説明

永久親水多孔質皮膜及びその形成方法

【課題】多孔質ベースメンブレンとベースメンブレンに化学的に結合した親水性皮膜とからなる永久親水表面を有する多孔質支持体を提供する。
【解決手段】親水性皮膜は、親水性添加剤と、高エネルギー線照射でラジカルを形成する電子線反応性基で誘導体化された親水ポリマーとを含有する。1実施形態では、メンブレンがフルオロポリマーを含有する。永久親水多孔質メンブレンは、上記親水ポリマーと親水性添加剤を被覆し、電子線を照射することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能化親水ポリマー誘導体をベースメンブレン(膜)に被覆し、その後高エネルギー線源から照射して永久親水表面を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)は機械的に強く、耐熱性で、化学的不活性な材料である。これらの有利な特性は炭素−フッ素結合の結合強さが高く、化学分解を軽減することに由来する。メンブレン(膜)は、化学的不活性と機械的安定性の点から多孔質フルオロポリマーで形成することが多い。しかし、この種のフルオロポリマーは疎水性であるため、液体水濾過の問題があり、親水性を付与するための処理が必要になる。
【0003】
親水性は水に親しい性質と定義される。親水性は代表的には、物質又は分子の性質を記述するのに用いられ、代表的には物質又は分子が水との水素結合に関与する能力を意味する。さらに、親水物質は代表的には水に吸引されるか、水によく溶解する。例えば、テトラフルオロエチレン/ビニルアルコールコポリマーを用いる含浸により、ePTFEメンブレンに親水性を付与することができる。このようなアプローチは、コーティング材料中のペルフルオロポリマーのePTFEのペルフルオロポリマーに対する化学親和性を押し上げる。しかし、その親和性は十分に低いため、親水性は一時的なものである。別の方法として、メンブレンの連続気孔の内部をフルオロ脂肪族界面活性剤及び親水性水不溶性ポリウレタンの混合物でコーティングする方法がある。このようなアプローチはペルフルオロポリマー同士の化学親和性を高め、2層系を形成する。別のアプローチでは、PTFE樹脂粉末の照射処理によりPTFEメンブレンに親水性を与えることができる。樹脂をポロジェン(気孔形成剤)及び未使用PTFE粉末で加工して、微孔質PTFEメンブレンとすることができる。しかし、現行プロセスのいずれでも永久親水性が得られない。
【0004】
ePTFEメンブレンは液体水濾過に用いることができるが、水の流通を可能にするために通常アルコールで予め濡らす(ウェット)工程を必要とする。これは生産上の深刻な考慮事項である。これらのメンブレンを膜製造業者が予め濡らし、濡らした状態で最終ユーザに輸送しなければならないからである。このようなメンブレンは脱水(乾燥)するおそれがある。メンブレンが乾燥すると、無効になるので、例えば、輸送上の考慮(濡れ状態での輸送など)が必要となり望ましくない。ほかにも望ましくない点として、経済的な事情、例えば特別な取り扱いや密封容器の必要、輸送重量の増加などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4778596号明細書
【特許文献2】米国特許第4917793号明細書
【特許文献3】米国特許第4944879号明細書
【特許文献4】米国特許第5130024号明細書
【特許文献5】米国特許第5137633号明細書
【特許文献6】米国特許第5209850号明細書
【特許文献7】米国特許第5354587号明細書
【特許文献8】米国特許第7381331号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0410357号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0456939号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第1783147号明細書
【特許文献12】特開昭61−249503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、永久親水表面を有する多孔質支持体を提供できれば望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により様々なメンブレン(膜)が開示される。1実施形態では、メンブレンは、多孔質ベースメンブレンと、この多孔質ベースメンブレンに結合された親水性皮膜(コーティング)とを含む。親水性皮膜は親水性添加剤及び親水ポリマーを含有する。親水ポリマーは、平均分子量2500ドルトン超であり、電子線(EB)反応性基で誘導体化されており、この電子線反応性基は高エネルギー線を照射されると親水性皮膜を多孔質ベースメンブレンに永久結合するように設計されている。
【0008】
別の実施形態では、メンブレンは、フルオロポリマーを含む多孔質ベースメンブレンと、フルオロポリマーに共有結合的にグラフトされた親水性皮膜とを含む。親水性皮膜は親水ポリマー及び親水性添加剤を含有する。多孔質メンブレンは、室温での10乾湿サイクル後に水流量が圧力差27インチHgにて約1mL/min−cm2超である。
【0009】
他の実施形態では、永久親水メンブレンを形成する方法が提供される。このような方法では、まず親水性添加剤及び平均分子量2500ドルトン超であり、電子線反応性基で誘導体化されている親水ポリマーを含有する親水性皮膜を塗工する。次に被覆されたメンブレンを高エネルギー線源から照射し、これにより電子線反応性基を多孔質ベースメンブレンに共有結合的にグラフトして多孔質ベースメンブレン上に永久親水表面を形成する。
【0010】
上記その他の特徴を具体的に説明するために、以下に図面及び詳細な説明を述べる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下、図面に言及して具体的な実施の形態を説明するが、図面中同じ要素は同じ符号で示す。
【図1】オートクレーブ処理前後の架橋ポリビニルアルコール(PVA)を有するePTFEメンブレンの化学処理物及びオートクレーブ処理前後の電子線官能化ポリビニルアルコール(PVA)を有するePTFEメンブレンの電子線照射物を示すSEM写真である。
【図2】電子線照射前、電子線照射後及びオートクレーブ処理後の、低分子量2−イソシアナトエチルメタクリレート官能化PVAを設けたePTFEについて、水流量をPVA付着分の関数として示すグラフである。
【図3】オートクレーブ処理前後の、2−イソシアナトエチルメタクリレート官能化PVAを設けたePTFEについて、水流量を電子線照射線量の関数として示すグラフである。
