説明

水質調整装置

【課題】きわめて簡単な構成をもって、流路閉塞を防止することができる水質調整装置を提供すること。
【解決手段】イオン交換樹脂19よりなる軟水化濾材を充填した軟水化濾材充填部の下流側に金属イオン封鎖材33を設ける。そして、原水を前記イオン交換樹脂19により軟化水させるとともに、軟化水中に金属イオン封鎖材33が溶出するように構成する。前記イオン交換樹脂19と金属イオン封鎖材33との間に吸水部材20が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば水を加熱したり、蒸気を発生させたりする厨房機器等において、原水の水質を調整するために用いられる水質調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒸気を庫内に入れて食品を加熱処理するスチームコンベンションオーブン等の厨房機器においては、水道水等の原水を加熱部に直接供給すると、その原水中に含まれるカルシウム、マグネシウム等の硬度成分によりスチームジェネレーター内でスケールが発生する。そして、このスケールが蒸気発生部のボイラ伝熱面に付着したり、水位センサや排水管等に堆積したりして、厨房機器の運転に支障を来たすおそれがあった。
【0003】
このため、一般には、厨房機器の給水管路に軟水器等の水質調整装置を接続して、原水の水質を調整するようにしている。すなわち、この水質調整装置においては、イオン交換樹脂よりなる濾材を充填した濾材充填部が設けられている。そして、この濾材充填部に原水を通過させることにより、原水中に含まれるイオンが、濾材充填部の陽イオン交換樹脂によりイオン交換されて、その原水が軟化水される。
【0004】
しかしながら、このような軟水器等の水質調整装置を使用し続けると、イオン交換樹脂の交換反応基が原水に含まれるイオン物質と交換されて減少し、イオン交換樹脂のイオン交換能力が低下して、軟化水効率が低下する。そのため、イオン交換樹脂を充填したカートリッジ等の濾材充填部を、新しいイオン交換樹脂の充填されたものと頻繁に交換する必要があって、管理コストが高くなる。
【0005】
このような問題に対処するため、例えば特許文献1に開示されるような構成の水質調整装置も従来から提案されている。すなわち、この従来構成においては、イオン交換樹脂を充填したカートリッジを収容するイオン交換樹脂容器と、イオン交換樹脂を再生するための再生材を充填したカートリッジを交換可能に収容する再生材容器とが装備されている。また、再生材容器の出水口が接続ホースを介して、イオン交換樹脂容器の給水口に接続されている。そして、再生材容器内に再生材を充填したカートリッジを収容した状態で、再生材容器を介してイオン交換樹脂容器に通水されることにより、再生材が水に溶解して樹脂容器のカートリッジ内に供給される。このため、再生材溶液中の交換反応イオンとイオン交換樹脂に捕捉されたイオンとが交換されて、イオン交換樹脂が再生される。
【0006】
ところが、この従来の水質調整装置においては、イオン交換樹脂のイオン交換能力が低下するごとに、再生材によるイオン交換樹脂の再生操作を頻繁に行う必要があって、その操作が面倒である。また、イオン交換樹脂の再生操作のたびに、新しい再生材を充填したカートリッジを再生材容器内にセットする必要があるため、前記と同等に管理コストが高くなる。
【0007】
この問題を解決するために、特許文献2に記載の水質調整装置が提案されている。この特許文献1の水質調整装置は、図9に示すように、ステンレス鋼製の外ケース111内に濾材充填部となる合成樹脂製のカートリッジ112が収容され、その内部に粒状をなすイオン交換樹脂113が多数充填されている。そして原水中に含まれるイオンがイオン交換樹脂113によりイオン交換されて、原水が軟化水化される。
【0008】
さらに、カートリッジ112の内底部には、金属イオン封鎖材容器114が配設されている。この金属イオン封鎖材容器114の内部には、金属イオン封鎖材(ポリリン酸ナトリウム等)115が収容されている。そして、カートリッジ112内のイオン交換樹脂113を通過した軟化水が金属イオン封鎖材容器114内に流入することにより、その軟化水中に金属イオン封鎖材115が溶出して、ミネラル分が封鎖される。このように、金属イオン封鎖材115が軟化水中に溶出されると、軟化水中に含まれるミネラル分、例えばカルシウムやマグネシウムがこの金属イオン封鎖材115と反応して封鎖され、リン酸カルシウムやリン酸マグネシウムの一種であるヒドロキシアパタイトが生成される。これらの生成物は軟化水中を浮遊するのみで、スケールになり難いため、イオン交換樹脂113のイオン交換能力が低下して、軟化水中にカルシウムやマグネシウムが残留していても、スケールが発生することを抑制することができる。
