説明

水銀除去装置

【課題】 乾式ガス精製システムに適用して銅系吸収剤12の再利用を系統内で有効に実施する。
【解決手段】 ヒータ20及び入口弁21、出口弁22、流入開閉弁25、流出開閉弁26を統合的に制御することで、原料ガスの流通及び再生ガス流通手段の作動を制御し、原料ガスを水銀除去装置11に流通させるガス精製運転及び銅系吸収剤12から水銀を放出させて再生ガスと共に外部に搬送させる再生運転を切換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料ガスから水銀を除去する銅系吸収剤を有する水銀除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や廃棄物の減量化が求められており、バイオマスや廃棄物から製造した原料ガスを発電設備(燃料電池やガスエンジン)の燃料ガスとすることが考えられている。バイオマスや廃棄物から製造した原料ガスには環境に悪影響を与える不純物が含まれているため、不純物を除去することが不可欠である。特に、蒸気圧が高い水銀はフィルタ等では除去しにくいため、水銀を除去するための除去剤が使用されている。
【0003】
水銀の除去方法として、銅を主体とした銅系吸収剤を用いて水銀を吸収する技術(例えば、特許文献1参照)が従来から提案されている。この種の銅系吸収剤を乾式ガス精製システムの水銀除去装置に適用するに際し、本願発明者等により、銅系吸収剤を再生して再利用する技術や、再生時に放出された水銀の回収を効果的に実施する等の技術が種々研究されている。しかし、乾式ガス精製システムに適用して銅系吸収剤の再生や水銀の回収を行なうための水銀除去装置としての技術は確立されていないのが現状である。
【0004】
【特許文献1】特開2005−161255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記現状に鑑みてなされたもので、乾式ガス精製システムに適用して銅系吸収剤の再利用を系統内で有効に実施することができる水銀除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の水銀除去装置は、銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤が充填されガス化された原料ガスを流通させることで前記原料ガスから水銀を前記銅系吸収剤に吸収させる反応容器と、前記銅系吸収剤を加熱して吸収された水銀を放出させる加熱手段と、水銀を放出させるための再生ガスを前記反応容器に流通させる再生ガス流通手段と、前記原料ガスの流通及び前記加熱手段の作動及び前記再生ガス流通手段の作動を統合制御し、原料ガスを前記反応容器に流通させるガス精製運転及び前記銅系吸収剤から水銀を放出させて前記再生ガスと共に外部に搬送させる再生運転を切換える切換制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項1に係る本発明では、切換制御手段により、原料ガスを前記反応容器に流通させるガス精製運転と、銅系吸収剤から水銀を放出させて再生ガスと共に外部に搬送させる再生運転とが切換えられるので、乾式ガス精製システムに適用して銅系吸収剤の再利用を系統内で有効に実施することができる水銀除去装置となる。
【0008】
そして、請求項2に係る本発明の水銀除去装置は、請求項1に記載の水銀除去装置において、前記再生ガスと共に前記反応容器の外部に搬送された水銀を吸着する吸着剤を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る本発明では、銅系吸収剤から放出されて外部に搬送させた水銀を吸着することで、水銀の回収を容易に行うことができる。
【0010】
また、請求項3に係る本発明の水銀除去装置は、請求項2に記載の水銀除去装置において、前記吸着剤は、触媒作用あるいは化学反応性を有する成分を担持させ水銀との化学反応により生成した塩を吸着する添着活性炭であり、前記再生運転において前記再生ガス供給手段で前記添着活性炭に搬送される前記水銀を所定温度に冷却する冷却手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る本発明では、放出された水銀を、十分な吸収容量が得られる条件において添着活性炭に吸着させることができる。
【0012】
また、請求項4に係る本発明の水銀除去装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の水銀除去装置において、前記再生ガス流通手段による前記再生ガスの流通は、前記原料ガスの流通の下流側から上流側に向かう方向とされていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る本発明では、原料ガスの流通の下流側から上流側に再生ガスを流通させるので、放出された水銀が反応容器の下流側に送られることがなく、反応容器の下流側の浄化性能を低下させることがない。
