水蒸気爆発及び衝撃波発生装置、発動機及びタービン装置
【課題】水蒸気爆発を確実に発生させることのできる装置を提案する
【解決手段】本発明は、水蒸気爆発及び衝撃波を確実に発生させることのできる装置を提案するものであり、これにより水蒸気爆発及び衝撃波の研究開発の実験手段を提供するとともに、発動機やタービンへの応用に道を開くものである。液体保持容器0101の内部に溶融金属など高温液体0102が保持されている。液体保持容器の周囲には高温液体を高温に保持するための加熱装置0103が備えられている。液体保持容器の底部には水を間欠注入するための注入口0104が設けられ、さらに、注入口を塞ぐかたちで耐圧弁0105が備えられる。耐圧弁はバネ0106の力で注入口を塞いでいるが、タイミングカム0107で押し上げられると弁と注入口の間の隙間から水が間欠注入される。高温液体の底部側に水が間欠注入されると、水蒸気爆発及び衝撃波が発生する。
【解決手段】本発明は、水蒸気爆発及び衝撃波を確実に発生させることのできる装置を提案するものであり、これにより水蒸気爆発及び衝撃波の研究開発の実験手段を提供するとともに、発動機やタービンへの応用に道を開くものである。液体保持容器0101の内部に溶融金属など高温液体0102が保持されている。液体保持容器の周囲には高温液体を高温に保持するための加熱装置0103が備えられている。液体保持容器の底部には水を間欠注入するための注入口0104が設けられ、さらに、注入口を塞ぐかたちで耐圧弁0105が備えられる。耐圧弁はバネ0106の力で注入口を塞いでいるが、タイミングカム0107で押し上げられると弁と注入口の間の隙間から水が間欠注入される。高温液体の底部側に水が間欠注入されると、水蒸気爆発及び衝撃波が発生する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気爆発及び衝撃波を発生させる装置、及び、それによって発生させた水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動させる発動機及びタービン装置の基本技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水が特殊な条件下で370℃程度の高温にまで一気に加熱されると、爆発現象が生じることが知られている。前記爆発現象は一般的に「水蒸気爆発」と呼ばれ、例えば、非常に高温の金属溶融体と水の接触により生じたり、マグマと水との接触により生じたり、また、加熱された天ぷら油中で水との接触により生じたりする。
【0003】
水蒸気爆発については、いくつかの研究報告がなされているものの、いまだ未知な部分が多いのが現状である。しかしながら、水の気化による体積膨張率を考慮すると、瞬間的に水が気化した際に生じる爆発エネルギーは、非常に大きなものであると考えられる。
【0004】
そこで、水蒸気爆発の力を動力等として利用しようとする試みがなされてきた。特許文献1は真空中で放電させて高温状態とした部屋に水を噴射して水蒸気爆発を発生させるとする。また、特許文献2は高周波電流を通電させて電磁誘導により加熱させた燃焼室内に水を噴射して水蒸気爆発を得るという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2000−106916
【特許文献2】特開平11−229965
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件発明者は水蒸気爆発のメカニズムを解明すべくいくつかの実験を行った。まず、高温に熱した金属の表面に水滴を滴下した。金属の表面温度をいかに高くしても、また、滴下する水の量を変えてみても、滴下された水滴は金属表面にて気化蒸発するのみで爆発をおこすことは一度もなかった。この結果は、金属の温度が融点を超え、金属が溶融した場合においても変わらなかった(第一実験)。
【0007】
次に、本件発明者は高温で溶解した金属を水の中に水没させてみた。すると、溶融金属の周辺で水蒸気爆発が観察された(第二実験)。
【0008】
さらに、本件発明者は水滴をてんぷら油の表面に滴下する実験を行った。滴下した水滴が熱された油の表面にとどまっている間は金属の場合と同様に気化蒸発を起こすのみであった。しかし、水は油よりも比重が重い。滴下した水の量が多いと全て気化蒸発し終える前に油の中に沈下することがあった。油の温度が十分高ければ、沈下した水は必ず音を立てて爆発した。油の温度は300℃程度以上であれば水蒸気爆発を起こすことができ、350℃以上でさらに激しい水蒸気爆発が発生することを確認した(第三実験)。
【0009】
第一実験から高温の物質の表面に水を滴下するのみでは水蒸気爆発は起こらないことが分かった。このことは物質の温度をいくら高くしても変わらない。それは高温物質に水が接触しても常気圧下では100℃で沸騰するため略100℃以上には上昇しえず、水蒸気爆発の要因である水の高温化が生じないからである。しかし、水の中に高温物質を入れた場合(第二実験)や、高温の液状物質の内部に少量の水を間欠注入した場合(第三実験)には、温度がさほど高くなくても水蒸気爆発が起こる。第二及び第三の実験に共通の特徴は、水蒸気爆発を起こす場所が液体により密閉されている点である。ここで、「〜により密閉されている」とは、単に「〜により全体を取り囲まれており外気を通じた逃げ場所がない」程度の意味で用いる。第二実験では、爆発部位は、液体である金属及び液体である水により取り囲まれている。第三実験で水が油の中に水没した場合には液体である油により取り囲まれている。このような密閉された状況下では、大きな温度差のある二種類の異質な液体が接触することで高温液体側から低温液体側に熱の移動が起こり、水の温度は100℃を超えて隣接する液体の温度と同等程度まで一気に加熱される。この過程は未だそのメカニズムが明確に解明されたとはいい難いが、このように100℃をはるかに超える水の高温化が瞬時に起こる現象によって、急速で激しい水蒸気膨張が発生し高圧力な水蒸気爆発に至ることが実験により判明した。さらに、瞬間的な水蒸気爆発によって、同時に衝撃波が生成されていて、爆発の圧力や膨張速をいっそう増大させていることも判明した。
これに対し、第一実験では水の周囲は外気で満たされており液体により密閉されている状態にないため水蒸気爆発を起こすことができなかった。
【0010】
前記特許文献1のエネルギー発生装置では真空中で高温に加熱した気化室に水を噴射して水蒸気爆発を得るという。しかし、いくら高温にしたところで高温の物質表面に水を噴射しただけでは水蒸気爆発が起こらないことは第一実験において確認されたところである。この装置では放電による高温状態を得るために気化室を真空状態にするものであるが、そもそも真空状態においては水蒸気爆発を起こす前に水が気化すると考えられ、この装置により水蒸気爆発を発生させられるとは到底考えられない。
【0011】
前記特許文献2のジェットエンジンも、水蒸気爆発のメカニズムについての十分な開示がないため断言できないが、単に燃焼室内にて高温に加熱しただけでは水蒸気爆発が発生しない点は第一実験と同様である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本件発明者は、300℃以上の高温に保たれた液体を収容するための容器の底部に開閉弁を設け、前記開閉弁から高温液体中に水を間欠注入することにより、「液体により密閉されている状態」を作り出し、水蒸気爆発を起こすことに成功した。そして、その詳細な原理は省略するが、水蒸気爆発と同時に発生する衝撃波が爆発流体の圧力や膨張速をいっそう増大させる結果となり、水蒸気爆発により発生した衝撃波をともなった高圧な爆発流体のエネルギーをエンジンやタービンの動力として応用することに道を開いた。
【0013】
請求項1に記載の第一発明は、300℃以上の温度の高温液体を保持するための液体保持容器と、液体保持容器中に保持されている高温液体の底部側から水を間欠注入するための注入口と、を有する水蒸気爆発室と、前記高温液体を300℃以上の高温に保持する加熱装置と、前記注入口において水の間欠注入を制御する注入弁部とを有する水蒸気爆発及び衝撃波発生装置、に関する。
【0014】
第一発明は、水蒸気爆発及び衝撃波を発生させるための装置に関するものであり、本発明の最も基本となる発明である。
【0015】
請求項2に記載の第二発明は、請求項1に記載の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置と、この水蒸気爆発及び衝撃波発生装置で生じる水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動されるピストンと、ピストン運動を回転運動に変換する変換部とを備えた発動機、に関する。
【0016】
第二発明乃至第六発明は、第一発明の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置で得た水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を動力源とする発動機に関するものであり、第二発明はこれらの中で最も基本となるものである。
【0017】
請求項3に記載の第三発明は、ピストン押し上げ後の水蒸気及び高温液体の混合物である爆発流体を収容する戻し通路をさらに有する請求項2に記載の発動機、に関する。
【0018】
請求項4に記載の第四発明は、戻し通路に流入した爆発流体のうち分離した水蒸気を排出する水蒸気排出口をさらに有する請求項3に記載の発動機、に関する。
【0019】
請求項5に記載の第五発明は、戻し通路に流入した爆発流体のうち高温液体を爆発室に還入させるための戻しポンプを戻し通路内下部にさらに有する請求項4に記載の発動機、に関する。
【0020】
請求項6に記載の第六発明は、ピストンにはピストンバルブが設けられ、ピストンバルブは、上死点付近にてシリンダに設置された上障害突起に衝突することにより開口動作し、下死点付近にてシリンダまたは液体保持容器に設置された下障害突起に衝突することにより閉止動作する請求項5に記載の発動機、に関する。
【0021】
請求項7に記載の第七発明は、請求項1に記載の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置と、この水蒸気爆発及び衝撃波発生装置による水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動されるタービンとを備えたタービン装置、に関する。
【0022】
第七発明乃至第九発明は、第一発明の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置で得た水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を動力源とするタービン装置に関するものであり、第七発明はこれらの中で最も基本となるものである。
【0023】
請求項8に記載の第八発明は、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置を複数備え、各水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の注入弁部が水を間欠注入するタイミングを制御するための制御部を有する請求項7に記載のタービン装置、に関する。
【0024】