【0009】
よって、イオン交換樹脂113により、原水が軟化水化され、その後、その軟化水中に微量の金属イオン封鎖材115が溶出するが、イオン交換樹脂113のイオン交換能力が低下してくると、軟化水中に溶出した金属イオン封鎖材115により、軟化水化効率の低下を補足することができる。このため、イオン交換樹脂を頻繁に交換したり再生したりする必要がなく、長時間にわたって軟化水化効率を維持することができて、管理コストのアップを抑制することができる。
【特許文献1】特開平9−141259号
【特許文献2】特開2006−263718号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記水質調整装置のカートリッジ112に充填されているイオン交換樹脂113は、未使用の状態、つまり原水に浸されていない状態で通常水分を40%から50%含んでいる。この水分量は外気の湿度に応じて絶えず変動している。すなわち、イオン交換樹脂113は、周囲の湿度が低いと水分を放出し、逆に周囲の湿度が高いと水分を吸収するという性質を有している。そして、イオン交換樹脂113と併存する金属イオン封鎖材115は、この水分と接触して、外表面が水分を含み、例えば水質調整装置の倉庫保管時等において時間経過とともに水飴状に溶けて水路の狭い部分や水路に設けられたフィルタ等を閉塞する。つまり、イオン交換樹脂113に吸収されなかった一部の水分が金属イオン封鎖材115を収容している114容器の内側面等に結露する。そして、その結露に金属イオン封鎖材115が接触して、金属イオン封鎖材115の溶解が始まると考えられる。以上のようにして、水路やフィルタ等が閉塞されると、水質調整装置を実際に配管接続して使用する際に水が出ないという障害を発生させる。
【0011】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、きわめて簡単な構成をもって、前述した閉塞を防止することができる水質調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の目的を達成するために、請求項1に記載の発明においては、イオン交換樹脂よりなる軟水化濾材を充填した軟水化濾材充填部の下流側に金属イオン封鎖材を設け、原水を前記軟水化濾材により軟水化させるとともに、軟化水中に金属イオン封鎖材が溶出するように構成した水質調整装置において、吸水部材を設けたことを特徴とする。ここで、軟水化濾材,金属イオン封鎖材及び吸水部材はそれぞれ粒状をなすものである。
【0013】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明において、吸水部材を平均粒度40〜100メッシュの粒状活性炭により構成し、その吸水部材の量を、軟水化濾材に対して5.0重量パーセントを越える量としたことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明においては、請求項2に記載の発明において、吸水部材の量を、軟水化濾材に対して6.7重量パーセントを越える量としたことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の発明において、前記吸水部材は、イオン交換樹脂と金属イオン封鎖材との間の位置に配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明においては、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の発明において、第1ケース内に前記軟水化濾材を充填し、その第1ケース内に第2ケースを設けるとともに、その第2ケース内に前記金属イオン封鎖材を収容し、前記吸水部材を第2ケースの外側における第1ケース内に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、軟水化濾材と金属イオン封鎖材との間に吸水部材を設けたことにより、イオン交換樹脂から発生する水分が吸水部材によって吸収され、金属イオン封鎖材の溶解を防止できる。このため、この発明においては、水路の狭い部分が溶解された金属イオン封鎖材によって閉塞される事態を未然に防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態の水質調整装置の外ケース11は、有底円筒状をなすステンレス鋼製のケース本体12と、そのケース本体12の上端開口部にパッキン13を介して締付バンド14により着脱可能に取り付けられた同じくステンレス鋼製の蓋体15とから構成されている。
