説明

水酸化物媒介ゲルを使用したモレキュラー・シーブSSZ−74の合成

【課題】本発明は、水酸化物媒介ゲルを使用して結晶性モレキュラー・シーブSSZ−74を合成するための、新規な方法を提供すること。
【解決手段】本発明の方法は、(1)4価元素の少なくとも1種の酸化物の少なくとも1種の供給源と、(2)任意選択で、3価元素、5価元素、及びこれらの混合物の酸化物からなる群から選択される1種又は複数の酸化物の1種又は複数の供給源と、(3)水酸化物イオンと、(4)1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンとを、結晶化条件下で且つフッ化物イオンが実質的に存在しない状態で接触させるステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造規定剤(「SDA」)として1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンを使用して、水酸化物媒体中で結晶性モレキュラー・シーブSSZ−74を合成するための新規な方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
その独特の篩い分け特性、並びにその触媒性により、結晶性モレキュラー・シーブ及びゼオライトは、炭化水素の変換、気体乾燥、及び分離などの適用例で特に有用である。多くの異なる結晶性モレキュラー・シーブが開示されており、気体分離及び乾燥、炭化水素及び化学変換、及びその他の適用例に望ましい性質を有する新しいモレキュラー・シーブが引き続き求められている。新しいモレキュラー・シーブは、これらのプロセスで高い選択性を提供する新規な内部細孔構造を含有することができる。
【0003】
最近、Zonesらは、「モレキュラー・シーブSSZ−74」又は「SSZ−74」と呼ばれる新規なモレキュラー・シーブを発見したことを報告した(Zonesらの米国特許第7,348,295号参照)。Zonesらは、フッ化物媒介ゲルを使用したSSZ−74の調製、即ち、(1)酸化ケイ素の供給源(単数又は複数)、及び任意選択で(2)酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化ホウ素、酸化チタン、酸化インジウム、及びこれらの混合物の供給源(単数又は複数)をヘキサメチレン−1,6−ビス(N−メチル−N−ピロリジニウム)ジカチオンSDAにフッ化物イオンの存在下で接触させることによる調製について報告した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SSZ−74は、SDAとして1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)へキサンジカチオンを使用して水酸化物媒体中で合成できることを今回見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、本明細書で「モレキュラー・シーブSSZ−74」又は単に「SSZ−74」と呼ばれる結晶性モレキュラー・シーブのファミリーを作製する方法を対象とする。
【0006】
本発明によれば、本発明の方法によって作製され、(1)少なくとも1種の4価元素の少なくとも1種の酸化物と(2)任意選択で3価元素、5価元素、及びこれらの混合物の酸化物からなる群から選択される1種又は複数の酸化物とのモル比が約40よりも高く、焼成後に表6のX線回折線を有する、モレキュラー・シーブが提供される。「約40よりも高いモル比」という文言は、酸化物(2)がない場合、即ち酸化物(1)と酸化物(2)とのモル比が無限大であることを含む。その場合、モレキュラー・シーブは、本質的に1種又は複数の4価元素の酸化物のすべてを含むことに留意すべきである。
【0007】
本発明の方法は、(1)4価元素の少なくとも1種の酸化物の少なくとも1種の供給源と、(2)任意選択で、3価元素、5価元素、及びこれらの混合物の酸化物からなる群から選択される1種又は複数の酸化物の1種又は複数の供給源と、(3)水酸化物イオンと、(4)1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンからなる群から選択されるSDAとを、結晶化条件下で且つフッ化物イオンが実質的に存在しない状態で接触させることによって、結晶性材料を調製するステップを含み、この反応混合物は、フッ化物イオンを実質的に含まないものである。
【0008】
本発明は、
(a)(1)4価元素の少なくとも1種の酸化物の少なくとも1種の供給源、(2)任意選択で、3価元素、5価元素、及びこれらの混合物の酸化物からなる群から選択される1種又は複数の酸化物の1種又は複数の供給源、(3)任意選択で、周期律表の第1及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、(5)1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオン、及び(6)水を含有する、実質的にフッ化物を含まない反応混合物を調製するステップと、
(b)この反応混合物を、モレキュラー・シーブの結晶を形成するのに十分な条件下で維持するステップと
によって、焼成後に表6のX線回折線を有する結晶性材料を調製するための方法も含む。
【0009】
形成されたモレキュラー・シーブが中間材料である場合、本発明の方法は、目標のモレキュラー・シーブを実現するために別の合成後処理を含む(例えば、合成後ヘテロ原子格子置換又は酸浸出による)。
【0010】
本発明は、本発明の方法によって作製された、合成されたままの且つ無水状態にある組成物を有し、モル比に関して下記の通りのSSZ−74も提供し、
【表1】


