説明

水質改善装置、水質改善方法、および金属イオン水生成装置

【課題】簡単な構成で安価に水質を改善することができる水質改善装置を提供する。
【解決手段】水質改善装置30は、銅と亜鉛の合金または銅からなる金属繊維35と、金属繊維35を充填した充填容器34とを備える。金属繊維35の表面には多数の歯状突起35Aが形成される。充填容器34は、多数の通水孔31が形成された円筒部32を備える。金属繊維35から溶出する銅イオンおよび亜鉛イオンにより充填容器34内に導入された水に含まれるシリカやスケールの成分を除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質改善装置および水質改善方法に関するものである。また、本発明は、金属イオンを含む金属イオン水を生成する金属イオン水生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水質改善技術は様々な場面で必要とされている。例えば、熱交換器で用いられる冷却水を冷却するための冷却塔では、熱交換器で温度の上昇した冷却循環水が冷却塔に戻ってくるため、冷却塔の内部で藻やアオコ、バクテリアが発生したり、冷却循環水が濃縮されることにより、配管内にシリカやスケールなどが堆積して配管が閉塞し熱交換効率が下がったりすることがある。また、そのようなスケールからレジオネラ菌が増殖することもある。このため、冷却塔の内部および配管を定期的に清掃および管理しなければならない。定期的な清掃や管理がなされていない場合には糸状菌が発生する。
【0003】
従来から、これら有害物質の除去のために化学薬品が用いられているが(例えば、特許文献1参照)、冷却循環水は気化熱による冷却の際に蒸発および濃縮されるため、化学薬品を用いた場合には排水中に含まれる薬品成分を適切に処理する必要が生じる。特に排水のCOD(Chemical Oxygen Demand)が近年問題となっており、その維持管理費も高くなっている。
【0004】
また、池や湖沼などでは、アオコなどの藻類を除去するために化学薬品を使用したり、オゾンガスを使用したりして浄化する方法が知られているが、設備費用や処理費用が甚大であることと環境負荷や生態系への悪影響などの問題がある。
【0005】
さらに、魚類などの生鮮品の保存や運搬を行う場合には氷が用いられるが、氷が溶けるにつれて鮮度が落ち、細菌類が繁殖するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−194402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、簡単な構成で安価に水質を改善することができる水質改善装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、簡単かつ安価に水質を改善することができる水質改善方法を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、高濃度の金属イオンを含む金属イオン水を極めて短時間で生成することができる金属イオン水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、簡単な構成で安価に水質を改善することができる水質改善装置が提供される。この水質改善装置は、銅と亜鉛の合金または銅からなる金属繊維と、上記金属繊維を充填した充填容器とを備える。上記金属繊維の表面には多数の歯状突起が形成される。上記充填容器は、多数の通水孔が形成された曲面部を備えていてもよい。
【0011】
上記水質改善装置は、上記充填容器の内部を通過させた水に微細な気泡を発生させる微細気泡発生器をさらに備えていてもよい。このような微細気泡発生器は、流水抵抗の少ない流線型の内部空間と、該内部空間の水を外部に排出する開口とを有する気泡発生部と、外部から上記気泡発生部の内部空間の接線方向に水を導入することにより該内部空間に旋回流を発生させる噴出管と、上記気泡発生部の内部空間で発生した旋回流に気体を導入する気体供給管とを有する。
【0012】
上記微細気泡発生器の気泡発生部の内部空間に上記充填容器を収容してもよく、あるいは、上記微細気泡発生器の噴出管の内部に上記充填容器を配置してもよい。
【0013】
上記充填容器は、上記通水孔が形成された円筒部を備えていてもよい。
【0014】
上記充填容器は、上記通水孔が形成され、互いに組み合わされることによって球状体を構成する一対の半球体と、上記一対の半球体を回動可能に結合するヒンジ部と、上記一対の半球体が組み合わされた状態をロックするロック部とを備えていてもよい。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、簡単かつ安価に水質を改善することができる水質改善方法が提供される。この水質改善方法では、多数の通水孔から充填容器内に水を導入する。上記充填容器内に充填された銅と亜鉛の合金または銅からなる金属繊維に上記水を接触させる。上記金属繊維の表面には多数の歯状突起が形成される。上記金属繊維から溶出する金属イオン(銅イオン・亜鉛イオン)の酸化還元作用により上記水の水質を改善する。
【0016】
すなわち、上記金属繊維から溶出する金属イオンの還元作用により、ヒ素、鉛、カドミウム、水銀などの重金属は金属繊維に吸着し、アオコなどの藻類の葉緑素にあるマグネシウムが還元され分解され、タンクなどの内部のボウフラが羽化しないなど、上記水の水質が改善される。
【0017】
上記水として、所定の系の中で循環する循環水、冷却塔内で使用される冷却水、発電所において用いられる冷却水を冷却する海水、水耕栽培に用いる水または代替農薬や無機農薬として用いる水、魚類養殖用の水、飲料水サーバ内の水、浴槽の水、重金属を含む水、加湿器内の水、トイレのタンク内の水、製氷に用いる水、または池や湖沼などのアオコを含む水などを用いることができる。
【0018】
また、上記水質改善方法により水質が改善された水をミスト化し散布して家畜の伝染病の予防や畜舎の消臭を行うこととしてもよい。
【0019】
本発明の第3の態様によれば、高濃度の金属イオンを含む金属イオン水を極めて短時間で生成することができる金属イオン水生成装置が提供される。この金属イオン水生成装置は、貯水槽と、銅と亜鉛の合金または銅からなる金属繊維と、上記金属繊維を充填した充填容器と、上記貯水槽内の水に微細な気泡を発生させる微細気泡発生器とを備えている。上記金属繊維の表面には多数の歯状突起が形成されている。上記微細気泡発生器は、流水抵抗の少ない流線型の内部空間と、該内部空間の水を外部に排出する開口とを有する気泡発生部と、上記充填容器の内部を通過させた水を上記気泡発生部の内部空間の接線方向に噴出し、該内部空間に旋回流を発生させる噴出管と、上記気泡発生部の内部空間で発生した旋回流に気体を供給する気体供給管とを有している。
【0020】
上記金属イオン水生成装置は、密閉された上記貯水槽に接続された圧力制御管と、上記圧力制御管を介して上記貯水槽内の圧力を調整する圧力制御ポンプとをさらに備えていてもよい。
【0021】
