説明

水路装置及び水流評価方法

【課題】水路を流れる水流を評価することで、平衡所要時間を合理的に評価することができる水路装置及び水流評価方法を提供する。
【解決手段】
水路部1と、水路部1に水を供給するポンプ3と、水路部1を流れる水流を遮るように配置され、水流が通る開口81が形成された複数の仕切り板8と、一対の仕切り板8で仕切られた水路部1の領域を計測ブロック6とし、計測ブロック6の物理条件を計測する計測手段とを備える。また水路部1として複数の計測ブロックが仕切り板を介して連結した構成しても良い。さらに、計測ブロック6を断面が矩形の中空部が形成された筒状体とし、水路部1を閉水路部として構成しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水流を評価するための水路装置および水流評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
旅客船等の船舶の船殻損傷時に損傷側に横傾斜するのを緩和する必要がある。そこで、クロスフラッディング装置で浸水した水を移動させることが行われている(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1では、桁板に浸入水による所定値以上の負荷圧力で破断し開口するラプチャーディスクを用いているが、一般的には、図7に示す水密区画のように、桁板22に開口24を常時形成させている。このように桁板22に開口24を形成することで、船殻損傷時に船底20と床板21と一対の桁板22とによって形成された空間ブロック23に浸入してきた水が、開口24を通して隣の空間ブロック23に移動され、船舶を平衡状態にすることができる。
【0003】
現行のSOLAS条約(海上人命安全条約)では、旅客船安全の観点から、一定時間内に平衡状態にすることが求められているが、合理的に平衡所要時間を評価する事は、技術的には大変難しい。このため、ガイドラインでは模型試験やCFD(計算流体力学)による直接評価も認められているが、具体的な試験装置や試験方法は定められていない。
【0004】
一般の模型試験に関連した水流の試験装置としては、潮流を模擬した安定した均一流を形成することができる試験水槽装置や、傾斜水路の実験が可能な傾斜水路装置とせきによる流量測定が可能なせき水路装置とを備えた水理実験装置が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−305895号公報
【特許文献2】実開平2−2646号公報
【特許文献3】特開平11−230853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
船舶の水密区画は、船舶ごとに空間ブロックを構成する桁板や開口の形状や寸法が異なっている。また、船殻損傷時の浸入水も損傷の程度によって異なる。このため船殻の損傷を模擬した模型試験としては、桁板や開口の形状や寸法、また水流を適宜変更して試験ができ、水の移動時間を評価できる試験装置が望ましい。
しかしながら、特許文献2、3の試験装置は、船舶の空間ブロックを模擬できる試験装置ではないため、水流を評価し、平衡所要時間を合理的に評価することができないという問題点があった。
【0007】
本発明は、斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、水路を流れる水流を評価することで、平衡所要時間を合理的に評価することができる水路装置及び水流評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の請求項1に係る水路装置は、水路と、該水路に水を供給する送水手段と、前記水路を流れる水流を遮るように配置され、水流が通る開口が形成された複数の仕切り板と、前記仕切り板で仕切られた前記水路の領域を計測ブロックとし、当該計測ブロックの物理条件を計測する計測手段とを備えたことを特徴とする。
この発明においては、送水手段、例えば渦巻きポンプやディフューザポンプ等のポンプによって水路に水を供給し、水路を流れる水流を作る。水路には、流れる水流を遮るように、水流が通る開口が形成された仕切り板が複数配置されている。前記仕切り板で仕切られた前記水路の領域を計測ブロックとし、各計測ブロックには、物理条件を計測する計測手段が配置されている。
また、本発明の請求項2に係る水路装置において、前記水路や前記仕切り板の開口の形状・寸法条件を可変に構成したことを特徴とする。
