説明

水素雰囲気制御装置及び水素雰囲気制御方法

【課題】水素ガスを含む雰囲気下で安全性を確保しつつ効率的な処理を可能とする。
【解決手段】水素雰囲気制御装置10は、気密箱体20と、該気密箱体内に格納される処理部32と、該処理部に接続される電源部36の動作を制御する制御部34と、前記気密箱体内の水素濃度を測定する水素濃度測定部42と、前記気密箱体内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定部44と、前記気密箱体に供給される水素ガスの流量を調節する水素ガス制御バルブ52と、前記制御部、前記水素濃度測定部、前記酸素濃度測定部及び前記水素ガス制御バルブに接続され、これらの動作を制御する主制御部60とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素雰囲気制御装置及びこれを用いる水素雰囲気制御方法、並びに水素酸化触媒用評価装置及びこれを用いる水素酸化触媒の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素酸化触媒としては、燃料電池用電極触媒、金属酵素ヒドロゲナーゼ、メタンモノオキシゲナーゼ、金属酵素を模した錯体触媒などが知られている。例えば白金触媒の代替を目的とする水素酸化触媒として、ニッケルホスフィン錯体がカーボンナノチューブ表面に配位子を介して固定化された水素酸化触媒が知られている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Science,2009,326,1384−1387
【0004】
上述のような水素酸化触媒は、研究、評価の過程で水素を含む雰囲気下で取り扱う必要があるが、水素ガスの取り扱いが極めて困難であるため、水素酸化触媒の研究例は、酸素還元触媒などの酸素存在下で取り扱い可能な研究例と比べてはるかに少ない。
【0005】
水素ガスは、酸素存在下での爆発限界の範囲が広く、爆発限界の範囲内では着火源の存在により容易に爆発を起こしてしまう。そのため水素ガスの使用が必須である例えば水素酸化触媒の評価工程では常に爆発の防止に留意する必要があり、雰囲気の水素濃度及び酸素濃度のうちの少なくとも一方を水素の場合は爆発限界の範囲、酸素の場合は水素燃焼に必要な最低酸素濃度よりも低く制御する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、水素濃度を爆発限界の範囲よりも低くなるように精度よく制御して安全性を確保しつつ、長時間にわたり水素酸化触媒の評価などの処理を実施可能とするための有効な手段は未だ実現されていない。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、水素濃度及び酸素濃度のうちの少なくとも一方のガス濃度を水素の場合は爆発限界の範囲、酸素の場合は水素燃焼に必要な最低酸素濃度より低くなるように精度よく制御して安全性を確保しつつ、長時間にわたる処理を可能とする水素雰囲気制御装置及びこれを用いる水素雰囲気制御方法、並びに水素酸化触媒用評価装置及びこれを用いる水素酸化触媒の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは水素濃度の制御手段及び制御方法について鋭意研究を進めたところ、所定の構成を備える水素雰囲気制御装置及びこれを用いる水素雰囲気制御方法により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち本発明によれば、下記のものが提供される。
〔1〕 気密箱体と、該気密箱体内に格納される処理部と、該処理部に接続される電源部の動作を制御する制御部と、前記気密箱体内の水素濃度を測定する水素濃度測定部と、前記気密箱体内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、前記気密箱体に供給される水素ガスの流量を調節する水素ガス制御バルブと、前記制御部、前記水素濃度測定部、前記酸素濃度測定部及び前記水素ガス制御バルブに接続され、これらの動作を制御する主制御部とを備える、水素雰囲気制御装置。
〔2〕 気密箱体と、該気密箱体内に格納される水素酸化触媒用評価部と、該水素酸化触媒用評価部に接続される電源部の動作を制御する制御部と、前記気密箱体内の水素濃度を測定する水素濃度測定部と、前記気密箱体内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、前記水素酸化触媒用評価部に供給される水素ガスの流量を調節する水素ガス制御バルブと、前記制御部、前記水素濃度測定部、前記酸素濃度測定部及び前記水素ガス制御バルブに接続され、これらの動作を制御する主制御部とを備える、水素酸化触媒用評価装置。
〔3〕 〔1〕に記載の水素雰囲気制御装置を準備する工程と、
水素濃度測定部が水素濃度を測定して測定値を取得するステップ、及び酸素濃度測定部が酸素濃度を測定して測定値を取得するステップのうちの少なくとも一方が行われる工程と、
前記水素濃度測定部及び前記酸素濃度測定部のうちの少なくとも一方が、取得した前記測定値を主制御部に入力する工程と、
前記主制御部が、前記測定値と予め設定された第1の設定値とを比較する工程と、
前記主制御部が前記測定値が前記第1の設定値を超えていると判断した場合には、該主制御部が水素ガス制御バルブの動作を制御して水素ガスの供給を停止させるか、又は流量を減少させる調節工程とを含む、水素雰囲気制御方法。
〔4〕 前記調節工程の後に、前記主制御部が前記測定値と予め設定された第2の設定値とを比較する工程と、
前記主制御部が前記測定値が前記第2の設定値を超えていると判断した場合には、該主制御部が前記制御部の動作を制御して、前記処理部の動作を停止させる工程をさらに含む、〔3〕に記載の水素雰囲気制御方法。
〔5〕 〔2〕に記載の水素酸化触媒用評価装置の水素酸化触媒用評価部に水素ガスを供給して水素酸化触媒の特性を評価する、水素酸化触媒の評価方法において、
水素濃度測定部が水素濃度を測定して測定値を取得するステップ、及び酸素濃度測定部が酸素濃度を測定して測定値を取得するステップのうちの少なくとも一方が行われる工程と、
前記水素濃度測定部及び前記酸素濃度測定部のうちの少なくとも一方が、取得した前記測定値を主制御部に入力する工程と、