【図4】オートクレーブ処理前後の、種々の官能化ポリビニルアルコールで被覆したePTFEについて、水流量を示すグラフである。
【図5】オートクレーブ処理前後の、種々の官能化ポリビニルアルコールで被覆したePTFEについて、抽出分重量損失を示すグラフである。
【図6】10kGyの電子線照射後、オートクレーブ処理前後の、PVA−UMA及び異なる分子量の親水性添加剤ポリエチレングリコールジアクリレート(PEG−DA)で被覆したePTFEについて、水流量を親水性添加剤の重量%の関数として示すグラフである。
【図7】5kGyの電子線照射後、オートクレーブ処理前後の、PVA−UMA及び異なる分子量の種々の親水性添加剤で被覆したePTFEについて、水流量を親水性添加剤の重量%の関数として示すグラフである。
【図8】10kGyの電子線照射後、オートクレーブ処理前後の、PVA−UMA及び親水性添加剤PEG−DAで被覆したePTFEについて、抽出分重量損失を示すグラフである。
【図9】5kGyの電子線照射後、オートクレーブ処理前後の、PVA−UMA及び異なる分子量の種々の親水性添加剤で被覆したePTFEについて、抽出分重量損失を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、電子線反応性基を含有する親水ポリマー(例えばポリビニルアルコール)及び/又はその誘導体と、少なくとも1種の親水性添加剤とを含む皮膜(コーティング)を提供する。この皮膜を多孔質ベースメンブレン、例えば1実施形態ではフルオロポリマーを含有する多孔質ベースメンブレンに被覆し、ついで電子線を照射して、永久親水表面を形成するのが有利である。有利なことに、前記皮膜を用いて永久親水多孔質メンブレンを形成することができ、得られた永久親水多孔質メンブレンは高い水流量、低い抽出分及びオートクレーブ処理性を有する。ここで用語「永久」(持久性とも言う)は、多数回の乾湿サイクル及び/又は繰り返しのスチーム滅菌サイクル(オートクレーブ)にわたって、メンブレンの水濡れ可能、ばらつきのない流量、抽出分実質的になし、そして重量損失や劣化も実質的になしとして定義される。
【0013】
前述したように、ePTFEなどのフルオロポリマーは機械的に強く、耐熱性で、化学的不活性な材料である。これらの有利な特性は炭素−フッ素結合の結合強さが高く、化学分解を軽減することに由来する。炭素−フッ素結合の解離エネルギーは既知の最強のものの一つであるが、フルオロカーボン上でのラジカル形成のギッブス自由エネルギー値は炭素−水素結合のそれと同等である。このため、電子線照射により官能化ポリビニルアルコール誘導体をフルオロポリマーベースメンブレンに高エネルギー線グラフトすることが可能である。
【0014】
1実施形態では、元々疎水性のベースメンブレンに、電子線反応性部分を含有するポリビニルアルコール基材料を被覆することができる。ここで用いる用語「ベースメンブレン」は未被覆のメンブレンを指し、もっと包括的な用語の「メンブレン」(膜)は、文言上又は文脈上そうでないと明記されていない限り、本発明の実施形態を含有するメンブレンを意味する。
【0015】
ベースメンブレンを形成するのに種々の材料を使用できる。適当なフルオロポリマーには、ePTFE、ポリビニリデンジフロリド(PVDF)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン(F欧州特許出願公開第)、ポリ(エチレン−alt−テトラフルオロエチレン)(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ペルフルオロプロピルビニルエーテル)(PFA)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)(PVDF−co−HFP)及びポリフッ化ビニル(PVF)があるが、これらに限らない。開放気孔構造を有するメンブレンを形成するのに用いることができる他の材料及び方法には、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、置換ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル)、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、アクリル及びメタクリルポリマー、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタル酸エステル、ポリブチレンテレフタル酸エステル)、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルホン、セルロースポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド(例えばナイロン、ポリフェニレンテレフタルアミド)及びこれらの2種以上の組合せがある。
【0016】
例えばベースメンブレンの穿孔、延伸、膨張(発泡)、バブリング又は抽出の一つ以上により、ベースメンブレンを透過性にすることができる。適当なメンブレン形成方法には、任意適当な材料の発泡、スカイビング(削りだし)又はキャスティングもある。別の実施形態では、メンブレンを繊維織布又は不織布から形成してもよい。
【0017】
1実施形態では、連続気孔を生成することができる。適当な気孔率は約10体積%超の範囲とすることができる。1実施形態では、気孔率は体積%で、約10%〜約20%の範囲、約20%〜約30%の範囲、約30%〜約40%の範囲、約40%〜約50%の範囲、約50%〜約60%の範囲、約60%〜約70%の範囲、約70%〜約80%の範囲、約80%〜約90%の範囲、又は約90%超の範囲とすることができる。ここで、また本明細書及び特許請求の範囲において、範囲限定は組み合わせたり、入れ替えたりしてもよい。このような範囲は上下限により確定され、文脈又は文言上そうでないと明記されていない限り、その範囲に含まれる下位範囲すべてを包含する。
【0018】
孔径はすべての気孔につき均一にすることができ、また気孔(ポア)が所定のパターンをもつことができる。或いはまた、孔径が気孔毎に異なり、また気孔が不規則なパターンをもつことができる。適当な孔径は約50μm未満とすることができる。1実施形態では、平均孔径は約50μm〜約40μmの範囲、約40μm〜約30μmの範囲、約30μm〜約20μmの範囲、約20μm〜約10μmの範囲、又は約10μm〜約1μmの範囲とすることができる。1実施形態では、平均孔径は1μm未満、約1μm〜約0.5μmの範囲、約0.5μm〜約0.25μmの範囲、約0.25μm〜約0.1μmの範囲、又は約0.1μm未満とすることができる。1実施形態では、平均孔径は約0.1μm〜約0.01μmの範囲とすることができる。
【0019】
