説明

水難溶性薬物含有パップ剤

【課題】 水と水溶性高分子とを含有する膏体と支持体よりなるパップ剤において、水難溶性薬物を膏体中に均一、安定に配合する。
【解決手段】 水と水溶性高分子とを含有する膏体と支持体よりなるパップ剤において、
水難溶性薬物と、
下記化学式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体と
を含有することを特徴とする水難溶性薬物含有パップ剤。
O−[(EO)(AO)]−R (I)
(式中、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、m,nはそれぞれEO、AOの平均付加モル数で、1≦m,n≦70である。EOとAOの合計に対するEOの割合は、20〜80質量%である。EOとAOはブロック状付加でもランダム状付加でもよい。R,Rは炭素数1〜4の炭化水素基または水素原子であり、R,Rの炭化水素基数に対する水素原子数の割合が0.15以下である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水難溶性薬物含有パップ剤、特に水及び水溶性高分子を含有する膏体と支持体よりなるパップ剤における水難溶性薬物の分散性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パップ剤としては、水及び水溶性高分子を含み常温で粘着性を有する膏体と支持体よりなるものが一般的に知られているが、このようなパップ剤中に、水に対して難溶性の薬物を配合する場合には、当該水難溶性薬物は水系の膏体基剤中に溶解することができないために、結晶状態で分散して配合されていた。このために、系の中で薬物の局在化が起こったり、凝集やブツが生じたりしてしまい、膏体中の薬物が不均一になりやすく、製造上の大きな問題となっていた。また、このことに起因して、薬物の経皮吸収性が悪かったり、薬理作用が十分に発揮出来なかったりすることもしばしば認められた。なお、ここでいう水難溶性薬物とは、水に対して溶解しにくい薬物を指し、日本薬局方の通則で規定する水に対する溶解性として、溶けにくい、極めて溶けにくい、あるいはほとんど溶けない、との性状を有するものが該当する。
【0003】
一方、このような水難溶性薬物を、結晶分散ではなく、溶解状態で系に配合する方法も試みられており、例えば、水難溶性薬物を溶解する油分や溶剤と一緒に配合する方法が行われている。このような例としては、例えば、ピロキシカムに対してトリアセチンやクエン酸トリエチルを配合したパップ剤(特許文献1参照)、あるいは、に見られるようなインドメタシンに対してクロタミトンを配合したパップ剤(特許文献2参照)等が知られている。しかしながら、これらの油分や溶剤は一般的なパップ剤に見られるような常温で粘着性を有する水溶性の膏体とは混和しないため、系に配合した際に、油分や溶剤が分離あるいは局在化したり、場合によっては薬物の結晶が析出してしまうといった問題が認められた。
【0004】
このような均一性の問題を解決するために、さらに、薬物を油分や溶剤に溶解したものをO/Wエマルションとして系に配合する試みもなされてきた(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、本発明者らが検討したところによると、油分等に溶解してそのままパップ剤の系に配合した製剤に比べて、製造工程が煩雑になったり、乳化剤として加える界面活性剤がパップ剤の保形性や粘着性に対して影響してしまったり、場合によっては薬理効果の発現が遅れてしまう等の問題が見られた。
【0005】
【特許文献1】特願平5−509145号公報
【特許文献2】特開平8−11537号公報
【特許文献3】特願平6−247847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、水難溶性薬物を結晶状態で分散して配合したパップ剤は、薬物の分散性が悪く、ブツや凝集等が発生してしまい、水難溶性薬物の含有量を均一、安定に制御することが難しかった。また一方で、水難溶性薬物を油分や溶剤に溶解して配合したり、あるいはO/Wエマルションとして配合した場合には、製造工程が煩雑になったり、乳化剤として加える界面活性剤がパップ剤の保形性や粘着性に対して影響してしまったり、場合によっては薬理効果の発現が遅れてしまったりという問題点が見出されてきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前述の課題に鑑み鋭意研究を行った結果、特定構造のアルキレンオキシド誘導体が水難溶性薬物に対して相溶性が良いことを見出し、水難溶性薬物を溶解または均一に分散することが出来ることを確認した。また、前記アルキレンオキシド誘導体は、水や水溶性の成分に対しても相溶性が良く、特にパップ剤を構成する常温で粘着性の水溶性高分子等の基剤に対し、水難溶性薬物を均一に分散出来ることを見出した。そして、このことから、従来のパップ剤膏体中において見られたような、水難溶性薬物の局在化やブツ、凝集といった現象を回避し、水及び水溶性高分子よりなる膏体基剤中に水難溶性薬物を分散性良く均一に配合することが可能となった。
【0008】
従って、本発明者らは、水及び水溶性高分子を含有する膏体と支持体よりなるパップ剤において、水難溶性薬物と、特定構造のアルキレンオキシド誘導体とを含有することを特徴とした水難溶性薬物含有パップ剤を調製することで、前述したような問題点を克服することを見出し、本発明を完成するに至った。
また、このようにして調製した水難溶性薬物含有パップ剤は、本発明者らが予期しなかったことに、水難溶性薬物の分散性が改善されただけではなく、貼付した皮膚に対してしっとりさを著しく向上させることが認められ、また皮膚刺激性が低く、安全性にも優れていることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明にかかる水難溶性薬物含有パップ剤は、水と水溶性高分子とを含有する膏体と支持体よりなるパップ剤において、水難溶性薬物と、下記化学式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体とを含有することを特徴とする。
O−[(EO)(AO)]−R (I)