この発明においては、仕切り板の開口の形状・寸法条件として、例えば、開口の形状、数、大きさを変更する。また、水路の開口の形状・寸法条件として、計測ブロックの断面形状、断面積、長さ等を変更する。
また、本発明の請求項3に係る水路装置において、前記水路は、複数の前記計測ブロックが前記仕切り板を介して連結されて形成されていることを特徴とする。
この発明においては、水路が複数の計測ブロックによって構成されている。複数の計測ブロックは、仕切り板を介して連結され、水路が形成される。
また、本発明の請求項4に係る水路装置において、前記計測ブロックは、断面が矩形の中空部が形成された筒状体であり、前記水路は閉水路として構成されていることを特徴とする。
この発明において、計測ブロックの形状は、断面が矩形の中空部が形成された筒状体である。この計測ブロックが仕切り板を介して連結されることで、水路が閉水路として構成されている。
また、本発明の請求項5に係る水路装置において、前記水路の空気を抜く空気抜き手段と、前記水路の水を抜く水抜き手段との両方もしくはいずれか一方が前記計測ブロックに取り付けられていることを特徴とする。
この発明においては、計測ブロックに水路の空気を抜く空気抜き手段である例えば空気抜き栓と水路の水を抜く水抜き手段である例えば水抜き栓との両方もしくはいずれか一方が取り付けられている。
また、本発明の請求項6に係る水路装置において、前記計測手段は、前記物理条件として前記測定ブロックの流速と圧力とを計測することを特徴とする。
この発明においては、物理条件として測定ブロックの流速と圧力とを計測する。流速は例えば超音波式流速計等を用いて計測する。また、圧力は例えば、計測ブロックの側面に取り付けた圧力計によって計測する。
また、本発明の請求項7に係る水路装置において、前記送水手段によって前記水路に供給される水を貯えると共に、前記水路を流れ終わった水が回収される水槽をさらに備えたことを特徴とする。
この発明においては、ポンプ等の送水手段によって水槽から水を汲み上げて水路に供給し、水路を流れ終わった水を水槽に回収する水の循環経路が形成されている。
また、本発明の請求項8に係る水路装置において、前記送水手段によって前記水路に供給する送水量を可変としたことを特徴とする。
この発明においては、吐出量を可変にできるポンプ等の送水手段を採用することで、水路に供給する送水量を可変とする。
また、本発明の請求項9に係る水流評価方法は、請求項1乃至8のいずれかに記載の水路装置における水路を船舶の水密区画を模擬して構成し、水路装置を流れる水流を評価することで、前記船舶において船殻損傷時の水の流れを評価したことを特徴とする。
この発明においては、船舶の水密区画を模擬して構成した水路装置を用いて水流を評価する。この評価結果を用いて船舶において船殻損傷時の水の流れを評価する。
また、本発明の請求項10に係る水流評価方法は、前記物理条件の計測結果から、前記船舶において船殻損傷時の水の移動時間を求めることを特徴とする。
この発明においては、物理条件の計測結果から船舶において船殻損傷時の水の移動時間、例えば、船舶が平衡状態になるまでの平衡所要時間を求める。
また、本発明の請求項11に係る水流評価方法は、求めた水の移動時間を前記船舶の基準に照合し適合性を判断することを特徴とする。
この発明においては、求めた水の移動時間、すなわち船舶が平衡状態になるまでの平衡所要時間を船舶の基準(例えばSOLAS条約等)に照合し適合性を判断する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水路装置は以上のように構成されているので、計測ブロックの物理条件を計測することで水路を流れる水流を仕切り板や計測ブロックの影響を考慮して容易に評価することができる。また、水路や仕切り板の開口の形状・寸法条件を適宜設定することによって、例えば、船舶の水密区画を模擬した水路を簡単に構成することができ、平衡所要時間を合理的に評価することができるという効果を奏する。
なお、複数の計測ブロックが仕切り板を介して連結する構成を採用したときは、例えば、船舶の水密区画における空間ブロックの数に応じた水路を簡単に構成することができるという効果を奏する。
また、計測ブロックを断面が矩形の中空部が形成された筒状体とし、水路を閉水路とした構成を採用したときは、例えば、船舶の水密区画をより正確に模擬した水路を構成することができ、計測ブロック内に空気を介在させた状態で水流を評価することができるという効果を奏する。