前記主制御部が、前記測定値と予め設定された第1の設定値とを比較する工程と、
前記主制御部が前記測定値が前記第1の設定値を超えていると判断した場合には、該主制御部が水素ガス制御バルブの動作を制御して水素ガスの供給を停止させるか、又は流量を減少させる調節工程とを含む、水素酸化触媒の評価方法。
〔6〕 前記調節工程の後に、前記主制御部が前記測定値と予め設定された第2の設定値とを比較する工程と、
前記主制御部が前記測定値が前記第2の設定値を超えていると判断した場合には、該主制御部が前記制御部の動作を制御して、前記水素酸化触媒用評価部の動作を停止させる工程をさらに含む、〔5〕に記載の水素酸化触媒の評価方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水素雰囲気制御装置の構成によれば、雰囲気の水素濃度及び/又は酸素濃度を水素の場合は爆発限界の範囲、酸素の場合には水素燃焼に必要な最低酸素濃度よりも低い濃度に精度よく維持できる。よって雰囲気中の水素ガス及び酸素ガスに起因する爆発を効果的に防止して、安全性を向上させることができる。
また本発明の水素雰囲気制御方法によれば、水素濃度及び酸素濃度の精密な制御が可能であることから、爆発の危険を減少させより安全に水素酸化触媒の評価などの処理を実施することができる。
本発明の水素雰囲気制御装置及び水素雰囲気制御方法によれば、水素ガスを用いる様々な処理における安全性をより高めることができるため、水素酸化触媒をはじめとする水素ガスを用いるか、又は不可避的に水素ガスが発生する処理を含む研究の進展に大いに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、水素雰囲気制御装置(水素酸化触媒用評価装置)の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【図2】図2は、主制御部の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【図3】図3は、水素雰囲気制御装置(水素酸化触媒用評価装置)の動作の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお各図は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎない。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。なお以下の説明に用いる各図において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する場合がある。
【0013】
<水素雰囲気制御装置の構成例>
図1を参照して、本発明の実施形態にかかる水素雰囲気制御装置の構成例につき説明する。図1は、水素雰囲気制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示されるように、水素雰囲気制御装置10は、気密箱体20と、この気密箱体20内に格納される処理部32と、この処理部32に接続される電源部36の動作を制御する制御部34と、気密箱体20内の水素濃度を測定する水素濃度測定部42と、気密箱体20内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定部44と、気密箱体20に供給される水素ガスの流量を調節する水素ガス制御バルブ52と、制御部34、水素濃度測定部42、酸素濃度測定部44及び水素ガス制御バルブ52に接続され、これらの動作を制御する主制御部60とを備える。
【0014】
気密箱体20は、任意好適な体積の空間を気密に仕切ることができる、例えば気密性の高いグローブボックスのような気密の箱状体又は気密の室を意味する。グローブボックスの場合には作業用グローブを複数備えていることが好ましい。
【0015】
気密箱体20の材料は特に限定されないが、水素ガスにより脆化しにくい材料を用いるのが好適である。また処理部32で行われる処理を考慮して、この処理によって劣化しにくい材料を用いるのが好適である。例えば処理部32において酸性の物質が用いられる場合には、水素ガスにより脆化しにくいことに加えて酸によって劣化しにくい材料を適宜選択して用いればよい。
【0016】
水素雰囲気制御装置10は電気機器30を有している。この構成例では気密箱体20内に電気機器30のうちの少なくとも処理部32が格納される。電気機器30は、処理部32と、処理部32に接続された制御部34と、制御部34に接続された電源部36とを有する。
【0017】
この構成例では電気機器30のうちの処理部32のみを気密箱体20内に格納しているがこの構成に限定されず、電気機器30の構成要素の全体を気密箱体20内に格納してもよいし、制御部34及び電源部36のうちの少なくとも一方を処理部20とともに気密箱体20内に格納してもよいが、安全性の観点から制御部34及び電源部36については気密箱体20外に設ける構成とするのが好ましい。またこの構成例では処理部32と電源部36との間に制御部34を設けてあるがこれに限定されず、制御部34を電源部36のみに接続し、かつ処理部32と電源部36とを直接的に接続して、制御部34が電源部36を制御する構成としてもよい。
【0018】
電気機器30は、所望の処理を気密箱体20内で実行するための構成を備える任意好適な機器であり、電気機器30としては例えば水素酸化触媒用評価機器、水添触媒用評価機器などが挙げられる。
【0019】
処理部32による好適な処理としては、外部より能動的に気密箱体20内に水素ガスを導入して実施される接触水素化反応、反応系から水素ガスが発生する水分解光触媒の評価などが挙げられる。本発明の実施形態にかかる水素雰囲気制御装置を「反応系から水素ガスが発生する」処理に適用する場合には、特に必要がない限り、水素ガスの供給及び水素ガス制御バルブ52の動作制御は不要である。
【0020】
電源部36は、処理部32を動作させるための電力を供給する機能部である。制御部34は、電源部36の動作を制御して電源部36から処理部32へ供給される電力を遮断するなどして処理部32の動作を停止、シャットダウンさせたり、処理部32の動作などの状態を観測して直接的に制御したりすることができる機能部である。
