説明

水質制御装置、水質管理システム、水質管理装置、及び水質管理方法。

【課題】水道管路内の水圧低下を軽減しつつ、水道管路内の水質を改善させることができる水質制御装置、水質管理システム、水質管理装置、及び水質管理方法を提供する。
【解決手段】残留塩素計7、水温計8、及び導電率計9を有する水質検出手段4により、水道管路10内の水質に関する情報を検出し、この検出された情報に基づき把握される水道管路10内の水質変化に応じ、排水手段3の電動弁6を制御して排水量を増減することで、水質の変化した水道管路10内の水を排出し、水道管路10内の水質を改善させる。また、水圧計2により、水道管路10内の水圧に関する情報を検出し、この検出された情報に基づき把握される水道管路10内の水圧低下に応じ、排水手段3の電動弁6を制御して排水量を減らすことで、水道管路10内の水圧低下を軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道水を供給する水道管路内の水質を制御する水質制御装置、水質を管理する水質管理システム、水質管理装置、及び水質管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような水質制御装置としては、水道管路網の水道水の滞留が発生する箇所にワンタッチで接続され、その箇所の水質を検査し、水質が所定の基準外である場合に捨水制御を行う可搬型捨水検査装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4537962号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記可搬型捨水検査装置と同様の機能を有する捨水検査装置を、水道管路網の複数個所に常設すると、より確実に水道管路網の水質を制御することができると考えられる。しかしながら、上記可搬型捨水検査装置では、捨水による水道管路内の水圧低下が考慮されていない。このため、水道管路網に常設された複数の捨水制御装置が同時に捨水を行うと、水道管路内の水圧が過度に低下する可能性がある。特に、水道水の消費が多いときや、震災等により水道管路内の水漏れが生じているとき等に捨水を行うと、水道管路内の水圧が過度に低下する可能性が高い。このように水道管路内の水圧が過度に低下すると、水道水を安定して供給できなくなるおそれがあると共に、水質を正確に検出できないおそれがあった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、水道管路内の水圧低下を軽減しつつ、水道管路内の水質を改善させることができる水質制御装置、水質管理システム、水質管理装置、及び水質管理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による水質制御装置は、水道水を供給する水道管路内の水質を制御する水質制御装置であって、水道管路内の水質に関する情報を検出する水質検出手段と、当該水道管路内の水圧に関する情報を検出する水圧検出手段と、当該水道管路内の水を排出する排水手段と、水質検出手段により検出された情報に基づき把握される水道管路内の水質変化に応じ、排水手段を制御して排水量を増減し、水圧検出手段により検出された情報に基づき把握される水道管路内の水圧低下に応じ、排水手段を制御して排水量を減らす、又は排水を停止する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このような水質制御装置によれば、水質検出手段により水道管路内の水質に関する情報が検出され、この検出された情報に基づき把握される水道管路内の水質変化に応じ、制御手段によって排水手段が制御され、排水量が増減される。これにより、水質の悪化した水が排出され、水道管路内の水質が改善される。また、水圧検出手段により水道管路内の水圧に関する情報が検出され、この検出された情報に基づき把握される水道管路内の水圧低下に応じ、制御手段によって排水手段が制御され、排水量が減らされる、又は排水が停止される。これにより、水道管路内の水圧低下が軽減される。
【0008】
ここで、水質検出手段は、残留塩素濃度を検出する残留塩素計を有し、制御手段は、水圧検出手段により検出された情報に基づき把握される水道管路内の水圧低下に応じ、排水手段を制御して排水量を減らす、又は排水を停止することによって、水道管路内を、残留塩素計が残留塩素濃度を検出可能な状態に保つことが好ましい。この場合、残留塩素計への供給水量が、残留塩素濃度を検出するのに必要なレベル以上に保たれ、水質検出手段の信頼性が保たれる。
【0009】
また、水質検出手段は、水道管路内の水質に関し、複数種類の情報を検出する構成であると、水質が多面的に把握され、水質の変化がより確実に把握される。