さらに、水路の空気を抜く空気抜き手段と、水路の水を抜く水抜き手段との両方もしくはいずれか一方を計測ブロックに取り付ける構成を採用したときは、計測ブロック内の水と空気の割合を調整することができ、様々な条件での水流を評価するとこができるという効果を奏する。
さらにまた、送水手段によって水路に供給される水を貯えると共に、水路を流れ終わった水が回収される水槽をさらに備えた構成を採用したときは、水を循環利用することができるという効果を奏する。
また、計測手段が測定ブロックの流速と圧力とを計測する構成を採用したときは、流速と圧力に基づいて例えば、総圧を計算することで、水の移動に要する平衡所要時間を合理的に評価することができるという効果を奏する。
さらにまた、送水手段によって水路に供給する送水量を可変とした構成を採用したときは、水路を流れる水量を調整することができ、例えば、船殻の損傷程度を考慮した様々な条件での水流を評価するとこができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る水路装置の実施の形態の構成を示す側面図である。
【図2】図1に示す水路部における計測ブロックの構成を示す側面図である。
【図3】図1に示す水路部における計測ブロックの構成を示す分解斜視図である。
【図4】図2に示すA−A’断面摸式図である。
【図5】図2に示すB−B’断面摸式図である。
【図6】図2に示す仕切り板に設けられる開口例を示す図である。
【図7】船底の構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
本実施の形態の水路装置は、図1を参照すると、水流を評価するための水路部1と、水槽2の水を水路部1の一端部に供給するポンプ3とを備えている。水路部1は、足部4によって水槽2(少なくとも水面S)よりも上方に配置され、水槽2から吸水ホース31を介して吸水された水は、吐出ホース32によって水路部1の一端部に供給される。水路部1の一端部に供給された水は、水路部1の他端部から排出され、水路部1の他端部から排出された水は水槽2に戻され回収される。なお、水路部1は水槽2の上方以外に設けても良いが、上方に設けることにより水路部1の組み換えや水抜き等の際に漏れた水を受けることができ、また水路装置の設置スペースも節約できる。
【0012】
水路部1は、受入ブロック5と、複数の計測ブロック6と、排出ブロック7とを備え、受入ブロック5と排出ブロック7とで複数の計測ブロック6を挟むように、各ブロックが一直線に連結されている。これにより、受入ブロック5に供給された水が、複数の計測ブロック6を経由して排出ブロック7から排出される。なお、図1に示す例では、7個の計測ブロック6が接続されている。
【0013】
図2には、上面に空気抜き栓11が取り付けられた計測ブロック6と、上面に流速計12が取り付けられた計測ブロック6とが示されている。図3を参照すると、計測ブロック6は、断面が矩形状の水路部を有する筒部61と、筒部61の両端にそれぞれ設けられた顎部62とで構成されている。筒部61と一対の顎部62は、一体で成型するようにしても良く、筒部61の両端に一対の顎部62を接着等によって取り付けるようにしても良い。筒部61及び顎部62の材質は、水路部の想定される圧力に耐えることできるものであればどのような材質であっても良いが、水路部の様子を目視可能にするために、アクリル等の透明素材であることが望ましい。
【0014】
図3を参照すると、隣り合う計測ブロック6は、互いの顎部62が仕切り板8を介して接続される。計測ブロック6の顎部62と、仕切り板8との間には、顎部62と同形状で、ゴム等の弾性を有する材料で構成された水漏れ防止用の板状シール部材9が介装される。顎部62、仕切り板8及び板状シール部材9には、対向する位置にボルト穴hがそれぞれ形成されており、締結具であるボルトとナットを用いることで、隣り合う計測ブロック6が仕切り板8を介して接続される。なお、本実施の形態では、板状シール部材9によって接続部の水漏れを防止したが、顎部62に溝部を形成させ、シール用部品のOリングを嵌め込むことで水漏れを防止するようにしても良い。
【0015】
受入ブロック5の一端部には、吐出ホース32が接続される受入口が形成されていると共に、他端部には計測ブロック6の顎部62と接続される接続部が形成されている。また、排出ブロック7の一端部には、計測ブロック6の顎部62と接続される接続部が形成されていると共に、他端部には水槽2に向けて水を吐出するための開口部が形成されている。
【0016】
