水草類観測方法
【課題】 ダイバーによる潜水目視等の危険性や大きな労力を伴うことなく、しかもより精度良く水草類の生育状況を簡便に観測することのできる新しい方法を提供する。
【解決手段】 水中に繁茂する水草類の生育状況を計測するに際し、少くとも遠隔的・非侵襲的計測法である超音波計測法とレーザー励起発光検出法を組合せて用いることにより、水草類の生育状況を計測可能とする。
【解決手段】 水中に繁茂する水草類の生育状況を計測するに際し、少くとも遠隔的・非侵襲的計測法である超音波計測法とレーザー励起発光検出法を組合せて用いることにより、水草類の生育状況を計測可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋、河川、湖沼等における水中での水草類の存在とその生育状況を遠隔的、非侵襲的に簡便に精度良く観測するための新しい水草類観測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
沿岸海域における工場、発電所等からの温排水による水草類の生育状況への影響を簡便に、かつ的確に観測評価することや、河川、あるいは湖沼における水質変化の影響評価を行うことが、環境アセスメント、あるいは漁業、食品工業、そして産業・社会での利水や防災の観点から大変に重要になっている。
【0003】
従来、これらの観測評価においては水深がある程度以上の場合にはダイバーによる潜水目視や坪狩り調査が主として行われてきている。
【0004】
しかしながら、これらの方法には、危険度が高く、かつ過大な労力を伴うこと、そして客観的に広域での比較を可能とする精度が得られるにくいという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、以上のとおりの背景から、従来の問題点を解消し、ダイバーによる潜水目視等の危険性や大きな労力を伴うことなく、しかもより精度良く水草類の生育状況を簡便に観測することのできる新しい方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明水草類観測方法は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
【0007】
第1:水中に繁茂する水草類の生育状況を計測するに際し、少くとも遠隔的・非侵襲的計測法である超音波計測法とレーザー励起発光検出法を組合せて用いることにより、水草類の生育状況を計測可能とする。
【0008】
第2:上記方法において、超音波計測法により水底の地形、砂地・岩場などの水底の地勢、藻の生育の可能性などを把握した上で、レーザー励起発光検出法により水草類の生育を観測する。
【0009】
第3:超音波計測法により水底の地形、砂地・岩場などの水底の地勢、藻の生育の可能性などを観測する際に、超音波の一次および二次反射の成分解析から水底での水草の有無の状態を解析する。
【0010】
第4:水草類に含まれるクロロフィルを励起可能な波長のレーザー光を照射して、クロロフィルからの発光を検出することにより、水草類の存在を観測可能とする。
【0011】
第5:水草類に含まれるクロロフィルを励起可能な波長のレーザー光を照射する位置と、クロロフィルからの発光点と、クロロフィルからの発光を観測するための光検出器の位置が、三角測量の原理により定まる位置関係となっており、クロロフィルからの発光点と観測点間の距離を算出可能とする。
【0012】
第6:クロロフィルを励起するためのレーザー光を2次元走査して水中に照射し、クロロフィルからの発光をカメラにより観測することにより面内分布を観測可能とする。
【0013】
第7:水中プランクトンや気泡、その他の浮遊物により散乱されて観測用のカメラに反射されてくる励起用のレーザー光の影響を低減するために、励起光を遮断し発光を透過可能な光学フィルタを用いる。
【0014】
第8:水中に繁茂する水草類の種類を弁別するための手段として、異なる種類のクロロフィルを有する水草類に対して、クロロフィルを光励起するために最適な波長を選択するために、クロロフィルを励起するための光源として異なる発振波長を有する複数のレーザーを用い、水草類により異なる発光波長を検出する。
【0015】
第9:水中に繁茂する水草類の生育状況を計測する手段として、発振波長470nm以上、540nm未満の発振波長、100mW以上の光出力を有するレーザー、水草類からの発光を効率良く集光してカメラに導くためのレンズ光学系、結像された発光像を光電変換するためのカメラ、カメラからの電気信号を画像化してデータ処理を行うためのコンピューター、操作のための周辺機器、およびこれらの機器を格納して水上もしくは水中に設置するための筐体を備えた観測装置を用いる。
【0016】
第10:超音波計測法とレーザー励起発光検出法を組合せて用いる際に、データ処理を容易に行うことを可能とするために、データ形式を共通化する。
【0017】
本発明においては、上記のとおり、少くとも、遠隔的・非侵襲的計測法である超音波計測法とレーザー励起発光検出法とを組合わせることを最も大きな特徴としている。
【0018】
超音波計測法やレーザー励起発光検出法は各々知られているものであるが、水中の水草類の観測に組み合わせることについては、その顕著な効果をともにこれまでに考えられてこなかったことである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法によれば、超音波法の、
水中地形情報が正確に得られること、
測定距離のダイナミックレンジが広いこと、
泡、浮遊物などの影響を受けにくいこと、
多重反射情報から、水底の状態が得られること
という効果が得られ、またレーザー励起発光検出法によって、
水草以外の対象物からの疑似信号が無いこと、
水草の深さ方向の分布を計測可能であること、
泡、浮遊物などの影響を受け易いこと
