説明

永久磁石を用いた害虫駆除装置及び磁化水

【課題】農薬の使用を削減することができ、安全且つ経済的な害虫駆除装置とこの装置により得られた磁化水を提供する。
【解決手段】害虫駆除装置は、平盤状の回転体1と、この回転体1に回転軸2aを介して連結されたモータ2とから成り、回転体1の内部に、複数の永久磁石1aを任意の間隔をおいて固定して構成し、回転体1を、モータ2に連結された回転軸2aにより高速回転させ、圃場雰囲気中に交磁場を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石を用いて圃場内の磁場を変化させ、農作物の病害虫を駆除するための装置と本装置により製造した磁化水に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、野菜や果物等の圃場に発生するアザミウマ(スリップ類)、コナジラミ、ダニ等の病害虫の駆除には、農薬(殺虫剤)が多量に用いられている。
【0003】
しかしながら、近年、需要者は農薬をなるべく使用していない作物を所望しているのが現状である。また、コストの嵩む投薬は農家にとって経営上過度の負担を強いられているのも現実である。そこで、農薬を使用しない病害虫の駆除方法として、例えば、界面活性剤を含む溶液で生成した泡を用いて害虫を窒息死させる装置(特許文献1参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−11798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、農薬を使わなければ、農作物の収量は激減し、農業は経済的に成立しないこともまた現状である。そこで、本発明者は農薬の使用をできる限り削減し、所期の害虫駆除効果を取得すべく鋭意研究を行なった。
【0006】
先ず、本発明者は、地球上に生息する生物は、多かれ少なかれ地磁気に反応する羅針盤的機能を持ち合わせていることに着目した。例えば、1960年に磁気感知細菌が発見されているように、磁気細菌はマグネタイト微粒子を体内に保持している。そして、北半球に生息する磁気細菌はS極を指標として、南半球に生息する磁気細菌はN極を指標として行動することが判明している。また、回遊魚、生誕魚、昆虫、渡り鳥等の帰巣本能も内在する磁気物質が関与しているものと考察できる。
【0007】
したがって、農作物に群棲する病害虫も磁性細菌を保有し、作動している可能性がある。そこで、磁石の特性であるN極とS極の磁場を交互に反復して発生させ、病害虫の生活行動圏内に、N、Sの交互磁場を造り出すことにより、地磁気対応感覚を麻痺又は迷走させ、栄養摂取行動を撹乱させる。あるいは、繁殖行動を阻害し、生命維持活動を妨害する要因を創出することができることを知得し、本発明をするに至った。
【0008】
本発明は上記のような従来技術の課題に鑑み、簡単な構成で、農薬の使用を削減することができ、安全且つ経済的な害虫駆除装置とこの装置により得られた磁化水を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明の永久磁石を用いた害虫駆除装置は、病害虫の生活行動圏内に、N、Sの交互磁場を創出するために複数の永久磁石からなる電磁誘導体を備えた回転体と、当該回転体を回動するモーターとから構成したことを特徴とする。
【0010】
また、その装置は、複数の永久磁石をN極、S極が同位相又は交互位相になるように平盤状に配置してなることを特徴とする。さらに、本装置で創出した交番磁界及びパルス磁界により磁化された飲料水を特徴とする。
【0011】
そして、本発明に係る害虫駆除装置の駆動エネルギーは、商用電源又は太陽光発電、水力発電、風力発電等の自然エネルギー利用電源を用いることができる。
【0012】
さらに、平盤状回転体に近接して配されると共に、下端が地中に埋設された電磁誘導体を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の交磁式害虫駆除装置は、以下の優れた効果がある。
(1)農薬の使用量を削減でき、収量を落とすことなく安全で経済的な農作物が得られる。
(2)使用する電力は回転体の回動にのみ使用するものであり、電力消費量が少なくて済みランニングコストが小さくて済む。
(3)平盤状回転体に永久磁石を配置し、回転させるだけの簡単な構造なので、人体にも無害で、故障し難く、メンテナンスもし易い。
(4)上端が平盤状回転体に近接して配されると共に、下端が地中に埋設された電磁誘導体を設けることにより、良好な作物の育成状態が得られる。
(5)本装置で創出した交番磁界及びパルス磁界により磁化された飲料水を与ると乳牛の搾乳量が増加する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る害虫駆除装置の一実施例を示す斜視図である。
【図2】回転体内の永久磁石の配置例を示す(A)は平面図、(B)は側面図である。
【図3】本発明に係る害虫駆除装置の他の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明では、強力な磁力を有する永久磁石を配置した平盤状回転体を高速回転させることによって、病害虫の生活行動圏内(例えば、圃場)の雰囲気中にN、Sの交互磁場を造り出すことができる。