本発明の第4の態様によれば、高濃度の金属イオンを含む金属イオン水を極めて短時間で生成することができる金属イオン水生成装置が提供される。この金属イオン水生成装置は、貯水槽と、銅と亜鉛の合金または銅からなる金属繊維と、上記貯水槽内の水に微細な気泡を発生させる微細気泡発生器と、上記貯水槽に浸漬される充填容器とを備えている。上記充填容器は上記微細気泡発生器を収容するとともに上記微細気泡発生器の周囲には上記金属繊維が充填されている。上記金属繊維の表面には多数の歯状突起が形成されている。上記微細気泡発生器は、流水抵抗の少ない流線型の内部空間と、該内部空間の水を外部に排出する開口とを有する気泡発生部と、水を上記気泡発生部の内部空間の接線方向に噴出し、該内部空間に旋回流を発生させる噴出管と、上記気泡発生部の内部空間で発生した旋回流に気体を供給する気体供給管とを有している。上記金属イオン水生成装置は、上記貯水槽の内部の水を上記微細気泡発生器の噴出管に供給する水供給ポンプをさらに備えている。
【0022】
本発明の第5の態様によれば、高濃度の金属イオンを含む金属イオン水を極めて短時間で生成することができる金属イオン水生成装置が提供される。この金属イオン水生成装置は、貯水槽と、銅と亜鉛の合金または銅からなる金属繊維と、上記貯水槽に浸漬される充填容器と、上記貯水槽の内部の水を上記充填容器の内部に供給する水供給ポンプとを備えている。金属繊維の表面には多数の歯状突起が形成されている。上記充填容器は上部に開口を有し、上記充填容器の内部には上記金属繊維が充填されている。
【0023】
上記水として、所定の系の中で循環する循環水、冷却塔内で使用される冷却水、発電所において用いられる冷却水を冷却する海水、水耕栽培に用いる水または代替農薬や無機農薬として用いる水、家畜の伝染病予防または蓄舎の消臭のために用いられる水、魚類養殖用の水、重金属を含む水、製氷に用いる水、またはアオコを含む水を用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、金属繊維から溶出する銅イオンまたは銅イオンおよび亜鉛イオンにより、充填容器内に導入された水に含まれるシリカやスケールの成分を除去することができる。また、金属繊維から溶出する銅イオンまたは銅イオンおよび亜鉛イオンにより、藻やアオコ、バクテリアの発生を防止することができ、赤錆や大腸菌、レジオネラ菌の発生も防止することができる。したがって、簡単な構成で安価に水質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る水質改善装置を含む冷却塔システムを示す模式図である。
【図2】図1の水質改善装置を示す平面図である。
【図3】図2のIII-III線断面図である。
【図4】図3の水質改善装置に含まれる金属繊維を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態における水質改善装置を示す正面図である。
【図6】図5に示す水質改善装置の背面図である。
【図7】図5に示す水質改善装置の右側面図である。
【図8】図5に示す水質改善装置の左側面図である。
【図9】図5に示す水質改善装置の充填容器を開いたときの正面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る水質改善装置の縦断面図である。
【図11】図10に示す水質改善装置の平面図である。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る水質改善装置の変形例を示す模式図である。
【図13】図13(a)は液体中の気泡の状態を模式的に示す図であり、図13(b)は図12の金属イオン水生成装置により生成された金属イオン水を模式的に示す図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る水質改善装置の他の変形例を示す模式図である。
【図15】本発明の第4の実施形態に係る水質改善装置を示す模式図である。
【図16】本発明の第5の実施形態に係る水質改善装置を含む冷却塔を示す斜視図である。
【図17】図16の冷却塔の落とし込み水槽を示す斜視図である。
【図18】図16の冷却塔の水質改善装置の一部を示す分解正面図である。
【図19】図18の水質改善装置の上部ハウジングを示す平面図である。
【図20】本発明の第6の実施形態に係る水質改善装置を含む発電所冷却水冷却システムを示す模式図である。
【図21】図20の水質改善装置の構成を示す模式図である。
【図22】図21の水質改善装置の1つのチャンバを示す模式図である。
【図23】図22のXXIII-XXIII線断面の模式図である。
【図24】本発明の第4の実施形態に係る水質改善装置を用いたときの銅イオン濃度の変化を示すグラフである。
【図25】本発明の他の実施形態に係る水質改善装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る水質改善装置の実施形態について図1から図25を参照して詳細に説明する。なお、図1から図25において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る水質改善装置を含む冷却塔システムを示す模式図である。図1に示す冷却塔システムは、オフィスビルなどに設置された空調機10からの熱媒を冷却するためのものであり、空調機10と熱交換器12と冷却塔14とから構成されている。
【0028】
図1に示すように、空調機10からの熱媒は、熱媒配管16を通って熱交換器12に導入され、再び空調機10に戻るようになっている。また、冷却塔14の冷却水は、冷却水配管18を通って熱交換器12に導入され、再び冷却塔14に戻るようになっている(循環水)。空調機10からの熱媒は、熱交換器12において冷却水との熱交換により冷却される。
【0029】
冷却塔14は、上部に設けられたファン20と、熱交換器12からの冷却水を貯留する上部水槽22と、ハニカム状の充填材24と、冷却された冷却水を貯留する下部水槽26と、下部水槽26の内部に設置された水質改善装置30とを備えている。なお、本実施形態では、下部水槽26内にのみ水質改善装置30を設置しているが、上部水槽22やその他の部位に水質改善装置30を設置することもできる。
【0030】
熱交換器12における熱交換により温度が上昇した冷却水は冷却水配管18を通って上部水槽22に戻され、上部水槽22から充填材24に散布される。散布された冷却水は、ファン20により強制的に送り込まれた外気と充填材24上で接触して冷却される。温度の下がった冷却水は、下部水槽26に貯留され、再び熱交換12に送られて、空調機10からの熱媒を冷却するために使用される。
【0031】
図2は、水質改善装置30を示す平面図、図3は、図2のIII-III線断面図である。図2および図3に示すように、水質改善装置30は、多数の通水孔31が形成された円筒部32と、円筒部32の両端に取り付けられたキャップ33とを備えている。これら円筒部32とキャップ33とにより充填容器34が形成されている。キャップ33は円筒部32に対して着脱自在に取り付けられる。
【0032】