【0010】
また、水質検出手段は、水道管路内の水質に関する情報として、水道管路内の水の導電率を検出する構成であると、水道水中の電解性の不純物による水質変化現象が把握される。
【0011】
本発明による水質管理システムは、上記水質制御装置と、水質検出手段により検出された情報を当該水質検出手段が設置されている場所とは異なる場所で取得して出力する出力装置と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
このような水質管理システムによれば、水質制御装置の排水制御のために検出された水質に関する情報が、水質検出手段が設置されている場所とは異なる場所において出力装置に取得されて出力され、例えば水質変化の特性の把握等に有効活用される。
【0013】
本発明による水質管理装置は、水道水を供給する水道管路内の水質に関する情報を検出する水質検出手段と、当該水道管路内の水圧に関する情報を検出する水圧検出手段と、当該水道管路内の水を排出する排水手段と、を有する排水装置を制御して水道管路内の水質を管理する水質管理装置であって、水質検出手段及び水圧検出手段により検出された情報を取得する情報取得手段と、情報取得手段により取得された情報に基づき把握される水道管路内の水質変化に応じ、排水手段を制御して排水量を増減し、情報取得手段により取得された情報に基づき把握される水道管路内の水圧低下に応じ、排水手段を制御して排水量を減らす、又は排水を停止する管理手段と、を備え、排水装置が設置されている場所とは異なる場所に設けられることを特徴とする。
【0014】
また、本発明による水質管理方法は、水道水を供給する水道管路内の水質に関する情報を検出する水質検出手段と、当該水道管路内の水圧に関する情報を検出する水圧検出手段と、当該水道管路内の水を排出する排水手段と、を有する排水装置を制御して水道管路内の水質を管理する水質管理方法であって、水質検出手段及び水圧検出手段により検出された情報を排水装置が設置されている場所とは異なる場所で取得し、水質検出手段から取得した情報に基づき把握される水道管路内の水質変化に応じ、排水装置が設置されている場所とは異なる場所から排水手段を制御して排水量を増減し、水圧検出手段から取得した情報に基づき把握される水道管路内の水圧低下に応じ、排水装置が設置されている場所とは異なる場所から排水手段を制御して排水量を減らす、又は排水を停止することを特徴とする。
【0015】
このような水質管理装置又は水質管理方法によれば、水質検出手段により検出された水道管路内の水質に関する情報が、排水装置が設置されている場所とは異なる場所において取得され、その情報に基づき把握される水道管路内の水質変化に応じ、排水装置が設置されている場所とは異なる場所から排水手段が制御され、排水量が増減される。これにより、水質の悪化した水が排出され、水道管路内の水質が改善される。また、水圧検出手段により検出された水道管路内の水圧に関する情報が、排水装置が設置されている場所とは異なる場所において取得され、その情報に基づき把握される水道管路内の水圧低下に応じ、排水装置が設置されている場所とは異なる場所から排水手段が制御され、排水量が減らされる、又は排水が停止される。これにより、水道管路内の水圧低下が軽減される。このように、水道管路において動作する排水装置とは異なる場所から排水装置を制御することにより、水道管路内の水質変化及び水圧低下だけでなく、他の情報も考慮して複雑な制御を行うことができる。
【0016】
ここで、上記水質管理装置では、情報取得手段は、複数の排水装置の水質検出手段により検出された情報を取得し、管理手段は、複数の排水装置の水質検出手段により検出された情報に基づき把握される水道管路内の水質変化に応じ、複数の排水装置の排水手段を制御することが好ましい。
【0017】
また、上記水質管理方法では、水圧検出手段から取得した情報に基づき把握される水道管路内の水圧低下に応じ、排水装置が設置されている場所とは異なる場所から排水手段を制御して排水量を減らす、又は排水を停止することで、水道管路内を、残留塩素計が残留塩素濃度を検出可能な状態に保つことが好ましい。この場合、残留塩素計への供給水量が、残留塩素濃度を検出するのに必要なレベル以上に保たれ、水質検出手段の信頼性が保たれる。
【0018】
また、上記水質管理方法では、複数の排水装置の水質検出手段により検出された情報を取得し、複数の排水装置の水質検出手段から取得した情報に基づき把握される水道管路内の水質変化に応じ、複数の排水装置の排水手段を制御することが好ましい。
【0019】
この場合、複数の排水装置の水質検出手段により検出された情報に基づき、水道管路網全体の水質を把握し、当該水道管路網全体の水質の安定化を考慮して複数の排水装置の排水手段を制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
