説明

氷蓄熱ユニット

【課題】氷蓄熱層の水位を用いて該氷蓄熱層に流れるブラインの量を調節することで、ピークカット時間終了前に氷がなくなり空調負荷対応が出来なくなる事を防止する氷蓄熱ユニットを提供する。
【解決手段】第一のブラインを冷却する熱源機1a,1bと、熱源機と第一の配管で接続され、第一のブラインと第二のブラインとの熱交換を行う熱交換器3と、第一のブラインを移動させるブラインポンプ4と、第一の配管と並列に接続され、熱源機で冷却された第一のブラインにより製氷を行う製氷用熱交換器2aと、製氷用熱交換器を有する氷蓄熱槽2と、製氷用熱交換器へ流れる第一のブラインの量を調節する流量調節部と、氷蓄熱槽の水位を測定する水位センサー2bと、水位センサーの測定値が入力される制御部30とを備え、制御部は、水位センサーの測定値に基づいて、流量調節部を制御することで製氷用熱交換器へ流れる第一のブラインの量を調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空冷式ヒートポンプ等の熱源機の消費電力を平準化できる氷蓄熱ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空冷式ヒートポンプ等の熱源機を用いた従来の氷蓄熱ユニットは、夜間時間帯に蓄熱した熱を、昼間時間帯の冷房に利用する。夜間に氷蓄熱槽に氷を生成し、負荷の多い例えば昼間の午後1〜4時(ピークカット時間帯)に熱源機の出力を停止し、上記氷蓄熱槽の氷により冷房運転を可能にしていた。この方式によって、負荷が突出する時間帯の消費電力を大幅に削減できるので、消費電力の平準化に大いに有効となる。しかし、ピークカット時間中の負荷によっては、ピークカット時間終了前に氷蓄熱槽の残氷量がゼロになってしまうことがあった。この場合、氷蓄熱槽による負荷への対応が出来なくなるという問題点があった。
この問題点を解決するために、氷蓄熱層の残氷量を算出し制御する氷蓄熱ユニットの例として、「前記氷蓄熱槽2の残蓄熱量を検出する手段13は、氷蓄熱槽2の出入口ブライン温度を検出する温度センサS1,S2と、氷蓄熱槽2を通過するブライン流量を測定する流量センサS3とを備え、ブライン出入口温度及びブライン流量から氷蓄熱槽2に出入りする熱量を演算及び積算するように構成されている。」というものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3305549号公報(第2頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1のような方法では、温度センサーおよび流量センサーの精度により残蓄熱量(残氷量)の算出に誤差が生じたり、タンクからの吸熱などで実際の放熱量と誤差が生じてしまう場合がある。そのため、残氷量がゼロになり、空調負荷対応が出来なくなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、氷蓄熱槽の残氷量を精度良く調節することでピークカット時間終了前に残氷量をゼロになる可能性を少なくする。これにより、氷がなくなり空調負荷対応が出来なくなる事を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における氷蓄熱ユニットは、第一のブラインを冷却する熱源機と、前記熱源機と第一の配管で接続され、前記第一のブラインと第二のブラインとの熱交換を行う熱交換器と、前記熱源機と前記熱交換器の間の配管に設けられ、前記第一のブラインを移動させるブラインポンプと、前記第一の配管と並列に接続され、前記熱源機で冷却された第一のブラインにより製氷を行う製氷用熱交換器と、前記製氷用熱交換器を有する氷蓄熱槽と、前記製氷用熱交換器へ流れる前記第一のブラインの量を調節する流量調節部と、前記氷蓄熱槽の水位を測定する水位測定器と、前記水位測定器の測定値が入力される制御部と、を備え、前記制御部は、前記水位測定器の測定値に基づいて、前記流量調節部を制御することで前記製氷用熱交換器へ流れる前記第一のブラインの量を調節するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、氷蓄熱槽の水位に基づいて氷蓄熱槽の残氷量を精度良く算出し、それに基づいて調節装置を制御することで氷蓄熱槽の残氷量を精度良く制御できる。そのため、ピークカット時間中に氷蓄熱槽の残氷量がゼロになる可能性を少なくすることができる。これにより、氷がなくなり空調負荷対応が出来なくなる事を防止できる氷蓄熱ユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態における氷蓄熱ユニットの概略図である。
【図2】本発明の実施の形態における氷蓄熱ユニットの制御方法について、時間と氷蓄熱槽の目標水位との関係を示した図である。
【図3】本発明の実施の形態における氷蓄熱ユニットの制御動作を示すフローチャートである。
【図4】従来の氷蓄熱ユニットの水位と本発明の実施の形態の氷蓄熱ユニットのシミュレーションによる水位との比較を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明における氷蓄熱ユニットの一例について、図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態.
