説明

水耕栽培用台車

【課題】水耕栽培を行う植物栽培施設において好適に用いられる水耕栽培用台車を提供する。
【解決手段】その上面に水耕栽培用パレットを載置可能なように所定の間隔をあけて積層された複数の棚板を有するパレット載置部と、前記パレット載置部の底部に設けられ、前記パレット載置部を水平方向に移動可能に支持する複数の車輪と、前記パレット載置部の底部に設けられ、フォークリフトの爪が挿入可能な孔を有し、前記孔にフォークリフトの爪を挿入した状態で前記爪の上下動に伴って前記パレット載置部が昇降可能であるように前記爪を保持する爪保持部材と、を備えており、前記棚板が、その上面を液体が一方向に流れるように所定の方向に傾斜して設けてあるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培を行う植物栽培施設において好適に用いられる水耕栽培用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、食品の安全性に対する要求の高まりと健康志向とが相まって無農薬作物に対する需要が増加している。このため、人工光を利用して水耕栽培を行う閉鎖型の植物栽培施設を利用した野菜工場が注目されている。
【0003】
このような野菜工場等の植物栽培施設では、上下方向に多段に積み上げた栽培棚を備える栽培台を複数設置し、各栽培棚には植物が植栽された水耕栽培用パレットを載置し、各栽培棚の上部に人工照明設備を設け植物に光を照射し、部屋全体の温度・湿度条件を植物の生育に適するものに維持して植物を栽培している(特許文献1)。このような多段栽培は限られた室内の空間を有効に利用し、床面積あたりの収穫量を増大させるために好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−21065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多段栽培において上段の栽培棚へ水耕栽培用パレットを上げ下ろしするには、作業者が梯子やリフト等での昇り降りを繰り返さなければならず、この作業は多大な労力を要する極めて煩雑な作業であり、作業者にとって過大な負担となっている。また、水耕栽培された植物には多量の水分が付着しているので、植物からの水垂れを防ぐために水切り作業が必要であり、この作業も手間のかかるものである。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みなされたものであって、水耕栽培を行う植物栽培施設において好適に用いられる水耕栽培用台車を提供することをその主たる所期課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る水耕栽培用台車は、その上面に水耕栽培用パレットを載置可能なように所定の間隔をあけて積層された複数の棚板を有するパレット載置部と、前記パレット載置部の底部に設けられ、前記パレット載置部を水平方向に移動可能に支持する複数の車輪と、前記パレット載置部の底部に設けられ、フォークリフトの爪が挿入可能な孔を有し、前記孔にフォークリフトの爪を挿入した状態で前記爪の上下動に伴って前記パレット載置部が昇降可能であるように前記爪を保持する爪保持部材と、を備えており、前記棚板が、その上面を液体が一方向に流れるように所定の方向に傾斜して設けてあることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、前記爪保持部材に設けられた孔にフォークリフトの爪を挿入することにより、本発明に係る水耕栽培用台車をフォークリフトに装着することができるので、棚板に載置した水耕栽培用パレットを台車ごとフォークリフトにより上げ下げすることができ、多段栽培において上段の栽培棚へ水耕栽培用パレットを上げ下ろしする際に、作業者は梯子やリフト等での昇り降りを繰り返す必要がなく、作業者が梯子やリフト等で上昇した状態のままで上段の栽培棚への水耕栽培用パレットの上げ下ろしを行うことができる。
【0009】
また、前記棚板が、その上面を液体が一方向に流れるように所定の方向に傾斜して設けてあることより、収穫期に達した植物が植わっている水耕栽培用パレットを運搬する際には、植物に付着した水分が台車の振動により落下し、棚板上を下がり傾斜した方向に流れ落ちるので、水切りを効率的に行うことができる。
【0010】
更に、前記棚板には、水分の流れを制御しやすいように、その上面に溝が形成してあってもよい。
【0011】