という効果が実現される。そして、これら方法の各々での、弱点、すなわち、超音波法での、傾斜水底での誤信号が出やすく不確定要素が残るということや、レーザー法での、近距離のダイナミックレンジが狭いことや地形情報が得られない等の弱点が相対的にカバーされて、相乗的に顕著な効果が実現されることになる。このため、本発明によれば、従来の問題点を解消し、ダイバーによる潜水目視等の危険性や大きな労力を伴うことなく、しかもより精度良く水草類の生育状況を簡便に観測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態について以下に説明する。もちろん以下の例示説明によって発明が限定されることはない。
【0021】
超音波底質解析装置(Stenmar Micro Systems社製、型式名:RoxAnn)の構成を図1に示す。主にトランスジューサを含めた超音波送受波部(魚群探知機、周波数:200kHz)、データ変換部、位置を計測するDGPS(Differential Global Positioning System)およびデータ解析部(パソコン)から成る。
【0022】
図2に示すように、トランスジューサから送波された超音波が海底で反射して受波される一次反射信号と、それが海面で反射されてもう一度海底で反射し受波される二次反射信号から、おおまかではあるが海底の質を推定できる。
【0023】
本装置では、一次反射信号から海底を構成する物質の“粗さ”(粒径の大きさ等)、二次反射信号を構成物の質の違いや含水率の違いに伴う“硬さ”に関わる情報として取り込み、図3に示す一次と二次反射信号強度の相関的な区分分けにより、海底堆積物の粒径分類や海藻の有無を自動的に解析するようにシステム化されている。本装置を搭載した観測船で航行しながら海底をスキャンし、同時にDGPSにより位置データを取り込むことにより、海底状況の解析結果をパソコンモニターの地図上にリアルタイムで表示する。しかしながら、図I−3に示した区分分けパターンは標準値として提供されたものであり、海底状況が異なる海域ごとに出力値の関係は違ってくる。そのため、本装置による計測では、あらかじめ使用する海域における超音波の一次、二次反射強度と海底状況の関係を明らかにし、該当海域における区分分けパターンを作成しておく。
【0024】
また、GPS魚探(Plus Gain社製、型式名:Fish Strike 1000C)も使用した。このものは、超音波送受波部と液晶モニター部から成り、音波(周波数:200kHz)を送波して海底からの反射パターンの画像と水深をモニターに表示する。本装置では、反射パターンの画像データと水深データおよびGPSによる位置データを記憶媒体に連続的に収録できることが特徴である(64MBメモリカードで連続約78時間)。したがって、反射パターンの画像を現場で確認できることに加えて、後日、画像データをパソコンに取り込んだ後、音波の反射強度に応じた色彩調整や感度調整、画像ノイズ除去などの操作が可能で、海底近傍について種々の解析画像を再度表示できる。また、反射パターンの画像と共に水深や位置情報も表示されるため、計測場所の確定も容易である。なお、本装置による計測では数値データとしては出力できないため、視覚による観察のみで、数値を基にした解析や図面化は困難である。
<現地実験>
音波による海藻類の判定と分布計測について検討するため所定の海域において超音波底質解析装置、GPS魚探および水中カメラを用いた現地実験を行った。現地実験は停船観測と航行観測から成り、停船観測では岸から沖合100mまで約10m毎で船を固定し、水中カメラで海底状況(海藻類の有無と種)を目視観測、録画しながら、超音波底質解析装置による超音波の一次、二次反射強度の計測とGPS魚探の音波反射画像を記録した。航行観測では、約5ノットの船速で有寿来マウンドを中心にメッシュ航行し、超音波底質解析装置とGPS魚探による音探計測を格子ライン状で実施した。なお、超音波底質解析装置の音探データは1秒毎で取り込んだ。
【0025】
各停船場所における超音波底質解析装置の一次と二次反射強度の関係を、まとめて図4に示した。本装置のトランスジューサの指向角は約15°であることから、例えば水深5mの場所における結果は、トランスジューサの下、直径が約1.3mの範囲における平均的な海底状況を示すことになる。
【0026】
一次反射強度は大きい葉を持つクロメや大石のある海底では強く、粒径の小さい砂や泥場で弱くなる傾向を示し、二次反射強度は硬い石が海底面に露出している小石と短藻のような場所で強く、石がクロメの葉で覆われていたり、含水率の高い泥域になるにつれて弱くなる傾向を示すことが明らかとなった。このような傾向は、本装置による音波の一次と二次反射特性から海底状況を解析する手法をよく反映させた結果であるといえる。
【0027】
超音波底質解析装置の海底状況区分パターンを作成した(図5)。本装置のデータ解析部のソフトに図5に示すパターンを登録することにより、海底状況がこの区分パターンに基づき自動的に解析される。
【0028】
本海底状況区分パターンに基づき、計測ライン下の海底状況を色分けして示したのが図6である。本装置のデータ解析部(パソコン)の画面をハードコピーしたもので、あらかじめ該当海域の区分分けが登録されていれば、図に示した解析結果がパソコン画面の地図上にリアルタイムで表示され、海底状況をその場で確認しながら計測航行ができる。また、データ解析部には図面化ソフトが組み込まれており、本装置の数値データをそのまま取り込んで各種の図化処理が可能である。図6に示した計測ライン間を空間グリッド補完して画的な分布に図化処理した結果を図7に示す。ここで示した面的に図化された分布は、あくまでも計測ライン上を1秒間隔で取得した結果を、さらにライン間で数値的に補完した結果である。したがって、計測のメッシュ間隔を狭くすることと船速を遅くすることにより、より精度の高い分布を得ることができる。図6、図7に示した結果に水深データを取り入れてそれぞれ三次元処理した結果を図8(a)と(b)に示した。マウンドの高まり状況と、マウンド上と岸寄りにクロメが繁茂し、マウンド周辺は小石と短藻および砂域で囲われている様子がわかる。
【0029】
3ヶ月後の結果を同様に解析処理した結果を図9と図10に示す。マウンド周辺を若干広めに航行したため、広域的な分布状況となっているが、同様に、マウンドの高まり状況やマウンド上と岸寄りのクロメ域およびマウンド周辺が小石と短藻、砂域で囲われている様子が認められた。
【0030】
