説明

氷を剥がすためのパルスシステムおよび方法

氷を剥がすためのパルス電熱式除氷(「PETD」)システムには、高出力の加熱パルスを、氷と物体(例えば製氷システムの冷却板、氷容器、熱交換器、冷蔵庫の表面、航空機の翼等)の接触面に印加するための電源装置(22)が含まれる。パルス加熱は、除氷対象物の上に配置された金属ホイルまたは抵抗膜内、あるいは除氷対象物に隣接したキャピラリーチューブ内で発生する。氷の界面層が融解し、氷が対象物から解放される。重力、蒸発の圧力、機械的かき取り等の力が、氷を対象物から取り除く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、同一出願人による同時継続中の米国仮特許出願第60/581,912(2004年6月22日出願)、同第60/646,394号(2005年1月24日出願)、同第60/646,932号(2005年1月25日出願)の優先権の利益を主張する。上記出願および特許はすべて、参考により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
氷を表面から剥がすことは、例えば、固定された、あるいは野外で使用される設備(航空機、送電線、道路、屋根等)の除氷、稼働中に氷が形成される設備(熱交換器、冷凍庫等)や製氷装置の除氷等のアプリケーションにおいて重要である。
【0003】
従来の住宅用、業務用製氷機では、氷は冷却板あるいはグリッドによって冷却された水からゆっくりと成長してゆく。氷の成長が完了すると、冷却板/グリッドが氷の融点より上へゆっくりと加熱されて、氷を解放する。この加熱ステージでは、エネルギーと時間の両方が消費され、製氷機の効率と生産性が低減する。その上、製氷機ハードウェアおよび成長した氷を、氷の成長温度から氷の融点まで暖めるには、著しい熱流量が必要になる。そして、製氷機ハードウェアを再冷却して新たな氷が成長し始めるまでには、さらに多くの時間とエネルギーが必要になる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態では、製氷システムは、冷却板、誘電体膜、誘電体膜を通して冷却板によって冷却される金属薄ホイル、電源装置、および電源装置を金属薄ホイルに接続するように動作可能なスイッチを含む。金属ホイルに隣接する水が氷を形成し、その氷はスイッチが作動すると金属ホイルから解放される。スイッチの作動により、電源装置からの電流が金属薄ホイルを通過し、加熱パルスが発生して氷の界面層を溶かす。
【0005】
一実施形態では、製氷システムは、冷却板、冷却板によって冷却される金属ホイル、電源装置、および電源装置を金属ホイルに接続するように動作可能なスイッチを含む。金属ホイルに隣接する水が氷を形成し、その氷はスイッチが作動すると金属ホイルから解放される。スイッチの作動により、加熱パルスが発生して金属ホイル上の氷の界面層を溶かす。
【0006】
一実施形態では、製氷システムは、氷容器(ice container)、氷容器の底部内に配置されたキャピラリーチューブ、電源装置を有する。氷容器は冷却されると水を氷に変換する。電源装置はパルス加熱エネルギーを氷容器とキャピラリーチューブに印加する。このパルス加熱が氷容器内の氷の界面層を溶かし、キャピラリーチューブ内の氷を蒸発させて、氷を氷容器から排出させる。
【0007】
一実施形態では、蒸発除氷システムは、除氷対象物上に配置された抵抗膜、キャピラリーのアレイであって、それぞれが開口端を有しており、除氷対象物の表面と同一平面にある、キャピラリーチューブのアレイ、および電源装置を含む。電源装置はエネルギーを抵抗膜に供給してそこにパルス加熱エネルギーを発生させ、またエネルギーをキャピラリーチューブに供給してキャピラリーチューブ内の氷を蒸発させ、除氷対象物から氷を排出させる。
【0008】
一実施形態では、蒸発除氷システムは、除氷対象物の表面に配置された抵抗膜、多孔質金属ホイルのストリップ、および電源装置を有する。電源装置はエネルギーを抵抗膜と多孔質金属のストリップに供給する。抵抗膜内にパルス加熱エネルギーが発生し、抵抗膜に隣接する氷の界面層が融解する。氷は多孔質金属のストリップ内で蒸発し、その氷は除氷対象から排出される。
【0009】
一実施形態では、冷蔵庫の除氷システムは、アコーディオン型表面の熱交換器、流動冷却剤を有するウォールパイプ、および電源装置を有しており、電動装置のスイッチにより、熱交換器をパルス加熱し、熱交換器から氷を取り除く。
【0010】
一実施形態では、熱交換器の除氷システムは、ベースチューブ、ベースチューブに取り付けられた複数のフィン、電源装置、および電源装置をベースチューブに接続するスイッチを含む。このスイッチは電流パルスをベースチューブに送る働きをする。ジュール加熱によりベースチューブとフィンの温度が上昇し、そこに付着している氷を溶かす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
米国特許出願第10/364,438号は、パルス電熱式除氷(「PETD」)について記載する。PETDは、例えば、物体と氷の間の接触面(本文書中では「氷−物体接触面」とも呼ばれる)の界面氷を熱変形させることにより、氷の除去を行う。加熱エネルギーをこの接触面に加え、氷の界面層を溶かすことができる。そのようなアプリケーションは、接触面に加えられる熱エネルギーの熱拡散距離が氷の界面層厚さ以下の氷の範囲に留まるようにするために、持続期間が限られ得る。
【0012】
界面氷は、高出力の加熱パルスを氷と氷が付着している物体の接触面に加えることにより、ほとんどすぐに溶ける。一定の出力密度W(単位ワット/m)が接触面に加えられると、ΔT度でその接触面を加熱するために必要なエネルギーQ(単位ジュール)は、出力密度Wにほぼ反比例する。従って、非常に高い出力密度Wを、除氷対象となる接触面へ加えることにより、エネルギーQは従来の(低〜中出力の)電熱除氷装置が消費するエネルギーに比べて低減する。概して、非常に高い出力密度Wを使うことによって、最高99%の加熱・再冷却エネルギーを節約することができる。
【0013】
だが、このQ∝1/Wによるエネルギー保存の法則を使用しても、Qが無限に低下するわけではない。というのは、Qが小さくなると接触面の再凍結にかかる時間が減少するからである。界面の再冷凍が早くなるため、氷の再捕集または再生成には役立つが、PETDを使用する場合は、重力、空気抵抗力、機械的かき取り等、何らかの力によって、氷を表面から迅速に取り除かなければならない。
【0014】
氷を取り除かないと、接触面は、外気温、パルス幅、気質特性などに応じて、ミリ秒からおよそ30秒の間に再凍結する。接触面が再凍結するため、例えば飛行機の翼のよどみ線、道路の水平表面、空港の滑走路、冷蔵庫の熱交換器、平屋根等、氷を除去する力がほとんど、あるいは、全くない場所でのアプリケーションにおいては、PETDの利用は制限される。
【0015】
(PETDを利用した製氷システム)
氷の融解は製氷にも利用できる。すなわち、アイスキューブとそのアイスキューブが入っているアイストレーの間の氷の界面層を溶かすことにより、キューブをより簡単に取り除くことができる。PETDを用いて氷の採収を促進する製氷システムについて、次に記載する。
【0016】
図1と図2は、パルス電熱式除氷(「PETD」)を用いた典型的な製氷システム10(1)を示している。システム10(1)では、氷5(1)は、薄い誘電体膜16(1)によって冷却板12(1)に付けられたホイル18(1)上に形成される。冷却板12(1)は、例えば、コンジット14を通る液体によって冷却される。氷5(1)は、ホイル18(1)を通って上から下に流れる水(図示されていない)から成長する。ホイル18(1)は例えば、金属薄ホイルである。ホイル18(1)は、冷却板12(1)によって、薄い誘電体膜16(1)、例えば薄い誘電体層、を通して冷却される。氷5(1)は、例えば、冷却板12(1)が水平位置にある場合は、ホイル18(1)で作られた容器を満たす水から生成されることもある。十分な氷が生成されたら、電源22をホイル18(1)に接続するスイッチ20を閉じることにより、加熱電流パルスがホイル18(1)に印加される。このパルスは、ホイル18(1)に隣接する界面氷を融解し、氷5(1)は、ホイル18(1)から剥離することができる。氷5(1)は、例えば、製氷システム10(1)の下にある容器(図示されていない)にたまり得る。
【0017】
電源22は、普通のAC電源出力、あるいはDC電源装置(電池、コンデンサ、ウルトラコンデンサ(ultracapacitor)等)であり得る。スイッチ20は、半導体スイッチ(パワーMOSFET、IGBT、サイリスタ等)、機械スイッチ、電磁スイッチ、あるいは上記のどれかの組合せであり得る。
【0018】
一実施形態では、印加電圧および電流は、(ホイル18(1)面積に対して)およそ1kw/mから500kw/mの範囲の加熱出力密度を提供する。電源22は、ホイル18(1)の電気抵抗に応じて、約2.5Vから約1000Vの電圧でACあるいはDCを発生させ得る。ホイル18(1)は、スパッタリング、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、電解プロセス、および/または、薄い金属膜を作る他のプロセスによって形成され得る。