【0018】
前記外ケース11のケース本体12内には第1ケースとしての円筒状をなす合成樹脂製のカートリッジ16が着脱可能に収容されるとともに、そのカートリッジ16の上下両端の天壁及び底壁の部分には内部板16i,16kがそれぞれ固定されている。前記天壁には入口119及び出口120が形成されている。前記内部板16i,16kには通水孔16f,16eが透設され、その通水孔16f,16eと対応して同カートリッジ16の内部の上下両端には不織布等よりなるフィルタ17が配設されている。
【0019】
上部の内部板16iの直下には活性炭18が充填され、その活性炭18の下流側には不織布よりなるフィルタ21が設けられている。下部の内部板16kの直上には吸水部材20として粒状活性炭が充填され、その上流側に不織布よりなるフィルタ21が設けられている。この吸水部材20は、その平均粒度が40〜100メッシュのものが用いられる。そして、その上下のフィルタ21間に軟水化濾材としての粒状をなす多数のイオン交換樹脂19が充填されている。従って、上部のフィルタ17の下流側が軟水化濾材充填部となる。
【0020】
前記カートリッジ16の内底部には、第2ケースとしての円筒状の収容容器30が配設されている。この収容容器30の下壁の中心には円筒状の下部パイプ部30Aが突出され、その下部パイプ部30Aは前記内部板16kの中心の筒状部16bに連結パイプ35を介して接続されている。収容容器30の下壁の中心には容器内の上方に向かって中間パイプ部30B形成されている。この中間パイプ部30Bは前記下部パイプ部30Aと連通するとともに、上端開口が収容容器30の上壁に近接している。収容容器30の上壁の中心には開口30Cが形成され、その開口30Cと連通するように、収容容器30の上壁には上部パイプ部30Dが突出されている。この上部パイプ部30Dは、連結パイプ34を介して前記出口120に連結されている。前記吸水部材20は、イオン交換樹脂19と後述の金属イオン封鎖材33との間に配置されている。
【0021】
前記収容容器30内には、使用初期状態において指先の先端程度の大きさの粒状若しくは塊状で、かつ半透明ガラス状をなす金属イオン封鎖材(この実施形態ではポリリン酸ナトリウム)33が多数収容されている。
【0022】
前記外ケース11の蓋体15には給水口22及び出水口23が配置され、その給水口22内には逆止弁24が配設されている。そして外ケース11のケース本体12内にカートリッジ16を収容した状態で、ケース本体12上に蓋体15を取り付けたとき、これらの給水口22及び出水口23にパッキン13を介して、カートリッジ16上の入口119及び出口120が連結される。前記給水口22には、水道水等の原水を供給するための給水ホース26が止水弁27を介して接続されている。出水口23には、軟化水を吐出するための吐出ホース28が接続されている。
【0023】
そして、給水ホース26から給水口22及び入口119を介してカートリッジ16内に原水が供給される。その原水は、内部板16iの通水孔16f,イオン交換樹脂19の充填部,吸水部材20の充填部,下部の内部板16kの通水孔16e,下部の内部板16kとカートリッジ16の底壁との間の隙間16j,連結パイプ35の部分,中間パイプ部30Bを通り、その中間パイプ部30Bの上端開口から収容容器30内に至る。そして、収容容器30内の水は、開口30C,連結パイプ34,出口120,出水口23及び吐出ホース28を介して外部に送られる。
【0024】
このため、原水は、その原水中に含まれるイオンがイオン交換樹脂19によりイオン交換されて、軟水化される。そして、その軟化水が収容容器30内に流入することにより、その軟化水中に金属イオン封鎖材33が溶出し、このため、後述するようにミネラル分が封鎖されてスケールの生成が抑制されるようになる。
【0025】
前記中間パイプ部30Bの上端には水ガイド60が取付けられている。図2及び図3に示すように、この水ガイド60は、その中心部に円筒部61を備え、この円筒部61において水ガイド60の上端に嵌合される。その円筒部61の内部には同円筒部61の内面と中間パイプ部30Bの上端との間に水が通過する隙間を形成するための複数の突部62が形成されている。円筒部61には等間隔をおいて4箇所にガイド部63が横方向に向かって突出形成されている。このガイド部63は、その内部が円筒部61の内部と連通するとともに、内上部が下方へ向かって円弧状に湾曲している。このため、中間パイプ部30Bの上端から吐出された水が下方へ向かって案内される。そして、案内された水は、水ガイドの外側を通って前記開口30Cに至る。
