説明

水膨潤可能なポリマーの存在で紙、厚紙およびボール紙を製造する方法

本発明は、水膨潤可能なポリマーを繊維懸濁液に添加することにより水膨潤可能なポリマーの存在で紙、厚紙およびボール紙を製造する方法に関する。前記方法により、水膨潤可能なポリマーを含有する繊維懸濁液を叩解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水膨潤可能なポリマーの存在で紙、厚紙、ボール紙を製造する方法に関する。本発明は更に紙、厚紙およびボール紙を製造する際の水膨潤可能なポリマーの使用ならびに水膨潤可能なポリマーを有するポリマー生成物に関する。
【0002】
本発明の範囲の水膨潤可能なポリマーはその自重の少なくとも1%の水を吸収できるポリマーである。水膨潤可能なポリマーは有利にその自重の少なくとも10%、特にその自重の少なくとも25%、特に有利にその自重の少なくとも50%の水を吸収する。本発明の範囲の水膨潤可能なポリマーは特にいわゆる超吸収ポリマーであり、その自重の少なくとも100%の水を吸収できる。これらは例えば(共)重合された親水性モノマーからなるポリマー、適当なグラフト基体上の1種以上の親水性モノマーのグラフト(コ)ポリマー、架橋したセルロースエーテルまたは澱粉エーテル、架橋したカルボキシメチルセルロース、部分架橋したポリアルキレンオキシドまたは水性液体中で膨潤可能な天然生成物、例えばグアル誘導体である。これらのヒドロゲルは一般にゲル状懸濁液を吸収する生成物としてオムツ、タンポン、生理用品および他の衛生用品の製造に、更に保水剤として園芸に使用される。
【0003】
水膨潤可能なポリマーの使用は他の分野でも注目される。従来はティッシュペーパーの水吸収能力を高めるために、同時に湿潤強度を維持してポリウレタンフォームおよびいわゆる風成セルロースマットを使用する。これは同様に包装材料の製造に使用され、その際包装材料が同時に液体を吸収する場合は同様に強度を保持すべきである。その際例えば低温凍結食品の包装が問題である。製紙において紙の強度を損なわない体積の増加(いわゆるバルク)が望ましい。これは同様に水膨潤可能なポリマーの可能な使用分野である。
【0004】
欧州特許第0437816号は以下の工程を有する方法により得られる高吸収性湿式堆積フリース材料を記載する。超吸収剤ポリマー粒子を液体と混合して懸濁液を形成し、こうして得られた懸濁液を繊維と混合し、超吸収剤ポリマー/繊維混合物を濾過し、引き続き高吸収性湿式堆積フリース材料を維持しながら乾燥する。こうして得られた材料を例えばオムツ、失禁用品、食品の包装紙およびばんそうこうのような包帯材料に使用する。
【0005】
欧州特許第1068392号から吸収構造体を製造するための改良された方法が公知である。それによりフリースを形成する装置中で湿式法により、付加的に水膨潤可能な、水不溶性超吸収剤粒子を含有する繊維懸濁液を処理する。湿った超吸収剤粒子を含有する、湿ったフリースを形成し、水を除去し、引き続き乾燥部分に搬送する。その際乾燥部分にフリースが流入するまでの超吸収剤と懸濁液の接触が最高で45秒であり、それにより超吸収剤は十分な膨潤時間が得られない。
【0006】
米国特許第5997690号および米国特許第6290813号は高吸収湿式堆積フリース材料の製造方法を開示し、その際まず水膨潤可能な、水不溶性超吸収剤粒子と繊維の懸濁液を製造し、その際超吸収剤粒子は添加する前に250μ未満の粒度を有する。この懸濁液に引き続き塩含有溶液を添加する。その後湿ったストリップを形成し、ストリップを水で洗浄し、引き続き乾燥する。こうして得られた湿式堆積フリース材料は乾燥状態で40%未満の残留塩含量を有する。
【0007】
米国特許2002/0060013号は熱可逆的液体吸収能力を有する吸収性ポリマー少なくとも1質量%を含有する湿式堆積フリース材料の製造方法に関する。
【0008】
米国特許2003/004038号から液体透過性被膜中に存在する膨潤可能な、分枝状超吸収性粒子を有するコアを有する超吸収性物品が公知である。この文献に開示される物品は有効な量の抗生物質または抗菌剤を有することができ、医学分野での最終生成物に使用できる。
【0009】