また、本発明に係る水耕栽培用台車の移動に伴い効果的に振動が生じ、より効率的に植物の水切りを行うことができるように、車輪の接地面に凹凸が形成してあってもよい。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明によれば、多段栽培における上段の栽培棚への水耕栽培用パレットの上げ下ろし作業や、収穫した植物の水切り作業が格段に容易になり、作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る水耕栽培用台車の斜視図である。
【図2】同実施形態における栽培棚ユニットの斜視図である。
【図3】他の実施形態に係る水耕栽培用台車の斜視図である。
【図4】他の実施形態に係る水耕栽培用台車の斜視図である。
【図5】他の実施形態に係る水耕栽培用台車の斜視図である。
【図6】他の実施形態に係る水耕栽培用台車の部分斜視図である。
【図7】他の実施形態に係る水耕栽培用台車の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態に係る水耕栽培用台車1は、水耕栽培を行う植物栽培施設において用いられるものであり、図1に示すように、所定の間隔をあけて積層された複数の棚板21を有するパレット載置部2と、パレット載置部2の底部に設けられた複数の車輪3と、パレット載置部2の底部に設けられ、フォークリフトの爪Fを挿入可能な孔41を有する爪保持部材4と、を備えたものである。
【0016】
各部を詳述する。パレット載置部2は、複数の棚板21と、棚板21を支持する4本の支柱22と、後方に位置する2本の支柱22の上端に設けられた把持部材23と、から構成される。
【0017】
棚板21は、ステンレス鋼等からなる板状体であり、複数の棚板21が、4本の支柱22により支持されて、その上面に水耕栽培用パレット5Pを載置可能なように所定の間隔をあけて積層されている。棚板21は、水耕栽培用台車1の前方に向かって僅かに下がり傾斜して設けてある。本実施形態では4枚の棚板21が設けてあるが、棚板21の枚数は特に限定されず、用途に応じて適宜選択すればよい。
【0018】
把持部材23は、水耕栽培用パレット5Pを運搬する作業者が把持して水耕栽培用台車1を押し引きするためのものであり、水耕栽培用台車1の後方に位置する2本の支柱22の上端に設けられている。
【0019】
車輪3は、水耕栽培用台車1が水平方向に移動可能なように、4本の各支柱22の下端に設けられている。
【0020】
爪保持部材4は、フォークリフトの爪Fが挿入可能な孔41を有し、孔41にフォークリフトの爪Fを挿入した状態で爪Fの上下動に伴ってパレット載置部2が昇降可能であるように爪Fを保持するものであり、本実施形態においては、最下段の棚板21bの底面上であって、水耕栽培用台車1の前方及び後方にそれぞれ2個ずつが、装着させるフォークリフトの2本の爪Fと等しい間隔をあけて設けられている。
【0021】
本実施形態に係る水耕栽培用台車1をフォークリフトにより昇降させるには、まず、水耕栽培用台車1の左右に位置するそれぞれ2個の爪保持部材4に設けられた孔41にフォークリフトの2本の各爪Fを挿入し貫通させて挿着し、そして、この状態でフォークリフトの爪Fを上下動させることにより、水耕栽培用台車1を昇降させることができる。
【0022】
本実施形態に係る水耕栽培用台車1は、水耕栽培用パレット5Pを運搬するために用いられるが、水耕栽培用パレット5Pは水耕栽培に供する植物をその根が液肥に浸るように保持するためのものであり、その大きさや形状は特に限定されない。
【0023】
水耕栽培用パレット5Pを用いて多段栽培により水耕栽培を行うには、例えば、図2に示すような栽培棚ユニット5を用いる。このような栽培棚ユニット5は、複数段の栽培棚52を備えるものであり、複数の支柱51と、この支柱51に支持させた植物生育用の栽培棚52と、栽培棚52で生育する植物を照明するための光照射装置53とを具備している。栽培棚52は、複数の水耕栽培用パレット5Pを一列に並べた状態で載置し得るように、上面を開口させた略箱体状のものである。
【0024】
水耕栽培用パレット5Pを用いて水耕栽培を行うには、まず、植物の苗を植え付けた水耕栽培用パレット5Pを栽培棚52に配置する。次いで、上流側の端部に設けた供給口522から各栽培棚52に所定の液肥を流入させて、植物に養分を供給し、光照射装置53から光を照射しながら植物を栽培する。栽培棚52に流入した液肥の液面が所定の高さを超えると、余剰の液肥は下流側の端部に設けた排出口521から排出される。そして、植物が生育し収穫期に達したならば、栽培棚52から液肥を排出し、水耕栽培用台車1をフォークリフトにより上昇させて、水耕栽培用パレット5Pを棚板21上に取り出し、水耕栽培用台車1ごと下降させて搬送する。