上記の表で、
(1)Tは、周期律表の第4〜14族からの4価元素と、これらの混合物とからなる群から選択され、
(2)Xは、周期律表の第3〜13族からの3価及び5価元素と、これらの混合物とからなる群から選択され、
(3)化学量論的変数bは、組成的変数Xの原子価状態に等しく(例えば、Xが3価の場合、b=3であり、Xが5価の場合、b=5である)、
(4)Mは、周期律表の第1及び2族からの元素からなる群から選択され、
(5)Qは、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンからなる群から選択されるSDAである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】比較例1の、フッ化物媒体中で調製したモレキュラー・シーブの粉末X線回折(XRD)解析の結果を示す図である。
【図2】比較例1で調製したモレキュラー・シーブの、走査電子顕微鏡(SEM)解析の結果を示す図である。
【図3】比較例1で調製したモレキュラー・シーブのSEM解析の結果を示す図である。
【図4】例1の、水酸化物媒体中で調製したモレキュラー・シーブの粉末XRD解析の結果を示す図である。
【図5】例2の、水酸化物媒体中で調製したモレキュラー・シーブの粉末XRD解析の結果を示す図である。
【図6】例2で調製したモレキュラー・シーブのSEM解析の結果を示す図である。
【図7】例2で調製したモレキュラー・シーブのSEM解析の結果を示す図である。
【図8】例4で調製したモレキュラー・シーブの粉末XRD解析の結果を示す図である。
【図9】例5の、水酸化物媒体中で調製したモレキュラー・シーブの粉末XRD解析の結果を示す図である。
【図10】例5で調製したモレキュラー・シーブのSEM解析の結果を示す図である。
【図11】例5で調製したモレキュラー・シーブのSEM解析の結果を示す図である。
【図12】例6の、水酸化物媒体中で調製したモレキュラー・シーブの粉末XRD解析の結果を示す図である。
【図13】例6で調製したモレキュラー・シーブのSEM解析の結果を示す図である。
【図14】例6で調製したモレキュラー・シーブのSEM解析の結果を示す図である。
【図15】例7の、水酸化物媒体中で調製したモレキュラー・シーブの粉末XRD解析の結果を示す図である。
【図16】例6及び11で調製した、焼成モレキュラー・シーブの粉末XRD解析の結果を示す図である。
【図17】例14の、水酸化物媒体中で調製したモレキュラー・シーブの粉末XRD解析を示す図である。
【図18】例17の、水酸化物媒体中で調製したモレキュラー・シーブの粉末XRD解析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概要
「周期律表」という用語は、2007年6月22日版のIUPAC元素周期律表を指し、周期律表の族に関する番号付与スキームは、Chemical and Engineering News、63(5)、27(1985)に記載される通りである。
【0013】
「モレキュラー・シーブ」という用語は、(a)中間体と、(b)(1)直接合成又は(2)結晶化後処理(2次合成)によって生成された最終の又は目標のモレキュラー・シーブ及びゼオライトを含む。2次合成技法は、ヘテロ原子格子置換又はその他の技法によって、中間体モレキュラー・シーブから目標のモレキュラー・シーブを合成させる。例えばアルミノシリケートは、Bの代わりにAlで結晶化後ヘテロ原子格子置換を行うことにより、中間体ボロシリケートから合成することができる。そのような技法は知られており、例えば、2004年9月14日に発行されたC.Y.Chen及びStacey Zonesの米国特許第6,790,433号に記載されている。
【0014】
認められる場合には、本出願に引用されるすべての文献、特許、及び特許出願を、そのような開示が本発明と矛盾しない程度まで、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0015】
他に特に指示しない限り、個々の成分又は成分の混合物を選択することができる、元素、材料、又はその他の成分の種類の引用は、列挙された成分及びそれらの混合物の、すべての可能な下位種類の組合せを含むものとする。また、「含む」及びその変形例は、非限定的なものとし、したがってリスト上の項目に列挙されたものは、本発明の材料、組成物、及び方法で役立てることもできるその他同様の項目を、排除するものではない。
【0016】
本発明は、本明細書で「モレキュラー・シーブSSZ−74」又は単に「SSZ−74」と呼ばれるモレキュラー・シーブを作製するための方法を対象とする。
【0017】
SSZ−74の調製では、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンを、結晶化テンプレートとしても知られる構造規定剤(「SDA」)として使用する。SSZ−74を作製するのに有用なSDAは、下記の構造(1)によって表される。
【化1】

【0018】
SDAジカチオンは、SSZ−74の形成に有害ではない任意のアニオンであってもよいアニオン(X)と結合している。代表的なアニオンには、周期律表の第18族の元素(例えば、フッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物)、水酸化物、酢酸塩、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、及びカルボン酸塩などからのものが含まれる。
【0019】
本発明の1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンSDA(本明細書の構造(1)により表される)は、ジハライドアルカン(1,6−ジブロモブタンなどの)とN−メチルピロリジンとの反応させることによって合成することができる。
【0020】
SDAカチオンは、モレキュラー・シーブの形成に有害ではない任意のアニオンであってもよいアニオンに結合している。代表的なアニオンには、周期律表の第17族の元素、水酸化物、酢酸塩、硫酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、及びカルボン酸塩が含まれる。水酸化物は、最も好ましいアニオンである。SDAは、反応混合物に水酸化物イオンを提供するのに使用してもよい。このように、例えばハロゲン化物を水酸化物対イオンにイオン交換するのに有益である。
【0021】
反応混合物
一般に、SSZ−74は、
(a)(1)少なくとも1種の4価元素の酸化物の少なくとも1種の供給源、(2)任意選択で、3価元素、5価元素、及びこれらの混合物の酸化物からなる群から選択される、1種又は複数の酸化物の1種又は複数の供給源、(3)任意選択で、周期律表の第1及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源、(4)水酸化物イオン、(5)1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオン、及び(6)水を含有する、実質的にフッ化物を含まない反応混合物を調製するステップと、
(b)この反応混合物を、モレキュラー・シーブの結晶を形成するのに十分な条件下で維持するステップと
によって調製される。
【0022】
形成されたモレキュラー・シーブが中間体材料である場合、本発明の方法は、ヘテロ原子格子置換技法や酸浸出などの合成後技法によって、目標のモレキュラー・シーブを合成するさらなるステップを含む。
【0023】
モレキュラー・シーブが形成される、実質的にフッ化物を含まない反応混合物の組成物は、そのモル比に関して以下の表1に明らかにされ、
【表2】