技術水準の方法の欠点は前記の問題を十分に解決もしくは取り除けないことである。
【0010】
従って本発明の課題は、前記の問題、すなわち紙の厚さに比較して大きい膨潤したポリマーおよび他方で一般に99.9質量%である、膨潤したポリマーの高い含水量を取り除く、水膨潤可能なポリマーの存在で紙、厚紙およびボール紙を製造する方法を見出すことであった。
【0011】
前記課題は、水膨潤可能なポリマーを繊維懸濁液に添加し、その際水膨潤可能なポリマーを含有する繊維懸濁液を叩解することにより、水膨潤可能なポリマーの存在で紙、厚紙およびボール紙を製造する方法により解決された。
【0012】
本発明の範囲の水膨潤可能なポリマーは、その自重の少なくとも1%の水を吸収できる吸水性ポリマーのことである。水膨潤可能なポリマーは有利にその自重の少なくとも10%、特にその自重の少なくとも25%、特に有利にその自重の少なくとも50%の水を吸収する。本発明の範囲の水膨潤可能なポリマーは特にその自重の少なくとも100%の水を吸収することができる、いわゆる超吸収性ポリマーである。これは例えば(共)重合された親水性モノマーからなるポリマー、適当なグラフト基体上の1種以上の親水性モノマーのグラフト(コ)ポリマー、架橋したセルロースエーテルまたは澱粉エーテル、架橋したカルボキシメチルセルロース、部分架橋したポリアルキレンオキシドまたは水性液体中で膨潤可能な天然生成物、例えばグアル誘導体である。これらのヒドロゲルは一般に水性溶液を吸収する生成物としてオムツ、タンポン、生理用品および他の衛生用品の製造に使用される。
【0013】
本発明の方法により水膨潤可能なポリマーを含有する繊維懸濁液を叩解する。この叩解は一般にショッパー・リーグラー(Schopper−Riegler)による叩解度10、有利に25、特に35、特に有利に50、殊に70まで行う。叩解は例えば通常のパルパー中で行うことができる。
【0014】
引き続き水膨潤可能なポリマーを含有する繊維懸濁液を通常の製紙工程で処理する。有利に叩解後に紙処理用化学薬品を添加する。もちろん繊維懸濁液に膨潤可能なポリマーを添加する前にすでに紙処理用化学薬品を添加してもよい。
【0015】
水膨潤可能なポリマーを含有する混合物は、紙処理用化学薬品を添加する前におよびその後にそれぞれ1個以上のせん断工程を行うことができる。引き続きシーブ上でシートを形成し、シートを乾燥して混合物を脱水する。
【0016】
紙処理用化学薬品として一般に製紙に使用される添加物、例えば定着剤、マイクロ粒子系を含む保留剤、耐乾燥剤および耐湿剤、原料接着剤、殺生物剤および/または塗料を一般的な量で添加する。
【0017】
本発明の方法において繊維懸濁液に水膨潤可能なポリマー0.1〜20質量%を添加する。繊維懸濁液中の水膨潤可能なポリマーの量はそれぞれ懸濁液の乾燥含量に対して有利に0.5〜10質量%、特に0.8〜5質量%、特に有利に1〜2.5質量%である。
【0018】
水膨潤可能なポリマーを導入する繊維懸濁液はそれぞれ懸濁液の乾燥含量に対して一般に0.5〜4質量%、有利に0.5〜2.5質量%、特に0.8〜1.5質量%の繊維を含有する。特に有利に懸濁液は懸濁液の乾燥含量に対して約1質量%の繊維の割合を有する。
【0019】
水膨潤可能なポリマーは水溶液中で膨潤する前にすべての粒度を有することができるが、10nm〜10mmの範囲の粒度が有利であり、特に50nm〜5mm、特に有利に100nm〜1mmの範囲である。水膨潤可能なポリマーは膨潤後に一般的に100nm〜100mm、有利に0.5mm〜25mm、特に有利に0.1mm〜10mmの範囲の粒度を有する。
【0020】
繊維懸濁液への水膨潤可能なポリマーの添加形式は重要でない。従って例えば繊維の固体混合物を水膨潤可能なポリマーの固体の繊維の混合物と、個々の成分のすでに記載された量範囲で互いに混合することができる。引き続き混合物に十分な水を添加し、水膨潤可能なポリマーを含有する繊維懸濁液が形成される。水膨潤可能なポリマーにこの方法で繊維の存在で膨潤する可能性が付与される。
【0021】