【0021】
制御部34及び電源部36は、電気機器30に好適に用いることができれば特に限定されず、市場にて入手可能な任意好適な装置を用いることができる。制御部34としては、入力される信号に応じて処理部32及び電源部36の動作を制御できる装置であれば特に限定されず、後述する主制御部60と同様のコンピュータハードウェア、及びこのコンピュータハードウェアと協働するソフトウェア、電源部36へ電力を供給するか、又は遮断する開閉器、スイッチなどを用いることができる。
【0022】
水素雰囲気制御装置10は、測定部40を有している。測定部40は、気密箱体20内の雰囲気などの状況を観測する機能部である。この構成例では測定部40は、気密箱体20内の水素濃度を測定して測定値として取得することができる水素濃度測定部42と、気密箱体20内の酸素濃度を測定して測定値として取得することができる酸素濃度測定部44とにより構成されている。水素濃度測定部42は、水素ガス供給部54から直接的に気密箱体20内に供給される水素ガス、処理部32から放出される水素ガスの濃度を測定できるように構成される。酸素濃度測定部44は、外部環境から気密箱体20内に不可避的に侵入する酸素ガスの濃度を測定できるように構成される。
【0023】
測定部40としては、他に気密箱体20内の圧力を測定する圧力測定部、温度を測定する温度測定部などが例示されるがこれらに限定されない。
【0024】
水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44は取得した測定値を信号として他の機能部に伝達できる機能をさらに有している。水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44の配置は、その機能を果たすことができる限りにおいて特に限定されない。水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44は、気密箱体20内に配置してもよいし、気密箱体20外に配置してもよい。
【0025】
水素濃度測定部42は、測定対象である水素ガスが軽いため、気密箱体20内の鉛直上方方向に滞留しやすいことを考慮すると、気密箱体20内部の上面の近傍である高い位置に設けるか、又はこの高い位置における水素濃度を測定できるように配置するのがよい。
【0026】
水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44は、後述する排気部80を構成する配管の一部分に設け、気密箱体20から排出される気体の水素濃度、酸素濃度を測定してもよい。
【0027】
水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44は、市場にて入手可能な任意好適な水素センサ、酸素センサを利用することができる。
【0028】
水素濃度測定部42による水素濃度の測定範囲は0〜5体積%とするのが好適である。水素濃度測定部42としては、少なくともこの範囲で測定できる機器を選択するのが好適である。水素濃度測定部42の測定方式としては、合成波長光波干渉式が挙げられる。
【0029】
酸素濃度測定部44による酸素濃度の測定範囲は0〜25体積%とするのが好適である。酸素濃度測定部44の測定方式としては、ガルバニ電池式が挙げられる。
【0030】
水素雰囲気制御装置10は、水素ガス制御バルブ52を有している。水素ガス制御バルブ52は、水素ガス供給部54から気密箱体20又は気密箱体20内に格納される処理部32に供給される水素ガスの流量を調節する機能を有する。水素ガス制御バルブ52の構成は、その機能を果たすことができることを条件として任意好適な構成とすることができる。
【0031】
水素ガス供給部54は、例えば水素ガスが充填されたボンベと、一端がボンベに接続されており、他端が気密箱体20に接続される水素ガス供給用配管とにより構成することができる。この水素ガス供給用配管は、水素ガスにより劣化しにくい材料により構成された管状体により構成するのがよい。水素ガス制御バルブ52は、この水素ガス供給用配管に設けることができる。
【0032】
水素ガス制御バルブ52は、水素ガスにより劣化しにくい材料により形成されているものを用いるのが好適である。水素ガス制御バルブ52は、安全性の観点から、電気的な構成を有しない、例えば空気圧などにより動作する機械式のバルブを用いるのが好適である。水素ガス制御バルブ52は、水素ガスの流量を増加又は減少させるように制御できる構成を有するか、又は水素ガスの供給を遮断できる構成を有するものを用いることができる。
【0033】
水素雰囲気制御装置10は、不活性ガス供給部70を有している。不活性ガス供給部70は、気密箱体20内に不活性ガスを供給する機能部である。特に安全性の観点から、気密箱体20内には不活性ガスを供給するのが好適である。不活性ガスとしては、ヘリウムガス、窒素ガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガス、キセノンガス及びこれらの混合ガスが挙げられ、好ましくは窒素ガス又はアルゴンガスである。
【0034】
不活性ガス供給部70は、例えば不活性ガスが充填されたボンベと、一端がボンベに接続されており、他端が気密箱体20に接続される不活性ガス供給用配管とにより構成することができる。
【0035】
水素雰囲気制御装置10は排気部80を有している。排気部80は、気密箱体20内の水素ガス、不活性ガスを含む気体を外部環境に放出する機能部である。排気部80は、一端が気密箱体20に接続され、他端が外部環境に開放された管状体により構成して、気密箱体20内の気体が外部環境に自然に拡散するようにしてもよいし、例えば気密箱体内の気体を排出するポンプと、一端がポンプに接続されており、他端が気密箱体20に接続される排気用配管とにより構成してもよい。
【0036】
