説明

水質浄化施設及びその浄化ユニット並びに浄化方法

【課題】路面排水のファーストフラッシュなどの浄化を、自然の植生を活用して有効に、しかも、浄化能力を簡易に維持できる浄化ユニット及び水質浄化施設、並びにそれを用いた水質浄化方法を提供すること。
【解決手段】水質浄化施設において着脱自在に設置可能な浄化ユニットであって、上部が開口した略四角筒状の金網籠を形成する壁部と、その壁部の内面のうち少なくとも底部に配設され水は通すが土砂は通さない膜体とを備え、土砂が充填されると共に植物が植設され、浄化の対象となる水を通して、植物を介して水質浄化する。浄化ユニットを複数設置し、その外壁内へ水を流入可能にする流入口と、その流入口に対向する側壁に設けられ外壁外へ水を流出可能にする流出口とを備えると共に、流入口近傍の外壁内部に、流入水を分散させる樋を外壁に沿って付設して、水質浄化施設としてもよい。また、樋の上端部から流出口へ向かって棒状体が設置してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面排水のファーストフラッシュなどを浄化する浄化ユニット、その浄化ユニットを有した水質浄化施設、並びに、それらを用いた水質浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
琵琶湖の湖岸道路など、少なからずの自動車が走行する路面には、タイヤやアスファルトの摩耗物や、排気汚濁物質、土砂、粉塵など、様々なものが堆積している。
このような堆積物は、雨天時に路面から離脱し、排水路や、河川、湖沼、海へ移動することで、それらの水質汚濁や環境汚染をもたらす原因となっている。
【0003】
水質浄化施設は、様々なものが既に公知である。
路面の堆積物の移動は、初期の雨水すなわちファーストフラッシュによるものが主であるので、ファーストフラッシュを浄化する目的のものも公知である。
それらに関連する従来技術には、特許文献1〜7などがある。
【0004】
しかし、自然の植生を活用して有効に作用する浄化施設、特に浄化能力を簡易に維持できるものはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−68211 「伏流式人工湿地システム」
【特許文献2】特開2006−266072 「雨水排水支援システム、雨水排水支援方法、雨水排水制御システムおよび雨水排水制御方法」
【特許文献3】特開2006−187682 「下水流入水の水質予測方法及び雨水排水支援システム」
【特許文献4】特開2006−28842 「路面排水処理槽」
【特許文献5】特開2005−281964 「合流式下水道における汚濁物質排除システム」
【特許文献6】特開2005−179919 「雨水等の貯留浸透施設」
【特許文献7】特開2002−242277 「路面排水の跳ね返りを防止した取水および浄化方法並びにその装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、路面排水のファーストフラッシュなどの浄化を、自然の植生を活用して有効に、しかも、浄化能力を簡易に維持できる浄化ユニットと、その浄化ユニットを有した水質浄化施設、並びに、それらを用いた水質浄化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の浄化ユニットは次の構成を備える。
すなわち、水質浄化施設において着脱自在に設置可能な浄化ユニットであって、上部が開口した略四角筒状の金網籠を形成する壁部と、その壁部の内面のうち少なくとも底部に配設され水は通すが土砂は通さない膜体とを備え、土砂が充填されると共に植物が植設され、浄化の対象となる水を通して、植物を介して水質浄化することを特徴とする。
【0008】
ここで、壁部のサイズとしては、縦横0.5〜2m、好ましくは0.8〜1.2m、深度0.2〜1m、好ましくは0.4〜0.6が好適である。
【0009】
土砂に植設される植物としては、イネ科またはショウブ科が好適である。
【0010】
イネ科植物として、ヨシが特に有用である。
【0011】
本発明の水質浄化施設は、前記の浄化ユニットを複数設置可能な水質浄化施設であって、その外壁内へ水を流入可能にする流入口と、その流入口に対向する側壁に設けられ外壁外へ水を流出可能にする流出口とを備えると共に、流入口近傍の外壁内部に、流入水を分散させる樋を外壁に沿って付設されたことを特徴とする。
【0012】
ここで、樋の上端部から流出口へ向かって棒状体を設置して、水の分散に寄与させてもよい。
【0013】