このように本発明によれば、水道管路内の水圧低下を軽減しつつ、水道管路内の水質を改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る水質制御装置の概略構成図である。
【図2】図1の水質制御装置の機能ブロック図である。
【図3】図1の水質制御装置の制御手順を示すフローチャートである。
【図4】図3中の残留塩素濃度調整制御の手順を示すフローチャートである。
【図5】図3中の水温調整制御の手順を示すフローチャートである。
【図6】図3中の導電率調整制御の手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第2実施形態に係る水質制御方法を採用した水質管理システムの概略構成図である。
【図8】図7中の水質制御装置の機能ブロック図である。
【図9】図7中の水質管理装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明による水質制御装置、水質管理システム、水質管理装置、及び水質管理方法の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
まず、本発明の第1実施形態に係る水質制御装置を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る水質制御装置の概略構成図、図2は、図1の水質制御装置の機能ブロック図である。
【0024】
図1に示すように、水質制御装置100は、流量計1と、水圧検出手段である水圧計2と、排水手段3と、水質検出手段4と、制御手段5と、を備えている。
【0025】
流量計1及び水圧計2は、水道水を供給する水道管路10から分岐した排水管11に設けられている。流量計1は、水道管路10内から排水管11内に導入された水の単位時間当たりの流量を検出する。水圧計2は、排水管11内の水圧を検出する。
【0026】
排水手段3は、排水管11に設けられた電動弁6を有し、この電動弁6を開くことにより、水道管路10内から排水管11内に導入された水を排出し、電動弁6を閉じることにより排水を停止する。電動弁6を通過した水は、排水管11から、例えば、排水枡、側溝、緑地等に排出される。なお、電動弁6は、電磁弁、エアー弁、油圧弁等の他の自動弁に置き換えることができる。
【0027】
水質管理手段4は、水道管路10内から排水管11内に導入された水の水質を検出するためのものであり、残留塩素計7、水温計8、及び導電率計9を有している。これらの残留塩素計7、水温計8、及び導電率計9は、流量計1と水圧計2との間で排水管11から分岐したサンプリング管12に設けられている。
【0028】
残留塩素計7は、水道管路10からサンプリング管12に導入された水の残留塩素濃度を検出する。このように残留塩素濃度を検出することにより、例えば、残留塩素濃度が低下した際に、塩素の消毒効果が薄れて水質が低下したと判断することができる。
【0029】
水温計8は、水道管路10からサンプリング管12に導入された水の水温を検出する。このように水温を検出することにより、例えば、水温が上昇した際に、微生物等が繁殖しやすくなって水質が低下したと判断することができる。
【0030】
導電率計9は、水道管路10からサンプリング管12に導入された水の導電率を検出する。このように導電率を検出することにより、例えば、導電率が上昇した際に、電解性の不純物が増加して水質が低下したと判断することができる。
【0031】
図1及び図2に示すように、制御手段5は、流量計1、水圧計2、残留塩素計7、水温計8、及び導電率計9に入力可能に接続されると共に、排水手段3に出力可能に接続され、後述の手順により排水手段3を制御する。また、制御手段5は、流量、水圧、残留塩素濃度、水温、導電率等の数値に異常がある場合や、排水手段3の動作に異常がある場合等に、異常通報手段13によって異常を通報する。なお、制御手段5は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)等の制御装置である。異常通報手段13は、例えば、携帯電話通信を利用し、水質制御装置100の管理者等の携帯電話に異常を通報する通信端末である。
【0032】
ここで、制御手段5による排水手段3の制御手順を説明する。図3は、図1の水質制御装置の制御手順を示すフローチャートである。
【0033】
図3に示すように、制御手段5は、まず、残留塩素計7により検出された残留塩素濃度が下限値以下であるかを判断する(ステップS1)。残留塩素濃度が下限値以下である場合には、水道管路10内の水質が悪化したものと判断し、後述の残留塩素濃度調整制御を行い(ステップS2)、制御を終了する。
