水輸送及び加熱能力を有する繊維製品
第1及び第2の導電層12a、12bと、前記第1及び第2の導電層の間に位置する少なくとも1つの多孔質層14とを備えた繊維製品10であって、前記多孔質層14のポアは前記第1及び第2の導電層12a、12bに対して実質的に垂直方向に延びており、前記第1及び第2の導電層12a、12bは電気信号発生器15に接続され、使用中において、前記多孔質層14を横切る電圧が印加されて、前記繊維製品10を横切る液体の流れをもたらし、また、前記第1及び第2の導電層12a、12bの少なくとも1つに沿って電圧が印加されて、前記前記繊維製品10の加熱をもたらすように構成された繊維製品である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の応用分野において使用するための、水輸送性及び加熱能力の両方を有する繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特に肉体労働などの肉体的に活動している時間においては、人体は汗を発散し、これは理想的には体の温度を適切に制御するために皮膚から離れるように輸送される。もし蒸発ができないなら、能力上の大幅な損失が生じ、ひどい場合には異常高熱を引き起こし得る。スポーツをする者及び消防士は、このことが重要に関連しているグループに入る。多くの繊維製品、特に保護及び防水繊維製品は、湿気の輸送能力に乏しく、中程度の発汗速度においてさえ効果的な輸送を提供してはいない。加熱の危険性に加えて、濡れた布地は乾燥した布地の数倍速く熱を伝えるので、過冷却の危険性も存在する。汗が体の近傍に留まると、熱もまた蒸発により失われ、このプロセスに必要な熱は人体から奪われる。
【0003】
最近の衣類、特に発汗に曝されることが予期されるものは、数層の布地からなり(積層体)、これにより、適度な液体輸送能力とともに確実な断熱材を備えるように試みられている。例えば、ウールの内層は、ウールの繊維が高い液体輸送能力を有する幾つかの繊維の一つなので、人体に接する位置に存在し得る。従って、この層は湿気を衣服の外側層に輸送するように作用し、そこでは人体というより外側の環境からの熱の助けにより蒸発が起こる。
【0004】
より一般的には、湿気のコントロールは、雨、汗、プロセス水、地下水などの凝集した形態の水に接している全てのものについての潜在的な問題を表している。例えば、ビルディング、公共交通機関及び輸送容器の全ては、湿気をコントロールすることが必要となっている。
【0005】
欧州公開特許公報EP0993328号は、繊維製品における液体輸送の方法を開示し、そこでは、繊維を介して液体を所望の方向へ輸送する電気浸透の現象が利用されている。
【0006】
多孔質層として作用する一切れの布が2つの導電層に挟まれている。これらの層は導電性又は半導体材料からなり、織物中に織られるか又は積層されている。導電層は、一連の単方向性のパルスを伝送し、異極性のパルスによって中断されるように構成された電気パルス発信器に接続されている。このパルスは、繊維製品内の流体の人体から衣料の外側に向かう電気浸透移動を誘導する。
【0007】
電気浸透の現象は公知であり、多くの異なる分野で利用されている。それは、印加電界の影響の下における多孔質構造を介する極性の液体の移動に関係している。ほとんどの表面は、表面イオン化により負電荷を有している。イオン性の流体が表面に接して位置しているとき、この負電荷を遮蔽し電荷バランスを保つために、カチオンの層が表面近傍に積層される。これは電気二重層(EDL)を生成する。電界が印加されるとき、EDLにおけるイオンは、粘性力によりそれらとともに周囲の媒体を引きずり、正に帯電した電極に引きつけられる。これは負に帯電した電極に向かう流体の移動を引き起こす。
【0008】
この電気浸透の形成は、古典的又は通常の電気浸透(EO1)として知られ、方向性の液体輸送を得るために、通常、直流電界成分の存在が必要である。これは、ガスの発生やポアの軸に沿ったポアの濃度分布の形成などの幾つかの悪影響をもたらし、これはシステムの好率を低下させ、そのシステムの信頼性を低下させる得る。これらの悪影響は、根絶されないけれども、パルス電流を使用することにより減少させることができる。
【0009】
国際公開公報WO2004/07045号は、第2の種類の電気浸透を使用した繊維材料を介する液体輸送のシステムを開示し、第2の又は高速電気浸透(EO2)として言及される。
【0010】
古典的な電気浸透に対して、第2の種類の電気浸透は、EDLにおけるこれらのイオンではなく、表面に関連する空間電荷領域(SCR)内のイオンに作用する。EO2による輸送は、同じ電界強度では古典的電気浸透より10〜100倍速い。従って、液体の速い輸送は、比較的低いポテンシャルで達成される。加えて、EO2の使用により得られる速度は、主たる電界強度に対して非線型である。従って、プロセスを進行させるのにAC(交流)が使用され得、上記ガス発生及び電気浸透の影響の悪化の問題を避けることができる。しかしながら、高速電気浸透が得られるようにSCRを生成するために、多孔質層は、孔構造及び滑らかさに関する特定の性質を有する導電手段を備えていなければならない。この付加的な考察は、繊維製品の製造コストを増大させる。
【0011】
従って、繊維製品及び他の多孔質材料を介する流体輸送のための種々のタイプの電気浸透を使用することが知られている。これは、例えばテントやビルディングにおける湿度条件のコントロールと同様に、人体から出る直接の発汗に使用され得る。
【0012】
しかしながら、汗及び他の液体の蒸散は、まだ周囲からの熱に依存している。低温の条件では、従って蒸発が生じず、繊維を水浸しにし又は水で飽和した状態になるようにしてしまう。
【0013】
より一般的には、衣類の殆どの項目が着用者にとって十分な快適性を提供し得る限定された温度範囲があまねく存在する。温度の減少は、着用者を暖かい状態に維持するたに使用されている衣服の追加の項目をもたらすであろう。テントやビルディングでは、断熱材が寒冷気候から居住者を護るために使用され得るが、これはまた暑い気候を保持し従って過熱状態を保持することになる。従って、快適な温度範囲は、ビルディングを断熱することによっては広げられず、移動するだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州公開特許公報EP0993328号
【特許文献2】国際公開公報WO2004/07045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の一実施形態によれば、第1及び第2の導電層と、前記第1及び第2の導電層の間に位置する多孔質層であって該多孔質層のポアが前記導電層に対して実質的に垂直な方向に延伸している少なくとも1つの多孔質層と、を備えた繊維製品であって、前記導電層は、電気信号発生器に接続されて、使用中において、電圧が前記多孔質層を横切って印加され前記繊維製品を横切る液体の指向性の流れをもたらし、電圧が前記導電層の少なくとも1つに沿っても印加されて前記繊維製品の加熱をもたらすようにされることを特徴とする繊維製品が提供される。
【0016】
従って、本発明は、加熱機能を備えることができるようなシステムの構成を採用することにより、水輸送技術の改良を提供する。
【0017】
「実質的に垂直」という用語は、多孔質層のポアが、導電層の間を輸送される指向した液体のパスを形成するように、第1及び第2の導電層から延びていることを意味している。換言すれば、ポアの軸が導電層の平面から十分な量オフセットしており、使用において、電気浸透の作用の下で、一方の導電層から他方の導電層へ液体が流れるのを可能とすることをいう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
電気浸透による液体輸送のための繊維製品を作る場合、多孔質層が2つの導電層の間に配置される。使用においては、電気浸透、即ち古典的電気浸透又は第2の種類の電気浸透により流体の輸送を誘導するために、電圧が多孔質層を横切って(即ち、第1の導電層から第2の導電層へ、又は第2の導電か第1の導電層へ)印加されなければならない。しかしながら、本発明の発明者らは、この機能に加えて、僅かな変更により、同じ装置が更に繊維の加熱に使用され得ることを実現した。これは、少なくとも1つの導電層を、この層の長さ方向に沿って電流が流れるように信号発生器に接続することにより達成される。これは、導電層の加熱と周囲の繊維の加温をもたらす。
【0019】
繊維製品のこの機能は、単独でユーザに追加のぬくもりを提供すること、及び液体輸送機能との組合せにおいてその輸送された液体への加熱源を提供することの両方により、利点を提供する。この利点は、繊維製品への最小限の変更により提供され、追加の層又は繊維製品内に装置を備える必要はない。従って、本発明は、大きなコスト又は複雑さなしに加熱の利点を得ることを可能とする。
【0020】
本発明は、材料の多くのタイプの使用を対象としている。「繊維製品」という用語は、織布、ニット、フェルト、例えば、織物、ジオテキスタイル、防水布などの繊維状材料等の全てを対象としている。
【0021】
第1又は第2の導電層の何れか又は両方の加熱をもたらすために、信号発生器が導電層に接続される。
【0022】
少なくとも1つの導電層の加熱をもたらすために、これは電気信号発生器に少なくとも2点で接続されて電流が導電層に沿って流れる必要がある。好ましくは、導電層は、電気的接点により信号発生器に接続される。これらの接点は、これらの層又は多孔質層を貫通するリスク無しに導電層に電気的に接続されるように導き得る導電層から除外される領域を提供する。
【0023】
電気的接点は、好ましくは導電層に取り付けられたプラグを有している。これらのプラグは、次に電気信号発生器に接続されたリード線に接続されている。これに代えて、導電層それ自身の部分がその接点を形成するために使用され得、これらの部分は、導電層の境界を越えて延び、これにより接点領域が物理的に除去される。このような実施形態では、導電層のこれらの部分が信号発生器へのリード線を形成することも可能であり、例えば、導電層内部からのワイヤがこれを超えて信号発生器に接続される。
【0024】
一実施形態では、各導電層は、第1の電気的接点を有し及び少なくとも1つの導電層が追加的な電気的接点を更に有している。第1の電気的接点は、使用中において、多孔質層を横切る電圧を印加するように電気信号発生器に接続され、追加的な電気的接点は、使用中において、前記少なくとも1つの導電層に沿って電圧が印加されて繊維製品の加熱をもたらすように、関連する第1の電気的接点との動作のために電気信号発生器に接続される。「関連する第1の電気的接点」とは、前記第1の接点が追加的な接点と同じ導電層に接続されていることを表している。
【0025】
本発明の他の実施形態においては、第1及び第2の導電層と、前記第1及び第2の導電層の間に位置する多孔質層であって該多孔質層のポアが前記導電層に対して実質的に垂直な方向に延伸している少なくとも1つの多孔質層と、使用中において電圧が前記多孔質層を横切って印加されて前記繊維製品を横切る液体の指向性の流れをもたらすように、電気信号発生器への接続のために前記導電層に設けられた電気的接点と、使用中において電圧が前記多孔質層に沿っても印加されて前記繊維製品の加熱をもたらすように、電気信号発生器への接続のために前記少なくとも1つの導電層に設けられた追加的な接点とを備えた繊維製品が提供される。
【0026】
ただ一つの追加的接点が必須であるが、2つの追加的接点が前記少なくとも1つの導電層に設けられていることが好ましい。これは、これらの接点及び電気浸透効果の発生に使用されるものの両方が、個々の機能のために適性に配置されるようにするためである。
【0027】
追加的接点は、第1及び第2の導電層の両方に配置されることができる。これは、繊維製品の加熱能力を増大させ、その多用途性も増大し、即ち、何れかの導電層が個別に熱の生成に使用され得る。このことは、例えば、繊維製品が液体を双方向に輸送する必要のあるリバーシブルの衣服に使用される場合には有用である。繊維の両側の加熱能力を有するこのような環境においては、水輸送の方向に係わらず輸送される水が導電層によってその蒸発を助けられるということが確実に行われる。他の実施形態では、着用者に最も近い導電層が着用者を暖めるように熱を提供し、一方、着用者から最も遠い導電層は、蒸発において手助けするために熱が必要とされるときに機能し得る。両層は、必要なら熱を生成するために協調して動作し得る。例えば、これは車の座席に座っている人を加温する3つのレベルを与えるのに使用され得る。第1に、低温設定、これはユーザから最も遠い導電層が熱の生成に使用される。第2に、高温設定、ここではユーザに最も近い導電層が加熱される。最後に、両方の導電層が熱の生成に使用される最高温度設定である。
【0028】
幾つかの実施形態では、一以上の電気的接点が、繊維製品内で液体輸送をもたらすために各導電層に使用される。これは、繊維製品の大きな面積が液体輸送に使用される場合、又は導電層が低電導度を有する場合、繊維製品を介する均一な電流の分布を達成するために必要とされ得る。このような実施形態では、追加的な電気的接点が液体輸送をもたらすのを助けるために配置され得る。これに代えて、又はこれに加えて、複数の電気的接点が、単に液体輸送に使用するために各導電層に設けられ得る。
【0029】
電気信号発生器を有する繊維製品と繊維製品とは分離した電源とを使用することは、例えばビルディングのように繊維が永久的な構造に使用されるときに可能である。しかし、好ましくは、本発明の第2の実施形態に関連して、繊維製品は、前記接点により前記導電層に接続され、液体輸送及び加熱のために前記導電層に電圧を供給するように構成された電気信号発生器を更に有している。好ましくは、第1の実施形態に関連して、電気信号発生器が前記繊維製品内に配置されている。このことは、発生器と接点との間の接続を移動時に解除し及び再接続する必要がないので、繊維製品の携帯性及び使用のし易さを向上させる。幾つかの実施形態では、信号発生器を水輸送信号と加熱信号とを発生させるために使用される別々の信号発生器を使用することも可能である。
【0030】
本発明の繊維製品は、信号発生器に接続された、電池又は太陽電池パネルのような電源を有していることが好ましい。
【0031】
信号発生器は、導電層に2つのタイプの信号を送出するように構成されるのが典型的である。第1に、液体輸送信号、これは多孔質層を横切って水を輸送するように供給され、第2には、加熱信号、これは一つ又はそれ以上の導電層に沿って加熱のために供給される。液体輸送信号及び加熱信号は、両方とも、動作条件及び繊維製品の所望の効果に従って、例えば、タイミング、強度、周波数などにおいて異なり得る。
【0032】