充填容器34内には、図3に示すように、銅と亜鉛の合金からなる金属繊維35が充填されている。この金属繊維35における銅と亜鉛の組成比は特に限定されないが、例えば銅70%−亜鉛30%の合金や銅65%−亜鉛35%の合金を用いることができる。また、金属繊維35として銅単体からなる金属繊維を用いることもできる。
【0033】
図4は、1本の金属繊維35を模式的に示す断面図である。金属繊維35の断面の径は例えば80μm程度であり、図4に示すように、金属繊維35の表面には多数の歯状突起35Aが形成されている。これら多数の歯状突起35Aにより、金属繊維35の表面積が通常の合金繊維に比べて非常に大きくなっている。このような歯状突起35Aを有する金属繊維35は例えば切削法により製造することができる。
【0034】
このような構成の水質改善装置30を下部水槽26に設置すると、下部水槽26内の冷却水が円筒部32の通水孔31を通って金属繊維35と接触し、金属繊維35からは銅イオンと亜鉛イオンが溶出する。これら銅イオンと亜鉛イオンの酸化還元作用により、冷却水中の藻やアオコ、バクテリア、レジオネラ菌、シリカやスケールなどが除去される。
【0035】
このように、本実施形態では、下部水槽26に水質改善装置30を設置しているため、金属繊維35から溶出する銅イオンおよび亜鉛イオンにより、冷却水に含まれるシリカやスケールの成分を除去することができ、冷却水配管18の閉塞を防止することができる。また、金属繊維35から溶出する銅イオンおよび亜鉛イオンにより、冷却塔14の内部で藻やアオコ、バクテリアが発生するのを防止することができる。さらに、冷却水配管18内に赤錆や大腸菌、レジオネラ菌が発生するのを防止することができる。
【0036】
上述したように、従来のように化学薬品を用いて有害物質を除去する方法では、排水中に含まれる薬品成分を適切に処理する必要が生じ、その維持管理費も大きなものとなるが、本実施形態の水質改善装置30によれば、化学薬品を一切用いずに、また、特にメンテナンスをすることなく冷却水の水質を改善することができる。したがって、化学薬品を用いることなく排水のCODが基準値を満たすようにすることができる。また、化学薬品を使用した場合に比べて、冷却水の電気伝導率が低くなるため、必要とされる補給水の量を少なくすることができ、水道代を削減することができる。
【0037】
また、水質改善装置30により冷却水に含まれる有害物質が除去されるため、熱交換器12の効率を上げることができ、結果として消費電力の削減や二酸化炭素の排出削減にも寄与することができる。
【0038】
特に、本実施形態における水質改善装置30では、円筒部32に多数の通水孔31が形成されているため、より多くの冷却水を充填容器34の内部に導入することができる。さらに、充填容器34内部の金属繊維35の表面には多数の歯状突起35Aが形成されているため、冷却水と金属繊維35との接触面積を大きくすることができる。このように、大量の冷却水を金属繊維35と大きな面積で接触させることができるため、冷却水中の有害物質を効果的に除去することができる。
【0039】
本実施形態では、水質改善装置30を冷却塔システムに適用した例、すなわち水質改善装置30を冷却塔内の冷却水に適用した例について説明したが、本発明はこの例に限られるものではなく、水質の改善が必要なあらゆる種類の水に適用することができる。
【0040】
図5から図9は、本発明の第2の実施形態における水質改善装置130を示している。図5は水質改善装置130の正面図、図6は背面図、図7は右側面図、図8は左側面図、図9は水質改善装置130の充填容器を開いたときの正面図である。
【0041】
図5から図9に示すように、水質改善装置130は、互いに組み合わされることによって球状体を構成する一対の半球体131A,131Bを有している。前方半球体131Aは、メッシュにより多数の通水孔が形成された半球部132Aと、半球部132Aの後端面に設けられたフランジ部133Aとを有している。同様に、後方半球体131Bは、メッシュにより多数の通水孔が形成された半球部132Bと、半球部132Bの前端面に設けられたフランジ部133Bとを有している。
【0042】
これらの半球体131A,131Bは、フランジ部133A,133Bの下部に設けられたヒンジ部134により結合されており、半球体131A,131Bはヒンジ部134を中心として回動(開閉)するようになっている。
【0043】
また、後方半球体131Bのフランジ部133Bの上部には、フランジ部133Bに垂直な方向に延びるピン135が設けられている。また、前方半球体131Aのフランジ部133Aには、ピン135に対応する位置に位置決め孔136が形成されている。半球体131A,131Bが互いに組み合わされるときに、ピン135が位置決め孔136に挿入されることにより半球体131A,131Bの位置決めが行われる。
【0044】
また、後方半球体131Bのフランジ部133Bには、ピン135を中心として回動可能なロック部137が設けられている。ロック部137は、互いに当接したフランジ部133A,133Bを両側から挟み込んで保持する保持部138と、フランジ部133A,133Bの半径方向外側に向かって延びるフック部139とを有している。上述したように、ピン135を位置決め孔136に挿入して位置決めを行い、前方半球体131Aと後方半球体131Bとを突き合わせた状態で、ロック部137を回転させることで、半球体131A,131Bのフランジ部133A,133Bを保持部138により挟み込み、半球体131A,131Bが互いに組み合わされた状態を保持することができる(図5および図6参照)。
【0045】
また、半球体131A,131Bが互いに組み合わされた状態から、フック部139に指をかけてロック部137を回転させることで、半球体131A,131Bのロック状態を解除することができる。この状態で、ヒンジ部134を中心として半球体131A,131Bをそれぞれ回動させることにより、図9に示すように球状充填容器を開くことができる。
【0046】
ここで、図9に示すように、半球体131A,131Bにより構成される球状充填容器の内部には、上述した金属繊維35が収容されている。本実施形態では、上述したように、ロック部137を用いて球状充填容器の開閉を容易に行うことができるため、金属繊維35を交換する必要が生じた場合であっても、その作業が容易になる。
【0047】
本実施形態における水質改善装置130では、半球体131A,131Bを互いに組み合わせて球状にし、その球面を構成する半球部132A,132Bに多数の通水孔が形成されているため、より多くの水を球状充填容器の内部に導入することができる。さらに、球状充填容器の内部に収容されている金属繊維35の表面には多数の歯状突起35Aが形成されているため(図4参照)、水と金属繊維35との接触面積を大きくすることができる。このように、大量の水を金属繊維35と大きな面積で接触させることができるため、水中の有害物質を効果的に除去することができる。
【0048】