1実施形態では、ベースメンブレンは三次元マトリックスとすることができ、或いは複数のノードを複数のフィブリルで相互連結した格子状構造をもつことができる。ノード及びフィブリルの表面がメンブレンに複数の気孔(ポア)を画定する。少なくとも部分的に焼結されたフィブリルの寸法は、フィブリルの長さ方向に直交する方向に測った直径で約0.05μm〜約0.5μmの範囲とすることができる。多孔質メンブレンの比表面積は約0.5m2/g〜約110m2/g(メンブレン材料1g当たりの平方メートル)の範囲とすることができる。
【0020】
ノード及びフィブリルの表面は、両主表面間で曲がりくねった経路にてメンブレンを貫通する多数の相互連結ポアを画定する。1実施形態では、メンブレン中のポアの平均有効孔径はミクロン範囲とすることができる。メンブレン中のポアの適当な平均有効孔径は約0.01μm〜約0.1μmの範囲、約0.1μm〜約5μmの範囲、約5μm〜約10μmの範囲、又は約10μm超とすることができる。
【0021】
1実施形態では、ベースメンブレンは、微粉末粒子と滑剤の混合物を押し出すことにより製造できる。押出物を次にカレンダ加工することができる。カレンダ加工した押出物を1方向又は複数方向に「膨張」又は延伸して、ノードを連結するフィブリルを形成し、三次元マトリックス又は格子状の構造を画定することができる。「膨張」(expanded)は、材料の弾性限界を超えて延伸されて、永久歪み又は伸びをフィブリルに導入することを意味する。メンブレンを加熱又は「焼結」して、材料の一部を結晶状態から非晶質状態に変換することにより、メンブレン材料中の残留応力を減らし最小限に抑えることができる。1実施形態では、メンブレンの想定された最終用途に適当であれば、メンブレンを焼結しないか、部分焼結してもよい。
【0022】
1実施形態では、ベースメンブレンは、メンブレンの両主側面に隣接する環境と流体連通する多数の相互連結ポアを画定する。液体材料、例えば水性極性液体がポアを濡らし、ポアを通過することを可能にするメンブレン材料の傾向は、1つ以上の特性の関数として表示することができる。そのような特性には、メンブレンの表面エネルギー、液体材料の表面張力、メンブレン材料と液体材料との相対的接触角、ポアの寸法又は有効流れ面積、メンブレン材料と液体材料との相溶性がある。
【0023】
ベースメンブレンにポリビニルアルコールポリマー及び/又はその誘導体を被覆する。適当な誘導体には、ポリビニルアルコール−ポリビニルアミン共重合体(PVA−PVAm)、PVAmなどがあるが、これらに限らない。他の材料として、アミン、カルボン酸、アミド、ヒドロキシル部分などを含有する官能化ポリアリーレン類があるが、これらに限らない。1実施形態では、親水性皮膜用のポリマーの平均分子量は約2500ドルトン超〜500,000ドルトンであり、別の実施形態では75,000ドルトン〜250,000ドルトンである。付着分(重量%)又は焼失分(重量%)を計算して、ベースメンブレンに適用された電子線反応性皮膜の量を求めることができる。1実施形態では、メンブレンは、永久親水性皮膜の付着分及び/又は焼失分(重量%)が0.5〜100重量%である。別の実施形態では、メンブレンは、永久親水性皮膜の付着分及び/又は焼失分が3〜15重量%である。
【0024】
電子線反応性基は、共有結合を介してPVA又はコーティング材料に結合させることのできるものであればいずれも使用できる。電子線反応性基は、高エネルギー線照射でラジカルを形成できる部分として定義される。電子線反応性基は、電子線源への照射時にフリーラジカルを発生し、他の反応性基体への架橋及びグラフトを達成する。PVA又は他のコーティング材料に共有結合できる反応物質は、モノマー、オリゴマー、ポリマー又はこれらの組合せとすることができる。1実施形態では、電子線反応性官能基は、一級、二級又は三級脂肪族又は脂環式基を含む。別の実施形態では、電子線反応性官能基は、二級又は三級脂肪族又は脂環式基を含む。理論に縛られるつもりはないが、二級又は三級脂肪族又は脂環式基は電子線源への照射時に安定なフリーラジカルを発生すると考えられる。さらに他の実施形態では、電子線反応性官能基は、芳香族基、例えばベンジル基を含む。他の電子線反応性官能部分には、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、ビニルケトン、スチレン、ビニルエーテル、ビニル又はアリル含有化合物、ベンジル基及び三級炭素(CHR3)材料がある。
【0025】
親水ポリマーに共有結合できる適当なメタクリレート、アクリレート及びビニルケトン化合物には、アクリロイルクロリド、(2E)−2−ブテノイルクロリド、無水マレイン酸、2(5H)−フラノン、アクリル酸メチル、5,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−オン、アクリル酸エチル、クロトン酸メチル、アクリル酸アリル、クロトン酸ビニル、2−イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸、無水メタクリル酸、メタクリロイルクロリド、グリシジルメタクリレート、2−エチルアクリロイルクロリド、3−メチレンジヒドロ−2(3H)−フラノン、3−メチル−2(5H)−フラノン、メチル 2−メチルアクリレート、メチル trans−2−メトキシアクリレート、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、メチル (2E)−2−メチル−2−ブテノエート、エチル 2−メチルアクリレート、エチル 2−シアノアクリレート、ジメチルマレイン酸無水物、アリル 2−メチルアクリレート、エチル (2E)−2−メチル−2−ブテノエート、エチル 2−エチルアクリレート、メチル (2E)−2−メチル−2−ペンテノエート、2−ヒドロキシエチル 2−メチルアクリレート、メチル 2−(1−ヒドロキシエチル)アクリレート、[3−(メタクリロイルオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、3−(ジエトキシメチルシリル)プロピルメタクリレート、3−(トリクロロシリル)プロピル 2−メチルアクリレート、3−(トリメトキシシリル)プロピル 2−メチルアクリレート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル メタクリレート、6−ジヒドロ−1H−シクロペンタ[c]フラン−1,3(4H)−ジオン、メチル 2−シアノ−3−メチルクロトネート、トランス−2,3−ジメチルアクリル酸、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドなどがあるが、これらに限らない。
【0026】