【0019】
一実施形態では、ホイル18(1)の厚さは、約0.5μmから約1mmの範囲であり得る。一部の実施形態では、ホイル18(1)は、導電ペイント、導電性高分子フィルム、炭素繊維複合材、あるいはカーボンナノチューブ複合材などで形成され得る。
【0020】
誘電体膜16(1)は、ホイル18(1)を冷却板12(1)から電気的に絶縁する。誘電体膜16(1)は、例えば、セラミック、ガラス、ゴム、ポリマー、複合材料などの誘電物質、および/または、その他の誘電物質で作られ得る。一般的に、誘電体薄膜16(1)の厚さは、およそ10μmから2mmの範囲である。加熱パルス幅は、一般的に、1msから30sの範囲である。ただし、1msから10sの範囲で十分であり得る。
【0021】
システム10(1)の稼働は、電力量消費を最低限にし得、氷5(1)とホイルの間の接触面が再凍結する前に、氷5(1)がホイル18(1)と冷却板12(1)から外れるための十分な時間が与えられるように最適化され得る。システム10(1)の稼働のために最適化され得るパラメータは、例えば、
a) 冷却板12(1)温度
b) 誘電体膜16(1) 厚さ、密度、熱容量、熱伝導率
c) 金属ホイル/膜18(1) 厚さ、密度、電気抵抗、熱容量
d) 氷5(1) 密度、融解潜熱、熱容量、熱伝導率
e) 融解層厚
f) 融解層再凍結時間
g) 加熱出力密度。
【0022】
図3と図4は、PETDを用いたもう一つの典型的な製氷システム10(2)を示している。システム10(2)は、冷却板12(2)と誘電体膜16(2)を有しており、そしてコンジット14、電源22、スイッチ20は、システム10(1)の中の、似た番号の項目と同じである。システム10(2)では、アイス「キューブ」5(2)(幾何学的意味のキューブ(立方体)である場合とそうでない場合がある)は、アイスの生成のためのポケット19(1)を形成するように加工されたホイル18(2)の上に形成される。ポケット19はホイル18(2)の上から流れる水で満たされ得、あるいは、冷却板12(2)が水平の場合は、ポケット19は、静水で満たされ得る。水はまず冷却板との熱的接触が最善な各ポケットの表面で凍結し始め得る。ポケット19(1)で十分な氷が形成されたら、加熱電流パルスがヒーターホイルを加熱して界面氷を融解し、アイス「キューブ」5(2)は、ポケット19(1)から剥離することができる。そして、氷の凍結と解放の循環が繰り返される。
【0023】
図5と図6は、PETDを用いたもう一つの典型的な製氷システム10(3)を示している。システム10(3)は、冷却板12(3)と誘電体膜16(3)を有しており、そしてコンジット14、電源22、スイッチ20は、システム10(1)と10(2)の中の、似た番号の項目と同じである。製氷システム10(3)では、変厚の誘電体膜16(3)が、ホイル18(3)の上で成長する氷5(3)から冷却板12(3)へと向かう熱流束を調節する。誘電体膜16(3)は、熱伝導率が低く、そのため膜16(3)が薄い部分(例えば氷5(3)がある場所)では熱流束は大きくなり、膜16(3)が厚い部分(例えば場所17)では減少する。氷の成長率は、冷却板12(3)にしみ込む熱流束と、冷却板12(3)の上から下へと流れる水からの熱流束の差に比例する。場所17では膜16(3)は厚く、流れる水がもたらす熱のほうが冷却板12(3)にしみ込める熱より多く、氷の成長が妨げられる。氷5(3)が望ましい厚さに成長すると、図6に示されるように、加熱パルスが氷5(3)を解放する。
【0024】
当然のことながら、誘電体膜の厚い部分は、冷却板の溝の中に形成され得る(図5と図6の場所17のように)、あるいは隆起した誘電体の表面から形成され得る、あるいはそれらの組み合わせであり得る。誘電体の特定の形態に応じて、半球体、半円柱、長方形、棒状、星形等の氷形状を生成することが可能である。金属ホイル16(3)が非常に薄いが熱伝導率が比較的低い場合(ステンレス鋼等)、横方向の熱流束(ホイル沿い等)は制限され、隣接する氷形状の間に氷の無い空間ができることになる。金属ホイルが厚く、および/または熱伝導率が高い場合は、横方向の熱流束は、ホイル部分全体の氷の成長率を均等化することができ、氷形状がまとまって凍結することになる。
【0025】
製氷システム10(1)、10(2)、10(3)には多くの利点があるが(例えば、可動部品がない、氷の解放が迅速、エネルギー消費量が低い、氷がほとんど絶え間なく成長する等)、欠点もいくつかある。欠点の一つは、冷却板を金属ホイルから電気的に分離する誘電体膜が、氷の成長に必要な熱交換をも妨げることである。一般的に、誘電体膜16(1)、16(2)、16(3)のような誘電体膜の熱抵抗は、氷0.5mmから2mmの熱抵抗に等しい。従って、氷が成長する各サイクルにおいて、その誘電体膜の存在によって0.5mmから2mmの氷厚が失われることになる。また加熱パルスの間、少量の熱が誘電体膜を通って冷却板に逃げるため、総電力需要が増大する。製氷システム10(1)、10(2)、10(3)のもう一つの欠点である可能性があるのが、ホイル18の熱膨張係数(CTE)と誘電体層16のそれの差であり得る。これら二つのCTEがつり合って、加熱パルスによる大きな界面応力の誘発を避けるか、誘電体層16の弾性係数が低くなり、熱的に誘発される応力を制限しなければならない。
【0026】
図7から図12に示される製氷システムは、誘電体層16を取り除くことにより、上記の欠点を除去している。例えば図7と図8は、PETDを用いたもう一つの典型的な製氷システム10(4)を示している。システム10(4)は、冷却板12(4)、そしてコンジット14、電源22、スイッチ20を有しており、それらは、システム10(1)、10(2)、10(3)の中の、似た番号の項目と同じである。製氷システム10(4)は製氷システム10(1)と似ているが、ただし、(a)システム10(4)には誘電体膜がない、そして(b)システム10(4)には、冷却板12(4)とホイル18(4)の間に密閉された空間15(1)がある。空間15(1)は、交互に真空になったり、空気で満たされたりする。空間15(1)が真空になると、大気圧によってホイル18(4)が冷却板12(4)に押し付けられ、熱接触が行われ、氷がホイル18(4)の上に生成され得る。氷を採収するには、空間15(1)にポンプで空気が注入され、冷却板12(4)とホイル18(4)の熱接触が分離・中断される。例えば、円筒内を移動し、電磁石によって駆動されるピストンをシステム10(4)用のポンプとして使うことができる。他のポンプをこの用途に使ってもよい。空気によってホイル18(4)が冷却板12(4)から分離されるとき、図8の矢印Aで示される空隙の寸法は、およそ10μmから2cmの範囲であり得る。冷却板12(4)とホイル18(4)が分離された後、加熱パルスがホイル18(4)に印加され、界面氷を溶かす。そのとき、氷5(4)が氷採集器に滑り落ちる。
【0027】
図9と図10は、PETDを用いたもう一つの典型的な製氷システム10(5)を示している。システム10(5)は、冷却板12(5)と隣接する空間15(2)、そしてコンジット14、電源22、スイッチ20を有する。それらは、システム10(1)〜10(4)の中の、似た番号の項目と同じである。システム10(5)はシステム10(4)と似ているが、ただし、ホイル18(5)がアイス「キューブ」5(5)が成長するためのポケット19(2)を形成している。ポケット19(2)は、装置上部から流れる水で満たされ得るか、あるいは、冷却板12(5)が水平な場合は、予め静水で満たされ得る。空間15(2)にポンプで空気を注入・排出することで、ホイル18(5)が冷却板12(5)と熱接触したり、離れたりする。この熱接触が「オン」の時、システム10(5)は氷を生成し、加熱パルスがホイル18(5)に印加される直前に「オフ」になり、アイス「キューブ」5(5)が解放される。
【0028】
図11と図12は、PETDを用いたもう一つの典型的な製氷システム10(6)を示している。システム10(6)は、冷却板12(6)と隣接する空間15(3)、そしてコンジット14、電源22、スイッチ20を有しており、それらは、システム10(1)〜10(5)の中の、似た番号の項目と同じである。システム10(6)では、冷却板12(6)とホイル18(6)の間の熱交換は、冷却板12(6)の中に作られている溝24によって調節されている。溝24は、システム10(3)(図5と図6)の作用と似た方法で、その場所の氷の成長率を変える。図5と図6に関してすでに述べたように、熱交換を調節することによって、半球体、立方体、星形等、色々な形の氷を生成することができる。図7〜図9のシステムについて述べたのと同様の方法で、空気注入システム(図示されていない)を、電源22、スイッチ20、ホイル18(6)によって形成されるパルス除氷システムと連携して作動させ、ホイル18(6)を冷却板12(6)から分離させてから加熱パルスでアイス「キューブ」5(6)を解放することができる。
【0029】
(実例1:)
一実例から、図1と図2に示されたシステム10(1)の具体的な(限定されない)仕様および性能パラメータを提供する。以下のパラメータがこの計算の入力に使われている。
【0030】
【表1】