繊維製品は電気信号発生器の制御のための制御手段を更に有していることが好ましい。このような制御手段を使用することにより、信号発生器は、自動的、手動により、又はその両方により、これらの信号を任意の数の連なりとして送るように制御され得る。
【0033】
多くの実施形態では、信号発生器及び制御手段は、一体的に又は単独の装置として提供される。更に、電源がこの装置に組み込まれる。
【0034】
特に好ましい実施形態では、繊維製品は、温度若しくは湿度センサ、心拍数などの身体的機能をモニタする生理的センサなど、環境条件に関する情報を提供し得るセンサを更に備えることができる。圧力計、電気的(電流、伝導率、電気容量、インピーダンスなど)センサのような他のセンサも使用され得る。これらの全てのセンサは、繊維製品の動作条件に関する情報を提供する。これらのセンサからの情報は制御手段に送られ、この制御手段は、この情報に基づいて、水輸送及び繊維製品の加熱をもたらすように電気信号発生器を制御するように構成されていることが好ましい。
【0035】
例えば、もしセンサが心拍数が高いことを検出すると、導電層は、汗が着用者の身体から確実に除かれるように誘導するように動作する。もし、多孔質層を介して輸送された汗が十分な速度で蒸発しないなら、そして過剰な湿気が繊維内に検出されたなら、制御手段は加熱期間を含めて繊維製品の動作を調整することができる。あるいは、ユーザの心拍数が通常のレベルに戻ると、加熱期間が入力される。このように、加熱は、活動期間の間の着用者の妨げとならないが、ユーザが汗の冷却の影響によって殆ど不快になるであろう後の時点でのみ現れる。輸送された汗を加熱前に保持するために、吸収層が使用され得る。センサは、もし外部の温度が予め決められた又はユーザが決めた温度よりも低くなったら、制御手段によって加熱が行われるように、外部の気温も検出し得る。
【0036】
多孔質層(及び導電層)は、水を輸送することができなければならないが、マクロポーラス材料を有する必要はない。これに代えて、「多孔質」は、0.1〜1000ナノメータのポアサイズを有する所謂ナノポーラス材料、1〜1000マイクロメータのポアサイズを有する所謂マイクロポーラス材料も、数mm(例えば3mm)までのポアサイズを有する材料と同様に含んでいると理解すべきである。重要な特徴は、液体(典型的には水、しかしアルコールのような他の液体も含む)を通過させるのに十分な大きさを有するボイド(ポア)の存在である。ポアサイズは、例えば、流速、ポンピングの圧力、大きな分子の輸送能力など、繊維製品の所望の液体輸送能力に依存して決定され得る。多孔質層の形成に使用し得るナノポーラス材料の一つの例は、Nafionのようなイオン交換膜であり、これは10nmより小さいポアサイズを有している。逆浸透膜は0.1nmという小さいポアサイズを有し得るが、種々のろ過膜がnmの範囲から数マイクロメータまでのポアサイズを有し得る。
【0037】
導電層は、導電性インクなどにより形成され得、スプレーコーティング又は導電性プリントの手段により繊維製品上にコートされる。しかし、導電層は、3〜100重量%の間の金属含有量の金属繊維の織布であることが好ましい。より好ましいのは、15〜100重量%の間の金属含有量である。従って、導電層は繊維製品それ自身の一部を形成している。導電層としての使用に好ましい材料は、スティール、インコネル合金及びチタニウムである。後者の2つは、耐腐食性のものとして特に好ましい。
【0038】
導電層を構成し得る他の材料は、炭素繊維、金属グリッド、織った又は不織の多孔質膜、炭素又は金属充填ポリマーからなる他の構造、及び化学的にドープしたポリアニリンのような本来的に導電性のポリマーである。
【0039】
使用中において繊維製品の加熱をもたらす一つ又はそれ以上の導電層は、この機能のない導電層より金属含有量が高いことが好ましい。繊維製品の加熱に用いられる導電層の典型的な金属含有量は、50〜100重量%の間である。あるいは、追加的に縫い込んだ金属構造が、少なくとも一つの導電層に接して配置される。これは導電性を高め、電流を均一に分散させるのに役に立つ。
【0040】
導電層は銀の糸を含んでいることが好ましい。導電性の増大と同様に、これは繊維製品に抗菌性能を提供する。
【0041】
繊維製品に必要とされる3つの層に加えて、これらの層の間又は外側に追加の多孔質層を含ませることがしばしば好ましい。
【0042】
例えば、一つ又はそれ以上の吸収層が繊維製品に含まれ得る。これは、空気から湿気を集めるため、又は多孔質層を通過する水をその蒸発に先だって集めるのに使用される。このような層は、多孔質層と導電層との間、又はその導電層とは反対側(多孔質層に向かい合って)に配置されることができる。
【0043】
幾つかの実施形態では、保護層が多孔質層の少なくとも一方の側に含まれ得る。これは、多孔質層から導電層の反対側に、又は導電層と多孔質層との間に、多孔質層をブロックする例えば塩のような望ましくない物質を排除するために配される。多孔質層のどちら側に保護層が配置されるかは、繊維製品が機能するように構成されている液体輸送の方向に依存しており、液体輸送が何れの方向にも見られる実施形態では、保護層は多孔質層の両方の側に含まれ得る。
【0044】
加えて、多孔質ポリマーグリッド、繊維製品、不織布、膜のような電気絶縁層は、多孔質層及び第1及び/若しくは第2の導電層の間に導入されるのが好ましい。
【0045】
繊維製品の層は、好ましくはウエブラミネーション、ポイントラミネーション又はスプレーラミネーションを使用して互いに積層され得る。このような実施形態では、積層に使用される接着剤は、その厚さに依存して多孔質層と導電層との間の電気絶縁層として機能し得る。このことは、製造されるべき及び繊維製品に導入されるべき追加の層に対する必要性を省く。また、層を積層することは、流路を短く保つことと、導電層の間の距離を短くすることを可能として、流体の輸送を高める。
【0046】
本発明は、多孔質層の構造と、使用中の電気信号発生器によって印加される信号とに依存する電気浸透の全てのタイプを介して液体輸送を提供するのに使用され得る。しかしながら、古典的又は第1の電気浸透が特に好ましい。例えば、欧州特許公開EP0993328号及び国際公開公報WO2004/07045号に開示されている両方の装置は、単に導電層への追加の接続の配置と印加する信号の変化とによって、本発明の加熱機能を含むように構成されている。繊維又は繊維製品の成分の調整は不要である。
【0047】
一実施形態では、多孔質層は古典的電気浸透を介して液体輸送を提供するように構成される。このような実施形態では、多孔質層に関しては特別な条件は必要ではなく、このことは繊維製品材料の層を単純な構成とする。一般に、その材料の平均ポアサイズは、3mmより小さく、好ましくは0.1mmより小さい。
【0048】
好ましい実施形態では、多孔質層は疎水性ポリマーからなる多孔質膜である。これは、液体輸送に著しく寄与しない膜マトリックスの濡れの出現を防止する。また、このタイプの膜は、ポア内の水が液体輸送によって除かれた後に水を保持しないという利点を有している。
【0049】
好ましい疎水性膜材料は、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、又はより好ましくはポリエチレンのようなポリマー材料から選択される。疎水性膜は、(製造に際して)親水化表面処理(hydrophilising surface treatment)されていることが好ましい。例えば、この処理により、スルホン酸基又は中性の基をポア表面に導入することができる。
【0050】
好ましくは、平均のポアサイズは0.03〜10μm、より好ましくは0.1〜1μmである。繊維製品を介する大きな流速と定圧のポンピングが望まれるとき、小さいポアサイズは得られる液体輸送の小さな体積によるエネルギー消耗を意味するので、ポアサイズはこれより小さいことが好ましい。
【0051】
このような膜の性質は、強い水輸送の能力を生じ、織物の有用性を増大させる。例えば、0.1〜1μmのポアサイズを有する膜は、典型的には、10Vより低い電圧を使用して、1平方メートル・1時間当たり数リットルの水を輸送する。
【0052】
しかしながら、例えば小さな流速で高いポンピング圧が望まれるとき、小さなポアサイズが有益な幾つかの実施形態が存在する。
【0053】
あるいは、膜は、好ましくはスルホン酸のイオン化可能な基(sulfonic acid ionogenic groups)を有する多孔質イオン交換膜であってもよい。これは親水性の表面を提供し、従ってEDLの積層を促進するという利点を有している。
【0054】
これに代わる実施形態では、多孔質層は、第2の種類の電気浸透を介して水輸送を提供するように構成される。
【0055】
このような実施形態では、多孔質層は、接線及び法線の両方の電場成分を生成するような形状の導電手段を有していることが必要である。これを達成する最も一般的な方法は、多孔質層が彎曲した又は導電層の表面に対して傾斜した孔壁を有する導電手段を有していることである。加えて、導電手段の表面は滑らかである、即ち、5%dcharより大きい不規則度であるべきであり、ここでdcharは、導電層の面に垂直に測定した導電手段の面積である。これは方向性のある液体輸送の出現を確実にする。
【0056】
導電手段の導電媒体は、イオン、電子又は正孔によって電導され、導体又は半導体であり得る。導電媒体はマイクロポーラスであり得るけれど、これは液体輸送の減少を招き、従ってノンマイクロポーラスであることが好ましい。良好な結果は、選択透過性イオン伝導体の使用により得られる。導電媒体はそれ自身ノンマイクロポーラスであることが好ましいが、それはマイクロポーラス構造の固体マトリックス(又はその一部分)を構成し得る。
【0057】
導電手段はイオン交換膜であることが好ましいが、他のタイプの導電性膜も採用することができる。導電手段の各サイドには、導電層と多孔質層の導電手段との間の直接接触を避けるために、非導電層が積層されていることが好ましい。これは、コーティング又は他の膜製造技術によって達成される。あるいは、非導電層は、例えばある程度の深さまで非導電性にする導電性膜への化学的又はプラズマ処理のような幾つかの処理を適用することにより製造され得る。ポアの長さ方向の軸は、膜面にに対して垂直又はほぼ垂直であるべきである。
【0058】
既に述べたように、孔壁は滑らかであるべき、即ち表面の不規則度は特徴的な直径dcharの5%より小さくあるべきであり、好ましくはdcharの1%より小さくあるべきである。複合膜、即ち導電性及び非導電性の両方の領域を有する場合、特性的直径は導電性の部分の厚さとして測定されるべきである。
【0059】
導電手段のポア直径は、2acharより小さくあるべきであり、ここでacharは、特性的半径であり0.5dcharに等しい。好ましくは、ポア直径は1/8〜0.5acharである。非導電(絶縁)層の厚さは、好ましくはdcharより小さいことが好ましく、0.1〜0.5dcharであることが最も好ましい。
【0060】
あるいは、例えば導電手段は織物構造であり得る。滑らかな円断面のイオン交換繊維などの導電性繊維は、少なくとも1つの織り方向に使用されるべきである。選択された断面のどのような糸も、導電手段を上記間隔(2acharより小さい、好ましくは1/8〜0.5achar)の距離で固定するために他の方向に使用され得る。
【0061】
導電手段は、輸送されるべき液体より高い導電率を有していなければならない。従って、繊維製品の製造時には、導電媒体は繊維製品と最も接触しそうな液体に基づいて選択すべきである。テントの繊維は、従って、例えばT−シャツとは異なる導電媒体を使用して作製される。例えば輸送用バンのような物資の輸送を指向する車両で使用される繊維製品は、例えばファミリー車用の繊維より広範囲の液体に接触することが予想される。従って、これは異なる導電媒体で作製され得る。
【0062】
電気信号発生器は、EO1又はEO2の両方による液体輸送をもたらすために、直流信号を印加するように構成され得る。好ましくは、直流信号を印加するように構成されているとき、これはパルス化信号の形式で供給される。この信号は、DCによって引き起こされる悪影響が、例えば短い動作時間又は繊維内の液体が希薄な溶液であるなど、大きなものではない状況で使用され得る。
【0063】
他の状況では、信号発生器は液体輸送をもたらす交流電圧を印加するように構成される。電気信号は、矩形−三角−のこぎり−サイン又は他の形状の交流からなり得る。
【0064】
古典的な電気浸透による液体輸送を得るためにDC信号を印加することは通常は必要であるけれど、多孔質層が非対称膜を有する状況では、ACも使用され得る。従って、一実施形態では、多孔質層は非対称膜を有し、信号発生器は古典的電気浸透を介して液体輸送をもたらすためにAC信号を供給するように構成される。従って、以下のAC信号の特性は、主としてEO2生成に関連して記述されるが、非対称多孔質層を有する繊維における古典的電気浸透の流れの誘起にも使用され得る。
【0065】
EO2による液体輸送を誘起するとき、周波数は流体力学的周波数より低くなければならない。従って、achar=1mmはf_max=1Hz、achar=100μmはf_max=100Hz、achar=10μmはf_max=10kHzを与える。各パルスにおける有意な周期を得るために、この理論的最大値の10分の1の低い周波数が好ましくは使用される。
【0066】
対称の導電手段については、信号は好ましくは負荷サイクルを有しているべきであり、29%の負荷サイクルがより好ましい。このことは、その強いパルス(これは所望の方向におけるEO2流れを与える極性を有しているべきである)が信号周期の29%の持続時間を有しているべきであることを意味している。負荷サイクルを使用しているとき、信号は、平均の信号の直流成分がゼロとなるように選択されるオフセットを有していることが好ましい。
【0067】
対称性の崩れた導電手段(例えば、図3)については、対称の交流信号が使用され得る(矩形−三角−のこぎり−サイン又は他の形状)。
【0068】
好ましくは、電源は定電圧型であるべきであり、これは最も早く分極を与えるからである。
【0069】
この信号はまた、信号のないパルスで中断され得、これは、Nサイクル毎の信号について出現し得、ここでNは1以上の数字である。
【0070】
好ましくは、この信号周波数は、導電層分極時間の逆数より高く選択されるべきであり、
【0071】
【数1】
ここで、Lは導電層の間の距離、κはデバイ距離(EDL厚さの逆数))、Dは電流搬送イオンの拡散係数である。
【0072】
もし、交流又はパルスの電気信号が印加されるなら、最大周波数は流体力学的時定数によって決定され、
【0073】
【数2】
ここで、νは液体の動粘性係数である。
【0074】