図1は、本実施の形態における氷蓄熱ユニット100の概略図である。
図1における氷蓄熱ユニット100は、熱源機1a,1b、蓄熱部20、ポンプユニット10、及び制御部30を備えている。ポンプユニット10には、熱源機1a,1b、及び蓄熱部20が配管によって接続されており、ブライン(本発明における第一のブラインに相当)がその配管内を循環する。制御部30は、後述する水位センサー2b及び温度センサー7a,7b,7c,7d,7e,7f,7gの測定値が入力され、後述する2方弁6a,6b(本発明における流量調節部に相当)及び2方弁6c,6dを制御する。なお、熱源機1a,1bは、例えば空冷式ヒートポンプなどであり、ブラインを冷却するものであればよい。また、熱源機の数は一つであってもよく、三つ以上であってもよい。
【0011】
ポンプユニット10は、熱源機1a,1bで冷却されたブラインと冷房等に用いる水(本発明における第二のブラインに相当)との熱交換を行う熱交換器3を備えている。なお、この水は冷媒などでもよく、熱交換ができるものであればよい。熱交換器3と熱源機1a,1bとの間の配管12には、ブラインを循環させるブラインポンプ4と、温度上昇により膨張したブラインを吸収するブライン膨張タンク5とが設けられている。
【0012】
また、熱交換器3と熱源機1a,1bとの間の配管11(本発明における第一の配管に相当)には蓄熱部20が並列接続されている。また、蓄熱部20と配管11の間には2方弁6a(本発明における第一の調節装置に相当)が設けられており、配管11には2方弁6b(本発明における第二の調節装置に相当)が蓄熱部20と並列に設けられている。なお、2方弁6a,6bは、蓄熱部20に流れるブラインの量を調節できれば、他の構成でもよい。例えば2方弁6a,6bは、どちらか一方だけ設けられていてもよく、配管11と配管12の接続部分に一つの3方弁を設けてもよい。
【0013】
また、熱交換器3に流れるブラインの流量を調節するために、熱交換器3と並列な配管に2方弁6cが設けられており、熱交換器3の入口又は出口の配管に2方弁6dが設けられている。
【0014】
また、熱源機1a,1bに接続する配管に、熱源機に流入するブラインの温度を測定する温度センサー7bと、熱源機から流出するブラインの温度(氷蓄熱槽2に流入するブライン温度)を測定する温度センサー7aが設けられている。また、蓄熱部20のブライン出口に接続する配管に、蓄熱部20から流出するブライン温度を測定する温度センサー7cが設けられている。また、熱交換器3に接続するブライン側配管に、熱交換器3に流入するブライン温度を測定する温度センサー7dと、熱交換器3から流出するブライン温度を測定する温度センサー7eが設けられている。また、熱交換器3に接続された水側配管に、水供給温度を測定する温度センサー7fと、水戻り温度を測定する温度センサー7gが設けられている。
【0015】
次に、蓄熱部20について説明する。
蓄熱部20は、上記ポンプユニット10内の配管11と並列に接続されている。蓄熱部20は氷蓄熱槽2を備えており、氷蓄熱槽2の内部に製氷用熱交換器2aが設けられている。製氷用熱交換器2aは、熱源機1a,1bで冷却され配管11を通して送られるブラインと氷蓄熱槽2内の水との熱交換を行い、氷蓄熱槽2に製氷する。また、氷蓄熱槽2には、氷蓄熱槽2内の水位を測定する水位センサー2bが設けられている。氷蓄熱槽2内の水は氷となった場合に体積が増加するため、水位センサー2bの測定値により残氷量が算出できる。なお、水位センサー2bは、水位の増減が測定できればよく、どのような種類のものでもよい。また、氷蓄熱槽2にはエアーポンプ2cが配管で接続されており、エアーポンプ2cで氷蓄熱槽2内の水に空気を送り込み攪拌することで、解氷をしやすくする。
【0016】
以下に、本実施の形態における氷蓄熱槽ユニット100の動作について説明する。
本実施の形態における氷蓄熱ユニット100において、ピークカット時間帯(本発明における放熱時間に相当)には、夜間蓄熱時間帯(本発明における蓄熱時間に相当)に生成した氷蓄熱槽2の氷を利用して熱交換器3の熱交換を行う。このとき制御部30は、温度センサー7fの温度が目標温度となるよう、2方弁6d,6cを制御し、熱交換器3に流れるブライン量を調整する。また、制御部30は、水位センサー2bの水位に基づき、2方弁6a,6bを制御することで、蓄熱部20に流れるブライン量を制御し、氷蓄熱槽2の残氷量を調節する。