システム10(1)の性能パラメータの計算には、以下の方程式が使われた。氷の熱拡散係数Dは以下のように計算する。
【0031】
【数1】

エポキシ樹脂の熱拡散係数Dは以下のように計算する。
【0032】
【数2】

エポキシ樹脂の熱拡散距離L(t)は以下のように計算する。
【0033】
【数3】

氷の熱拡散距離L(t)は以下のように計算する。
【0034】
【数4】

図13は、製氷システム10(1)について、エポキシ樹脂における熱拡散距離L(t)および氷における熱拡散距離L(t)のパルス幅tへの依存性を示している。1〜3秒のパルス幅によって、エポキシと氷それぞれにおける熱拡散が2mm以内に制限されると思われる。パルスが短いほど、熱拡散の距離は短く制限される。
【0035】
後に接触とヒーターを0Cに加熱し、氷の層を融解層厚lで融解するために使われる総エネルギー量Qは、エネルギー保存の法則を使って計算することができる。中間パラメータは以下のように定義できる。
【0036】
【数5】

要求融解氷層厚lを達成するために必要な加熱パルスエネルギーQは、以下のように計算する。
【0037】
【数6】

パルスエネルギーQを提供するために必要なパルス幅tは、以下のように計算する。
【0038】
【数7】

氷が冷却板12(1)から採収される時のクリーニングスピードSは、以下のように計算される。
【0039】
【数8】

氷が冷却板12(1)から採収するために必要なクリーニング時間Tは、以下のように計算される。
【0040】
【数9】

本実例に示されるように、加熱パルスエネルギーQの50%以上が界面氷の融解に使われており、それより少量のエネルギーが冷却板12(1)、誘電体膜16(1)、ホイル18(1)の加熱と、氷5(1)の加熱(すなわち、隣接する氷5(1)の温度を初期値である−18C以上に上げるが、融解させない)によって消費されている。
【0041】
図14は、製氷システム10(1)について、1平方メートル当たりのQとWの
【0042】
【数10】

総エネルギー量Qの出力Wへの依存性を示している。方程式5と方程式6から、当然のことながら、Wの値が高いほど、Qの値が小さくなる。実例1で使われている定数の値を考慮すれば、Wが約2・10まで増大するとQは劇的に低下する。図15は、製氷システム10(1)について、クリーニングスピードSの出力Wへの依存性を示している。実例1で使われている定数の値を考慮すれば、SはWとともに増大する。図16は、製氷機10(1)について、クリーニング時間Tの出力Wへの依存性を示している。実例1で使われている定数の値を考慮すれば、Wが約
【0043】
【数11】

まで増大するとQは低下する。
【0044】
製氷作業のためのもう一つのパラメータは、融解した氷接触面の再凍結時間である。再凍結時間は、融解した接触面が氷の採集を促進する期間を決定し得る(例えば、接触面の融解によって氷が落下することができるため)。再凍結時間tは、製氷システム10(1)については、融解した部位の融解潜熱qlatentが、隣接する氷5(1)の中に吸い込まれ、ホイル18(1)と誘電体層16(1)を通って冷却板12(1)へ消えてゆく時に再凍結が起こると仮定して計算できる。中間パラメータは以下のように定義できる。
【0045】
【数12】

再凍結時間tは、以下のように計算できる。
【0046】
【数13】

図17は、製氷システム10(1)について、誘電体厚dが0.2mmの場合の、再凍結時間tの出力密度Wへの依存性を示している。実例1で使われている定数の値を考慮すれば、Wが増大するとtは減少する(例えば、図14で見られたように、所定の融解氷層厚lについて、Wの値が高いほど、Qの値が低下するので、Wの値が高いほど、再凍結時間も低下する)が、Wの値が約10ワット/mになるまでずっと、tは2秒以上の長さに留まっている。図18は、製氷システム10(1)について、再凍結時間tの誘電体厚dへの依存性を示している。実例1で使われている定数の値を考慮すれば、dが増大すると、tが増大する。図19は、製氷システム10(1)について、誘電体厚dが0.2mmの場合の、再凍結時間tの融解層厚lへの依存性を示している。実例1で使われている定数の値を考慮すれば、lが増大すると、tが増大する。
【0047】
実例1について最適化パラメータとして選ぶことができる、いくつかのパラメータは以下の通り。
【0048】
【表2】

(実例2:)
一実例から、図7と図8に示されたシステム10(4)の具体的な(限定されない)仕様および性能パラメータを提供する。以下のパラメータがこの計算の入力に使われている。
【0049】
【表3】

氷と空気の熱拡散係数D、Dと熱拡散距離L(t)、L(t)は、表3に列記された定数および変数を使って、上記の方程式1〜方程式4の通り計算される(空気の特性は、下付き文字dで示される)。
【0050】
図20は、実例2について、L(t)とL(t)のパルス幅tへの依存性を示している。1〜3秒のパルス幅によって、熱拡散を2mm以内に制限されると思われる。パルスが短いほど、熱拡散の距離は短く制限される。
【0051】
製氷中はホイル18(4)が冷却板12(4)に接触しているが、氷の採集中は空隙により冷却板12(4)への熱伝達が減少するので、空隙を製氷システム10(1)〜10(3)の誘電体膜16より広く設定することが可能である。そのような空隙は、例えばミリメートル程度である。接触面とヒーターを0Cに加熱し、氷の層を融解層厚lで融解するために使われる総エネルギー量Q、パルス幅t、クリーニング速度S、クリーニング時間Tは、上記方程式5〜方程式10を使い、表3に列記された定数および変数を使って計算できる。
【0052】
図21は、製氷システム10(4)において、空隙2mmの場合の、総エネルギー量Qの出力密度Wへの依存性を示している。実例2で使われている定数の値を考慮すれば、Wが約2・10まで増大するとQは低下する。
【0053】
図22は、総クリーニング時間Tの加熱出力密度Wへの依存性を示している。
【0054】
図23は、クリーニング速度Sの加熱出力密度Wへの依存性を示している。
【0055】
再凍結時間tは、製氷システム10(4)については、融解した部位の融解潜熱qlatentが、隣接する氷5(4)の中に吸い込まれ、ホイル18(4)と空隙を通って冷却板12(4)へ消えてゆく時に再凍結が起こると仮定して計算できる。中間パラメータと再凍結時間tは、上記方程式11〜方程式14を使い、表3に列記された定数および変数を使って計算できる。
【0056】
図24は、再冷凍時間tの加熱出力密度Wへの依存性を示している。実例2で使われている定数の値を考慮すれば、Wが増大するとtは低下する。(例えば、図21で見られたように、所定の融解氷層厚lについて、Wの値が高いほど、Qの値が低下するので、Wの値が高いほど、再凍結時間も低下する)が、Wの値が約10ワットになるまでずっと、tは2秒以上の長さに留まっている。図25は、再冷凍時間tの誘電体厚dへの依存性を示している。実例1で使われている定数の値を考慮すれば、dが増大すると、tが増大する。図26は、再冷凍時間tの融解層厚lへの依存性を示している。実例2で使われている定数の値を考慮すれば、lが増大すると、tが増大する。
【0057】
実例2について最適化パラメータとして選ぶことができる、いくつかのパラメータは以下の通り。
【0058】
【表4】

システム10(1)(誘電体膜16(1)を使用)とシステム10(4)(空隙を使用)の予想性能を比較すると、システム10(4)は、氷解放プロセス中は同量のエネルギーを消費するが、再凍結前の、氷が冷却板から滑り落ちる時間はより長い。それでもシステム10(1)もシステム10(4)も、氷解放プロセス中の平均消費電力は従来の製氷機のそれより少ない。例えば、図1から図4に示されるようなシステム(厚さ2.5cmの氷と厚さ2.5cmのアルミ製冷却板)は、氷の融点までゆっくり加熱されたとすると、冷却板と氷接触面を加熱して同量の氷融解を引き起こすために必要な最小エネルギーは、
【0059】
【数14】

