説明

水道メータ

【課題】 検針ごとの蓋体の開閉作業を不要にし、泥等の汚れが蓋体表面に残らず、メータ表示部等に対する視認性を向上させて作業者の負担を軽くする。
【解決手段】 上ケース3に装着された蓋体6は、閉鎖状態でも内部が良く見えるように蓋体6の全体又は一部分を透明(半透明)に形成して、指示表示部15及び固有情報刻設部17に対する視認性を確保する。又、蓋体6をゆるやかな上方に凸の湾曲状に形成し、更に、蓋体6の裏面に文字、数字又はマーク等から成るメータ用固有情報を刻設して、埃などの汚染物質が残存・堆積しないように形成する。更に、蓋体6の上面に触媒層18、例えば二酸化チタン(光触媒)又はリン酸チタニウム化合物(空気触媒)を形成して防汚作用を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水道メータに関するものであり、特に、蓋体の表面或いは上ケース上面にメータ識別用の型式名や口径シリアル番号などの固有情報が刻設されている水道メータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、此種水道メータは、一般に下ケースと上ケースを相互に一体に組み付けて成るケースの上部に蓋体が装着され、且つ、該ケースには水道水を通過させる計量部や指示部等の機能部品が内蔵されている。更に、該計量部内には羽根車が回転可能に設けられていると共に、該羽根車の上頭部にマグネットが固定されている。
【0003】
従って、前記計量部を水道水が通過すると、該水道水の流量に応じて羽根車及びマグネットが回転し、該マグネットの回転が磁気継手により伝達され、そして、該回転を指示部にて積算すると共に、メータ表示部により表示するように構成されている(同様な構造として、例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来の水道メータの蓋体は、メータ表示部が塵埃又は泥等の汚染物質により汚染されないように保護されている。而して、検針時には蓋体を開いてメータ表示部の指針値を検針して記録し、記録後に、水道メータの蓋体を閉じるという一連の作業を定期検針ごとに繰り返している。
【0005】
又、メータ表示部は、読みやすくするとともに、メータ表示部の計量値を確実かつ明瞭に視認できるようにすることが法令により定められている。
【0006】
更に、個々の水道メータの識別手段として、蓋体の表面或いは上ケース上面に固有情報(識別情報)である型式名、口径、自治体マークや指定のシリアル番号が刻設されている。このシリアル番号は、市場(水道メータ使用者の住宅等)に水道メータを設置した後も、水道メータを管理する際の固有情報として使用される。
【特許文献1】特開2004−361301号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した一連の検針作業において、メータ表示部の上面側に塵埃又は泥等の汚染物質が残存・堆積することにより、検針時に残存・堆積物によってメータ表示部が視認し難くなる。このような状況を回避するために検針時にそのつど水道メータの蓋体を開閉させていた。しかし、検針毎に蓋体の開閉作業を行うことは、検針員の作業負担が重くなるという問題があった。
【0008】
又、蓋体の表面形状は略平坦に形成され、且つ、該蓋体上面には文字、数字又はマーク等から成る水道メータの固有情報が凹凸形状に刻設されている。従って、塵埃又は泥などの汚染物質が蓋体表面の凹部に残存・堆積して、蓋体の表面の汚れが目立つため、水道メータに対して不衛生的な印象を与えるという問題があった。
【0009】
更に、水道メータ識別用のシリアル番号は、水道メータの製造工程時、水道局における水道メータの在庫時、或いは水道メータを市場に設置した後、更には、市場から水道メータを回収した時に作業者により目視のみによる確認が行われている。
【0010】
この場合、前記シリアル番号は数字が小さいうえに桁数が多いため、管理上必要なシリアル番号の検査時若しくはデータ入力時における確認作業において作業者にかなりの労力が強いられる。従って、作業者に対する精神的若しくは肉体的な作業負担が増大すると共に、シリアル番号の検査ミスや入力ミスが増加することがあった。
【0011】