水素雰囲気制御装置10は、主制御部60を有している。主制御部60は、電気機器30の制御部34、水素ガス制御バルブ52、測定部40である水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44のそれぞれに電気通信回線90によりその動作が制御できるように接続されており、これらの機能部それぞれの動作を制御することが可能な機能部である。主制御部60は、制御部34により処理部32の動作を停止又は開始させたり、処理部34の動作の状態を制御部34を介して観測又は制御することができ、水素ガス制御バルブ52の開閉動作及び開閉量の増減によって水素ガス流量を調節することができ、さらには例えば測定部40である水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44による測定のタイミングを制御することができる機能部である。
【0037】
電気通信回線90は、電気、光等の媒体による有線又は無線の双方向に信号の送信及び受信が可能な情報回線である。この構成例では電気通信回線90は、第1信号線92、第2信号線94、第3信号線96を含んでいる。
【0038】
この構成例では、主制御部60と測定部40である水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44それぞれとは、第1信号線92により接続される。主制御部60と水素ガス制御バルブ52とは、第2信号線94により接続される。主制御部60と制御部34とは、第3信号線96により接続されている。
【0039】
第1信号線92は、水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44が測定した測定値を測定値信号として主制御部60に入力する信号線である。第2信号線94は、水素ガス制御バルブ52の動作を制御するための主制御部60からの制御信号を水素ガス制御バルブ52に入力する信号線である。第3信号線96は、電気機器30の制御部34の動作を制御するための主制御部60からの制御信号を制御部34に入力する信号線である。
【0040】
図2を参照して、主制御部60の機能的な構成について説明する。図2は、主制御部60の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、主制御部60は、信号入力部62と、信号入力部62と接続されている演算部64と、演算部64と接続されている信号出力部66とを含んでいる。
【0041】
信号入力部62は、第1信号線92により測定部40と接続されている。信号出力部66は第2信号線94により水素ガス制御バルブ52と接続され、かつ第3信号線96により制御部34に接続される。
【0042】
主制御部60は、演算部64に相当する例えばマイクロプロセッサ、信号入力部62及び信号出力部66に相当する例えばシリアル接続、パラレル接続のインターフェースを少なくとも備え、予め設定された設定値を読み出しできるように保存する記憶装置など従来公知の任意好適な構成を備えたコンピュータハードウェア、及びこのコンピュータハードウェアと協働するソフトウェアなどにより実現することができる。
【0043】
主制御部60は、複数の測定部40、すなわち水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44から入力された信号をそれぞれ独立して処理を実施することができる構成とするのが好ましい。
【0044】
本発明の実施形態にかかる水素雰囲気制御装置によれば、気密箱体20内の水素濃度及び酸素濃度を爆発限界より低く保った安全な状態で処理部32による長時間の処理を実施することができる。よって、水素ガスを用いるか、又は水素ガスが発生してしまう処理であっても安全に実施することができる。また気密箱体20内の水素濃度及び/又は酸素濃度が仮に想定外の高濃度となってしまった場合でも、水素ガスの濃度の制御と併せて電気機器30の停止、シャットダウンが速やかに実行できるため、爆発の危険を効果的に回避することができ、安全性が高い。
【0045】
〈水素酸化触媒用評価装置の構成例〉
図1及び図2を参照して説明した水素雰囲気制御装置の構成を応用した水素酸化触媒用評価装置の構成例にかかる実施形態について説明する。なお水素酸化触媒用評価装置の基本的な構成については、既に説明した水素雰囲気制御装置10と変わるところがないため、同一の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0046】
水素酸化触媒用評価装置10は、気密箱体20と、この気密箱体20内に格納される処理部である水素酸化触媒用評価部32と、水素酸化触媒用評価部32に接続される電源部36の動作を制御する制御部34と、気密箱体20内の水素濃度を測定する水素濃度測定部42と、気密箱体20内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定部44と、水素酸化触媒用評価部32に供給される水素ガスの流量を調節する水素ガス制御バルブ52と、制御部34、水素濃度測定部42、酸素濃度測定部44及び水素ガス制御バルブ52に接続され、これらの動作を制御する主制御部60とを備える。
【0047】
この構成例のように処理部32が水素酸化触媒用評価部である場合には、処理部32として例えばElectrochimica Acta 2007,52,5430−5436に開示されているようなリングディスク電極(RDE)装置又は特開2006−85976号公報に開示されているような半電池用膜/電極接合体(MEA)測定装置を用いることができる。
【0048】
評価処理としては、水素ガス制御バルブ52を設けた水素供給用配管に、例えば柔軟性を有するチューブなどの管状体を接続することにより水素酸化触媒用評価部32に水素ガスを供給する構成として、所定の電圧を印加したときに水素酸化触媒を坦持したRDE、MEAに流れる電流量を経時的に測定するサイクリックボルタンメトリーにより、水素酸化触媒の特性を評価する態様が例示される。
【0049】
こうしたサイクリックボルタンメトリーにおいては、一般に酸性の溶液が用いられるため、水素ガス供給部54から水素酸化触媒用評価部32に至るチューブなどを含む配管、トレイ、気密箱体などを、水素ガスに対する耐久性に加えて、酸に対する耐久性を有する材料により構成することが好ましい。チューブとしては例えばテフロン(登録商標)を材料とするチューブを用いるのが好ましく、トレイとしては例えばステンレス鋼を材料とするトレイを用いるのが好ましい。
【0050】