請求項9に記載の第九発明は、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の周囲には、飛散した高温液体を回収するための循環高温液体プールが設けられ、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置には、循環高温液体プールから高温液体を導入するための高温液体導入バルブが備えられている請求項8に記載のタービン装置、に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、未だそのメカニズムが明確に解明されたとはいい難い水蒸気爆発や同時に発生する衝撃波を確実に発生させることのできる装置を提案するものであり、これにより水蒸気爆発及び衝撃波の研究開発の実験手段を提供するとともに、発動機やタービンへの応用に道を開くものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1の概略図
【図2】実施例1の耐圧弁の構造と機能を表す図
【図3】水蒸気爆発時の爆圧で注入口内部へ高温液体が逆流するのを防ぐことのできるもう一つの注入弁部の図
【図4】実施例2の発動機の構造図
【図5】ピストン及びピストンバルブの構造図
【図6】水が注入口から間欠注入された直後に水蒸気爆発が発生した瞬間の図
【図7】水蒸気爆発により発生した衝撃波をともなった爆発流体がシリンダ内のピストンを上に押し上げている途中の図
【図8】爆発流体により押し上げられたピストンが上死点に達した瞬間の図
【図9】戻り通路下部に設けられた戻しポンプが戻し通路内部の高温液体を液体保持容器内に圧入している図
【図10】実施例3のタービン装置の斜視概略図
【図11】実施例3のタービン装置の断面図
【図12】高温液体導入バルブの動作を表す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施例1は第一発明に関する。実施例2は第二発明ないし第六発明に関する。実施例3は第七発明ないし第九発明に関する。また本発明は、以下での実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができる。
【実施例1】
【0028】
<<実施例1の概要>>
実施例1は第一発明における水蒸気爆発及び衝撃波発生装置に関するものである。
図1は、実施例1の概略図である。液体保持容器0101の内部に溶融金属など高温液体0102が保持されている。液体保持容器の周囲には高温液体を高温に保持するための加熱装置0103が備えられている。液体保持容器の底部には水を間欠注入するための注入口0104が設けられ、さらに、注入口を塞ぐかたちで耐圧弁0105が備えられる。耐圧弁はバネ0106の力で注入口を塞いでいるが、タイミングカム0107で押し上げられると弁と注入口の間の隙間から水が間欠注入される。高温液体の底部に水が間欠注入されると、液体により密閉された状態で高温液体から水へ急速な熱移動が起こり、水蒸気爆発及び衝撃波が発生する。
【0029】
水蒸気爆発及び衝撃波発生装置上部には爆発により飛散した高温液体と水蒸気の混合物(以下、この混合物を「爆発流体」と呼ぶ)を受け止めるための蓋0108及び水蒸気のみを上部に逃がすための排気口0109が備えられる。水蒸気爆発及び衝撃波により飛散した高温液体は蓋で受け止められたのち落下し再利用される一方、水蒸気は排気口から排気される。
液体保持容器には内部の高温液体の温度を監視するための温度計0110が備えられている。
<<実施例1の構成要件の説明>>
【0030】
第一発明の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置は、水蒸気爆発室と、加熱装置と、注入弁部とを有する。水蒸気爆発室は、液体保持容器と、注入口とを有する。以下、それぞれにつき説明する。
【0031】
「液体保持容器」は「300℃以上の温度の高温液体を保持する。」液体保持容器は高温の液体を保持するものであるから、第一に耐熱性に優れたものであることを要する。ただし、高温液体の温度としては300℃〜400℃程度で水蒸気爆発は発生するから、それ以上の温度の液体を使う特別な事情がない限り、鉄などの一般的な素材で十分である。次に、液体保持容器は水蒸気爆発で発生する圧力や衝撃波に十分耐えるだけの強度を要する。水蒸気爆発発生時の気圧は数百気圧に達しているものと考えられ、液体保持容器はそのような急激に発生する圧力に耐えうる素材と構造を備えることを要する。さらに、加熱装置を液体保持容器の外部に装着する場合には、加熱装置からの熱が液体保持容器を伝導して内部の液体を加熱するのであるから、熱伝導性の高い素材が好ましい。
【0032】
「高温液体」は融点が300℃以下の金属が好適であるが、融点が300℃以上の金属でもよい。融点が300℃以下の金属としては、錫、ビスマス、ポロニウムまたは低融点合金等がある。そのうち錫は融点が232℃と低く扱いやすいこと、手に入れやすいことから、本発明の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置では錫を主に用いている。また、ビスマスでも問題なく水蒸気爆発及び衝撃波が発生することが実験により確認できた。ポロニウムは放射性物質であり扱いが難しい。融点が300℃を超える金属でも問題がないことは、精練所での事故の報告等から容易に推察される。但し、この場合には液体保持容器や注入弁部の強度と耐熱性について特別の配慮を要する。
【0033】
高温液体は油でもよい。但し、油の場合は発火の危険があるため発火点が高い油を選択する必要がある。高温の油は気化したり劣化したりするという問題があり、油は金属よりも使いにくい。
【0034】
「注入口」は、「液体保持容器中に保持されている高温液体の底部側から水を間欠注入するため」に、液体保持容器の底部に設けられる。「底部」とは、液体保持容器のうち高温液体に没した部分であって、水蒸気爆発を発生させるための密閉状態を作り出せる程度に高温液体に没した部分であればどの位置でも構わない。但し、あまり高温液体の表面に近い部分は密閉状態をつくるという観点から好ましくない。
【0035】
注入口の径をどのようにするかは、水蒸気爆発を発生させるための適量の水を間欠注入するという観点から重要である。実施例1の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置では、直径を5ミリメートルとした。但し、注入口の直径は、高温液体の種類、量、温度、耐圧弁開放時間の長さ、注入する水の水圧等との関係により相対的に決定されるべきものであり、特定の大きさが最適ということはできない。注入口の形状は注入弁部における耐圧弁が閉じたときに耐圧弁の頭と密着して水蒸気爆発の際に高温液体が漏れることのないように形成しなければならない。実施例1の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置では注入口の形状を円錐形とした。すなわち、皿型の頭を持つネジの頭の部分がきれいに収まるようなネジ穴開口部の形状である。但し、高温液体が漏れないような形状であればどのようなものでもよい。
【0036】
「水蒸気爆発室」は前記液体保持容器と注入口よりなるが、図1のように、その上部には水蒸気爆発により発生する衝撃波をともなった爆発流体を受け止めるための蓋及び水蒸気を外部に逃がすための排気口を設けることが好ましい。また、液体保持容器内部の高温液体の温度を監視するため温度計を設けるとよい。
【0037】
「加熱装置」は、「前記高温液体を液体保持容器中にて300℃以上の高温に保持する。」加熱装置は電熱線を液体保持容器外部に巻きつけたものが考えられる。また、液体保持容器内部を貫通する管を多数設置してその管内部に電熱線を通すことにより熱伝導効率を高める方法を採用してもよい。図1では省略したが、実施例1の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置では熱効率を高めるため加熱装置の周囲を断熱材により包む構造とした。
前記高温流体の加熱手段には、電熱加熱や、燃焼物の燃焼による加熱、また太陽光をリニアフレネルレンズ等により集束することによる加熱、などを利用してもよい。それらは本案の利用目的によって選択すればよい。
また加熱方法としては、本案の水蒸気爆発室やシリンダ、戻しポンプ等を直接加熱してもよいが、水蒸気爆発室から離れた位置に加熱器を設け保温パイプで構成された流体通路で水蒸気爆発室と加熱器とを連結し、加熱された高温流体を必要とする液体保持容器に循環利用する方法であってもよい。
【0038】
高温液体の温度を何度に設定するかは水蒸気爆発及び衝撃波の成否や大きさに影響するため重要である。錫を高温液体に使用した場合、300℃程度では小規模な爆発が発生し、350から370℃程度で激しい爆発が得られた。特許文献1では、水蒸気爆発を発生させるための加熱室の温度を3000℃程度の高温にするとしているが、そのような高温でなくても水蒸気爆発を発生させることができることは前述のとおりである。
【0039】
「注入弁部」は、「前記注入口において水の間欠注入を制御する。」図1にあるとおり、前記注入口には水を供給するための管が接続され、水には所定の水圧が掛けられる。注入弁部は弁の開閉を通じて水の間欠注入における注入時期及び注入量を制御する。注入弁部の機能上重要な点は、水蒸気爆発を起こすための適量の水を注入することと、水蒸気爆発発生後直ちに弁を閉じて水の注入を遮断し、かつ高温液体が注入口内部に流入することを防止することにある。
【0040】
間欠注入する水の量を制御する方法としては、第一に注入口に供給される水の水圧の調整がある。注入弁部による水量の調節方法としては第一に弁を持ちあげる高さの微調節があり、第二に弁を持ち上げている時間の長さの調節がある。これらは、タイミングカムの形状を変えたり、タイミングカムと耐圧弁の隙間を調整する手段を備えたりすることにより実現できる。耐圧弁の制御をタイミングカムではなく電磁的方法により行う場合には、電子計算機によって制御することとなる。
【0041】
水蒸気爆発発生後直ちに弁を閉じて高温液体が注入口内部に流入することを防止することは非常に重要である。高温液体が溶融金属である場合においては注入口内部に侵入して冷やされた溶融金属が注入口に固着して弁の開閉に支障をきたす危険があるからである。水蒸気爆発が発生すると液体保持容器内部の圧力が瞬時に高まるが、それにあわせて弁を閉じる必要がある。実施例1の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置では水蒸気爆発により発生した圧力を利用して弁を閉じる構成をとった。
【0042】
図2は、実施例1の耐圧弁の構造と機能を表す図である。耐圧弁は注入口側シャフト0201及びタイミングカム側シャフト0202が軸方向に僅かに伸縮可能に接続され、バネ0203の力により通常は伸びた状態で固定されている。(A)図は耐圧弁0204がタイミングカム0205により押し上げられ、注入口0206から所定の少量の水0207が高温液体0208中に間欠注入された様子を表している。(B)図は水と高温液体が接触して水蒸気爆発0209を起こし、それにより発生した圧力0210により耐圧弁の注入口側シャフト0201が押し下げられた状態を表している。このときタイミングカム側シャフト0202はまだタイミングカムにより持ち上げられており下に下がることができない状態となっている。(C)図はタイミングカムがさらに回転してタイミングカム側シャフトの底部からはずれ、注入口側シャフトに続いてタイミングカム側シャフトも下に下がった様子を表している。