(式中、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、mおよびnはそれぞれ前記オキシエチレン基、オキシアルキレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦n≦70である。オキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、20〜80質量%である。オキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。R,Rは、同一もしくは異なってもよい炭素数1〜4の炭化水素基または水素原子であり、RおよびRの炭化水素基数に対する水素原子数の割合が0.15以下である。)
【0010】
また、前記水難溶性薬物含有パップ剤において、アルキレンオキシド誘導体が、オキシエチレン基とオキシアルキレン基がランダム状に付加していることが好適である。また、前記水難溶性薬物含有パップ剤において、アルキレンオキシド誘導体の含有量が、膏体全量に対して0.01〜50質量%であることが好適である。また、前記水難溶性薬物含有パップ剤において、さらにI.O.B値が0.1〜1.2の油分を含有することが好適である。また、前記水難溶性薬物含有パップ剤において、界面活性剤を実質的に含有しないことが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる水難溶性薬物含有パップ剤は、水及び水溶性高分子を含有する膏体と支持体よりなるパップ剤において、水難溶性薬物とともに、特定構造のアルキレンオキシド誘導体を含有することによって、当該水難溶性薬物が膏体中に均一に配合され、安定性に優れている。また、本発明にかかる水難溶性薬物含有パップ剤は、貼付した皮膚に対してしっとりさを著しく向上させ、また皮膚刺激性が低く、安全性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明において特徴的な式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体において、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、具体的には、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。
【0013】
mはオキシエチレン基の平均付加モル数であり、1≦m≦70、好ましくは2≦m≦50である。nは炭素数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1≦n≦70、好ましくは2≦n≦50である。オキシエチレン基または炭素数3〜4のオキシアルキレン基が0であるとしっとり感が落ち、70を越えるとべたつき感がでてきて、すべすべ感が十分に得られない傾向がある。
また、オキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合が、20〜80質量%であることが好ましい
【0014】
エチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドの付加する順序は特に指定はない。またオキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。ブロック状には2段ブロックのみならず、3段以上のブロックも含まれる。好ましくはランダム状に付加されているものが挙げられる。
【0015】
及びRは炭素数1〜4の炭化水素基もしくは水素原子で、炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基である。炭素数5以上の炭化水素基では親水性が低下し、しっとり感が低下する。R,Rは、同一であっても異なっていても良い。
【0016】
およびRはそれぞれ同種のものを用いても、炭素数1〜4の炭化水素基と水素原子とが混在しても、異種の炭素数1〜4の炭化水素基が混在してもよい。ただし、RおよびRの炭化水素基のうち、炭化水素基と水素原子の存在割合は、炭化水素基の数(X)に対する水素原子の数(Y)の割合Y/Xが0.15以下、好ましくは0.06以下である。Y/Xの割合が0.15を越えると、べたつき感がでてくる。
【0017】
上記アルキレンオキシド誘導体において、具体的にはPOE(9)POP(2)ジメチルエーテル、POE(7)POP(12)ジメチルエーテル、POE(14)POP(7)ジメチルエーテル、POE(17)POP(4)ジメチルエーテル、POE(10)POP(10)ジメチルエーテル、POE(6)POP(14)ジメチルエーテル、POE(15)POP(5)ジメチルエーテル、POE(25)POP(25)ジメチルエーテル、POE(27)POP(14)ジメチルエーテル、POE(55)POP(28)ジメチルエーテル、POE(36)POP(41)ジメチルエーテル、POE(9)POB(2)ジメチルエーテル、POE(14)POB(7)ジメチルエーテル、POE(10)POP(10)ジエチルエーテル、POE(10)POP(10)ジプロピルエーテル、POE(10)POP(10)ジブチルエーテル等が挙げられる。
【0018】
本発明のアルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している化合物にエチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒の存在下にエーテル化させることによって得られる。
【0019】
本発明の水難溶性薬物含有パップ剤へのアルキレンオキシド誘導体の配合量は特に限定されないが、通常は膏体全量中、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは0.5〜30質量%配合される。アルキレンオキシド誘導体の配合量が少なすぎると十分な安定化効果が得られないため好ましくなく、またアルキレンオキシド誘導体の配合量が多すぎると製剤の使用性を損なうために好ましくない。
【0020】
本発明において使用される水難溶性薬物としては、例えば、ビタミン剤、血行促進剤、局所麻酔剤、抗ヒスタミン剤、ステロイド剤、鎮痛消炎剤、抗真菌剤、抗生物質、抗ウィルス剤、サルファ剤、代謝性剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
ビタミン剤としては、例えばビタミンA及びその類縁物質として、肝油、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、ビタミンA、ビタミンA油等、ビタミンD及びその類縁物質としてビタミンD、ビタミンD1、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、マキサカルシトール、タカルシトール等、ビタミンE及びその類縁物質としてコハク酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ビタミンEコハク酸エステルカルシウム等、その他ビタミン類として、ビタミンF、ビタミンH、ビタミンK1、ビタミンU(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)等が挙げられる。