【0034】
一方、残留塩素濃度が下限値よりも大きい場合には、水温計8により検出された水温が上限値以上であるかを判断する(ステップS3)。水温が上限値以上である場合には、水道管路10内の水質が悪化したものと判断し、後述の水温調整制御を行い(ステップS4)、制御を終了する。
【0035】
一方、水温が上限値よりも小さい場合には、導電率計9により検出された導電率が上限値以上であるかを判断する(ステップS5)。導電率が上限値以上である場合には、水道管路10内の水質が悪化したものと判断し、後述の導電率調整制御を行い(ステップS6)、処理を終了する。一方、導電率が上限値よりも小さい場合には、そのまま制御を終了する。
【0036】
制御手段5は、以上の制御手順を所定の周期で繰り返す。なお、ここでは、残留塩素濃度の下限値は0.35mg/Lに設定され、水温の上限値は35℃に設定され、導電率の上限値は40mS/mに設定されている。
【0037】
図4は、図3中の残留塩素濃度調整制御の手順を示すフローチャートである。残留塩素濃度調整制御では、残留塩素濃度が下限値以下となったのに応じ、排水手段3の電動弁6を開き、排水を開始する(ステップS21)。この際の電動弁6の開き量は、流量計1により検出される単位時間当たりの流量が所定量となるように調整される。そして、排水を開始すると、水圧計2により検出された水圧が下限値よりも大きいかを判断する(ステップS22)。水圧が下限値よりも大きい場合には、残留塩素濃度が基準値よりも大きいかを判断し(ステップS23)、残留塩素濃度が基準値よりも大きい場合には、水道管路10内の水質が改善したものと判断する。そして、排水を停止し(ステップS24)、制御を終了する。一方、残留塩素濃度が基準値以下である場合には、排水を継続し、ステップS22に戻る。ステップS22において、水圧が下限値以下である場合には、排水を停止し(ステップS24)、制御を終了する。なお、残留塩素濃度の基準値は、残留塩素濃度の上記下限値に所定の余裕量を加算した値であり、ここでは0.4mg/Lに設定されている。また、水圧の下限値は、水道水を安定供給するために最低限度必要とされる水圧以上の値に設定されている。
【0038】
図5は、図3中の水温調整制御の手順を示すフローチャートである。水温調整制御では、水温が上限値以上となったのに応じ、残留塩素濃度調整制御のステップS21と同様に排水を開始する(ステップS41)。そして、排水を開始すると、水圧計2により検出された水圧が下限値よりも大きいかを判断する(ステップS42)。水圧が下限値よりも大きい場合には、水温が基準値よりも小さいかを判断し(ステップS43)、水温が基準値よりも小さい場合には、水道管路10内の水質が改善したものと判断する。そして、排水を停止し(ステップS44)、制御を終了する。一方、水温が基準値以上である場合には、排水を継続し、ステップS42に戻る。ステップS42において、水圧が下限値以下である場合には、排水を停止し(ステップS44)、制御を終了する。なお、水温の基準値は、水温の上記上限値から所定の余裕量を減算した値であり、ここでは30℃に設定されている。
【0039】
図6は、図3中の導電率調整制御を示すフローチャートである。導電率調整制御では、導電率が上限値以上となったのに応じ、残留塩素濃度調整制御のステップS21と同様に排水を開始する(ステップS61)。排水を開始すると、水圧計2により検出された水圧が下限値よりも大きいかを判断する(ステップS62)。水圧が下限値よりも大きい場合には、導電率が基準値よりも小さいかを判断し(ステップS63)、導電率が基準値よりも小さい場合には、水道管路10内の水質が改善したものと判断する。そして、排水を停止し(ステップS64)、制御を終了する。一方、導電率が基準値以上である場合には、排水を継続し、ステップS62に戻る。ステップS62において、水圧が下限値以下である場合には、排水を停止し(ステップS64)、制御を終了する。なお、導電率の基準値は、導電率の上記上限値から所定の余裕量を減算した値であり、ここでは34mS/mに設定されている。
【0040】
ここで、図4〜図6の制御手順において、水圧の下限値は、水道水を安定供給するために必要とされる水圧以上に設定されている。また、水圧の下限値は、残留塩素濃度の検出に必要とされる水量を残留塩素計7に供給可能な水圧以上に設定されている。
【0041】
以上のように構成された水質制御装置100によれば、残留塩素計7、水温計8、及び導電率計9を有する水質検出手段4により水道管路10内の水質に関する情報が検出され、この検出された情報に基づき水道管路10内の水質が悪化したと判断されると、制御手段5によって排水手段3が制御され、当該排水手段3による排水が開始される。即ち、排水手段3による排水量が増やされる。これにより、水質の悪化した水道管路10内の水が、排水管11を通して排出され、水道管路10内の水質が改善される。