、それに対して、システム10(1)およびシステム10(4)が使うのは
【0060】
【数15】

である。従って、氷を解放する際、システム10(1)およびシステム10(4)のほうが従来技術より約20倍経済的であり得る。
【0061】
図3および図4に描かれたデザインの製氷機の実験プロトタイプが作られた。試験では、加熱パルスが印加されると、ほとんど即座に氷が解放された。実験的に観察された他の特徴は、上記実例1に示されたものに非常に近かった。
【0062】
従来の製氷機は、概して氷を採集した後、冷却板を再冷却しなければならず、従って、サイクル当たりの使用エネルギーがさらに多いが、システム10(1)から10(6)では、冷却板12(1)〜12(6)が採集中も冷えたままなので、氷の採集後、およそ数秒で氷の成長が再開できる。
【0063】
(PETDを利用した熱交換器)
熱交換器は、熱質量間の熱を移転させる働きをする。ある熱交換器形態では、循環する冷却剤によって冷却される熱交換器表面の近くを空気が循環する。空気の熱は冷却剤に奪われる。冷却剤の温度が十分に低くなると、表面上に氷ができ、表面と空気の熱交換を妨げる。熱をできる限り加えずに、そのような氷を取り除くことが好ましい。空気との熱交換を再開するために、加熱された表面は再冷却される必要があるからである。
【0064】
図27は、パルスシステムで氷を剥離させる構造の熱交換器40の斜視図である。熱交換器40は、例えば、金属あるいは導電性・熱伝導性ポリマーで形成されている。面44(1)と44(2)は循環する冷却剤によって冷却されている。空気は矢印52の方向に循環し、冷却面42、46(1)、46(2)、そしてこの図では隠れている面42と面44(2)の反対側の対応する冷却面を通過する。熱は空気から熱交換器の冷却面へと伝わり、それから冷却剤へ伝わる。冷却面上に氷ができる。薄膜の凍結検知器43が一つまたはそれ以上の冷却面、例えば冷却面42に付いており、氷、および/または霜の存在を検知したり、氷または霜の厚さを測ったりし得る。上面48と底面50は、断熱されており、そこには氷が形成しないようになっている。
【0065】
図28は、熱交換器40の上面図で、氷5(7)が堆積しており、電源54とスイッチ56に接続している。作動中、熱交換器40は空気を冷却し、氷5(7)を堆積させ得る。それからスイッチ56が閉じ得、加熱電流パルスを熱交換器40に送る。加熱パルスの出力と幅は、パルスからの著しい熱が、氷5(7)および熱交換器40の冷却面の中に消散してゆく前に、氷-物体接触面を融解するよう制御することができる。熱交換器40が垂直方向を向いている場合は(例えば、図27、28の通り)、加熱パルスが印加された後、氷5(7)は重力によって熱交換器40から滑り落ちる。
【0066】
図29は、パルスシステムで氷を剥離させる構造の熱交換器60を示している。熱交換器60は、熱が空気から冷却剤へと伝わる風洞62を形成し、空気は入口64で熱交換器60に入り、出口66で熱交換器60から出る。破線30−30は、図30にある断面の頂面を示している。
【0067】
図30は、熱交換器60の断面図で、図29中の破線30−30から真っすぐに下に伸びた平面を取り上げたものである。空気は熱交換器60の中を通って、矢印64の方向に流れる。冷却面63は、風洞62の側面を形成し、図のように断熱層68が各風洞62の上部と底部を断熱している。各冷却面63は、スイッチ74を通して電源装置72と接続している(図では明瞭に説明するために、冷却面63が一つだけ接続している)。
【0068】
作動中、熱交換器60は空気を冷却し、冷却面63上に氷5(8)を堆積させ得る。それからスイッチ74が閉じ得、加熱電流パルスを各冷却面63に送る。加熱パルスの出力と幅は、パルスからの著しい熱が、氷5(8)、冷却剤、そして冷却面63の中に消散してゆく前に、氷-物体接触面を融解するよう制御される。熱交換器60が垂直方向を向いている場合は(例えば、図29および30の通り)、加熱パルスが印加された後、氷5(8)は重力によって冷却面63から滑り落ち得る。
【0069】
当然のことながら、熱交換器40と60の変更は、本開示の範囲内である。例えば、熱交換器40の冷却面の形状は、図27と28に示される形状とは異なる形にできる。冷却剤は熱交換器40のチューブあるいは導管を流れてもよい。冷却面を電源装置に接続する代わりに、加熱ホイルあるいは膜を、熱交換器40あるいは60の冷却面に隣接する誘電体層に配置することができる。加熱ホイルあるいは膜と冷却面との間の空間を密閉し、この空間は交互に、真空になって、加熱ホイルあるいは膜を冷却面と熱接触させたり、氷の剥離の際には、加圧されて、加熱ホイルあるいは膜と冷却面の間に空隙を作ったりすることができる。冷却面はセクションを形成し(以下の考察のとおり)、そのようなセクションがスイッチや電源装置への電気的接続を形成し、すべてのセクションが同一時間に加熱パルスを受信しないようにすることができる。
【0070】
(瞬間パルス電力対有効電力)
システム10(1)〜10(6)では、氷を解放するパルスによって消費される平均出力は非常に低い(例えば、60w/m、または冷却板1000インチにつき39w)が、短い加熱パルスに求められる出力(例えば、冷却板1000インチにつき6.6kwから65kw)は、一部の電源装置については継続的な対応能力を超える可能性がある(例えば2kwから3kw)。有効電力と求められるパルス電力を一致させるために、ヒーターホイル(または膜)を「セクション化」することができる。電源が入る時、個々のセクションが電源の容量に負荷をかけ過ぎることはないが、各セクションの徐氷がグリッド全体の徐氷の場合と同じ理論に従うため、総エネルギー需要は変わらない。セクションで氷が採集される時、総採集時間はパルス幅Xセクション数に等しい。エネルギー蓄積装置、例えば、ウルトラコンデンサ、スーパーコンデンサ、電解コンデンサ、電池等を使って、加熱パルス間の電気エネルギーを蓄積し、そのエネルギーを単一パルスとして再分配して、個々のセクションまたは冷却板全体の氷採集を促進することができる。
【0071】
(パルス電気蒸発式徐氷)
システム10(1)〜10(6)では、PETDを有利に利用して、氷の採集に使われるエネルギー消費を減らしているが、パルス電気蒸発式徐氷(”PEED”)は、エネルギー消費をさらに削減することができる。また、PEEDにも氷の採集以外のアプリケーションがある。PEEDシステムでは、氷−物体接触面の一部または全てが、水の沸点以上に急激に加熱される。その加熱により、接触面が融けるだけでなく、高圧の水蒸気が発生し、氷を物体から引き離す。加熱時間が非常に短いため、氷と基質での熱拡散が制限され、そのため総エネルギー需要が低減する。氷を集める面とヒーターの形状によっては、氷を蒸発させるのに必要な熱を少量で集中させることができ、氷の剥離に使われるエネルギーが削減される。理論計算と実験結果から、PEEDシステムのほうがPETDシステムより高い作業温度に達するにも関わらず、PEEDを利用したシステムは、PETDを利用したシステムよりもエネルギー消費がさらに少なくなり得ることが証明されている。
【0072】
図31は、水蒸気の平衡圧の温度への依存性を示しており100℃以上という中程度の水の過熱でも、水蒸気の圧力は非常に高くなる。例えば、T=120℃、P=2atmで、2atmの圧力が1cm厚さの氷を押すと、氷は
【0073】
【数16】