【0022】
血行促進剤としては、例えばα−ボルネオール、アセチルコリン、イクタモール、イノシトールヘキサニコチネート、エチニルエストラジオール、エフェドリン、カフェイン、カプサイシン、カロペプタイド、カンタリスチンキ、酢酸トコフェロール、ジエチルスチルベストロール、シクランデレート、ジンゲロン、シンナリジン、タンニン酸、トラゾリン、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ノニル酸ワレニルアミド、ビタミンE、ベラパミル、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0023】
局所麻酔剤としては、例えばアミノ安息香酸エチル、エピロカイン、オキシブタニカイン、カタカイン、コカイン、ジブカイン、ジメチソキン、テーカイン、テトラカイン、ブタニカイン、プビルカイン、ブラモオシン、プラモキシン、プロカイン、プロビトカイン、ヘキソチオカイン、メピバカイン、メブリルカイン、メブリルブタニカイン、リドカイン、オキシポリエトキシドデカン、クロロブタノール、ジブカイン、テーカイン、プロカイン、ペルカミンバーゼ、ベンジルアルコール、ベンゾカイン、リドカイン等が挙げられる。
【0024】
抗ヒスタミン剤としては、例えばイソサイベンジルクレミゾール、インサイベンジル、イソチペンジル、イプロヘプチン、ジフェニルピラリン、ジフェンヒドラミン、トルジルアミン、トリプロリジン、プロメタジン、メトジラジン、カルビノキサシン、クロルフェニラミン、ジフェニルイミダゾール、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、ジフェンヒドラミン、トリペレナミン、トンジアルミン、フェンベンズアミン、プロメタジン、ペリアクチン、マレイン酸カルビノキサミン、クロルフェニラミン、フェニラミン、メキタジン、等が挙げられる。
【0025】
ステロイド類としては例えばヒドロコルチゾン、プレゾニゾロン、パラメタゾン、ベクロメタゾンプロピオナート、フルメタゾン、ベタメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニドアセテート、プロピオン酸クロベクゾール、アムシノニド、フルルヘキシジン、吉草酸酢酸プレドニゾロン、吉草酸ジフルコルドロン、吉草酸デキサメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸コルチゾン、酢酸ジフロラゾン、酢酸デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、ジフルプレドナート、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ダイクロリゾン、デスオキシメタゾン、パラメタゾン、ハルシノニド、ビバル酸フルメタゾン、ファルネシル酸プレドニゾロン、ブデソニド、フランカルボン酸モメタゾン、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルドロキシコルチド、フルドロコルチド、フルドロコルチゾンアセテート、プロピオン酸アルクロメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、プロピオン酸デキサメタゾン、プロピオン酸デプロドン、プロピオン酸ベタメタゾン、メチルプレドニゾロン等が挙げられる。
【0026】
鎮痛消炎剤としては、例えばサリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、カンフル、ノニル酸ワニリアルアミド、トコフェロール、ハッカ油、チモール、トウガラシエキス、トウガラシ末、酢酸トコフェロール、dl−カンフル、アセトアミノフェン、4,5−ジフェニルイミダゾール、dl−メチルエフェドリン、亜鉛華リニメント、亜鉛華、亜鉛華デンプン、アスピリン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アルクロキサ、アルジオキサ、イクタモール、イソチベンジル、イプシロン−アミノカプロン酸、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、メフェナム酸、フルフェナム酸、インドメタシン、ジクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム、アルクロフェナク、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、フルルビプロフェン、クロフェゾン、ケトプロフェン、塩化亜鉛、カラミン、クリダナク、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、クロフェゾン、サリチル酸コリン、サリンダック、酸化亜鉛、スプロフェン、タンニン酸、チアプロフェン酸、チンク油、トルメチン、ナプロキセン、ピロキシカム、フェノプロフェン、フェルビナク、フェンチアザック、フェンブフェン、ブチジン酸、ブフェキサマク、フマル酸クレマスチン、プラノプロフェン、ベンダザック、ベンジタミン、ベンタザック、ベンタゾシン、ベンツアルデヒドシアンヒドリン、メペリゾール、硫酸亜鉛等が挙げられる。
【0027】
抗真菌剤としては、2,4,6−トリブロムフェニルカプロン酸エステル、5−フルオロシトシン、アムホテリシンB、イソコナゾール、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸亜鉛、エキサラミド、エコナゾール、アモロルフィン、クロコナゾール、ジアンタゾール、テルビナフィン、ネチコナゾール、ブテナフィン、オキシコナゾール、グリセオフルビン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、シクロピロクスオラミン、シッカニン、硝酸イコナゾール、硝酸エコナゾール、硝酸オキシコナゾール、硝酸スルコナゾール、硝酸ミコナゾール、スルコナゾール、チアントール、チオコナゾール、チメロサール、デルマシド、トリクロロフェノールカプロエート、トリコマイシン、トリブロムフェノールカプロエート、トリメチルセチルアンモニウムペンタクロロフェネート、トルシクラート、トルナフテート、ナイスタチン、ナフチフィン、パラアセチルアミノフェニルロダン、バリチオン、ハロプロジン、ビフォナゾール、ピマリジン、ピロールニトリン、フェニル−11−ヨード−10−ウンデシノエート、ペンタクロルフェノール、ミコナゾール、ラウリルトリフェニルホスホニウムブロミド、ラノコナゾール、リラナフタート等が挙げられる。