水素酸化触媒用評価装置10は、既に説明した水素雰囲気制御装置と同様に、気密箱体20に接続されて気密箱体20内のガスを排気する排気部80をさらに備え、水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44がこの排気部80を構成する例えば排気用配管に接続される構成とすることもできる。
【0051】
<水素雰囲気制御方法>
図1を参照して既に説明した水素雰囲気制御装置を用いる水素雰囲気制御方法の実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。図3は、水素雰囲気制御装置の動作の一例を説明するフローチャートである。
【0052】
本発明の実施形態にかかる水素雰囲気制御方法は、上述した水素雰囲気制御装置10を準備する工程と、水素濃度測定部42が水素濃度を測定して測定値を取得するステップ、及び酸素濃度測定部44が酸素濃度を測定して測定値を取得するステップのうちの少なくとも一方が行われる工程と、水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44のうちの少なくとも一方が、取得した測定値を主制御部60に入力する工程と、主制御部60が、入力された測定値と予め設定された第1の設定値とを比較する工程と、主制御部60が測定値が第1の設定値を超えていると判断した場合には、主制御部60が水素ガス制御バルブ52の動作を制御して水素ガスの供給を停止させるか、又は流量を減少させる調節工程とを含む。
【0053】
また本発明の実施形態にかかる水素雰囲気制御方法は、前記調節工程の後に、主制御部60が測定値と予め設定された第2の設定値とを比較する工程と、主制御部60が測定値が第2の設定値を超えていると判断した場合には、主制御部60が制御部34の動作を制御して、処理部32の動作を停止させる工程をさらに含むのが好適である。
【0054】
まず水素雰囲気制御装置10を準備する(ステップ0:S0、以下ステップを「S」と略す。)。水素雰囲気制御装置10の構成については、図1及び図2を参照して既に説明したとおりである。
【0055】
この準備工程において、第1の設定値及び第2の設定値などの動作制御用のパラメータを決定して主制御部60に入力しておく。
【0056】
この実施形態における第1の設定値は、水素濃度にかかる第1水素濃度設定値と、酸素濃度にかかる第1酸素濃度設定値とを含んでおり、低濃度側である爆発限界の範囲外の濃度に対応する設定値である。
【0057】
大気雰囲気下、すなわち酸素ガス存在下における水素ガスの爆発限界濃度の範囲は4〜75体積%である。従って4体積%未満であれば基本的には爆発の可能性はないと考えられる。このため気密箱体20内の水素濃度にかかる第1の設定値(第1水素濃度設定値)は4体積%よりも低濃度である濃度に設定することが好ましい。
【0058】
第1水素濃度設定値は、気密箱体20内の水素濃度が0.01体積%以上4体積%未満である範囲内で設定するのが好ましく、安全性の観点から、上限値としてより好ましくは3体積%未満、さらに好ましくは2体積%未満、特に好ましくは1体積%未満であり、下限値としてより好ましくは0.02体積%以上、さらに好ましくは0.05体積%以上、特に好ましくは0.10体積%以上で設定するのがよい。
【0059】
第2の設定値(第2水素濃度設定値)は4体積%よりも低濃度である濃度に設定するのが好ましい。第2水素濃度設定値は、安全性の観点から、第1水素濃度設定値の上記各範囲の上限値から4体積%未満に設定するのがより好ましい。なお第1の設定値と第2の設定値とは同一の値としてもよい。
【0060】
気密箱体20を構成する材料の選択などによっては、外部環境から気密箱体20内に不可避的に酸素ガスが侵入してしまうことが考えられる。可燃性化合物の燃焼に必要な最低酸素濃度(MOC:Minimum Oxygen Concentration)は、水素ガスの場合には5体積%であるため、気密箱体20内の酸素濃度が5体積%未満であれば爆発は生じない。このため気密箱体20内の酸素濃度にかかる第1の設定値(第1酸素濃度設定値)は5体積%よりも低濃度である濃度に設定することが好ましい。
【0061】
第1酸素濃度設定値は、気密箱体20内の酸素濃度が0.01体積%以上5体積%未満である範囲内で設定するのが好ましく、安全性の観点から、上限値としてより好ましくは4体積%未満、さらに好ましくは3体積%未満、特に好ましくは2体積%未満、とりわけ好ましくは1体積%未満であり、下限値としてより好ましくは0.02体積%以上、さらに好ましくは0.04体積%以上、特に好ましくは0.05体積%以上、とりわけ好ましくは0.10体積%以上で設定するのがよい。
【0062】
第2の設定値(第2酸素濃度設定値)は、5体積%よりも低濃度である濃度に設定するのが好ましい。第2酸素濃度設定値は、安全性の観点から、第1酸素濃度設定値の上記各範囲の上限値から5体積%未満に設定するのが好ましい。なお第1の設定値と第2の設定値とは同一の値としてもよい。
【0063】
次に不活性ガス供給部70から気密箱体20内に不活性ガスを供給し、かつ排気部80から気密箱体20内の気体を排出することにより、気密箱体20内に気流を発生させる。
【0064】
次いで水素濃度測定部42が気密箱体20内の水素濃度を測定して測定値を取得するステップと、酸素濃度測定部44が気密箱体20内の酸素濃度を測定して測定値を取得するステップとのうちの少なくとも一方が行われる(S1)。
この工程は、安全性の観点から、水素濃度にかかる測定値及び酸素濃度にかかる測定値の両方を取得する工程とするのが好ましい。
【0065】
次いで測定値を取得した水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44のうちの少なくとも一方が、取得した測定値を主制御部60に入力する(S2)。
取得された測定値は、データ信号として第1信号線92を介して、主制御部60の信号入力部62に入力される。信号入力部62に入力された測定値は、メモリ、ハードディスク装置のような記憶装置に一旦保存してもよい。
【0066】
次に主制御部60が、入力された水素濃度及び/又は酸素濃度にかかる測定値と予め設定された第1の設定値とを比較して、測定値が第1の設定値以下であるか否かを判断する(S3)。
この工程は、例えば主制御部60が記憶装置などに保存された測定値及び第1の設定値を読み出して相互に比較する工程であってもよい。