【0026】
次に、前記のように構成された水質調整装置の作用を説明する。
さて、この水質調整装置において、前述のように、給水口22からの水道水等の原水はカートリッジ16内においてイオンがイオン交換樹脂19の交換反応基とイオン交換して捕捉され、その原水が軟化水される。
【0027】
その後、イオン交換樹脂19中を通過した軟化水が収容容器30内に流入し、中間パイプ部30Bの上端開口から吐出され、水ガイド60のガイド部63から下方の金属イオン封鎖材33内へ向かって噴出される。このため、この噴出によって軟化水中に金属イオン封鎖材33が有効に溶出される。
【0028】
そして、収容容器30内の金属イオン封鎖材33を通過した軟化水は、開口30Cから連結パイプ34、出口120、出水口23及び吐出ホース28を介して外部配管系に供給される。このとき、軟化水中に含まれるミネラル分、主としてカルシウムやマグネシウムがこの金属イオン封鎖材33と反応して封鎖され、リン酸カルシウムやリン酸マグネシウムの一種であるヒドロキシアパタイトが生成されている。この状態で、これらの生成物は軟化水中を浮遊するのみで、スケールになり難いため、イオン交換樹脂19のイオン交換能力が低下して、軟化水中にカルシウムやマグネシウムが残留していても、スケールが発生するのを抑制することができる。また、金属イオン封鎖材33はシリカと反応しやすいマグネシウムを封鎖するため、シリカスケールの形成が抑制される。
【0029】
よって、この軟化水をスチームコンベンションオーブン等の厨房機器に供給して使用すれば、蒸気発生部のスチームジェネレーター伝熱面にスケールが付着したり、水位センサや排水管等にスケールが堆積したりするおそれを抑制することができて、厨房機器を長期にわたって支障なく運転することが可能になる。従って、管理コストを大幅に低減することが可能になる。
【0030】
さて、この実施形態の水質調整装置においては、イオン交換樹脂19の充填部と金属イオン封鎖材33の収容容器30との間に所定量以上の吸水部材20を設けた。このため、水質調整装置の使用前の状態、すなわち倉庫保管等の状態においてイオン交換樹脂19の充填部において水分が生じても、その水分は、吸水部材20によって吸収され、金属イオン封鎖材33の部分に至ることはない。このため、金属イオン封鎖材33が溶解されることを抑制でき、通水路の閉塞を防止できる。
【0031】
従って、この実施形態においては、以下の効果を発揮する。
(1) イオン交換樹脂19内の水分が吸水部材20によって吸着されるため、金属イオン封鎖材33が溶解されることを抑制できる。このため、水質調整装置を倉庫等において長期間保管したとしても、金属イオン封鎖材33によって通水路が詰まることを防止できる。
【0032】
(2) 中間パイプ部30Bの上端開口に水ガイド60が設けられ、その水ガイド60には横方向に突出するガイド部63が設けられている。そして、水質調整装置の使用に際してこのガイド部63から金属イオン封鎖材33に対して軟化水が噴出されるため、金属イオン封鎖材33を有効に溶出できる。
【0033】
(3) 水ガイド60のガイド部63が横方向に広がっているため、水質調整装置の保管状態等において金属イオン封鎖材33が仮に溶解したとしても、ガイド部63全体が塞がれることはほとんどなく、このため、軟化水の流路を確保できる。そして、軟化水の流通により、溶解してガイド部63の部分に付着した金属イオン封鎖材33は、除々に溶出されて、付着状態が解消される。
【実施例】
【0034】
以下に、前記実施形態の実施例について説明する。
この実施例は、図8に示すように、有底円筒状の容器本体501と、その容器本体501の端部開口を塞ぐ透明な蓋502とよりなる多数の被検査体用の容器500を用いた。そして、それぞれ多数の孔504,506を有する仕切板503,505により、容器500内を3分割して、最も広い中央部の区画室500A内にイオン交換樹脂19を収容するともに、一端部の区画室500B内に粒状活性炭よりなる吸水部材20を収容し、あるいは、収容せず、他端部の区画室500C内に金属イオン封鎖材33を収容した。そして、透明な蓋502を介して、金属イオン封鎖材33の溶解度合いを肉眼目視により観察した。その結果が表1〜表3に現れている。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

ここで、表1〜表3に示すように、イオン交換樹脂19の量は、1.8キログラム,0.9キログラム,0.45キログラムの3種類である。
【0038】