EO2を用いて液体を輸送する場合、SCRを包含するのに十分大きい(正常な)電位降下が存在しなければならない。これは、一つの特性粒子径を横切る次元のない電位が1より大きいことを意味し、これは以下のように変形される。
【0075】
【数3】
加えて、接線の電場成分は、大き過ぎないないことが必要であり、さもなければ、SCRはイオンが枯渇し、SCRは薄くなる。従って、電位は以下を超えない:
【0076】
【数4】
ここで、Rは気体定数、Tは温度、Fはファラデー定数、mは水溶液について0.2に等しい無次元常数、Kはデバイ距離の逆数である。
【0077】
水の分解を避けるために、SCRにおける濃度は水のイオン積を超えるべきである。EO2対流は分極から生じる濃度低下を妨げるので、水の分解が生じない以上のより低い電場強度が観測され:
【0078】
【数5】
ここで、kw=10-7は水の解離積、cは液体イオン濃度である。
【0079】
加えて、薄いSCRという条件は、EO2理論においては基本的である。これは、以下のように表現される:
【0080】
【数6】
これらの条件から、EO2が出現するための電場強度の間隔が特定のシステムについて計算され得る。この間隔は、とりわけイオン濃度と導電手段のサイズとに依存する。
【0081】
導電層上の電荷蓄積を避けるために、駆動交流又は直流信号は、電気信号がなくなるか、若しくは導電層の短絡(このような実施形態では、導電層は低抵抗即ちリレーを介して接続されている)の期間までか、又は帯電した導電層によって設定された電圧とは逆の電圧パルスにより、中断され得る。一実施形態では、導電層によって設定された電圧は、電子的にモニタされ、そのデータは、脱分極期間の持続及び性質を(電子的に)計算するのに使用される。脱分極期間は、典型的には、0.1〜5秒間継続し、1〜200秒毎に現れるが、他の数値も繊維製品の性質に依存して使用され得る。他の実施形態においては、液体輸送を制御する電気信号は、繊維製品内に配された導電センサからのフィードバックに基づいて制御され得る。
【0082】
好ましくは、信号発生器は、少なくとも導電層の加熱を引き起こすのに十分な更なる信号をも印加するように構成される。
【0083】
制御手段は、マクロチップ又はコンピュータのような電子的デバイスであることが好ましく、これは自動的又は手動で動作することができる。前述のように、これは、マイクロセンサのような繊維製品のセンサから得られるシステム性能の情報に基づいて行われる。
【0084】
他の実施形態によれば、繊維製品内の液体の輸送及び該繊維製品の加熱のための方法が提供され、前記繊維製品は2つの導電層に挟まれた多孔質層を有し、該方法は、前記多孔質層を横切り電気浸透により液体輸送をもたらす信号を印加するステップと、前記導電層の少なくとも一つを横切り加熱をもたらす信号を印加するステップとを包含している。
【0085】
信号は、上記の特性の何れをも有し得る。
【0086】
好ましくは、この方法は、センサから動作状態に関する情報を得るステップと、この情報に基づいて、前記液体輸送信号と前記加熱信号とを制御するステップとを包含している。センサは、環境条件、生理学的条件、繊維製品内の電気的特性、繊維製品への圧力及び歪みなどに関する情報を提供するのに使用することができる。
【0087】
あるいは、信号は手動制御に応答して印加され得る。
【0088】
本発明の繊維製品は、多くの潜在的使用を有している。非限定的な表が以下に提供される。
【0089】
【表1】
これらは、温度及び湿度の制御が有利に提供されるであろう状況の全てである。繊維製品を、例えば極限状態用に設計されたアウトドア衣料のような衣料アイテムに使用することは特に有利である。
【0090】
本発明の繊維製品のもう一つの好ましい使用は、氷点下温度又は温度に敏感な環境保護に使用される防水布及びテントのような格納材料である。
【0091】
また、繊維製品は、好ましくは、居住者に快適さを提供するために、車の室内及び他の自動車道路車両に使用され得る。例えば、カーシート、特に通常シート内に加熱プレートを有する加熱機能をしばしば有し寒冷地で使用されるものである。カーシートの少なくとも一部を本発明の繊維製品で覆うことにより、独立した加熱部材の必要性がなくなり、さらにカーシートは、カーシート表面から液体を除去することによりユーザにより大きな快適さを提供することができる。従って、この繊維製品は、加熱と液体輸送の両方を、カーシートの容積又は重量に大きく付加することなく、また現在入手できるカーシート加熱冷却装置より安価で複雑性なく提供する。
【0092】
一つの好ましい実施形態では、本発明の繊維製品は、車のシートに使用される。しかしながら、この繊維製品は、車室の他の表面にも使用され得る。「車室」という用語は、移動中の間人によって占有されている面積、車のキャビン内を意味している。本発明の繊維製品は、車室の壁、床又は天井のような面に使用され得る。
【0093】
「車」という用語は、自動車、貨物自動車、バスなどの自動車道路車両を意図している。
【0094】
電気信号発生器及び電源は、車体内に含まれ得、車の他の構成要素と一体的であり得る。しかしながら、電気信号発生器は繊維製品内に設けることが好ましい。このことは、必要な配線量を減少させ、メンテナンス又は修理作業の間の信号発生器の配置と取り付けを容易にする。一実施形態では、上述のように、繊維製品は、信号発生器に接続された、バッテリー又はソーラーパネルのような電源を有している。しかしながら、本発明の繊維製品のみならず、車内の他の電力供給されるデバイスに電力を供給する単一の電源も使用し得る。このような実施形態では、繊維製品はカーバッテリーによって電力が供給されることが好ましい。
【0095】
従って、本発明の他の実施形態を参照すれば、本発明は車室内に繊維製品を提供し、その繊維製品は、第1及び第2の導電層と、該第1及び第2の導電層の間に配置された多孔質層とを有し、該多孔質層のポアは、前記導電層に対して実質的に直角に向いており、使用中において、電圧が前記多孔質層を横切って印加されて前記繊維製品を横切る液体の指向性の流れをもたらすように、また電圧は前記導電層の少なくとも一つに沿って印加されて前記繊維製品の加熱をもたらすように、前記導電層は電気信号発生器に接続されている。
【0096】
本発明の他の実施形態を参照すれば、本発明は車室内に繊維製品を提供し、その繊維製品は、第1及び第2の導電層と、該第1及び第2の導電層の間に配置された多孔質層とを有し、該多孔質層のポアは、前記導電層に対して実質的に直角に向いており、使用中において電圧が前記多孔質層を横切って印加されて前記繊維製品を横切る液体の指向性の流れをもたらす前記各導電層に配された前記電気信号発生器のための少なくとも一つの電気的接点と、使用中において電圧が前記導電層の少なくとも一つに沿って印加されて前記繊維製品の加熱をもたらす前記導電層の少なくとも一つに配された前記電気信号発生器のための少なくとも一つの追加的な電気的接点とを備えている。
【0097】
本発明の他の実施形態を参照すれば、本発明は繊維製品内の液体輸送と該繊維製品の加熱のための方法を提供し、前記繊維製品は車室内に置かれ、2つの導電層に挟まれた多孔質層を有し、前記方法は、前記多孔質層を横切る信号を印加して電気浸透により液体の輸送をもたらすとともに、前記導電層の少なくとも一つを横切る信号を印加して加熱をもたらすステップを有している。
【0098】
本発明の好ましい実施形態について、以下に例示のみを目的として、添付図を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明に従う繊維製品を示している。
【図2】本発明に従う更なる繊維製品を示している。
【図2a】他の使用における図2の繊維製品を示している。
【図3】本発明に従う、第2のキットの電気浸透により水の輸送がもたらされる繊維製品を示している。
【図4】本発明に従う、第2のキットの電気浸透により水の輸送がもたらされる更なる実施形態を示している。
【図5】図4の導電手段の平面図を示している。
【図6】本発明の繊維製品が設置される領域を示す車の概略図である。
【図7】本発明の繊維製品を備えたカーシートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0100】
図1は、本発明に従う繊維製品10を示している。導電層12a,12bが多孔質層14を挟んでいる。電気的接点13a〜dが導電層12a,12bに配されている。これらは電気信号発生器15に接続されているプラグである。電気的接点13a及び13bは、互いに対向する関係にある導電層12a及び12b上に配されており、一方、電気的接点13c及び13dは、導電層12bの両端に配されている。接点13a〜dは、多孔質層14を横切る電位差が生じるように接点13a及び13bの間に電圧が印加されるように、そして接点13c及び13dの間に電位差が印加されて導電層12bに沿った電流が流れて繊維製品内に熱が発生し得るように、電気信号発生器15に接続されている。
【0101】
電圧が接点13a及び13bの間に印加されるとき、多孔質層14内に流れの指向的な輸送が生じ、電気信号発生器15によって生成する信号に依存して、導電層12a又は12bの方向へ流れを移動させる。
【0102】
従って、この繊維製品は、繊維製品10の両側に向けた流れに、そして更に繊維製品の加熱に使用され得る。
【0103】
図2は本発明に従う1着の衣服に使用される繊維製品20を示している。この実施形態では、古典的電気浸透により液体輸送が出現する。多孔質層24が布地の1又は複数の層によって提供されている。多孔質層24の両側には、導電層22a,22bが繊維に織り込まれている。使用に際しては、繊維製品20は着用者の皮膚21に置かれている。身体が汗をかいたとき、液体が繊維の多孔質層24に浸透する。導電層22a及び22bを横切る電圧を印加することにより、水は多孔質層24の皮膚側から身体から離れる方向に駆動される。これは、衣服の外側に向かう水の収集をもたらし、次に蒸発により除去され、この蒸発は、人体の周囲からの熱に依存して現れる。
【0104】
電圧は、バッテリー27によって電源が供給されている電気信号発生器/制御手段25によって印加される。発生器25は、導電層22bに沿った電圧を供給するのにも使用され得る。この場合には、導電層と信号発生器との間のただ一つの追加の接続がこの加熱機能に提供される。従って、繊維製品20は、体から離れる汗の水輸送を補助するのに使用されるが、他に着用者に熱を供給する追加の機能を提供する。図2においては加熱層が皮膚21に最も近い導電層22bとして示されているが、もちろん電気信号発生器/制御手段25は導電層22aが繊維製品を加熱するように機能するようにも接続されることが可能である。これは、熱が汗の蒸発を補助するように使用されるときに有効である。加えて、導電層22a及び22bの両方が熱を供給し得るようにこれらの層に接続することも可能である。
【0105】
図2においては、電気信号発生器/制御手段25は窓29に示されている信号を伝送するように構成されている。異なる極性のパルスによって中断されるこの一連の単方向性パルスは、多孔質層24内に古典的電気浸透の流れを誘起するであろう。連続する電流よりむしろパルスを使用すること、及び反対の極性の周期的パルスを含むことは、DC信号を使用するときに現れ得る望ましくない悪影響を減少させるのを助ける。
【0106】
図2aは、カーシートの背もたれに使用される同じ繊維製品20を示している。適切な場合は同じ参照符号が使用されている。多孔質層24は布地の単一又は複数の層により提供されている。多孔質層24の両側には、導電層22a及び22bが繊維に織り込まれている。使用に際しては、ユーザ28の身体は繊維製品20に位置している。身体が汗をかいたとき、液体が繊維の多孔質層24に浸透し、湿気を生じる。導電層22a及び22bを横切る電圧を印加することにより、水は多孔質層24の皮膚側から身体から離れる方向に駆動される。
【0107】
電圧は、バッテリー27によって電源が供給されている電気信号発生器/制御手段25によって印加される。発生器25は、導電層22bに沿った電圧を供給するのにも使用され得る。この場合には、導電層と信号発生器との間のただ一つの追加の接続がこの加熱機能に提供される。従って、繊維製品20は、体から離れる汗の水輸送を補助するのに使用されるが、他にシートの使用者に熱を供給する追加の機能を提供する。図2aにおいては加熱層がユーザ28に最も近い導電層22bとして示されているが、もちろん電気信号発生器/制御手段25は導電層22aが繊維製品を加熱するように機能するようにも接続されることが可能である。加えて、導電層22a及び22bの両方が熱を供給し得るようにこれらの層に接続することも可能である。
【0108】
図2aにおいては、電気信号発生器/制御手段25は窓29に示されている信号を伝送するように構成されている。異なる極性のパルスによって中断されるこの一連の単方向性パルスは、多孔質層24内の古典的電気浸透の流れを誘起するであろう。連続する電流よりむしろパルスを使用すること、及び反対の極性の周期的パルスを含むことは、DC信号を使用するときに現れ得る望ましくない悪影響を減少させるのを助ける。ユーザがカーシートから立ち去った後、この信号は、汗を多孔質層24を横切って電極22bに戻すように移動させるように反転される。電気信号発生器25は、次に、その液体を蒸発させるのを補助するために、この電極22bを横切る電圧を印加することがでできる。
【0109】
図3は、第2の種類の電気浸透により水の輸送が発現する更なる繊維30を示している。ここで、導電層32a及び32bが多孔質層34の両側に配されている。この例では、多孔質層34は、非導電層35とそのの間に挟まれた多孔質の導電手段33からなり、非導電層35は導電手段33を導電層32a及び32bから隔離している。簡単のために、電気信号発生器への接続は示されていない。しかし、電界が導電層32a及び32bの一つ又は両方に沿うのと同様に、多孔質層34を横切るように電気信号発生器は導電層32a及び32bに接続されている。
【0110】
導電手段33は、その厚さ方向に沿った種々のサイズのポアを有する膜であり、その孔壁は多孔質層34を横切って印加される電界に対して傾斜している。加えて、孔壁は滑らかであり、そのために導電手段33は第2の種類の電気浸透により水輸送が出現するのを可能としている。
【0111】
また、繊維製品30は、導電層32aの外側に吸収層38を有している。吸収層38は多孔質層34を介して輸送された液体を吸収するのに使用され得る。
【0112】
多孔質導電手段の多くの他の形式が、第2の種類の電気浸透を得るために使用され得る。
【0113】
図4では、導電手段43が、繊維製品40に織り込まれた滑らかな円柱状繊維の形状で提供されている。より薄い非導電繊維46が、互いにacharより幾分小さ距離で導電繊維を固定するために、他の織り目方向に使用されている。この実施形態では、非導電層34と導電層32も示されている。