図10は本発明の第3の実施形態に係る水質改善装置230を模式的に示す縦断面図、図11は平面図である。図10に示すように、本実施形態における水質改善装置230は、水中で微細な気泡を発生させる微細気泡発生器240を備えている。この微細気泡発生器240は、内部に略卵形の中空空間(内部空間S)を有する気泡発生部242と、この気泡発生部242の内部空間Sに接続された気体供給管244と、気泡発生部242の内部空間Sと外部の水供給源(図示せず)とを接続する噴出管246とを備えている。気泡発生部242は、流線型の内壁を有しており、流水抵抗が極力少ない構造になっている。
【0049】
微細気泡発生器240の気泡発生部242の内部空間Sには、メッシュにより多数の通水孔が形成された球状充填容器248が収容されている。この球状充填容器248の内部には、上述した金属繊維、すなわち銅と亜鉛の合金または銅単体からなり表面に多数の歯状突起が形成された金属繊維が充填されている。
【0050】
気体供給管244の一端は気泡発生部242の内部空間Sの上部に接続されており、他端は水面W上に保持されている。これにより、気体供給管244を通じて気泡発生部242の内部空間Sに空気が供給されるようになっている。なお、気体供給管244から供給される気体として空気以外の気体を用いることもできる。
【0051】
気泡発生部242の上部にはこの気体供給管244を囲むように内部空間Sの水を外部に排出する上部ノズル(開口)250が形成されている。また、気泡発生部242の下部には内部空間Sの水を外部に排出する下部ノズル(開口)252が形成されている。
【0052】
噴出管246は、気泡発生部242の側面に取り付けられており、図11に示すように、気泡発生部242の接線方向を向くように構成されている。これにより、外部の水供給源から例えば加圧ポンプなどにより噴出管246を通じて気泡発生部242の内部空間Sに加圧水を導入すると、上方に向かう旋回流Rと下方に向かう旋回流Rとが内部空間S内に発生するようになっている。
【0053】
このように噴出管246を通じて外部の水供給源から気泡発生部242の内部空間Sに加圧水を導入すると旋回流R,Rが生じ、この旋回流R,Rによって内部空間Sの中心付近に負圧の軸が生じる。この負圧の作用により、気体供給管244から空気が吸い込まれ、旋回流R,R中に微細気泡となって取り込まれる。このようにして微細気泡を取り込んだ水が上部ノズル250および下部ノズル252から吐出される。
【0054】
ここで、金属繊維が充填された球状充填容器248は、上述した旋回流R,Rによって内部空間S内で激しく動かされ、球状充填容器248の内部を通過する水の量も増える。したがって、金属繊維からより多くの金属イオンを水に溶出させることができ、金属イオンによる殺菌作用を向上させることができる。また、この球状充填容器248の内部を通過した水の中に微細気泡発生器240により微細な気泡を発生させることにより、水中の金属イオンの濃度を極めて短時間で高めることができる。
【0055】
ここで、上述した加圧ポンプの圧力により気泡発生部242内で水と金属繊維と接触し、水流による水圧と流水抵抗の度合いが大きくなればなるほど、金属イオンのイオン化を活発にさせることができ、短時間で高濃度の金属イオン水を生成することができる。
【0056】
第3の実施形態においては、金属繊維を充填した球状充填容器248を微細気泡発生器240の気泡発生部242の内部空間Sに収容した例について説明したが、金属繊維を充填した充填容器を微細気泡発生器240の外部に配置することもできる。図12は、そのような変形例を示す模式図である。
【0057】
図12に示す例では、上述した回転対称形状の微細気泡発生器240が密閉された貯水槽260内に配置され、微細気泡発生器240の噴出管246が外部の水供給源262に接続されている。微細気泡発生器240と水供給源262との間には、水供給源262から汲み上げた水を微細気泡発生器240に供給する水供給ポンプ264が設けられている。また、水供給ポンプ264と微細気泡発生器240との間には、多数の通水孔が形成された充填容器248’が配置されている。この充填容器248’の内部には、銅と亜鉛の合金または銅単体からなり表面に多数の歯状突起が形成された金属繊維が充填されている。
【0058】
気泡発生器240の気体供給管244の一端は貯水槽260の外部に開放されている。気体供給管244の途中には電磁弁245が設けられている。貯水槽260の上部には圧力制御管268が接続されており、この圧力制御管268には圧力制御ポンプ266が接続されている。この圧力制御ポンプ266の駆動により貯水槽260の内部を加圧または減圧できるようになっている。また、貯水槽260には排水管270が接続されており、この排水管270には排水ポンプ272が接続されている。この排水ポンプ272の駆動により貯水槽260の内部の水を外部に排出できるようになっている。
【0059】
このような構成において、例えば圧力制御ポンプ266の駆動により貯水槽260の内部を減圧するとともに、水供給ポンプ264の駆動により水供給源262から水を汲み上げて加圧水を微細気泡発生器240に供給する。このとき、噴出管246の途中に設置された充填容器248’の内部の金属繊維から金属イオンが加圧水に溶出する。これら銅イオンと亜鉛イオンを含む加圧水が微細気泡発生器240の気泡発生部に噴射される。
【0060】
微細気泡発生器240の気泡発生部では加圧水が高速に旋回されることで、その中心部分に負圧の軸が形成される。これにより、気体供給管244から空気が吸い込まれ、旋回流中に空気が微細気泡となって取り込まれる。また、微細気泡発生器240に導入される水は金属イオンを多量に含んでいるため、この水が負圧の軸に近づくと、この水から金属イオンが大量に放出され、さらに高濃度の金属イオンを含む微細気泡が発生する。このように、金属イオン(銅イオンと亜鉛イオン)を含む加圧水に微細気泡を発生させることにより、水中の金属イオンの濃度を短時間で高めることができ、上述した金属イオン(銅イオンと亜鉛イオン)による殺菌作用を著しく向上することができる。このような殺菌作用を持った水は排水ポンプ272により排水管270を介して所望の装置または場所に送られる。また、気体供給管244から取り入れる気体の圧力を調整することにより、気泡の大きさを調整することでき、ナノバブルやマイクロバブルなど所望の大きさの気泡を所望の水深に送り出すことができる。
【0061】
このように、図12に示す装置は、水供給源の水の水質を改善する水質改善装置として利用できるだけではなく、殺菌作用を有する金属イオンを含む金属イオン水を生成する金属イオン水生成装置としても利用できる。例えば、排水管270の先端に水をミスト状に噴出する噴出口を取り付け、この噴出口から金属イオン水を散布して水耕栽培に用いたり、代替農薬や無機農薬として用いたり、家畜の伝染病の予防や畜舎の消臭のために用いたりすることができる。この場合において、噴出口に供給される水には気体が高濃度で溶解しているため、減圧発泡により噴出口からは金属イオンを含む気泡を含んだミストが噴出される。このミストには高濃度の金属イオンが含まれているため、大腸菌やレジオネラ菌などの病原菌や植物の茎や枝葉の殺菌に用いることができる。
【0062】
ところで、通常、水中で気泡を発生させると、図13(a)に示すように、気泡280の間に水が集まった箇所281が生じるが、上述の金属イオン水生成装置を用いて金属イオンを含む水の中に微細気泡を発生させた場合には、図13(b)に示すように微細気泡の表面が薄膜状になり、水と気体とを効率よく接触させることができる。