本発明の水質浄化施設は、路面排水を受入し、比較的大径の懸濁物類を除去する前処理施設と、前処理施設からの流入水を浄化して外部へ放出する前記の本浄化施設とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の水質浄化方法は、前記の水質浄化施設において、所望の浄化ユニットを個々に交換または整備することで、浄化能力を維持することを特徴とする。
【0015】
また、前記の水質浄化施設において、路面排水のファーストフラッシュを選択的に受入し、その流入水を浄化ユニットを介して浄化した後に、外部へ放出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記構成を備えることにより次の効果を奏する。
すなわち、ユニットを用いるので、所望の浄化ユニットを個々に交換または整備することが容易であり、浄化能力を安定維持できる。また、ヨシ等の植生を活用するので、自然への負荷が低く環境保全にも作用する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による浄化ユニットを有する水質浄化施設の設置様態の説明図
【図2】本浄化施設及びその周辺の平面説明図
【図3】本浄化施設の要部斜視図
【図4】浄化ユニットの壁部の斜視図
【図5】ヨシの植設された本浄化施設を示す一部断面正面説明図
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記の例示に限らず、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で、前記特許文献など従来公知の技術を用いて適宜設計変更可能である。
【0019】
図1は、本発明による浄化ユニットを有する水質浄化施設の設置様態の説明図である。
本発明による水質浄化施設は、例えば琵琶湖の湖岸道路などに隣接させて、そのファーストフラッシュなどの路面排水の浄化に特に有用に用いられる。
路面排水は、道路(10)の側溝に接続された水路(20)を介して、集水枡(21)に受入される。
なお、対象とする路面排水としては、湖岸道路に限らず、もちろん河川に沿った道路などにも適用自在であり、高速道路、一般的な国道や県道をはじめ、様々な道路からの排水に有用である。
【0020】
集水枡(21)から水量を調節して排出された排水は、流入水路(22)を介して前処理施設(23)へ移行する。
前処理施設(23)では、浮遊するゴミや比較的大径の懸濁物などを除去して、後述の本浄化施設(30)における汚泥堆積や濾材の目詰まりの防止を行う。
なお、集水枡(21)には水位計や水門が備わるなど、集水枡(21)や流入水路(22)や前処理施設(23)などの部位には、従来公知の施設を適宜利用できる。
【0021】
前処理施設(23)から水量を調節して排出された前処理水は、流入水路(24)を介して本浄化施設(30)へ移行する。
本浄化施設(30)で浄化された浄水は、流出水路(31)を介して、湿地帯(11)へ放流される。
なお、本浄化施設(30)に過大に流入した前処理水は、余水排水路(32)を介して、道路脇の堤脚水路(12)へ放出される。なお、集水枡(21)へ還流され得るバイパスを付設してもよい。
【0022】
図2は、本浄化施設(30)及びその周辺の平面説明図、図3は、本浄化施設(30)の要部を示す斜視図、図4は、浄化ユニットの主構成要素である壁部の斜視図である。
本浄化施設(30)には、着脱自在に設置可能な浄化ユニット(40)が複数備わる。図示の例では、格子状に30基設けられているが、その数や配置は任意である。
各浄化ユニット(40)の老朽化等はその位置によって差が生じ得るが、ユニット化されているため、所望の浄化ユニット(40)を個々に交換したり清掃整備することができ、効率良く浄化能力を維持管理することが可能である。
【0023】
本浄化施設(30)は、図3に示したように、コンクリート等から成る略四角筒状の外壁(41)で囲われる。
その外壁(41)を構成する側壁のうち対向する1対の側壁には、外壁(41)内へ前処理水を流入可能にする流入口(42)と、外壁(41)外へ前処理水を流出可能にする流出口(43)とが備わる。
その流入口(42)の近傍の外壁(41)内部には、流入した前処理水を均一に分散させるために、外壁(41)に沿って細長い樋(44)が備わる。
なお、外壁(41)は、コンクリートに限らず、土や合成樹脂や金属製などでもよく、地面を掘り下げた露地に防水シートを付設する構成でもよいし、完全な密閉式に限らず、若干透水性にしてもよく、水の一定の非透過性を備えれば、従来公知の構造を適宜利用できる。
【0024】
樋(44)に隣接する空隙には、図5に示した浄化ユニット(40)が30基設置される。
浄化ユニット(40)は、略四角筒状の金網籠である壁部(50)を備える。その底部と側部との間、並びに、底部間には、強度補強や吊り上げに寄与するステー(51)(52)が備わる。図示の例では、側面と底面との間にステー(51)が架設され、対向する側面同士の間にステー(52)架設されている。