実施例1の耐圧弁は、上記の方法により、水蒸気爆発発生後速やかに弁を閉じ高温液体が注入口内部に侵入することを防止している。
【0043】
図3は、水蒸気爆発時の爆圧で注入口内部へ高温液体が逆流するのを防ぐことのできるもう一つの注入弁部の例である。ここでは、耐圧弁0301の先端は円錐状にとがった形状に形成され、これに合わせて注入口0302は液体保持容器に向かって細くなる円錐形に形成される。水蒸気爆発時の爆圧で注入口内部へ高温液体が逆流するのを防ぐため、貯水器0303内の水圧を水蒸気爆発の圧力を上まわるよう高圧注水ポンプ0304により加圧保持しておく。耐圧弁はタイミングカム0305により押し下げられ開口し、水が噴射されると同時に水蒸気爆発が起こっても圧力差により逆流は起こらない。なお、注水量のコントロールは注入口の微小な噴射口径の調整とバルブの瞬間的な開口時間の調整で実現できる。
【0044】
注水する水には、高温液体の酸化を防ぐため、いったん充分に沸騰させて水に溶解している酸素を除去した無酸素水を使用するのが好ましい。また水温は、水の沸点直前くらいが高温液体の温度低下を抑えられて好ましい。
【実施例2】
【0045】
<<実施例2の概要>>
実施例2は実施例1の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置により得た水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波により駆動する発動機に関する。
【0046】
図4は、実施例2の発動機の構造図である。実施例2の発動機は水蒸気爆発及び衝撃波発生装置0401を有する。水蒸気爆発及び衝撃波発生装置上部にはシリンダ0402が形成され、シリンダ内にはピストン0403が上下移動可能に収容される。ピストンはピストン本体0404及びその内部に設けられたピストンバルブ0405により成る。ピストン本体上部のシャフトはシリンダ天井穴から外部に突出しており、ピストンの往復運動はそこに接続されたコンロッド0406及びクランクシャフト0407からなる変換部0408により回転運動に変換される。シリンダ上部には水蒸気爆発により発生した水蒸気と高温液体の混合物をシリンダ外に排出するための爆発流体排出口0409が設けられる。爆発流体排出口からシリンダ外部に排出された爆発流体は戻し通路0410へと導かれ、その過程で比重の重い高温液体は戻し通路下部へ、比重の軽い水蒸気は戻し通路上部に接続された水蒸気排出口0411へと移動することにより、爆発流体は高温液体と水蒸気に分離される。戻し通路下部はシリンダ状に形成され、そこには戻しポンプ0412が収容されている。液体保持容器内の高温液体は水蒸気と混合した爆発流体となって爆発流体排出口から外部に排出されるため次回の爆発のための高温液体が常に不足する状態となる。戻しポンプは前記変換部を介して得られた動力により前記ピストンと同期運動し、必要な量の高温液体を強制的に液体保持容器に送還する。戻し通路と液体保持容器の接続部には逆流止弁0413が設けられ、水蒸気爆発発生時に高温液体が戻し通路に逆流することを防止する。加熱装置0414は、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の他、シリンダ部や戻し通路の周囲にも設置されている。
<<実施例2の構成要件の説明>>
【0047】
第二発明の発動機は、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置と、ピストンと、変換部とを有する。
【0048】
「水蒸気爆発及び衝撃波発生装置」は第一発明の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置である。
【0049】
「ピストン」は「水蒸気爆発及び衝撃波発生装置で生じる水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動される。」すなわち、水蒸気爆発及び衝撃波により生じた液体保持容器内部の高圧力によりシリンダ内部にて押し上げられ、動力を得る。ピストンは通常円筒形とするがそれに限るものではない。
【0050】
「変換部」は「ピストン運動を回転運動に変換する。」通常は、クランクシャフトに接続されたクランクアームのクランクピンと、ピストンとを、コンロッドで接続する構造をとる。
【0051】
第三発明の発動機は、第二発明の発動機であって、さらに戻し通路を有する。
【0052】
「戻し通路」は、「ピストン押し上げ後の水蒸気及び高温液体の混合物である爆発流体を収容する。」前記のとおり戻し通路の機能は爆発流体を水蒸気と高温液体に分離することにある。この分離は水蒸気と高温液体の比重の違いにより戻し通路内部で自然に行われる。すなわち、比重の重い高温液体は戻し通路下部へ導かれ、比重の軽い水蒸気は戻し通路上部へ導かれる。
【0053】
戻し通路下部は高温液体を還流させるために液体保持容器に接続されている。接続部には前述の通り逆流止弁が設けられ、水蒸気爆発発生時に爆発流体が戻り通路に逆流することを防止している。
【0054】
戻し通路の周囲には加熱装置を設置することが望ましい。戻し通路内部の高温液体は水蒸気爆発及び衝撃波発生装置内部に送還され水蒸気爆発発生に再利用されるべきものだからである。
【0055】
第四発明の発動機は、第三発明の発動機であって、さらに水蒸気排出口を有する。
【0056】
「水蒸気排出口」は、「戻し通路に流入した爆発流体のうち分離した水蒸気を排出する。」水蒸気排出口は、戻し通路上部へ接続され、戻し通路内部にて高温液体と分離された水蒸気を外部に排出するものである。
【0057】
第五発明の発動機は、第四発明の発動機であって、さらに戻しポンプを有する。
【0058】
「戻しポンプ」は、「戻し通路に流入した爆発流体のうち高温液体を爆発室に還入させる。」戻しポンプは、戻し通路下部に形成されたシリンダ内に収容される。戻しポンプは前記変換部を介して得られた動力により前記ピストンと同期運動し、必要な量の高温液体を強制的に液体保持容器に送還する。戻しポンプは下降運動時には高温液体を液体保持容器へと送り出し、上昇運動時には高温液体を引き戻さないようにしなければならない。そのため、図4のように実施例2の戻しポンプは内部に弁を設けて前記機能を実現している。
戻しポンプ内部の球状弁は軽金属(アルミ)なので、高温流体(溶融金属の錫やビスマスを使用した場合)に対しては比重差で浮くため、本案の弁として適当に機能する。または、耐熱性のバネを使用した弁であってもよい。
【0059】
第六発明の発動機は、第五発明の発動機であって、「ピストンにはピストンバルブが設けられ、ピストンバルブは、上死点付近にてシリンダに設置された上障害突起に衝突することにより開口動作し、下死点付近にてシリンダまたは液体保持容器に設置された下障害突起に衝突することにより閉止動作する」発動機である。
【0060】
「上死点」とは、上下運動するピストンが最も上に上がった位置をいい、「下死点」とは、最も下に下がった位置をいう。もう一度図4に戻るが、上障害突起0415はシリンダ天井部に設置された突起であり、ピストンが上死点近辺に達した際に、ピストン本体上部にあけられた穴を通してピストン本体内部のピストンバルブを押し下げてピストンバルブを開く機能を有する。下障害突起0416は液体保持容器下部に設置され、ピストンが下死点近辺に達した際に、ピストンバルブを下から押してピストンバルブを閉じる機能を有する。
【0061】
図5はピストン及びピストンバルブの構造図である。ピストンは、ピストン本体0501とピストンバルブ0502とからなる。(1)に示された複数の面でピストンを切断した時の断面図の一例が(2)に示してある。(1)は、ピストンバルブが閉止状態であり、(3)はピストンバルブが開口状態である。
【0062】
「(ア)−(ア)」の切断面においては、ピストン本体のみが現れる。ピストン本体のかかる面においては、シリンダに設置される上障害突起がスムーズに通過できる空孔0503が現れる(図中塗りつぶし部分)。「(イ)−(イ)」の切断面においては、ピストン本体とピストンバルブが現れる。ピストン本体のかかる面においては、爆発室内で生じた水蒸気爆発及び衝撃波による爆発流体を通過させるための「空孔」0504が現れる。「(ウ)−(ウ)」の切断面においては、ピストン本体とピストンバルブが現れる。ピストン本体のかかる面においては、爆発流体を通過させるための「空孔」0504が現れる。また、かかる面においては、ピストン本体とピストンバルブとの間に隙間がある。かかる隙間を大きくし過ぎると、バルブ開口時のピストンバルブの図中、左右方向の自由度が大きくなり過ぎ、ピストンバルブとピストン本体とのバランスが不安定になる。また、かかる隙間を小さくし過ぎると、ピストンバルブの上下移動によるバルブの開口・閉止動作がスムーズに行えなくなる。よって、かかる隙間は、前記点を考慮して、適度に設計するのが望ましい。「(エ)−(エ)」の切断面においては、ピストン本体とピストンバルブが現れる。かかる面においては、ピストン本体とピストンバルブとの間に大きな隙間(図中、塗りつぶし部分)がある。また、ピストン本体のかかる面においては、爆発流体を通過させるための「空孔」0504が現れる。「(オ)−(オ)」の切断面においては、ピストン本体とピストンバルブが現れる。かかる面においては、ピストン本体とピストンバルブとは、隙間なく密着するよう構成されている。そして、ピストンバルブは、かかる切断面に現れるやや広い面を有する部分を、図5(3)中、下から上に向かって力を加えられることで、バルブの閉止動作をするよう構成されている。
【0063】
以下に、図6から図9を用いて実施例2の発動機が水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を回転運動に変換する手順を具体的に説明する。図6は水が注入口から間欠注入された直後に水蒸気爆発が発生した瞬間の図である。このとき、ピストン0601はシリンダ0602内において下死点に位置する。ピストン内のピストンバルブ0603は、下障害突起0604に支えられ閉じた状態にある。このとき、前述のとおり、耐圧弁はタイミングカムにより依然下から押し上げられた状態にあるが、同時に水蒸気爆発の圧力により上から押し下げられ、内部に備えたバネの働きで閉じた状態にある。
【0064】
図7は水蒸気爆発により発生した衝撃波をともなった爆発流体がシリンダ内のピストンを上に押し上げている途中の図である。シリンダ右側の矢印はピストンの移動する方向を表している。このときピストン内のピストンバルブは下障害突起の支持を離れた後も、爆発流体の圧力に押されて閉じたままの状態を維持している。一方、逆流止弁0701は爆発流体の圧力に押されて閉じた状態となり、高温液体が戻り通路に逆流するのを防止している。また、耐圧弁0702はタイミングカムの支持を離れて閉じた状態にある。
【0065】
図8は爆発流体により押し上げられたピストン0801が上死点に達した瞬間の図である。このとき、ピストン内のピストンバルブ0802は上障害突起0803により上から突き下げられた結果バルブを開いた状態となっている。開いたピストンバルブからは、高温液体と水蒸気の混合により成る爆発流体が爆発流体排出口0804を経由して戻り通路0805に流出する。ピストンバルブが解放されることにより、液体保持容器内の圧力は一気に低下する。これにより、逆流止弁も解放される。一方、耐圧弁はバネ0806の力により閉じたままである。戻り通路に流出した爆発流体は、比重の重い高温液体が戻り通路下部に、比重の軽い水蒸気が戻り通路上部からさらに水蒸気排出口へと移動することにより、高温液体と水蒸気に分離される。