一方、本発明者らは、植物プランクトン(クロロフィルa)の濃度分布を計測するための小型のレーザレーダを開発してきた(図11)が、これはCWレーザ(波長532nm)を利用したバイスタティックレーザレーダという特殊な構成をとることにより、従来のパルスレーザを用いたシステムと比較して極めて小型軽量、低消費電力のシステムを構築することが可能となった。
【0031】
そこで、バイスタティックレーザレーダの構成を用いて、海底に生息する藻の分布を計測する装置の開発を行った。基本的な構成は同じであるが、想定する測定距離を10m程度とし、藻の蛍光散乱が十分強いことから、通常のCCDカメラ(これまでは冷却CCDを使用)を用いることにより、さらなる小型軽量化を進め、さらにレーザ走査等により藻の2次元分布の測定を可能とした。また、海域実験では藻場観測用ボートにレーザ及び計測装置を搭載し、実環境における海底の藻の計測を行う。
【0032】
プールでの予備実験で、図12のように、海底の藻を模擬した試料(金魚藻)を用いた蛍光の検出実験を行った結果、10m程度の距離までは十分な観測感度を有することが確認できた。
【0033】
予備実験では金魚藻(Cabomba caroliniana)を透明容器(5×5×20cm)に入れ、ターゲットとしてプールに設置した。金魚藻の持つchlorophyll aの蛍光(波長685nmにピーク)と水のラマン散乱光及びレーザの散乱光との分離にはレンズに取り付けた光学フィルタR64(長波長側を透過、50%透過する波長が640nm)及びR66を使用した。
【0034】
本計測手法ではターゲットまでの距離はレーザビームとCCDカメラ間の距離(基線長)と計測画像の座標から求められるターゲットの角度とから三角測量によって求められる。予備実験では基線長を25cm、レンズの光軸とレーザビームのなす角度は3.6度に設定することにより、CCDカメラの視野の中心はカメラからほぼ4mの地点を捉えており、CCDカメラはほぼ2m〜15mの範囲を撮像している。図13にR64フィルタを使用してCCDカメラが撮像した蛍光像を示す。レーザ光路上の光点は藻からの蛍光、ライン状の像は水のラマン散乱光(波長532nmで励起した場合は655nm付近に現れる。R67でも分離しきれない)である。
【0035】
プールでの予備実験では、外光の影響は少なく、計測条件としては理想的ではあるが、距離13m地点の藻の蛍光が捉えられており、藻の分布を計測することが可能である。
【0036】
計測された典型的な強度分布は図14のようになり、距離とともに水のラマン散乱光が指数的に減衰し、ターゲット位置で藻の蛍光を捉える。それより遠距離ではほぼ0となる。海域実験ではレーザビーム上の植物プランクトンからの蛍光が重畳されるが、この強度変化の特徴を利用することにより映像から藻と植物プランクトンとの分別、分布位置の確定などのデータ処理が簡素化できる。
【0037】
次に藻の1次元分布の測定するため、レーザビームを光学スキャナーで一次元走査して、藻からの蛍光を測定する実験を行った。実験装置としてはほぼ上記と同じであるが、図15に示すように、(1)光学スキャナーによりレーザビームを任意の周波数、振幅で一次元走査できる機構を付け加えたこと、(2)レーザビームとCCDカメラ間の距離(基線長)を50cmとしたこと、(3)撮像レンズとして光軸をティルト可能なPC Micro Nikon 85mm F2. 8Dを用いたことの3点が異なる。(3)については、従来の光学系ではレーザビームを斜めから撮像するため、ある距離でのみ焦点があうことになるが、ティルト機構付のレンズを用いることでより広い範囲に焦点を合わすことが可能となり、焦点ぼけによる実効的な感度低下を防ぐことができる。なお、前記の予備実験とはCCDカメラの縦横位置が異なり、レーザビームの方向(水深方向に相当)がCCDの短辺方向、レーザビームの走査方向がCCDの長辺方向となっている。
【0038】
プールでの予備実験では、透明容器(5×5×20cm)に入れ、透明容器の長軸をレーザビームの走査方向に向けて8mの地点に設置した。葉が小さいものと大きなもので蛍光の捉え方の違いをみるため、図16に示す2種類の藻類(金魚藻(Cabomba caroliniana)及びミクロソリウム(Microsorium pteropus))を用いた。
【0039】
レーザビームは光学スキャナを三角波で駆動し、その走査幅は8mの地点で約40cmである。レーザ走査により単位時間単位面積当りのレーザの照射時間が短くなるため実効的な感度が低下する。そのため、レーザビームの走査方法を低速走査及び高速走査の両方について検討した。レーザビームがCCDの長辺一杯に走査している場合、低速走査はCCD1画素分の移動時間が1/60秒以上、(1走査周期17秒以上))、高速走査は1走査周期が60ms以内、(走査周波数60Hz、その倍数が望ましい)となる。但し、これはCCDカメラのフレーム蓄積を使用しない場合であって、蓄積を行う場合は走査時間に蓄積回数nを掛けることになる。
【0040】
低速でレーザビームを走査した場合の実験結果を写真図17に示す。レーザビームの走査の一部(1フレーム)を表示してある。走査周期は10秒であるが、CCDカメラ長辺全体を走査していないので、CCD1画素分の移動時間がほぼ1/60秒となっている。測定範囲全体で焦点があっていること、また、ティルト機構付のレンズを用いたことで焦点ぼけを防ぐことができたことがわかる。
【0041】
高速でレーザビームを走査した場合の実験結果を図18に示す。走査周波数を120Hzとすることで、撮像したビデオ映像中にレーザビームはN回(写真左:8回、写真右:16回)通過することにより、その回数分の蛍光が加算される。試料位置8mにおいても、蛍光の強度分布が捉えられており、8mの距離までは測定可能であったことがわかる。さらに装置を曳航することによって、藻の2次元分布を得ることが可能である。また、葉の大きさが異なる2種類の藻の試料はレーザビームの径に対して十分密生していたため、ほぼ同様な蛍光の計測結果が得られた。
【0042】