【0028】
坑ウィルス剤としては、例えばアシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、ビダラビン、シダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、エドクスジン、ブロバビル、フィアシタビン等が挙げられる。
【0029】
抗生物質としては、例えばβ−ラクタン系抗生物質(ペニシリン類、セファロスポリン類)、アンフォテリシン、エリスロマイシン、オキシテトラサイクリン、グラミシジン、テトラサイクリン、デメチルクロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、カナマイシン、クラミシジン、グリセオフルビン、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、セファトリジンン、セファレキシン、セファロスポリン、セファロチン、セフメタゾール、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、トリコマイシン、ナイスタチン、ナジフロキサシン、ニトロフラントイン、バシトラシン、ミノサイクリン、メタサイクリン、メトロニダゾール、ラクトビオエリスロマイシン等が挙げられる。
【0030】
サルファ剤としては、例えばスルファジアジン、スルファジアジン銀、スルファニルアミド、スルファピリジン、スルファミン、スルファメタゾール、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルファメトキシピリジン、スルファメトキシピリダミン、スルファメトキシン、スルファモノメトキシン、スルフィソキサゾール、スルフィソキサゾールナトリウム、スルフィソミジン、スルフィソミジンナトリウム、ホモスルファミン等が挙げられる。
【0031】
代謝性剤としては、例えばγ−オリザノール、オロチン酸、オロチン酸コリン、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム等が挙げられる。
【0032】
また、本発明による水難溶性薬物配合パップ剤に配合される水難溶性薬物の配合量は、膏体全量中、0.001〜20質量%が好適とされる。またさらに好ましくは0.05〜10質量%であり、特に好ましくは、0.1〜8質量%である。水難溶性薬物の配合量が少なすぎると十分な薬理効果が得られないため好ましくなく、また水難溶性薬物の配合量が多すぎると安全性を損なうために好ましくない。
【0033】
また、本発明による水難溶性薬物配合パップ剤に配合される水難溶性薬物の配合量と化学式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体の割合は1:500〜10:1が好適とされる。尚、さらに好ましくは1:100〜5:1であり、特に好ましくは、1:50〜3:1である。これらの割合を逸脱すると、安定性、安全性などの面で好ましくないと考える。
【0034】
本発明による水難溶性薬物含有パップ剤に配合する水溶性高分子として、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸モノエタノールアミン、ポリアクリル酸ジエタノールアミン、ポリアクリル酸トリエタノールアミン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルアミロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸プロピレングリコール、カゼイン、カラギーナン、アラビアゴム、ローカストビーンゴム、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、可溶化デンプン、マンナン、ペクチン等があげられ、これらは任意の1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0035】
本発明による水難溶性薬物含有パップ剤に配合する水溶性高分子の配合量は、膏体全量中、0.5〜40質量%が好適とされる。さらに好ましくは1〜30質量%であり、特に好ましくは、2〜20質量%である。水溶性高分子の配合量が少なすぎると十分な粘着効果が得られないため好ましくなく、また水溶性高分子の配合量が多すぎると製剤の安定性を損なうために好ましくない。
【0036】
また、本発明による水難溶性薬物配合パップ剤に配合する水は、膏体全量中、0.5〜85質量%が好適とされる。さらに好ましくは1〜70質量%であり、特に好ましくは、3〜60質量%である。水の配合量が少なすぎると膏体中の水溶性高分子を十分に溶解することが出来ないため好ましくなく、また水の配合量が多すぎると製剤の保形性が悪くなるために好ましくない。
【0037】
本発明による水難溶性薬物含有パップ剤においては、前記特定構造のアルキレンオキシド誘導体を配合することにより、水難溶性薬物の局在化やブツ、凝集といった現象を回避し、水系の膏体基剤中に水難溶性薬物を分散性良く均一に配合することを可能とするものである。なお、従来のパップ剤膏体においては、水難溶性薬物とともに界面活性剤を配合することにより、水系の膏体基剤中に分散させたものも散見されるが、界面活性剤がパップ剤の保形性や粘着性に影響してしまったり、場合によっては薬理効果の発現が遅れてしまう等の問題があった。これに対して、本発明による水難溶性薬物含有パップ剤は、前記特定構造のアルキレンオキシド誘導体を配合することにより、界面活性剤を配合することなく、水系基剤に対して水難溶性薬物を均一、安定に配合することができるものである。
【0038】
このため、本発明による水難溶性薬物含有パップ剤においては、界面活性剤を実質的に含有しないことが好適である。水難溶性薬物含有パップ剤中に界面活性剤を配合しないことにより、前述した界面活性剤による保形性や粘着性、あるいは薬理効果の発現に対する悪影響のほか、さらに界面活性剤による皮膚刺激性の問題を回避することも可能となる。なお、本発明において、「実質的に界面活性剤を含有しない」とは、界面活性剤の配合の有無が、水系のパップ剤膏体における水難溶性薬物の均一分散に直接寄与していないことを意味するものであり、界面活性剤を極微量配合しているものまでを除外するものではない。具体的には、水難溶性薬物の配合量に対する界面活性剤の配合量が5.0質量%未満、特に1.0質量%未満であることが好適である。