【0066】
図9は戻り通路下部に設けられた戻しポンプ0901が戻し通路内部の高温液体を液体保持容器内に圧入している図である。水蒸気爆発により高温液体の一部は液体保持容器外部に流出してしまっている。したがって、次回の爆発に備えるためには高温液体を液体保持容器に補充してやる必要がある。図9で、戻しポンプ左側の矢印は戻しポンプが移動する方向を表している。このとき戻しポンプ内部の弁0902は高温液体の圧力により閉じている。また、戻し通路と液体保持容器の接続部に備えられた逆流止弁0903は解放された状態となる。戻しポンプにより戻し通路下部の高温液体は液体保持容器に送り出され、不足した高温液体が液体保持容器内に補充される。戻しポンプが高温液体を液体保持容器内に圧入している間、ピストンは上死点から下死点に向かって下降する。シリンダ右側の矢印はピストンが移動する方向を表している。ピストン内のピストンバルブ0904は解放状態にあり、爆発流体はピストン内を通過して戻し通路へと排出される。この後は図6に戻り、同じ手順が繰り返される。
【実施例3】
【0067】
<<実施例3の概要>>
実施例3は実施例1の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置により得た水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波により駆動するタービン装置に関する。
【0068】
図10は実施例3のタービン装置の斜視概略図である。内部が分かりやすいように一部断面図としている。実施例3のタービン装置は水蒸気爆発室1001を有し、その上部に回転羽根1002が備えられる。回転羽根はその中央で回転軸1003に固定され、回転羽根はタービン本体1004天井に回転可能に装着される。回転羽根の上には爆発流体止ネット笠1005が設けられる。タービン本体上部には排気口1006が接続される。タービン本体の下部は循環高温液体プール1007を構成する。水蒸気爆発室と循環高温液体プールとの間の壁には高温液体導入バルブ1008が設けられる。循環高温液体プールと水蒸気爆発室の周囲には加熱装置1009が設置される。
図11は、実施例3のタービン装置の断面図である。実施例3のタービン装置は、水蒸気爆発室1100と、加熱装置1103と、注入弁部1104とからなる水蒸気爆発及び衝撃波発生装置を備えている。水蒸気爆発室は液体保持容器1101と注入口1102とからなる。実施例3のタービン装置はそのような水蒸気爆発及び衝撃波発生装置を複数有する。それぞれの水蒸気爆発室には高温液体1105が保持され、液体保持容器底部の注入口に備えられた注入弁部が耐圧弁を開くことにより高温液体底部側に適量の水を間欠注入する。注入された水は高温液体からの急速な熱移動により水蒸気爆発を起こす。この衝撃波をともなった水蒸気爆発により水蒸気爆発室内の圧力は一気に高まり、高温液体と水蒸気の混合体である爆発流体が水蒸気爆発室上部に噴き上がる。水蒸気爆発室の上部には回転軸1106に中心を固定された回転羽根1107があり、回転羽根の羽根が爆発流体の噴射を受けることにより回転力を得る。回転羽根を回転させて、羽根の間を通過した爆発流体は、タービン本体1108の上部空間にて、比重の重い高温液体は下部に落下し比重の軽い水蒸気は上昇することで、高温液体と水蒸気に分離される。回転羽根の上に適度な間隔をおいて備えられた爆発流体止ネット笠1109は爆発流体に含まれる高温液体の一部を受け止め、爆発流体が高温液体と水蒸気に分離されるのを促進する。爆発流体から分離された高温液体は水蒸気爆発室に隣接して設けられた循環高温液体プール1110に回収され、爆発流体から分離された水蒸気はタービン本体上部に接続された排気口1111から排気される。水蒸気爆発室と循環高温液体プールとが隣接する壁には高温液体導入バルブ1112が設けられる。このバルブは水蒸気爆発発生時にはその圧力により閉じるが、それ以外の場合は解放されており、このバルブを通じて循環高温液体プール内にある高温液体が水蒸気爆発室内部に流入することにより、水蒸気爆発により外部に飛散して不足した水蒸気爆発室内部の高温液体が補充される。タービンを駆動させるためには、水蒸気爆発及び衝撃波を連続して発生させる必要があるが、水蒸気爆発の発生後に次回の水蒸気爆発のために使う高温液体を高温液体導入バルブから水蒸気爆発室内に取り込む時間を要するため、それぞれの爆発の間には適度な時間を要する。そこで、タービン装置には複数の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置を備えさせ、それらにより水蒸気爆発及び衝撃波を順次発生させることで、全体としては間断なく回転羽根に動力を伝えることができる。制御部1113はそれぞれの水蒸気爆発及び衝撃波発生装置に備えられたタイミングカム1114を制御することにより、上記の目的を実現する。
<<実施例3の構成要件の説明>>
【0069】
第七発明のタービン装置は、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置と、タービンとを有する。
【0070】
「水蒸気爆発及び衝撃波発生装置」は第一発明の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置である。第七発明のタービン装置の有する水蒸気爆発及び衝撃波発生装置はひとつでもよいし、複数でもよい。
【0071】
「タービン」は「水蒸気爆発及び衝撃波発生装置による水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動される」原動機である。すなわち、水蒸気爆発及び衝撃波による爆発流体の圧力や運動エネルギーを、回転運動のエネルギーに変える原動機をいう。典型的には、実施例3のタービン装置における、タービン本体に回転可能に装着された回転軸及び回転羽根のような構造を有する。
【0072】
第八発明のタービン装置は、第七発明のタービン装置であって、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置が複数あり、制御部を有する。
【0073】
「制御部」は「各水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の注入弁部が水を間欠注入するタイミングを制御する。」前述のとおり、回転羽根に継続的に運動エネルギーを伝えるためには複数の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置において水を順次間欠注入し、間断なく水蒸気爆発及び衝撃波を発生させることが望ましい。制御部はそのような連続した水蒸気爆発及び衝撃波を実現させるため複数の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置に装備された注入弁部の動作を制御するものである。このような制御は電子計算機により制御されるモータでタイミングカムを回転駆動することにより実現してもよいし、注入弁部を電磁的な弁として電磁的な制御を行ってもよい。また、各水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の注入弁部を、機械的にタイミングをずらして回転させられるタイミングカムにより順次開閉する方法でもよい。
【0074】
第九発明のタービン装置は、第八発明のタービン装置であって、さらに、循環高温液体プールと、高温液体導入バルブとを有する。
【0075】
「循環高温液体プール」は、「水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の周囲に」設けられ、「飛散した高温液体を回収する。」循環高温液体プールは回収後の高温液体の温度が低下しないように加熱装置を設けるとよい。
【0076】
「高温液体導入バルブ」は、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置に設けられ、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置に「循環高温液体プールから高温液体を導入する。」図12は、高温液体導入バルブの動作を表す図である。水蒸気爆発が起きていない状態では(a)に示すように高温液体導入バルブが開いており、循環高温液体プールから水蒸気爆発室へと高温液体が流入する。この状態で、水蒸気爆発が起きると、(b)に示すように高温液体導入バルブは爆発流体からの圧力(図中矢印)を受けてバルブが閉じる。かかる場合、爆発流体は高温液体導入バルブを介して循環高温液体プールに逆流することなく、全て回転羽根に向かう。高温液体導入バルブの強度や大きさ等は特段制限するものではなく駆動目的にあわせた任意の設計事項であるが、水蒸気爆発及び衝撃波の爆発エネルギーを繰り返し受けても耐えうる構成でなければならない。また高温液体導入バルブは、循環高温液体プールから水蒸気爆発室に所定量の高温液体を所定のサイクルで安定して送り込める自動制御のポンプ方式であってもよい。これらは従来技術で充分に可能である。
【符号の説明】
【0077】
0101 液体保持容器
0102 高温液体
0103 加熱装置
0104 注入口
0105 耐圧弁
0106 バネ
0107 タイミングカム
0108 蓋
0109 排気口
0110 温度計
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気爆発及び衝撃波を発生させる装置、及び、それによって発生させた水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動させる発動機及びタービン装置の基本技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水が特殊な条件下で370℃程度の高温にまで一気に加熱されると、爆発現象が生じることが知られている。前記爆発現象は一般的に「水蒸気爆発」と呼ばれ、例えば、非常に高温の金属溶融体と水の接触により生じたり、マグマと水との接触により生じたり、また、加熱された天ぷら油中で水との接触により生じたりする。
【0003】
水蒸気爆発については、いくつかの研究報告がなされているものの、いまだ未知な部分が多いのが現状である。しかしながら、水の気化による体積膨張率を考慮すると、瞬間的に水が気化した際に生じる爆発エネルギーは、非常に大きなものであると考えられる。
【0004】
そこで、水蒸気爆発の力を動力等として利用しようとする試みがなされてきた。特許文献1は真空中で放電させて高温状態とした部屋に水を噴射して水蒸気爆発を発生させるとする。また、特許文献2は高周波電流を通電させて電磁誘導により加熱させた燃焼室内に水を噴射して水蒸気爆発を得るという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2000−106916
【特許文献2】特開平11−229965
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件発明者は水蒸気爆発のメカニズムを解明すべくいくつかの実験を行った。まず、高温に熱した金属の表面に水滴を滴下した。金属の表面温度をいかに高くしても、また、滴下する水の量を変えてみても、滴下された水滴は金属表面にて気化蒸発するのみで爆発をおこすことは一度もなかった。この結果は、金属の温度が融点を超え、金属が溶融した場合においても変わらなかった(第一実験)。