水中で水膨潤可能なポリマーが膨潤する、水中の水膨潤可能なポリマーのゲル状懸濁液を用意することが同様に可能であり、その際このゲル状懸濁液を引き続き繊維懸濁液に添加する。本発明の方法のこの実施態様において、膨潤した水膨潤可能なポリマーを有するゲル状懸濁液をせん断工程にさらす場合が可能である。その際時間およびせん断速度は使用される水膨潤可能なポリマーに依存する。最適な時間およびせん断速度は当業者が一般的な試験の枠内で測定する。
【0022】
本発明の方法の他の実施態様において、水膨潤可能なポリマーを噴霧により繊維懸濁液に導入する。
【0023】
当然ながら本発明の方法に多くの水膨潤可能なポリマーを使用できる。前記ポリマーは混合物として同時におよび互いに別々に繊維懸濁液に添加できる。しかし有利に1種の水膨潤可能なポリマーを使用する。
【0024】
超吸収性ポリマーの製造方法は、Modern Superabsorbent Polymer Technology、F.L.Buchholz and A.T.Graham、Wiley−VCH、1998、69−118頁に記載されている。
【0025】
本発明の方法に使用できる超吸収性ポリマー粒子は、
i)少なくとも1種のエチレン性不飽和の、酸基を有するモノマー、
ii)少なくとも1種の架橋剤、
iii)場合により1種以上の、i)と共重合可能なエチレン性および/またはアリル性不飽和モノマー、および
iv)場合により、モノマーi)、ii)および場合によりiii)を少なくとも部分的にグラフトできる、1種以上の水溶性ポリマー
を含有するモノマー溶液を重合させることにより製造され、その際得られたベースポリマーを乾燥し、分級し、
v)場合により少なくとも1種の後架橋剤で後処理し、乾燥し、熱により後架橋する。
【0026】
適当なモノマーi)は例えばエチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸、またはその誘導体、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルである。特に有利なモノマーはアクリル酸およびメタクリル酸である。きわめて有利にはアクリル酸である。
【0027】
モノマーi)、特にアクリル酸は有利に0.025質量%までのヒドロキノン半エーテルを含有する。有利なヒドロキノン半エーテルはヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)および/またはトコフェロールである。
【0028】
トコフェロールは以下の式:
【化1】

の化合物であり、式中、Rは水素またはメチルであり、Rは水素またはメチルであり、Rは水素またはメチルであり、Rは水素または1〜20個の炭素原子を有する酸基である。
【0029】
の有利な基はアセチル、アスコルビル、スクシニル、ニコチニル、および他の生理的に認容されるカルボン酸である。カルボン酸はモノ−、ジ−またはトリカルボン酸であってもよい。
【0030】
、R、Rがメチルであるα−トコフェロールが有利であり、特にラセミ体α−トコフェロールである。Rは特に有利に水素またはアセチルである。RRR−α−トコフェロールが特に有利である。
【0031】
モノマー溶液はそれぞれアクリル酸に対して、有利に最高で130質量ppm、特に最高で70質量ppm、有利に最低で10質量ppm、特に最低で30質量ppm、特に有利に50質量ppmのヒドロキノン半エーテルを含有し、その際アクリル酸塩は計算上はアクリル酸として考慮する。例えばモノマー溶液を製造するために、相当するヒドロキノン半エーテルの含量を有するアクリル酸を使用することができる。
【0032】
超吸収性ポリマーは架橋され、すなわちポリマーネットワークにラジカル重合できる少なくとも2個の重合可能な基を有する化合物の存在で重合を行う。適当な架橋剤ii)は例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、欧州特許第0530438号に記載されるようなテトラアリルオキシエタン、欧州特許第547847号、欧州特許第559476号、欧州特許第632068号、WO93/21237号、WO03/104299号、WO03/104300号、WO03/104301号およびドイツ特許出願番号10331450.4号に記載されるようなジ−およびトリアクリレート、ドイツ特許出願番号103310450.3号および10355401.7号に記載されるようなアクリレート基のほかに他のエチレン性不飽和基を含有する混合アクリレート、または例えばドイツ特許第19543368号、ドイツ特許第19646484号、WO90/15830号およびWO02/32962号に記載されるような架橋剤混合物である。