適当なビニル及びアリル電子線活性化合物には、アリルブロミド、アリルクロリド、ジケテン、5−メチレンジヒドロ−2(3H)−フラノン、3−メチレンジヒドロ−2(3H)−フラノン、2−クロロエチルビニルエーテル、4−メトキシ−2(5H)−フラノンなどがあるが、これらに限らない。
【0027】
適当なイソシアネート電子線活性化合物には、イソシアン酸ビニル、イソシアン酸アリル、イソシアン酸フルフリル、1−エチル−4−イソシアナトベンゼン、1−エチル−3−イソシアナトベンゼン、1−(イソシアナトメチル)−3−メチルベンゼン、1−イソシアナト−3,5−ジメチルベンゼン、1−ブロモ−2−イソシアナトエタン、(2−イソシアナトエチル)ベンゼン、1−(イソシアナトメチル)−4−メチルベンゼン、1−(イソシアナトメチル)−3−メチルベンゼン、1−(イソシアナトメチル)−2−メチルベンゼンなどがあるが、これらに限らない。
【0028】
適当なスチレン電子線活性化合物には、3−ビニルベンズアルデヒド、4−ビニルベンズアルデヒド、4−ビニルベンジルクロリド、トランス−シンナモイルクロリド、フェニルマレイン酸無水物、4−ヒドロキシ−3−フェニル−2(5H)−フラノンなどがあるが、これらに限らない。
【0029】
適当なエポキシド電子線活性化合物には、グリシジルメタクリレート、グリシジルビニルエーテル、2−(3−ブテニル)オキシラン、3−ビニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、リモネンオキシドなどがあるが、これらに限らない。
【0030】
電子線反応性官能部を含有するモノマーと反応させた4種の親水ポリマーの例を下記スキーム1〜5に示す。これらの反応は例示であり、種々の異なる溶剤、代表的には極性非プロトン性又は極性プロトン性溶剤を用いて行うことができる。例えば、PVA−MMA(PVA−UMAとも言う、UMA=ウレタノエチルメタクリレート)は、スキーム1に示すように、PVAを2−イソシアナトエチルメタクリレートとDMSO中45℃で反応させることにより、合成した。PVA−MMAをイソプロパノールとジエチルエーテルとの溶液に析出させて、このタイプの反応が約70%の転化率であることが確認された。反応が最適化されていないことが明らかであり、最適化すれば転化率が上がると予想される。スキーム2及び3に示すように、それぞれトリエチルアミンの存在下でのPVAと無水メタクリル酸又はグリシジルメタクリレートとの反応は、転化率約90〜97%であった。なおPVA−MMAとPVA−UMAは同一物質の別名であり、これらの頭字語は以下相互交換できるものとして使用する。
【0031】
種々のレベルのポリビニルアミンを含有するPVA誘導体も誘導体化することができる。スキーム4に示すように、PVA−PVAmを2−イソシアナトエチルメタクリレートとTHF中で反応させることにより、不均質系にてPVA−PVAm−MMAを合成した。より親水性の脂肪族アミンを用いることで高い転化率を達成できた。最後に、スキーム5に示すように、PVA−PVAm−malを高温の水中で均質に製造した。
【0032】
【化1】

親水性皮膜(コーティング)は、適当量の親水性添加剤を含有するのも有利である。ここで用いる用語「親水性添加剤」は、多孔質メンブレンの全体的濡れ性を少なくとも僅かでも高めることができる物質を指す。ある実施形態では、親水性添加剤も電子線活性基を含有してベースメンブレンへのグラフトを補助することができる。このような作用をなすと予想される材料の例には、アクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート又は他の多アクリレート、並びにアクリルアミド、ビニルケトン、スチレン、ビニルエーテル、ビニル又はアリル含有部分、ベンジル炭素、三級炭素(CHR3)又はこれらの組合せがあるが、これらに限らない。親水性添加剤の分子量が約250g/mol〜約100,000g/mol(上下限値間のすべての下位範囲を含む)であるのが望ましい。
【0033】
親水性添加剤として用いることのできる有効なジアクリレートには、下記式(6)のポリエチレングリコールジアクリレート(PEG−DA)、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレート(EO/OH=1)、メチルエーテルジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、グリセロール1,3−ジグリセロレートジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールエトキシレートジアクリレート(平均Mn約314)、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート(平均Mn約688、EO/フェノール=4)、トリ(プロピレングリコール)グリセロレートジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート(平均Mn約900もしくは4000)があるが、これらに限らない。トリアクリレートの例には、下記式(7)のトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(平均Mn約912)及びトリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレートがある。ジメチルアクリレートも親水性添加剤として用いることができ、その例には、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(分子量変動)、ポリ(プロピレングリコール)ジメタクリレート、及び1,3−ブタンジオールジメタクリレートがあるが、これらに限らない。特に適当な親水性添加剤は、下記に示す式(6)のポリエチレングリコールジアクリレート(PEG−DA)及び式(7)のトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(TMPET)である。
【0034】
【化2】

皮膜中の親水性添加剤の量はどのような量でもよい。親水性添加剤が、皮膜のメンブレンに親水性を付与する能力を高めるのに有効な最小量存在するのが望ましい。望ましくは、皮膜中の親水性添加剤の使用量は、皮膜の他の特性、例えば所望の多孔質メンブレンへの塗工性に悪影響を与えるような量とすべきでない。親水性添加剤の適当な量は、皮膜に用いた親水ポリマーの重量に基づいて、約0.1〜約1000重量%、約1〜約100重量%、約2〜約90重量%、約3〜約80重量%、約4〜約70重量%、又は約5〜約60重量%の範囲(上下限値間のすべての下位範囲を含む)などであると予想される。
【0035】