のレートで加速する。
【0074】
以下はPEEDの理論である。PEEDは、基質と薄い加熱素子を利用する。氷は加熱素子の上に成長し、システム全体は水の氷点下の大気温度である。過加熱素子に印加された熱電流パルスが、氷-物体接触面(例えば、金属ヒーターが氷と交わる所)を水の沸点以上に加熱し、蒸発した水が残りの氷を加熱素子から押し除く。加熱パルス幅が十分に短くあり得るため、熱が著しく基質および/または残りの氷に拡散することはない。
【0075】
図32Aは、パルス除氷システム75を図式的に示したものである。システム75には、基質80と加熱素子82が含まれ、加熱素子82に氷-物体接触面84を形成する氷5(9)とともに示されている。図32Bは、加熱パルスが加熱素子82に印加された後のパルス除氷システム75を示したものである。図32Aの氷-物体接触面84で作られた水蒸気からの圧力が、加熱素子82と氷5(9)の間に空間86を作り出す。
【0076】
PEEDの加熱素子(例えば加熱素子80)は、金属ホイル、金網、金属薄膜、ITO膜、半導体膜、炭素繊維網、カーボンナノチューブ網、炭素繊維、カーボンナノチューブ伝導性複合材、多孔質導体ホイル、導電ペイント等でできている。PEED加熱素子の厚さは、10nmから約1mm程度であり得る。加熱電流パルスの幅は、約1μsから約100sであり得、通常は1msから1sである。加熱出力密度は、約10kW/mから約10MW/mであり得、通常は100kW/mから約1MW/mである。
【0077】
(実例3:)
図33は、PETDとPEEDの両方を利用した、ある製氷システム100(1)の断面図である。製氷システム100(1)は、氷容器102(1)とキャピラリーチューブ104(1)を有しており、両方とも、例えばステンレス鋼製であり得る。氷容器102(1)とキャピラリーチューブ104(1)は水で満たされ、それが凍結して主要部分の氷5(10)とキャピラリーチューブ部分の氷5(11)を形成する。容器102(1)は、錐台のような形をしている。
【0078】
製氷システム100(1)は、二つの電源装置108と110によって作動し、それぞれ二つのスイッチ112と114によってオンオフされる。製氷システム100(1)から氷が採集される時には、まずスイッチ114が閉じ、第一の加熱パルスを氷容器102(1)に供給し、それからスイッチ112が閉じ、第二の加熱パルスをキャピラリーチューブ104(1)に供給する。第一の加熱パルスには、少なくとも氷容器102(1)と氷部分5(10)の間の界面氷層を融解するだけのエネルギーがある。第二の加熱パルスには、キャピラリーチューブ部分の氷5(11)の一部または全てを蒸発させるだけのエネルギーがある。キャピラリーチューブ部分の氷5(11)の一部または全ての蒸発によって生じる圧力は、氷部分5(10)を氷容器102(1)から押し出す。第一と第二の加熱パルスの幅はともに、氷部分5(10)が氷容器102(1)から押し出される前に、そこへ熱が著しく拡散しないよう、十分に短くなっている。電源装置112と114はそれぞれ、適切な加熱エネルギーをキャピラリーチューブ104(1)と氷容器102(1)へ提供するような形態になっており、氷容器102(1)へ供給された熱が、必要とされる熱を著しく超えることなく界面氷層を融解でき、また、キャピラリーチューブ104(1)へ供給された熱が、必要とされる熱を著しく超えることなく氷部分5(10)を放出できるようになっている。
【0079】
図34は、PETDとPEEDの両方を利用した、ある製氷システム100(2)の断面図である。製氷システム100(2)には、氷容器102(2)とキャピラリーチューブ104(2)がついており、両方とも、例えばステンレス鋼製であり得る。製氷システム100(2)は、電源装置116によって作動し、スイッチ118によってオンオフされる。スイッチ118が閉じると、単一の加熱パルスが氷容器102(2)と氷部分5(12)の間の界面氷を融解し、キャピラリーチューブ104(4)内の氷部分5(13)の一部または全てを蒸発させる。キャピラリーチューブ部分の氷5(13)の一部または全ての蒸発によって生じる圧力は、氷部分5(12)を氷容器102(2)から押し出す。氷部分5(12)が氷容器102(2)から押し出される前に、そこへ熱が著しく拡散しないよう、加熱パルスの幅は十分に短くなり得、また氷容器102(2)とキャピラリーチューブ104(2)の電気抵抗の平衡が保たれ得る。
【0080】
電源108、110および/または116は、普通のAC電源出力、あるいはDC電源装置、例えば電池、コンデンサ、ウルトラコンデンサ等であり得る。スイッチ112、114、118は、半導体タイプのスイッチ(パワーMOSFET、IGBT、サイリスタ等)、機械スイッチ、電磁スイッチ、あるいは上記のどれかの組合せであり得る。電子論理回路は、加熱パルスの相対幅およびタイミングを制御するために使われ得る(例えば、スイッチ114を特定の期間閉じ、特定の遅延時間待って、その後スイッチ112を特定の期間閉じる、など)。
【0081】
システム100(1)の記載に準じた製氷システムが作られ、試験された。氷容器は0.1mmのステンレス鋼で作られ、上面径23.9mmの錐台形であった。容器長さは25.4mmであった。ステンレス鋼製のキャピラリーチューブは、長さ17cmで、内径1.4mm、外径2.4mmであった。一例では、0.95秒、229ジュールの電流パルスがまず氷容器に印加された(例えば、電源110とスイッチ114を使用)。0.2秒後、0.125秒、859ジュールのパルスが印加され(例えば、電源108とスイッチ112を使用)、キャピラリーチューブ内の氷を蒸発させた。主要部分の氷が氷容器から押し出された。もう一つの例では、単一のスイッチ(例えばスイッチ118)を使って単一の加熱パルスを氷容器とキャピラリーチューブに供給した。やはり主要部分の氷が押し出された。
【0082】
図35は、PETDとPEEDの両方を利用して、飛行機の翼の前縁122を除氷するパルス除氷システム120(1)を示している。システム120(1)には電源装置126、スイッチ128、キャピラリーチューブ124(この図ではキャピラリーチューブ124が一本だけ示されている)が含まれている。航空機の運行により、氷5(14)がキャピラリーチューブ124内に形成し得、氷5(15)が翼122に堆積する。システム120(1)は、スイッチ128を閉じて、加熱電流パルスが電源装置126からキャピラリーチューブ124の側面を通り、翼122を通って流れることにより、翼122を除氷することができる。加熱パルスは、翼122と氷5(15)の間に形成された氷−物体接触面を融かし、氷5(14)の少なくとも一部を蒸発させる。蒸発した氷からの蒸気圧が氷5(15)を割り、再凍結する前に翼122から滑り落ちることができる。
【0083】
図36は、航空機の翼122の一部の斜視図である。一列に並んだキャピラリーチューブ124が翼122のよどみ線上に存在する。隣接するキャピラリーチューブ124同士の間隔は、全てのキャピラリーチューブ124が同時に加熱パルスを受け取った時、翼122全体に沿って氷5(15)が割れるよう最適化され得る。
【0084】
製氷システム100(2)のように、キャピラリーチューブ124と翼122の相対的電気抵抗、また、電源装置126とスイッチ128によって供給される加熱パルスの出力と幅は、エネルギーの浪費を最低限にして氷-物体接触面を融かし、氷を割るように最適化することができる。あるいは、一つ目のスイッチと電源装置を利用して、氷5(15)と翼122の間の氷-物体接触面が融解され得る。そして二つ目のスイッチと電源装置を利用して、一本またはそれ以上のキャピラリーチューブ124内の氷を蒸発させることができる(例えば、製氷システム100(2)では電源とスイッチが一つだけ使われているが、製氷システム100(1)では二つの電源装置とスイッチが使われているのと同じ)。さらに、小容量の電源装置126を利用するために、キャピラリーチューブと翼122をセクションに分け、一回に一つのセクションだけが除氷されるようにすることができる。翼122の金属を加熱素子として利用してもよいし、独立した加熱素子を利用してもよい。例えば、独立した加熱素子を、下に誘電体層をつけて、またはつけないで、航空機の翼に貼付けることができる(例えば、航空機の翼の伝導性が高すぎる、または低すぎて、加熱素子としての役割を効果的に果たさない場合)。
【0085】
もう一つの実施形態では、一連のキャピラリーチューブの代わりに多孔質金属ホイル片が使われる。多孔質金属ホイルに空気中の水が染み込むため、孔は水で満たされる。加熱電流パルスが多孔質金属ホイルに印加されると、電流がホイルを水の沸点以上に加熱し、氷と翼の間に高圧の水蒸気が発生する。
【0086】
(実例4:)
図37Aは、パルス電気蒸発式除氷システム130を図式的に示したものである。システム130には、基質132と加熱素子134が含まれ、加熱素子134に氷-物体接触面136を形成する氷5(16)とともに示されている。加熱素子134には孔138がついており、それは氷5(16)で満たされる。図37Bは、加熱パルスが加熱素子134に印加された後のパルス電気蒸発式除氷システム130を示したものである。図37Aの氷-物体接触面136で作られた水蒸気からの圧力、そして特に孔138内で蒸発した水からの圧力が、加熱素子134と氷5(16)の間に空間140を作り出す。
【0087】
システム130の記載に準じたパルス除氷システムが作られ、試験された。厚さ0.32mmの多孔質ステンレス鋼ホイルが53μmから75μmの粒子で焼結された。ホイルには約10μmの孔がついていた。水がホイルの上に置かれ、T=−10℃で凍結され、その水の一部はホイルの孔の中に浸透し、凍結した。加熱密度1.7x10W/mの20msパルスが印加された。孔の中の氷は蒸発し、氷のシートをホイルから押し離した。
【0088】
(加熱電気パルスによる熱交換フィンの除氷)