【0067】
主制御部60が気密箱体20内の水素濃度及び/又は酸素濃度が第1の設定値以下であることを確認すると(S3:Yes)、主制御部60が水素ガス制御バルブ52の動作を制御して水素ガス制御バルブ52を開くことにより水素ガスの供給を開始して、処理部32が所定の処理を実行して(S7)、さらに上述のS1から始まる工程を繰り返すか、又は終了するかを判断する後述の判断工程(S8)に移行する。
【0068】
この水素ガスの供給及び供給量の調整は、主制御部60の制御により水素ガス制御バルブ52を動作させることにより実施することができる。
【0069】
次に処理部32による処理と並行して行われる水素雰囲気制御装置10の動作について図3を参照して説明する。なお既に説明したステップと同一のステップについては参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
まず水素濃度測定部42が気密箱体20内の水素濃度を測定して測定値を取得するステップと、酸素濃度測定部44が気密箱体20内の酸素濃度を測定して測定値を取得するステップとのうちの少なくとも一方が行われる(S1)。
【0070】
次いで測定値を取得した水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44のうちの少なくとも一方が、取得した測定値を主制御部60に入力する(S2)。
取得された測定値は、データ信号として第1信号線92を介して、主制御部60の信号入力部62に入力される。
【0071】
次に主制御部60が、入力された水素濃度及び/又は酸素濃度にかかる測定値と予め設定された第1の設定値とを比較して、測定値が第1の設定値以下であるか否かを判断する(S3)。
【0072】
この比較工程において主制御部60が測定値が第1の設定値を超えていると判断した場合には(S3:No)、主制御部60が水素ガス制御バルブ52の動作を制御して水素ガスの供給を停止させるか、又は流量を減少させる調節工程が実施される(S4)。
【0073】
この調節工程(S4)の後に、主制御部60が測定値と予め設定された第2の設定値とを比較して、測定値が第2の設定値以下であるか否かを判断する(S5)。第2の設定値は既に説明したとおり、第1の設定値よりも爆発限界の範囲の下限に近いか、又は第1の設定値と同じ値に相当する値である。
【0074】
主制御部60が測定値が第2の設定値を超えていると判断した場合には(S5:Yes)、爆発の危険があるため、主制御部60が制御部34の動作を制御して、処理部32(電気機器30)の動作を速やかに停止、シャットダウンさせ(S6)、制御工程は終了する。
【0075】
主制御部60が、入力された水素濃度及び/又は酸素濃度にかかる測定値と予め設定された第2の設定値とを比較する工程(S5)において、主制御部60が測定値が第2の設定値以下であると判断した場合には(S5:No)、処理部32による処理は続行され、さらに上述のS1から始まる工程を繰り返すか、又は終了するかを判断する判断工程(S8)に移行する。
【0076】
主制御部60が、測定を終了する(S1から始まる工程を再度繰り返す必要はない)と判断した場合(S8:Yes)には、測定を終了して制御工程は終了する。
主制御部60が、測定を継続する(S1から始まる工程を再度繰り返す)と判断した場合(S8:No)には、水素濃度測定部42及び/又は酸素濃度測定部44による測定値の取得ステップ(S1)に戻って、再度(S1)から各工程が実施される。
【0077】
主制御部60によるこの判断工程(S8)は、処理部32による処理の終了と関連づけることができる。
S8にかかる判断工程は、例えば、主制御部60が処理部32による処理が終了しているか否かのような処理部32の動作の状態にかかる情報を、制御部34から取得して、処理部32による処理が終了している場合には、測定を終了すると判断し(S8:Yes)、処理部32による処理が終了していない場合には、測定を継続すると判断する(S8:No)工程とすることができる。なお主制御部60によるS8にかかる判断工程のうち、測定を終了するという判断は、この例に限定されず、爆発を防止できることを条件として、処理部34による処理の進行とは無関係に任意のタイミングでなされるようにしてもよい。
【0078】
主制御部60が、入力された水素濃度及び/又は酸素濃度にかかる測定値と予め設定された第1の設定値とを比較する工程(S3)において、主制御部60が測定値が第1の設定値以下であると判断した場合には(S3:Yes)、主制御部60が水素ガス制御バルブ52の動作を制御して水素ガスの供給量を増加させる調節工程が実施されるか、又は水素ガスの流量を維持して、処理部32による処理が続行される(S7)。
【0079】
次いで主制御部60は、上述したS1に戻って水素濃度及び/又は酸素濃度の測定を再度繰り返すか否かを判断する(S8)。
主制御部60が、測定を終了すると判断した場合(S8:Yes)には、測定を終了して制御工程は終了する。
主制御部60が、測定を継続すると判断した場合(S8:No)には、水素濃度測定部42及び/又は酸素濃度測定部44による測定値の取得ステップ(S1)に戻って、再度(S1)から各工程が実施される。
【0080】
〈水素酸化触媒の評価方法〉
図1、図2及び図3を参照して説明した水素雰囲気制御方法を応用した水素酸化触媒の評価方法にかかる実施形態について説明する。なお水素酸化触媒の評価方法の基本的な構成については、既に説明した水素雰囲気制御方法と変わるところがないため、同一の構成要素については同一番号を付してその詳細な説明を省略し、同一の工程については概略のみを説明してその詳細な説明を省略する場合がある。
【0081】
本発明の実施形態にかかる水素酸化触媒の評価方法は、水素酸化触媒用評価装置10の水素酸化触媒用評価部32に水素ガスを供給して水素酸化触媒の特性を評価する評価方法である。