【0114】
図5は、図4の織布層の平面図を示しており、導電繊維43及び非導電繊維46の間隔と配置とを示している。これらの実施形態の何れにおいても、導電層32の何れかの側又は両側が繊維製品を加熱するのに使用され得る。
【0115】
上述のように、本発明の繊維製品は、種々の場面において使用され得る。一つの有利な使用は、車内である。
【0116】
図6は、車100の概略図を表しており、この例では、標準的な4人乗りである。本発明の繊維製品は、車室120内の多くの位置に配置することができる。車室120は車100のキャビンとして分類される。これは、居住者が移動中に座る車のエリアである。カーシート122上に繊維製品を提供するのと同様に、繊維製品は、キャビンエリア120の床及び壁の材料にも含まれ得る。ドライバーが乗客から離れて位置するバスのような車両においては、車室はドライバーのキャビンと同様に乗客の座席エリアも含むであろう。
【0117】
図7は、ヘッドレスト221、背もたれ222、シート223及びアームレスト224からなるカーシート200を示している。本発明の繊維製品は、シート200全体又はその特定に部分のみを覆うのに使用され得る。図7では、影を付けた部分が繊維製品が使用されていることを示している。これらは、シート200のユーザがシート表面に接触しそうなエリアであり、従って、繊維製品の加熱及び水輸送機能から最も恩恵を受けるであろう。センサは、ここでは示していないが、制御手段が特定の条件に基づいて繊維製品の動作を調節するのを可能とするために繊維製品に含まれ得る。例えば、もしセンサが湿気を検出したなら、導電層は、水輸送を誘起してユーザの身体からこれを除くように操作され得る。圧力センサは、ユーザがシートから立ち去った時を検出するのに使用され得、流体をカーシート表面に戻すように輸送し加熱してこの液体を蒸発させるように、制御手段が導電層に動作させることを可能とする。加熱に先だって、吸収層が輸送された汗を保持するのに使用される。あるいは、温度センサが予め決められた又はユーザが決定した温度より低い温度を検出したなら、加熱の期間が導入され得る。
【0118】
従って、本発明は、種々の適用場面において、流体の輸送と熱の生成とに使用され得る非常に多用途の繊維製品を提供する。
【実施例】
【0119】
換気した車内のシートの水輸送での繊維製品の効率についてテストを行った。以下の繊維製品サンプルを使用した:
− ポリイミド/30%スティール繊維の布地を、親水化表面処理しポアサイズ0.1μmの厚さ100ミクロンのポリビニリデンフルオライド(PVDF)膜の両側にラミネートした。
【0120】
サンプルの繊維製品は、換気した車内のシートに使用されているのと同様のタイプの多孔質発泡体上に置き、濡れた布で覆った。カーシートに座っている人間をシミュレートするように設計されたダミーがその布の上に置かれた。換気したカーシートで本発明の繊維製品の同時使用なしで行った同じテストにより、布の含水量の20〜40%が除去されたことを示し、初期の乾燥(更に多くの電力を使用したとき)後に20〜40Wのエネルギーを使用した。
【0121】
以下の表は、本発明の繊維製品を使用して得られた結果を表している。これは、同様又はそれ以上の水輸送が、本発明の繊維製品を使用して低電力消費で得られることを示している。
【0122】
【表2】
【符号の説明】
【0123】
10 繊維製品
12a 導電層
12b 導電層
13a 電気的接点
13b 電気的接点
13c 電気的接点
13d 電気的接点
14 多孔質層
15 電気信号発生器
20 繊維製品
21 皮膚
22a 導電層
22b 導電層
24 多孔質層
25 電気信号発生器/制御手段
27 バッテリー
28 ユーザ
29 窓
30 繊維製品
32 導電層
32a 導電層
32b 導電層
33 導電手段
34 多孔質層
35 非導電層
38 吸収層
40 繊維製品
43 導電手段
46 非導電繊維
100 車
120 キャビンエリア
120 車室
122 カーシート
200 カーシート
221 ヘッドレスト
222 背もたれ
223 シート
224 アームレスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の応用分野において使用するための、水輸送性及び加熱能力の両方を有する繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特に肉体労働などの肉体的に活動している時間においては、人体は汗を発散し、これは理想的には体の温度を適切に制御するために皮膚から離れるように輸送される。もし蒸発ができないなら、能力上の大幅な損失が生じ、ひどい場合には異常高熱を引き起こし得る。スポーツをする者及び消防士は、このことが重要に関連しているグループに入る。多くの繊維製品、特に保護及び防水繊維製品は、湿気の輸送能力に乏しく、中程度の発汗速度においてさえ効果的な輸送を提供してはいない。加熱の危険性に加えて、濡れた布地は乾燥した布地の数倍速く熱を伝えるので、過冷却の危険性も存在する。汗が体の近傍に留まると、熱もまた蒸発により失われ、このプロセスに必要な熱は人体から奪われる。
【0003】
最近の衣類、特に発汗に曝されることが予期されるものは、数層の布地からなり(積層体)、これにより、適度な液体輸送能力とともに確実な断熱材を備えるように試みられている。例えば、ウールの内層は、ウールの繊維が高い液体輸送能力を有する幾つかの繊維の一つなので、人体に接する位置に存在し得る。従って、この層は湿気を衣服の外側層に輸送するように作用し、そこでは人体というより外側の環境からの熱の助けにより蒸発が起こる。
【0004】
より一般的には、湿気のコントロールは、雨、汗、プロセス水、地下水などの凝集した形態の水に接している全てのものについての潜在的な問題を表している。例えば、ビルディング、公共交通機関及び輸送容器の全ては、湿気をコントロールすることが必要となっている。
【0005】
欧州公開特許公報EP0993328号は、繊維製品における液体輸送の方法を開示し、そこでは、繊維を介して液体を所望の方向へ輸送する電気浸透の現象が利用されている。
【0006】
多孔質層として作用する一切れの布が2つの導電層に挟まれている。これらの層は導電性又は半導体材料からなり、織物中に織られるか又は積層されている。導電層は、一連の単方向性のパルスを伝送し、異極性のパルスによって中断されるように構成された電気パルス発信器に接続されている。このパルスは、繊維製品内の流体の人体から衣料の外側に向かう電気浸透移動を誘導する。
【0007】
電気浸透の現象は公知であり、多くの異なる分野で利用されている。それは、印加電界の影響の下における多孔質構造を介する極性の液体の移動に関係している。ほとんどの表面は、表面イオン化により負電荷を有している。イオン性の流体が表面に接して位置しているとき、この負電荷を遮蔽し電荷バランスを保つために、カチオンの層が表面近傍に積層される。これは電気二重層(EDL)を生成する。電界が印加されるとき、EDLにおけるイオンは、粘性力によりそれらとともに周囲の媒体を引きずり、正に帯電した電極に引きつけられる。これは負に帯電した電極に向かう流体の移動を引き起こす。
【0008】
この電気浸透の形成は、古典的又は通常の電気浸透(EO1)として知られ、方向性の液体輸送を得るために、通常、直流電界成分の存在が必要である。これは、ガスの発生やポアの軸に沿ったポアの濃度分布の形成などの幾つかの悪影響をもたらし、これはシステムの好率を低下させ、そのシステムの信頼性を低下させる得る。これらの悪影響は、根絶されないけれども、パルス電流を使用することにより減少させることができる。
【0009】
国際公開公報WO2004/07045号は、第2の種類の電気浸透を使用した繊維材料を介する液体輸送のシステムを開示し、第2の又は高速電気浸透(EO2)として言及される。
【0010】
古典的な電気浸透に対して、第2の種類の電気浸透は、EDLにおけるこれらのイオンではなく、表面に関連する空間電荷領域(SCR)内のイオンに作用する。EO2による輸送は、同じ電界強度では古典的電気浸透より10〜100倍速い。従って、液体の速い輸送は、比較的低いポテンシャルで達成される。加えて、EO2の使用により得られる速度は、主たる電界強度に対して非線型である。従って、プロセスを進行させるのにAC(交流)が使用され得、上記ガス発生及び電気浸透の影響の悪化の問題を避けることができる。しかしながら、高速電気浸透が得られるようにSCRを生成するために、多孔質層は、孔構造及び滑らかさに関する特定の性質を有する導電手段を備えていなければならない。この付加的な考察は、繊維製品の製造コストを増大させる。
【0011】
従って、繊維製品及び他の多孔質材料を介する流体輸送のための種々のタイプの電気浸透を使用することが知られている。これは、例えばテントやビルディングにおける湿度条件のコントロールと同様に、人体から出る直接の発汗に使用され得る。
【0012】
しかしながら、汗及び他の液体の蒸散は、まだ周囲からの熱に依存している。低温の条件では、従って蒸発が生じず、繊維を水浸しにし又は水で飽和した状態になるようにしてしまう。
【0013】
より一般的には、衣類の殆どの項目が着用者にとって十分な快適性を提供し得る限定された温度範囲があまねく存在する。温度の減少は、着用者を暖かい状態に維持するたに使用されている衣服の追加の項目をもたらすであろう。テントやビルディングでは、断熱材が寒冷気候から居住者を護るために使用され得るが、これはまた暑い気候を保持し従って過熱状態を保持することになる。従って、快適な温度範囲は、ビルディングを断熱することによっては広げられず、移動するだけである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州公開特許公報EP0993328号
【特許文献2】国際公開公報WO2004/07045号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の一実施形態によれば、第1及び第2の導電層と、前記第1及び第2の導電層の間に位置する多孔質層であって該多孔質層のポアが前記導電層に対して実質的に垂直な方向に延伸している少なくとも1つの多孔質層と、を備えた繊維製品であって、前記導電層は、電気信号発生器に接続されて、使用中において、電圧が前記多孔質層を横切って印加され前記繊維製品を横切る液体の指向性の流れをもたらし、電圧が前記導電層の少なくとも1つに沿っても印加されて前記繊維製品の加熱をもたらすようにされることを特徴とする繊維製品が提供される。
【0016】
従って、本発明は、加熱機能を備えることができるようなシステムの構成を採用することにより、水輸送技術の改良を提供する。
【0017】
「実質的に垂直」という用語は、多孔質層のポアが、導電層の間を輸送される指向した液体のパスを形成するように、第1及び第2の導電層から延びていることを意味している。換言すれば、ポアの軸が導電層の平面から十分な量オフセットしており、使用において、電気浸透の作用の下で、一方の導電層から他方の導電層へ液体が流れるのを可能とすることをいう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
電気浸透による液体輸送のための繊維製品を作る場合、多孔質層が2つの導電層の間に配置される。使用においては、電気浸透、即ち古典的電気浸透又は第2の種類の電気浸透により流体の輸送を誘導するために、電圧が多孔質層を横切って(即ち、第1の導電層から第2の導電層へ、又は第2の導電か第1の導電層へ)印加されなければならない。しかしながら、本発明の発明者らは、この機能に加えて、僅かな変更により、同じ装置が更に繊維の加熱に使用され得ることを実現した。これは、少なくとも1つの導電層を、この層の長さ方向に沿って電流が流れるように信号発生器に接続することにより達成される。これは、導電層の加熱と周囲の繊維の加温をもたらす。
【0019】
繊維製品のこの機能は、単独でユーザに追加のぬくもりを提供すること、及び液体輸送機能との組合せにおいてその輸送された液体への加熱源を提供することの両方により、利点を提供する。この利点は、繊維製品への最小限の変更により提供され、追加の層又は繊維製品内に装置を備える必要はない。従って、本発明は、大きなコスト又は複雑さなしに加熱の利点を得ることを可能とする。
【0020】
本発明は、材料の多くのタイプの使用を対象としている。「繊維製品」という用語は、織布、ニット、フェルト、例えば、織物、ジオテキスタイル、防水布などの繊維状材料等の全てを対象としている。
【0021】
第1又は第2の導電層の何れか又は両方の加熱をもたらすために、信号発生器が導電層に接続される。
【0022】
少なくとも1つの導電層の加熱をもたらすために、これは電気信号発生器に少なくとも2点で接続されて電流が導電層に沿って流れる必要がある。好ましくは、導電層は、電気的接点により信号発生器に接続される。これらの接点は、これらの層又は多孔質層を貫通するリスク無しに導電層に電気的に接続されるように導き得る導電層から除外される領域を提供する。
【0023】
電気的接点は、好ましくは導電層に取り付けられたプラグを有している。これらのプラグは、次に電気信号発生器に接続されたリード線に接続されている。これに代えて、導電層それ自身の部分がその接点を形成するために使用され得、これらの部分は、導電層の境界を越えて延び、これにより接点領域が物理的に除去される。このような実施形態では、導電層のこれらの部分が信号発生器へのリード線を形成することも可能であり、例えば、導電層内部からのワイヤがこれを超えて信号発生器に接続される。
【0024】
一実施形態では、各導電層は、第1の電気的接点を有し及び少なくとも1つの導電層が追加的な電気的接点を更に有している。第1の電気的接点は、使用中において、多孔質層を横切る電圧を印加するように電気信号発生器に接続され、追加的な電気的接点は、使用中において、前記少なくとも1つの導電層に沿って電圧が印加されて繊維製品の加熱をもたらすように、関連する第1の電気的接点との動作のために電気信号発生器に接続される。「関連する第1の電気的接点」とは、前記第1の接点が追加的な接点と同じ導電層に接続されていることを表している。
【0025】
本発明の他の実施形態においては、第1及び第2の導電層と、前記第1及び第2の導電層の間に位置する多孔質層であって該多孔質層のポアが前記導電層に対して実質的に垂直な方向に延伸している少なくとも1つの多孔質層と、使用中において電圧が前記多孔質層を横切って印加されて前記繊維製品を横切る液体の指向性の流れをもたらすように、電気信号発生器への接続のために前記導電層に設けられた電気的接点と、使用中において電圧が前記多孔質層に沿っても印加されて前記繊維製品の加熱をもたらすように、電気信号発生器への接続のために前記少なくとも1つの導電層に設けられた追加的な接点とを備えた繊維製品が提供される。