計測ブロック6の筒部61の上面には、空気抜き栓11もしくは流速計12を取り付けるための矩形状の開口63が形成されている。流速計12は、図5を参照すると、水路部中の流速を測定するための計測部12aを水流中に臨ませる必要がある。なお、本実施の形態では、流速計12として超音波式流速計を採用し、4個のセンサが計測部12aとして用いられる。従って、開口63は、流速計12の計測部12aが通過できる大きさに設定されている。従って、空気抜き栓11は図3に示す空気抜き栓取付板64aに、流速計12は流速計取付板64bにそれぞれ取り付けた後、開口63を覆うように、空気抜き栓取付板64aもしくは流速計取付板64bを筒部61の上面に取り付けるように構成されている。空気抜き栓取付板64aもしくは流速計取付板64bと筒部61の上面との間には、開口63が形成され、ゴム等の弾性を有する材料で構成された水漏れ防止用の板状シール部材65が介装される。なお、流速計12として水流中に臨ませないタイプ(例えば、超音波式の壁面タイプ等)を用いても良い。この場合には、空気抜き栓11は、計測ブロック6の筒部61の上面に直接取り付けることができ、空気抜き栓取付板64aを用いる必要がない。従って、空気抜き栓取付板64aの取り付けのためのボルトを廃することができ、図4及び図5に示すボルトの水路中への突出をなくすこともできる。
【0017】
図3を参照すると、空気抜き栓取付板64aには、空気抜き栓取付穴66aが形成されている。空気抜き栓取付穴66aには雌ねじが、空気抜き栓11には雄ねじがそれぞれ形成されており、空気抜き栓取付穴66aに空気抜き栓11を、シールテープ等を巻いてねじ込むことで、空気抜き栓11が空気抜き栓取付板64aに取り付けられる。このように、計測ブロック6の筒部61の上面に空気抜き栓11を取り付けることで、空気抜き栓11のコックを解放すると水路部中の空気を簡単に抜くことができる。
【0018】
流速計取付板64bのほぼ中央には、流速計取付穴66bが形成されている。なお、流速計取付板64bと空気抜き栓取付板64aとは、空気抜き栓取付穴66aと流速計取付穴66bとの形状以外は同一形状になっている。流速計取付穴66bには雌ねじが、流速計12には雄ねじがそれぞれ形成されており、流速計取付穴66bに流速計12を、シールテープ等を巻いてねじ込むことで、流速計12が流速計取付板64bに取り付けられる。
【0019】
流速計取付板64bと空気抜き栓取付板64aとが、空気抜き栓取付穴66aと流速計取付穴66bとの形状以外は同一形状になっているため、空気抜き栓11と流速計12との付け替えを容易に行うことができる。なお。本実施の形態では、計測ブロック6の筒部61の上面に空気抜き栓11と流速計12とのいずれかを取り付けるように構成したが、空気抜き栓11と流速計12との両方を取り付けるようにしても良い。なお、空気抜き栓11は、計測ブロック6の側面の最上部に横向きに取り付けても良い。また、空気抜き栓11は、フロート式の自動空気抜き弁や安全弁を兼ねた空気抜き弁、空気量を検出するセンサと自動弁を組み合わせたもの等であってもよい。
【0020】
図4及び図5を参照すると、計測ブロック6の筒部61の下面のほぼ中央には、水抜き栓10を取り付けるための水抜き栓取付穴68が形成されている。水抜き栓取付穴68には雌ねじが、水抜き栓10には雄ねじがそれぞれ形成されており、水抜き栓取付穴68に水抜き栓10を、シールテープ等を巻いてねじ込むことで、水抜き栓10が計測ブロック6の筒部61の下面に取り付けられる。このように、計測ブロック6の筒部61の下面に水抜き栓10を取り付けることで、水抜き栓10のコックを解放すると水路部中の空気を簡単に抜くことができる。なお、水抜き栓10は、計測ブロック6の側面の最下部に横向きに取り付けても良い。また、水抜き栓10は、各種の弁、水抜き弁を兼ねた安全弁、水位レベルを検出する水位センサと自動弁を兼ねたもの等であってもよい。
【0021】
計測ブロック6の筒部61の左右側面のほぼ中央には、圧力センサ13を取り付けるための圧力センサ取付穴67がそれぞれ形成されている。圧力センサ取付穴67には雌ねじが、圧力センサ13には雄ねじがそれぞれ形成されており、圧力センサ取付穴67に圧力センサ13を、シールテープ等を巻いてねじ込むことで、圧力センサ13が計測ブロック6の筒部61の左右側面にそれぞれ取り付けられる。なお、圧力センサ13は計測ブロック6の筒部61の左右側面のどちらか一方に1つ取り付ける方式であってもよい。
【0022】