そして、イオン交換樹脂19の量が異なるごとに、吸水部材20の量を異ならせた被検査体をそれぞれ11種類用意した。ここで、吸水部材20を構成する粒状活性炭は、その平均粒度が70メッシュである。
【0039】
表1に示すように、イオン硬化樹脂1.8キログラムに対しては、被検査体として、吸水部材20の量が300グラム,270グラム,240グラム,210グラム,180グラム,150グラム,120グラム,90グラム,60グラム,30グラム,0グラムものを用意した。
【0040】
表2に示すように、イオン硬化樹脂0.9キログラムに対しては、被検査体として、吸水部材20の量が200グラム,180グラム,160グラム,140グラム,120グラム,100グラム,80グラム,60グラム,40グラム,20グラム,0グラムものを用意した。
【0041】
表3に示すように、イオン硬化樹脂0.45キログラムに対しては、被検査体として、吸水部材20の量が100グラム,90グラム,80グラム,70グラム,60グラム,50グラム,40グラム,30グラム,20グラム,10グラム,0グラムものを用意した。
【0042】
イオン交換樹脂19の粒径は0.6ミリメートルである。また、イオン交換樹脂19や吸水部材20の量を減らすことによって生じた空隙には、粒径2ミリメートルのガラス玉を充填した。
【0043】
以上のようにした被検査体を横倒しにして、恒温器内に設置した。そして、毎日午前9時〜午後5時の8時間、恒温器の電源を入れて、恒温器内を摂氏35度に維持した。そして、残りの午後5時〜午前9時の16時間は、恒温器の電源を遮断して、外気温に戻した。このようにして、容器500内の湿度を変化させた。そして、これを毎日繰り返し、10日後、20日後、30日後に蓋502を介して金属イオン封鎖材33の状態を目視観察した。表1〜表3において、「○」は、金属イオン封鎖材33に溶解が確認できない状態、「△」は、金属イオン封鎖材33の表面に溶解現象が認められるものの、その状態が維持されて、ゲル状物質の流下が確認できない状態、「×」は、金属イオン封鎖材33の表面が溶解されて、そのゲル状物質が流下されたことが確認された状態をそれぞれ示す。
【0044】
その結果、表1〜表3から明らかなように、10日後において、吸水部材20が120グラム,60グラム及び30グラム以下の被検査体において溶解が認められた。つまり、イオン交換樹脂19に対して吸水部材20が6.67重量パーセント以下となると溶解が始まる。
【0045】
そして、20日後において、吸水部材20が90グラム,40グラム及び20グラム以下の被検査体においてゲル状物質の流下が認められた。つまり、イオン交換樹脂19に対して吸水部材20が5重量パーセント〜4.4重量パーセント以下となると、溶解されたゲル状物質が流下する。
【0046】
従って、イオン交換樹脂19に対して吸水部材20が6.67重量パーセントを越える量だけあれば、金属イオン封鎖材33の溶解を防止でき、5重量パーセント〜4.4重量パーセントを越えるだけあれば、ゲル状物質の流下を防止できる。
【0047】
特に、図8の被検査体は、イオン交換樹脂19を介して金属イオン封鎖材33と吸水部材20とが離間して配置されている。従って、前記実施形態のように、吸水部材20がイオン交換樹脂19と金属イオン封鎖材33との間に配置されていれば、金属イオン封鎖材33の溶解をより確実に防止できる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
この第2実施形態では、図4及び図5に示すように、水ガイド60の直下において、中間パイプ部30Bの外周にガード部材65が固定されている。このガード部材65は、粒状をなすイオン交換樹脂19が水ガイド60の内部に入り込まないようにガードするためのものである。また、このガード部材65は、イオン交換樹脂19の水ガイド60方向への移動を阻止するが、水の流れを阻害しない形状、例えば、図4及び図5のように、スポーク形状や、あるいはネット形状等が実施される。なお、図4においては、理解を容易にするために、スポークの本数を少なく描いたが、実際には、スポークは図示の状態よりも密に形成される。
【0049】
従って、この第2実施形態においては、前記第1実施形態の効果に加えて以下の効果がある。
(4) ガード部材65がイオン交換樹脂19により中間パイプ部30Bの上端開口が塞がれることを防止するため、通路詰まりをいっそう確実に回避できる。
【0050】
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
この第2実施形態では、図6に示すように、吸水部材20は、カートリッジ16の下端部に集積状態で設けられたものではなく、イオン交換樹脂19の粒子間にほぼ均一に混在されている。