【0026】
ただ一つの追加的接点が必須であるが、2つの追加的接点が前記少なくとも1つの導電層に設けられていることが好ましい。これは、これらの接点及び電気浸透効果の発生に使用されるものの両方が、個々の機能のために適性に配置されるようにするためである。
【0027】
追加的接点は、第1及び第2の導電層の両方に配置されることができる。これは、繊維製品の加熱能力を増大させ、その多用途性も増大し、即ち、何れかの導電層が個別に熱の生成に使用され得る。このことは、例えば、繊維製品が液体を双方向に輸送する必要のあるリバーシブルの衣服に使用される場合には有用である。繊維の両側の加熱能力を有するこのような環境においては、水輸送の方向に係わらず輸送される水が導電層によってその蒸発を助けられるということが確実に行われる。他の実施形態では、着用者に最も近い導電層が着用者を暖めるように熱を提供し、一方、着用者から最も遠い導電層は、蒸発において手助けするために熱が必要とされるときに機能し得る。両層は、必要なら熱を生成するために協調して動作し得る。例えば、これは車の座席に座っている人を加温する3つのレベルを与えるのに使用され得る。第1に、低温設定、これはユーザから最も遠い導電層が熱の生成に使用される。第2に、高温設定、ここではユーザに最も近い導電層が加熱される。最後に、両方の導電層が熱の生成に使用される最高温度設定である。
【0028】
幾つかの実施形態では、一以上の電気的接点が、繊維製品内で液体輸送をもたらすために各導電層に使用される。これは、繊維製品の大きな面積が液体輸送に使用される場合、又は導電層が低電導度を有する場合、繊維製品を介する均一な電流の分布を達成するために必要とされ得る。このような実施形態では、追加的な電気的接点が液体輸送をもたらすのを助けるために配置され得る。これに代えて、又はこれに加えて、複数の電気的接点が、単に液体輸送に使用するために各導電層に設けられ得る。
【0029】
電気信号発生器を有する繊維製品と繊維製品とは分離した電源とを使用することは、例えばビルディングのように繊維が永久的な構造に使用されるときに可能である。しかし、好ましくは、本発明の第2の実施形態に関連して、繊維製品は、前記接点により前記導電層に接続され、液体輸送及び加熱のために前記導電層に電圧を供給するように構成された電気信号発生器を更に有している。好ましくは、第1の実施形態に関連して、電気信号発生器が前記繊維製品内に配置されている。このことは、発生器と接点との間の接続を移動時に解除し及び再接続する必要がないので、繊維製品の携帯性及び使用のし易さを向上させる。幾つかの実施形態では、信号発生器を水輸送信号と加熱信号とを発生させるために使用される別々の信号発生器を使用することも可能である。
【0030】
本発明の繊維製品は、信号発生器に接続された、電池又は太陽電池パネルのような電源を有していることが好ましい。
【0031】
信号発生器は、導電層に2つのタイプの信号を送出するように構成されるのが典型的である。第1に、液体輸送信号、これは多孔質層を横切って水を輸送するように供給され、第2には、加熱信号、これは一つ又はそれ以上の導電層に沿って加熱のために供給される。液体輸送信号及び加熱信号は、両方とも、動作条件及び繊維製品の所望の効果に従って、例えば、タイミング、強度、周波数などにおいて異なり得る。
【0032】
繊維製品は電気信号発生器の制御のための制御手段を更に有していることが好ましい。このような制御手段を使用することにより、信号発生器は、自動的、手動により、又はその両方により、これらの信号を任意の数の連なりとして送るように制御され得る。
【0033】
多くの実施形態では、信号発生器及び制御手段は、一体的に又は単独の装置として提供される。更に、電源がこの装置に組み込まれる。
【0034】
特に好ましい実施形態では、繊維製品は、温度若しくは湿度センサ、心拍数などの身体的機能をモニタする生理的センサなど、環境条件に関する情報を提供し得るセンサを更に備えることができる。圧力計、電気的(電流、伝導率、電気容量、インピーダンスなど)センサのような他のセンサも使用され得る。これらの全てのセンサは、繊維製品の動作条件に関する情報を提供する。これらのセンサからの情報は制御手段に送られ、この制御手段は、この情報に基づいて、水輸送及び繊維製品の加熱をもたらすように電気信号発生器を制御するように構成されていることが好ましい。
【0035】
例えば、もしセンサが心拍数が高いことを検出すると、導電層は、汗が着用者の身体から確実に除かれるように誘導するように動作する。もし、多孔質層を介して輸送された汗が十分な速度で蒸発しないなら、そして過剰な湿気が繊維内に検出されたなら、制御手段は加熱期間を含めて繊維製品の動作を調整することができる。あるいは、ユーザの心拍数が通常のレベルに戻ると、加熱期間が入力される。このように、加熱は、活動期間の間の着用者の妨げとならないが、ユーザが汗の冷却の影響によって殆ど不快になるであろう後の時点でのみ現れる。輸送された汗を加熱前に保持するために、吸収層が使用され得る。センサは、もし外部の温度が予め決められた又はユーザが決めた温度よりも低くなったら、制御手段によって加熱が行われるように、外部の気温も検出し得る。
【0036】
多孔質層(及び導電層)は、水を輸送することができなければならないが、マクロポーラス材料を有する必要はない。これに代えて、「多孔質」は、0.1〜1000ナノメータのポアサイズを有する所謂ナノポーラス材料、1〜1000マイクロメータのポアサイズを有する所謂マイクロポーラス材料も、数mm(例えば3mm)までのポアサイズを有する材料と同様に含んでいると理解すべきである。重要な特徴は、液体(典型的には水、しかしアルコールのような他の液体も含む)を通過させるのに十分な大きさを有するボイド(ポア)の存在である。ポアサイズは、例えば、流速、ポンピングの圧力、大きな分子の輸送能力など、繊維製品の所望の液体輸送能力に依存して決定され得る。多孔質層の形成に使用し得るナノポーラス材料の一つの例は、Nafionのようなイオン交換膜であり、これは10nmより小さいポアサイズを有している。逆浸透膜は0.1nmという小さいポアサイズを有し得るが、種々のろ過膜がnmの範囲から数マイクロメータまでのポアサイズを有し得る。
【0037】
導電層は、導電性インクなどにより形成され得、スプレーコーティング又は導電性プリントの手段により繊維製品上にコートされる。しかし、導電層は、3〜100重量%の間の金属含有量の金属繊維の織布であることが好ましい。より好ましいのは、15〜100重量%の間の金属含有量である。従って、導電層は繊維製品それ自身の一部を形成している。導電層としての使用に好ましい材料は、スティール、インコネル合金及びチタニウムである。後者の2つは、耐腐食性のものとして特に好ましい。
【0038】
導電層を構成し得る他の材料は、炭素繊維、金属グリッド、織った又は不織の多孔質膜、炭素又は金属充填ポリマーからなる他の構造、及び化学的にドープしたポリアニリンのような本来的に導電性のポリマーである。
【0039】
使用中において繊維製品の加熱をもたらす一つ又はそれ以上の導電層は、この機能のない導電層より金属含有量が高いことが好ましい。繊維製品の加熱に用いられる導電層の典型的な金属含有量は、50〜100重量%の間である。あるいは、追加的に縫い込んだ金属構造が、少なくとも一つの導電層に接して配置される。これは導電性を高め、電流を均一に分散させるのに役に立つ。
【0040】
導電層は銀の糸を含んでいることが好ましい。導電性の増大と同様に、これは繊維製品に抗菌性能を提供する。
【0041】
繊維製品に必要とされる3つの層に加えて、これらの層の間又は外側に追加の多孔質層を含ませることがしばしば好ましい。
【0042】
例えば、一つ又はそれ以上の吸収層が繊維製品に含まれ得る。これは、空気から湿気を集めるため、又は多孔質層を通過する水をその蒸発に先だって集めるのに使用される。このような層は、多孔質層と導電層との間、又はその導電層とは反対側(多孔質層に向かい合って)に配置されることができる。
【0043】
幾つかの実施形態では、保護層が多孔質層の少なくとも一方の側に含まれ得る。これは、多孔質層から導電層の反対側に、又は導電層と多孔質層との間に、多孔質層をブロックする例えば塩のような望ましくない物質を排除するために配される。多孔質層のどちら側に保護層が配置されるかは、繊維製品が機能するように構成されている液体輸送の方向に依存しており、液体輸送が何れの方向にも見られる実施形態では、保護層は多孔質層の両方の側に含まれ得る。
【0044】
加えて、多孔質ポリマーグリッド、繊維製品、不織布、膜のような電気絶縁層は、多孔質層及び第1及び/若しくは第2の導電層の間に導入されるのが好ましい。
【0045】
繊維製品の層は、好ましくはウエブラミネーション、ポイントラミネーション又はスプレーラミネーションを使用して互いに積層され得る。このような実施形態では、積層に使用される接着剤は、その厚さに依存して多孔質層と導電層との間の電気絶縁層として機能し得る。このことは、製造されるべき及び繊維製品に導入されるべき追加の層に対する必要性を省く。また、層を積層することは、流路を短く保つことと、導電層の間の距離を短くすることを可能として、流体の輸送を高める。
【0046】
本発明は、多孔質層の構造と、使用中の電気信号発生器によって印加される信号とに依存する電気浸透の全てのタイプを介して液体輸送を提供するのに使用され得る。しかしながら、古典的又は第1の電気浸透が特に好ましい。例えば、欧州特許公開EP0993328号及び国際公開公報WO2004/07045号に開示されている両方の装置は、単に導電層への追加の接続の配置と印加する信号の変化とによって、本発明の加熱機能を含むように構成されている。繊維又は繊維製品の成分の調整は不要である。
【0047】
一実施形態では、多孔質層は古典的電気浸透を介して液体輸送を提供するように構成される。このような実施形態では、多孔質層に関しては特別な条件は必要ではなく、このことは繊維製品材料の層を単純な構成とする。一般に、その材料の平均ポアサイズは、3mmより小さく、好ましくは0.1mmより小さい。
【0048】
好ましい実施形態では、多孔質層は疎水性ポリマーからなる多孔質膜である。これは、液体輸送に著しく寄与しない膜マトリックスの濡れの出現を防止する。また、このタイプの膜は、ポア内の水が液体輸送によって除かれた後に水を保持しないという利点を有している。
【0049】
好ましい疎水性膜材料は、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、又はより好ましくはポリエチレンのようなポリマー材料から選択される。疎水性膜は、(製造に際して)親水化表面処理(hydrophilising surface treatment)されていることが好ましい。例えば、この処理により、スルホン酸基又は中性の基をポア表面に導入することができる。
【0050】
好ましくは、平均のポアサイズは0.03〜10μm、より好ましくは0.1〜1μmである。繊維製品を介する大きな流速と定圧のポンピングが望まれるとき、小さいポアサイズは得られる液体輸送の小さな体積によるエネルギー消耗を意味するので、ポアサイズはこれより小さいことが好ましい。
【0051】
このような膜の性質は、強い水輸送の能力を生じ、織物の有用性を増大させる。例えば、0.1〜1μmのポアサイズを有する膜は、典型的には、10Vより低い電圧を使用して、1平方メートル・1時間当たり数リットルの水を輸送する。
【0052】
しかしながら、例えば小さな流速で高いポンピング圧が望まれるとき、小さなポアサイズが有益な幾つかの実施形態が存在する。
【0053】
あるいは、膜は、好ましくはスルホン酸のイオン化可能な基(sulfonic acid ionogenic groups)を有する多孔質イオン交換膜であってもよい。これは親水性の表面を提供し、従ってEDLの積層を促進するという利点を有している。
【0054】
これに代わる実施形態では、多孔質層は、第2の種類の電気浸透を介して水輸送を提供するように構成される。
【0055】
このような実施形態では、多孔質層は、接線及び法線の両方の電場成分を生成するような形状の導電手段を有していることが必要である。これを達成する最も一般的な方法は、多孔質層が彎曲した又は導電層の表面に対して傾斜した孔壁を有する導電手段を有していることである。加えて、導電手段の表面は滑らかである、即ち、5%dcharより大きい不規則度であるべきであり、ここでdcharは、導電層の面に垂直に測定した導電手段の面積である。これは方向性のある液体輸送の出現を確実にする。
【0056】
導電手段の導電媒体は、イオン、電子又は正孔によって電導され、導体又は半導体であり得る。導電媒体はマイクロポーラスであり得るけれど、これは液体輸送の減少を招き、従ってノンマイクロポーラスであることが好ましい。良好な結果は、選択透過性イオン伝導体の使用により得られる。導電媒体はそれ自身ノンマイクロポーラスであることが好ましいが、それはマイクロポーラス構造の固体マトリックス(又はその一部分)を構成し得る。
【0057】
導電手段はイオン交換膜であることが好ましいが、他のタイプの導電性膜も採用することができる。導電手段の各サイドには、導電層と多孔質層の導電手段との間の直接接触を避けるために、非導電層が積層されていることが好ましい。これは、コーティング又は他の膜製造技術によって達成される。あるいは、非導電層は、例えばある程度の深さまで非導電性にする導電性膜への化学的又はプラズマ処理のような幾つかの処理を適用することにより製造され得る。ポアの長さ方向の軸は、膜面にに対して垂直又はほぼ垂直であるべきである。
【0058】
既に述べたように、孔壁は滑らかであるべき、即ち表面の不規則度は特徴的な直径dcharの5%より小さくあるべきであり、好ましくはdcharの1%より小さくあるべきである。複合膜、即ち導電性及び非導電性の両方の領域を有する場合、特性的直径は導電性の部分の厚さとして測定されるべきである。
【0059】
導電手段のポア直径は、2acharより小さくあるべきであり、ここでacharは、特性的半径であり0.5dcharに等しい。好ましくは、ポア直径は1/8〜0.5acharである。非導電(絶縁)層の厚さは、好ましくはdcharより小さいことが好ましく、0.1〜0.5dcharであることが最も好ましい。
【0060】
あるいは、例えば導電手段は織物構造であり得る。滑らかな円断面のイオン交換繊維などの導電性繊維は、少なくとも1つの織り方向に使用されるべきである。選択された断面のどのような糸も、導電手段を上記間隔(2acharより小さい、好ましくは1/8〜0.5achar)の距離で固定するために他の方向に使用され得る。
【0061】