【0063】
ここで、微細気泡発生器240は、流れ抵抗が大きく、流出量を一定に保つ効果があるため、気泡発生部の内部の圧力が一定に維持される。このため、特に調整弁などを設ける必要はない。
【0064】
また、貯水槽260の内部を減圧することにより、微細気泡の表面から気体を連続的に外部に放出することができるとともに、貯水槽260の内部に減圧空間を維持することができる。また、圧力制御管268に気体回収装置を接続して気体を回収することもできる。
【0065】
また、気泡発生部の底部に多量の金属イオンを含む気泡を発生させることができるので、微細気泡発生器240内でのイオン化を活発化させることができる。これにより、噴出管246から気泡発生部に被処理水を噴射するときの流体抵抗を小さくすることができ、多量の金属イオンを含む気泡を効率良く発生させることができる。
【0066】
気泡発生部の底部で多量に発生した金属イオンを含む気泡は、気泡発生部の内周壁を浮力によって上昇しながら、気泡同士が合体および拡大する。この結果、重力と浮力により気泡の部分と液体の部分が上下に分離され、次々と金属イオンを含む気泡を発生させることができる。
【0067】
図12に示すように、貯水槽260の内部にフロート等の水位センサ274を設けてもよい。このような水位センサ274により、貯水槽260内の水位を検出し、水位に応じて微細気泡発生器240に吸い込まれる空気の量を調整する。例えば、水位が上昇したときには、電磁弁245を制御して微細気泡発生器240に吸い込まれる空気の量を増やして貯水槽260内の液体中に溶解させる空気の量を増やす。水位が低下したときには、電磁弁245を制御して微細気泡発生器240に吸い込まれる空気の量を減らして貯水槽260内の水に溶解させる空気の量を減らす。このような制御により、貯水槽260の内部で所望の水位を維持することができ、微細気泡に溶解しなかった金属イオンが下流側にある排出弁から排出されることがなく、金属イオンを無駄なく微細気泡に溶解させることができる。また、貯水槽260の内部の圧力を安定させることができるので、装置を安定して連続稼動することができる。
【0068】
また、この例においては、圧力制御ポンプ266により貯水槽260の内部の圧力を制御することができるため、水中の金属イオンの濃度を調整することができる。したがって、用途に応じて水中の金属イオンの濃度を調整することが容易になる。
【0069】
図14は、上述した第3の実施形態に係る水質改善装置の他の簡易例を示すものである。この装置も、図12に示す装置と同様に金属イオン水生成装置として利用することができる。図14に示すように、貯水槽282の水中に充填容器283が浸漬されており、この充填容器283の内部には2つの微細気泡発生器240が収容されている。充填容器283の上部には開口283aが形成されている。充填容器283の内部には、銅と亜鉛の合金または銅単体からなり表面に多数の歯状突起が形成された金属繊維284が微細気泡発生器240を取り囲むように充填されている。
【0070】
気体供給管244は二股に分岐してそれぞれの微細気泡発生器240に接続されており、噴出管246も二股に分岐してそれぞれの微細気泡発生器240に接続されている。噴出管246には、貯水槽282内の水を微細気泡発生器240の気泡発生部に供給する水供給ポンプ285が接続されている。
【0071】
水供給ポンプ285の駆動により貯水槽282内の水を微細気泡発生器240に供給すると、微細気泡発生器240の気泡発生部242で旋回流が生じ、これにより気体供給管244から空気が吸い込まれ、空気が旋回流中に微細気泡となって取り込まれる。微細気泡を含む水は微細気泡発生器240の上下のノズル250,252から充填容器283内に吐出され、金属繊維284と接触する。これにより、金属繊維284から金属イオン(銅イオンおよび亜鉛イオン)が溶出し、金属イオンと微細気泡を大量に含む水が充填容器283の開口283aから貯水槽282に戻される。このようにして、貯水槽282内に高濃度の金属イオン水が生成される。
【0072】
通常、銅と亜鉛の合金からなる金属繊維をある一定の重量比で水中に浸漬して約8時間経過すると、銅イオン濃度が殺菌効力の目安である0.06mg/Lを超えるが、図14に示すように、水供給ポンプ285により貯水槽282内の水を微細気泡発生器240に供給し、充填容器283の内部で微細気泡を含む水を金属繊維284と接触させることにより、金属イオンのイオン化を活発にさせることができる。したがって、図14に示す装置によれば、短時間で金属イオンを水中に溶出させることができ、通常金属繊維を水中に24時間静置した場合に得られる金属イオン濃度を約2時間で得ることができ、約12倍の速度で所望の金属イオン濃度が得られる。
【0073】
図15は、本発明の第4の実施形態に係る水質改善装置を示す模式図である。この装置も図12に示す装置と同様に金属イオン水生成装置として利用することができる。図15に示すように、貯水槽282の水中に充填容器283が浸漬されており、この充填容器283の内部には、銅と亜鉛の合金または銅単体からなり表面に多数の歯状突起が形成された金属繊維284が充填されている。充填容器283の上部には開口283aが形成されている。充填容器283の下部には水供給管247が接続されており、この水供給管247には貯水槽282内の水を充填容器283内の金属繊維284に供給する水供給ポンプ286が接続されている。
【0074】
水供給ポンプ286の駆動により貯水槽282内の水を充填容器283内に供給すると、金属繊維284と接触し、金属繊維284から金属イオン(銅イオンおよび亜鉛イオン)が溶出する。この金属イオンを大量に含む水が充填容器283の開口283aから貯水槽282に戻される。このようにして、貯水槽282内に高濃度の金属イオン水が生成される。
【0075】
図16は本発明の第5の実施形態に係る水質改善装置を含む冷却塔314を示す斜視図、図17は図16の冷却塔314の一部を示す斜視図である。なお、図16においては、理解を容易にするためにその一部を切り欠いて示してある。図16に示すように、冷却塔314は、上部に設けられたファン320と、冷却水を貯留する上部水槽322と、上部水槽322の下方に設置された熱交換器323と、上部水槽322の下方に設置された充填材324と、内部配管325と、冷却された冷却水を貯留する下部水槽326と、下部水槽326内部に設けられた落とし込み水槽327と、落とし込み水槽327に接続されたポンプ328と、落とし込み水槽327の内部に設置された水質改善装置330とを備えている。
【0076】
図18は、水質改善装置330の一部を示す分解正面図である。図18に示すように、水質改善装置330は、金属メッシュ構造を有する上部ハウジング332と、金属メッシュ構造を有する下部ハウジング334と、下部ハウジング334に取り付けられた脚部336とを備えている。上部ハウジング332と下部ハウジング334とにより形成される略直方体状の充填容器の内部には、上述した金属繊維(図示せず)が収容されている。