【0007】
次に、本件発明者は高温で溶解した金属を水の中に水没させてみた。すると、溶融金属の周辺で水蒸気爆発が観察された(第二実験)。
【0008】
さらに、本件発明者は水滴をてんぷら油の表面に滴下する実験を行った。滴下した水滴が熱された油の表面にとどまっている間は金属の場合と同様に気化蒸発を起こすのみであった。しかし、水は油よりも比重が重い。滴下した水の量が多いと全て気化蒸発し終える前に油の中に沈下することがあった。油の温度が十分高ければ、沈下した水は必ず音を立てて爆発した。油の温度は300℃程度以上であれば水蒸気爆発を起こすことができ、350℃以上でさらに激しい水蒸気爆発が発生することを確認した(第三実験)。
【0009】
第一実験から高温の物質の表面に水を滴下するのみでは水蒸気爆発は起こらないことが分かった。このことは物質の温度をいくら高くしても変わらない。それは高温物質に水が接触しても常気圧下では100℃で沸騰するため略100℃以上には上昇しえず、水蒸気爆発の要因である水の高温化が生じないからである。しかし、水の中に高温物質を入れた場合(第二実験)や、高温の液状物質の内部に少量の水を間欠注入した場合(第三実験)には、温度がさほど高くなくても水蒸気爆発が起こる。第二及び第三の実験に共通の特徴は、水蒸気爆発を起こす場所が液体により密閉されている点である。ここで、「〜により密閉されている」とは、単に「〜により全体を取り囲まれており外気を通じた逃げ場所がない」程度の意味で用いる。第二実験では、爆発部位は、液体である金属及び液体である水により取り囲まれている。第三実験で水が油の中に水没した場合には液体である油により取り囲まれている。このような密閉された状況下では、大きな温度差のある二種類の異質な液体が接触することで高温液体側から低温液体側に熱の移動が起こり、水の温度は100℃を超えて隣接する液体の温度と同等程度まで一気に加熱される。この過程は未だそのメカニズムが明確に解明されたとはいい難いが、このように100℃をはるかに超える水の高温化が瞬時に起こる現象によって、急速で激しい水蒸気膨張が発生し高圧力な水蒸気爆発に至ることが実験により判明した。さらに、瞬間的な水蒸気爆発によって、同時に衝撃波が生成されていて、爆発の圧力や膨張速をいっそう増大させていることも判明した。
これに対し、第一実験では水の周囲は外気で満たされており液体により密閉されている状態にないため水蒸気爆発を起こすことができなかった。
【0010】
前記特許文献1のエネルギー発生装置では真空中で高温に加熱した気化室に水を噴射して水蒸気爆発を得るという。しかし、いくら高温にしたところで高温の物質表面に水を噴射しただけでは水蒸気爆発が起こらないことは第一実験において確認されたところである。この装置では放電による高温状態を得るために気化室を真空状態にするものであるが、そもそも真空状態においては水蒸気爆発を起こす前に水が気化すると考えられ、この装置により水蒸気爆発を発生させられるとは到底考えられない。
【0011】
前記特許文献2のジェットエンジンも、水蒸気爆発のメカニズムについての十分な開示がないため断言できないが、単に燃焼室内にて高温に加熱しただけでは水蒸気爆発が発生しない点は第一実験と同様である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本件発明者は、300℃以上の高温に保たれた液体を収容するための容器の底部に開閉弁を設け、前記開閉弁から高温液体中に水を間欠注入することにより、「液体により密閉されている状態」を作り出し、水蒸気爆発を起こすことに成功した。そして、その詳細な原理は省略するが、水蒸気爆発と同時に発生する衝撃波が爆発流体の圧力や膨張速をいっそう増大させる結果となり、水蒸気爆発により発生した衝撃波をともなった高圧な爆発流体のエネルギーをエンジンやタービンの動力として応用することに道を開いた。
【0013】
請求項1に記載の第一発明は、300℃以上の温度の高温液体を保持するための液体保持容器と、液体保持容器中に保持されている高温液体の底部側から水を間欠注入するための注入口と、を有する水蒸気爆発室と、前記高温液体を300℃以上の高温に保持する加熱装置と、前記注入口において水の間欠注入を制御する注入弁部とを有する水蒸気爆発及び衝撃波発生装置、に関する。
【0014】
第一発明は、水蒸気爆発及び衝撃波を発生させるための装置に関するものであり、本発明の最も基本となる発明である。
【0015】
請求項2に記載の第二発明は、請求項1に記載の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置と、この水蒸気爆発及び衝撃波発生装置で生じる水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動されるピストンと、ピストン運動を回転運動に変換する変換部とを備えた発動機、に関する。
【0016】
第二発明乃至第六発明は、第一発明の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置で得た水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を動力源とする発動機に関するものであり、第二発明はこれらの中で最も基本となるものである。
【0017】
請求項3に記載の第三発明は、ピストン押し上げ後の水蒸気及び高温液体の混合物である爆発流体を収容する戻し通路をさらに有する請求項2に記載の発動機、に関する。
【0018】
請求項4に記載の第四発明は、戻し通路に流入した爆発流体のうち分離した水蒸気を排出する水蒸気排出口をさらに有する請求項3に記載の発動機、に関する。
【0019】
請求項5に記載の第五発明は、戻し通路に流入した爆発流体のうち高温液体を爆発室に還入させるための戻しポンプを戻し通路内下部にさらに有する請求項4に記載の発動機、に関する。
【0020】
請求項6に記載の第六発明は、ピストンにはピストンバルブが設けられ、ピストンバルブは、上死点付近にてシリンダに設置された上障害突起に衝突することにより開口動作し、下死点付近にてシリンダまたは液体保持容器に設置された下障害突起に衝突することにより閉止動作する請求項5に記載の発動機、に関する。
【0021】
請求項7に記載の第七発明は、請求項1に記載の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置と、この水蒸気爆発及び衝撃波発生装置による水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動されるタービンとを備えたタービン装置、に関する。
【0022】
第七発明乃至第九発明は、第一発明の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置で得た水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を動力源とするタービン装置に関するものであり、第七発明はこれらの中で最も基本となるものである。
【0023】
請求項8に記載の第八発明は、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置を複数備え、各水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の注入弁部が水を間欠注入するタイミングを制御するための制御部を有する請求項7に記載のタービン装置、に関する。
【0024】
請求項9に記載の第九発明は、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の周囲には、飛散した高温液体を回収するための循環高温液体プールが設けられ、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置には、循環高温液体プールから高温液体を導入するための高温液体導入バルブが備えられている請求項8に記載のタービン装置、に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、未だそのメカニズムが明確に解明されたとはいい難い水蒸気爆発や同時に発生する衝撃波を確実に発生させることのできる装置を提案するものであり、これにより水蒸気爆発及び衝撃波の研究開発の実験手段を提供するとともに、発動機やタービンへの応用に道を開くものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1の概略図
【図2】実施例1の耐圧弁の構造と機能を表す図
【図3】水蒸気爆発時の爆圧で注入口内部へ高温液体が逆流するのを防ぐことのできるもう一つの注入弁部の図
【図4】実施例2の発動機の構造図
【図5】ピストン及びピストンバルブの構造図
【図6】水が注入口から間欠注入された直後に水蒸気爆発が発生した瞬間の図
【図7】水蒸気爆発により発生した衝撃波をともなった爆発流体がシリンダ内のピストンを上に押し上げている途中の図
【図8】爆発流体により押し上げられたピストンが上死点に達した瞬間の図
【図9】戻り通路下部に設けられた戻しポンプが戻し通路内部の高温液体を液体保持容器内に圧入している図
【図10】実施例3のタービン装置の斜視概略図
【図11】実施例3のタービン装置の断面図
【図12】高温液体導入バルブの動作を表す図
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施例1は第一発明に関する。実施例2は第二発明ないし第六発明に関する。実施例3は第七発明ないし第九発明に関する。また本発明は、以下での実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができる。
【実施例1】
【0028】
<<実施例1の概要>>
実施例1は第一発明における水蒸気爆発及び衝撃波発生装置に関するものである。
図1は、実施例1の概略図である。液体保持容器0101の内部に溶融金属など高温液体0102が保持されている。液体保持容器の周囲には高温液体を高温に保持するための加熱装置0103が備えられている。液体保持容器の底部には水を間欠注入するための注入口0104が設けられ、さらに、注入口を塞ぐかたちで耐圧弁0105が備えられる。耐圧弁はバネ0106の力で注入口を塞いでいるが、タイミングカム0107で押し上げられると弁と注入口の間の隙間から水が間欠注入される。高温液体の底部に水が間欠注入されると、液体により密閉された状態で高温液体から水へ急速な熱移動が起こり、水蒸気爆発及び衝撃波が発生する。
【0029】
水蒸気爆発及び衝撃波発生装置上部には爆発により飛散した高温液体と水蒸気の混合物(以下、この混合物を「爆発流体」と呼ぶ)を受け止めるための蓋0108及び水蒸気のみを上部に逃がすための排気口0109が備えられる。水蒸気爆発及び衝撃波により飛散した高温液体は蓋で受け止められたのち落下し再利用される一方、水蒸気は排気口から排気される。
液体保持容器には内部の高温液体の温度を監視するための温度計0110が備えられている。
<<実施例1の構成要件の説明>>
【0030】
第一発明の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置は、水蒸気爆発室と、加熱装置と、注入弁部とを有する。水蒸気爆発室は、液体保持容器と、注入口とを有する。以下、それぞれにつき説明する。