【0033】
適当な架橋剤ii)は特にN,N´−メチレンビスアクリルアミド、およびN,N´−メチレンビスメタクリルアミド、不飽和モノ−またはポリカルボン酸とポリオールのエステル、例えばジアクリレートまたはトリアクリレート、例えばブタンジオールまたはエチレングリコールのジアクリレートもしくはジメタクリレート、およびトリメチロールプロパントリアクリレート、およびアリル化合物、例えばアリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、マレイン酸ジアリルエステル、ポリアリルエステル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルアミン、テトラアリルエチレンジアミン、燐酸のアリルエステルおよびビニルホスホン酸誘導体、例えば欧州特許第0343427号に記載されるものである。更に適当な架橋剤ii)はペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ソルビトールをベースとするポリアリルエーテル、およびそのエトキシル化変態である。
【0034】
しかし特に有利な架橋剤ii)は3〜20箇所エトキシル化されたグリセリン、3〜20箇所エトキシル化されたトリメチロールプロパン、3〜20箇所エトキシル化されたトリメチロールエタンのジ−およびトリアクリレート、特に2〜6箇所エトキシル化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパン、3箇所プロポキシル化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパンおよび3箇所エトキシル化またはプロポキシル化された混合グリセリンまたはトリメチロールプロパン、15箇所エトキシル化されたグリセリンまたはトリメチロールプロパン、および少なくとも40箇所エトキシル化されたグリセリン、トリメチロールエタン、またはトリメチロールプロパンのジ−およびトリアクリレートである。
【0035】
特に有利な架橋剤ii)は、例えば先願のドイツ特許出願番号10319462.2号に記載されるようなアクリル酸またはメタクリル酸でジ−およびトリアクリレートにエステル化された多数回エトキシル化および/またはプロポキシル化されたグリセリンである。特に有利に3〜10箇所エトキシル化されたグリセリンのジ−および/またはトリアクリレートである。特に有利に1〜5箇所エトキシル化および/またはプロポキシル化されたグリセリンのジ−またはトリアクリレートである。最も有利には3〜5箇所エトキシル化および/またはプロポキシル化されたグリセリンのトリアクリレートである。これは超吸収性ポリマー中の特に低い残留含量(典型的に10質量ppm未満)により際立っており、これにより製造された超吸収性ポリマーの水性抽出液は同じ温度の水に比較してほとんど変化しない表面張力(典型的に少なくとも0.068N/m)を有する。
【0036】
モノマーi)と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーiii)は例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、クロトン酸アミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノブチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノネオペンチルアクリレート、およびジメチルアミノネオペンチルメタクリレートである。
【0037】
水溶性ポリマーiv)としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、澱粉、澱粉誘導体、ポリグリコール、またはポリアクリル酸、有利にポリビニルアルコール、および澱粉を使用する。