【0077】
図19は、上部ハウジング332を示す平面図である。図19に示すように、上部ハウジング332の両端には水平方向に延びる延出部332aが形成されている。上部ハウジング332の延出部332aにはそれぞれ2つの貫通孔332bが形成されている。同様に、下部ハウジング334の両端にも水平方向に延びる延出部334aが形成されており、これら延出部334aにはそれぞれ2つの貫通孔(図示せず)が形成されている。これらの貫通孔にボルト337を挿通し、このボルト337をナット338で固定することにより(図18参照)、上部ハウジング332と下部ハウジング334とが連結される。なお、上部ハウジング332の延出部332aには水質改善装置330の持ち運びを容易にするための把手332cが設けられている。
【0078】
図18に示すように、下部ハウジング334の上部の内周側には銅板340が取り付けられている。この銅板340は、上述した金属繊維から溶出した銅イオンによる殺菌効果を高めるとともに、上部ハウジング332と下部ハウジング334との間から金属繊維が外部に出てくるのを防止する役割を有する。なお、図示はしないが、銅イオンによる殺菌効果を高めるために、下部ハウジング334の底面に銅メッシュを敷いてもよい。
【0079】
図20は、本発明の第6の実施形態に係る水質改善装置430を含む発電所冷却水冷却システムを示す模式図である。本実施形態における発電所冷却水冷却システムは、原子力発電所や火力発電所において用いられる冷却水を海水により冷却するものであり、図20に示すように、冷却水が循環される冷却水配管410A,410Bと、それぞれの冷却水配管410A,410Bに取り付けられた冷却器412A,412Bと、海水413を貯留する取水ピット414に設けられたポンプ416A,416Bと、ポンプ416A,416Bにより汲み上げられた海水413を冷却器412A,412Bに導入する取水配管418A,418Bと、冷却器412A,412Bにて冷却水の冷却に用いられた海水413を放水ピット420に送る放水配管422A,422Bとを備えている。
【0080】
本実施形態においては、取水ピット414から冷却器412A,412Bに延びる取水配管418A,418Bの途中にそれぞれ水質改善装置430が設けられている。図21は、水質改善装置430の構成を示す模式図である。図21に示すように、水質改善装置430は、取水配管418Aを4つに分岐させる分岐管431と、分岐管431に接続された4つのチャンバ432と、4つのチャンバ432に接続された分岐管433とを有している。
【0081】
図22は1つのチャンバ432を示す模式図、図23は図22のXXIII-XXIII線断面の模式図である。図22および図23に示すように、チャンバ432内には、複数の円筒状充填容器434が所定の間隔で配置されている。これらの円筒状充填容器434には多数の通水孔435が形成されている。それぞれの円筒状充填容器434の内部には銅と亜鉛の合金または銅単体からなり表面に多数の歯状突起が形成された金属繊維が充填されており、銅イオンおよび亜鉛イオンがチャンバ432の内部を通過する水に溶出するようになっている。
【0082】
原子力発電所や火力発電所において用いられる冷却水の冷却には海水が用いられるため、ムラサキイガイやエボシガイなどの海生生物が冷却系に付着する問題がある。従来から塩素などの薬品を用いてこの問題に対処しているが、塩素などの薬品を用いると配管内部や冷却器本体の腐食が生じたり、排水中の塩素濃度が高まることによる環境問題が生じたりする。これに対して、本実施形態のように、取水配管418A,418Bに水質改善装置430を設ければ、水質改善装置430の複数の円筒状充填容器434内の金属繊維から溶出する銅イオンおよび亜鉛イオンの酸化還元作用により、冷却器412A,412Bの内部や取水配管418A,418B、放水配管422A,422Bに付着しているムラサキイガイやエボシガイなどの海生生物を衰弱させることができる。また、これらの海生生物の産卵により発生したプランクトンを死滅させることができ、これらの海生生物の繁殖を防止することができる。
【実施例1】
【0083】
上述した金属繊維の効果を調べるため、ヒ素濃度0.050mg/L、pH6.0となるように調製した試験液に銅と亜鉛の合金からなる金属繊維を浸漬し、23℃の環境下で24時間静置した。金属繊維1.0g当たり100mLの試験液を用いた。その結果、ヒ素濃度は0.013mg/Lとなり、金属繊維を浸漬する前の約26%に減少した。この結果からわかるように、金属繊維を浸漬することによりヒ素およびその化合物が効果的に除去されることが確認された。
【0084】
また、残留塩素濃度が1.2mg/Lとなるように調製した水道水に銅と亜鉛の合金からなる金属繊維を浸漬し、24時間静置したときの残留塩素濃度を測定した。金属繊維3.0g当たり5000mLの水道水を用いた。そのときの結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1からわかるように、金属繊維を浸漬するだけで残留塩素が効果的に除去できることが確認された。
【0087】
また、図15に示す金属イオン水生成装置(水質改善装置)の効果を調べるために実験を行った。500gの金属繊維284を充填した充填容器283を100Lの貯水槽282内に設置し、100V/250Wの水供給ポンプ286を駆動して、貯水槽282内の水を循環させた。そのときの結果を図24に示す。
【0088】
図24に示すように、通常金属繊維を水中に24時間静置した場合に得られる金属イオン濃度を約1時間で得ることができ、約24倍以上の速度で銅イオン濃度が得られることが確認された。
【0089】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。上述した実施形態では、水質改善装置を冷却塔内の冷却水に適用した例について説明したが、本発明はこの例に限られるものではなく、水質の改善が必要なあらゆる種類の水に適用することができる。
【0090】
例えば、本発明に係る水質改善装置を水耕栽培に用いる水や代替農薬、無機農薬として用いる水に適用することができる。本発明に係る水質改善装置により水質が改善された水は農薬の代わりに使用することができる。この場合には、かいよう病、黒点病、斑点落葉病、白紋羽病、べと病、さび病、せん孔病、がんしゅ病、花腐細菌病、疫病、軟腐病、黒葉枯病、腐敗病、春腐病、斑点細菌病、黒腐病、赤焼病、フラン病、炭そ病などを防止することができ、また、アブラムシやなめくじなどの害虫を忌避することも可能である。
【0091】
また、例えば、本発明に係る水質改善装置により水質が改善された水をミスト化して畜舎に噴霧してもよい。この場合には、畜舎内の消臭や口蹄疫や新型インフルエンザなどの感染を防ぐことができる。また、本発明に係る水質改善装置を養殖用の水に適用して魚類の養殖を行ってもよい。この場合には、連続養殖による魚貝類に有害なウィルスやビブリオを駆除でき、ニジマス、ヤマメ、イワナ、アマゴ、サクラマス、銀サケ、ニシキゴイ、ウナギなどのエロモナス症(立鱗病やポップアイ、穴あき病など)、ディスカス病、エンゼルフィッシュ病、カラムナリス症(ヒレ腐れ病や口腐れ病)、カビ病、えらくされ病、鯉ヘルペスなどの病気の発生を抑制することができる。