【0042】
また、水質検出手段4により検出された情報に基づき水道管路10内の水質が改善したと判断されると、制御手段5によって排水手段3が制御され、当該排水手段3による排水が停止される。即ち、排水手段3による排水量が減らされる。このため、排水が水質悪化時のみに限られ、無駄な排水が削減される。このように無駄な排水が削減されることで、浄水場などにおける薬品やエネルギー等の資源の消費が削減される。
【0043】
また、水圧計2により、水道管路10内の水圧に関する情報が検出され、排水による水圧の低下に応じ、制御手段5によって排水手段3が制御され、当該排水手段3による排水が停止される。即ち、制御手段5により、排水手段3による排水量が減らされる。このため、水道管路内の水圧低下が軽減される。さらに、水圧の下限値は、水道水を安定供給するために必要とされる水圧以上に設定されているため、水道水を安定して供給することができる。また、水圧の下限値は、残留塩素濃度の検出に必要とされる水量を残留塩素計7に供給可能な水圧以上に設定されているため、水質検出手段4の信頼性が保たれる。
【0044】
また、残留塩素計7、水温計8、及び導電率計9を有する水質検出手段4により、水道管路10内の水質に関し複数種類の情報が検出されるため、水質が多面的に把握され、水質の悪化がより確実に把握される。特に、導電率計9が検出する導電率により、水道水中の塩素では解消されない水質悪化現象、即ち残留塩素濃度では把握されない水質悪化現象が把握される。このような水質悪化現象としては、例えば、電解性不純物の混入等が挙げられる。
【0045】
なお、発明者等は、水質悪化を防止するために常時排水が行われていた水道管路に、水質制御装置100を設置し、設置前の1年間と設置後の1年間とで排水量の比較を行った。この際、図3に示すステップS2の残留塩素濃度調整制御のみを行い、ステップS4の水温調整制御及びステップS6の導電率調整制御を行わないこととし、残留塩素濃度調整制御時の流量は100L/分とした。その結果、設置前の1年間は6200mであった排水量が、設置後の1年間は2800mとなり、無駄な排水が3400m削減されたことが確認された。
【0046】
図7は、本発明の第2実施形態に係る水質制御方法を採用した水質管理システムの概略構成図、図8は、図7中の水質制御装置の機能ブロック図、図9は、図7中の水質管理装置の機能ブロック図である。
【0047】
図7に示すように、水質管理システム200は、水質管理装置300と、複数の水質制御装置400と、により構成されたシステムであってもよい。
【0048】
図8に示すように、水質制御装置400は、第1実施形態の水質制御装置100に、水質管理装置300との通信手段14を付加したものである。この通信手段14は、流量計1、水圧計2、及び水質検出手段4で検出された各種情報を水質管理装置300に送信し、水質管理装置300からの制御指令を受信する。水質制御装置400の制御手段5は、水質制御装置100の制御手段5と同様の制御を実施するのに加え、水質管理装置300からの制御指令を通信手段14が受信した場合には、当該制御指令に従った制御を実施する。
【0049】
水質管理装置300は、水質制御装置400が設置されている場所とは異なる場所に設置された装置であり、図9に示すように、通信手段15と、操作入力手段16と、表示手段17と、記録手段18と、異常通報手段19と、管理手段20と、を備えている。
【0050】
通信手段15は、水質制御装置400の通信手段14から送信された各種情報を受信し、水質制御装置400への制御指令を送信する。即ち、通信手段15は、水質制御装置400の水圧計2及び水質検出手段4により検出された情報を取得する情報取得手段として機能する。通信手段14及び通信手段15は、有線であっても無線であってもよい。また、インターネットを経由したものであってもよい。
【0051】
管理手段20は、例えば、パーソナルコンピュータ等の処理装置である。管理手段20は、通信手段15から取得した各種情報に基づき把握される水道管路網の水質悪化に応じ、排水を開始すべき水質制御装置400を特定し、その水質制御装置400に排水開始を指示する制御指令を通信手段15に出力する。さらに、管理手段20は、通信手段15から取得した各種情報に基づき把握される水道管路網の水圧低下に応じ、排水を停止すべき水質制御装置400を特定し、その水質制御装置400に排水停止を指示する制御指令を通信手段15に出力する。これにより、管理手段20は、水道管路網内の水圧を所定値以上に保つ。この所定値は、水道水を安定供給するために必要とされる水圧以上の値である。更に、この所定値は、残留塩素濃度の検出に必要とされる水量を残留塩素計7に供給可能な水圧以上の値である。