【0051】
従って、この第3実施形態においては、以下の効果がある。
(5) 吸水部材20を集積状態で設けるための構成が不要となり、水質調整装置の構成を簡素化できる。
【0052】
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
この第4実施形態では、図7に示すように、収容容器30の周壁下部に開口36が形成され、その開口36を塞ぐように円筒状の吸水部材40を設けたものである。この吸水部材40は、不織布状をなす繊維状活性炭よりなる。
【0053】
吸水部材40の周囲には、第1実施形態と同様に、フィルタ21によって区画された領域に吸水部材20が配置されている。
また、収容容器30の下端が開放されるとともに、中間パイプ部30Bが上部パイプ部30Dに接続されている。
【0054】
そして、この第4実施形態において、イオン交換樹脂19においてイオン交換された軟化水は、吸水部材20の充填部,吸水部材40を経て金属イオン封鎖材33の収容容器30内に至り、同金属イオン封鎖材33を溶解させる。金属イオン封鎖材33を溶出した軟化水は、収容容器30の下端開口からフィルタ17,通水孔16e,隙間16jを通り、中間パイプ部30B,連結パイプ34を通って出口120から外部に供給される。
【0055】
従って、この第4実施形態においては、以下の効果がある。
(6) 収容容器30の一部が吸水部材40を構成するため、イオン交換樹脂19の充填量を増やすことができる。
【0056】
(変形例)
この発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
【0057】
・ 吸水部材20として前記実施形態とは異なる材質のもの、例えば剛性ゼオライト,シリカゲル等を用いること。
・前記各実施形態において、フィルタ17,21として繊維状活性炭を用いて、そのフィルタ17,21にも吸水機能を与えること。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1実施形態の水質調整装置を示す断面図。
【図2】水ガイドを示す下面図。
【図3】図2の3−3線断面図。
【図4】第2実施形態の水質調整装置を示す一部断面図。
【図5】同じく一部側断面図。
【図6】第2実施形態の水質調整装置を示す断面図。
【図7】第3実施形態の水質調整装置を示す断面図。
【図8】実施例の被検査体を示す断面図。
【図9】従来構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0059】
11…収容ケース、16…カートリッジ、19…イオン交換樹脂、20…吸水部材、33…金属イオン封鎖材、40…吸水部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂よりなる軟水化濾材を充填した軟水化濾材充填部の下流側に金属イオン封鎖材を設け、原水を前記軟水化濾材により軟水化させるとともに、軟化水中に金属イオン封鎖材が溶出するように構成した水質調整装置において、
吸水部材を設けたことを特徴とする水質調整装置。
【請求項2】
吸水部材を平均粒度40〜100メッシュの粒状活性炭により構成し、その吸水部材の量を、軟水化濾材に対して5.0重量パーセントを越える量としたことを特徴とする水質調整装置。
【請求項3】
吸水部材の量を、軟水化濾材に対して6.7重量パーセントを越える量としたことを特徴とする請求項2に記載の水質調整装置。
【請求項4】
前記吸水部材は、イオン交換樹脂と金属イオン封鎖材との間の位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の水質調整装置。
【請求項5】
第1ケース内に前記軟水化濾材を充填し、その第1ケース内に第2ケースを設けるとともに、その第2ケース内に金属イオン封鎖材を収容し、前記吸水部材を第2ケースの外側における第1ケース内に設けたことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の水質調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−56400(P2009−56400A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226223(P2007−226223)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(591024719)クリタック株式会社 (14)
【Fターム(参考)】