導電手段は、輸送されるべき液体より高い導電率を有していなければならない。従って、繊維製品の製造時には、導電媒体は繊維製品と最も接触しそうな液体に基づいて選択すべきである。テントの繊維は、従って、例えばT−シャツとは異なる導電媒体を使用して作製される。例えば輸送用バンのような物資の輸送を指向する車両で使用される繊維製品は、例えばファミリー車用の繊維より広範囲の液体に接触することが予想される。従って、これは異なる導電媒体で作製され得る。
【0062】
電気信号発生器は、EO1又はEO2の両方による液体輸送をもたらすために、直流信号を印加するように構成され得る。好ましくは、直流信号を印加するように構成されているとき、これはパルス化信号の形式で供給される。この信号は、DCによって引き起こされる悪影響が、例えば短い動作時間又は繊維内の液体が希薄な溶液であるなど、大きなものではない状況で使用され得る。
【0063】
他の状況では、信号発生器は液体輸送をもたらす交流電圧を印加するように構成される。電気信号は、矩形−三角−のこぎり−サイン又は他の形状の交流からなり得る。
【0064】
古典的な電気浸透による液体輸送を得るためにDC信号を印加することは通常は必要であるけれど、多孔質層が非対称膜を有する状況では、ACも使用され得る。従って、一実施形態では、多孔質層は非対称膜を有し、信号発生器は古典的電気浸透を介して液体輸送をもたらすためにAC信号を供給するように構成される。従って、以下のAC信号の特性は、主としてEO2生成に関連して記述されるが、非対称多孔質層を有する繊維における古典的電気浸透の流れの誘起にも使用され得る。
【0065】
EO2による液体輸送を誘起するとき、周波数は流体力学的周波数より低くなければならない。従って、achar=1mmはf_max=1Hz、achar=100μmはf_max=100Hz、achar=10μmはf_max=10kHzを与える。各パルスにおける有意な周期を得るために、この理論的最大値の10分の1の低い周波数が好ましくは使用される。
【0066】
対称の導電手段については、信号は好ましくは負荷サイクルを有しているべきであり、29%の負荷サイクルがより好ましい。このことは、その強いパルス(これは所望の方向におけるEO2流れを与える極性を有しているべきである)が信号周期の29%の持続時間を有しているべきであることを意味している。負荷サイクルを使用しているとき、信号は、平均の信号の直流成分がゼロとなるように選択されるオフセットを有していることが好ましい。
【0067】
対称性の崩れた導電手段(例えば、図3)については、対称の交流信号が使用され得る(矩形−三角−のこぎり−サイン又は他の形状)。
【0068】
好ましくは、電源は定電圧型であるべきであり、これは最も早く分極を与えるからである。
【0069】
この信号はまた、信号のないパルスで中断され得、これは、Nサイクル毎の信号について出現し得、ここでNは1以上の数字である。
【0070】
好ましくは、この信号周波数は、導電層分極時間の逆数より高く選択されるべきであり、
【0071】
【数1】
ここで、Lは導電層の間の距離、κはデバイ距離(EDL厚さの逆数))、Dは電流搬送イオンの拡散係数である。
【0072】
もし、交流又はパルスの電気信号が印加されるなら、最大周波数は流体力学的時定数によって決定され、
【0073】
【数2】
ここで、νは液体の動粘性係数である。
【0074】
EO2を用いて液体を輸送する場合、SCRを包含するのに十分大きい(正常な)電位降下が存在しなければならない。これは、一つの特性粒子径を横切る次元のない電位が1より大きいことを意味し、これは以下のように変形される。
【0075】
【数3】
加えて、接線の電場成分は、大き過ぎないないことが必要であり、さもなければ、SCRはイオンが枯渇し、SCRは薄くなる。従って、電位は以下を超えない:
【0076】
【数4】
ここで、Rは気体定数、Tは温度、Fはファラデー定数、mは水溶液について0.2に等しい無次元常数、Kはデバイ距離の逆数である。
【0077】
水の分解を避けるために、SCRにおける濃度は水のイオン積を超えるべきである。EO2対流は分極から生じる濃度低下を妨げるので、水の分解が生じない以上のより低い電場強度が観測され:
【0078】
【数5】
ここで、kw=10-7は水の解離積、cは液体イオン濃度である。
【0079】
加えて、薄いSCRという条件は、EO2理論においては基本的である。これは、以下のように表現される:
【0080】
【数6】
これらの条件から、EO2が出現するための電場強度の間隔が特定のシステムについて計算され得る。この間隔は、とりわけイオン濃度と導電手段のサイズとに依存する。
【0081】
導電層上の電荷蓄積を避けるために、駆動交流又は直流信号は、電気信号がなくなるか、若しくは導電層の短絡(このような実施形態では、導電層は低抵抗即ちリレーを介して接続されている)の期間までか、又は帯電した導電層によって設定された電圧とは逆の電圧パルスにより、中断され得る。一実施形態では、導電層によって設定された電圧は、電子的にモニタされ、そのデータは、脱分極期間の持続及び性質を(電子的に)計算するのに使用される。脱分極期間は、典型的には、0.1〜5秒間継続し、1〜200秒毎に現れるが、他の数値も繊維製品の性質に依存して使用され得る。他の実施形態においては、液体輸送を制御する電気信号は、繊維製品内に配された導電センサからのフィードバックに基づいて制御され得る。
【0082】
好ましくは、信号発生器は、少なくとも導電層の加熱を引き起こすのに十分な更なる信号をも印加するように構成される。
【0083】
制御手段は、マクロチップ又はコンピュータのような電子的デバイスであることが好ましく、これは自動的又は手動で動作することができる。前述のように、これは、マイクロセンサのような繊維製品のセンサから得られるシステム性能の情報に基づいて行われる。
【0084】
他の実施形態によれば、繊維製品内の液体の輸送及び該繊維製品の加熱のための方法が提供され、前記繊維製品は2つの導電層に挟まれた多孔質層を有し、該方法は、前記多孔質層を横切り電気浸透により液体輸送をもたらす信号を印加するステップと、前記導電層の少なくとも一つを横切り加熱をもたらす信号を印加するステップとを包含している。
【0085】
信号は、上記の特性の何れをも有し得る。
【0086】
好ましくは、この方法は、センサから動作状態に関する情報を得るステップと、この情報に基づいて、前記液体輸送信号と前記加熱信号とを制御するステップとを包含している。センサは、環境条件、生理学的条件、繊維製品内の電気的特性、繊維製品への圧力及び歪みなどに関する情報を提供するのに使用することができる。
【0087】
あるいは、信号は手動制御に応答して印加され得る。
【0088】
本発明の繊維製品は、多くの潜在的使用を有している。非限定的な表が以下に提供される。
【0089】
【表1】
これらは、温度及び湿度の制御が有利に提供されるであろう状況の全てである。繊維製品を、例えば極限状態用に設計されたアウトドア衣料のような衣料アイテムに使用することは特に有利である。
【0090】
本発明の繊維製品のもう一つの好ましい使用は、氷点下温度又は温度に敏感な環境保護に使用される防水布及びテントのような格納材料である。
【0091】
また、繊維製品は、好ましくは、居住者に快適さを提供するために、車の室内及び他の自動車道路車両に使用され得る。例えば、カーシート、特に通常シート内に加熱プレートを有する加熱機能をしばしば有し寒冷地で使用されるものである。カーシートの少なくとも一部を本発明の繊維製品で覆うことにより、独立した加熱部材の必要性がなくなり、さらにカーシートは、カーシート表面から液体を除去することによりユーザにより大きな快適さを提供することができる。従って、この繊維製品は、加熱と液体輸送の両方を、カーシートの容積又は重量に大きく付加することなく、また現在入手できるカーシート加熱冷却装置より安価で複雑性なく提供する。
【0092】
一つの好ましい実施形態では、本発明の繊維製品は、車のシートに使用される。しかしながら、この繊維製品は、車室の他の表面にも使用され得る。「車室」という用語は、移動中の間人によって占有されている面積、車のキャビン内を意味している。本発明の繊維製品は、車室の壁、床又は天井のような面に使用され得る。
【0093】
「車」という用語は、自動車、貨物自動車、バスなどの自動車道路車両を意図している。
【0094】
電気信号発生器及び電源は、車体内に含まれ得、車の他の構成要素と一体的であり得る。しかしながら、電気信号発生器は繊維製品内に設けることが好ましい。このことは、必要な配線量を減少させ、メンテナンス又は修理作業の間の信号発生器の配置と取り付けを容易にする。一実施形態では、上述のように、繊維製品は、信号発生器に接続された、バッテリー又はソーラーパネルのような電源を有している。しかしながら、本発明の繊維製品のみならず、車内の他の電力供給されるデバイスに電力を供給する単一の電源も使用し得る。このような実施形態では、繊維製品はカーバッテリーによって電力が供給されることが好ましい。
【0095】
従って、本発明の他の実施形態を参照すれば、本発明は車室内に繊維製品を提供し、その繊維製品は、第1及び第2の導電層と、該第1及び第2の導電層の間に配置された多孔質層とを有し、該多孔質層のポアは、前記導電層に対して実質的に直角に向いており、使用中において、電圧が前記多孔質層を横切って印加されて前記繊維製品を横切る液体の指向性の流れをもたらすように、また電圧は前記導電層の少なくとも一つに沿って印加されて前記繊維製品の加熱をもたらすように、前記導電層は電気信号発生器に接続されている。
【0096】
本発明の他の実施形態を参照すれば、本発明は車室内に繊維製品を提供し、その繊維製品は、第1及び第2の導電層と、該第1及び第2の導電層の間に配置された多孔質層とを有し、該多孔質層のポアは、前記導電層に対して実質的に直角に向いており、使用中において電圧が前記多孔質層を横切って印加されて前記繊維製品を横切る液体の指向性の流れをもたらす前記各導電層に配された前記電気信号発生器のための少なくとも一つの電気的接点と、使用中において電圧が前記導電層の少なくとも一つに沿って印加されて前記繊維製品の加熱をもたらす前記導電層の少なくとも一つに配された前記電気信号発生器のための少なくとも一つの追加的な電気的接点とを備えている。
【0097】
本発明の他の実施形態を参照すれば、本発明は繊維製品内の液体輸送と該繊維製品の加熱のための方法を提供し、前記繊維製品は車室内に置かれ、2つの導電層に挟まれた多孔質層を有し、前記方法は、前記多孔質層を横切る信号を印加して電気浸透により液体の輸送をもたらすとともに、前記導電層の少なくとも一つを横切る信号を印加して加熱をもたらすステップを有している。
【0098】
本発明の好ましい実施形態について、以下に例示のみを目的として、添付図を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明に従う繊維製品を示している。
【図2】本発明に従う更なる繊維製品を示している。
【図2a】他の使用における図2の繊維製品を示している。
【図3】本発明に従う、第2のキットの電気浸透により水の輸送がもたらされる繊維製品を示している。
【図4】本発明に従う、第2のキットの電気浸透により水の輸送がもたらされる更なる実施形態を示している。
【図5】図4の導電手段の平面図を示している。
【図6】本発明の繊維製品が設置される領域を示す車の概略図である。
【図7】本発明の繊維製品を備えたカーシートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0100】
図1は、本発明に従う繊維製品10を示している。導電層12a,12bが多孔質層14を挟んでいる。電気的接点13a〜dが導電層12a,12bに配されている。これらは電気信号発生器15に接続されているプラグである。電気的接点13a及び13bは、互いに対向する関係にある導電層12a及び12b上に配されており、一方、電気的接点13c及び13dは、導電層12bの両端に配されている。接点13a〜dは、多孔質層14を横切る電位差が生じるように接点13a及び13bの間に電圧が印加されるように、そして接点13c及び13dの間に電位差が印加されて導電層12bに沿った電流が流れて繊維製品内に熱が発生し得るように、電気信号発生器15に接続されている。
【0101】
電圧が接点13a及び13bの間に印加されるとき、多孔質層14内に流れの指向的な輸送が生じ、電気信号発生器15によって生成する信号に依存して、導電層12a又は12bの方向へ流れを移動させる。
【0102】
従って、この繊維製品は、繊維製品10の両側に向けた流れに、そして更に繊維製品の加熱に使用され得る。
【0103】
図2は本発明に従う1着の衣服に使用される繊維製品20を示している。この実施形態では、古典的電気浸透により液体輸送が出現する。多孔質層24が布地の1又は複数の層によって提供されている。多孔質層24の両側には、導電層22a,22bが繊維に織り込まれている。使用に際しては、繊維製品20は着用者の皮膚21に置かれている。身体が汗をかいたとき、液体が繊維の多孔質層24に浸透する。導電層22a及び22bを横切る電圧を印加することにより、水は多孔質層24の皮膚側から身体から離れる方向に駆動される。これは、衣服の外側に向かう水の収集をもたらし、次に蒸発により除去され、この蒸発は、人体の周囲からの熱に依存して現れる。
【0104】
電圧は、バッテリー27によって電源が供給されている電気信号発生器/制御手段25によって印加される。発生器25は、導電層22bに沿った電圧を供給するのにも使用され得る。この場合には、導電層と信号発生器との間のただ一つの追加の接続がこの加熱機能に提供される。従って、繊維製品20は、体から離れる汗の水輸送を補助するのに使用されるが、他に着用者に熱を供給する追加の機能を提供する。図2においては加熱層が皮膚21に最も近い導電層22bとして示されているが、もちろん電気信号発生器/制御手段25は導電層22aが繊維製品を加熱するように機能するようにも接続されることが可能である。これは、熱が汗の蒸発を補助するように使用されるときに有効である。加えて、導電層22a及び22bの両方が熱を供給し得るようにこれらの層に接続することも可能である。
【0105】
図2においては、電気信号発生器/制御手段25は窓29に示されている信号を伝送するように構成されている。異なる極性のパルスによって中断されるこの一連の単方向性パルスは、多孔質層24内に古典的電気浸透の流れを誘起するであろう。連続する電流よりむしろパルスを使用すること、及び反対の極性の周期的パルスを含むことは、DC信号を使用するときに現れ得る望ましくない悪影響を減少させるのを助ける。
【0106】