【0092】
また、池や沼の水をポンプで汲み上げて再び池や沼に戻す循環系内の循環水に本発明に係る水質改善装置を適用してもよい。この場合には、池や沼に繁殖した藻やアオコを分解除去することが可能である。
【0093】
また、飲料用の冷温水サーバ内のタンクに本発明に係る水質改善装置を設置してもよい。従来から、冷温水サーバのタンク内の殺菌にはUVランプが用いられているが、サーバを一定時間使用しないと、配管内部やフィルタ内部にスライムや大腸菌、レジオネラ菌などが発生し、異臭やヌメリの原因となる。これを取り除くためには多くの時間とコストがかかる。一方、本発明に係る水質改善装置を冷温水サーバのタンク内に設置すれば、簡単かつ安価にスライムや大腸菌、レジオネラ菌などを殺菌することができる。また、残留塩素も分解することができる。さらに、シリカやスケールの堆積を抑制することができ、サーバ内の配管が詰まってしまうことを防止することができる。また、金属繊維から銅や亜鉛が微量ではあるが溶出するため、この冷温水サーバの水を飲むことによって人体にとって必項である銅や亜鉛のミネラルを摂取することができる。
【0094】
また、本発明に係る水質改善装置を浴槽に設置してもよい。例えば、図25に示すように、多数の通水孔500が側面に形成された木製の箱状充填容器502の内部に、銅と亜鉛の合金または銅単体からなり表面に多数の歯状突起が形成された金属繊維を充填する。このような箱状充填容器502を水質改善装置として浴槽に沈めてもよい。このような水質改善装置を用いることにより、浴槽内の水を入れ替えずに例えば20日間使用しても、大腸菌が発生せず、浴槽の内壁にもヌメリが生じない。また、水道水に含まれる残留塩素分を除去することもでき、悪臭の発生も防止することができる。さらに、浴槽内の水に含まれる有機物を凝集沈殿させることができるため、水の透明度を高めることができる。
【0095】
また、本発明に係る水質改善装置をヒ素が含まれる温泉などの排水設備に設置し、安価かつ簡単にヒ素成分を除去することができる。また、温泉などに用いる循環水の系統中に本発明に係る水質改善装置を設置してもよい。この場合には、循環水のレジオネラ菌や大腸菌などの殺菌を行うことができる。また、金属繊維から銅や亜鉛が微量ではあるが溶出するため、銅や亜鉛のミネラルが入浴者の肌に良い効果をもたらす。
【0096】
さらに、本発明に係る水質改善装置を加湿器内のタンクに設置してもよい。この場合には、加湿器のタンク内のレジオネラ菌や大腸菌、カビなどを殺菌することができる。また、本発明に係る水質改善装置により水質が改善された水が室内に噴霧されることになるため、新型インフルエンザやMRSA、多剤耐性菌などの感染を防止することができる。
【0097】
また、本発明に係る水質改善装置をトイレの洗浄タンクに設置してもよい。この場合には、トイレの洗浄タンク内にカビなどが発生することを防止でき、便器の汚れを抑えることができる。
【0098】
また、本発明に係る水質改善装置を洗濯機の洗濯槽に設置してもよい。この場合には、水道水に含まれる残留塩素を除去できるとともに、洗濯槽内のカビや大腸菌類などを殺菌することができる。また、洗濯物の汚れや洗濯物に残った洗剤を完全に除去することができ、すすぎのために用いる水の量も節減できる。
【0099】
また、鉛や水銀、カドミウム、ヒ素などの重金属が含まれる水に本発明に係る水質改善装置を適用してもよい。この場合には、これらの重金属を簡単な設備で安価に除去することができる。
【0100】
また、本発明に係る水質改善装置を船舶に搭載される飲料水タンク内に設置し、スライムや大腸菌などの殺菌を行ってもよい。さらに、本発明に係る水質改善装置を船舶に搭載されるバラストタンクに設置してもよい。採取した海水をバラスト水として使用する場合に、バラスト水を本発明に係る水質改善装置で殺菌することにより他の地域でバラスト水を排出しても生態系に与える影響を抑えることができる。
【0101】
また、本発明に係る水質改善装置を貯水タンクや高架水槽に設置してもよい。この場合には、貯水タンクや高架水槽内の大腸菌などを殺菌することができる。また、シリカやスケールの堆積を抑制することができ、配管が詰まってしまうことを防止することができる。また、配管内に赤錆が発生するのを防止することができる。
【0102】
また、本発明に係る水質改善方法により得られた水を製氷に用いてもよい。魚類などの生鮮品の貯蔵や運搬などに使用する通常の氷は、溶け始めると細菌類の繁殖が始まるが、本発明に係る水質改善方法により得られた水を用いて作った氷は、溶けても殺菌効果が持続し、変色したり臭いもつかない。
【符号の説明】
【0103】
10 空調機
12 熱交換器
14 冷却塔
16 熱媒配管
18 冷却水配管
20 ファン
22 上部水槽
24 充填材
26 下部水槽
30 水質改善装置
31 通水孔
32 円筒部
33 キャップ
34 充填容器
35 金属繊維
35A 歯状突起
130 水質改善装置
131A,131B 半球体
132A,132B 半球部
133A,133B フランジ部
134 ヒンジ部
135 ピン
136 位置決め孔
137 ロック部
138 保持部
139 フック部
230 水質改善装置
240 微細気泡発生器
242 気泡発生部
244 気体供給管
245 電磁弁
246 噴出管
247 水供給管
248 球状充填容器
250 上部ノズル(開口)
252 下部ノズル(開口)
260 貯水槽
262 水供給源
264 水供給ポンプ
266 圧力制御ポンプ
272 排水ポンプ
268 圧力制御管
270 排水管
282 貯水槽
283 充填容器
284 金属繊維
285 水供給ポンプ
286 水供給ポンプ
314 冷却塔
320 ファン
322 上部水槽
323 熱交換器
324 充填材
325 内部配管
326 下部水槽
327 落とし込み水槽
328 ポンプ
330 水質改善装置
332 上部ハウジング
334 下部ハウジング
430 水質改善装置
410A,410B 冷却水配管
412A,412B 冷却器
414 取水ピット
416A,416B ポンプ
418A,418B 取水配管
420 放水ピット
422A,422B 放水配管
430 水質改善装置
431,433 分岐管
432 チャンバ
434 円筒状充填容器
435 通水孔
500 通水孔
502 箱状充填容器
,R 旋回流
S 内部空間
W 水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅と亜鉛の合金または銅からなる金属繊維であって、表面に多数の歯状突起が形成された金属繊維と、
前記金属繊維を充填した充填容器であって、多数の通水孔が形成された充填容器と、
を備えたことを特徴とする水質改善装置。
【請求項2】
前記充填容器の内部を通過させた水に微細な気泡を発生させる微細気泡発生器であって、
流水抵抗の少ない流線型の内部空間と、該内部空間の水を外部に排出する開口とを有する気泡発生部と、
外部から前記気泡発生部の内部空間の接線方向に水を噴出することにより該内部空間に旋回流を発生させる噴出管と、