装置を曳航した場合、低速走査と高速走査とで蛍光強度(藻)分布の捉えられ方が異なる。低速走査では図19のように海底面をレーザビームで走査した線状の蛍光強度プロファイルが得られ、太線で示した線分の領域にある海底面の藻類の有無がわかる。高速走査では図20のように短冊状の領域の蛍光強度の平均値が得られ、その領域の海底面の藻類の有無がわかる。低速走査及び高速走査のどちらの場合においても、領域の形状は異なるが、レーザビーム走査方向の分解能力ΔDと曳航方向の分解能ΔVは以下の式で表される。Δdをある深度におけるCCD1画素に相当するレーザ走査方向の長さとすると、以下のようになる。
【0043】
ΔD=Δd
ΔV=曳航速度V(m/s)×0.033(s)×フレーム蓄積回数n(回)
そこで、実海域での使用を考慮した計測システム及び計測システムを搭載して曳航できる曳航体の製作を行った(図21)。
【0044】
この海域での実験において以下のことが確認された。
【0045】
すなわち、図22に示したように、水深1.5mから6m、さらにはそれ以上の深さの場所での藻の分布を捉えることが可能であった。
【0046】
そこで、以上の結果から、超音波計測装置とレーザー励起発光検出装置とを観測船に搭載して水中の藻の存在と生育について、図1〜図10までの所定の海域において行うことで、両者による測定で藻の生育状況がより実際的なものとして簡便に把握することができた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】超音波解析装置の概要図。
【図2】超音波の一次と二次反射の概要図。
【図3】超音波解析にるよる海底状況の区分(標準値)図。
【図4】超音波一次と二次反射強度と測定点の海底状況図。
【図5】植物の区分図。
【図6】超音波解析結果(ライン)図。
【図7】超音波解析結果(面的解析)図。
【図8】結果の三次元図化処理(a:ライン、b:面的解析)図。
【図9】3ヶ月後の解析結果(a:ライン、b:面的解析)図。
【図10】3ヶ月後の三次元図化処理(a:ライン、b:面的解析)図。
【図11】海中BISレーザレーダ概念図。
【図12】予備実験(藻の分布計測)装置構成図。
【図13】ターゲットを移動させた場合の蛍光撮像図。
【図14】計測された典型的な強度分布図。
【図15】レーザレーダ構成概要図。
【図16】実験対象の水中植物写真図。
【図17】低速走査の場合の蛍光撮像図。
【図18】高速走査の場合の蛍光撮像図。
【図19】低速走査の場合の概要図。
【図20】高速走査の場合の概要図。
【図21】海域実験用ボート概要図。
【図22】海域実験結果の概要図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋、河川、湖沼等における水中での水草類の存在とその生育状況を遠隔的、非侵襲的に簡便に精度良く観測するための新しい水草類観測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
沿岸海域における工場、発電所等からの温排水による水草類の生育状況への影響を簡便に、かつ的確に観測評価することや、河川、あるいは湖沼における水質変化の影響評価を行うことが、環境アセスメント、あるいは漁業、食品工業、そして産業・社会での利水や防災の観点から大変に重要になっている。
【0003】
従来、これらの観測評価においては水深がある程度以上の場合にはダイバーによる潜水目視や坪狩り調査が主として行われてきている。
【0004】
しかしながら、これらの方法には、危険度が高く、かつ過大な労力を伴うこと、そして客観的に広域での比較を可能とする精度が得られるにくいという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、以上のとおりの背景から、従来の問題点を解消し、ダイバーによる潜水目視等の危険性や大きな労力を伴うことなく、しかもより精度良く水草類の生育状況を簡便に観測することのできる新しい方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明水草類観測方法は、上記の課題を解決するものとして、以下のことを特徴としている。
【0007】
第1:水中に繁茂する水草類の生育状況を計測するに際し、少くとも遠隔的・非侵襲的計測法である超音波計測法とレーザー励起発光検出法を組合せて用いることにより、水草類の生育状況を計測可能とする。
【0008】
第2:上記方法において、超音波計測法により水底の地形、砂地・岩場などの水底の地勢、藻の生育の可能性などを把握した上で、レーザー励起発光検出法により水草類の生育を観測する。
【0009】
第3:超音波計測法により水底の地形、砂地・岩場などの水底の地勢、藻の生育の可能性などを観測する際に、超音波の一次および二次反射の成分解析から水底での水草の有無の状態を解析する。
【0010】
第4:水草類に含まれるクロロフィルを励起可能な波長のレーザー光を照射して、クロロフィルからの発光を検出することにより、水草類の存在を観測可能とする。
【0011】
第5:水草類に含まれるクロロフィルを励起可能な波長のレーザー光を照射する位置と、クロロフィルからの発光点と、クロロフィルからの発光を観測するための光検出器の位置が、三角測量の原理により定まる位置関係となっており、クロロフィルからの発光点と観測点間の距離を算出可能とする。
【0012】
第6:クロロフィルを励起するためのレーザー光を2次元走査して水中に照射し、クロロフィルからの発光をカメラにより観測することにより面内分布を観測可能とする。
【0013】
第7:水中プランクトンや気泡、その他の浮遊物により散乱されて観測用のカメラに反射されてくる励起用のレーザー光の影響を低減するために、励起光を遮断し発光を透過可能な光学フィルタを用いる。
【0014】
第8:水中に繁茂する水草類の種類を弁別するための手段として、異なる種類のクロロフィルを有する水草類に対して、クロロフィルを光励起するために最適な波長を選択するために、クロロフィルを励起するための光源として異なる発振波長を有する複数のレーザーを用い、水草類により異なる発光波長を検出する。
【0015】
第9:水中に繁茂する水草類の生育状況を計測する手段として、発振波長470nm以上、540nm未満の発振波長、100mW以上の光出力を有するレーザー、水草類からの発光を効率良く集光してカメラに導くためのレンズ光学系、結像された発光像を光電変換するためのカメラ、カメラからの電気信号を画像化してデータ処理を行うためのコンピューター、操作のための周辺機器、およびこれらの機器を格納して水上もしくは水中に設置するための筐体を備えた観測装置を用いる。