【0031】
「液体保持容器」は「300℃以上の温度の高温液体を保持する。」液体保持容器は高温の液体を保持するものであるから、第一に耐熱性に優れたものであることを要する。ただし、高温液体の温度としては300℃〜400℃程度で水蒸気爆発は発生するから、それ以上の温度の液体を使う特別な事情がない限り、鉄などの一般的な素材で十分である。次に、液体保持容器は水蒸気爆発で発生する圧力や衝撃波に十分耐えるだけの強度を要する。水蒸気爆発発生時の気圧は数百気圧に達しているものと考えられ、液体保持容器はそのような急激に発生する圧力に耐えうる素材と構造を備えることを要する。さらに、加熱装置を液体保持容器の外部に装着する場合には、加熱装置からの熱が液体保持容器を伝導して内部の液体を加熱するのであるから、熱伝導性の高い素材が好ましい。
【0032】
「高温液体」は融点が300℃以下の金属が好適であるが、融点が300℃以上の金属でもよい。融点が300℃以下の金属としては、錫、ビスマス、ポロニウムまたは低融点合金等がある。そのうち錫は融点が232℃と低く扱いやすいこと、手に入れやすいことから、本発明の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置では錫を主に用いている。また、ビスマスでも問題なく水蒸気爆発及び衝撃波が発生することが実験により確認できた。ポロニウムは放射性物質であり扱いが難しい。融点が300℃を超える金属でも問題がないことは、精練所での事故の報告等から容易に推察される。但し、この場合には液体保持容器や注入弁部の強度と耐熱性について特別の配慮を要する。
【0033】
高温液体は油でもよい。但し、油の場合は発火の危険があるため発火点が高い油を選択する必要がある。高温の油は気化したり劣化したりするという問題があり、油は金属よりも使いにくい。
【0034】
「注入口」は、「液体保持容器中に保持されている高温液体の底部側から水を間欠注入するため」に、液体保持容器の底部に設けられる。「底部」とは、液体保持容器のうち高温液体に没した部分であって、水蒸気爆発を発生させるための密閉状態を作り出せる程度に高温液体に没した部分であればどの位置でも構わない。但し、あまり高温液体の表面に近い部分は密閉状態をつくるという観点から好ましくない。
【0035】
注入口の径をどのようにするかは、水蒸気爆発を発生させるための適量の水を間欠注入するという観点から重要である。実施例1の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置では、直径を5ミリメートルとした。但し、注入口の直径は、高温液体の種類、量、温度、耐圧弁開放時間の長さ、注入する水の水圧等との関係により相対的に決定されるべきものであり、特定の大きさが最適ということはできない。注入口の形状は注入弁部における耐圧弁が閉じたときに耐圧弁の頭と密着して水蒸気爆発の際に高温液体が漏れることのないように形成しなければならない。実施例1の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置では注入口の形状を円錐形とした。すなわち、皿型の頭を持つネジの頭の部分がきれいに収まるようなネジ穴開口部の形状である。但し、高温液体が漏れないような形状であればどのようなものでもよい。
【0036】
「水蒸気爆発室」は前記液体保持容器と注入口よりなるが、図1のように、その上部には水蒸気爆発により発生する衝撃波をともなった爆発流体を受け止めるための蓋及び水蒸気を外部に逃がすための排気口を設けることが好ましい。また、液体保持容器内部の高温液体の温度を監視するため温度計を設けるとよい。
【0037】
「加熱装置」は、「前記高温液体を液体保持容器中にて300℃以上の高温に保持する。」加熱装置は電熱線を液体保持容器外部に巻きつけたものが考えられる。また、液体保持容器内部を貫通する管を多数設置してその管内部に電熱線を通すことにより熱伝導効率を高める方法を採用してもよい。図1では省略したが、実施例1の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置では熱効率を高めるため加熱装置の周囲を断熱材により包む構造とした。
前記高温流体の加熱手段には、電熱加熱や、燃焼物の燃焼による加熱、また太陽光をリニアフレネルレンズ等により集束することによる加熱、などを利用してもよい。それらは本案の利用目的によって選択すればよい。
また加熱方法としては、本案の水蒸気爆発室やシリンダ、戻しポンプ等を直接加熱してもよいが、水蒸気爆発室から離れた位置に加熱器を設け保温パイプで構成された流体通路で水蒸気爆発室と加熱器とを連結し、加熱された高温流体を必要とする液体保持容器に循環利用する方法であってもよい。
【0038】
高温液体の温度を何度に設定するかは水蒸気爆発及び衝撃波の成否や大きさに影響するため重要である。錫を高温液体に使用した場合、300℃程度では小規模な爆発が発生し、350から370℃程度で激しい爆発が得られた。特許文献1では、水蒸気爆発を発生させるための加熱室の温度を3000℃程度の高温にするとしているが、そのような高温でなくても水蒸気爆発を発生させることができることは前述のとおりである。
【0039】
「注入弁部」は、「前記注入口において水の間欠注入を制御する。」図1にあるとおり、前記注入口には水を供給するための管が接続され、水には所定の水圧が掛けられる。注入弁部は弁の開閉を通じて水の間欠注入における注入時期及び注入量を制御する。注入弁部の機能上重要な点は、水蒸気爆発を起こすための適量の水を注入することと、水蒸気爆発発生後直ちに弁を閉じて水の注入を遮断し、かつ高温液体が注入口内部に流入することを防止することにある。
【0040】
間欠注入する水の量を制御する方法としては、第一に注入口に供給される水の水圧の調整がある。注入弁部による水量の調節方法としては第一に弁を持ちあげる高さの微調節があり、第二に弁を持ち上げている時間の長さの調節がある。これらは、タイミングカムの形状を変えたり、タイミングカムと耐圧弁の隙間を調整する手段を備えたりすることにより実現できる。耐圧弁の制御をタイミングカムではなく電磁的方法により行う場合には、電子計算機によって制御することとなる。
【0041】
水蒸気爆発発生後直ちに弁を閉じて高温液体が注入口内部に流入することを防止することは非常に重要である。高温液体が溶融金属である場合においては注入口内部に侵入して冷やされた溶融金属が注入口に固着して弁の開閉に支障をきたす危険があるからである。水蒸気爆発が発生すると液体保持容器内部の圧力が瞬時に高まるが、それにあわせて弁を閉じる必要がある。実施例1の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置では水蒸気爆発により発生した圧力を利用して弁を閉じる構成をとった。
【0042】
図2は、実施例1の耐圧弁の構造と機能を表す図である。耐圧弁は注入口側シャフト0201及びタイミングカム側シャフト0202が軸方向に僅かに伸縮可能に接続され、バネ0203の力により通常は伸びた状態で固定されている。(A)図は耐圧弁0204がタイミングカム0205により押し上げられ、注入口0206から所定の少量の水0207が高温液体0208中に間欠注入された様子を表している。(B)図は水と高温液体が接触して水蒸気爆発0209を起こし、それにより発生した圧力0210により耐圧弁の注入口側シャフト0201が押し下げられた状態を表している。このときタイミングカム側シャフト0202はまだタイミングカムにより持ち上げられており下に下がることができない状態となっている。(C)図はタイミングカムがさらに回転してタイミングカム側シャフトの底部からはずれ、注入口側シャフトに続いてタイミングカム側シャフトも下に下がった様子を表している。
実施例1の耐圧弁は、上記の方法により、水蒸気爆発発生後速やかに弁を閉じ高温液体が注入口内部に侵入することを防止している。
【0043】
図3は、水蒸気爆発時の爆圧で注入口内部へ高温液体が逆流するのを防ぐことのできるもう一つの注入弁部の例である。ここでは、耐圧弁0301の先端は円錐状にとがった形状に形成され、これに合わせて注入口0302は液体保持容器に向かって細くなる円錐形に形成される。水蒸気爆発時の爆圧で注入口内部へ高温液体が逆流するのを防ぐため、貯水器0303内の水圧を水蒸気爆発の圧力を上まわるよう高圧注水ポンプ0304により加圧保持しておく。耐圧弁はタイミングカム0305により押し下げられ開口し、水が噴射されると同時に水蒸気爆発が起こっても圧力差により逆流は起こらない。なお、注水量のコントロールは注入口の微小な噴射口径の調整とバルブの瞬間的な開口時間の調整で実現できる。
【0044】
注水する水には、高温液体の酸化を防ぐため、いったん充分に沸騰させて水に溶解している酸素を除去した無酸素水を使用するのが好ましい。また水温は、水の沸点直前くらいが高温液体の温度低下を抑えられて好ましい。
【実施例2】
【0045】
<<実施例2の概要>>
実施例2は実施例1の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置により得た水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波により駆動する発動機に関する。
【0046】
図4は、実施例2の発動機の構造図である。実施例2の発動機は水蒸気爆発及び衝撃波発生装置0401を有する。水蒸気爆発及び衝撃波発生装置上部にはシリンダ0402が形成され、シリンダ内にはピストン0403が上下移動可能に収容される。ピストンはピストン本体0404及びその内部に設けられたピストンバルブ0405により成る。ピストン本体上部のシャフトはシリンダ天井穴から外部に突出しており、ピストンの往復運動はそこに接続されたコンロッド0406及びクランクシャフト0407からなる変換部0408により回転運動に変換される。シリンダ上部には水蒸気爆発により発生した水蒸気と高温液体の混合物をシリンダ外に排出するための爆発流体排出口0409が設けられる。爆発流体排出口からシリンダ外部に排出された爆発流体は戻し通路0410へと導かれ、その過程で比重の重い高温液体は戻し通路下部へ、比重の軽い水蒸気は戻し通路上部に接続された水蒸気排出口0411へと移動することにより、爆発流体は高温液体と水蒸気に分離される。戻し通路下部はシリンダ状に形成され、そこには戻しポンプ0412が収容されている。液体保持容器内の高温液体は水蒸気と混合した爆発流体となって爆発流体排出口から外部に排出されるため次回の爆発のための高温液体が常に不足する状態となる。戻しポンプは前記変換部を介して得られた動力により前記ピストンと同期運動し、必要な量の高温液体を強制的に液体保持容器に送還する。戻し通路と液体保持容器の接続部には逆流止弁0413が設けられ、水蒸気爆発発生時に高温液体が戻し通路に逆流することを防止する。加熱装置0414は、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の他、シリンダ部や戻し通路の周囲にも設置されている。
<<実施例2の構成要件の説明>>
【0047】
第二発明の発動機は、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置と、ピストンと、変換部とを有する。
【0048】
「水蒸気爆発及び衝撃波発生装置」は第一発明の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置である。