【0052】
また、管理手段20は、通信手段15から取得した各種情報を表示手段17に表示し、記録手段18に記録し、各種情報に異常がある場合には異常通報手段19によって異常を通報する。表示手段17は、例えば、液晶パネル等のモニターであり、記録手段18は、例えば、ハードディスク等の記憶装置であり、異常通報手段19は、例えば、異常通報手段13と同様の通信端末である。このように管理手段20は、水質制御装置400の水質検出手段4により検出された情報を当該水質検出手段4が設置されている場所とは異なる場所で取得して出力する出力装置を構成している。
【0053】
さらに、管理手段20は、オペレーターの制御指令を操作入力手段16から取得して通信手段15に出力し、当該制御指令の対象となる水質制御装置400に送信する。オペレーターは、表示手段17に表示された情報又は記録手段18に記録された情報に基づいて水道管路網の水質及び水圧を把握し、それに応じた制御指令を操作入力手段16に入力することができる。なお、操作入力手段16は、例えば、ボタン、キーボード、マウス等の入力装置である。
【0054】
以上のように構成された水質管理システム200によれば、水質制御装置400の排水制御のために検出された水質に関する情報が、水質制御装置400の水質検出手段4が設置されている場所とは異なる場所において水質管理装置300の管理手段20に取得されて出力される。管理手段20から出力された情報は、表示手段17に表示され、記録手段18に記録され、例えば水質変化の特性の把握等に有効活用される。
【0055】
また、水質検出手段4により検出された水道管路内の水質に関する情報が、水質管理装置300において取得され、その情報に基づき把握される水道管路内の水質悪化に応じ、水質管理装置300の処理又はオペレーターの操作入力が行われ、それに従って排水手段3の排水量が増やされる。これにより、水質の悪化した水が排出され、水道管路内の水質が改善される。また、水圧計2により検出された水道管路内の水圧に関する情報が、水質管理装置300において取得され、その情報に基づき把握される水道管路内の水圧低下に応じ、水質管理装置300の処理又はオペレーターの操作入力が行われ、それに従って排水手段3の排水量が減らされる、又は排水が停止される。これにより、水道管路内の水圧低下が軽減される。さらに、水道管路網の水圧は、水道水を安定供給するために必要とされる水圧以上に保たれるため、水道水を安定して供給することができる。また、水道管路網の水圧は、残留塩素濃度の検出に必要とされる水量を残留塩素計7に供給可能な水圧以上に保たれるため、水質検出手段4の信頼性が保たれる。このように、水道管路において動作する水質制御装置400とは異なる場所から水質制御装置400を制御することにより、水道管路内の水質悪化及び水圧低下だけでなく、他の情報も考慮して複雑な制御を行うことができる。
【0056】
また、水質管理装置300では、複数の水質制御装置400の水質検出手段4により検出された情報が取得され、取得された情報に基づき把握される水道管路10内の水質悪化に応じて行われる水質管理装置300の処理又はオペレーターの操作入力に従い、複数の水質制御装置400の排水手段3が制御される。このため、複数の水質制御装置400の水質検出手段4により検出された情報に基づき、水道管路網全体の水質を把握し、当該水道管路網全体の水質の最適化を考慮して複数の水質制御装置400の排水手段3を制御することが可能となる。
【0057】
なお、水質管理装置300は、外部からのインターネットアクセスが可能なものであっても良い。この場合、記録手段18に記録された水質に関する情報等をインターネット経由で提供することができる。
【0058】
また、第1及び第2実施形態において、水道管路10の水質に関する情報として、残留塩素濃度、水温、及び導電率が検出されているが、これに限られない。例えば、濁度、PH、色度、臭気等、様々なものを水質に関する情報として検出し、排水手段3の制御に用いることができる。
【符号の説明】
【0059】
3…排水手段、4…水質検出手段、5…制御手段、10…水道管路、15…通信手段、20…管理手段、100…水質制御装置、200…水質管理システム、300…水質管理装置、400…水質制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道水を供給する水道管路内の水質を制御する水質制御装置であって、
前記水道管路内の水質に関する情報を検出する水質検出手段と、
当該水道管路内の水圧に関する情報を検出する水圧検出手段と、
当該水道管路内の水を排出する排水手段と、