前記気泡発生部の内部空間で発生した旋回流に気体を供給する気体供給管と、
を有する微細気泡発生器
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の水質改善装置。
【請求項3】
前記充填容器は、前記微細気泡発生器の気泡発生部の内部空間に収容されることを特徴とする請求項2に記載の水質改善装置。
【請求項4】
前記充填容器は、前記微細気泡発生器の噴出管の内部に配置されることを特徴とする請求項2に記載の水質改善装置。
【請求項5】
前記充填容器は、前記通水孔が形成された円筒部を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の水質改善装置。
【請求項6】
前記充填容器は、
前記通水孔が形成され、互いに組み合わされることによって球状体を構成する一対の半球体と、
前記一対の半球体を回動可能に結合するヒンジ部と、
前記一対の半球体が組み合わされた状態をロックするロック部と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の水質改善装置。
【請求項7】
多数の通水孔から充填容器内に水を導入し、
前記充填容器内に充填された銅と亜鉛の合金または銅からなる金属繊維であって、表面に多数の歯状突起が形成された金属繊維に前記水を接触させ、
前記金属繊維から溶出する金属イオンの酸化還元作用により前記水の水質を改善することを特徴とする水質改善方法。
【請求項8】
前記水は、所定の系の中で循環する循環水であることを特徴とする請求項7に記載の水質改善方法。
【請求項9】
前記水は、冷却塔内で使用される冷却水であることを特徴とする請求項7に記載の水質改善方法。
【請求項10】
前記水は、発電所において用いられる冷却水を冷却する海水であることを特徴とする請求項7に記載の水質改善方法。
【請求項11】
前記水は、水耕栽培に用いる水または代替農薬あるいは無機農薬として用いる水であることを特徴とする請求項7に記載の水質改善方法。
【請求項12】
前記水は、家畜の伝染病予防または蓄舎の消臭のために用いられる水であることを特徴とする請求項7に記載の水質改善方法。
【請求項13】
前記水は、魚類養殖用の水であることを特徴とする請求項7に記載の水質改善方法。
【請求項14】
前記水は、飲料水サーバ内の水であることを特徴とする請求項7に記載の水質改善方法。
【請求項15】
前記水は、浴槽の水であることを特徴とする請求項7に記載の水質改善方法。
【請求項16】
前記水は、重金属を含む水であることを特徴とする請求項7に記載の水質改善方法。
【請求項17】
前記水は、加湿器内の水であることを特徴とする請求項7に記載の水質改善方法。
【請求項18】
前記水は、トイレのタンク内の水であることを特徴とする請求項7に記載の水質改善方法。
【請求項19】
前記水は、製氷に用いる水であることを特徴とする請求項7に記載の水質改善方法。
【請求項20】
前記水は、アオコを含む水であることを特徴とする請求項7に記載の水質改善方法。
【請求項21】
貯水槽と、
銅と亜鉛の合金または銅からなる金属繊維であって、表面に多数の歯状突起が形成された金属繊維と、
前記金属繊維を充填した充填容器と、
前記貯水槽内の水に微細な気泡を発生させる微細気泡発生器であって、
流水抵抗の少ない流線型の内部空間と、該内部空間の水を外部に排出する開口とを有する気泡発生部と、
前記充填容器の内部を通過させた水を前記気泡発生部の内部空間の接線方向に噴出し、該内部空間に旋回流を発生させる噴出管と、
前記気泡発生部の内部空間で発生した旋回流に気体を供給する気体供給管と、
を有する微細気泡発生器と、
を備えたことを特徴とする金属イオン水生成装置。
【請求項22】
密閉された前記貯水槽に接続された圧力制御管と、
前記圧力制御管を介して前記貯水槽内の圧力を調整する圧力制御ポンプと、
をさらに備えたことを特徴とする請求項19に記載の金属イオン水生成装置。
【請求項23】
貯水槽と、
銅と亜鉛の合金または銅からなる金属繊維であって、表面に多数の歯状突起が形成された金属繊維と、
前記貯水槽内の水に微細な気泡を発生させる微細気泡発生器であって、
流水抵抗の少ない流線型の内部空間と、該内部空間の水を外部に排出する開口とを有する気泡発生部と、
水を前記気泡発生部の内部空間の接線方向に噴出し、該内部空間に旋回流を発生させる噴出管と、
前記気泡発生部の内部空間で発生した旋回流に気体を供給する気体供給管と、
を有する微細気泡発生器と、
前記貯水槽に浸漬される充填容器であって、前記微細気泡発生器を収容するとともに前記微細気泡発生器の周囲に前記金属繊維を充填した充填容器と、
前記貯水槽の内部の水を前記微細気泡発生器の噴出管に供給する水供給ポンプと、
を備えたことを特徴とする金属イオン水生成装置。
【請求項24】
貯水槽と、
銅と亜鉛の合金または銅からなる金属繊維であって、表面に多数の歯状突起が形成された金属繊維と、
前記貯水槽に浸漬された充填容器であって、上部に開口を有し、内部に前記金属繊維を充填した充填容器と、
前記貯水槽の内部の水を前記充填容器の内部に供給し循環する水供給ポンプと、
を備えたことを特徴とする金属イオン水生成装置。
【請求項25】
前記水は、所定の系の中で循環する循環水であることを特徴とする請求項21から24のいずれか一項に記載の金属イオン水生成装置。
【請求項26】
前記水は、冷却塔内で使用される冷却水であることを特徴とする請求項21から24のいずれか一項に記載の金属イオン水生成装置。
【請求項27】
前記水は、発電所において用いられる冷却水を冷却する海水であることを特徴とする請求項21から24のいずれか一項に記載の金属イオン水生成装置。
【請求項28】
前記水は、水耕栽培に用いる水、代替農薬、または無機農薬として用いる水であることを特徴とする請求項21から24のいずれか一項に記載の金属イオン水生成装置。
【請求項29】
前記水は、家畜の伝染病予防または蓄舎の消臭のために用いられる水であることを特徴とする請求項21から24のいずれか一項に記載の金属イオン水生成装置。
【請求項30】
前記水は、魚類養殖用の水であることを特徴とする請求項21から24のいずれか一項に記載の金属イオン水生成装置。
【請求項31】
前記水は、重金属を含む水であることを特徴とする請求項21から24のいずれか一項に記載の金属イオン水生成装置。
【請求項32】
前記水は、製氷に用いる水であることを特徴とする請求項21から24のいずれか一項に記載の金属イオン水生成装置。
【請求項33】
前記水は、アオコを含む水であることを特徴とする請求項21から24のいずれか一項に記載の金属イオン水生成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−239938(P2012−239938A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109458(P2011−109458)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(511118849)
【Fターム(参考)】