【0014】
また、請求項5に係る本発明の水銀除去装置は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の水銀除去装置において、前記反応容器及び前記加熱手段が一対備えられ、前記ガス精製運転及び前記再生運転を切換える切換制御手段は、一方側の前記反応容器で前記ガス精製運転を動作させると共に他方側の前記反応容器で前記再生運転を動作させる手段であることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る本発明では、切換制御手段により、一対の反応容器によるガス精製運転と再生運転とを交互に行なわせることにより、水銀除去装置を連続して運転することが可能になる。
【0016】
また、請求項6に係る本発明の水銀除去装置は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の水銀除去装置において、前記原料ガスは、化石燃料、バイオマス、廃棄物をガス化した原料ガスであり、100℃〜200℃の温度範囲で流通することを特徴とする。
【0017】
請求項6に係る本発明では、化石燃料、バイオマス、廃棄物をガス化した原料ガスの乾式ガス精製システムの水銀除去装置に適用することができる。
【0018】
また、請求項7に係る本発明の水銀除去装置は、請求項6に記載の水銀除去装置において、前記銅系吸収剤には、不純物が不純物固化手段により固化され、固化された不純物が物理的濾過手段により除去された原料ガスが送られ、水銀を除去した後の原料ガスは、触媒により化学変換してハロゲン化物及び硫化物を除去する触媒変換手段に送られ、発電用の燃料ガスとして用いられることを特徴とする。
【0019】
請求項7に係る本発明では、ガス温度を露点以下にさげずに原料ガスに含まれる水銀等の重金属類を含む多成分の不純物を除去して発電用の燃料ガスを精製する乾式ガス精製システムにおいて、銅系吸収剤の再利用を有効に実施できる水銀除去装置となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水銀除去装置は、乾式ガス精製システムに適用して銅系吸収剤の再利用を系統内で有効に実施することが可能になる。即ち、オンラインにおいて銅系吸収剤を再生することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、化石燃料、バイオマス、廃棄物からなる固形燃料をガス化して得られた原料ガス、即ち、多種の不純物が入っている原料ガスを精製して燃料電池やガスエンジンの燃料ガスとするガス化設備の水銀除去装置に適用され、銅系吸収剤を系統内で再生して再利用を有効に実施できるようにしたものである。
【0022】
即ち、本発明者等は、水銀が吸収された銅系吸収剤を酸素含有雰囲気中で加熱することで、吸収した水銀を放出することができる知見を得るに至り、更に、知見を実証するに至っている。このような知見に基づき、実際のガス精製システムにおいて具体的な運用を行なうことができる水銀除去装置を発明するに至った。
【0023】
図1に基づいて本発明の一実施形態例に係る水銀除去装置を備えた乾式ガス精製システムを説明する。図1には乾式ガス精製システムの概略系統を示してある。図1に示した乾式ガス精製システムは、例えば、化石燃料、バイオマス、廃棄物からなる固形燃料をガス化して得られた原料ガスを精製して燃料電池やガスエンジンの燃料ガスとするシステムとされている。
【0024】
図に示すように、バイオマスガス化炉1で得られた原料ガスは不純物固化手段としてのハロゲン化物除去剤が吹き込まれる。ハロゲン化物除去剤が吹き込まれて固化された不純物を含む原料ガスは物理的濾過手段としてのバグフィルター2に送られ、固化された不純物がバグフィルター2で除去される(運転温度120℃〜160℃)。また、バグフィルター2では未反応のハロゲン化物除去剤やダスト等の固体状不純物も除去される。
【0025】
バグフィルター2で不純物が除去された原料ガスは重金属類除去装置3に送られ、重金属類除去装置3では金属水銀蒸気(Hg)をはじめ、塩基性ガス(アンモニア)、重金属類(砒素、セレン等)、有機塩素化合物(ダイオキシン)が吸着除去される(運転温度120℃〜160℃)。重金属類除去装置3に水銀除去装置11が備えられ、水銀除去装置11に銅系吸収剤12が充填されている。銅系吸収剤12は銅を主体として水銀を吸収する吸収剤であり、詳細は後述するが、加熱することで一度吸収した水銀が放出されて再生されるようになっている。