【0038】
適当なベースポリマーの製造および他の適当な親水性エチレン性不飽和モノマーi)はドイツ特許第19941423号、欧州特許第686650号、WO01/45758号およびWO03/104300号に記載されている。
【0039】
反応は有利に例えばWO01/38402号に記載されるような混練機中で、または例えば欧州特許第955086号に記載されるようなベルト反応器上で行う。
【0040】
有利にヒドロゲルを、重合反応器を離れた後に、なお高温、有利に少なくとも50℃、特に少なくとも70℃、特に有利に少なくとも80℃、有利に100℃未満の温度で、例えば断熱された容器中で保存する。一般に2〜12時間の保存によりモノマー変換が更に高まる。
【0041】
得られたヒドロゲルの酸基は一般に部分的に中和され、有利に25〜95モル%、有利に27〜80モル%、特に27〜30モル%または40〜75モル%中和され、その際通常の中和剤、有利にアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属炭酸塩、またはアルカリ金属炭酸水素塩、およびその混合物を使用することができる。アルカリ金属塩の代りにアンモニウム塩も使用できる。アルカリ金属としてナトリウムおよびカリウムが特に有利であるが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、または炭酸水素ナトリウムおよびその混合物が特に有利である。一般に中和は水溶液として、溶融物として、または有利に固体として中和剤の混入により達成される。例えば明らかに50質量%未満の含水量を有する水酸化ナトリウムは23℃より高い融点を有するワックス状物質として存在してもよい。この場合に高温でのばら物または溶融物としての供給が可能である。
【0042】
中和は重合後にヒドロゲルの段階で行うことができる。しかし、中和剤の一部をすでにモノマー溶液に添加することにより、40モル%まで、有利に10〜30モル%、特に15〜25モル%の酸基を重合の前に中和することも可能であり、重合後に、ヒドロゲルの段階ではじめて所望の最終中和度に調節する。モノマー溶液を中和剤の混入により中和することができる。ヒドロゲルを、例えば肉ひき器を使用して機械的に叩解することができ、その際中和剤を噴霧、散布または流し込み、引き続き入念に混入することができる。このために得られたゲル材料をなお数回均一にすることができる。最終中和度に直ちにモノマー溶液を中和することが有利である。
【0043】
中和されたヒドロゲルを引き続きベルト乾燥機またはローラー乾燥機を使用して、残留水分含量が有利に15質量%未満、特に10質量%未満になるまで乾燥し、その際EDANA(European Disposables and Nonwovens Association)により勧められる試験法No430.2−02、Moisture contentにより含水量を測定する。選択的に乾燥のために流動床乾燥機または加熱したすき刃混合機を使用することができる。
【0044】
乾燥したヒドロゲルをこの後に叩解し、分級し、その際叩解のために、一般に一工程または多工程ローラー粉砕機、有利に二工程または三工程ローラー粉砕機、ディスクミル、ハンマーミル、または振動ミルを使用できる。
【0045】
使用特性、例えばオムツ中の液体伝導性(SFC)および圧力下の吸収(AUL)を改良するために、超吸収性ポリマー粒子を一般に後架橋する。この後架橋は水性ゲル相中で行うことができる。有利に粉砕し、ふるい分けされたポリマー粒子(ベースポリマー)を表面に後架橋剤を被覆し、乾燥し、熱により後架橋する。このために適当な架橋剤は親水性ポリマーのカルボキシレート基と共有結合を形成することができる少なくとも2個の基を含有するかまたベースポリマーの少なくとも2個の異なるポリマー鎖の少なくとも2個のカルボキシル基または他の官能基が互いに架橋することができる化合物である。
【0046】