【0017】
次に、本実施の形態における氷蓄熱ユニット100のピークカット時間帯における制御動作を説明する。
図2は、本実施の形態における氷蓄熱ユニット100の、時間と氷蓄熱槽2の目標水位との関係を示した図である。図2のグラフにおいて、縦軸が氷蓄熱槽2の水位であり、横軸がピークカット時間帯における経過時間である。
ピークカット時間帯の完了前に氷蓄熱槽2の水位がゼロとならないように制御を行うため、まず目標水位を設定する。ここで、目標水位は以下のように設定する。
ピークカット残時間率=(現在の時刻−ピークカット完了時刻)/(ピークカット開始時刻−ピークカット完了時刻) (1)
目標水位=(蓄熱完了時水位−残氷量ゼロ時水位)×ピークカット残時間率 (2)
そして、水位が、目標水位と目標水位に所定値(例えば、目標水位+蓄熱完了時目標水位×0.1)を加算した値との間になるように、制御部30は2方弁6a,6bの開度の制御を行う。すなわち水位が目標値未満の場合、氷蓄熱槽2に流れるブラインの量を減らすことで氷蓄熱槽2出入口温度差を小さくし、氷の使用量を減らす。また、水位が目標水位に上記所定値を加算した値より大きい場合、氷蓄熱槽2に流れるブラインの量を増やすことで氷蓄熱槽2出入口温度差を大きくし、氷の使用量を増やす。
【0018】
次に、上記制御動作についてフローチャートを用いて詳細に説明する。
図3は、本実施の形態の氷蓄熱ユニットにおける、制御部30の制御動作を示すフローチャートである。
氷蓄熱ユニット100の運転開始時に、本制御動作は開始される。STEP1において、氷蓄熱ユニット100の運転開始から所定時間(例えば、30分)以上経過しているかどうか判定する。STEP1の判定において、所定時間未満の場合は、システムが安定していないためSTEP1に戻り、所定時間以上であればSTEP2に進む。
【0019】
STEP2において、制御部30は、現在時刻がピークカット時間帯であるかどうか判定する。ピークカット時間帯でなければ、熱源機1a,1bの出力が可能であり、氷蓄熱槽2の残氷量の制御は不要であるため、STEP1に戻る。ピークカット時間帯であれば、STEP3に進む。
【0020】
STEP3において、制御部30は、現在の氷蓄熱槽2の水位が、目標水位+所定値(例えば、蓄熱完了時目標水位×0.1)以上かどうか判定する。
【0021】
STEP3の判定結果がYESであれば、制御部30は、氷蓄熱槽2に流れるブラインの量を増やすことで氷蓄熱槽2の出入口温度の差を大きくする。そのために、制御部30は、2方弁6aの開度を広げ、2方弁6bの開度を狭めるように制御する。なお、この制御は、氷蓄熱槽2に流れるブライン量を増やせればよく、2方弁6aの開度を広げるだけでもよい。(STEP6)
【0022】
STEP3の判定結果がNOの場合、STEP4において制御部30は、現在の氷蓄熱槽2の水位が目標水位以下かどうか判定する。
【0023】
STEP4の判定結果がYESであれば、制御部30は、氷蓄熱槽2に流れるブラインの量を減らすことで氷蓄熱槽2の出入口温度の差を小さくする。そのために、制御部30は、2方弁6aの開度を狭め、2方弁6bの開度を広げるように制御する。なお、この制御は、氷蓄熱槽2に流れるブライン量を減らせればよく、2方弁6aの開度を狭めるだけでもよい。(STEP7)
【0024】
STEP4の判定結果がNOの場合、STEP5において制御部30は、現在の時刻がピークカット完了時刻以降であるかどうか判定する。この判定結果がNOであれば、STEP1に戻り、この判定結果がYESであれば制御を終了する。
【0025】
図4は、従来の氷蓄熱ユニットの水位と本実施の形態の氷蓄熱ユニット100のシミュレーションによる水位との比較を示した図である。図4のグラフにおいて、縦軸が氷蓄熱槽の水位であり、横軸が時間である。ここで上記シミュレーションに用いる氷蓄熱ユニット2は、本実施の形態の制御以外については、従来の氷蓄熱ユニットと同条件で行うものとする。