上記の表で、
(a)組成的変数T、X、Q及びMは上述の通りであり、
(b)化学量論的変数aは、組成的変数Xの原子価状態に等しい(例えば、Xが3価の場合、a=3;Xが5価の場合、a=5)。
【0024】
ある下位実施形態では、モレキュラー・シーブが形成される、実質的にフッ化物を含まない反応混合物の組成は、そのモル比に関して以下の表2で明らかにされ、但しQは、上述の通りである。
【表3】

【0025】
別の下位実施形態では、モレキュラー・シーブが形成される、実質的にフッ化物を含まない反応混合物の組成は、そのモル比に関して以下の表3で明らかにされ、但しQは、上述の通りである。
【表4】

【0026】
本明細書に記述される各実施形態では、反応混合物は、フッ化物イオンを実質的に含まない。本明細書で使用される、「フッ化物イオンを実質的に含まない」、「実質的にフッ化物を含まない」、及び「フッ化物イオンが実質的に存在しない」という用語は同義であり、フッ化物イオンが反応混合物中に完全に存在しないこと、又は、本明細書に記述されるモレキュラー・シーブの合成に対して、測定可能な効果を発揮するに満たない量で若しくは材料の利益を与えるに至らない量で存在することを意味する(例えば、Fは、1種又は複数の反応物の不純物として存在する)。フッ化物イオンを実質的に含まない反応混合物は、典型的には、0から0.20未満の間のF/TOモル比(0≦F/TO<0.20)を含有することになる。ある下位実施形態では、0≦F/TO≦0.15である。
【0027】
上述のように、本明細書に記述される各実施形態では、Tが、周期律表の第4〜14族の元素からなる群から選択される。ある下位実施形態では、Tは、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の下位実施形態では、Tが、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。ある下位実施形態では、TがSiである。組成的変数Tに関して選択される元素の供給源には、T及びXに関して選択される元素(単数又は複数)の酸化物、水酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩、アンモニウム塩、及び硫酸塩が含まれる。ある下位実施形態では、組成的変数Tに関して選択される元素(単数又は複数)の各供給源(単数又は複数)が、酸化物である。TがSiである場合、Siに関して本明細書で有用な供給源には、ヒュームド・シリカ、沈降シリケート、シリカヒドロゲル、ケイ酸、コロイド状シリカ、テトラアルキルオルトシリケート(例えば、オルトケイ酸テトラエチル)、及び水酸化シリカが含まれる。Geに関して本明細書で有用な供給源には、酸化ゲルマニウム及びゲルマニウムエトキシドが含まれる。
【0028】
本明細書に記述される各実施形態では、Xが、周期律表の第3〜13族の元素からなる群から選択される。ある下位実施形態では、Xは、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、インジウム(In)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。別の下位実施形態では、Xは、Al、B、Fe、Ga、及びこれらの混合物からなる群から選択される。任意選択の組成的変数Xに関して選択される元素の供給源には、Xに関して選択される元素(単数又は複数)の酸化物、水酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩、アンモニウム塩、及び硫酸塩が含まれる。酸化アルミニウムの典型的な供給源には、AlCl、Al(SO、水酸化アルミニウム(Al(OH))、カオリンクレイ、及びその他のゼオライトなどの、アルミン酸塩、アルミナ、及びアルミニウム化合物が含まれる。酸化アルミニウムの供給源の例は、LZ−210ゼオライト(Y型ゼオライト)である。ホウ素、ガリウム、及び鉄は、それらのアルミニウム及びケイ素の対応物に相当する形態で添加することができる。
【0029】
本明細書で既に述べたように、本明細書に記述される各実施形態では、反応混合物は、周期律表第1及び2族から選択される元素の少なくとも1種の供給源を使用して形成してもよい(本明細書ではMと呼ぶ)。ある下位実施形態では、反応混合物は、周期律表の第1族の元素の供給源を使用して形成される。別の下位実施形態では、反応混合物は、ナトリウム(Na)の供給源を使用して形成される。結晶化プロセスに有害ではない任意のM含有化合物が、適している。第1及び2族元素などの供給源には、これらの酸化物、水酸化物、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、シュウ酸塩、クエン酸塩、及び酢酸塩が含まれる。
【0030】
本明細書に記述される各実施形態では、モレキュラー・シーブ反応混合物を、複数の供給源により供給することができる。また、2種以上の反応成分を、1種の供給原により提供することができる。
【0031】
反応混合物は、バッチ式に又は連続的に調製することができる。本明細書に記述されるモレキュラー・シーブの結晶サイズ、形態、及び結晶化時間は、反応混合物の性質及び合成条件に伴って変化し得る。
【0032】
結晶化及び合成後処理
実際、モレキュラー・シーブは、
(a)本明細書で既に記述された、実質的にフッ化物を含まない反応混合物を調製するステップと、
(b)モレキュラー・シーブを形成するのに十分な結晶化条件下で反応混合物を維持するステップと
によって調製される。
【0033】
反応混合物は、モレキュラー・シーブが形成されるまで、高温で維持される。熱水結晶化は、通常、反応混合物が125℃から200℃の間の温度で自己圧力に曝されるように、圧力下で且つ通常はオートクレーブ内で実施される。
【0034】
反応混合物は、結晶化ステップ中、穏やかな撹拌(stirring)又は撹拌(agitation)に置いてもよい。本明細書に記述されるモレキュラー・シーブは、非晶質材料、モレキュラー・シーブと一致しない骨格トポロジーを有する単位セル、及び/又はその他の不純物(例えば、有機炭化水素)などの不純物を含有してもよいことが、当業者に理解されよう。
【0035】
熱水結晶化ステップ中、モレキュラー・シーブ結晶は、反応混合物から自発的に核形成させることができる。シード材料としてのモレキュラー・シーブの結晶の使用は、完全な結晶化を引き起こすのに必要な時間を短縮するのに有利にすることができる。さらに、シード添加は、任意の望ましくない相でのモレキュラー・シーブの核生成及び/又は形成を促進させることによって得られる生成物の、純度を高くすることができる。シードとして使用する場合、シード結晶は、反応混合物で使用される組成的変数Tの供給源の重量の、1%から10%間の量で添加される。
【0036】
モレキュラー・シーブが形成されたら、固体生成物を、濾過などの標準的な機械的分離技法によって反応混合物から分離する。結晶を水洗し、次いで乾燥することにより、合成されたままのモレキュラー・シーブ結晶が得られる。乾燥ステップは、大気圧中で又は真空中で行うことができる。
【0037】
モレキュラー・シーブは、合成されたままの状態で使用することができるが、典型的には熱で処理されることになる(焼成)。「合成されたままの」という用語は、結晶化後の、SDAカチオンを除去する前の形のモレキュラー・シーブを指す。SDAは、好ましくは酸化雰囲気(例えば、空気、酸素分圧が0kPaより高い気体)中、モレキュラー・シーブからSDAを除去するのに十分な当業者により容易に決定可能な温度での、熱処理(例えば、焼成)によって除去することができる。SDAは、2005年11月1日に発行されたNavrotsky及びParikhの米国特許第6,960,327号に記載された、光分解技法(例えば、モレキュラー・シーブから有機化合物を選択的に除去するのに十分な条件下で可視光よりも短い波長を有する光又は電磁放射線に、SDA含有モレキュラー・シーブ生成物を曝す)によって除去することもできる。
【0038】
モレキュラー・シーブは、その後、水蒸気、空気、又は不活性ガス中で、約200℃から約800℃に及ぶ温度で、1から48時間又はそれ以上に及ぶ時間にわたり焼成することができる。通常、余分な骨格カチオン(例えば、Na)を、イオン交換又はその他の知られている方法によって除去すること、及び水素、アンモニウム、又は任意の所望の金属イオンで置換することが望ましい。
【0039】
形成されたモレキュラー・シーブが中間体材料である場合、目的のモレキュラー・シーブは、ヘテロ原子格子置換技法などの合成後技法を使用して実現することができる。目標のモレキュラー・シーブは、酸浸出などの知られている技法によって、格子からヘテロ原子を除去することにより実現することもできる。
【0040】
本発明の方法から作製されるモレキュラー・シーブは、広く様々な物理形状に形成することができる。一般的に言えば、モレキュラー・シーブは、粉末、顆粒、又は成型製品、例えば2メッシュ(Tyler)スクリーンを通過し且つ400メッシュ(Tyler)スクリーン上に保持されるよう十分な粒度を有する押出し物などの形をとることができる。触媒が、有機結合剤を用いて押出しなどによって成型される場合、モレキュラー・シーブは、乾燥前に押し出すことができ、又は乾燥若しくは部分乾燥し、次いで押し出すことができる。
【0041】
モレキュラー・シーブは、有機変換プロセスに用いられる温度及びその他の条件に耐性のある、その他の材料で合成することができる。そのような母材には、活性及び不活性材料と、合成又は天然に生ずるモレキュラー・シーブ、並びにクレイやシリカ、金属酸化物などの無機材料が含まれる。そのような材料と、この材料を使用することができる手法の例は、Zonesらに1990年5月20日に発行された米国特許第4,910,006号及びNakagawaに1994年5月31日に発行された米国特許第5,316,753号に開示されている。
【0042】
SSZ−74は、気体分離のための吸着体として有用である(拡散制御及び疎水性を維持しながらその細孔体積が高いことによる)。SSZ−74は、酸素化剤(メタノールなど)をオレフィンに変換するために、また小アミンを作製するために、触媒で使用することもできる。SSZ−74は、気体流(自動車の排気ガスなど)中の窒素酸化物を減少させるのに使用することができる。SSZ−74は、燃焼エンジン汚染制御システムの低温始動炭化水素トラップとして使用することもできる。SSZ−74は、C断片を捕捉するのに特に有用である。SSZ−74は、炭化水素変換反応の触媒に、またベックマン転位に使用することもできる。
【0043】
モレキュラー・シーブの特徴付け
本発明の方法によるモレキュラー・シーブは、表4に示されるように、合成されたままの且つ無水状態の組成物を有し(モル比に関し)、その表中で組成的変数T、X、Q及びMと化学量論的変数bは、本明細書で既に述べた通りである。
【表5】