【0016】
第10:超音波計測法とレーザー励起発光検出法を組合せて用いる際に、データ処理を容易に行うことを可能とするために、データ形式を共通化する。
【0017】
本発明においては、上記のとおり、少くとも、遠隔的・非侵襲的計測法である超音波計測法とレーザー励起発光検出法とを組合わせることを最も大きな特徴としている。
【0018】
超音波計測法やレーザー励起発光検出法は各々知られているものであるが、水中の水草類の観測に組み合わせることについては、その顕著な効果をともにこれまでに考えられてこなかったことである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法によれば、超音波法の、
水中地形情報が正確に得られること、
測定距離のダイナミックレンジが広いこと、
泡、浮遊物などの影響を受けにくいこと、
多重反射情報から、水底の状態が得られること
という効果が得られ、またレーザー励起発光検出法によって、
水草以外の対象物からの疑似信号が無いこと、
水草の深さ方向の分布を計測可能であること、
泡、浮遊物などの影響を受け易いこと
という効果が実現される。そして、これら方法の各々での、弱点、すなわち、超音波法での、傾斜水底での誤信号が出やすく不確定要素が残るということや、レーザー法での、近距離のダイナミックレンジが狭いことや地形情報が得られない等の弱点が相対的にカバーされて、相乗的に顕著な効果が実現されることになる。このため、本発明によれば、従来の問題点を解消し、ダイバーによる潜水目視等の危険性や大きな労力を伴うことなく、しかもより精度良く水草類の生育状況を簡便に観測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施の形態について以下に説明する。もちろん以下の例示説明によって発明が限定されることはない。
【0021】
超音波底質解析装置(Stenmar Micro Systems社製、型式名:RoxAnn)の構成を図1に示す。主にトランスジューサを含めた超音波送受波部(魚群探知機、周波数:200kHz)、データ変換部、位置を計測するDGPS(Differential Global Positioning System)およびデータ解析部(パソコン)から成る。
【0022】
図2に示すように、トランスジューサから送波された超音波が海底で反射して受波される一次反射信号と、それが海面で反射されてもう一度海底で反射し受波される二次反射信号から、おおまかではあるが海底の質を推定できる。
【0023】
本装置では、一次反射信号から海底を構成する物質の“粗さ”(粒径の大きさ等)、二次反射信号を構成物の質の違いや含水率の違いに伴う“硬さ”に関わる情報として取り込み、図3に示す一次と二次反射信号強度の相関的な区分分けにより、海底堆積物の粒径分類や海藻の有無を自動的に解析するようにシステム化されている。本装置を搭載した観測船で航行しながら海底をスキャンし、同時にDGPSにより位置データを取り込むことにより、海底状況の解析結果をパソコンモニターの地図上にリアルタイムで表示する。しかしながら、図I−3に示した区分分けパターンは標準値として提供されたものであり、海底状況が異なる海域ごとに出力値の関係は違ってくる。そのため、本装置による計測では、あらかじめ使用する海域における超音波の一次、二次反射強度と海底状況の関係を明らかにし、該当海域における区分分けパターンを作成しておく。
【0024】
また、GPS魚探(Plus Gain社製、型式名:Fish Strike 1000C)も使用した。このものは、超音波送受波部と液晶モニター部から成り、音波(周波数:200kHz)を送波して海底からの反射パターンの画像と水深をモニターに表示する。本装置では、反射パターンの画像データと水深データおよびGPSによる位置データを記憶媒体に連続的に収録できることが特徴である(64MBメモリカードで連続約78時間)。したがって、反射パターンの画像を現場で確認できることに加えて、後日、画像データをパソコンに取り込んだ後、音波の反射強度に応じた色彩調整や感度調整、画像ノイズ除去などの操作が可能で、海底近傍について種々の解析画像を再度表示できる。また、反射パターンの画像と共に水深や位置情報も表示されるため、計測場所の確定も容易である。なお、本装置による計測では数値データとしては出力できないため、視覚による観察のみで、数値を基にした解析や図面化は困難である。
<現地実験>
音波による海藻類の判定と分布計測について検討するため所定の海域において超音波底質解析装置、GPS魚探および水中カメラを用いた現地実験を行った。現地実験は停船観測と航行観測から成り、停船観測では岸から沖合100mまで約10m毎で船を固定し、水中カメラで海底状況(海藻類の有無と種)を目視観測、録画しながら、超音波底質解析装置による超音波の一次、二次反射強度の計測とGPS魚探の音波反射画像を記録した。航行観測では、約5ノットの船速で有寿来マウンドを中心にメッシュ航行し、超音波底質解析装置とGPS魚探による音探計測を格子ライン状で実施した。なお、超音波底質解析装置の音探データは1秒毎で取り込んだ。
【0025】
各停船場所における超音波底質解析装置の一次と二次反射強度の関係を、まとめて図4に示した。本装置のトランスジューサの指向角は約15°であることから、例えば水深5mの場所における結果は、トランスジューサの下、直径が約1.3mの範囲における平均的な海底状況を示すことになる。
【0026】
一次反射強度は大きい葉を持つクロメや大石のある海底では強く、粒径の小さい砂や泥場で弱くなる傾向を示し、二次反射強度は硬い石が海底面に露出している小石と短藻のような場所で強く、石がクロメの葉で覆われていたり、含水率の高い泥域になるにつれて弱くなる傾向を示すことが明らかとなった。このような傾向は、本装置による音波の一次と二次反射特性から海底状況を解析する手法をよく反映させた結果であるといえる。
【0027】