前記水質検出手段により検出された情報に基づき把握される前記水道管路内の水質変化に応じ、前記排水手段を制御して排水量を増減し、前記水圧検出手段により検出された情報に基づき把握される前記水道管路内の水圧低下に応じ、前記排水手段を制御して排水量を減らす、又は排水を停止する制御手段と、を備えたことを特徴とする水質制御装置。
【請求項2】
前記水質検出手段は、残留塩素濃度を検出する残留塩素計を有し、
前記制御手段は、前記水圧検出手段により検出された情報に基づき把握される前記水道管路内の水圧低下に応じ、前記排水手段を制御して排水量を減らす、又は排水を停止することによって、前記水道管路内を、前記残留塩素計が残留塩素濃度を検出可能な状態に保つことを特徴とする請求項1記載の水質制御装置。
【請求項3】
前記水質検出手段は、前記水道管路内の水質に関し、複数種類の情報を検出することを特徴とする請求項1又は2記載の水質制御装置。
【請求項4】
前記水質検出手段は、前記水道管路内の水質に関する情報として、前記水道管路内の水の導電率を検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の水質制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の水質制御装置と、
前記水質検出手段により検出された情報を当該水質検出手段が設置されている場所とは異なる場所で取得して出力する出力装置と、を備えたことを特徴とする水質管理システム。
【請求項6】
水道水を供給する水道管路内の水質に関する情報を検出する水質検出手段と、当該水道管路内の水圧に関する情報を検出する水圧検出手段と、当該水道管路内の水を排出する排水手段と、を有する排水装置を制御して前記水道管路内の水質を管理する水質管理装置であって、
前記水質検出手段及び前記水圧検出手段により検出された情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段により取得された情報に基づき把握される前記水道管路内の水質変化に応じ、前記排水手段を制御して排水量を増減し、前記情報取得手段により取得された情報に基づき把握される前記水道管路内の水圧低下に応じ、前記排水手段を制御して排水量を減らす、又は排水を停止する管理手段と、を備え、
前記排水装置が設置されている場所とは異なる場所に設けられることを特徴とする水質管理装置。
【請求項7】
前記情報取得手段は、複数の前記排水装置の前記水質検出手段により検出された情報を取得し、
前記管理手段は、前記複数の排水装置の前記水質検出手段により検出された情報に基づき把握される前記水道管路内の水質変化に応じ、前記複数の排水装置の前記排水手段を制御することを特徴とする請求項6記載の水質管理装置。
【請求項8】
水道水を供給する水道管路内の水質に関する情報を検出する水質検出手段と、当該水道管路内の水圧に関する情報を検出する水圧検出手段と、当該水道管路内の水を排出する排水手段と、を有する排水装置を制御して前記水道管路内の水質を管理する水質管理方法であって、
前記水質検出手段及び前記水圧検出手段により検出された情報を前記排水装置が設置されている場所とは異なる場所で取得し、
前記水質検出手段から取得した情報に基づき把握される前記水道管路内の水質変化に応じ、前記排水装置が設置されている場所とは異なる場所から前記排水手段を制御して排水量を増減し、
前記水圧検出手段から取得した情報に基づき把握される前記水道管路内の水圧低下に応じ、前記排水装置が設置されている場所とは異なる場所から前記排水手段を制御して排水量を減らす、又は排水を停止することを特徴とする水質管理方法。
【請求項9】
前記水圧検出手段から取得した情報に基づき把握される前記水道管路内の水圧低下に応じ、前記排水装置が設置されている場所とは異なる場所から前記排水手段を制御して排水量を減らす、又は排水を停止することで、前記水道管路内を、前記残留塩素計が残留塩素濃度を検出可能な状態に保つことを特徴とする請求項8記載の水質管理方法。
【請求項10】
複数の前記排水装置の前記水質検出手段により検出された情報を取得し、
前記複数の排水装置の前記水質検出手段から取得した情報に基づき把握される前記水道管路内の水質変化に応じ、前記複数の排水装置の前記排水手段を制御することを特徴とする請求項8又は9記載の水質管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−237156(P2012−237156A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107420(P2011−107420)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(598067603)住重環境エンジニアリング株式会社 (36)
【出願人】(000116633)愛知時計電機株式会社 (126)