このために適当な後架橋剤v)は、ポリマーのカルボキシレート基と共有結合を形成できる少なくとも2個の基を含有する化合物である。適当な化合物は例えばアルコキシシリル化合物、ポリアジリジン、ポリアミン、ポリアミドアミン、例えば欧州特許第083022号、欧州特許第543303号、および欧州特許第937736号に記載されるようなジ−およびポリグリシジル化合物、ドイツ特許第3314019号、ドイツ特許第3523617号、欧州特許第450922号に記載されるような多価アルコール、またはドイツ特許第10204938号、および米国特許第6239230号に記載されるようなβ−ヒドロキシアルキルアミドである。更に混合した官能基を有する化合物、例えばグリシドール、欧州特許第1199327号に記載されるような3−エチル−3−オキセタンメタノール(トリメチロールプロパンオキセタン)、アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたは第1反応後に他の官能基を形成する化合物。例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、アジリジン、アゼチジン、またはオキセタンが適している。
【0047】
更にドイツ特許第4020780号に環状カーボネート、ドイツ特許第19807502号に2−オキサゾリドンおよびその誘導体、例えばN−(2−ヒドロキシエチル)−2−オキサゾリドン、ドイツ特許第19807992号にビス−およびポリ−2−オキサゾリジノン、ドイツ特許第19854573号に2−オキソテトラヒドロ−1,3−オキサジンおよびその誘導体、ドイツ特許第19854574号にN−アシル−2−オキサゾリドン、ドイツ特許第10204937号に環状尿素、ドイツ特許出願番号第10334584.1号に双環式アミドアセタール、欧州特許第199327号にオキセタンおよび環状尿素およびWO03/031482号にモルホリン−2,3−ジオンおよびその誘導体が適当な架橋剤v)として記載されている。
【0048】
後架橋は一般に後架橋剤の溶液をヒドロゲルまたは乾燥したベースポリマー粒子上に噴霧するように行う。噴霧に続いて熱により乾燥し、その際後架橋反応を乾燥の前および間に行うことができる。
【0049】
架橋剤の溶液の噴霧は有利に移動する混合工具を有する混合機、例えばスクリュー混合機、パドル混合機、円板混合機、すき刃混合機、および羽根車混合機中で行う。特に有利に垂直混合機、きわめて有利にすき刃混合機混合機および羽根車混合機である。適当な混合機は例えばレーディゲミキサー(Loedige Mischer)、ベペクスミキサー(Bepex Mischer)、ナウタミキサー(Nauta Mischer)、プロセサールミキサー(Processall Mischer)およびシュギミキサー(Schugi Masischer)である。
【0050】
熱による乾燥は有利に接触乾燥機、特に羽根車乾燥機、きわめて有利に円板乾燥機中で行う。適当な乾燥機は例えばベペクスミキサーおよびナウタミキサーである。更に流動層乾燥機を使用することもできる。
【0051】
乾燥は混合機自体で、被覆の加熱によりまたは熱空気を吹き込むことにより行うことができる。同様に後方に接続した乾燥機、例えばチャンバー乾燥機、回転管状炉、または加熱可能なスクリューが適している。しかし乾燥法として例えば共沸蒸留を利用することもできる。
【0052】
有利な乾燥温度は50〜250℃、有利に50〜200℃、特に50〜150℃の範囲である。反応混合機または乾燥機中のこの温度での有利な滞留時間は30分未満、特に10分未満である。
【0053】
本発明の方法により製造される紙、厚紙およびボール紙は従来の品質の紙に比べて高い水吸収能力を有し、その際強度の損失を受けることがない。前記紙は水を吸収することができ、例えばレーザープリンターに使用する場合のような熱の作用下でも維持される。
【0054】
本発明の方法により全部の紙の品質、例えばボール紙、単層/多層折りたたみボール箱、単層/多層ライナー、巻き物、新聞印刷用紙、いわゆる中程度の細度の筆記用紙、および印刷用紙、天然凹版印刷用紙、軽量塗被用粗製紙を製造することができる。これらの紙を製造するために、例えば砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミカルサーモメカニカルパルプ(CTMP)、圧縮砕木パルプ(PGW)、メカニカルパルプおよび亜硫酸塩パルプおよび硫酸塩パルプから出発できる。ケミカルパルプは短繊維でも、長繊維であってもよい。