超音波底質解析装置の海底状況区分パターンを作成した(図5)。本装置のデータ解析部のソフトに図5に示すパターンを登録することにより、海底状況がこの区分パターンに基づき自動的に解析される。
【0028】
本海底状況区分パターンに基づき、計測ライン下の海底状況を色分けして示したのが図6である。本装置のデータ解析部(パソコン)の画面をハードコピーしたもので、あらかじめ該当海域の区分分けが登録されていれば、図に示した解析結果がパソコン画面の地図上にリアルタイムで表示され、海底状況をその場で確認しながら計測航行ができる。また、データ解析部には図面化ソフトが組み込まれており、本装置の数値データをそのまま取り込んで各種の図化処理が可能である。図6に示した計測ライン間を空間グリッド補完して画的な分布に図化処理した結果を図7に示す。ここで示した面的に図化された分布は、あくまでも計測ライン上を1秒間隔で取得した結果を、さらにライン間で数値的に補完した結果である。したがって、計測のメッシュ間隔を狭くすることと船速を遅くすることにより、より精度の高い分布を得ることができる。図6、図7に示した結果に水深データを取り入れてそれぞれ三次元処理した結果を図8(a)と(b)に示した。マウンドの高まり状況と、マウンド上と岸寄りにクロメが繁茂し、マウンド周辺は小石と短藻および砂域で囲われている様子がわかる。
【0029】
3ヶ月後の結果を同様に解析処理した結果を図9と図10に示す。マウンド周辺を若干広めに航行したため、広域的な分布状況となっているが、同様に、マウンドの高まり状況やマウンド上と岸寄りのクロメ域およびマウンド周辺が小石と短藻、砂域で囲われている様子が認められた。
【0030】
一方、本発明者らは、植物プランクトン(クロロフィルa)の濃度分布を計測するための小型のレーザレーダを開発してきた(図11)が、これはCWレーザ(波長532nm)を利用したバイスタティックレーザレーダという特殊な構成をとることにより、従来のパルスレーザを用いたシステムと比較して極めて小型軽量、低消費電力のシステムを構築することが可能となった。
【0031】
そこで、バイスタティックレーザレーダの構成を用いて、海底に生息する藻の分布を計測する装置の開発を行った。基本的な構成は同じであるが、想定する測定距離を10m程度とし、藻の蛍光散乱が十分強いことから、通常のCCDカメラ(これまでは冷却CCDを使用)を用いることにより、さらなる小型軽量化を進め、さらにレーザ走査等により藻の2次元分布の測定を可能とした。また、海域実験では藻場観測用ボートにレーザ及び計測装置を搭載し、実環境における海底の藻の計測を行う。
【0032】
プールでの予備実験で、図12のように、海底の藻を模擬した試料(金魚藻)を用いた蛍光の検出実験を行った結果、10m程度の距離までは十分な観測感度を有することが確認できた。
【0033】
予備実験では金魚藻(Cabomba caroliniana)を透明容器(5×5×20cm)に入れ、ターゲットとしてプールに設置した。金魚藻の持つchlorophyll aの蛍光(波長685nmにピーク)と水のラマン散乱光及びレーザの散乱光との分離にはレンズに取り付けた光学フィルタR64(長波長側を透過、50%透過する波長が640nm)及びR66を使用した。
【0034】
本計測手法ではターゲットまでの距離はレーザビームとCCDカメラ間の距離(基線長)と計測画像の座標から求められるターゲットの角度とから三角測量によって求められる。予備実験では基線長を25cm、レンズの光軸とレーザビームのなす角度は3.6度に設定することにより、CCDカメラの視野の中心はカメラからほぼ4mの地点を捉えており、CCDカメラはほぼ2m〜15mの範囲を撮像している。図13にR64フィルタを使用してCCDカメラが撮像した蛍光像を示す。レーザ光路上の光点は藻からの蛍光、ライン状の像は水のラマン散乱光(波長532nmで励起した場合は655nm付近に現れる。R67でも分離しきれない)である。
【0035】
プールでの予備実験では、外光の影響は少なく、計測条件としては理想的ではあるが、距離13m地点の藻の蛍光が捉えられており、藻の分布を計測することが可能である。
【0036】
計測された典型的な強度分布は図14のようになり、距離とともに水のラマン散乱光が指数的に減衰し、ターゲット位置で藻の蛍光を捉える。それより遠距離ではほぼ0となる。海域実験ではレーザビーム上の植物プランクトンからの蛍光が重畳されるが、この強度変化の特徴を利用することにより映像から藻と植物プランクトンとの分別、分布位置の確定などのデータ処理が簡素化できる。
【0037】
次に藻の1次元分布の測定するため、レーザビームを光学スキャナーで一次元走査して、藻からの蛍光を測定する実験を行った。実験装置としてはほぼ上記と同じであるが、図15に示すように、(1)光学スキャナーによりレーザビームを任意の周波数、振幅で一次元走査できる機構を付け加えたこと、(2)レーザビームとCCDカメラ間の距離(基線長)を50cmとしたこと、(3)撮像レンズとして光軸をティルト可能なPC Micro Nikon 85mm F2. 8Dを用いたことの3点が異なる。(3)については、従来の光学系ではレーザビームを斜めから撮像するため、ある距離でのみ焦点があうことになるが、ティルト機構付のレンズを用いることでより広い範囲に焦点を合わすことが可能となり、焦点ぼけによる実効的な感度低下を防ぐことができる。なお、前記の予備実験とはCCDカメラの縦横位置が異なり、レーザビームの方向(水深方向に相当)がCCDの短辺方向、レーザビームの走査方向がCCDの長辺方向となっている。
【0038】
プールでの予備実験では、透明容器(5×5×20cm)に入れ、透明容器の長軸をレーザビームの走査方向に向けて8mの地点に設置した。葉が小さいものと大きなもので蛍光の捉え方の違いをみるため、図16に示す2種類の藻類(金魚藻(Cabomba caroliniana)及びミクロソリウム(Microsorium pteropus))を用いた。
【0039】