ベースメンブレンの重量に基づく親水性添加剤及び親水ポリマーの合計付着分の適当な範囲は、ベースメンブレンの重量に基づく親水性添加剤及び親水ポリマーの合計付着分の適当な範囲は、約0.1〜約100重量%、約0.1〜約90重量%、約0.1〜約80重量%、約0.1〜約70重量%、約0.1〜約60重量%、約0.1〜約50重量%、約0.1〜約40重量%、約0.1〜約30重量%、約0.1〜約20重量%、約0.1〜約10重量%、約0.2〜約7重量%、約0.5〜約5重量%、約0.75〜約4重量%、又は約1〜約3重量%の範囲(上下限値間のすべての下位範囲を含む)などであると予想される。
【0036】
永久親水表面を有するメンブレンの製造方法では、電子線反応性基を有する親水ポリマー(例えばポリビニルアルコール又はその誘導体)及び親水性添加剤を含有する親水性皮膜を疎水多孔質ベースメンブレンに塗工し、メンブレンを制御された条件下で乾燥し、所望に応じて制御された条件下で再び濡らし、ついでこの複合材に電子線を、1実施形態では0.1〜2000キログレイ(kGy)の線量、別の実施形態では1〜60kGyの線量、他の実施形態では好ましくは5〜40kGyの線量にて照射する。有利なことには、得られたメンブレンは、(メンブレンの持久性及び頑健さの指標である)抽出分重量損失、繰り返し水濡れ性及び水流量について測定した親水性の低下を伴うことなく、繰り返しオートクレーブ処理することができることを確かめた。
【0037】
ある実施形態では、塗工中に疎水ベースメンブレンを十分に濡らして、確実に電子線反応性基を有する親水ポリマーを均一に被覆・堆積できるようにする。親水ポリマーの塗工は、特定の方法に限定されるものではなく、溶液堆積、高圧溶液堆積、真空濾過、塗布、グラビアコーティング、エアーブラシなどにより親水性皮膜を堆積することができる。このように、親水ポリマー及び親水性添加剤を極性非プロトン性及び/又は極性プロトン性溶剤に溶解することができる。例えば、親水ポリマー及び親水性添加剤を水又は適当な極性非プロトン性溶剤に溶解し、ついでイソプロピルアルコールと混合することができる。
【0038】
乾燥は、通常溶剤を除去するのに有効な温度で行い、ほぼ室温から約150℃までの温度とすることができる。用途に応じて、コーティングを真空乾燥しても、空気乾燥してもよい。噴霧及び/又は浸漬(ソーキング)を用いて、被覆メンブレンを再び濡らす(湿潤する)ことができる。その次の電子線照射は、用途に応じて、ドライ(乾燥)又はウェット(湿潤)状態いずれでも行うことができる。皮膜/メンブレンの濡れは通常、親水ポリマーを膨潤させる溶剤を用いる。適当な溶剤は、親水ポリマーに依存し、中でも、水、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0039】
1例として、永久親水ePTFEメンブレンの製造方法を説明する。まずPVA−MMAを高温の脱イオン水に溶解した。高剪断速度のブレンダを用いて、イソプロパノールを混合溶液にゆっくり添加した。電子線反応性PVAを可溶化するために用いる混合溶液は、多孔質メンブレンを完全に濡らすように選択した。次に所望の親水性添加剤を親水コーティング溶液に添加する。次に通常の溶液堆積法にてPVA−MMA/親水性添加剤溶液をePTFEメンブレン上に堆積した。ePTFEメンブレンをPVA−MMA/親水性添加剤の水/イソプロパノール溶液で十分に濡らし(湿潤し)、余分な溶液を除去して乾燥後にスキン層が形成されるのを防止した。被覆メンブレンサンプルを、気孔の狭窄が起こらないような拘束環境で十分に乾燥した。次に、水で再び濡らした被覆PVA誘導体化ePTFEメンブレンサンプルに電子線照射を行った。被覆メンブレンサンプルに脱イオン水を噴霧し、メンブレンの完全な濡れ(湿潤)が達成されるまで(即ち完全に透明になるまで)噴霧を続け、過剰の水をメンブレン表面から除去した。水が溜まっていると電子線の透過の減少や、最終生成物の持久性の欠如につながることを確かめた。酸素濃度を200ppm未満とした後の窒素雰囲気中で、被覆メンブレンサンプルに電子線(125kV、40kGy)を照射した。図1は、上記方法(即ち電子線照射)により作製した永久親水ePTFEメンブレン及びこれと比較して化学架橋PVAを有するePTFEについて、オートクレーブ処理前後の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。オートクレーブ処理は121℃、21psiで30分間行った。
【0040】
製造業者は一般に製品中のあらゆる種類の細菌を駆除するために熱滅菌サイクルを採用している。したがって、永久オートクレーブ処理性はこの種の材料にとって考慮すべき事項である。よく用いられている熱滅菌法はオートクレーブ処理である。オートクレーブは普通、約121℃に加熱されたスチームを大気圧より15psi上で使用する。本発明は特定のオートクレーブ処理や装置に限定されるものではない。
【0041】
図1において、オートクレーブ処理前の化学架橋メンブレンサンプルおよびオートクレーブ処理前の電子線照射メンブレンサンプルの画像はいずれも、フィブリルとノードが均一に被覆され、皮膜凝集をもたないことを示している。しかし、オートクレーブ処理後のSEM画像は、化学架橋PVAの場合にポリマー移動のため皮膜凝集が起こることを示している(図1)。これに対して、ePTFE上に被覆されたPVA−MMA(2.4)のオートクレーブ処理後のSEM画像は、皮膜凝集がないことを示している(図1)。このことは、ポリマーが多孔質基体に永久付着していることの強い証左である。
【0042】
本発明の実施形態によるメンブレンの寸法は様々であり、用途に特有の基準に照らして選択される。1実施形態では、メンブレンは、流体流れ方向の厚さが約10μm未満の範囲とすることができる。別の実施形態では、メンブレンは、流体流れ方向の厚さが約10μm超の範囲とすることができ、例えば約10μm〜約100μm、約100μm〜約1mm、約1mm〜約5mm、又は約5mm超の範囲とすることができる。1実施形態では、メンブレンを複数の異なる層から形成してもよい。
【0043】
流体流れ方向に垂直な方向でのメンブレンの幅は約10mm超とすることができる。1実施形態では、メンブレンの幅は、約10mm〜約45mm、約45mm〜約50mm、約50mm〜約10cm、約10cm〜約100cm、約100cm〜約500cm、約500cm〜約1m、又は約1m超の範囲とすることができる。幅は円形領域の直径でも、多角形領域のもっとも近い辺への距離でもよい。1実施形態では、メンブレンは、メートル範囲の幅と不定の長さを有する長方形とすることができる。即ち、メンブレンをロールに形成し、連続形成操作中に所定の距離でメンブレンを切断することで長さを決めることができる。
【0044】