図2aは、カーシートの背もたれに使用される同じ繊維製品20を示している。適切な場合は同じ参照符号が使用されている。多孔質層24は布地の単一又は複数の層により提供されている。多孔質層24の両側には、導電層22a及び22bが繊維に織り込まれている。使用に際しては、ユーザ28の身体は繊維製品20に位置している。身体が汗をかいたとき、液体が繊維の多孔質層24に浸透し、湿気を生じる。導電層22a及び22bを横切る電圧を印加することにより、水は多孔質層24の皮膚側から身体から離れる方向に駆動される。
【0107】
電圧は、バッテリー27によって電源が供給されている電気信号発生器/制御手段25によって印加される。発生器25は、導電層22bに沿った電圧を供給するのにも使用され得る。この場合には、導電層と信号発生器との間のただ一つの追加の接続がこの加熱機能に提供される。従って、繊維製品20は、体から離れる汗の水輸送を補助するのに使用されるが、他にシートの使用者に熱を供給する追加の機能を提供する。図2aにおいては加熱層がユーザ28に最も近い導電層22bとして示されているが、もちろん電気信号発生器/制御手段25は導電層22aが繊維製品を加熱するように機能するようにも接続されることが可能である。加えて、導電層22a及び22bの両方が熱を供給し得るようにこれらの層に接続することも可能である。
【0108】
図2aにおいては、電気信号発生器/制御手段25は窓29に示されている信号を伝送するように構成されている。異なる極性のパルスによって中断されるこの一連の単方向性パルスは、多孔質層24内の古典的電気浸透の流れを誘起するであろう。連続する電流よりむしろパルスを使用すること、及び反対の極性の周期的パルスを含むことは、DC信号を使用するときに現れ得る望ましくない悪影響を減少させるのを助ける。ユーザがカーシートから立ち去った後、この信号は、汗を多孔質層24を横切って電極22bに戻すように移動させるように反転される。電気信号発生器25は、次に、その液体を蒸発させるのを補助するために、この電極22bを横切る電圧を印加することがでできる。
【0109】
図3は、第2の種類の電気浸透により水の輸送が発現する更なる繊維30を示している。ここで、導電層32a及び32bが多孔質層34の両側に配されている。この例では、多孔質層34は、非導電層35とそのの間に挟まれた多孔質の導電手段33からなり、非導電層35は導電手段33を導電層32a及び32bから隔離している。簡単のために、電気信号発生器への接続は示されていない。しかし、電界が導電層32a及び32bの一つ又は両方に沿うのと同様に、多孔質層34を横切るように電気信号発生器は導電層32a及び32bに接続されている。
【0110】
導電手段33は、その厚さ方向に沿った種々のサイズのポアを有する膜であり、その孔壁は多孔質層34を横切って印加される電界に対して傾斜している。加えて、孔壁は滑らかであり、そのために導電手段33は第2の種類の電気浸透により水輸送が出現するのを可能としている。
【0111】
また、繊維製品30は、導電層32aの外側に吸収層38を有している。吸収層38は多孔質層34を介して輸送された液体を吸収するのに使用され得る。
【0112】
多孔質導電手段の多くの他の形式が、第2の種類の電気浸透を得るために使用され得る。
【0113】
図4では、導電手段43が、繊維製品40に織り込まれた滑らかな円柱状繊維の形状で提供されている。より薄い非導電繊維46が、互いにacharより幾分小さ距離で導電繊維を固定するために、他の織り目方向に使用されている。この実施形態では、非導電層34と導電層32も示されている。
【0114】
図5は、図4の織布層の平面図を示しており、導電繊維43及び非導電繊維46の間隔と配置とを示している。これらの実施形態の何れにおいても、導電層32の何れかの側又は両側が繊維製品を加熱するのに使用され得る。
【0115】
上述のように、本発明の繊維製品は、種々の場面において使用され得る。一つの有利な使用は、車内である。
【0116】
図6は、車100の概略図を表しており、この例では、標準的な4人乗りである。本発明の繊維製品は、車室120内の多くの位置に配置することができる。車室120は車100のキャビンとして分類される。これは、居住者が移動中に座る車のエリアである。カーシート122上に繊維製品を提供するのと同様に、繊維製品は、キャビンエリア120の床及び壁の材料にも含まれ得る。ドライバーが乗客から離れて位置するバスのような車両においては、車室はドライバーのキャビンと同様に乗客の座席エリアも含むであろう。
【0117】
図7は、ヘッドレスト221、背もたれ222、シート223及びアームレスト224からなるカーシート200を示している。本発明の繊維製品は、シート200全体又はその特定に部分のみを覆うのに使用され得る。図7では、影を付けた部分が繊維製品が使用されていることを示している。これらは、シート200のユーザがシート表面に接触しそうなエリアであり、従って、繊維製品の加熱及び水輸送機能から最も恩恵を受けるであろう。センサは、ここでは示していないが、制御手段が特定の条件に基づいて繊維製品の動作を調節するのを可能とするために繊維製品に含まれ得る。例えば、もしセンサが湿気を検出したなら、導電層は、水輸送を誘起してユーザの身体からこれを除くように操作され得る。圧力センサは、ユーザがシートから立ち去った時を検出するのに使用され得、流体をカーシート表面に戻すように輸送し加熱してこの液体を蒸発させるように、制御手段が導電層に動作させることを可能とする。加熱に先だって、吸収層が輸送された汗を保持するのに使用される。あるいは、温度センサが予め決められた又はユーザが決定した温度より低い温度を検出したなら、加熱の期間が導入され得る。
【0118】
従って、本発明は、種々の適用場面において、流体の輸送と熱の生成とに使用され得る非常に多用途の繊維製品を提供する。
【実施例】
【0119】
換気した車内のシートの水輸送での繊維製品の効率についてテストを行った。以下の繊維製品サンプルを使用した:
− ポリイミド/30%スティール繊維の布地を、親水化表面処理しポアサイズ0.1μmの厚さ100ミクロンのポリビニリデンフルオライド(PVDF)膜の両側にラミネートした。
【0120】
サンプルの繊維製品は、換気した車内のシートに使用されているのと同様のタイプの多孔質発泡体上に置き、濡れた布で覆った。カーシートに座っている人間をシミュレートするように設計されたダミーがその布の上に置かれた。換気したカーシートで本発明の繊維製品の同時使用なしで行った同じテストにより、布の含水量の20〜40%が除去されたことを示し、初期の乾燥(更に多くの電力を使用したとき)後に20〜40Wのエネルギーを使用した。
【0121】
以下の表は、本発明の繊維製品を使用して得られた結果を表している。これは、同様又はそれ以上の水輸送が、本発明の繊維製品を使用して低電力消費で得られることを示している。
【0122】
【表2】
【符号の説明】
【0123】
10 繊維製品
12a 導電層
12b 導電層
13a 電気的接点
13b 電気的接点
13c 電気的接点
13d 電気的接点
14 多孔質層
15 電気信号発生器
20 繊維製品
21 皮膚
22a 導電層
22b 導電層
24 多孔質層
25 電気信号発生器/制御手段
27 バッテリー
28 ユーザ
29 窓
30 繊維製品
32 導電層
32a 導電層
32b 導電層
33 導電手段
34 多孔質層
35 非導電層
38 吸収層
40 繊維製品
43 導電手段
46 非導電繊維
100 車
120 キャビンエリア
120 車室
122 カーシート
200 カーシート
221 ヘッドレスト
222 背もたれ
223 シート
224 アームレスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の導電層と、
前記第1及び第2の導電層の間に位置する多孔質層であって、該多孔質層のポアが前記導電層に対して実質的に垂直な方向に延伸している、少なくとも1つの多孔質層と、
を備えた繊維製品であって、
前記導電層は、電気信号発生器に接続されて、使用中において、
電圧が前記多孔質層を横切って印加され前記繊維製品を横切る液体の指向性の流れをもたらし、
電圧が前記導電層の少なくとも1つに沿っても印加されて前記繊維製品の加熱をもたらすようにされることを特徴とする繊維製品。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維製品であって、前記電気信号発生器は繊維製品内に配されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の繊維製品であって、前記導電層は、電気的接点により前記信号発生器に接続されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項4】
請求項3に記載の繊維製品であって、各導電層が第1の電気的接点を有し及び少なくとも1つの導電層が追加的な電気的接点を更に有し、
前記第1の電気的接点は、使用中において、前記多孔質層を横切る電圧を印加するように電気信号発生器に接続され、
前記追加的な電気的接点は、使用中において、前記少なくとも1つの導電層に沿って電圧が印加されて前記繊維製品の加熱をもたらすように、関連する前記第1の電気的接点との動作のために前記電気信号発生器に接続されている
ことを特徴とする繊維製品。
【請求項5】
第1及び第2の導電層と、
前記第1及び第2の導電層の間に位置する多孔質層であって、該多孔質層のポアが前記導電層に対して実質的に垂直な方向に延伸している、少なくとも1つの多孔質層と、
前記電気信号発生器への接続のために前記導電層に取り付けられた電気的接点と
を備え、使用中において、
電圧が前記多孔質層を横切って印加されて前記繊維製品を横切る液体の指向性の流れをもたらすように、そして、
前記電気信号発生器への接続のために前記導電層の少なくとも1つに追加的な接点が設けられ、使用中において、
電圧が前記多孔質層の少なくとも1つに沿っても印加されて前記繊維製品の加熱をもたらすように、
構成されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項6】
請求項5記載の繊維製品であって、前記接点により前記導電層に接続され、液体輸送及び加熱のために前記導電層に電圧を供給するように構成された電気信号発生器を更に有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項7】
請求項4,5又は6の何れかに記載の繊維製品であって、2つの追加的接点が前記少なくとも1つの導電層に設けられていることを特徴とする繊維製品。
【請求項8】
請求項4、5又は6の何れかに記載の繊維製品であって、第1及び第2の導電層の両方が、少なくとも1つの追加的接点を有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の繊維製品であって、前記導電層は、金属含有量3〜100重量%の金属繊維の織布であることを特徴とする繊維製品。
【請求項10】
請求項9に記載の繊維製品であって、前記導電層の金属含有量は、15〜45重量%の間であることを特徴とする繊維製品。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の繊維製品であって、前記導電層は、スティール、インコネル合金又はチタニウムを含有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項12】
請求項1〜8の何れかに記載の繊維製品であって、前記導電層は、炭素繊維、金属グリッド、織った若しくは不織の多孔質膜、炭素若しくは金属充填ポリマー、又は本来的に導電性のポリマーで構築されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項13】
請求項9〜12の何れかに記載の繊維製品であって、追加的に縫い込まれた金属構造が一つ又はそれ以上の導電層と接して配され、使用中において繊維製品の加熱をもたらすことを特徴とする繊維製品。
【請求項14】
請求項9、10又は11の何れかに記載の繊維製品であって、使用中において繊維製品の加熱をもたらす前記一つ又はそれ以上の導電層は、50〜100重量%の金属含有量であることを特徴とする繊維製品。
【請求項15】
請求項1〜14の何れかに記載の繊維製品であって、前記導電層は、銀の糸を含んでいることを特徴とする繊維製品。
【請求項16】
請求項1〜15の何れかに記載の繊維製品であって、一つ又はそれ以上の吸収層を更に有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項17】
請求項1〜16の何れかに記載の繊維製品であって、前記多孔質層の何れかの側に保護層を更に有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項18】
請求項1〜17の何れかに記載の繊維製品であって、前記多孔質層と前記第1及び/又は第2の導電層との間に配された電気絶縁層を更に有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項19】
請求項1〜18の何れかに記載の繊維製品であって、層が互いに積層されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項20】
請求項1〜19の何れかに記載の繊維製品であって、前記多孔質層は、古典的電気浸透による液体輸送を提供するように構成されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項21】
請求項20に記載の繊維製品であって、前記多孔質層は、疎水性のポリマーからなる多孔質膜であることを特徴とする繊維製品。
【請求項22】
請求項21に記載の繊維製品であって、前記多孔質膜は、ポリエチレンからなることを特徴とする繊維製品。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の繊維製品であって、前記多孔質膜は、親水化表面処理により処理されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項24】
請求項23に記載の繊維製品であって、前記処理により、スルホン酸基がポア表面に導入されることを特徴とする繊維製品。
【請求項25】
請求項21〜24の何れかに記載の繊維製品であって、前記膜の平均ポアサイズが0.03〜10μmの間であることを特徴とする繊維製品。
【請求項26】
請求項25に記載の繊維製品であって、前記膜の平均ポアサイズが0.1〜1μmの間であることを特徴とする繊維製品。
【請求項27】
請求項20に記載の繊維製品であって、前記多孔質層は、多孔質イオン交換膜であることを特徴とする繊維製品。
【請求項28】