レーザビームは光学スキャナを三角波で駆動し、その走査幅は8mの地点で約40cmである。レーザ走査により単位時間単位面積当りのレーザの照射時間が短くなるため実効的な感度が低下する。そのため、レーザビームの走査方法を低速走査及び高速走査の両方について検討した。レーザビームがCCDの長辺一杯に走査している場合、低速走査はCCD1画素分の移動時間が1/60秒以上、(1走査周期17秒以上))、高速走査は1走査周期が60ms以内、(走査周波数60Hz、その倍数が望ましい)となる。但し、これはCCDカメラのフレーム蓄積を使用しない場合であって、蓄積を行う場合は走査時間に蓄積回数nを掛けることになる。
【0040】
低速でレーザビームを走査した場合の実験結果を写真図17に示す。レーザビームの走査の一部(1フレーム)を表示してある。走査周期は10秒であるが、CCDカメラ長辺全体を走査していないので、CCD1画素分の移動時間がほぼ1/60秒となっている。測定範囲全体で焦点があっていること、また、ティルト機構付のレンズを用いたことで焦点ぼけを防ぐことができたことがわかる。
【0041】
高速でレーザビームを走査した場合の実験結果を図18に示す。走査周波数を120Hzとすることで、撮像したビデオ映像中にレーザビームはN回(写真左:8回、写真右:16回)通過することにより、その回数分の蛍光が加算される。試料位置8mにおいても、蛍光の強度分布が捉えられており、8mの距離までは測定可能であったことがわかる。さらに装置を曳航することによって、藻の2次元分布を得ることが可能である。また、葉の大きさが異なる2種類の藻の試料はレーザビームの径に対して十分密生していたため、ほぼ同様な蛍光の計測結果が得られた。
【0042】
装置を曳航した場合、低速走査と高速走査とで蛍光強度(藻)分布の捉えられ方が異なる。低速走査では図19のように海底面をレーザビームで走査した線状の蛍光強度プロファイルが得られ、太線で示した線分の領域にある海底面の藻類の有無がわかる。高速走査では図20のように短冊状の領域の蛍光強度の平均値が得られ、その領域の海底面の藻類の有無がわかる。低速走査及び高速走査のどちらの場合においても、領域の形状は異なるが、レーザビーム走査方向の分解能力ΔDと曳航方向の分解能ΔVは以下の式で表される。Δdをある深度におけるCCD1画素に相当するレーザ走査方向の長さとすると、以下のようになる。
【0043】
ΔD=Δd
ΔV=曳航速度V(m/s)×0.033(s)×フレーム蓄積回数n(回)
そこで、実海域での使用を考慮した計測システム及び計測システムを搭載して曳航できる曳航体の製作を行った(図21)。
【0044】
この海域での実験において以下のことが確認された。
【0045】
すなわち、図22に示したように、水深1.5mから6m、さらにはそれ以上の深さの場所での藻の分布を捉えることが可能であった。
【0046】
そこで、以上の結果から、超音波計測装置とレーザー励起発光検出装置とを観測船に搭載して水中の藻の存在と生育について、図1〜図10までの所定の海域において行うことで、両者による測定で藻の生育状況がより実際的なものとして簡便に把握することができた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】超音波解析装置の概要図。
【図2】超音波の一次と二次反射の概要図。
【図3】超音波解析にるよる海底状況の区分(標準値)図。
【図4】超音波一次と二次反射強度と測定点の海底状況図。
【図5】植物の区分図。
【図6】超音波解析結果(ライン)図。
【図7】超音波解析結果(面的解析)図。
【図8】結果の三次元図化処理(a:ライン、b:面的解析)図。
【図9】3ヶ月後の解析結果(a:ライン、b:面的解析)図。
【図10】3ヶ月後の三次元図化処理(a:ライン、b:面的解析)図。
【図11】海中BISレーザレーダ概念図。
【図12】予備実験(藻の分布計測)装置構成図。
【図13】ターゲットを移動させた場合の蛍光撮像図。
【図14】計測された典型的な強度分布図。
【図15】レーザレーダ構成概要図。
【図16】実験対象の水中植物写真図。
【図17】低速走査の場合の蛍光撮像図。
【図18】高速走査の場合の蛍光撮像図。
【図19】低速走査の場合の概要図。
【図20】高速走査の場合の概要図。
【図21】海域実験用ボート概要図。
【図22】海域実験結果の概要図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に繁茂する水草類の生育状況を計測するに際し、少くとも遠隔的・非侵襲的計測法である超音波計測法とレーザー励起発光検出法を組合せて用いることにより、水草類の生育状況を計測可能とすることを特徴とする水草類観測方法。
【請求項2】
超音波計測法により水底の地形、砂地・岩場などの水底の地勢、藻の生育の可能性などを把握した上で、レーザー励起発光検出法により水草類の生育を観測することを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項3】
超音波計測法により水底の地形、砂地・岩場などの水底の地勢、藻の生育の可能性などを観測する際に、超音波一次および二次反射の成分解析から、水底での水草の有無の状態を解析することを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項4】
水草類に含まれるクロロフィルを励起可能な波長のレーザー光を照射して、クロロフィルからの発光を検出することにより、水草類の存在を観測可能とすることを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項5】
水草類に含まれるクロロフィルを励起可能な波長のレーザー光を照射する位置と、クロロフィルからの発光点と、クロロフィルからの発光を観測するための光検出器の位置が、三角測量の原理により定まる位置関係となっており、クロロフィルからの発光点と観測点間の距離を算出可能とすることを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項6】
クロロフィルを励起するためのレーザー光を2次元走査して水中に照射し、クロロフィルからの発光をカメラにより観測することにより面内分布を観測可能とすることを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項7】