本発明の実施形態により製造したメンブレンは、1つ又は2つ以上の所定の特性を有することができる。このような特性とは、乾燥輸送メンブレンの濡れ性、乾湿サイクル性、極性液体又は溶液の濾過性、非水性液体又は溶液の流れ、低pH条件での流れ及び/又は持久性、高pH条件での流れ及び/又は持久性、室温条件での流れ及び/又は持久性、高温条件での流れ及び/又は持久性、高圧での流れ及び/又は持久性、所定波長のエネルギーに対する透過性、音響エネルギーに対する透過性、触媒材料の支持性のうち1つ又は2つ以上を含む。持久性はさらに、皮膜材料が機能を連続的に、例えば1日より長く、もしくは1サイクル(乾湿、冷熱、高低pHなど)より多く、維持する能力も指す。
【0045】
少なくとも1つの実施形態での特性は、例えばオートクレーブ処理における、約100℃超の範囲での温度変動に対する耐性である。1実施形態では、温度変動が約100℃〜約125℃、約125℃〜約135℃、又は約135℃〜約150℃の範囲になる。所望に応じて、温度変動は、周囲圧力に対して高圧で生じてもよい。温度変動は約15分超の期間生じてもよい。
【0046】
1実施形態では、耐紫外線(UV)性は、特性を低下することなく、メンブレンの滅菌を可能にする。なお、別の実施形態として、照射源、例えばUV源への露出により親水性皮膜の架橋を開始又は促進することができ、この場合、もし存在すればUV開始剤がUV吸収組成物と競合する。
【0047】
メンブレンを通しての流体の流量は1つ又は2つ以上の因子に依存する。そのような因子には、メンブレンの物理及び/又は化学的特性、流体の特性(例えば粘度、pH、溶質など)、環境特性(例えば温度、圧力など)などの1つ又は2つ以上がある。1実施形態では、メンブレンは、流体又は液体に対し透過性かつ蒸気に対し透過性であっても、流体又は液体ではなく蒸気に対し透過性であってもよい。蒸気透過性である場合、適当な蒸気透過率は、約1000グラム/平方メートル/日(g/m2/day)未満、約1000g/m2/day〜約1500g/m2/day、約1500g/m2/day〜約2000g/m2/day、又は約2000g/m2/day超の範囲とすることができる。1実施形態では、メンブレンは、蒸気透過性を保ったまま、液体又は流体に対し選択的に不透過性とすることができる。
【0048】
有利なことには、本発明の被覆メンブレンは多数の用途に使用でき、例えば、液体濾過、水精製、化学的分離、帯電限界濾過膜、タンパク質キレート形成/精製、廃液処理膜、生医学用途、透析蒸発、ガス分離、燃料電池工業、電解、透析、陽イオン交換樹脂、電池、逆浸透膜、誘電体/キャパシタ、電気化学工業、SO2電解、クロロアルカリ生産、超酸触媒などに使用できる。メンブレンとして、複合組成物は、完全に濡れ(湿潤し)、多数回のオートクレーブ処理サイクルにわたって高流束の水と抽出分ほぼゼロを示す。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0050】
以下の実施例では、ポリビニルアルコール及びPVA−PVAmコポリマーのすべてをCelanese社から購入した。Celvol165、Celvol107、PVA−PVAmL6及びPVA−PVAmL12は、特記しない限り、入手したまま使用した。Celvol165及びCelvol107はそれぞれ重量平均分子量約146−186kg/mol及び31−50kg/molであった。無水DMSO、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、トリエチルアミン、2−イソシアナトエチルメタクリレート、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、及び無水メタクリル酸はAldrich社から購入し、入手したまま使用した。NMRスペクトルはBrukerAvance400(1H−NMR、400MHz)分光計で記録し、残留溶剤シフトを基準とした。
【0051】
付着分(重量%)又は焼失分(重量%)を計算して、ベースメンブレンに適用された電子線反応性皮膜の量を求めた。付着分(重量%)は、(塗工後の膜重量−塗工前の膜重量)/塗工前の膜重量x100により計算した。焼失分は次のように求めた。400°Fで20分間の熱分解により電子線反応性皮膜を多孔質基体から選択的に除去した。焼失分(重量%)は、(焼失前の膜重量−焼失後の膜重量)/焼失後の膜重量x100により計算した。
【0052】
直径47mmのMilliporeガラスフィルタ真空濾過装置を用いて、真空濾過を行った。水の流通を圧力差27インチHgで行い、流量をmL/min−cm2で報告した。
【0053】
電子線照射実験は、AdvancedElectronBeams社(米国マサチューセッツ州ウイルミントン所在)の装置で行った。特記しない限り、125kVを標準電圧として使用した(作動電圧範囲80〜150kV)。装置は、1回のパスで50kGyの線量を照射でき、パス回数を増やすことでもっと大きな線量を得た。電子線の線量は0〜100kGyを施した。キログレイ(kGy)線量は、所定の質量の基体が吸収したエネルギーとして定義され(1kJ/kg、1kGy=0.1MRad)、式:MRad=(IxK)/ライン速度[式中のIは電流(mA)、Kは電子線係数、ライン速度は被覆メンブレンが電子線を通過する速度(ft/min)である]により計算できる。
【0054】
実験はすべて、特記しない限り、酸素濃度200ppm未満の窒素雰囲気下で行った。抽出分試験は下記の手順で行った。メンブレンを70℃で1時間乾燥して、残留揮発分を除去し、微量天秤で秤量した。メンブレンをメッシュスクリーンに閉じこめ、撹拌されている80℃の水中に24時間浸漬した。その後メンブレンを70℃で1時間乾燥し、微量天秤で秤量した。抽出分(重量%)は、抽出前後の乾燥サンプルの重量差から求めた。オートクレーブ処理は、AmscoCenturySV−148HPrevacSteamSterilizer(Steris社製滅菌器)を用いて、121℃/21psiで30分間行った。
実施例1
本実施例では、官能化PVAを合成した。これを高MwのPVA−MMA(2.4)とする。無水のDMSO(175mL)を入れた500mL三ツ口丸底フラスコにPVA(20.1g、456mmol、Celvol165、セラネーズ社製)を添加し、75℃で激しくかきまぜ、均質な溶液を得た。反応混合物を40℃に冷却し、激しくかきまぜながら2−イソシアナトエチルメタクリレート(3.53g、22.8mmol)を溶液にゆっくり添加した。粘稠な溶液を24時間撹拌した後、室温に冷却した。ポリマーをイソプロパノール:エーテルの5:1混合物(合計800mL)に投入し析出させた。凝集した白色固体を真空下室温で乾燥した。1H−NMRから、繰り返し単位の約2.4%がグラフト性メタクリレート結合を含有することが確認された(21.5g、収率91%、転化率42%)。