【0026】
尚、重金属類除去装置3は、銅系吸収剤12が反応容器に充填された水銀除去装置11そのものとする構成や、触媒作用あるいは化学反応性を有する成分を担持させ水銀との化学反応により生成した塩を吸着する添着活性炭の充填層との組み合わせにより構成された装置が適用可能である。
【0027】
重金属類除去装置3で重金属類が除去された原料ガスは熱交換器8で昇温された後、ハロゲン化物除去装置4でHClやHF等のハロゲン化水素が吸収されて除去される(運転温度250℃〜450℃)。ハロゲン化水素が吸収されて除去された原料ガスは脱硫装置5に送られ、硫化物が吸収されて除去される(運転温度250℃〜450℃)。硫化物が脱硫除去された原料ガスは燃料ガスとして発電装置6(例えば、溶融炭酸塩型燃料電池、ガスエンジン、ガスタービン等)に送られる。
【0028】
図1に示した乾式ガス精製システムでは、ダスト等の固体状不純物がバグフィルター2で濾過されて除去され、金属水銀蒸気(Hg)をはじめ重金属類、有機塩素化合物が重金属類除去装置3で除去され、ハロゲン化水素がハロゲン化物除去装置4で除去され、硫化物が脱硫装置5に吸収されて除去される。これにより、バイオマスをガス化した原料ガス、即ち、不純物として多種の不純物が入っている原料ガスを発電装置6の燃料ガスとして精製することができる。
【0029】
図2、図3に基づいて水銀除去装置11を具体的に説明する。図2、図3には本発明の第1実施形態例に係る水銀除去装置11の概略構成を示してあり、図2は原料ガスを水銀除去装置11(反応容器)に流通させているガス精製運転の状況、図3は銅系吸収剤12から水銀を放出させて再生ガスと共に外部に搬送させる再生運転の状況である。
【0030】
図に示すように、水銀除去装置11の入口側(下側)の原料ガス経路15には入口弁21が設けられ、水銀除去装置11の出口側(上側)の原料ガス経路15には出口弁22が設けられている。出口弁22と水銀除去装置11の出口との間には再生ガス流通手段としての再生ガス供給路23が接続され、入口弁21と水銀除去装置11の出口との間には再生ガス流通手段としての再生ガス排出路24が接続されている。再生ガス供給路23からは再生ガスとして、例えば、1%から2%の酸素を含む窒素ガスが供給され、再生ガス排出路24からは放出された水銀を含む再生ガスが排出される。
【0031】
水銀除去装置11の反応容器の外周部には加熱手段としてのヒータ20が備えられ、ヒータ20により水銀除去装置11の内部に充填された銅系吸収剤12が加熱されるようになっている。銅系吸収剤12は酸素含有雰囲気で加熱(水銀除去装置11における水銀除去ガス精製運転の運転温度よりも高い温度)されることにより、吸収されて濃縮された水銀が放出される。
【0032】
再生ガス供給路23には流入開閉弁25が設けられ、再生ガス排出路24には流出開閉弁26が設けられている。流出開閉弁26の後流側の再生ガス排出路24には冷却手段27が備えられ、放出された水銀を含む放出ガスは冷却手段27により所定温度(例えば、60℃以下の温度)に冷却される。冷却手段27の後流側の再生ガス排出路24には吸着剤としての添着活性炭28が充填された吸収容器29が備えられ、放出された水銀を含む放出ガスが吸収容器29を流通することにより添着活性炭28に水銀が吸着される。
【0033】
ヒータ20及び入口弁21、出口弁22、流入開閉弁25、流出開閉弁26は統合的に制御されることで、原料ガスの流通及び再生ガス流通手段の作動(再生ガス供給路23及び再生ガス排出路24の再生ガスの流通)が制御され、原料ガスを水銀除去装置11(反応容器)に流通させるガス精製運転及び銅系吸収剤12から水銀を放出させて再生ガスと共に外部に搬送させる再生運転が切換えられるようになっている(切換制御手段)。
【0034】
上述した水銀除去装置11におけるガス精製運転及び再生運転の動作を説明する。図2、図3中白抜きの状態の弁は開いている状態を示し、黒色の状態の弁は閉じている状態を示してある。
【0035】
ガス精製運転では、原料ガスを水銀除去装置11に流通させて水銀を銅系吸収剤12に吸着させる。即ち、図2に示すように、ヒータ20を停止させ、入口弁21及び出口弁22を開き、流入開閉弁25及び流出開閉弁26を閉じる。これにより、原料ガスが水銀除去装置11を流通して銅系吸収剤12に水銀が吸収される(ガス精製運転)。
【0036】
水銀除去装置11による除去性能が低下した場合、もしくは、設備の運転停止時に、再生ガス供給路23から再生ガスを供給して銅系吸収剤12から水銀を放出させる。即ち、図3に示すように、ヒータ20を動作させて水銀除去装置11を、例えば、180℃以上(例えば、250℃)に加熱し、入口弁21及び出口弁22を閉じ、流入開閉弁25及び流出開閉弁26を開く。