【0039】
また、本発明による水難溶性薬物配合パップ剤には、水難溶性薬物の溶解補助剤または分散補助剤としてI.O.B値:0.1〜1.2の油分を配合することが出来る。又、これらの油分は化学式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体と一緒に配合することで、水溶性の膏体中に均一に調製できることを見出した。
【0040】
また、I.O.B(Inorganic Organic Balance)値とは「化学の領域」第11巻、第10号、第719〜725頁、1957年に示されている藤田による計算方法に従い算出した無機性及び有機性の値の比、すなわち次式によって表される数値である。
Σ 無機性
I.O.B値= ――――――――
Σ 有機性
【0041】
また、本発明に配合するI.O.B値が0.1〜1.2の油分としては、例えば、液体油脂としてアボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0042】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、 POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0043】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0044】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0045】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、 12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル-L-グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、コハク酸2−エチルヘキシル、イソプロピルミリステート、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトン等が挙げられる。これらの油分は1種または2種以上を適宜配合することが出来る。
【0046】
また、本発明による水難溶性薬物配合パップ剤に配合するI.O.B値が0.1〜1.2の油分の配合量は、膏体全量中、0.05〜30質量%が好適とされる。さらに好ましくは0.3〜20質量%であり、特に好ましくは、0.5〜15質量%である。油分の配合量が少なすぎると薬物の十分な溶解や分散の補助効果が得られないため好ましくなく、また油分の配合量が多すぎると系の安定性を損なうために好ましくない。
【0047】
本発明による水難溶性薬物含有パップ剤において用いられる膏体に配合されるその他の成分として、架橋剤があげられる。本発明による水難溶性薬物含有パップ剤に適宜用いられる架橋剤として、例えば、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、酢酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、アルミニウムグリシネート、クロルヒドロキシアルミニウム等のアルミニウム化合物、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウムメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム等のカルシウム化合物、カリミョウバン、ナトリウムミョウバン、アルミニウムミョウバン、鉄ミョウバン等のミョウバン化合物、合成ヒドロタルサイト、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート等があげられ、これらは任意の1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0048】
本発明の水難溶性薬物含有パップ剤に配合可能な成分としては、発明を損なわない範囲で、医薬品、化粧品等に用いられる各種成分、例えば、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、安定化剤、湿潤剤、低級アルコール、粉末、顔料、色素、香料等が挙げられる。
【0049】
本発明の水難溶性薬物含有パップ剤おいて使用される支持体としては、ネル、リント布、綿布、人絹、スフのような織布、不織布および編織布、和紙、クラフト紙等の紙類及びこれらの各種支持体の積層体等のいずれも使用することが出来る。さらに前記織布、不織布および編織布を構成する繊維は、木綿のような天然繊維であっても、ポリオレフィン、ポリエステル、レーヨン、ウレタン、ナイロン等の合成繊維であっても良い。また必要に応じ、薬物保持層の水分揮発を防止して該層を保護する目的で、その表面に適切な材質のライナーを添着しても良い。形状については特に限定されず、例えば貼付する患部に最適の形状に設定することが出来る。このようにして得られた本発明の水難溶性薬物含有パップ剤は、必要に応じて気密容器等に入れて保存することが出来る。
【0050】
本発明の水難溶性薬物含有パップ剤を調製するには、例えば、水難溶性薬物をアルキレンオキシド誘導体に溶解または分散させた後、上記必須成分及び必要に応じて他の成分を加えて、よく練合してペースト状に調製し、これを、織布、不織布および編織布、紙等の支持体に塗布し、必要によりポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチックフィルム等からなるライナーを被覆することにより本発明の水難溶性薬物含有パップ剤を得る。また得られた製剤は所望の大きさに切断して皮膚に直接投与される。
【実施例1】
【0051】
次に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。なお、配合量は質量%である。
まず最初に、本発明にかかるアルキレンオキシド誘導体の合成例について示す。
【0052】
合成例1 ブロックポリマーの合成
ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)ジメチルエーテル
CHO(EO)(PO)10(EO)CH
【0053】