1H NMR (D2O, 400 MHz) d 6.13 (1H, bs, CHH=CMe), 5.72 (1H, bs, CHH=CMe), 4.24 (2H, bm, CH2CH2), 4.1-3.5 (43 H, bm, CH of PVA), 3.45 (2H, bm, CH2CH2), 1.91 (3H, bs, CHH=CMe), 1.9-1.4 (82 H, bm, CH2 of PVA)
実施例2
本実施例では、官能化PVAを合成した。これを高MwのPVA−MMA(5.0)とする。無水のDMSO(150mL)を入れた500mL三ツ口丸底フラスコにPVA(20.1g、456mmol、Celvol165、セラネーズ社製)を添加し、95℃で激しくかきまぜ、均質な溶液を得た。反応混合物を室温に冷却し、激しくかきまぜながら2−イソシアナトエチルメタクリレート(10.1g、65.1mmol)を氷浴中の溶液に発熱を抑制するようゆっくり添加した。粘稠な溶液を40℃で24時間撹拌した後、室温に冷却した。ポリマーをイソプロパノール:エーテルの3:1混合物(合計700mL)に投入し析出させた。凝集した白色固体を真空下室温で乾燥した。1H−NMRから、繰り返し単位の約5%がグラフト性メタクリレート結合を含有することが確認された(24.0g、収率80%、転化率39%)。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) d 6.13 (1H, bs, CHH=CMe), 5.72 (1H, bs, CHH=CMe), 4.95 (1H, bm, OH of PVA), 4.69 (4H, bm, OH of PVA), 4.46 (9H, bm, OH of PVA), 4.36 (2H, bm, OH of PVA), 4.21 (6H, bm, OH of PVA), 4.07 (2H, bm, CH2CH2), 3.9-3.6 (20 H, CH of PVA, 3.25 (2H, bm, CH2CH2), 1.88 (3H, bs, CHH=CMe), 1.8-1.2 (40 H, bm, CH2 of PVA)
実施例3
本実施例では、官能化PVAを合成した。これを高MwのPVA−MMA(1.4)とする。DMSO(200mL)を入れた500mL丸底フラスコにPVA(20.0g、454mmol、Celvol165、セラネーズ社製)を添加し、75℃で激しくかきまぜ、均質な溶液を得た。反応混合物を45℃に冷却し、激しくかきまぜながら4−(ジメチルアミノ)ピリジン(2.22g、18.2mmol)及び2−イソシアナトエチルメタクリレート(1.41g、9.09mmol)を溶液にゆっくり添加した。粘稠な溶液を24時間撹拌した後、室温に冷却した。ポリマーをイソプロパノール(合計1200mL)に投入し析出させた。凝集した白色固体を真空下40℃で乾燥した。1H−NMRから、繰り返し単位の約1.4%がグラフト性メタクリレート結合を含有することが確認された(20.8g、収率97%、転化率70%)。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) d 6.07 (1H, bs, CHH=CMe), 5.67 (1H, bs, CHH=CMe), 4.95 (1H, bm, OH of PVA), 4.67 (14H, bm, OH of PVA), 4.47 (36H, bm, OH of PVA), 4.22 (23H, bm, OH of PVA), 4.07 (2H, bm, CH2CH2), 3.9-3.6 (72 H, CH of PVA, 3.25 (2H, bm, CH2CH2), 1.88 (3H, bs, CHH=CMe), 1.8-1.2 (152 H, bm, CH2 of PVA)
実施例4
本実施例では、官能化PVAを合成した。これを高MwのPVA−MA(3.8)とする。無水のDMSO(200mL)を入れた500mL三ツ口丸底フラスコにPVA(11.2g、254mmol、Celvol165、セラネーズ社製)を添加し、50℃で激しくかきまぜ、均質な溶液を得た。反応混合物を室温に冷却し、激しくかきまぜながらトリエチルアミン(2.50g、24.7mmol)及び無水メタクリル酸(1.98g、12.8mmol)を氷浴中の溶液に発熱を抑制するようゆっくり添加した。粘稠な溶液を室温で24時間撹拌した。ポリマーをイソプロパノール:エーテルの3:1混合物(合計700mL)に投入し析出させた。ゴム状の灰白色固体を真空下室温で乾燥した。1H−NMRから、繰り返し単位の約3.8%がグラフト性メタクリレート結合を含有することが確認された(11.5g、収率95%、転化率80%)。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) d 5.99 (1H, bs, CHH=CMe), 5.62 (1H, bs, CHH=CMe), 5.19 (1H, bm, OH of PVA), 4.67 (5H, bm, OH of PVA), 4.46 (11H, bm, OH of PVA), 4.36 (5H, bm, OH of PVA), 4.21 (7H, bm, OH of PVA), 4.0-3.6 (26 H, bm, CH of PVA), 1.87 (3H, bs, CHH=CMe), 1.8-1.2 (50 H, bm, CH2 of PVA)
実施例5
本実施例では、官能化PVAを合成した。これを高MwのPVA−MA(3.0)とする。機械的攪拌機を取り付けた500mL三ツ口丸底フラスコにPVA(20.0g、454mmol、Celvol165、セラネーズ社製)とDMSO(200g)を添加し、95℃で激しくかきまぜ、均質な溶液を得た。反応混合物を70℃に冷却し、トリエチルアミン(2.85g、28.2mmol)を添加した。完全に溶解したら、激しくかきまぜながらグリシジルメタクリレート(2.00g、14.1mmol)を溶液にゆっくり添加した。粘稠な溶液を70℃で2時間撹拌した後、50℃に2時間冷却した。ブレンダを用いて激しくかきまぜたイソプロパノール(1.2L)溶液にポリマーを投入し析出させた。凝集した白色固体を濾過し、イソプロパノール(500mL)及びメタノール(750mL)で洗い、真空下40℃で一晩乾燥して残留溶剤を除去した。1H−NMR分光分析から、繰り返し単位の約3.0%がグラフト性メタクリレート結合を含有することが確認された(20.5g、収率98%、転化率97%)。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) d 5.99 (1H, bs, CHH=CMe), 5.63 (1H, bs, CHH=CMe), 5.19 (1H, bm, OH of PVA), 4.67 (6H, bm, OH of PVA), 4.46 (17H, bm, OH of PVA), 4.23 (10H, bm, OH of PVA), 4.0-3.6 (33 H, bm, CH of PVA), 1.87 (3H, bs, CHH=CMe), 1.8-1.2 (71 H, bm, CH2 of PVA)