【0037】
この状態で再生ガス供給路23から再生ガスを供給して高温の酸素含有雰囲気で銅系吸収剤12から水銀を放出させ、放出された水銀と共に再生ガスを再生ガス排出路24から排出する。再生ガス排出路24に搬送された水銀を含む放出ガスは冷却手段27により、例えば、60℃以下に冷却され、水銀を含む放出ガスを吸収容器29に流通させる。水銀を含む放出ガスが吸収容器29に流通することで添着活性炭28に水銀が吸着され、水銀が除去された放出ガスが排気される。これにより、銅系吸収剤12が再生されて再利用される(再生運転)。
【0038】
再生ガス供給路23は水銀除去装置11の出口側に接続され、再生ガス排出路24は水銀除去装置11の入口側に接続されているので、再生運転時は、水銀除去装置11の下流側から上流側に再生ガスが流通することになる。このため、放出した水銀が水銀除去装置11の下流側に送られることがなく、再生後の水銀除去装置11は下流側の清浄度合いが高く保たれ、再生運転時の水銀の除去性能を高く維持することができる。つまり、反応容器の下流側の浄化性能を低下させることがない。
【0039】
添着活性炭28は、環境対策やLNG製造プラントの機器腐食防止用等に水銀蒸気除去用として用いられる粒状のもので、触媒作用あるいは化学反応性を有する成分を担持させ水銀との化学反応により生成した塩を吸着することで水銀を吸収するものである。添着活性炭28は、60℃以下の常温域で水銀の高い吸収能力を有することが確認されている。
【0040】
冷却手段27により水銀を含む放出ガスを60℃以下の常温域に冷却することで、少量の添着活性炭28により十分な量の水銀を吸収して回収することができる。つまり、十分な吸収容量が得られる条件下において添着活性炭28に水銀を吸着させて回収することができる。
【0041】
上述した水銀除去装置11を用いることにより、乾式ガス精製システムに適用して銅系吸収剤12の再利用を系統内で有効に実施することができる。一つの水銀除去装置11によりガス精製運転と再生運転を切換える構成とされているので、例えば、1日単位、1週間単位で、定期的に運転と停止を繰り返す運用を行なう乾式ガス精製システムに適用して好適である。また、水銀除去装置11の下流側に、例えば、ガス分析手段を設け、ガス分析手段の情報に基づいて水銀の除去性能が低下した時に、自動的に弁を切換えて再生運転に切換える構成とすることも可能である。
【0042】
図4に基づいて本発明の第2実施形態例に係る水銀除去装置を説明する。図4には本発明の第2実施形態例に係る水銀除去装置の概略構成を示してある。尚、図2、図3に示した第1実施形態例と同一部材には同一符号を付してある。
【0043】
第2実施形態例の水銀除去装置は、反応容器及び加熱手段を一対備え、ガス精製運転及び再生運転が交互に行なわれるように動作が切換えられるようになっている。このため、水銀除去装置の連続運転が可能になっている。
【0044】
図に示すように、一対の水銀除去装置31a、31bが備えられ、水銀除去装置31の入口側(下側)及び出口側(上側)には原料ガス経路32が設けられている。入口側の原料ガス経路32からは水銀除去装置31a、31bの入口部に繋がる分岐供給路33a、33bが分岐して設けられ、水銀除去装置31a、31bの出口部に繋がる分岐排出路34a、34bが出口側の原料ガス経路32に接続されている。分岐供給路33a、33bには入口弁35a、35bがそれぞれ設けられ、分岐排出路34a、34bには出口弁36a、36bがそれぞれ設けられている。
【0045】
水銀除去装置31a、31bの出口側には再生ガス流通手段としての再生ガス分岐供給路37a、37bがそれぞれ設けられ、再生ガス分岐供給路37a、37bには再生ガス流通手段としての再生ガス供給路38が接続されている。また、水銀除去装置31a、31bの入口側には再生ガス流通手段としての再生ガス分岐排出路39a、39bがそれぞれ設けられ、再生ガス分岐排出路39a、39bには再生ガス流通手段としての再生ガス排出路40が接続されている。
【0046】
再生ガス供給路38からは再生ガスとして、例えば、1%から2%の酸素を含む窒素ガスが供給され、再生ガス分岐供給路37a、37bから水銀除去装置31a、31bに再生ガスが供給される。水銀除去装置31a、31bに供給された再生ガス(水銀を含む再生ガス)は再生ガス分岐排出路39a、39bから再生ガス排出路40を通って排出される。
【0047】