【0055】
有利に本発明の方法によりいわゆるティッシュペーパー、例えばトイレットペーパー、紙製ハンカチ、および化粧用タオル、および菓子用紙、更に衛生もしくは衛生設備用紙、包装紙、例えば食品用包装紙、または衛生用品または包装材料に使用できる多層の紙を製造する。最後に記載された多層の紙は多くの異なる紙の層からなり、その際本発明の方法により製造された紙の層は従来の紙の層の上にまたは2つの従来の紙の層の間に導入する。
【0056】
本発明の対象は更に本発明の方法で紙、厚紙およびボール紙を製造する際の水膨潤可能なポリマーの使用である。
【0057】
本発明のもう1つの対象は本発明の方法により製造される紙、厚紙およびボール紙である。本発明は特にいわゆるティッシュペーパー、例えばトイレットペーパー、紙製ハンカチ、および化粧用タオルおよび菓子用紙、更に衛生もしくは衛生設備用紙、包装紙、例えば食品用包装紙、または衛生用品または包装材料に使用できる多層の紙に関する。
【0058】
本発明を以下の限定されない実施例により説明する。
【0059】
実施例
実施例の%の表示はこれに関してほかに記載されない場合は質量%である。
【0060】
乾燥した紙シートの乾燥引き裂き長さはDINENISO1924−2による試験法により測定した。
【0061】
水膨潤可能なポリマー1
室温で水膨潤可能なポリマーとしてLuquasorb(登録商標)1280(BASF社)を少ない過剰の水中で1時間膨潤させた。
【0062】
例1
漂白したシラカバ硫酸塩および漂白したマツ亜硫酸塩の70/30の割合の固体濃度1%の混合物を、予め膨潤した水膨潤可能なポリマー1、紙材料懸濁液の乾燥含量に対して1質量%と混合した。この混合物を実験用粉砕器中で、ショッパー・リーグラーによる叩解度35を達成するまで、繊維の束がなくなるまで叩解した。
【0063】
例2
例1を繰り返したが、紙材料懸濁液の乾燥含量に対して2.5質量%の予め膨潤した水膨潤可能なポリマー1を漂白したシラカバ硫酸塩および漂白したマツ亜硫酸塩の混合物に添加した。
【0064】
例3
漂白したシラカバ硫酸塩および漂白したマツ亜硫酸塩の70/30の割合の固体濃度1%の混合物を、予め膨潤した水膨潤可能なポリマー1、紙材料懸濁液の乾燥含量に対して1質量%と混合した。この混合物を実験用粉砕器中で、ショッパー・リーグラーによる叩解度35を達成するまで、繊維の束がなくなるまで叩解した。その後直ちに保留剤としてカチオン性ポリアクリルアミド(Polymin(登録商標)KE2020、BASF社)をこの混合物に供給した。保留剤の供給量は紙材料懸濁液の乾燥含量に対してポリマー0.03%であった。
【0065】
例4
例3を繰り返したが、紙材料懸濁液の乾燥含量に対して2.5質量%の予め膨潤した水膨潤可能なポリマー1を漂白したシラカバ硫酸塩および漂白したマツ亜硫酸塩の混合物に添加した。
【0066】
例5
漂白したシラカバ硫酸塩および漂白したマツ亜硫酸塩の70/30の割合の固体濃度1%の混合物を、予め膨潤した水膨潤可能なポリマー1、紙材料懸濁液の乾燥含量に対して1質量%と混合した。この混合物を実験用粉砕器中で、ショッパーリーグラーによる叩解度35を達成するまで、繊維の束がなくなるまで叩解した。その後直ちに保留剤としてカチオン性ポリアクリルアミド(Polymin(登録商標)KE2020、BASF社)および充填剤(Hydrocarb(登録商標)OG、Omya社)をこの混合物に供給した。保留剤および充填剤の供給量は紙材料懸濁液の乾燥含量に対してポリマー0.03%および充填剤20%であった。
【0067】
例6
例5を繰り返したが、紙材料懸濁液の乾燥含量に対して2.5質量%の予め膨潤した水膨潤可能なポリマー1を漂白したシラカバ硫酸塩および漂白したマツ亜硫酸塩の混合物に添加した。
【0068】
比較例1
漂白したシラカバ硫酸塩および漂白したマツ亜硫酸塩の70/30の割合の固体濃度1%の混合物を、実験用粉砕器中で、ショッパーリーグラーによる叩解度35を達成するまで、繊維の束がなくなるまで叩解した。引き続きカチオン澱粉(Solvitose(登録商標)BKN)を紙材料懸濁液の乾燥含量に対して0.06質量%の量で添加した。