【0044】
本発明の方法によって合成されたモレキュラー・シーブは、そのXRDパターンによって特徴付けられる。表5の粉末XRDパターン線は、本発明により作製された、合成されたままのSSZ−74を表す。回折パターンの少しのばらつきは、格子定数の変化に起因する特定サンプルの骨格種のモル比のばらつきから生じる可能性がある。さらに、十分に小さい結晶は、ピークの形状及び強度に影響を及ぼすことになり、著しいピークの拡がりをもたらす。回折パターンの少しのばらつきは、調製に使用される有機化合物のばらつき及びサンプルごとのT/Xモル比のばらつきからも生ずる可能性がある。焼成も、XRDパターンのわずかなシフトを引き起こす可能性がある。これらのわずかな変動にも関わらず、基本的な結晶格子構造は変化しないままである。
【表6】

【0045】
表6のX線回折パターン線は、本発明により作製された焼成済みのSSZ−74を表す。
【表7】

【0046】
本明細書で示される粉末X線回折パターンは、標準的な技法により決定した。放射線はCuK−α放射線であった。θがブラッグ角である2θの関数としての、ピークの高さ及び位置は、ピークの相対的強度から読み取り(バックグラウンド用に調節)、記録された線に対応する平面間の間隔(単位:Å)dは、計算することができる。
【実施例】
【0047】
以下の例は本発明を実証するが、これに限定するものではない。
【0048】
1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)へキサンジカチオンの合成
アセトン50mL中に、N−メチルピロリジン5mL(48mmol)を溶解した。1,6ジブロモヘキサン(20mmol)4.9グラム(g)を添加し、得られた混合物を室温で3日間撹拌した。形成された固形分を濾過によって収集し、エーテルで洗浄し、真空炉内で保持した。次いで乾燥固体3.71gを、水18.7g及びAG1−X8樹脂9.57g(Bio−Rad Laboratories)に混合して、OH形態に変えた。この交換を一晩行い、次いで溶液を収集し、滴定した。
【0049】
(比較例1)
フッ化物媒介ゲルでのSSZ−74の合成
例1により合成された1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンの水酸化物溶液([OH]=0.48mmol/g)69.38gと、4.0gのCAB−O−SIL M−5ヒュームド・シリカ(Cabot Corporation)と、アルミニウム供給源としての0.28gのLZ−210(Union Carbide)とを、Teflonライナーで一緒に混合した。次いで50%HF溶液1.30gをゲルに添加し、混合して、均一な懸濁液を生成した。次いで、HO/SiOモル比が5.0よりも低くなるまで水を蒸発させるため、ゲルを95℃の炉内に置いた。次いでHO/SiO比を、必要量の水を添加することによって5.0に調節した。次いでTeflonライナーに蓋をし、125mL鋼製PARRオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを、150℃の炉内で6日間加熱した。次いでオートクレーブを取り出し、そのまま室温まで冷却した。次いでゲルを濾過によって回収し、脱イオン水(>1リットル)で完全に洗浄した。次いで回収された固形分を、95℃の炉内で一晩乾燥させた。
【0050】
得られた生成物を、粉末X線回折(XRD)により分析した。得られたパターンを図1に示す。パターンは、2008年3月25日に発行されたZonesらの米国特許第7,348,295号に示される結果と合致し、生成物がSSZ−74であったことを示す。得られた生成物は、走査電子顕微鏡法(SEM)によっても分析した。得られたSEM画像を図2及び3に示し、その形態は、サイズが約10ミクロンの大きな多結晶性凝集体からなることを示している。
【0051】
(比較例2)
1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサン([OH]=0.48mmol/g)の水酸化物溶液6.25gを、風袋計量済みのTeflon容器内で、0.06gのNaOH及び0.09gのF−2000水酸化アルミニウム(Reheis,Inc.)と完全に混合した。次いで0.90gのCAB−O−SIL M−5ヒュームド・シリカ(Cabot Corporation)を溶液と混合して、均一なゲルを生成した。次いで、HO/SiOモル比が5.0よりも低くなるまで水を蒸発させるため、ゲルを95℃の炉内に置いた。次いでHO/SiO比を、必要量の水を添加することにより5.0に調節した。オートクレーブを、150℃の炉内で10日間加熱した。次いでオートクレーブを取り出し、そのまま室温に冷却し、固形分を真空濾過によって回収し、水で十分に洗浄した。次いで回収した固形物を、95℃の炉内で一晩乾燥させた。
【0052】
得られた生成物を、粉末XRDにより分析した。パターンは、生成物がゼオライトβであったことを示す。
【0053】
(例1)
1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサン([OH]=0.48mmol/g)の水酸化物溶液6.25gを、風袋計量済みのTeflon容器内で、0.06gのNaOH及び0.045gのF−2000水酸化アルミニウム(Reheis,Inc.)と完全に混合した。次いで0.90gのCAB−O−SIL M−5ヒュームド/シリカ(Cabot Corporation)を溶液と混合して、均一なゲルを生成した。次いで比較例1のシード0.05gを、ゲルと混合した。次いで、HO/SiOモル比が5.0よりも低くなるまで水を蒸発させるため、ゲルを95℃の炉内に置いた。次いでHO/SiO比を、必要量の水を添加することによって5.0に調節した。オートクレーブを、150℃の炉内で6日間、静止条件下で加熱した。次いでオートクレーブを取り出し、そのまま室温に冷却した。次いでゲル固形分を、遠心分離によって回収した。次いで水相をデカントし、次いで固形分を再懸濁し、再び遠心分離した。これを、伝導率が200μmho/cmよりも低くなるまで繰り返した。次いで回収した固形分を、95℃の炉内で一晩乾燥させた。