図4に示すように、従来の氷蓄熱ユニットの水位は、ピークカット時間終了前に、残氷量ゼロ時の水位となっている。一方、本実施の形態の制御を用いた場合、氷蓄熱槽2の水位が目標水位に近い値で推移するため、ピークカット時間帯終了前に残氷量がゼロになることを防止できる。
【0026】
以上のように、本実施の形態の氷蓄熱ユニット100において、氷蓄熱槽2の水位に基づいて2方弁6a,6b等を制御することで氷蓄熱槽の残氷量を精度良く制御できる。そのため、ピークカット時間中に氷蓄熱槽の残氷量がゼロになる可能性を少なくすることができる。これにより、氷がなくなり空調負荷対応が出来なくなる事を防止することができる。
【符号の説明】
【0027】
1a,1b 熱源機、2 氷蓄熱槽、2a 製氷用熱交換器、2b 水位センサー、2c エアーポンプ、3 熱交換器、4 ブラインポンプ、5 ブライン膨張タンク、6a,6b,6c,6d 2方弁、7a,7b,7c,7d,7e,7f,7g 温度センサー、10 ポンプユニット、11,12 配管、20 蓄熱部、30 制御部、100 氷蓄熱ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のブラインを冷却する熱源機と、
前記熱源機と第一の配管で接続され、前記第一のブラインと第二のブラインとの熱交換を行う熱交換器と、
前記熱源機と前記熱交換器の間の配管に設けられ、前記第一のブラインを移動させるブラインポンプと、
前記第一の配管と並列に接続され、前記熱源機で冷却された第一のブラインにより製氷を行う製氷用熱交換器と、
前記製氷用熱交換器を有する氷蓄熱槽と、
前記製氷用熱交換器へ流れる前記第一のブラインの量を調節する流量調節部と、
前記氷蓄熱槽の水位を測定する水位センサーと、
前記水位センサーの測定値が入力される制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記水位センサーの測定値に基づいて、前記流量調節部を制御することで前記製氷用熱交換器へ流れる前記第一のブラインの量を調節することを特徴とする氷蓄熱ユニット。
【請求項2】
前記制御部は、
前記水位センサーにより測定された前記水位が目標水位より低い場合は、前記製氷用熱交換器を流れる前記第一のブラインの量を減らし、
前記水位センサーにより測定された前記水位が目標水位に所定値を加算した水位より高い場合は、前記製氷用熱交換器へ流れる前記第一のブラインの量を増やすように前記流量調節部を制御することを特徴とする請求項1に記載の氷蓄熱ユニット。
【請求項3】
前記流量調節部は、第一の調節装置と第二の調節装置とを備え、
前記第一の調節装置は、前記第一の配管と前記製氷用熱交換器との間の配管に設けられ、
前記第二の調節装置は、前記第一の配管に前記製氷用熱交換器と並列に設けられ、
前記制御部は、前記水位に基づいて前記第一の調節装置及び前記第二の調節装置を調節することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の氷蓄熱ユニット。
【請求項4】
前記制御部は、
前記水位センサーにより測定された前記水位が目標水位より低い場合は、前記第一の調節装置の開度を狭め、前記第二の調節装置の開度を広げ、
前記水位センサーにより測定された前記水位が目標水位に所定値を加算した水位より高い場合は、前記第一の調節装置の開度を広げ、前記第二の調節装置の開度を狭めることを特徴とする請求項3に記載の氷蓄熱ユニット。
【請求項5】
前記製氷用熱交換器は、
蓄熱時間において、前記熱源機で冷却された第一のブラインにより前記氷蓄熱槽に氷を生成し、
放熱時間において、前記氷蓄熱槽の前記氷により前記第一のブラインを冷却し、
前記目標水位は、蓄熱時間完了時の前記水位と放熱時間の残時間との関係で設定されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の氷蓄熱ユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−257090(P2011−257090A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133182(P2010−133182)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】