【0015】
永久磁石としては、例えば、ネオジウム系磁石、サマリウム系磁石などの表面3000ガウス以上の永久磁石を使用するのが好ましい。永久磁石は数百rpm以上で回転させる。
【実施例】
【0016】
図1は本発明に係る交磁場式害虫駆除装置の一実施例を示す斜視図、図2は回転体内の永久磁石の配置例を示す(A)は平面図、(B)は側面図である。
【0017】
本発明の交磁場式害虫駆除装置は、平盤状の回転体1と、この回転体1に回転軸2aを介して連結されたモータ2とから成り、回転体1の内部には、複数の永久磁石1aが任意の間隔をおいて固定されている。
【0018】
永久磁石1aは回転体1の円周に沿って等間隔に配置する。磁石1aは、それぞれN極とS極とが交互に位置するように配置しても良いし、同極同士が隣接するように配置しても良い。配置する個数も任意である。回転体1は、モータ2に連結された回転軸2aにより高速回転する。尚、本実施例においてモータ2の電源は商用電源3としたが、太陽光、水力、風力等の自然界のエネルギーを用いて電源とすることが有益なことは言うまでもない。
【0019】
[実験例]
イチゴのビニールハウス圃場にて駆除実験を行なった。実験条件と結果を下記に示す。
圃場所在地:宮崎市大字加江田地区
圃場面積: 20アール
生産物: イチゴ(品種名:さがほのか)
初回は、平成20年5月12日〜5月15日、二回目は平成20年5月20日以降本発明交磁場式害虫駆除装置稼動させた。
【0020】
[駆除対象害虫]
アザミウマ(スリップ類):発生状況は平年より遅く、個体数は平年の約2割程度であった。
コナジラミ:ほとんど発生しない。個体数は平年の約1割程度であった。
ダニ:発生が確認できなかった。
【0021】
[農薬散布状況]
同年5月7日:有機リン系殺虫剤であるマラソン(商品名:住友化学株式会社製)を2000倍に水で希釈したもの、シフルメトフェトン水和剤であるダニサラバ(商品名:大塚化学株式会社製)を1000倍に水で希釈したものを散布する必要があった。しなしながら、同年5月31日時点では、アブラムシやハモグリカビの駆除剤であるアセタミプリドを主成分とするモスピラン(商品名:日本農薬株式会社製)を水で4000倍に希釈したものを散布するだけで済んだ。これも通常は2000倍に希釈して散布している農薬である。
【0022】
以上、本発明装置の導入により、害虫の発生が著しく抑制され、使用する農薬の量も極めて削減できる顕著な効果が見られた。このため、当該圃場においては、農薬のコストを約4分の一程度に抑えることができた。また、圃場主からは、新芽が葉水を掲げるのが顕著になった。圃場内の空気が爽やかになったという副次的良好な効果も報告されている。
【0023】
また、上端を平盤状回転体1に近接して配されると共に、下端が地中に埋設された電磁誘導体(金属棒)4を設けることにより、良好な作物の育成状態が得られることが判明した。これは、作物の根に対する交磁場の影響であると推察される。尚、回転体1では極反転が起こるため、電磁誘導体(金属棒)4は少なくとも一対設けるのが好ましい。
【0024】
図3は、本装置をコンパクト化したもので、パンチングメタル板で作製した筒本体5b内にモータ2と回転体1を収納し、上蓋5aを被せた本体カバー5を備え、コ字型架台6に傾動自在に取り付けたものである。
【0025】
[磁化水試験]
本装置により創出された交番磁界及びパルス磁界により磁化した飲料水を乳牛に与え、搾乳量の比較を調べた。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明装置は、とくに、農業分野での温室ハウス栽培における害虫駆除装置として、実用性が高く極めて有用である。
【符号の説明】
【0028】
1 回転体
1a永久磁石
2 モータ
2aモータの回転軸
3 商用電源又は自然エネルギー利用電源
4 電磁誘導体(金属棒又は円盤)
5 本体カバー
5a蓋
5b筒体
6 架台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病害虫の生活行動圏内に、N、Sの交互磁場を創出するために複数の永久磁石からなる電磁誘導体を備えた回転体と、当該回転体を回動するモータとから構成したことを特徴とする永久磁石を用いた害虫駆除装置。
【請求項2】
複数の永久磁石をN極、S極が同位相又は交互位相になるように平盤状に配置してなることを特徴とする永久磁石を用いた害虫駆除装置。
【請求項3】
駆動エネルギーが、商用電源又は太陽光発電、水力発電、風力発電等の自然エネルギー利用電源であることを特徴とする請求項2記載の永久磁石を用いた害虫駆除装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかの装置で創出した交番磁界及びパルス磁界により磁化されたことを特徴とする飲料水。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−161307(P2012−161307A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40780(P2011−40780)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(594103862)
【Fターム(参考)】