そこで、検針時における蓋体の開閉作業を不要にし、泥等の汚れが蓋体表面に残存・堆積せず、メータ表示部や固有情報刻設部の視認が容易になり、作業者の負担を軽減するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成するために提案せられたものであり、請求項1記載の発明はケース内に水道水が通過する計量部と、該計量部を通過した水道水量等を表示するメータ表示部とを設け、且つ、該ケースの上部に蓋体を装着して成る水道メータにおいて、前記蓋体は上方が凸となるように湾曲形成され、更に、該蓋体における少なくとも前記メータ表示部と対応する部分が透明又は半透明に形成されていると共に、該蓋体の裏面或いは上ケース上面に文字から成る水道メータの固有情報が刻設されており、且つ、該蓋体における少なくとも前記固有情報刻設部と対応する部分も、透明又は半透明に形成されている水道メータを提供する。
【0013】
この構成によれば、蓋体の透明部分又は半透明部分を介して、水道メータの表示部及び蓋体裏面或いは上ケース上面に刻設されている固有情報を直接視見でき、且つ、該蓋体は上方が凸となるように湾曲形成されているため、該蓋体表面に付着しようとする雨水又は汚染物質は自然に周辺下方へ落下する。
【0014】
請求項2記載の発明は、上記蓋体の透明部分又は半透明部分の上面に二酸化チタンなどから成る触媒層が形成されている水道メータを提供する。
【0015】
この構成によれば、蓋体の透明部分又は半透明部分の上面に塵埃又は泥土などの汚染物質が付着した場合は、汚染物質は二酸化チタン(光触媒)又はリン酸チタニウム化合物(空気触媒)等の化学触媒反応により分解除去される(抗菌、防汚作用)。
【0016】
又、請求項1記載の発明における固有情報刻設部に対応する蓋体の上面に付着した汚染物質も、前述と同様に触媒層により速やかに分解除去される。
【0017】
更に又、請求項3記載の発明は、上記蓋体の裏面側に水道メータの固有情報などが記載された記憶媒体としてのICタグ又はバーコードが内蔵されている水道メータを提供する。
【0018】
この構成によれば、水道メータの固有情報等が記憶された情報記憶媒体としてICタグ又はバーコードが蓋体の裏面側に内蔵されている。実際にICタグ又はバーコードを蓋体に内蔵する場合は、ICタグ又はバーコードをシートに印刷し、該印刷したシートをプレート状の蓋体の裏面側に挿着固定した後、該蓋体をケースに溶着して固定する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明は、蓋体の透視可能な透明部分又は半透明部分を介して検針員は水道メータの蓋体の上からメータ表示部の指針値等を容易に視認することができる。又、検針員は検針時にその都度水道メータの蓋体を開閉する必要がないので、検針時における検針員の作業負担が著しく軽減される。
【0020】
請求項2記載の発明は、二酸化チタン等の触媒層により分解除去された汚染物質は、メータ表示部又は固有情報刻設部と対応する蓋体の上面に残存・堆積しないので、請求項1記載の発明の効果に加えて、分解除去された汚染物質によってメータ表示部又は固有情報刻設部に対する視認性が長期間にわたり低下するおそれがない。
【0021】
請求項3記載の発明は、水道メータの固有情報等が記憶された記憶媒体としてのICタグ又はバーコードが内蔵されているので、上記請求項1又は2記載の発明の効果に加え、例えば上記固有情報が水道メータ識別用のシリアル番号の場合、水道メータの製造時、水道局における在庫時、又は市場に水道メータを設置した後、或いは市場から水道メータを回収した時に、目視によりシリアル番号を検査又は入力する際に該検査作業又は入力作業を容易に実施でき、作業者の負担が軽くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は検針ごとの蓋体の開閉作業を不要にし、塵埃等の汚れが蓋体表面に残存せず、水道メータの回収時等における固有情報(シリアル番号等)の目視による確認を容易にし、作業者の負担を軽くするという目的を達成するために、ケース内に水道水が通過する計量部と、該計量部を通過した水道水量等を表示するメータ表示部とを設け、且つ、該ケースの上部に蓋体を装着して成る水道メータにおいて、前記蓋体は上方が凸となるように湾曲形成され、更に、該蓋体における少なくとも前記メータ表示部と対応する部分が透明又は半透明に形成されていると共に、該蓋体の裏面或いは上ケース上面に文字から成る水道メータの固有情報が刻設されており、且つ、該蓋体における少なくとも前記固有情報刻設部と対応する部分も、透明又は半透明に形成されている水道メータを提供することにより実現した。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の一実施例を図1乃至図3に従って詳述する。本実施例は、蓋体を閉じた状態でメータ表示部等を明瞭に透視できるように、蓋体の全体又は一部を透明もしくは着色半透明に形成し、且つ、蓋体を緩やかな凸形状にすると共に、蓋体の裏面にメータ用の固有情報である文字等を形成し、蓋体表面に塵埃等の汚染物質が堆積しないように構成したものである。