【0049】
「ピストン」は「水蒸気爆発及び衝撃波発生装置で生じる水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動される。」すなわち、水蒸気爆発及び衝撃波により生じた液体保持容器内部の高圧力によりシリンダ内部にて押し上げられ、動力を得る。ピストンは通常円筒形とするがそれに限るものではない。
【0050】
「変換部」は「ピストン運動を回転運動に変換する。」通常は、クランクシャフトに接続されたクランクアームのクランクピンと、ピストンとを、コンロッドで接続する構造をとる。
【0051】
第三発明の発動機は、第二発明の発動機であって、さらに戻し通路を有する。
【0052】
「戻し通路」は、「ピストン押し上げ後の水蒸気及び高温液体の混合物である爆発流体を収容する。」前記のとおり戻し通路の機能は爆発流体を水蒸気と高温液体に分離することにある。この分離は水蒸気と高温液体の比重の違いにより戻し通路内部で自然に行われる。すなわち、比重の重い高温液体は戻し通路下部へ導かれ、比重の軽い水蒸気は戻し通路上部へ導かれる。
【0053】
戻し通路下部は高温液体を還流させるために液体保持容器に接続されている。接続部には前述の通り逆流止弁が設けられ、水蒸気爆発発生時に爆発流体が戻り通路に逆流することを防止している。
【0054】
戻し通路の周囲には加熱装置を設置することが望ましい。戻し通路内部の高温液体は水蒸気爆発及び衝撃波発生装置内部に送還され水蒸気爆発発生に再利用されるべきものだからである。
【0055】
第四発明の発動機は、第三発明の発動機であって、さらに水蒸気排出口を有する。
【0056】
「水蒸気排出口」は、「戻し通路に流入した爆発流体のうち分離した水蒸気を排出する。」水蒸気排出口は、戻し通路上部へ接続され、戻し通路内部にて高温液体と分離された水蒸気を外部に排出するものである。
【0057】
第五発明の発動機は、第四発明の発動機であって、さらに戻しポンプを有する。
【0058】
「戻しポンプ」は、「戻し通路に流入した爆発流体のうち高温液体を爆発室に還入させる。」戻しポンプは、戻し通路下部に形成されたシリンダ内に収容される。戻しポンプは前記変換部を介して得られた動力により前記ピストンと同期運動し、必要な量の高温液体を強制的に液体保持容器に送還する。戻しポンプは下降運動時には高温液体を液体保持容器へと送り出し、上昇運動時には高温液体を引き戻さないようにしなければならない。そのため、図4のように実施例2の戻しポンプは内部に弁を設けて前記機能を実現している。
戻しポンプ内部の球状弁は軽金属(アルミ)なので、高温流体(溶融金属の錫やビスマスを使用した場合)に対しては比重差で浮くため、本案の弁として適当に機能する。または、耐熱性のバネを使用した弁であってもよい。
【0059】
第六発明の発動機は、第五発明の発動機であって、「ピストンにはピストンバルブが設けられ、ピストンバルブは、上死点付近にてシリンダに設置された上障害突起に衝突することにより開口動作し、下死点付近にてシリンダまたは液体保持容器に設置された下障害突起に衝突することにより閉止動作する」発動機である。
【0060】
「上死点」とは、上下運動するピストンが最も上に上がった位置をいい、「下死点」とは、最も下に下がった位置をいう。もう一度図4に戻るが、上障害突起0415はシリンダ天井部に設置された突起であり、ピストンが上死点近辺に達した際に、ピストン本体上部にあけられた穴を通してピストン本体内部のピストンバルブを押し下げてピストンバルブを開く機能を有する。下障害突起0416は液体保持容器下部に設置され、ピストンが下死点近辺に達した際に、ピストンバルブを下から押してピストンバルブを閉じる機能を有する。
【0061】
図5はピストン及びピストンバルブの構造図である。ピストンは、ピストン本体0501とピストンバルブ0502とからなる。(1)に示された複数の面でピストンを切断した時の断面図の一例が(2)に示してある。(1)は、ピストンバルブが閉止状態であり、(3)はピストンバルブが開口状態である。
【0062】
「(ア)−(ア)」の切断面においては、ピストン本体のみが現れる。ピストン本体のかかる面においては、シリンダに設置される上障害突起がスムーズに通過できる空孔0503が現れる(図中塗りつぶし部分)。「(イ)−(イ)」の切断面においては、ピストン本体とピストンバルブが現れる。ピストン本体のかかる面においては、爆発室内で生じた水蒸気爆発及び衝撃波による爆発流体を通過させるための「空孔」0504が現れる。「(ウ)−(ウ)」の切断面においては、ピストン本体とピストンバルブが現れる。ピストン本体のかかる面においては、爆発流体を通過させるための「空孔」0504が現れる。また、かかる面においては、ピストン本体とピストンバルブとの間に隙間がある。かかる隙間を大きくし過ぎると、バルブ開口時のピストンバルブの図中、左右方向の自由度が大きくなり過ぎ、ピストンバルブとピストン本体とのバランスが不安定になる。また、かかる隙間を小さくし過ぎると、ピストンバルブの上下移動によるバルブの開口・閉止動作がスムーズに行えなくなる。よって、かかる隙間は、前記点を考慮して、適度に設計するのが望ましい。「(エ)−(エ)」の切断面においては、ピストン本体とピストンバルブが現れる。かかる面においては、ピストン本体とピストンバルブとの間に大きな隙間(図中、塗りつぶし部分)がある。また、ピストン本体のかかる面においては、爆発流体を通過させるための「空孔」0504が現れる。「(オ)−(オ)」の切断面においては、ピストン本体とピストンバルブが現れる。かかる面においては、ピストン本体とピストンバルブとは、隙間なく密着するよう構成されている。そして、ピストンバルブは、かかる切断面に現れるやや広い面を有する部分を、図5(3)中、下から上に向かって力を加えられることで、バルブの閉止動作をするよう構成されている。
【0063】
以下に、図6から図9を用いて実施例2の発動機が水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を回転運動に変換する手順を具体的に説明する。図6は水が注入口から間欠注入された直後に水蒸気爆発が発生した瞬間の図である。このとき、ピストン0601はシリンダ0602内において下死点に位置する。ピストン内のピストンバルブ0603は、下障害突起0604に支えられ閉じた状態にある。このとき、前述のとおり、耐圧弁はタイミングカムにより依然下から押し上げられた状態にあるが、同時に水蒸気爆発の圧力により上から押し下げられ、内部に備えたバネの働きで閉じた状態にある。
【0064】
図7は水蒸気爆発により発生した衝撃波をともなった爆発流体がシリンダ内のピストンを上に押し上げている途中の図である。シリンダ右側の矢印はピストンの移動する方向を表している。このときピストン内のピストンバルブは下障害突起の支持を離れた後も、爆発流体の圧力に押されて閉じたままの状態を維持している。一方、逆流止弁0701は爆発流体の圧力に押されて閉じた状態となり、高温液体が戻り通路に逆流するのを防止している。また、耐圧弁0702はタイミングカムの支持を離れて閉じた状態にある。
【0065】
図8は爆発流体により押し上げられたピストン0801が上死点に達した瞬間の図である。このとき、ピストン内のピストンバルブ0802は上障害突起0803により上から突き下げられた結果バルブを開いた状態となっている。開いたピストンバルブからは、高温液体と水蒸気の混合により成る爆発流体が爆発流体排出口0804を経由して戻り通路0805に流出する。ピストンバルブが解放されることにより、液体保持容器内の圧力は一気に低下する。これにより、逆流止弁も解放される。一方、耐圧弁はバネ0806の力により閉じたままである。戻り通路に流出した爆発流体は、比重の重い高温液体が戻り通路下部に、比重の軽い水蒸気が戻り通路上部からさらに水蒸気排出口へと移動することにより、高温液体と水蒸気に分離される。
【0066】
図9は戻り通路下部に設けられた戻しポンプ0901が戻し通路内部の高温液体を液体保持容器内に圧入している図である。水蒸気爆発により高温液体の一部は液体保持容器外部に流出してしまっている。したがって、次回の爆発に備えるためには高温液体を液体保持容器に補充してやる必要がある。図9で、戻しポンプ左側の矢印は戻しポンプが移動する方向を表している。このとき戻しポンプ内部の弁0902は高温液体の圧力により閉じている。また、戻し通路と液体保持容器の接続部に備えられた逆流止弁0903は解放された状態となる。戻しポンプにより戻し通路下部の高温液体は液体保持容器に送り出され、不足した高温液体が液体保持容器内に補充される。戻しポンプが高温液体を液体保持容器内に圧入している間、ピストンは上死点から下死点に向かって下降する。シリンダ右側の矢印はピストンが移動する方向を表している。ピストン内のピストンバルブ0904は解放状態にあり、爆発流体はピストン内を通過して戻し通路へと排出される。この後は図6に戻り、同じ手順が繰り返される。
【実施例3】
【0067】
<<実施例3の概要>>
実施例3は実施例1の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置により得た水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波により駆動するタービン装置に関する。
【0068】
図10は実施例3のタービン装置の斜視概略図である。内部が分かりやすいように一部断面図としている。実施例3のタービン装置は水蒸気爆発室1001を有し、その上部に回転羽根1002が備えられる。回転羽根はその中央で回転軸1003に固定され、回転羽根はタービン本体1004天井に回転可能に装着される。回転羽根の上には爆発流体止ネット笠1005が設けられる。タービン本体上部には排気口1006が接続される。タービン本体の下部は循環高温液体プール1007を構成する。水蒸気爆発室と循環高温液体プールとの間の壁には高温液体導入バルブ1008が設けられる。循環高温液体プールと水蒸気爆発室の周囲には加熱装置1009が設置される。
図11は、実施例3のタービン装置の断面図である。実施例3のタービン装置は、水蒸気爆発室1100と、加熱装置1103と、注入弁部1104とからなる水蒸気爆発及び衝撃波発生装置を備えている。水蒸気爆発室は液体保持容器1101と注入口1102とからなる。実施例3のタービン装置はそのような水蒸気爆発及び衝撃波発生装置を複数有する。それぞれの水蒸気爆発室には高温液体1105が保持され、液体保持容器底部の注入口に備えられた注入弁部が耐圧弁を開くことにより高温液体底部側に適量の水を間欠注入する。注入された水は高温液体からの急速な熱移動により水蒸気爆発を起こす。この衝撃波をともなった水蒸気爆発により水蒸気爆発室内の圧力は一気に高まり、高温液体と水蒸気の混合体である爆発流体が水蒸気爆発室上部に噴き上がる。水蒸気爆発室の上部には回転軸1106に中心を固定された回転羽根1107があり、回転羽根の羽根が爆発流体の噴射を受けることにより回転力を得る。回転羽根を回転させて、羽根の間を通過した爆発流体は、タービン本体1108の上部空間にて、比重の重い高温液体は下部に落下し比重の軽い水蒸気は上昇することで、高温液体と水蒸気に分離される。回転羽根の上に適度な間隔をおいて備えられた爆発流体止ネット笠1109は爆発流体に含まれる高温液体の一部を受け止め、爆発流体が高温液体と水蒸気に分離されるのを促進する。爆発流体から分離された高温液体は水蒸気爆発室に隣接して設けられた循環高温液体プール1110に回収され、爆発流体から分離された水蒸気はタービン本体上部に接続された排気口1111から排気される。水蒸気爆発室と循環高温液体プールとが隣接する壁には高温液体導入バルブ1112が設けられる。このバルブは水蒸気爆発発生時にはその圧力により閉じるが、それ以外の場合は解放されており、このバルブを通じて循環高温液体プール内にある高温液体が水蒸気爆発室内部に流入することにより、水蒸気爆発により外部に飛散して不足した水蒸気爆発室内部の高温液体が補充される。タービンを駆動させるためには、水蒸気爆発及び衝撃波を連続して発生させる必要があるが、水蒸気爆発の発生後に次回の水蒸気爆発のために使う高温液体を高温液体導入バルブから水蒸気爆発室内に取り込む時間を要するため、それぞれの爆発の間には適度な時間を要する。そこで、タービン装置には複数の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置を備えさせ、それらにより水蒸気爆発及び衝撃波を順次発生させることで、全体としては間断なく回転羽根に動力を伝えることができる。制御部1113はそれぞれの水蒸気爆発及び衝撃波発生装置に備えられたタイミングカム1114を制御することにより、上記の目的を実現する。