図3を参照すると、隣り合う計測ブロック6を仕切る仕切り板8には、開口81が形成されている。従って、計測ブロック6には一方端に位置する開口81を通って水が流れ込み、計測ブロック6から他方端に位置する開口81を通って水が流れ出すことになる。従って、計測ブロック6を図7に示す空間ブロック23に、仕切り板8を桁板22に、仕切り板8に形成された開口81を桁板22に形成された開口24にそれぞれ見立てて計測を行うことで、水流の評価を行うことができる。図6には、異なる開口81a〜81dがそれぞれ形成された仕切り板8a〜8dが示されている。このように開口81a〜81dの形状・寸法条件を可変、すなわち開口81a〜81dの形状、数、大きさを変更することで、多様な条件での水流の評価を行うことができる。また、計測ブロック6の形状・寸法条件、例えば計測ブロック6の断面形状、断面積、長さ等を可変にしても良い。計測ブロック6の形状・寸法条件を可変にすることで、計測ブロック6の体積や仕切り板8のピッチを調整することができるため、船舶の水密区画を模擬した水路部1を簡単に構成することができる。さらに、計測ブロック6や仕切り板8は、同一の形状・寸法条件のものを用いることなく、異なる形状・寸法条件の計測ブロック6や仕切り板8を複数用意しておき、それらを組み合わせて水路部1を形成するようにしても良い。計測ブロック6の形状・寸法条件を固定し、強度設計上、桁板の形状・寸法条件を各種変更して水流を評価するような場合は、仕切り板8のみを変更することで評価試験が可能である。計測ブロック6の形状・寸法条件や仕切り板8の形状・寸法条件は、異なるものの組み合わせも可能である。また、船殻損傷時に損傷側に横傾斜することを模擬し、水路部1を傾けて試験することも可能である。なお、計測ブロック6や仕切り板8の形状・寸法条件とは、断面を含む形状や面積及び/又は長さや断面各部等の寸法を指すものである。
【0023】
ポンプ3は、渦巻きポンプやディフューザポンプ等のどのようなタイプのものを用いても良いが、駆動する電動機等の回転数制御によりポンプ3の吐出量を調整することができるタイプのものが望ましい。ポンプ3の吐出量を調整することで、さらに多様な条件での水流の評価を行うことができる。
【0024】
なお、本実施の形態では、隣り合う計測ブロック6を仕切るように仕切り板8を設けるように構成したが、計測ブロック6の途中に仕切り板8を配置させ、計測ブロック6を仕切り板8で仕切るように構成しても良い。例えば、計測ブロック6に仕切り板8を差し込むための差し込む口や溝等の差し込み機構を設けることで、計測ブロック6の途中に仕切り板8を配置させることができる。また、仕切り板8を差し込むための溝は、複数設けても良い。さらに、仕切り板8を差し込まない差し込む口を覆って防水するカバー部材を用意すると、仕切り板8の配置の有無を必要に応じて選択することができ、好適である。
【0025】
次に、本実施の形態の水路装置を用いた水流評価方法について説明する。
まず、船舶の水密区画を模擬した水路部1を構成する。具体的には、シミュレーションする船舶の幅方向に配置された空間ブロック23の数に対応する計測ブロック6、あるいは船殻損傷時の評価対象となる数の計測ブロック6を用意すると共に、桁板22に形成された開口24に対応する開口81が形成された仕切り板8を用意する。
次に、それぞれ仕切り板8を介して複数の計測ブロック6を連結すると共に、受入ブロック5と排出ブロック7とで複数の計測ブロック6を挟むように、各ブロックが一直線に連結された水路部1を形成する。
次に、受入ブロック5に吐出ホース32を接続し、水路部1を足部4によって水槽2(少なくとも水面S)よりも上方に配置させ、ポンプ3によって水路部1に水を流し、各計測ブロック6における流速と圧力とを測定する。なお、図1に示すように、1つの計測ブロック6のみに流速計12を取り付けて流速を測定するようにしても良く、複数もしくは全部の計測ブロック6に流速計12を取り付けて流速を測定するようにしても良い。特に、各計測ブロック6の断面積が等しい場合は、1つの計測ブロック6のみに流速計12を取り付けて流速を測定することができる。
次に、測定した各計測ブロック6における流速と圧力に基づいて総圧を計算することで、平衡所要時間を合理的に評価する。そして、求めた水の移動時間を例えば、SOLAS条約等の船舶の基準に照合し適合性を判断する。
【0026】
なお、本実施の形態では、断面が矩形の中空部が形成された筒状体で計測ブロック6が