請求項27に記載の繊維製品であって、前記多孔質イオン交換膜は、スルホン酸のイオン化可能な基を有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項29】
請求項1〜19の何れかに記載の繊維製品であって、前記多孔質層は、第2の種類の電気浸透による液体輸送を提供するように構成されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項30】
請求項29に記載の繊維製品であって、前記多孔質層は導電手段を有し、該導電手段は、彎曲した又は導電層の表面に対して傾斜し及び5%dchar以下の表面の不規則度を有する孔壁を備えていることを特徴とする繊維製品。
【請求項31】
請求項29又は30に記載の繊維製品であって、前導電手段のポア直径が2acharより小さいことを特徴とする繊維製品。
【請求項32】
請求項1〜31の何れかに記載され請求項1又は6に従属する場合の繊維製品であって、前記信号発生器の制御のための制御手段を更に有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項33】
請求項32に記載の繊維製品であって、センサを更に備え、前記制御手段は、前記センサからの情報を得て、それに沿って前記信号発生器の出力を調整するように構成されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項34】
請求項33に記載の繊維製品であって、前記センサには、温度、湿度、生理学的又は電子的センサが含まれることを特徴とする繊維製品。
【請求項35】
請求項1〜34の何れかに記載され請求項1又は6に従属する場合の繊維製品であって、前記電気信号発生器は、DC信号を供給して液体輸送をもたらすように構成されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項36】
請求項1〜35の何れかに記載され請求項20〜28に従属し請求項1又は6に従属する場合の繊維製品であって、前記多孔質層は非対称膜を有し、前記信号発生器はAC信号を供給して液体輸送をもたらすように構成されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項37】
繊維製品内の液体の輸送及び該繊維製品の加熱のための方法であって、前記繊維製品は2つの導電層に挟まれた多孔質層を有し、該方法は、
前記多孔質層を横切り、電気浸透により液体輸送をもたらす信号を印加するステップと、
前記導電層の少なくとも一つに沿い、加熱をもたらす信号を印加するステップと
を包含している方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、
センサから動作状態に関する情報を得るステップと、
この情報に基づいて、前記液体輸送信号と前記加熱信号とを制御するステップと
を包含している方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法であって、
前記信号は、手動制御に応答して印加される方法。
【請求項40】
請求項1〜36の何れかに記載の繊維製品を有する衣類。
【請求項41】
請求項1〜36の何れかに記載の繊維製品を有する車室。
【請求項1】
第1及び第2の導電層と、
前記第1及び第2の導電層の間に位置する多孔質層であって、該多孔質層のポアが前記導電層に対して実質的に垂直な方向に延伸している、少なくとも1つの多孔質層と、
を備えた繊維製品であって、
前記導電層は、電気信号発生器に接続されて、使用中において、
電圧が前記多孔質層を横切って印加され前記繊維製品を横切る液体の指向性の流れをもたらし、
電圧が前記導電層の少なくとも1つに沿っても印加されて前記繊維製品の加熱をもたらすようにされることを特徴とする繊維製品。
【請求項2】
請求項1に記載の繊維製品であって、前記電気信号発生器は繊維製品内に配されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の繊維製品であって、前記導電層は、電気的接点により前記信号発生器に接続されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項4】
請求項3に記載の繊維製品であって、各導電層が第1の電気的接点を有し及び少なくとも1つの導電層が追加的な電気的接点を更に有し、
前記第1の電気的接点は、使用中において、前記多孔質層を横切る電圧を印加するように電気信号発生器に接続され、
前記追加的な電気的接点は、使用中において、前記少なくとも1つの導電層に沿って電圧が印加されて前記繊維製品の加熱をもたらすように、関連する前記第1の電気的接点との動作のために前記電気信号発生器に接続されている
ことを特徴とする繊維製品。
【請求項5】
第1及び第2の導電層と、
前記第1及び第2の導電層の間に位置する多孔質層であって、該多孔質層のポアが前記導電層に対して実質的に垂直な方向に延伸している、少なくとも1つの多孔質層と、
前記電気信号発生器への接続のために前記導電層に取り付けられた電気的接点と
を備え、使用中において、
電圧が前記多孔質層を横切って印加されて前記繊維製品を横切る液体の指向性の流れをもたらすように、そして、
前記電気信号発生器への接続のために前記導電層の少なくとも1つに追加的な接点が設けられ、使用中において、
電圧が前記多孔質層の少なくとも1つに沿っても印加されて前記繊維製品の加熱をもたらすように、
構成されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項6】
請求項5記載の繊維製品であって、前記接点により前記導電層に接続され、液体輸送及び加熱のために前記導電層に電圧を供給するように構成された電気信号発生器を更に有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項7】
請求項4,5又は6の何れかに記載の繊維製品であって、2つの追加的接点が前記少なくとも1つの導電層に設けられていることを特徴とする繊維製品。
【請求項8】
請求項4、5又は6の何れかに記載の繊維製品であって、第1及び第2の導電層の両方が、少なくとも1つの追加的接点を有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の繊維製品であって、前記導電層は、金属含有量3〜100重量%の金属繊維の織布であることを特徴とする繊維製品。
【請求項10】
請求項9に記載の繊維製品であって、前記導電層の金属含有量は、15〜45重量%の間であることを特徴とする繊維製品。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の繊維製品であって、前記導電層は、スティール、インコネル合金又はチタニウムを含有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項12】
請求項1〜8の何れかに記載の繊維製品であって、前記導電層は、炭素繊維、金属グリッド、織った若しくは不織の多孔質膜、炭素若しくは金属充填ポリマー、又は本来的に導電性のポリマーで構築されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項13】
請求項9〜12の何れかに記載の繊維製品であって、追加的に縫い込まれた金属構造が一つ又はそれ以上の導電層と接して配され、使用中において繊維製品の加熱をもたらすことを特徴とする繊維製品。
【請求項14】
請求項9、10又は11の何れかに記載の繊維製品であって、使用中において繊維製品の加熱をもたらす前記一つ又はそれ以上の導電層は、50〜100重量%の金属含有量であることを特徴とする繊維製品。
【請求項15】
請求項1〜14の何れかに記載の繊維製品であって、前記導電層は、銀の糸を含んでいることを特徴とする繊維製品。
【請求項16】
請求項1〜15の何れかに記載の繊維製品であって、一つ又はそれ以上の吸収層を更に有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項17】
請求項1〜16の何れかに記載の繊維製品であって、前記多孔質層の何れかの側に保護層を更に有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項18】
請求項1〜17の何れかに記載の繊維製品であって、前記多孔質層と前記第1及び/又は第2の導電層との間に配された電気絶縁層を更に有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項19】
請求項1〜18の何れかに記載の繊維製品であって、層が互いに積層されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項20】
請求項1〜19の何れかに記載の繊維製品であって、前記多孔質層は、古典的電気浸透による液体輸送を提供するように構成されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項21】
請求項20に記載の繊維製品であって、前記多孔質層は、疎水性のポリマーからなる多孔質膜であることを特徴とする繊維製品。
【請求項22】
請求項21に記載の繊維製品であって、前記多孔質膜は、ポリエチレンからなることを特徴とする繊維製品。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の繊維製品であって、前記多孔質膜は、親水化表面処理により処理されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項24】
請求項23に記載の繊維製品であって、前記処理により、スルホン酸基がポア表面に導入されることを特徴とする繊維製品。
【請求項25】
請求項21〜24の何れかに記載の繊維製品であって、前記膜の平均ポアサイズが0.03〜10μmの間であることを特徴とする繊維製品。
【請求項26】
請求項25に記載の繊維製品であって、前記膜の平均ポアサイズが0.1〜1μmの間であることを特徴とする繊維製品。
【請求項27】
請求項20に記載の繊維製品であって、前記多孔質層は、多孔質イオン交換膜であることを特徴とする繊維製品。
【請求項28】
請求項27に記載の繊維製品であって、前記多孔質イオン交換膜は、スルホン酸のイオン化可能な基を有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項29】
請求項1〜19の何れかに記載の繊維製品であって、前記多孔質層は、第2の種類の電気浸透による液体輸送を提供するように構成されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項30】
請求項29に記載の繊維製品であって、前記多孔質層は導電手段を有し、該導電手段は、彎曲した又は導電層の表面に対して傾斜し及び5%dchar以下の表面の不規則度を有する孔壁を備えていることを特徴とする繊維製品。
【請求項31】
請求項29又は30に記載の繊維製品であって、前導電手段のポア直径が2acharより小さいことを特徴とする繊維製品。
【請求項32】
請求項1〜31の何れかに記載され請求項1又は6に従属する場合の繊維製品であって、前記信号発生器の制御のための制御手段を更に有していることを特徴とする繊維製品。
【請求項33】
請求項32に記載の繊維製品であって、センサを更に備え、前記制御手段は、前記センサからの情報を得て、それに沿って前記信号発生器の出力を調整するように構成されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項34】
請求項33に記載の繊維製品であって、前記センサには、温度、湿度、生理学的又は電子的センサが含まれることを特徴とする繊維製品。
【請求項35】
請求項1〜34の何れかに記載され請求項1又は6に従属する場合の繊維製品であって、前記電気信号発生器は、DC信号を供給して液体輸送をもたらすように構成されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項36】
請求項1〜35の何れかに記載され請求項20〜28に従属し請求項1又は6に従属する場合の繊維製品であって、前記多孔質層は非対称膜を有し、前記信号発生器はAC信号を供給して液体輸送をもたらすように構成されていることを特徴とする繊維製品。
【請求項37】
繊維製品内の液体の輸送及び該繊維製品の加熱のための方法であって、前記繊維製品は2つの導電層に挟まれた多孔質層を有し、該方法は、
前記多孔質層を横切り、電気浸透により液体輸送をもたらす信号を印加するステップと、
前記導電層の少なくとも一つに沿い、加熱をもたらす信号を印加するステップと
を包含している方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、
センサから動作状態に関する情報を得るステップと、
この情報に基づいて、前記液体輸送信号と前記加熱信号とを制御するステップと
を包含している方法。
【請求項39】
請求項37に記載の方法であって、
前記信号は、手動制御に応答して印加される方法。
【請求項40】
請求項1〜36の何れかに記載の繊維製品を有する衣類。
【請求項41】
請求項1〜36の何れかに記載の繊維製品を有する車室。
【図1】
【図2】
【図2a】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図2a】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2010−536610(P2010−536610A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521472(P2010−521472)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002815
【国際公開番号】WO2009/024779
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(510048716)オスモテックス アクチエンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002815
【国際公開番号】WO2009/024779
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(510048716)オスモテックス アクチエンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】
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