<<実施例3の構成要件の説明>>
【0069】
第七発明のタービン装置は、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置と、タービンとを有する。
【0070】
「水蒸気爆発及び衝撃波発生装置」は第一発明の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置である。第七発明のタービン装置の有する水蒸気爆発及び衝撃波発生装置はひとつでもよいし、複数でもよい。
【0071】
「タービン」は「水蒸気爆発及び衝撃波発生装置による水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動される」原動機である。すなわち、水蒸気爆発及び衝撃波による爆発流体の圧力や運動エネルギーを、回転運動のエネルギーに変える原動機をいう。典型的には、実施例3のタービン装置における、タービン本体に回転可能に装着された回転軸及び回転羽根のような構造を有する。
【0072】
第八発明のタービン装置は、第七発明のタービン装置であって、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置が複数あり、制御部を有する。
【0073】
「制御部」は「各水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の注入弁部が水を間欠注入するタイミングを制御する。」前述のとおり、回転羽根に継続的に運動エネルギーを伝えるためには複数の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置において水を順次間欠注入し、間断なく水蒸気爆発及び衝撃波を発生させることが望ましい。制御部はそのような連続した水蒸気爆発及び衝撃波を実現させるため複数の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置に装備された注入弁部の動作を制御するものである。このような制御は電子計算機により制御されるモータでタイミングカムを回転駆動することにより実現してもよいし、注入弁部を電磁的な弁として電磁的な制御を行ってもよい。また、各水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の注入弁部を、機械的にタイミングをずらして回転させられるタイミングカムにより順次開閉する方法でもよい。
【0074】
第九発明のタービン装置は、第八発明のタービン装置であって、さらに、循環高温液体プールと、高温液体導入バルブとを有する。
【0075】
「循環高温液体プール」は、「水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の周囲に」設けられ、「飛散した高温液体を回収する。」循環高温液体プールは回収後の高温液体の温度が低下しないように加熱装置を設けるとよい。
【0076】
「高温液体導入バルブ」は、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置に設けられ、水蒸気爆発及び衝撃波発生装置に「循環高温液体プールから高温液体を導入する。」図12は、高温液体導入バルブの動作を表す図である。水蒸気爆発が起きていない状態では(a)に示すように高温液体導入バルブが開いており、循環高温液体プールから水蒸気爆発室へと高温液体が流入する。この状態で、水蒸気爆発が起きると、(b)に示すように高温液体導入バルブは爆発流体からの圧力(図中矢印)を受けてバルブが閉じる。かかる場合、爆発流体は高温液体導入バルブを介して循環高温液体プールに逆流することなく、全て回転羽根に向かう。高温液体導入バルブの強度や大きさ等は特段制限するものではなく駆動目的にあわせた任意の設計事項であるが、水蒸気爆発及び衝撃波の爆発エネルギーを繰り返し受けても耐えうる構成でなければならない。また高温液体導入バルブは、循環高温液体プールから水蒸気爆発室に所定量の高温液体を所定のサイクルで安定して送り込める自動制御のポンプ方式であってもよい。これらは従来技術で充分に可能である。
【符号の説明】
【0077】
0101 液体保持容器
0102 高温液体
0103 加熱装置
0104 注入口
0105 耐圧弁
0106 バネ
0107 タイミングカム
0108 蓋
0109 排気口
0110 温度計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
300℃以上の温度の高温液体を保持するための液体保持容器と、
液体保持容器中に保持されている高温液体の底部側から水を間欠注入するための注入口と、を有する水蒸気爆発室と、
前記高温液体を300℃以上の高温に保持する加熱装置と、
前記注入口において水の間欠注入を制御する注入弁部と
を有する水蒸気爆発及び衝撃波発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置と、
この水蒸気爆発及び衝撃波発生装置で生じる水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動されるピストンと、
ピストン運動を回転運動に変換する変換部と、
を備えた発動機。
【請求項3】
ピストン押し上げ後の水蒸気及び高温液体の混合物である爆発流体を収容する戻し通路をさらに有する請求項2に記載の発動機。
【請求項4】
戻し通路に流入した爆発流体のうち分離した水蒸気を排出する水蒸気排出口をさらに有する請求項3に記載の発動機。
【請求項5】
戻し通路に流入した爆発流体のうち高温液体を爆発室に還入させるための戻しポンプを戻し通路内下部にさらに有する請求項4に記載の発動機。
【請求項6】
ピストンにはピストンバルブが設けられ、ピストンバルブは、上死点付近にてシリンダに設置された上障害突起に衝突することにより開口動作し、下死点付近にてシリンダまたは液体保持容器に設置された下障害突起に衝突することにより閉止動作する請求項5に記載の発動機。
【請求項7】
請求項1に記載の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置と、
この水蒸気爆発及び衝撃波発生装置による水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動されるタービンと、
を備えたタービン装置。
【請求項8】
水蒸気爆発及び衝撃波発生装置を複数備え、各水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の注入弁部が水を間欠注入するタイミングを制御するための制御部を有する請求項7に記載のタービン装置。
【請求項9】
水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の周囲には、飛散した高温液体を回収するための循環高温液体プールが設けられ、
水蒸気爆発及び衝撃波発生装置には、循環高温液体プールから高温液体を導入するための高温液体導入バルブが備えられている請求項8に記載のタービン装置。
【請求項1】
300℃以上の温度の高温液体を保持するための液体保持容器と、
液体保持容器中に保持されている高温液体の底部側から水を間欠注入するための注入口と、を有する水蒸気爆発室と、
前記高温液体を300℃以上の高温に保持する加熱装置と、
前記注入口において水の間欠注入を制御する注入弁部と
を有する水蒸気爆発及び衝撃波発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置と、
この水蒸気爆発及び衝撃波発生装置で生じる水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動されるピストンと、
ピストン運動を回転運動に変換する変換部と、
を備えた発動機。
【請求項3】
ピストン押し上げ後の水蒸気及び高温液体の混合物である爆発流体を収容する戻し通路をさらに有する請求項2に記載の発動機。
【請求項4】
戻し通路に流入した爆発流体のうち分離した水蒸気を排出する水蒸気排出口をさらに有する請求項3に記載の発動機。
【請求項5】
戻し通路に流入した爆発流体のうち高温液体を爆発室に還入させるための戻しポンプを戻し通路内下部にさらに有する請求項4に記載の発動機。
【請求項6】
ピストンにはピストンバルブが設けられ、ピストンバルブは、上死点付近にてシリンダに設置された上障害突起に衝突することにより開口動作し、下死点付近にてシリンダまたは液体保持容器に設置された下障害突起に衝突することにより閉止動作する請求項5に記載の発動機。
【請求項7】
請求項1に記載の水蒸気爆発及び衝撃波発生装置と、
この水蒸気爆発及び衝撃波発生装置による水蒸気爆発の力や同時に発生する衝撃波を利用して駆動されるタービンと、
を備えたタービン装置。
【請求項8】
水蒸気爆発及び衝撃波発生装置を複数備え、各水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の注入弁部が水を間欠注入するタイミングを制御するための制御部を有する請求項7に記載のタービン装置。
【請求項9】
水蒸気爆発及び衝撃波発生装置の周囲には、飛散した高温液体を回収するための循環高温液体プールが設けられ、
水蒸気爆発及び衝撃波発生装置には、循環高温液体プールから高温液体を導入するための高温液体導入バルブが備えられている請求項8に記載のタービン装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−285982(P2010−285982A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267226(P2009−267226)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(501059039)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(501059039)
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