構成されているため、水路部1は閉水路となっている。従って、水路部1を水で満たした状態での試験のみでなく、水路部1に水と空気とを介在させた状態(気液二相流)での試験も行うことができる。この場合、各計測ブロック6の水抜き栓10で水を抜き、計測ブロック毎の空気量を調整する。また、空気量に応じて、流速計12の位置や方式、圧力センサ13の位置や方式も適宜選択され得る。また、水路部1は用途により開放水路とすることも可能であり、水は水槽2に戻さずに排出することもできる。
【0027】
以上のように本実施の形態では、水路部1と、水路部1に水を供給するポンプ3と、水路部1を流れる水流を遮るように配置され、水流が通る開口81が形成された複数の仕切り板8と、一対の仕切り板8で仕切られた水路部1の領域を計測ブロック6とし、計測ブロック6の物理条件を計測する計測手段とを備えることにより、計測ブロック6の物理条件を計測することで水路部1を流れる水流を容易に評価することができる。また、仕切り板8の開口81を形状や大きさを適宜設定することによって、船舶の水密区画を模擬した水路部1を簡単に構成することができ、平衡所要時間を合理的に評価することができるという効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
上記の水路装置は、上記の通り、船舶の水密区画を模擬した水路を構成したものを想定したが、船舶の水密区画のみでなく、各種水路を模擬した水路を構成することで、水流を簡単に評価することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 水路部(水路)
2 水槽
3 ポンプ(送水手段)
6 計測ブロック
8 仕切り板
10 水気抜き栓(水気抜き手段)
11 空気抜き栓(空気抜き手段)
12 流速計(計測手段)
13 圧力センサ(計測手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水路と、該水路に水を供給する送水手段と、前記水路を流れる水流を遮るように配置され、水流が通る開口が形成された複数の仕切り板と、前記仕切り板で仕切られた前記水路の領域を計測ブロックとし、当該計測ブロックの物理条件を計測する計測手段とを備えたことを特徴とする水路装置。
【請求項2】
前記水路や前記仕切り板の開口の形状・寸法条件を可変に構成したことを特徴とする請求項1記載の水路装置。
【請求項3】
前記水路は、複数の前記計測ブロックが前記仕切り板を介して連結されて形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の水路装置。
【請求項4】
前記計測ブロックは、断面が矩形の中空部が形成された筒状体であり、前記水路は閉水路として構成されていることを特徴とする請求項3記載の水路装置。
【請求項5】
前記水路の空気を抜く空気抜き手段と、前記水路の水を抜く水抜き手段との両方もしくはいずれか一方が前記計測ブロックに取り付けられていることを特徴とする請求項4記載の水路装置。
【請求項6】
前記計測手段は、前記物理条件として前記測定ブロックの流速と圧力とを計測することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の水路装置。
【請求項7】
前記送水手段によって前記水路に供給される水を貯えると共に、前記水路を流れ終わった水が回収される水槽をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の水路装置。
【請求項8】
前記送水手段によって前記水路に供給する送水量を可変としたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の水路装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の水路装置における水路を船舶の水密区画を模擬して構成し、水路装置を流れる水流を評価することで、前記船舶において船殻損傷時の水の流れを評価したことを特徴とする水流評価方法。
【請求項10】
前記物理条件の計測結果から、前記船舶において船殻損傷時の水の移動時間を求めることを特徴とする請求項9記載の水流評価方法。
【請求項11】
求めた水の移動時間を前記船舶の基準に照合し適合性を判断することを特徴とする請求項10記載の水流評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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