図38は、パルスシステムで氷を剥離させる構造の、アコーデオン型熱交換器150を示している。熱交換器150では、冷却剤156(フロン、またはその他の液体)が冷却フィン154のついた冷却剤ダクト152内を流れ、それが熱交換面を形成し、熱を周囲の空気と交換する。冷却剤ダクト152はフィン154内に冷却剤が入っているように示されているが、一部の実施形態では、熱交換面が直管(チューブまたはパイプ)から横方向に伸びる冷却剤ダクトを持つものもある(例えば図40を参照)。他の実施形態では、チューブまたはパイプが蛇行、またはジグザグ形状をとり、熱交換面を形成している(例えば図42を参照)。冷却フィン154に形成される氷5(17)は、パルス除氷で除去することができる。スイッチ158が閉じると、電源装置160は熱交換器150を通して加熱電流パルスを送る。加熱パルスは少なくともフィン154と氷5(17)の間に形成された氷−物体接触面を融解する。この加熱パルスはまた氷5(17)を全て融かすかもしれない。通常の単位面積当たり加熱密度は、約5KW/mから約100KW/mである。電流量およびパルス幅は温度、流量、冷却剤特性等(例えば、密度、熱容量、熱伝導率等)に基づき調整される。通常のパルス幅は約0.1sから10sである。電源装置160は普通のAC電源出力、あるいはDC電源装置、例えば電池、コンデンサ、ウルトラコンデンサ等である。スイッチ158は、半導体タイプのスイッチ(パワーMOSFET、IGBT、サイリスタ等)、機械スイッチ、電磁スイッチ、あるいは上記のどれかの組合せである。加熱パルスの後も残っている固い氷5(17)は、重力によって(例えば、氷5(17)はフィン154から滑り落ちる)、あるいは、かき取り、振動、熱交換器150への送風などの機械的動作によって除去される。振動は、例えば、小型のモーターとクランクシャフト、電磁バイブレータ、または冷却剤156に圧力振動を誘発する等によって与えられる。
【0089】
図39は、冷却剤ダクト170を形成するために取り付けられるホイルワッシャ172の断面図である。冷却剤ダクト170は、例えば、冷却剤ダクト152として使うことができる(図38参照)。ホイルワッシャ172は、例えば、4ミルのステンレス鋼ホイルワッシャで、内径1インチ、外径3インチ、そして外縁174と内端176で、はんだ付け、またはスポット溶接され得る。こうして各ワッシャ172が熱交換面を形成する(例えば、二枚のワッシャが一枚の冷却フィン154(図38)を形成する)。
【0090】
図40は、冷却剤ダクト180を形成するために直管184に取り付けられるホイルワッシャ182の断面図である。冷却剤ダクト180は、例えば、冷却剤ダクト152として使うことができる(図38参照)。ホイルワッシャ182は、例えば、4ミルのステンレス鋼ホイルワッシャで、内径1インチ、外径3インチ、そして外縁186と内端188で、はんだ付け、またはスポット溶接されて得る。ワッシャ182はパイプ184にもはんだ付け、または溶接され得る。こうして二枚のワッシャ182が一枚の冷却フィン(例えば、冷却フィン154(図38))を形成する。パイプ184とワッシャ182の相対的肉厚は、図38に示されるように、電流のパルスが誘導される時、それらが同じような加熱出力密度Wを持つように選択され得る。
【0091】
図41は、また別の、パルスシステムで氷を剥離させる構造の、アコーデオン型熱交換器190を示している。熱交換器190には、冷却フィン194のついた冷却剤ダクト192があり、それが熱を周囲の空気と交換する。冷却フィン194に形成される氷5(18)は、パルス除氷で除去することができる。熱交換器190のPETD除氷は、熱交換器170と同じような仕組みである。スイッチ198が閉じると、電源装置196は熱交換器190を通して加熱電流パルスを送る。加熱パルスは少なくともフィン194と氷5(18)の間に形成された氷−物体接触面を融解する。この加熱パルスはまた氷5(18)を全て融かすかもしれない。
【0092】
図42は、また別の、パルスシステムで氷を剥離させる構造の、アコーデオン型熱交換器200を示している。熱交換器200には、冷却剤ダクト202があり、それが熱を周囲の空気と交換する。冷却剤ダクト202は蛇行型で、冷却剤が冷却剤ダクト202の湾曲部204を通って流れることで、熱交換面積を最大化する。冷却剤ダクト202に形成される氷(示されていない)は、PETD除氷で除去することができる。スイッチ208が閉じると、電源装置206は熱交換器200を通して加熱電流パルスを送る。加熱パルスは少なくともフィン204と氷の間に形成された氷−物体接触面を融解する。この加熱パルスはまた氷を全て融かすかもしれない。
【0093】
当然のことながら、熱交換器150、190、200の変更は、本開示の範囲内である。例えば、熱交換器150、190、200の熱交換面は、図38、図41、図42に示される形状とは異なる形にできる。ダクトおよび/または冷却フィンを電源装置に接続する代わりに、加熱ホイルまたは膜を、そのような面に隣接する誘電体層に配置することができる。加熱ホイルまたは膜と熱交換面との間の空間を密閉し、この空間は交互に、真空になって、加熱ホイルまたは膜を冷却面と熱接触させたり、氷の剥離の際には、加圧されて、加熱ホイルまたは膜と冷却面の間に空隙を作ったりすることができる。上記のとおり、熱交換面はセクションを形成し、そのようなセクションがスイッチや電源装置への電気的接続を形成し、すべてのセクションが同一時間に加熱パルスを受信しないようにすることができる。
【0094】
薄肉の金属チューブやホイルのパルス加熱には、大電流(数百または数千アンペア)の場合を除き、低電圧(1Vから24V)を有利に利用することができる。高電圧(例えば120VACまたは240VAC)の直接使用が好ましい時は、より高い電気抵抗が有利である。より高い電気抵抗は、ヒーター導電膜と冷却ダクトを分離することによって得られる。例えば、フィン付き熱交換器を陽極酸化アルミで作り、その(絶縁)陽極酸化層の上に、薄い、高抵抗性の加熱膜を塗布してもよい。加熱膜はCVD、PVD、電解塗膜、または塗装により塗布することができる。
【0095】
図43は、パルス除氷を利用した製氷方法300を示している。方法300は、例えば、前述の製氷システム10(1)から10(3)の、いずれのシステムによっても、システムに付随するマイクロプロセッサの制御および作動などを通して実行され得る。方法300のステップ302は、冷却板を冷やす(例えば、冷却板12(1)〜12(3)のいずれか)。ステップ306は、発熱素子(例えば、ホイル18(1)〜18(3)のいずれか)上に氷を凍結する。ステップ310は、加熱パルスを印加し、氷を解放する。方法300は、ステップ306の結果、氷が目的の場所に到達したら(例えば、氷が容器に落ちるなどして)、ステップ306の後、再びステップ302へ戻ることができる。あるいは、方法300は、機械的な力を加えて氷を除去するステップ312へ進むこともできる(例えば、氷をかき取る、氷を拾い上げる、風をあてて氷を動かす、など)。ステップ312は、例えば、システム中のマイクロプロセッサの制御下にある電気機械装置(送風機、スクレーパー)によって実行される。氷が目的の場所に到達したら、方法300はステップ302へ戻り、再開する。
【0096】
図44は、パルス除氷を利用した製氷方法320を示している。方法320は、例えば、前述の製氷システム10(4)から10(6)の、いずれのシステムによっても、システムに付随するマイクロプロセッサ(および、必要に応じて、機械的アクチュエータ)の制御および作動などを通して実行され得る。方法320のステップ302は、冷却板を冷やす(例えば、冷却板12(4)〜12(6)のいずれか)。ステップ304は、冷却板と発熱素子(例えば、ホイル18(4)〜18(6)のいずれか)の間の空間(例えば、空間15(1)〜15(3)のいずれか)を真空にし、冷却板と発熱素子を熱接触させる。ステップ306は、発熱素子上に氷を凍結する。ステップ308は、その空間を加圧して、発熱素子と冷却板の間に空隙を作り出す。ステップ310は、加熱パルスを印加し、氷を解放する。方法320は、ステップ360の結果、氷が目的の場所に到達したら(例えば、氷が容器に落ちるなどして)、この時点で再びステップ302へ戻ることができる。あるいは、方法320は、機械的な力を加えて氷を除去するステップ312へ進むこともできる(例えば、氷をかき取る、氷を拾い上げる、風をあてて氷を動かす、など)。氷が目的の場所に到達したら、方法320はステップ302へ戻り、再開する。
【0097】
図45は、パルス電気蒸発式除氷を利用した製氷方法350を示している。方法350は、例えば、前述の製氷システム100(2)によって、システムに付随するマイクロプロセッサ(および、必要に応じて送風機、スクレーパー等の電気機械装置)の制御および作動などを通して実行され得る。方法350のステップ352は、氷容器およびキャピラリーチューブを冷やす(例えば、氷容器102(2)とキャピラリーチューブ104(2))。ステップ354は、氷容器およびキャピラリーチューブ内に氷を凍結する。ステップ356は、(例えば、スイッチ118を閉じることにより)加熱パルスを印加して、氷を解放し、キャピラリーチューブ内の氷を蒸発させ、それによって、氷を押し出す。ステップ356の後、方法350はステップ352へ戻り、再開する。
【0098】
図46は、パルス電気蒸発式除氷を利用した製氷方法360を示している。方法360は、例えば、前述の製氷システム100(1)によって、システムに付随するマイクロプロセッサ(および、必要に応じて送風機、スクレーパー等の電気機械装置)の制御および作動などを通して実行され得る。方法360のステップ362は、氷容器およびキャピラリーチューブを冷やす(例えば、氷容器102(1)とキャピラリーチューブ104(1))。ステップ364は、氷容器およびキャピラリーチューブ内に氷を凍結する。ステップ366は、(例えば、スイッチ114を閉じることにより)第一の加熱パルスを印加して、氷容器内の氷を解放する。ステップ368は、(例えば、スイッチ112を閉じることにより)第二の加熱パルスを印加して、キャピラリーチューブ内の氷を蒸発させ、それによって、氷を押し出す。ステップ368の後、方法360はステップ362へ戻り、再開する。
【0099】
図47は、一連のフィン404がチューブ406に取り付けられた熱交換器402の一実例を示している。図48は、一つのチューブとフィンのアセンブリの横断面図である。各チューブ406は、スイッチ410を通して、電源408に接続されており、スイッチが閉じられると、電流がチューブ406を流れ、発熱するようになっている。除氷熱交換器402はこうして稼働している。図47では、明瞭に説明するために、チューブ406が一本だけ電気接続している。短い電流パルスがチューブ406を通ると、ジュール熱がチューブ406の壁内に発生する。チューブ406とフィン404の間の接触熱抵抗は非常に低く、また金属フィンにおける熱拡散速度が非常に速いため、チューブ406内で発生するジュール加熱は、急速にフィン404へと伝播し、熱交換器402上に成長した氷および/または霜を融解する。
【0100】
以下の例は熱拡散速度を説明している。ある材料の熱拡散距離を得るには、
【0101】
【数17】