【0054】
得られた生成物を、粉末XRDによって分析した。得られたパターンを図4に示す。粉末XRDは、サンプルが、少量のβゼオライト不純物を有するSSZ−74であることを示した。
【0055】
(例2)
1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサン([OH]=0.48mmol/g)の水酸化物溶液6.25gを、風袋計量済みのTeflon容器内で、0.06gのNaOH及び0.033gのF−2000水酸化物アルミニウム(Reheis,Inc.)と完全に混合した。次いで0.90gのCAB−O−SIL M−5ヒュームド・シリカ(Cabot Corporation)を溶液と混合して、均一なゲルを生成した。次いで比較例1のシード0.05gをゲルに混合した。次いで、HO/SiOモル比が7.5よりも低くなるまで水を蒸発させるため、ゲルを95℃の炉内に置いた。次いでHO/SiO比を、必要量の水を添加することによって7.5に調節した。オートクレーブを、150℃の炉内で6日間、回転スピット内でタンブル処理した(分当たりの回転数(又は「rpm」)が43)。次いでオートクレーブを取り出し、そのまま室温に冷却した。次いでゲル固形分を、遠心分離によって回収した。次いで水相をデカントし、次いで固形分を再懸濁し、再び遠心分離した。これを、伝導率が200μmho/cmよりも低くなるまで繰り返した。次いで回収した固形分を、95℃の炉内で一晩乾燥させた。
【0056】
得られた生成物を、粉末XRD及びSEMによって分析した。得られたXRDパターンを図5に示す。粉末XRDは、サンプルが、少量のβゼオライト不純物を有するSSZ−74であることを示した。SEM画像は、図6及び7に示され、個々の結晶及び結晶凝集体の両方が、フッ化物法により調製されたものよりも小さいことを示している。
【0057】
(例3)
1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサン([OH]=0.48mmol/g)の水酸化物溶液6.25gを、風袋計量済みのTeflon容器内で、0.06gのNaOH及び0.033gのF−2000水酸化アルミニウム(Reheis,Inc.)と完全に混合した。次いで0.90gのCAB−O−SIL M−5ヒュームド・シリカ(Cabot Corporation)を溶液と混合して、均一なゲルを生成した。次いで比較例1のシード0.05gをゲルに混合した。次いで、HO/SiOモル比が3.5よりも低くなるまで水を蒸発させるために、ゲルを95℃の炉内に置いた。次いでHO/SiO比を、必要量の水で添加することにより3.5に調節した。オートクレーブを、150℃の炉内で6日間、回転スピット内でタンブル処理した(43rpm)。次いでオートクレーブを取り出し、そのまま室温に冷却した。次いで固形分を、遠心分離により回収した。次いで水相をデカントし、次いで固形分を再懸濁し、再び遠心分離した。これを、伝導率が200μmho/cmよりも低くなるまで繰り返した。次いで回収された固形分を、95℃の炉内で一晩乾燥させた。
【0058】
得られた生成物を、粉末XRDにより分析した。粉末XRDパターンは、サンプルが少量のβ不純物を有するSSZ−74であることを示した。
【0059】
(例4)
SSZ−74を、シードを使用することなく上記例1の教示に従って合成した。得られた生成物を、粉末XRDにより分析した。得られたXRDパターンを図8に示す。粉末XRDは、サンプルが純粋なSSZ−74であることを示した。
【0060】
(例5)
1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサン([OH]=0.48mmol/g)の水酸化物溶液75.0gを、風袋計量済みのTeflon容器内で、0.72gのNaOH及び0.40gのF−2000水酸化アルミニウム(Reheis,Inc.)と完全に混合した。次いで10.80gのCAB−O−SIL M−5ヒュームド・シリカ(Cabot Corporation)を溶液と混合して、均一なゲルを生成した。次いで比較例1のシード0.60gをゲルに混合した。次いで、HO/SiOモル比が7.5よりも低くなるまで水を蒸発させるため、ゲルを95℃の炉内に置いた。次いでHO/SiO比を、必要量の水を添加することによって7.5に調節した。オートクレーブを、150℃の炉内で4日間、静的に加熱した。次いでオートクレーブを取り出し、そのまま室温に冷却した。次いでゲル固形分を遠心分離によって回収した。次いで水相をデカントし、次いで固形分を再懸濁し、再び遠心分離した。これを、伝導率が200μmho/cmよりも低くなるまで繰り返した。次いで回収された固形分を、95℃の炉内で一晩乾燥させた。
【0061】
得られた生成物を、粉末XRD及びSEMにより分析した。得られたXRDパターンを図9に示す。粉末XRDは、サンプルが純粋なSSZ−74であることを示した。SEM画像は、図10及び11に示され、結晶が非常に小さいことを示している。以下の表7は、得られた生成物に関する粉末X線回折線を示す。
【表8】