プロピレングリコール76gと触媒として水酸化カリウム3.1gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりプロピレンオキシド522gを滴下させ、2時間攪拌した。ひきつづき滴下装置によりエチレンオキシド440gを滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム224gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル188gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、前記アルキレンオキシド誘導体(ブロックポリマー)を得た。
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が110、得られた化合物の水酸基価が0.3、末端メチル基数に対する水素原子数の割合は0.003であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されている。
【0054】
合成例2 ランダムポリマーの合成例
ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)ジメチルエーテル
CHO[(EO)10/(PO)10]CH
【0055】
なお、以下の実施例において、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、[(EO)/(PO)]はランダム状結合を表す。
プロピレングリコール76gと触媒として水酸化カリウム3.1gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりエチレンオキシド440gとプロピレンオキシド522gの混合物を滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム224gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル188gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、前記アルキレンオキシド誘導体(ランダムポリマー)を得た。
【0056】
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が107、得られた化合物の水酸基価が0.4、末端メチル基数に対する水素原子数の割合は0.004であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されている。
【0057】
本発明者らは、以上の各製造例に準じて各種アルキレンオキシド誘導体を調製し、下記実施例1〜8、比較例1〜3のパップ剤を常法により製造した。
実施例1 パップ剤
(1) サリチル酸グリコール 1.0%
(2) L−メントール 0.5
(3) 酢酸トコフェロール 0.3
(4) トウガラシエキス 0.1
(5) アルキレンオキシド誘導体 26.0
CHO[(EO)14/(PO)07]CH
(6) ポリアクリル酸 3.0
(7) ポリアクリル酸ナトリウム 2.5
(8) ゼラチン 0.5
(9) カルボキシメチルセルロースナトリウム 4.0
(10)ポリビニルアルコール 0.3
(11)水酸化アルミニウム 0.1
(12)エデト酸ナトリウム 0.03
(13)メチルパラベン 0.1
(14)精製水 残 量
合計 100.00g
(製法)アルキレンオキシド誘導体15gにポリアクリル酸3g、ポリアクリル酸ナトリウム2.5g、カルボキシメチルセルロースナトリウム4g、水酸化アルミニウム0.1gを加え均一に撹拌する(A)。ゼラチン1g、ポリビニルアルコール0.3g、メチルパラベン0.1gを加温した精製水50gに溶解する(B)。サリチル酸グリコール1g、l−メントール0.5g、酢酸トコフェロール0.3g、トウガラシエキス0.1gをアルキレンオキシド誘導体の残部に溶解する(C)。エデト酸ナトリウム0.03gおよび上記(A)、(B)、(C)を撹拌機に投入し、全量が100gとなるように精製水を加え、均一となるまで撹拌して、膏体100gを得た。ポリプロピレン繊維からなる不織布にこの膏体が0.2g/cm含有するように展延し、10cm×14cmに切断して、その後ポリプロピレンフィルムにて覆い、本発明の水難溶性薬物含有パップ剤を得た。
【0058】
実施例2 パップ剤
(1) 酢酸デキサメタゾン 0.015%
(2) ジフェンヒドラミン 1.0
(3) L−メントール 0.6
(4) アルキレンオキシド誘導体 35.0
CHO[(EO)55/(PO)28]CH
(5) ポリアクリル酸 4.0
(6) ポリアクリル酸ナトリウム 1.0
(7) カルボキシメチルセルロースナトリウム 3.0
(8) ポリビニルピロリドン 6.0
(9) ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート 0.2
(10)ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
(11)メチルパラベン 0.2
(12)精製水 残 量
合計 100.000g
(製法)実施例1に準じる。
【0059】
実施例3 パップ剤
(1) アシクロビル 3.0%
(2) アルキレンオキシド誘導体 22.0
CHO[(EO)55/(PO)28]CH
(3) クロタミトン 2.0
(4) ヒマシ油 1.0
(5) ポリアクリル酸 3.5
(6) ポリアクリル酸ナトリウム 1.5
(7) カルボキシメチルセルロースナトリウム 3.5
(8) ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
(9) 乾燥水酸化アルミニウムゲル 0.3
(10)合成ヒドロタルサイト 1.5
(11)エデト酸ナトリウム 0.1
(12)プロピレングリコール 3.0
(13)D−ソルビトール液 5.0
(14)エチルパラベン 0.1
(15)メチルパラベン 0.1
(16)精製水 残 量
合計 100.00g
(製法)実施例1に準じる。
【0060】
実施例4 パップ剤
(1) リドカイン 2.0%
(2) ジブカイン 2.0
(3) アルキレンオキシド誘導体 40.0
CHO[(EO)36/(PO)41]CH
(4) ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
(5) カルボキシメチルセルロースナトリウム 4.0