水素酸化触媒の評価方法は、水素濃度測定部42が水素濃度を測定して測定値を取得するステップ、及び酸素濃度測定部44が酸素濃度を測定して測定値を取得するステップのうちの少なくとも一方が行われる工程と、水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44のうちの少なくとも一方が、取得した測定値を主制御部60に入力する工程と、主制御部60が、測定値と予め設定された第1の設定値とを比較する工程と、主制御部60が測定値が第1の設定値を超えていると判断した場合には、主制御部60が水素ガス制御バルブ52の動作を制御して水素ガスの供給を停止させるか、又は流量を減少させる調節工程とを含む。
【0082】
また水素酸化触媒の評価方法は、前記調節工程の後に、主制御部60が測定値と予め設定された第2の設定値とを比較する工程と、主制御部60が測定値が第2の設定値を超えていると判断した場合には、主制御部60が電源制御部34の動作を制御して、水素酸化触媒用評価部32の動作を停止させる工程をさらに含む。
【0083】
まず水素酸化触媒用評価装置10を準備する(S0)。水素酸化触媒用評価装置10の構成については、既に説明したとおりである。
【0084】
この準備工程において、第1の設定値及び第2の設定値などの動作制御用のパラメータを決定して主制御部60に入力しておく。
【0085】
この実施形態における第1の設定値及び第2の設定値については既に説明したとおりである。
【0086】
次に不活性ガス供給部70から気密箱体20内に不活性ガスを供給し、かつ排気部80から気密箱体20内の気体を排出することにより、気密箱体20内に気流を発生させる。
【0087】
次いで水素濃度測定部42が気密箱体20内の水素濃度を測定して測定値を取得するステップと、酸素濃度測定部44が気密箱体20内の酸素濃度を測定して測定値を取得するステップとのうちの少なくとも一方が行われる(S1)。
【0088】
次いで測定値を取得した水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44のうちの少なくとも一方が、取得した測定値を主制御部60に入力する(S2)。
【0089】
次に主制御部60が、入力された水素濃度及び/又は酸素濃度にかかる測定値と予め設定された第1の設定値とを比較して、測定値が第1の設定値以下であるか否かを判断する(S3)。
【0090】
主制御部60が気密箱体20内の水素濃度及び/又は酸素濃度が第1の設定値以下であることを確認すると(S3:Yes)、主制御部60が水素ガス制御バルブ52の動作を制御して水素ガス制御バルブ52を開くことにより水素ガスの供給を開始して、処理部32が所定の処理を実行して(S7)、さらに上述のS1から始まる工程を繰り返すか、又は終了するかを判断する判断工程(S8)に移行する。
【0091】
この水素ガスの供給及び供給量の調整は、主制御部60の制御により水素ガス制御バルブ52を動作させることにより実施することができる。
【0092】
次に処理部32による処理と並行して行われる水素雰囲気制御装置10の動作について図3を参照して説明する。なお既に説明したステップと同一のステップについては参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
まず水素濃度測定部42が気密箱体20内の水素濃度を測定して測定値を取得するステップと、酸素濃度測定部44が気密箱体20内の酸素濃度を測定して測定値を取得するステップとのうちの少なくとも一方が行われる(S1)。
【0093】
次いで測定値を取得した水素濃度測定部42及び酸素濃度測定部44のうちの少なくとも一方が、取得した測定値を主制御部60に入力する(S2)。
【0094】
次に主制御部60が、入力された水素濃度及び/又は酸素濃度にかかる測定値と予め設定された第1の設定値とを比較する(S3)。
【0095】
この比較工程において主制御部60が測定値が第1の設定値を超えていると判断した場合には(S3:No)、主制御部60が水素ガス制御バルブ52の動作を制御して水素ガスの供給を停止させるか、又は流量を減少させる調節工程が実施される(S4)。
【0096】
この調節工程(S4)の後に、主制御部60が測定値と予め設定された第2の設定値とを比較して、測定値が第2の設定値以下であるか否かを判断する(S5)。
主制御部60が測定値が第2の設定値を超えていると判断した場合には(S5:Yes)、爆発の危険があるため、主制御部60が制御部34の動作を制御して、水素酸化触媒用評価部32(電気機器30)の動作を速やかに停止、シャットダウンさせ(S6)、制御工程は終了する。
【0097】
主制御部60が、入力された水素濃度及び/又は酸素濃度にかかる測定値と予め設定された第2の設定値とを比較する工程(S5)において、主制御部60が測定値が第2の設定値以下であると判断した場合には(S5:No)、処理部32による処理は続行され、さらに上述のS1から始まる工程を繰り返すか、又は終了するかを判断する判断工程(S8)に移行する。
【0098】
主制御部60が、測定を終了すると判断した場合(S8:Yes)には測定を終了して制御工程は終了する。
主制御部60が、測定を継続すると判断した場合(S8:No)には、水素濃度測定部42及び/又は酸素濃度測定部44による測定値の取得ステップ(S1)に戻って、再度(S1)から各工程が実施される。
【0099】
主制御部60によるこの判断工程(S8)は、上述の通り、処理部32による処理の終了と関連づけることができるが、処理部32による処理の進行とは無関係に任意のタイミングでなされるようにしてもよい。
【0100】
主制御部60が、入力された水素濃度及び/又は酸素濃度にかかる測定値と予め設定された第1の設定値とを比較する工程(S3)において、主制御部60が測定値が第1の設定値以下であると判断した場合には、主制御部60が水素ガス制御バルブ52の動作を制御して水素ガスの供給量を増加させる調節工程が実施されるか、又は水素ガスの流量を維持して、水素酸化触媒用評価機器32による評価が続行される(S7)。
【0101】
次いで主制御部60は、上述したS1に戻って水素濃度及び/又は酸素濃度の測定を再度繰り返すか否かを判断する(S8)。
主制御部60が、測定を終了すると判断した場合(S8:Yes)には、測定を終了して制御工程は終了する。
主制御部60が、測定を継続すると判断した場合(S8:No)には、水素濃度測定部42及び/又は酸素濃度測定部44による測定値の取得ステップ(S1)に戻って、再度(S1)から各工程が実施される。
【0102】