【0024】
又、蓋体表面に触媒層(酸化チタン又はリン酸チタニウム化合物)を形成して抗菌・防汚効果を発揮させることにより、蓋体における視認性の永続を安定して維持できるように構成したものである。尚、本発明は電子式の水道メータ又は機械式の水道メータのいずれにも適用可能である。
【0025】
図1は本実施例に係る水道メータの概略構成を示す縦断面図である。同図において、1は水道メータであって、該水道メータ1は相互一体に組付けた下ケース2と上ケース3を備えている。下ケース2には水道水が通過する計量部5が形成されていると共に、該計量部5内には羽根車4が回転自在に設けられている。
【0026】
尚、上ケース3の上部には、透明樹脂製又は半透明樹脂製の蓋体6が開閉可能に装着されているが、該蓋体6の構成については後述する。
【0027】
該計量部5内に設けた羽根車4は、水道水の流量に応じて回転数が増減する。この羽根車4の上頭部には駆動側マグネット7が取り付けられ、該駆動側マグネット7は歯車8付きの被駆動側マグネット9に磁気結合されている。
【0028】
従って、前記計量部5内に水道水が通過して羽根車4が回転すると、その回転力は駆動側マグネット7に伝達されて歯車8が回転する。更に、下ケース2内にはレジスターボックス10が固定され、該レジスターボックス10には前記被駆動側マグネット9が回転自在に設けられている。
【0029】
レジスターボックス10内における他側(図1における左側)には数字車11が配置され、該数字車11と歯車8との間には複数の歯車から成る減速用歯車列(図示せず)が駆動伝達可能に設けられている。前記羽根車4の回転は減速用歯車列を介して数字車11に伝達される。
【0030】
又、レジスターボックス10内における他側(図1における右側)には下台板12が固設され、該下台板12には歯車軸13が一体に設けられている。該歯車軸13には歯車14が回転自在に取り付けられ、該歯車14は前述した減速用歯車列の一つを構成している。
【0031】
今、水道メータ1の計量部5を水道水が通過すると、該水道水の流量に応じて羽根車4及び駆動側マグネット7が回転する。そして、該駆動側マグネット7の回転数は、被駆動側マグネット9を介して数字車11に伝達され、上ケース3の上部に設けた指示表示部15にて表示される。
【0032】
本実施例では、上ケース3の上部は蓋体6により施蓋されている。この蓋体6の裏面には文字、数字又はマーク等から成るメータ用の固有情報が刻設されている。加えて、上ケース上面にはシリアル番号が刻設されている。これらの固有情報は、例えば水道メータ1の製造工程時に付与される固有情報(シリアル番号)、水道局に在庫されているときに使用される固有情報、市場に水道メータ1を設置した後の固有情報、或いは市場から水道メータ1を回収した後のリサイクル情報等として使用される。
【0033】
例えば、図2に例示するように、水道メータ1の口径等を表示する文字、数字又はマーク(固有情報刻設部17)は、蓋体6の一側の裏面に透かし彫りにより形成されている。
【0034】
又、蓋体6を閉鎖した状態において、上ケース3内の指示表示部15(図1参照)等を外部から明瞭に視認できるように、図示例では、蓋体6の全体が無色/有色の透明に形成されている。この場合、上ケース3内の指示表示部15等を明瞭に視認できれば、蓋体6は透明でなくとも無色/有色半透明に形成することもできる。
【0035】
尚、蓋体6の一部分を透明又は半透明に形成する場合は、上ケース3内の指示表示部15及び固有情報刻設部17並びに上ケース上面に刻設されているシリアル番号等を目視にて容易に認識できるようにするために、少なくとも指示表示部15及び固有情報刻設部17並びに上ケース上面のシリアル番号刻設部と対応する蓋体6の部分は透視可能な透明又は半透明に形成する。
【0036】
蓋体6の縦断面形状は、図3における符号Fに例示するように、上方に凸となる湾曲状に形成されている。即ち、蓋体6上面における中央部から外周端縁部に向かって緩やかに下方に漸次傾斜するように形成されている。
【0037】
更に、蓋体6の上面全域には、防汚性能(抗菌性能を含む)を有する触媒層18が形成されている。この触媒層18としては、例えば、二酸化チタン(光触媒)又はリン酸チタニウム化合物(空気触媒)がコーティングされている。
【0038】
以上説明したように本実施例によれば、蓋体6の上面全域が透明に形成されていると共に、該蓋体6の上面には防汚性能を有する二酸化チタン等の触媒層18が形成されている。このため、蓋体6の上面に塵埃又は泥等の汚染物質が付着した場合、該汚染物質は触媒層18による化学触媒反応によって速やかに分解除去される(抗菌・防汚作用)。