【0062】
(例6)
3.24gの水酸化ナトリウム及び11.16gの二臭化1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンを、36.36gの脱イオン水に溶解した。次いで0.59gのF−2000水酸化アルミニウム(Reheis,Inc.)を、得られた溶液に溶解した。次いで16.2gのCAB−O−SIL M−5ヒュームド・シリカ(Cabot Corporation)を添加し、混合して、均一なゲルを生成した。次いで例5のSSZ−74シード0.82gを、ゲルに混合した。次いでゲルをTeflonライナー内に置き、蓋をし、オートクレーブ内に密封して、150℃の炉内で10日間静的に加熱した。次いでオートクレーブを取り出し、そのまま室温に冷却した。次いでゲル固形分を、濾過によって回収し、脱イオン水1リットルで洗浄した。次いで回収した固形分を、95℃の炉内で一晩乾燥させた。
【0063】
得られた生成物を、粉末XRD及びSEMによって分析した。得られたXRDパターンを図12に示す。粉末XRDは、サンプルが純粋なSSZ−74であることを示した。SEM画像は、図13及び14に示され、結晶が非常に小さいことを示している。
【0064】
得られた生成物のSi/Al比は、37.6になるように、誘導結合プラズマ(ICP)分光分析によって決定した。得られた生成物を、粉末XRDにより分析した。以下の表8は、得られた生成物に関する粉末X線回折線を示す。
【表9】