【0025】
したがってこのような構成を有する本実施形態によれば、爪保持部材4に設けられた孔41にフォークリフトの爪Fを挿入することにより、水耕栽培用台車1をフォークリフトに装着することができるので、棚板21に載置した水耕栽培用パレット5Pを台車1ごとフォークリフトにより上げ下げすることができるので、多段栽培における上段の栽培棚52へ水耕栽培用パレット5Pを上げ下ろしする際に、作業者は梯子やリフト等での昇り降りを繰り返す必要がなく、作業者が梯子やリフト等で上昇した状態のままで上段の栽培棚52への水耕栽培用パレット5Pの上げ下ろしを行うことができる。
【0026】
また、棚板21が水耕栽培用台車1の前方に向かって僅かに下がり傾斜して設けられていることより、収穫可能となった植物が植栽されている水耕栽培用パレット5Pを栽培棚52から回収して、棚板21に載置して水耕栽培用台車1を移動すると、移動時の台車1の振動により植物に付着した水分が落下し、棚板21上を下がり傾斜した前方に流れ落ちるので、水切りを効率的に行うことができる。この際、把持部23とは逆の方向に水分が流れ落ちるので作業者が濡れることなく水切りを行うことができる。
【0027】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0028】
例えば、本発明に係る水耕栽培用台車は、図3に示すように、支持板24が棚板21を支持するように構成してあってもよく、図4に示すように、枠体25中に棚板21が架設されるように構成してあってもよい。
【0029】
また、車輪3及び爪保持部材4の設置位置は特に限定されず、例えば、図3に示すように、支持板24が棚板21を支持する場合は、支持板24の下端に車輪3が設けてあってもよく、図4に示すように、枠体25中に棚板21が架設してある場合は、当該枠体25の下部に車輪3及び爪保持部材4が設けてあってもよい。
【0030】
更に、棚板21には、図5に示すように、水分の流れを制御しやすいように、傾斜に沿って溝26が形成してあってもよい。この際、溝26内に水分が溜まることがないように、長尺な凸部27間に溝26が形成されていることが好ましい。
【0031】
また、爪保持部材4は、水耕栽培用台車1の前後に2個ずつ計4個備わっていなくともよく、図6に示すように、前後の爪保持部材4が延伸し連結して一体となった長尺な爪保持部材4が2個備わっていてもよく、図7に示すように、4個の爪保持部材4が前後左右に延伸・拡開し一体となった幅広の爪保持部材4が1個備わっていてもよい。
【0032】
更に、水耕栽培用台車1の移動に伴い効果的に振動が生じ、より効率的に植物の水切りを行うことができるように、車輪22の接地面に凹凸が形成してあってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
このような構成を有する本発明は、多段栽培による水耕栽培において、上段の栽培棚への水耕栽培用パレットの上げ下ろし作業や、植物の水切り作業を格段に容易にし、作業者の負担を大幅に軽減することができるので、水耕栽培を行う植物栽培施設において好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
1・・・水耕栽培用台車
2・・・パレット載置部
21・・・棚板
3・・・車輪
4・・・爪保持部材
41・・・孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上面に水耕栽培用パレットを載置可能なように所定の間隔をあけて積層された複数の棚板を有するパレット載置部と、
前記パレット載置部の底部に設けられ、前記パレット載置部を水平方向に移動可能に支持する複数の車輪と、
前記パレット載置部の底部に設けられ、フォークリフトの爪が挿入可能な孔を有し、前記孔にフォークリフトの爪を挿入した状態で前記爪の上下動に伴って前記パレット載置部が昇降可能であるように前記爪を保持する爪保持部材と、を備えており、
前記棚板が、その上面を液体が一方向に流れるように所定の方向に傾斜して設けてあることを特徴とする水耕栽培用台車。
【請求項2】
前記棚板は、その上面に溝が形成してある請求項1記載の水耕栽培用台車。
【請求項3】
前記車輪は、その接地面に凹凸が形成してある請求項1又は2記載の水耕栽培用台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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