なお、ステー(51)(52)の数や架設形態は任意であり、複数のステー(51)(52)同士を連結させてもよいし、ステー(51)(52)を付設しなくてもよい。図示のような略直線状のステーに限らず、これに類する従来公知の補強部材や把持用部材などを付設してもよい。
壁部(50)のサイズとしては、縦横0.5〜2m、好ましくは0.8〜1.2m、深度0.2〜1m、好ましくは0.4〜0.6であり、図示の例では、縦横1m四方、深度0.5mである。
【0025】
壁部(50)の内面には、水は通すが土砂は通さないマットやスポンジなどの膜体を設ける。壁部(50)の内面の全てに付設してもよいし、側部の一部及び底部でもよいし、底部のみでもよい。
壁部(50)の内部には、土砂が充填され、上部には、パイプ等の棒状体(45)が架設される。棒状体(45)は、樋(44)の上端部から流出口(43)へ向かって配置され、それを伝わって水が遠方まで分散される。図示の例では、1列の浄化ユニット(40)当たり1本設けられているが、その数は任意である。また、棒状体(45)の形状を、平らな板状にしてもよいし、樋形状にしてもよいし、複数に分岐させてもよい。なお、棒状体(45)の径は樋(44)の深度と同程度が好ましい。
【0026】
図5は、ヨシの植設された本浄化施設(30)を示す一部断面正面説明図である。
各浄化ユニット(40)の土砂(60)には植物(61)を植設する。
土砂(60)としては、例えば、10%粒径0.25〜0.425mm、均等係数10未満のものが利用できる。もちろん、これに限定されず、礫層と砂層との複層構造などにしてもよい。
その表層部に、植物(61)の苗を植設し、浄化ユニット(40)を本浄化施設(30)に組み込み、水を供給する。
【0027】
植物(61)としては、イネ科やショウブ科が有用であり、特にヨシが好ましい。
浄化ユニット(40)の表層部は、汚泥等が堆積しやすいが、植物(61)の地下茎や根毛の伸長によって攪拌され、微生物が成育しやすい環境になり、植生による浄化作用が有効に維持される。
【0028】
なお、図示の例では、棒状体(45)にはパイプが用いられ、各浄化ユニット(40)の中央に対応する位置のパイプ下面には孔(45a)が開口されている。
また、浄化ユニット(40)は、砂利を敷いた上に配置させてもよい。
なお、当然なことであるが、孔(45a)の位置は、中央ではなくてもよいし、また、単数でなく多数設けてもよい。このような定法設計については、逐一触れないが、従来公知技術を援用し適宜設計変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によると、環境負荷低く有効に水質浄化できるので、産業上利用価値が高い。
【符号の説明】
【0030】
10 道路
11 湿地帯
12 堤脚水路
20 水路
21 集水枡
22、24 流入水路
23 前処理施設
30 本浄化施設
31 流出水路
32 余水排水路
40 浄化ユニット
41 外壁
42 流入口
43 流出口
44 樋
45 棒状体
45a 孔
50 壁部
51、52 ステー
60 土砂
61 植物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質浄化施設において着脱自在に設置可能な浄化ユニットであって、
上部が開口した略四角筒状の金網籠を形成する壁部と、
その壁部の内面のうち少なくとも底部に配設され水は通すが土砂は通さない膜体とを備え、
土砂が充填されると共に植物が植設され、
浄化の対象となる水を通して、植物を介して水質浄化する
ことを特徴とする水質浄化施設の浄化ユニット。
【請求項2】
土砂に植設される植物が、
イネ科またはショウブ科である
請求項1に記載の水質浄化施設の浄化ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の浄化ユニットを複数設置可能な水質浄化施設であって、
その外壁内へ水を流入可能にする流入口と、
その流入口に対向する側壁に設けられ外壁外へ水を流出可能にする流出口とを備えると共に、
流入口近傍の外壁内部に、流入水を分散させる樋を外壁に沿って付設された
ことを特徴とする水質浄化施設。
【請求項4】
樋の上端部から流出口へ向かって棒状体が設置された
請求項3に記載の水質浄化施設。
【請求項5】
請求項3または4に記載の水質浄化施設において、
所望の浄化ユニットを個々に交換または整備することで、浄化能力を維持する
ことを特徴とする水質浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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