【0065】
得られた生成物を、酸素2%/窒素98%の流れの中で、1℃/分の速度で550℃に加熱されたマッフル炉内で焼成し、550℃で5時間保持し、次いで粉末XRDによって分析した。得られたXRDパターンを図16に示す。以下の表9は、焼成した生成物に関する粉末X線回折線を示す。
【表10】

【0066】
(例7)
0.18gの水酸化ナトリウム及び0.62gの二臭化1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンを、6.73gの脱イオン水に溶解した。次いで0.033gのF−2000水酸化アルミニウム(Reheis,Inc.)を、得られた溶液中に溶解した。次いで0.90gのCAB−O−SIL M−5ヒュームド・シリカ(Cabot Corporation)を添加し、混合して、均一なゲルを生成した。次いで比較例1のSSZ−74シード0.05gをゲルに添加した。次いでゲルをTeflonライナー内に置き、蓋をし、オートクレーブ内に密封した。次いでオートクレーブを、160℃の炉内で10日間、回転スピット(43rpm)に挿入した。次いでオートクレーブを取り出し、そのまま室温に冷却した。次いで固形分を濾過によって回収し、脱イオン水1リットルで洗浄した。次いで回収した固形分を、95℃の炉内で一晩乾燥させた。
【0067】
得られた生成物を、粉末XRDにより分析した。得られたXRDパターンを、図15に示す。粉末XRDは、サンプルがSSZ−74であることを示した。
【0068】
(例8)
例7の合成手順を、4.04gの脱イオン水を使用して繰り返した。生成物は、層状化した相の不純物を有するSSZ−74であった。
【0069】
(例9)
例7の合成手順を、2.02gの脱イオン水を使用して繰り返した。生成物は、少量のゼオライトβ不純物及び層状化した相の不純物を有するSSZ−74であった。
【0070】
(例10)
0.18gの水酸化ナトリウム及び0.62gの二臭化1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンを、1.35gの脱イオン水に溶解した。次いで0.90gのCAB−O−SIL M−5ヒュームド・シリカ(Cabot Corporation)を添加し、混合して、均一なゲルを生成した。次いで比較例1の0.05gのSSZ−74シードをゲルに添加した。次いでゲルをTeflonライナー内に置き、蓋をし、オートクレーブ内に密封した。次いでオートクレーブを、160℃の炉内に5日間、回転スピット(43rpm)内に挿入した。次いでオートクレーブを取り出し、そのまま室温に冷却した。次いで固形分を、一連の遠心分離により回収し、水相の伝導率が200μmho/cmよりも低くなるまで脱イオン水で洗浄した。次いで回収した固形分を、95℃の炉内で一晩乾燥させた。
【0071】
得られた生成物を、粉末XRDにより分析した。粉末XRは、サンプルがSSZ−74であることを示した。
【0072】
(例11)
23mlのParr反応器のカップに、SDA 3.17g(3mM水酸化物)、酸化ゲルマニウム0.05g(約0.5mM GeO)、次いでテトラエチルオルトシリケート1.15g(5.5mM SiO)を入れた。この反応混合物に関するモル比は、下記の通りであった。
【表11】

【0073】
シリカ供給源を、閉じた系(カップに蓋をする)内で2日間、室温で加水分解させた。次いでカップを取り外し、混合物を、ほぼ蒸発乾固させた(数日)。風袋計量済みのカップ及びその内容物を再計量し、次いで反応中に水77mMが提供されるように水を調節した。次いで水で調節された反応を終了させ、43rpmで回転させながら170℃で加熱した。反応を14日間加熱した。
【0074】
得られた生成物を、粉末XRDにより分析した。粉末XRDは、サンプルがSSZ−74であることを示した。以下の表10は、得られた生成物に関する粉末X線回折線を示す。
【表12】

【0075】
得られた生成物を、酸素2%/窒素98%の流れの中で、1℃/分の速度で550℃に加熱されたマッフル炉内で焼成し、550℃で5時間保持し、次いで粉末XRDにより分析した。得られたパターンを図16に示す。以下の表11は、焼成した生成物に関する粉末X線回折線を示す。
【表13】