ここでtは時間、αはこの物質の熱拡散率、kはこの物質の熱伝導率、ρはこの物質の密度、そしてCはこの物質の熱容量である。
【0102】
図49は、純アルミニウムの室温での熱拡散距離(m)対時間(s)を示すチャートである。特に図49は、熱が1.8cm以上のアルミは1秒、3.9cm以上は5秒で拡散することを示している。従って、この拡散距離は、チューブ406の中で熱が発生するとき、フィン404(フィン404が一般的なサイズの場合)を約1秒で加熱するに十分である。
【0103】
本実施形態は、現在低温産業で採用されている広範な熱交換器内での使用を促進するものである。例えば、フィン404の形状は、環状、正方形、ピン状等のうちの一つまたはいくつかである。フィン404とチューブ406の材料は、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、導電性ポリマー、その他の合金等のうちの一つまたはいくつかである。例えば、ステンレス鋼チューブは抵抗加熱を促進するために使用できる。ステンレス鋼は電気抵抗が高いためである。その他の金属や合金も使用できる。
【0104】
電源装置408は、低電圧、大電流のDCあるいはAC電源装置で、十分な出力を持つものある。例えば、電源装置408は、電池、スーパーコンデンサ一式、降圧変圧器、電子降圧変圧器等のうちの一つまたはいくつかであり得る。一実施形態では、電源装置408は高周波電流を発生させ、そのことは、高周波電流を運ぶ時の表皮効果によりチューブ406の電気抵抗が増大し得るため、有益である。
【0105】
より均一な電気加熱を起こすために、フィン404はチューブ406から電気的に絶縁されつつ、チューブ406との良好な熱接触を維持することができる。例えば、アルミ面上の薄い陽極酸化層、薄いポリマー層、またはエポキシ接着剤等がそういった薄い電気絶縁を形成し得る。
【0106】
上記の例で説明されたように、そのようなパルス加熱は、ベースチューブ内の液状冷媒との対流熱交換による、また、熱交換器の外面にある空気による熱損失を抑える。それによって、平均所要電力を低減し、熱交換器402を停止することなく(すなわち、冷凍庫、冷却器、または空調機器を停止することなく)、除氷および除霜を遂行することが可能になる。十分な周波数を持つ加熱パルスを印加することにより、フィンおよびチューブ外面上に成長する氷または霜の薄層が融解し、熱交換面は氷や霜がほとんどない状態に保たれる。これにより、熱交換器の性能が向上し、所要電力が減少し、冷蔵庫に貯蔵される食料が長もちし得る。
【0107】
図47の熱交換器402がアルミ製で、非常に一般的な寸法、チューブ内径1cm、チューブ肉厚0.30mm、フィン径36mm、フィン厚0.5mmそしてフィンとフィンの隙間は4mmであると考えよう。
【0108】
そのような熱交換器の質量は約330g/m(チューブ長さ1メートル当たり)、総表面積(フィン+チューブ外面)は0.47m/m(チューブ長さ1メートル当たり平方メートル)である。チューブ内の冷媒の温度は−18℃、チューブ406内側の対流熱交換速度は1000W/(m2・K)、気温は+5℃、そして空気と熱交換器402外面との間の対流熱交換係数は65W/(m・K)であると仮定しよう。
【0109】
図50で示されるように、3V/mの電界がチューブ406に印加されると、1.4秒以下で、アルミニウムの表面が0℃以上まで加熱される。アルミニウムの表面が0℃以上になると、薄い霜の層がアルミニウム表面に形成されている場合は、融解し始める。
【0110】
【表5】