【0039】
従って、蓋体6の上面に汚染物質が残存・堆積するおそれがない。斯くして、定期検針時などにおいて、検針員は蓋体6の上から指示表示部15の指針値、或いは固有情報刻設部17の文字等を容易に視認することができる。又、検針員は検針するごとに蓋体6を開閉する必要がないので、一連の検針作業における検針員の負担が著しく軽減される。
【0040】
更に、蓋体6の裏面にメータ用の固有情報を形成した場合、例えば、固有情報として文字、数字又はマークを刻設した場合、従来のように固有情報の刻設箇所の凹部に塵埃又は泥等の汚染物質が残存・堆積することが無い。
【0041】
従って、前記固有情報に対する視認性が一層向上すると共に、水道メータ1に対する外観上の見栄えも良くなり、看者に対して非常に衛生的な好印象を与えることができる。
【0042】
又、水道メータ1の管理上必要な検査工程又は入力工程においてシリアル番号を作業員が確認する時に、該シリアル番号の確認作業を容易・迅速に実施でき、併せて作業者の負担が軽くなるので、検査ミスや入力ミスの発生が未然に防止される。
【0043】
水道局に在庫されているときに使用される識別番号、市場に水道メータ1を設置した後に使用される識別データ、或いは市場から水道メータ1を回収した後に使用されるリサイクル情報等を目視で確認するときも、上記同様に作業者の負担が軽くなるので作業効率が従来に比べて向上する。
【0044】
更に、蓋体6上面は上方に凸となる緩やかな湾曲形状に形成されている。そのため、例えば上記触媒層18により蓋体6の中央部又は径方向中間部にて分解除去された汚染物質は、蓋体6の中央部から外周端部に向かう方向に移動する。従って、蓋体6上面に汚染物質が堆積しないので、指示表示部15及び固有情報刻設部17に対する視認性が長期間にわたって安定的に維持される。
【0045】
本実施例では、蓋体6の他側の裏面には図3に示すように、水道メータ1の固有情報等が記憶又は記載された記憶媒体19、即ち、ICタグ又はバーコードが内蔵されている。具体的にはICタグ又はバーコードはシートに回路形成又は両面印刷され、該回路形成又は両面印刷したシートは、蓋体6の裏面に形成した彫り込み部に挿入されている。
【0046】
従って、シートカバー20を該蓋体6の彫り込み部に水密に溶着固定することにより、該蓋体6の裏面側においてICタグ又はバーコードを水密に保護でき、その結果、水による記憶媒体19の機能低下が確実に防止される。
【0047】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る一実施例を示し、水道メータの概略構成を説明する縦断面図。
【図2】図1の水道メータの蓋体を示す平面図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【符号の説明】
【0049】
1 水道メータ
2 下ケース
3 上ケース 5 計量部
6 蓋体
15 指示表示部(メータ表示部)
17 固有情報刻設部
18 触媒層
19 記憶媒体
20 シートカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に水道水が通過する計量部と、該計量部を通過した水道水量等を表示するメータ表示部とを設け、且つ、該ケースの上部に蓋体を装着して成る水道メータにおいて、前記蓋体は上方が凸となるように湾曲形成され、更に、該蓋体における少なくとも前記メータ表示部と対応する部分が透明又は半透明に形成されていると共に、該蓋体の裏面或いは上ケース上面に文字から成る水道メータの固有情報が刻設されており、且つ、該蓋体における少なくとも前記固有情報刻設部と対応する部分も、透明又は半透明に形成されていることを特徴とする水道メータ。
【請求項2】
上記蓋体の透明部分又は半透明部分の上面に二酸化チタンなどから成る触媒層が形成されていることを特徴とする請求項1記載の水道メータ。
【請求項3】
上記蓋体の裏面側に水道メータの固有情報などが記載された記憶媒体としてのICタグ又はバーコードが内蔵されていることを特徴とする請求項1又は2記載の水道メータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−92598(P2009−92598A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265752(P2007−265752)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(591043581)東京都 (107)
【出願人】(591085422)高畑精工株式会社 (16)
【Fターム(参考)】