【0076】
(例12)
OH/SiO+GeOのモル比0.30を使用したこと以外は、例11を繰り返した。得られた生成物を、粉末XRDにより分析した。粉末XRDは、サンプルがSSZ−74であることを示した。
【0077】
(例13)
O/SiOのモル比7.0を使用したこと以外は、例11を繰り返した。得られた生成物を、粉末XRDにより分析した。粉末XRDは、サンプルが、若干のITQ−13不純物を有するSSZ−74であることを示した。
【0078】
(例14)
1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサン([OH]=0.95mmol/g)の水酸化物溶液3.44gを、風袋計量済みのTeflon容器内で、0.40gのCabosil M−5ヒュームド・シリカに添加した。次いで開放したTeflon容器を、水を蒸発させるためにベント式フード内に置いた。2日後、ゲルのHO/SiO比を、必要量の水を添加することによって10に調節した。次いでTeflonライナーに蓋をし、23mLの鋼製Parrオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを、170℃の対流式炉内のスピット上に置いた。オートクレーブを、加熱オーブン内で7日にわたり43rpmでタンブル処理した。次いでオートクレーブを取り出し、そのまま室温に冷却した。次いで固形分を濾過によって回収し、脱イオン水(>250mL)で完全に洗浄した。固形分を、室温で一晩乾燥させた。固形分の収量は0.45gであった。粉末XRD(AB1978)は、生成物が純粋なSSZ−74であることを示した。
【0079】
得られた生成物を、粉末XRDにより分析した。得られたXRDパターンを図17に示す。粉末XRDは、サンプルがSSZ−74であることを示した。
【0080】
(例15)
OH/SiOのモル比0.30を使用し、反応混合物を170℃で10日間加熱したこと以外は、例14を繰り返した。得られた生成物を粉末XRDにより分析した。粉末XRDは、サンプルがSSZ−74であることを示した。
【0081】
(例16)
OH/SiOのモル比0.20を使用し、反応混合物を150℃で8日間加熱したこと以外は、例14を繰り返した。得られた生成物を粉末XRDによって分析した。粉末XRDは、サンプルがSSZ−74であることを示した。
【0082】
(例17)
1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサン([OH]=0.95mmol/g)の水酸化物溶液3.44gを、風袋計量済みのTeflon容器内で1.35gのTEOSに添加した。次いでTeflon容器に蓋をし、密封し、23mLの鋼製Parrオートクレーブ内に置いた。オートクレーブを、室温でそのまま一晩保持し、その間にTEOSを加水分解させた。次にTeflonカップをオートクレーブから取り出し、開放した。次いで開放したTeflon容器を、水及びエタノールを蒸発させるためにベント式フード内に置いた。3日後、ゲルのHO/SiO比を、必要量の水を添加することによって10に調節した。次いでTeflonライナーに蓋をし、23mLの鋼製Parrオートクレーブ内に密封した。オートクレーブを、170℃の対流式炉内のスピットに置いた。オートクレーブを、加熱オーブン内で14日間にわたり43rpmでタンプル処理した。次いでオートクレーブを取り出し、そのまま室温に冷却した。次いで固形分を濾過によって回収し、脱イオン水(>250mL)で完全に洗浄した。固形分を、室温で一晩乾燥させた。
【0083】
得られた生成物を粉末XRDにより分析した。粉末XRDは、サンプルがSSZ−74であることを示した。
【0084】
次いで得られた生成物を、酸素2%/窒素98%の流れの中で、1℃/分の速度で550℃に加熱されたマッフル炉内で焼成し、550℃で5時間保持し、次いで粉末XRDにより分析した。得られたXRDパターンを図18に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)4価元素の少なくとも1種の酸化物の少なくとも1種の供給源と、(2)任意選択で、3価元素、5価元素、及びこれらの混合物の酸化物からなる群から選択される1種又は複数の酸化物の1種又は複数の供給源と、(3)水酸化物イオンと、(4)1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンとを、結晶化条件下で且つフッ化物イオンが実質的に存在しない状態で接触させるステップを含む、モレキュラー・シーブSSZ−74を調製する方法。
【請求項2】
前記モレキュラー・シーブが、モル比に関して下記の通りである反応混合物から調製され、
【表1】


上記の表で、
(1)Tは、周期律表の第4〜14族からの4価元素と、これらの混合物とからなる群から選択され、
(2)Xは、周期律表の第3〜13族からの3価及び5価元素と、これらの混合物とからなる群から選択され、
(3)aは、Xの原子価状態に等しく、
(4)Mは、周期律表の第1及び2族からの元素からなる群から選択され、
(5)Qは、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンからなる群から選択されるSDAである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Tが、Ge、Si、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
TがSiである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Xが、Ga、Al、Fe、B、In、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
Xが、Al、B、Fe、Ga、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Xが、Ga、Al、Fe、B、In、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
Xが、Al、B、Fe、Ga、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
TがSiであり、XがBである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記モレキュラー・シーブが、モル比に関して下記の通りである反応混合物から調製され、
【表2】


上記の表で、Qは、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンからなる群から選択されるSDAである、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記モレキュラー・シーブが、モル比に関して下記の通りである反応混合物から調製される、請求項1に記載の方法。
【表3】

【請求項12】
前記モレキュラー・シーブが、焼成後に、実質的に以下の表に示されるようなX線回折パターンを有する、請求項1に記載の方法。
【表4】

【請求項13】
前記モレキュラー・シーブが、モル比に関して下記の通りである反応混合物から調製され、
【表5】


上記の表で、
(1)Tは、周期律表の第4〜14族からの4価元素と、これらの混合物とからなる群から選択され、
(2)Xは、周期律表の第3〜13族からの3価及び5価元素と、これらの混合物とからなる群から選択され、
(3)aは、Xの原子価状態に等しく、
(4)Mは、周期律表の第1及び2族からの元素からなる群から選択され、
(5)Qは、1,6−ビス(N−メチルピロリジニウム)ヘキサンジカチオンからなる群から選択されるSDAである、
請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−202506(P2010−202506A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−41173(P2010−41173)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】