水銀除去装置31a、31bの内部には、第1実施形態例と同様に銅系吸収剤12が充填されている。水銀除去装置31a、31bの反応容器の外周部には加熱手段としてのヒータ41a、41bが備えられ、ヒータ41a、41bにより水銀除去装置31a、31bの内部に充填された銅系吸収剤12が加熱されるようになっている。銅系吸収剤12は酸素含有雰囲気で加熱(乾式ガス精製システムでの運転温度よりも高い温度)されることにより、吸収されて濃縮された水銀が放出される。
【0048】
再生ガス供給路38から分岐する再生ガス分岐供給路37a、37bには流入開閉弁44a、44bが設けられ、再生ガス排出路40に接続される再生ガス分岐排出路39a、39bには流出開閉弁45a、45bが設けられている。
【0049】
再生ガス排出路40には、第1実施形態例と同様に冷却手段27が備えられ、放出された水銀を含む放出ガスは冷却手段27により所定温度(例えば、60℃以下の温度)に冷却される。冷却手段27の後流側の再生ガス排出路24には吸着剤としての添着活性炭28が充填された吸収容器29が備えられ、放出された水銀を含む放出ガスが吸収容器29を流通することにより添着活性炭28に水銀が吸着される。
【0050】
ヒータ41及び入口弁35a、35b、出口弁36a、36b、流入開閉弁44a、44b、流出開閉弁45a、45bは統合的に制御されることで、原料ガスの流通及び再生ガス流通手段の作動(再生ガス供給路38及び再生ガス排出路40の再生ガスの流通)が制御され、水銀除去装置31a、31b(反応容器)に原料ガスもしくは再生ガスを選択的に流通させて、ガス精製運転及び銅系吸収剤12から水銀を放出させて再生ガスと共に外部に搬送させる再生運転が水銀除去装置31a、31bで交互に切換えられるようになっている(切換制御手段)。
【0051】
上述した水銀除去装置31a、31bにおけるガス精製運転及び再生運転の動作を説明する。図4中白抜きの状態の弁は開いている状態を示し、黒色の状態の弁は閉じている状態を示してあり、一方の水銀除去装置31aでガス精製運転が実施され、他方の水銀除去装置31bで再生運転が実施されている状態である。
【0052】
図4に示した状態では、一方の水銀除去装置31aのヒータ41aを停止させ、他方の水銀除去装置31aのヒータ41bを動作させる。入口弁35a及び出口弁36aを開くと共に、入口弁35b及び出口弁36bを閉じる一方、流入開閉弁44a及び流出開閉弁45aを閉じると共に、流入開閉弁44b及び流出開閉弁45bを開く。
【0053】
これにより、一方の水銀除去装置31aに原料ガスが流通して銅系吸収剤12に水銀が吸収され(ガス精製運転)、他方の水銀除去装置31aに再生ガスが供給されて高温の酸素含有雰囲気で銅系吸収剤12から水銀が放出され、放出された水銀と共に再生ガスを再生ガス排出路40から排出する(再生運転)。再生ガス排出路40に搬送された水銀を含む放出ガスは冷却手段27により、例えば、60℃以下に冷却され、水銀を含む放出ガスを吸収容器29に流通させる。水銀を含む放出ガスが吸収容器29に流通することで添着活性炭28に水銀が吸着され、水銀が除去された放出ガスが排気される。
【0054】
一方の水銀除去装置31aの水銀除去性能が低下した場合、前述した弁を逆に開閉させ、他方の水銀除去装置31bでガス精製運転を行うと共に一方の水銀除去装置31aで再生運転を行い、銅系吸収剤12を再生する。このため、一対の水銀除去装置31a、31bでガス精製運転と再生運転を交互に行うことができ、水銀除去装置の運転を連続して行うことができる。
【0055】
上述した水銀除去装置31a、31bを用いることにより、乾式ガス精製システムに適用して銅系吸収剤12の再利用を系統内で有効に実施することができる。一対の水銀除去装置31a、31bによりガス精製運転と再生運転が交互に行なえる構成とされているので、常時運転での運用を行なう乾式ガス精製システムや、不定期で運転を停止させる乾式ガス精製システムに適用して好適である。第1実施形態例と同様に、水銀除去装置31a、31bの下流側に、例えば、ガス分析手段を設け、ガス分析手段の情報に基づいて水銀の除去性能が低下した時に、自動的に弁を切換えてガス精製運転と再生運転を切換える構成とすることも可能である。
【0056】
尚、本発明の水銀除去装置は、図1に示したシステム以外のガス化設備にも適用することができる。例えば、バイオマスや廃棄物から製造した原料ガス、あるいは、化石燃料から得られた原料ガス、即ち、多成分の不純物を有する原料ガスから的確に水銀を除去する水銀除去装置であれば、ガス化設備の態様は種々の設備に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、原料ガスから水銀を除去する銅系吸収剤を有する水銀除去装置の産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】乾式ガス精製システムの概略系統図である。