(6) ポリアクリル酸ナトリウム 5.0
(7) ポリビニルピロリドン 0.8
(8) ポリビニルアルコール 1.0
(9) カオリン 4.0
(10)アルミニウムグリシネート 0.1
(11)酒石酸 1.2
(12)エデト酸ナトリウム 0.05
(13)メチルパラベン 0.15
(14)精製水 残 量
合計 100.00g
(製法)実施例1に準じる。
【0061】
実施例5 パップ剤
(1) パルミチン酸レチノール 0.2%
(2) ビタミンEアセテート 0.5
(3) グリチルレチン酸 0.3
(4) アルキレンオキシド誘導体 15.0
CHO[(EO)14/(PO)07]CH
(5) クロタミトン 0.5
(6) ポリアクリル酸ナトリウム 2.0
(7) ポリアクリル酸共重合体 2.5
(8) ゼラチン 1.0
(9) ポリビニルアルコール 0.5
(10)水酸化アルミニウム 0.5
(11)酒石酸 0.3
(12)シイソプロパノールアミン 3.0
(13)プロピレングリコール 4.5
(14)メチルパラベン 0.1
(15)プロピルパラベン 0.05
(16)精製水 残 量
合計 100.00g
(製法)実施例1に準じる。
【0062】
実施例6 パップ剤
(1) ビフォナゾール 1.0%
(2) ジフェンヒドラミン 0.1%
(3) アルキレンオキシド誘導体 25.0
CHO[(EO)09/(PO)02]CH
(4) ベンジルアルコール 0.5
(5) ゼラチン 1.0
(6) ポリビニルアルコール 2.5
(7) ポリアクリル酸ナトリウム 8.0
(8) カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
(9) グリセリン 3.0
(10)1,3ブチレングリコール 5.0
(11)ポリグリセロールポリグリシジルエーテル 0.05
(12)メチルパラベン 0.2
(13)精製水 残 量
合計 100.00g
(製法)実施例1に準じる。
【0063】
実施例7 パップ剤
(1) ケトプロフェン 0.5%
(2) L−メントール 1.0
(3) アルキレンオキシド誘導体 25.0
CHO[(EO)36/(PO)41]CH
(4) アジピン酸ジイソプロピル 1.0
(5) ヒマシ油 1.0
(6) ポリアクリル酸 4.0
(7) ポリアクリル酸ナトリウム 1.0
(8) カルボキシメチルセルロースナトリウム 3.0
(9) ポリビニルアルコール 2.5
(10)カオリン 5.0
(11)ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート 0.2
(12)エデト酸ナトリウム 0.1
(13)プロピルパラベン 0.05
(14)メチルパラベン 0.15
(15)精製水 残 量
合計 100.00g
(製法)実施例1に準じる。
【0064】
実施例8 パップ剤
(1) ジクロフェナクナトリウム 3.0%
(2) L−メントール 1.2
(3) アルキレンオキシド誘導体 29.0
CHO[(EO)14/(PO)07]CH
(4) イソステアリン酸 7.5
(5) ゼラチン 1.5
(6) ポリビニルピロリドンK−90 0.7
(7) ポリアクリル酸 1.8
(8) ポリアクリル酸ナトリウム 3.5
(9) カルボキシメチルセルロースナトリウム 3.5
(10)カオリン 2.5
(11)アルミニウムグリシネート 0.25
(12)ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.1
(13)エチルパラベン 0.05
(14)メチルパラベン 0.15
(15)精製水 残 量
合計 100.00g
(製法)実施例1に準じる。
【0065】
比較例1 パップ剤
(1) サリチル酸グリコール 1.0%
(2) l−メントール 0.5
(3) 酢酸トコフェロール 0.3
(4) トウガラシエキス 0.1
(5) ポリアクリル酸 3.0
(6) ポリアクリル酸ナトリウム 2.5
(7) ゼラチン 0.5
(8) カルボキシメチルセルロースナトリウム 4.0
(9) ポリビニルアルコール 0.3
(10)濃グリセリン 14.0
(11)1,3ブチレングリコール 12.0
(12)水酸化アルミニウム 0.1
(13)エデト酸ナトリウム 0.03
(14)メチルパラベン 0.1
(15)精製水 適 量
合計 100.00g
(製法)濃グリセリン14gにポリアクリル酸3g、ポリアクリル酸ナトリウム2.5g、カルボキシメチルセルロースナトリウム4g、水酸化アルミニウム0.1gを加え均一に撹拌する(1)。ゼラチン0.5g、ポリビニルアルコール0.3g、メチルパラベン0.1gを加温した精製水50gに溶解する(2)。サリチル酸グリコール1g、l−メントール0.5g、酢酸トコフェロール0.3g、トウガラシエキス0.1gを1,3ブチレングリコール12gに分散する(3)。塩酸ジフェンヒドラミン2g、上記(1)、(2)、(3)を撹拌機に投入し、全量が100gとなるように精製水を加え、均一となるまで撹拌し、膏体100gを得た。ポリプロピレン繊維からなる不織布にこの膏体が0.2g/cm含有するように展延し、10cm×14cmに切断して、その後ポリプロピレンフィルムにて覆い、比較例のパップ剤を得た。
【0066】
比較例2 パップ剤
(1) 酢酸デキサメタゾン 0.015%
(2) ジフェンヒドラミン 1.0
(3) L−メントール 0.6
(4) ポリアクリル酸 4.0
(5) ポリアクリル酸ナトリウム 1.0
(6) カルボキシメチルセルロースナトリウム 3.0
(7) ポリビニルピロリドン 6.0
(8) 濃グリセリン 20.0
(9) 1,3ブチレングリコール 15.0
(10)ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート 0.2
(11)ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
(12)メチルパラベン 0.2
(13)精製水 残 量
合計 100.000g
(製法)比較例1に準じる。
【0067】
比較例3 パップ剤
(1) アシクロビル 3.0%
(2) クロタミトン 2.0
(3) ヒマシ油 1.0
(4) ポリアクリル酸 3.5
(5) ポリアクリル酸ナトリウム 1.5
(6) カルボキシメチルセルロースナトリウム 3.5
(7) ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
(8) 乾燥水酸化アルミニウムゲル 0.3
(9) 合成ヒドロタルサイト 1.5