熱交換器停止時、パルス加熱中の熱交換器温度は以下によって決定される。
【0111】
【数18】

そして、熱交換器継続稼働時、パルス加熱中の熱交換器温度は以下によって決定される。
【0112】
【数19】

図50は、アルミニウム製熱交換器について、稼働中、加熱パルスによって作動する場合と、冷却ポンプとファンをオフにした状態で加熱パルスによって作動する場合の、温度対時間を示すチャートである。特に、図50は、継続稼働中には1.4秒以下で霜が融け始めるため、冷却剤ポンプやファンを停止させることなく除霜がうまく行われることを示している。この実施形態では、3Vが熱交換チューブ(例えば、チューブ406)の1メートルのセクションに印加され、1.671kWの発熱量が発生する。このチューブは、3Vの印加で、557.004Aを伝導する。
【0113】
本開示の範囲から逸脱することなく、上記の方法およびシステムに変更を加えることができる。従って、上記の明細書に含まれ、あるいは、添付図面に示される事柄は、限定的な意味ではなく、説明的なものとして解釈されるべきである、ということに留意しなければならない。以下の特許請求は、ここに記載された全一般的および特定の機能を全て、また、現行の方法およびシステムの範囲の明示を全て網羅することを目的としており、言語的には、その範囲に収まるものであると言えよう。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は、パルス電熱式除氷(「PETD」)を使った製氷システムの一例示的な実施形態を示している。
【図2】図2は、図1の製氷システムを示し、パルス電熱式除氷を利用した氷の剥離を示している。
【図3】図3は、パルス電熱式除氷を使った製氷システムの一例示的な実施形態を示している。
【図4】図4は、図3の製氷システムを示し、パルス電熱式除氷を利用した氷の剥離を示している。
【図5】図5は、パルス電熱式除氷を使った製氷システムの一例示的な実施形態を示している。
【図6】図6は、図5の製氷システムを示し、パルス電熱式除氷を利用した氷の剥離を示している。
【図7】図7は、パルス電熱式除氷を使った製氷システムの一例示的な実施形態を示している。
【図8】図8は、図7の製氷システムを示し、パルス電熱式除氷を利用した氷の剥離を示している。
【図9】図9は、パルス電熱式除氷を使った製氷システムの一例示的な実施形態を示している。
【図10】図10は、図9の製氷システムを示し、パルス電熱式除氷を利用した氷の剥離を示している。
【図11】図11は、パルス電熱式除氷を使った製氷システムの一例示的な実施形態を示している。
【図12】図12は、図11の製氷システムを示し、パルス電熱式除氷を利用した氷の剥離を示している。
【図13】図13は、図1の製氷システムについて、エポキシ樹脂における熱拡散距離(L)および氷における熱拡散距離(L)のパルス幅への依存性を示している。
【図14】図14は、図1の製氷システムについて、総エネルギー量の出力への依存性を示している。
【図15】図15は、図1の製氷システムについて、クリーニングスピードの出力密度への依存性を示している。
【図16】図16は、図1の製氷システムについて、クリーニング時間の出力密度への依存性を示している。
【図17】図17は、図1の製氷システムについて、誘電体厚が0.2mmの場合の、再凍結時間の出力密度への依存性を示している。
【図18】図18は、図1の製氷システムについて、再凍結時間の誘電体厚d(m)への依存性を示している。
【図19】図19は、図1の製氷システムについて、誘電体厚dが0.2mmの場合の、再凍結時間の融解層厚への依存性を示している。
【図20】図20は、図7の製氷システムについて、L(t)とL(t)のパルス幅tへの依存性を示している。
【図21】図21は、図7の製氷システムにおいて、空隙2mmの場合の、m当り総エネルギー量Qの出力密度Wへの依存性を示している。
【図22】図22は、総クリーニング時間Tの加熱出力密度Wへの依存性を示している。
【図23】図23は、クリーニング速度Sの加熱出力密度Wへの依存性を示している。
【図24】図24は、再冷凍時間tの加熱出力密度Wへの依存性を示している。
【図25】図25は、再冷凍時間tの誘電体厚dへの依存性を示している。
【図26】図26は、再冷凍時間tの融解層厚lへの依存性を示している。
【図27】図27は、パルスシステムで氷を剥離させる構造の熱交換器の斜視図である。
【図28】図28は、図27の熱交換器の上面図で、氷が堆積しており、電源とスイッチに接続している。
【図29】図29は、パルスシステムで氷を剥離させる構造の熱交換器を示している。
【図30】図30は、図29の熱交換器の断面図である。
【図31】図31は、水蒸気の平衡圧の温度への依存性を示している。
【図32】図32Aは、パルス除氷システムを図式的に示したものである。図32Bは、図32Aのパルス除氷システムで、加熱パルスが加熱素子に印加された後を示したものである。
【図33】図33は、PETDとパルス電気蒸発式除氷(「PEED」)の両方を利用した、ある製氷システムの断面図である。
【図34】図34は、PETDとPEEDの両方を利用した、ある製氷システムの断面図である。
【図35】図35は、PETDとPEEDの両方を利用して、飛行機の翼の前縁を除氷するパルス除氷システムを示している。
【図36】図36は、図35の航空機の翼の一部の斜視図である。
【図37】図37Aは、パルス電気蒸発式除氷システムを図式的に示したものである。図37Bは、図37Aのパルス電気蒸発式除氷システムで、加熱パルスが加熱素子に印加された後を示したものである。
【図38】図38は、パルスシステムで氷を剥離させる構造の、アコーデオン型熱交換器を示している。
【図39】図39は、冷却剤ダクトを形成するために取り付けられるホイルワッシャの断面図である。
【図40】図40は、冷却剤ダクトを形成するために直管に取り付けられるホイルワッシャの断面図である。
【図41】図41は、また別の、パルスシステムで氷を剥離させる構造の、アコーデオン型熱交換器を示している。
【図42】図42は、また別の、パルスシステムで氷を剥離させる構造の、アコーデオン型熱交換器を示している。
【図43】図43は、パルス除氷を利用した製氷方法を示している。
【図44】図44は、パルス除氷を利用した製氷方法を示している。
【図45】図45は、パルス電気蒸発式除氷を利用した製氷方法を示している。
【図46】図46は、パルス電気蒸発式除氷を利用した製氷方法を示している。
【図47】図47は、フィンのアレイがチューブに取り付けられた熱交換器の一例示的な実施形態を示している。
【図48】図48は、一つのチューブとフィンのアセンブリの横断面図である。
【図49】図49は、純アルミニウムの室温での熱拡散距離対時間を示すチャートである。
【図50】図50は、アルミニウム製熱交換器について、(a)稼働中、加熱パルスによって作動する場合と、(b)冷却ポンプとファンをオフにした状態で加熱パルスによって作動する場合の、温度対時間を示すチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却板と、
誘電体膜と、
該誘電体膜を介して該冷却板によって冷却される薄い金属ホイルであって、該金属ホイルに隣接する水が、該金属ホイル上に氷を形成するような、薄い金属ホイルと、
電源装置と、
該電源装置からの電流を該薄い金属ホイルに結合するように動作可能であり、該薄い金属ホイルの該氷の界面層を融解する加熱パルスを生成し該氷を解放するように動作可能である、スイッチと
を備える、製氷システム。
【請求項2】
前記電源装置がAC電源装置またはDC電源装置を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電源装置が、電池、コンデンサ、またはウルトラコンデンサを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記スイッチが、パワーMOSFET、IGBT、サイリスタ、機械スイッチ、電磁スイッチ、あるいはそれらの組合せを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記加熱パルスの印加された電圧および電流が、約1kw/mから500kw/mの範囲の十分な加熱出力密度を提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記電圧が、前記金属ホイルの電気抵抗に応じて2.5Vから1000Vである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記金属ホイルが0.5μmから1mmの厚さを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記金属ホイルが、導電ペイント、導電性ポリマー膜、炭素繊維複合材、またはカーボンナノチューブ複合材を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記誘電体膜が、前記金属ホイルを前記冷却板から電気的に絶縁し、かつ、セラミックと、ガラスと、ゴムと、ポリマーと、複合材とのうちの一つ以上を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記誘電体膜が、10μmから2mmの範囲の厚さを有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記スイッチが、前記加熱パルスが1msから30sまでの幅を有するように動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記金属ホイルが、前記氷のための一つ以上のポケットを形成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記加熱パルスの後、前記ホイルから解放される氷が、アイスキューブを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記誘電体膜は、該誘電体膜が厚いほど前記氷が薄くなるように、変動する厚さを含んでいる、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記変動する厚さが、前記氷が一形状を形成するように構成および配置されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記形状が、半球体、半円柱、長方形、棒状、星形のうちの一つである、請求項16に記載のシステム。
【請求項17】
冷却板と、
該冷却板によって冷却される金属ホイルであって、該金属ホイルに隣接する水が該金属ホイル上に氷を形成するような、金属ホイルと、
電源装置と、
該電源装置からの電流を該金属ホイルに接続するように動作可能であり、該金属ホイルの該氷の界面層を融解する加熱パルスを生成し該氷を開放するように動作可能である、スイッチと
を備える、製氷システム。
【請求項18】
前記冷却板と前記金属ホイルとの間の空間に空気を注入または排出するためのポンプをさらに備えており、該空気を注入することは、該冷却板を該金属ホイルから離し、該空気を排出することは、該空間から空気を除去し、該金属ホイルを該冷却板に押し付ける、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記空間がおよそ10μmから2cmである、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記金属ホイルが、前記氷のための一以上のポケットを形成する、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記冷却板が、前記金属ホイルに成長する氷を成形するために、一つ以上の溝を形成する、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
前記加熱パルスの印加された電圧および電流が、約1kw/m2から500kw/m2の範囲の十分な加熱出力密度を提供する、請求項17に記載のシステム。
【請求項23】
前記電圧が、前記金属ホイルの電気抵抗に応じて、2.5Vからおよそ1000Vまでである、請求項17に記載のシステム。
【請求項24】
前記金属ホイルが、およそ0.5μmから1mmの厚さを有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項25】
前記金属ホイルが、導電性ポリマー膜と、炭素繊維複合材と、カーボンナノチューブ複合材とのうちの一つを含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項26】
冷却時、水を氷に変換する氷容器と、
該氷容器の底部内に配置されているキャピラリーチューブと、
パルス加熱エネルギーを該氷容器と該キャピラリーチューブとに印加するように動作可能な電源装置と
を備える、製氷システムであって、
該パルス加熱が、該氷容器内の氷の界面層を融解し、該キャピラリーチューブ内の氷を蒸発させ、氷を該氷容器から押し出す、システム。
【請求項27】
前記氷容器内にパルス加熱エネルギーを生成するために前記電源装置を該氷容器に接続するように動作可能であるスイッチをさらに備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記キャピラリーチューブ内にパルス加熱を生成し、氷を蒸発させるために前記電源装置を該キャピラリーチューブに接続するように動作可能であるスイッチをさらに備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項29】
前記氷容器が、ステンレス鋼製である、請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
前記ホイルが、厚さ約0.1mmである、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記キャピラリーチューブが、ステンレス鋼製である、請求項26に記載のシステム。
【請求項32】
前記氷容器が錐台様形状を形成する、請求項26に記載のシステム。
【請求項33】
前記電源装置が、AC電源装置またはDC電源装置を含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項34】
前記電源装置が、電池、コンデンサ、またはウルトラコンデンサを含む、請求項26に記載のシステム。
【請求項35】
前記パルス加熱エネルギーを前記氷容器と前記キャピラリーチューブとに選択的に印加するために使用される少なくとも一つのスイッチをさらに備える、請求項26に記載のシステム。
【請求項36】
前記スイッチが、パワーMOSFET、IGBT、サイリスタ、機械スイッチ、電磁スイッチ、またはそれらの組合せを含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
パルス加熱が、約1秒以内印加され、約230ジュールの電流パルスを前記氷容器に生成して前記界面層を融かす、請求項26に記載のシステム。
【請求項38】
前記キャピラリーのパルス加熱が、約0.125秒以内印加され、約860ジュールの電流パルスを生成して該キャピラリーチューブ内部の氷を蒸発させる、請求項26に記載のシステム。
【請求項39】
除氷対象物上に配置されている抵抗膜と、
該対象物に配置されたキャピラリーのアレイであって、該キャピラリーのそれぞれの開口端が該対象物の表面と同一平面にあるような、キャピラリーのアレイと、
(a)該抵抗膜に隣接する氷の界面層を融かすように、該抵抗膜にエネルギーを供給し、該抵抗膜内にパルス加熱エネルギーを生成するように動作可能であり、(b)該キャピラリーにエネルギーを供給し、該キャピラリー内の氷を蒸発させ、該氷を対象物から押し出すように動作可能である、電源装置と
を備える、蒸発式除氷システム。
【請求項40】
前記キャピラリーが、航空機の翼のよどみ線上に設置されている、請求項39に記載の蒸発式除氷システム。
【請求項41】
除氷対象物の表面上に配置される抵抗膜と、
多孔質金属ホイルのストリップと、
電源装置と、
(a)該抵抗膜に隣接する氷の界面層を融かすように、該抵抗膜にエネルギーを供給し、該抵抗膜内にパルス加熱エネルギーを生成するように動作可能であり、(b)該多孔質金属のストリップにエネルギーを供給し、該多孔質金属のストリップ内の氷を蒸発させ、氷を該対象物から押し出すように動作可能である、電源装置と
を備える、蒸発式除氷システム。
【請求項42】
前記多孔質金属ホイルが、航空機の翼のよどみ線上に設置されている、請求項41に記載の蒸発式除氷システム。
【請求項43】
アコーディオン型表面を有する熱交換器と、
冷却剤が流れるためのウォールパイプと、
パルス加熱出力を該熱交換器に印加し、氷を除去するために、該熱交換器へと電気的にスイッチ切り替えされる電源装置と
を備える、冷蔵庫除氷システム。
【請求項44】
前記熱交換器の上部に位置する絶縁膜をさらに備えており、該絶縁膜は陽極酸化アルミ製または陽極酸化アルミ合金製である、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記絶縁膜の上部に位置する導電膜をさらに備えており、該導電膜は、CVD、PVD、電解塗膜、または塗装によって適用される薄い金属層である、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
ベースチューブと、取り付けられた複数のフィンとを有する熱交換器除氷システムであって、該システムは、
電源装置と、
該電源装置を該ベースチューブに接続するためのスイッチと
を備えており、
該スイッチは、ジュール加熱が該ベースチューブと該フィンとの温度を上昇させるように電流のパルスを該ベースチューブに印加するように動作し、かつ付着している氷を融かすように動作する、システム。
【請求項47】
前記ベースチューブと前記フィンとが、同一の連続した金属片から作製される、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記ベースチューブと前記フィンとの間に配置された誘電体材の薄い層をさらに備える、請求項46に記載のシステム。
【請求項49】
前記ベースチューブと前記フィンとが、銅と、アルミニウムと、ステンレス鋼と、金属合金と、導電性ポリマーと、導電性および熱伝導性複合材とのうちの一つ以上から作製される、請求項46に記載のシステム。
【請求項50】
前記ベースチューブに印加される加熱出力の密度が、0.5kW/kgから50kW/kgの範囲であり、該重量は前記熱交換器の重量を示す、請求項46に記載のシステム。
【請求項51】
前記スイッチが、およそ0.1sから30sの範囲の幅を有する電流のパルスを印加するように動作する、請求項46に記載のシステム。
【請求項52】
前記電源装置がDC電源装置である、請求項46に記載のシステム。
【請求項53】
前記電源装置が、前記ベースチューブ内に、該ベースチューブ材の電気抵抗に応じて、およそ0.5V/mから50V/mの範囲の電界強度を生成する、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記電源装置がAC電源装置である、請求項46に記載のシステム。
【請求項55】
前記AC電源装置が、前記ベースチューブ内に、該ベースチューブ材の電気抵抗に応じて、およそ0.5V/mから50V/mの範囲の電界強度を生成する、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
前記AC電源装置が、およそ50Hzから10MHzの範囲の周波数で動作する、請求項54に記載のシステム。
【請求項57】
前記AC電源装置の周波数が、表皮効果により前記ベースチューブの所望の電気抵抗が得られるように、調整される、請求項54に記載のシステム。
【請求項58】
前記電気パルスのエネルギーが、前記熱交換器に付着した霜または氷の薄い層を融かすのに十分である、請求項46に記載のシステム。
【請求項59】
前記電気パルスのエネルギーが、霜または氷の厚い層を融かすのに十分である、請求項46に記載のシステム。
【請求項60】
前記スイッチが、前記熱交換器の表面を氷および霜がない状態に保つのに十分な周波数と幅とで複数の電気パルスを供給するように動作する、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
氷および/または霜の存在を検知するために前記熱交換器の外面に取り付けられた薄膜氷検知器をさらに備える、請求項46に記載のシステム。
【請求項62】
前記氷検知器が前記氷および霜の厚さを測定する、請求項61に記載のシステム。
【請求項63】
前記氷および霜の厚さを監視するように前記氷検知器を利用する制御電子回路をさらに備える、請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
氷の厚さが設定値に達した場合において、前記制御電子回路が前記スイッチを作動させる、請求項63に記載のシステム。
【請求項65】
前記熱交換器上の氷および/または霜の全てが融けた場合において、前記制御電子回路が前記スイッチを切る、請求項63に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32A】
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【図32B】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37A】
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【図37B】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【公表番号】特表2008−503710(P2008−503710A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518229(P2007−518229)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/022035
【国際公開番号】WO2006/002224
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(504303713)ザ トラスティーズ オブ ダートマウス カレッジ (12)
【Fターム(参考)】