもたらす、方法。
【請求項25】
前記結合形成が、非天然の炭素間結合を導入する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記炭素間結合がメタセシスにより形成される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ウイルスがヒト免疫不全ウイルスであり、前記ペプチドがgp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはgp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記ペプチドが式WXXWXXXIXXYXXXI−R4(Xは任意のアミノ酸である)を含み、R4がアミノ酸、第三のペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記ペプチドが配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号9の残基1〜4にまたがる内部拘束アルファ−ヘリックスを有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記gp41 C−ペプチドヘリックスが配列番号11のアミノ酸配列を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記ペプチドが、式
【化11】
を含み、
式中、
【化12】
は、一重または二重の炭素間結合であり;
【化13】
は、一重結合であって、
【化14】
が二重結合である場合にシスまたはトランスであり;
nは、1または2であり;
mは、ゼロまたは任意の正の整数であり;
Rは、水素、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R1は、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R2は、アミノ酸、第二のペプチド、−OR、−CH2NH2、アルキル基、アリール基、水素、または式
【化15】
を有する基であり;
R4は、アミノ酸、第三のペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基であり;
R3は、第四のペプチドである、請求項24に記載の方法。
【請求項1】
安定な内部拘束アルファ−ヘリックスを有するペプチドであって、前記アルファヘリックスは、炭素間結合形成反応により形成される架橋により拘束されており、さらに、前記ペプチドは、クラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣し、且つ、ウイルス感染性の阻害剤である、ペプチド。
【請求項2】
前記炭素間結合形成反応がメタセシスである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記クラスI C−ペプチドヘリックスまたは前記クラスI N−ペプチドヘリックスが、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、レトロウイルス科、コロナウイルス科、ヘルペスウイルス科、インフルエンザウイルス、シミアンウイルス5、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、マウス肝炎ウイルス、SARSウイルス、およびヒトサイトメガロウイルスからなる群より選択されるウイルスに由来する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ウイルスがヒト免疫不全ウイルスである、請求項3に記載のペプチド。
【請求項5】
gp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはgp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する、請求項4に記載のペプチド。
【請求項6】
gp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する、請求項5に記載のペプチド。
【請求項7】
gp41 C−ペプチドヘリックスのWWI領域を模倣する、請求項6に記載のペプチド。
【請求項8】
ペプチドが、式
【化1】
を含み、
式中、
【化2】
は、一重または二重の炭素間結合であり;
【化3】
は、一重結合であって、
【化4】
が二重結合である場合にシスまたはトランスであり;
nは、1または2であり;
mは、ゼロまたは任意の正の整数であり;
Rは、水素、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R1は、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R2は、アミノ酸、第二のペプチド、−OR、−CH2NH2、アルキル基、アリール基、水素、または式
【化5】
を有する基であり;
R4は、アミノ酸、第三のペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基であり;
R3は、第四のペプチドである、請求項1に記載のペプチド。
【請求項9】
R3が、式−WXXWXXXIXXYXXXI−R4(Xは任意のアミノ酸である)を含む、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号9の残基1〜4にまたがる内部拘束アルファ−ヘリックスを有する、請求項6に記載のペプチド。
【請求項11】
前記gp41 C−ペプチドヘリックスが配列番号11で表されるアミノ酸配列を有する、請求項6に記載のペプチド。
【請求項12】
gp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する、請求項5に記載のペプチド。
【請求項13】
gp41 N−ペプチドヘリックスの疎水性ポケットを模倣する、請求項12に記載のペプチド。
【請求項14】
前記gp41 N−ペプチドヘリックスが配列番号12のアミノ酸配列を有する、請求項12に記載のペプチド。
【請求項15】
請求項1に記載のペプチドおよび薬学的に許容できるビヒクルを含む医薬組成物。
【請求項16】
対象においてウイルスの感染性を阻害する方法であって、安定な内部拘束アルファ−ヘリックスを有するペプチドを含む組成物を対象に有効量投与することを含み、前記アルファヘリックスは、炭素間結合形成反応により形成される架橋により拘束されており、さらに、ペプチドは、クラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する、方法。
【請求項17】
前記炭素間結合形成反応が、メタセシスである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ウイルスが、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、フィロウイルス科、レトロウイルス科、コロナウイルス科、ヘルペスウイルス科、インフルエンザウイルス、シミアンウイルス5、呼吸器合胞体ウイルス、エボラウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、マウス肝炎ウイルス、SARSウイルス、およびヒトサイトメガロウイルスの群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ウイルスが、ヒト免疫不全ウイルスであり、前記ペプチドが、gp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはgp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣している、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ペプチドが、式
【化6】
を含み、
式中、
【化7】
は、一重または二重の炭素間結合であり;
【化8】
は、一重結合であって、
【化9】
が二重結合である場合にシスまたはトランスであり;
nは、1または2であり;
mは、ゼロまたは任意の正の整数であり;
Rは、水素、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R1は、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R2は、アミノ酸、第二のペプチド、−OR、−CH2NH2、アルキル基、アリール基、水素、または式
【化10】
を有する基であり;
R4は、アミノ酸、第三のペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基であり;
R3は、第四のペプチドである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
R3が、式−WXXWXXXIXXYXXXI−R4(Xは任意のアミノ酸である)を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ペプチドが、配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号9の残基1〜4にまたがる内部拘束アルファ−ヘリックスを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記gp41 C−ペプチドヘリックスが配列番号11で表されるアミノ酸配列を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
ウイルス感染性の阻害剤であるペプチドを合成する方法であって、クラスI C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはクラスI N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を含む前駆体ペプチドを選択する工程と、炭素間結合の形成を促進する工程と、を含み、前記結合形成が、安定な内部拘束アルファ−ヘリックスをもたらす、方法。
【請求項25】
前記結合形成が、非天然の炭素間結合を導入する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記炭素間結合がメタセシスにより形成される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ウイルスがヒト免疫不全ウイルスであり、前記ペプチドがgp41 C−ペプチドヘリックスの少なくとも一部またはgp41 N−ペプチドヘリックスの少なくとも一部を模倣する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記ペプチドが式WXXWXXXIXXYXXXI−R4(Xは任意のアミノ酸である)を含み、R4がアミノ酸、第三のペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記ペプチドが配列番号9で表されるアミノ酸配列を含み、配列番号9の残基1〜4にまたがる内部拘束アルファ−ヘリックスを有する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記gp41 C−ペプチドヘリックスが配列番号11のアミノ酸配列を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記ペプチドが、式
【化11】
を含み、
式中、
【化12】
は、一重または二重の炭素間結合であり;
【化13】
は、一重結合であって、
【化14】
が二重結合である場合にシスまたはトランスであり;
nは、1または2であり;
mは、ゼロまたは任意の正の整数であり;
Rは、水素、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R1は、アミノ酸側鎖、アルキル基、またはアリール基であり;
R2は、アミノ酸、第二のペプチド、−OR、−CH2NH2、アルキル基、アリール基、水素、または式
【化15】
を有する基であり;
R4は、アミノ酸、第三のペプチド、−OR、−NH2、アルキル基、またはアリール基であり;
R3は、第四のペプチドである、請求項24に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−507972(P2011−507972A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540953(P2010−540953)
【出願日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/088667
【国際公開番号】WO2009/110952
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(500350265)ニューヨーク ユニバーシティ (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/088667
【国際公開番号】WO2009/110952
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(500350265)ニューヨーク ユニバーシティ (11)
【Fターム(参考)】
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