(10)エデト酸ナトリウム 0.1
(11)プロピレングリコール 10.0
(12)D−ソルビトール液 20.0
(13)エチルパラベン 0.1
(14)メチルパラベン 0.1
(15)精製水 残 量
合計 100.00g
(製法)比較例1に準じる。
【0068】
上記実施例および比較例の製剤を用いて各種評価試験を行い、本発明の水難溶性薬物含有パップ剤の効果を測定した。
「評価(1):製剤の均一性、保形性について」
製剤を各温度条件に保存し、外観観察により、製剤の均一性、保形性について評価を行った。実施例1〜5および比較例1〜3の各製剤をアルミラミネート製の気密容器に入れ、50℃、40℃、25℃、0℃で1ヵ月間保存した。外観観察により以下の基準で判定した。
[製剤の均一性について]
◎…全く異常が認められない。
○…わずかに結晶析出やブツが認められるが、均一性には影響ない。
△…結晶析出やブツにより、製剤が一部不均一になっている。
×…結晶析出やブツにより、製剤全体の均一性が悪い。
[製剤の保形性について]
◎…全く異常が認められない。
○…わずかに成分のしみ出しが認められるが、保形性には影響ない。
△…成分のしみ出し、剥離不良、糊残り等が認められる。
×…製剤の一部が分離し、製剤全体の保形性が悪い。
【0069】
「評価(2):剥離後の皮膚のしっとりさ」
幅3cm、長さ3cmのパップ剤試料を作成した。そしてパネル6名の上腕内側部に1時間貼付した後剥離し、剥離後のしっとりさの有無を評価した。評価基準は開始時と剥離後の皮膚のコンダクタンス値をSKICON−200(IBS社製)を用いて測定し、剥離後のコンダクタンス値から開始時のコンダクタンス値の差であるΔコンダクタンス値で評価した。Δコンダクタンス値が大きければ大きい程、パップ剤を適用した後の皮膚のしっとりさが増大したと評価した。表中の数値は、1名のパネルから1製剤につき5箇所の平均値を求め、さらに6名の平均値から全体の平均値を求めたものである。
【0070】
「評価(3):皮膚刺激試験」
幅3cm、長さ3cmの小片に切ったパップ剤試料を作成した。そしてパネルの前腕内側部に開始時に異常のないことを観察した後、実施例1〜5および比較例1〜3の各製剤を貼付して、サポーター等で試験部位を固定した。1日2回試料をはり替えて、試験開始後3日後に塗布部位の外観観察による皮膚刺激性を判定した。パネルについては6名により試験を実施した。
0…全く異常が認められない。
1…わずかに赤みが認められる。
2…赤みが認められる。
3…赤みと発疹が認められる。
4…発疹や丘疹が多く認められる。
数値は3日間貼付後の各人のスコアを平均した値である。
【0071】
「試験結果」
実施例1〜5、比較例1〜3の各パップ剤の各種試験結果を以下に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
上記表1より、本発明において特徴的な特定構造のアルキレンオキシド誘導体を配合した実施例1〜5の水難溶性薬物含有パップ剤においては、広範な温度範囲にわたって、製剤の均一性、製剤の保形性に優れており、膏体中で水難溶性成分が非常に安定に配合されていることがわかる。また、さらに、実施例1〜5のパップ剤は、皮膚のしっとりさに優れており、皮膚刺激性も非常に低いものであった。
【0075】
これに対して、上記表2より、実施例1,2の処方においてアルキレンオキシド誘導体に代えて一般的な保湿剤であるグリセリン、1,3−ブチレングリコールを配合した比較例1,2では、特に高温での製剤の均一性、保形性が十分でなく、また、アルキレンオキシド誘導体を用いた実施例1,2と比較して、皮膚のしっとりさ、皮膚刺激性にも劣っているものであった。また、実施例3の処方からアルキレンオキシド誘導体を除外した比較例3においても、比較例1,2と同様に、製剤の均一性、保型性、さらには皮膚のしっとりさ、皮膚刺激性に劣っており、これらのことから、本発明におけるアルキレンオキシド誘導体の配合効果が確認される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と水溶性高分子とを含有する膏体と支持体よりなるパップ剤において、
水難溶性薬物と、
下記化学式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体と
を含有することを特徴とする水難溶性薬物含有パップ剤。
O−[(EO)(AO)]−R (I)
(式中、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、mおよびnはそれぞれ前記オキシエチレン基、オキシアルキレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦n≦70である。オキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、20〜80質量%である。オキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。R,Rは、同一もしくは異なってもよい炭素数1〜4の炭化水素基または水素原子であり、RおよびRの炭化水素基数に対する水素原子数の割合が0.15以下である。)
【請求項2】
請求項1に記載の水難溶性薬物含有パップ剤において、アルキレンオキシド誘導体が、オキシエチレン基とオキシアルキレン基がランダム状に付加していることを特徴とする水難溶性薬物含有パップ剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水難溶性薬物含有パップ剤において、アルキレンオキシド誘導体の含有量が、膏体全量に対して0.01〜50質量%であることを特徴とする水難溶性薬物含有パップ剤。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の水難溶性薬物含有パップ剤において、さらにI.O.B値が0.1〜1.2の油分を含有することを特徴とする水難溶性薬物含有パップ剤。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の水難溶性薬物含有パップ剤において、界面活性剤を実質的に含有しないことを特徴とする水難溶性薬物含有パップ剤。

【公開番号】特開2006−1860(P2006−1860A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178144(P2004−178144)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】