【0069】
比較例2
漂白したシラカバ硫酸塩および漂白したマツ亜硫酸塩の70/30の割合の固体濃度1%の混合物を、実験用粉砕器中で、ショッパー・リーグラーによる叩解度35を達成するまで、繊維の束がなくなるまで叩解した。引き続きカチオン澱粉(Solvitose(登録商標)BKN)を紙材料懸濁液の乾燥含量に対して0.06質量%の量で添加した。その後直ちに保留剤としてカチオン性ポリアクリルアミド(Polymin(登録商標)KE2020、BASF社)および充填剤(Hydrocarb(登録商標)OG、Omya社)をこの混合物に供給した。保留剤および充填剤の供給量は紙材料懸濁液の乾燥含量に対してポリマー0.03%および充填剤20%であった。
【0070】
紙シートの製造
紙シートをそれぞれISO5269/2により高速 Koethen−シート形成機上でシート質量80g/mを有して製造し、引き続き100℃で5分間乾燥した。引き続き紙シートの乾燥引き裂き長さを試験した。結果を表1に記載する。
【0071】
【表1】

【0072】
吸い上げ試験による水吸収試験
紙シートをそれぞれ200mm×15mmの大きさに切断した。この切断した紙ストリップを、水を充填したビーカーに懸垂し、その際紙ストリップの上側端部をクリップでビーカーの縁部に固定した。紙ストリップは試験の開始時に約10〜20mm水に浸漬し、その際浸漬の位置(下側限界)を記録した。10分後、紙ストリップを水から取り出した。水が浸入した上側限界を同様に記録した。引き続き下側限界と上側限界の距離、すなわち水により覆われた区間を測定した。結果を表2に記載する。
【0073】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水膨潤可能なポリマーを繊維懸濁液に添加することにより水膨潤可能なポリマーの存在で紙、厚紙およびボール紙を製造する方法において、水膨潤可能なポリマーを含有する繊維懸濁液を叩解することを特徴とする、水膨潤可能なポリマーの存在で紙、厚紙およびボール紙を製造する方法。
【請求項2】
水膨潤可能なポリマーがその自重の少なくとも1%の水を吸収することができる請求項1記載の方法。
【請求項3】
水膨潤可能なポリマーが超吸収性ポリマーである請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
水膨潤可能なポリマーを含有する繊維懸濁液の叩解後に紙処理用化学薬品を添加する請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
水膨潤可能なポリマーをゲル状懸濁液として繊維懸濁液に添加する請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
水膨潤可能なポリマーを噴霧により繊維懸濁液に導入する請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
繊維懸濁液に水膨潤可能なポリマー0.1〜20質量%を添加する請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により紙、厚紙およびボール紙を製造する際の水膨潤可能なポリマーの使用。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法により製造された紙、厚紙およびボール紙。
【請求項10】
ティッシュペーパー、衛生もしくは衛生設備用紙、包装紙または多層紙である請求項9記載の紙。

【公表番号】特表2008−540866(P2008−540866A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511692(P2008−511692)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062346
【国際公開番号】WO2006/122934
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】