【図2】本発明の第1実施形態例に係る水銀除去装置の概略構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態例に係る水銀除去装置の概略構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態例に係る水銀除去装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0059】
1 バイオマスガス化炉
2 バグフィルター
3 重金属類除去装置
4 ハロゲン化物除去装置
5 脱硫装置
6 発電装置
8 熱交換器
11、31 水銀除去装置
12 銅系吸収剤
15、32 原料ガス経路
20、41 ヒータ
21、35 入口弁
22、36 出口弁
23、38 再生ガス供給路
24、40 再生ガス排出路
25、44 流入開閉弁
26、45 流出開閉弁
27 冷却手段
28 添着活性炭
33 分岐供給路
34 分岐排出路
37 再生ガス分岐供給路
39 再生ガス分岐排出路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を主体として水銀を吸収する銅系吸収剤が充填されガス化された原料ガスを流通させることで前記原料ガスから水銀を前記銅系吸収剤に吸収させる反応容器と、
前記銅系吸収剤を加熱して吸収された水銀を放出させる加熱手段と、
水銀を放出させるための再生ガスを前記反応容器に流通させる再生ガス流通手段と、
前記原料ガスの流通及び前記加熱手段の作動及び前記再生ガス流通手段の作動を統合制御し、原料ガスを前記反応容器に流通させるガス精製運転及び前記銅系吸収剤から水銀を放出させて前記再生ガスと共に外部に搬送させる再生運転を切換える切換制御手段とを備えた
ことを特徴とする水銀除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水銀除去装置において、
前記再生ガスと共に前記反応容器の外部に搬送された水銀を吸着する吸着剤を備えた
ことを特徴とする水銀除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水銀除去装置において、
前記吸着剤は、触媒作用あるいは化学反応性を有する成分を担持させ水銀との化学反応により生成した塩を吸着する添着活性炭であり、
前記再生運転において前記再生ガス流通手段で前記添着活性炭に搬送される前記水銀を所定温度に冷却する冷却手段を備えた
ことを特徴とする水銀除去装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の水銀除去装置において、
前記再生ガス流通手段による前記再生ガスの流通は、前記原料ガスの流通の下流側から上流側に向かう方向とされている
ことを特徴とする水銀除去装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の水銀除去装置において、
前記反応容器及び前記加熱手段が一対備えられ、
前記ガス精製運転及び前記再生運転を切換える切換制御手段は、一方側の前記反応容器で前記ガス精製運転を動作させると共に他方側の前記反応容器で前記再生運転を動作させる手段である
ことを特徴とする水銀除去装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の水銀除去装置において、
前記原料ガスは、化石燃料、バイオマス、廃棄物をガス化した原料ガスであり、100℃〜200℃の温度範囲で流通する
ことを特徴とする水銀除去装置。
【請求項7】
請求項6に記載の水銀除去装置において、
前記銅系吸収剤には、不純物が不純物固化手段により固化され、固化された不純物が物理的濾過手段により除去された原料ガスが送られ、
水銀を除去した後の原料ガスは、触媒により化学変換してハロゲン化物及び硫化物を除去する触媒変換手段に送られ、
発電用の燃料ガスとして用いられる
ことを特徴とする水銀除去装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−269003(P2009−269003A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124023(P2008−124023)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「新エネルギー技術研究開発/バイオマスエネルギー高効率転換技術開発(転換要素技術開発)/多燃料・多種不純物対応乾式ガス精製システム研究開発」、共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】