水中プランクトンや気泡、その他の浮遊物により散乱されて観測用のカメラに反射されてくる励起用のレーザー光の影響を低減するために、励起光を遮断し発光を透過可能な光学フィルタを用いることを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項8】
水中に繁茂する水草類の種類を弁別するための手段として、異なる種類のクロロフィルを有する水草類に対して、クロロフィルを光励起するために最適な波長を選択するために、クロロフィルを励起するための光源として異なる発振波長を有する複数のレーザーを用い、水草類により異なる発光波長を検出することを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項9】
水中に繁茂する水草類の生育状況を計測する手段として、発振波長470nm以上、540nm未満の発振波長、100mW以上の光出力を有するレーザー、水草類からの発光を効率良く集光してカメラに導くためのレンズ光学系、結像された発光像を光電変換するためのカメラ、カメラからの電気信号を画像化してデータ処理を行うためのコンピューター、操作のための周辺機器、およびこれらの機器を格納して水上もしくは水中に設置するための筐体を備えた観測装置を用いることを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項10】
超音波計測法とレーザー励起発光検出法を組合せて用いる際に、データ処理を容易に行うことを可能とするために、データ形式を共通化することを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項1】
水中に繁茂する水草類の生育状況を計測するに際し、少くとも遠隔的・非侵襲的計測法である超音波計測法とレーザー励起発光検出法を組合せて用いることにより、水草類の生育状況を計測可能とすることを特徴とする水草類観測方法。
【請求項2】
超音波計測法により水底の地形、砂地・岩場などの水底の地勢、藻の生育の可能性などを把握した上で、レーザー励起発光検出法により水草類の生育を観測することを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項3】
超音波計測法により水底の地形、砂地・岩場などの水底の地勢、藻の生育の可能性などを観測する際に、超音波一次および二次反射の成分解析から、水底での水草の有無の状態を解析することを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項4】
水草類に含まれるクロロフィルを励起可能な波長のレーザー光を照射して、クロロフィルからの発光を検出することにより、水草類の存在を観測可能とすることを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項5】
水草類に含まれるクロロフィルを励起可能な波長のレーザー光を照射する位置と、クロロフィルからの発光点と、クロロフィルからの発光を観測するための光検出器の位置が、三角測量の原理により定まる位置関係となっており、クロロフィルからの発光点と観測点間の距離を算出可能とすることを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項6】
クロロフィルを励起するためのレーザー光を2次元走査して水中に照射し、クロロフィルからの発光をカメラにより観測することにより面内分布を観測可能とすることを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項7】
水中プランクトンや気泡、その他の浮遊物により散乱されて観測用のカメラに反射されてくる励起用のレーザー光の影響を低減するために、励起光を遮断し発光を透過可能な光学フィルタを用いることを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項8】
水中に繁茂する水草類の種類を弁別するための手段として、異なる種類のクロロフィルを有する水草類に対して、クロロフィルを光励起するために最適な波長を選択するために、クロロフィルを励起するための光源として異なる発振波長を有する複数のレーザーを用い、水草類により異なる発光波長を検出することを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項9】
水中に繁茂する水草類の生育状況を計測する手段として、発振波長470nm以上、540nm未満の発振波長、100mW以上の光出力を有するレーザー、水草類からの発光を効率良く集光してカメラに導くためのレンズ光学系、結像された発光像を光電変換するためのカメラ、カメラからの電気信号を画像化してデータ処理を行うためのコンピューター、操作のための周辺機器、およびこれらの機器を格納して水上もしくは水中に設置するための筐体を備えた観測装置を用いることを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【請求項10】
超音波計測法とレーザー励起発光検出法を組合せて用いる際に、データ処理を容易に行うことを可能とするために、データ形式を共通化することを特徴とする請求項1に記載の水草類観測方法。
【図14】
【図19】
【図20】
【図21】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図22】
【図19】
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【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図22】
【公開番号】特開2009−8459(P2009−8459A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168272(P2007−168272)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【Fターム(参考)】
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