なお本発明の実施形態にかかる水素雰囲気制御方法及び水素酸化触媒の評価方法は、以上の工程(S1)から(S8)において、主制御部60が測定値と第2の設定値とを比較する工程(S5)を実施せず、主制御部60が水素ガス制御バルブ52の動作を制御して水素ガスの供給を停止させるか、又は流量を減少させる調節工程(S4)が実施された後、速やかに主制御部60が制御部34の動作を制御して、処理部(水素酸化触媒用評価部)32の動作を速やかに停止、シャットダウンさせる工程(S6)を実施して即座に処理を打ち切る態様とすることもできる。
【0103】
また本発明の実施形態にかかる水素雰囲気制御方法及び水素酸化触媒の評価方法は、安全性を確保できることを条件として、主制御部60及び水素ガス制御バルブ52による水素ガスの流量制御のみによって実施することができる。
【0104】
本発明の実施形態にかかる水素雰囲気制御方法及び水素酸化触媒の評価方法によれば、以上の工程(S1)から工程(S8)を、任意好適な所定の間隔で、又は連続的に実施するため水素濃度及び酸素濃度の精密な制御が可能である。よって気密箱体20内の水素濃度及び/又は酸素濃度を爆発限界の範囲外に維持することができる。このため爆発の危険を減少させより安全に水素酸化触媒の評価方法に代表される所定の処理を実施することができる。
【0105】
また第1の設定値及びこの第1の設定値よりも爆発限界の範囲に近い第2の設定値を用いて水素雰囲気制御方法及び水素酸化触媒の評価方法を実施すれば、水素濃度及び/又は酸素濃度が第1の設定値と第2の設定値の間にある場合には、水素酸化触媒用評価機器に代表される処理部による処理を進めつつ、水素濃度及び/又は酸素濃度を低下させる方向に制御することができるので、処理を中止することなく長時間にわたって安全性を確保することができ、結果として処理効率を格段に向上させることができる。
【符号の説明】
【0106】
10 水素雰囲気制御装置、水素酸化触媒用評価装置
20 気密箱体
30 電気機器、水素酸化触媒用評価機器
32 処理部、水素酸化触媒用評価部
34 制御部
36 電源部
40 測定部
42 水素濃度測定部
44 酸素濃度測定部
52 水素ガス制御バルブ
60 主制御部
62 信号入力部
64 演算部
66 信号出力部
70 不活性ガス供給部
80 排気部
90 電気通信回線
92 第1信号線
94 第2信号線
96 第3信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密箱体と、該気密箱体内に格納される処理部と、該処理部に接続される電源部の動作を制御する制御部と、前記気密箱体内の水素濃度を測定する水素濃度測定部と、前記気密箱体内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、前記気密箱体に供給される水素ガスの流量を調節する水素ガス制御バルブと、前記制御部、前記水素濃度測定部、前記酸素濃度測定部及び前記水素ガス制御バルブに接続され、これらの動作を制御する主制御部と
を備える、水素雰囲気制御装置。
【請求項2】
気密箱体と、該気密箱体内に格納される水素酸化触媒用評価部と、該水素酸化触媒用評価部に接続される電源部の動作を制御する制御部と、前記気密箱体内の水素濃度を測定する水素濃度測定部と、前記気密箱体内の酸素濃度を測定する酸素濃度測定部と、前記水素酸化触媒用評価部に供給される水素ガスの流量を調節する水素ガス制御バルブと、前記制御部、前記水素濃度測定部、前記酸素濃度測定部及び前記水素ガス制御バルブに接続され、これらの動作を制御する主制御部と
を備える、水素酸化触媒用評価装置。
【請求項3】
請求項1に記載の水素雰囲気制御装置を準備する工程と、
水素濃度測定部が水素濃度を測定して測定値を取得するステップ、及び酸素濃度測定部が酸素濃度を測定して測定値を取得するステップのうちの少なくとも一方が行われる工程と、
前記水素濃度測定部及び前記酸素濃度測定部のうちの少なくとも一方が、取得した前記測定値を主制御部に入力する工程と、
前記主制御部が、前記測定値と予め設定された第1の設定値とを比較する工程と、
前記主制御部が前記測定値が前記第1の設定値を超えていると判断した場合には、該主制御部が水素ガス制御バルブの動作を制御して水素ガスの供給を停止させるか、又は流量を減少させる調節工程と
を含む、水素雰囲気制御方法。
【請求項4】
前記調節工程の後に、前記主制御部が前記測定値と予め設定された第2の設定値とを比較する工程と、
前記主制御部が前記測定値が前記第2の設定値を超えていると判断した場合には、該主制御部が前記制御部の動作を制御して、前記処理部の動作を停止させる工程をさらに含む、請求項3に記載の水素雰囲気制御方法。
【請求項5】
請求項2に記載の水素酸化触媒用評価装置の水素酸化触媒用評価部に水素ガスを供給して水素酸化触媒の特性を評価する、水素酸化触媒の評価方法において、
水素濃度測定部が水素濃度を測定して測定値を取得するステップ、及び酸素濃度測定部が酸素濃度を測定して測定値を取得するステップのうちの少なくとも一方が行われる工程と、
前記水素濃度測定部及び前記酸素濃度測定部のうちの少なくとも一方が、取得した前記測定値を主制御部に入力する工程と、
前記主制御部が、前記測定値と予め設定された第1の設定値とを比較する工程と、
前記主制御部が前記測定値が前記第1の設定値を超えていると判断した場合には、該主制御部が水素ガス制御バルブの動作を制御して水素ガスの供給を停止させるか、又は流量を減少させる調節工程と
を含む、水素酸化触媒の評価方法。
【請求項6】
前記調節工程の後に、前記主制御部が前記測定値と予め設定された第2の設定値とを比較する工程と、
前記主制御部が前記測定値が前記第2の設定値を超えていると判断した場合には、該主制御部が前記制御部の動作を制御して、前記水素酸化触媒用評価部の動作を停止させる工程をさらに含む、請求項5に記載の水素酸化触媒の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−30995(P2012−30995A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170445(P2010−170445)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】