実施例6
本実施例では、官能化PVAを合成した。これを高MwのPVA−MA(2.5)とする。機械的攪拌機を取り付けた500mL三ツ口丸底フラスコにPVA(20.0g、454mmol、Celvol165、セラネーズ社製)とDMSO(200g)を添加し、95℃で激しくかきまぜ、均質な溶液を得た。反応混合物を70℃に冷却し、トリエチルアミン(2.48g、24.5mmol)を添加した。完全に溶解したら、激しくかきまぜながらグリシジルメタクリレート(1.74g、12.3mmol)を溶液にゆっくり添加した。粘稠な溶液を70℃で2時間撹拌した後、50℃に2時間冷却した。ブレンダを用いて激しくかきまぜたイソプロパノール(1.2L)溶液にポリマーを投入し析出させた。凝集した白色固体を濾過し、イソプロパノール(500mL)及びメタノール(750mL)で洗い、真空下40℃で一晩乾燥して残留溶剤を除去した。1H−NMR分光分析から、繰り返し単位の約2.5%がグラフト性メタクリレート結合を含有することが確認された(20.3g、収率97%、転化率93%)。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) d 5.99 (1H, bs, CHH=CMe), 5.62 (1H, bs, CHH=CMe), 5.19 (1H, bm, OH of PVA), 4.68 (8H, bm, OH of PVA), 4.48 (19H, bm, OH of PVA), 4.23 (12H, bm, OH of PVA), 4.0-3.6 (40 H, bm, CH of PVA), 1.87 (3H, bs, CHH=CMe), 1.8-1.2 (84 H, bm, CH2 of PVA)
実施例7
本実施例では、官能化PVAを合成した。これを高MwのPVA−MA(2.0)とする。機械的攪拌機を取り付けた500mL三ツ口丸底フラスコにPVA(20.0g、454mmol、Celvol165、セラネーズ社製)とDMSO(202g)を添加し、95℃で激しくかきまぜ、均質な溶液を得た。反応混合物を70℃に冷却し、トリエチルアミン(1.94g、19.2mmol)を添加した。完全に溶解したら、激しくかきまぜながらグリシジルメタクリレート(1.37g、9.62mmol)を溶液にゆっくり添加した。粘稠な溶液を70℃で2時間撹拌した後、50℃に2時間冷却した。ブレンダを用いて激しくかきまぜたイソプロパノール(1.2L)溶液にポリマーを投入し析出させた。凝集した白色固体を濾過し、イソプロパノール(500mL)及びメタノール(750mL)で洗い、真空下40℃で一晩乾燥して残留溶剤を除去した。1H−NMR分光分析から、繰り返し単位の約2.0%がグラフト性メタクリレート結合を含有することが確認された(20.0g、収率97%、転化率95%)。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) d 5.99 (1H, bs, CHH=CMe), 5.62 (1H, bs, CHH=CMe), 5.19 (1H, bm, OH of PVA), 4.67 (10H, bm, OH of PVA), 4.47 (24H, bm, OH of PVA), 4.22 (14H, bm, OH of PVA), 4.0-3.6 (50 H, bm, CH of PVA), 1.87 (3H, bs, CHH=CMe), 1.8-1.2 (103 H, bm, CH2 of PVA)
実施例8
本実施例では、官能化PVAを合成した。これを低MwのPVA−MMA(3)とする。無水のDMSO(225mL)を入れた1L丸底フラスコにPVA(50.2g、1.14mol、Celvol107、セラネーズ社製)を添加し、75℃で激しくかきまぜ、均質な溶液を得た。反応混合物を45℃に冷却し、激しくかきまぜながら2−イソシアナトエチルメタクリレート(10.4g、0.067mol)を溶液にゆっくり添加した。粘稠な溶液を24時間撹拌した後、室温に冷却した。ポリマーをイソプロパノール:エーテルの9:1混合物(合計1L)に投入し析出させた。凝集した白色固体を真空下室温で乾燥した。1H−NMRから、繰り返し単位の約3%がグラフト性メタクリレート結合を含有することが確認された(54.8g、収率90%、転化率44%)。
1H NMR (D2O, 400 MHz) d 6.14 (1H, bs, CHH=CMe), 6.14 (1H, bs, CHH=CMe), 4.24 (2H, bm, CH2CH2), 4.1-3.5 (34 H, bm, CH of PVA), 3.45 (2H, bm, CH2CH2), 1.93 (3H, bs, CHH=CMe), 1.9-1.4 (63 H, bm, CH2 of PVA)
実施例9
本実施例では、官能化PVAを合成した。これをPVA−PVAm−malとする。脱イオン水(55mL)を入れた500mL三ツ口丸底フラスコにPVA−PVAm(5.01g、114mmol、PVOH(88)−PVAm(12)L12、セラネーズ社製)を添加し、100℃でかきまぜ、均質な溶液を得た。無水マレイン酸(1.34g、13.7mmol)をTHF(4mL)に溶解し、激しくかきまぜながら溶液にゆっくり添加した。溶液は初め曇ったが、20分間で透明になった。粘稠な溶液を還流下で24時間撹拌した。ポリマーをイソプロパノール(400mL)から析出させ、少量の水に再溶解し、イソプロパノール(400mL)から再析出させた。白色固体を真空下室温で乾燥した。1H−NMRから、繰り返し単位の約6%がグラフト性マレイン酸イミド結合を含有することが確認された(5.34g、収率88%、転化率50%)。
1H NMR (D2O, 400 MHz) d 6.29 (2H, bs, CHH=CMe), 4.1-3.5 (18 H, CH of PVA-PVAm), 2.0-1.4 (34 H, CH2 of PVA-PVAm)
実施例10
本実施例では、官能化PVAを合成した。これをPVA−PVAm−MMAとする。THF(50mL)を入れた250mL三ツ口丸底フラスコにPVA−PVAm(5.02g、114mmol、PVOH(94)−PVAm(6)L6、セラネーズ社製)を添加し、激しく還流させてポリマーを膨潤させた。反応混合物を室温に冷却し、かきまぜながら2−イソシアナトエチルメタクリレート(1.06g、6.83mmol)を混合物にゆっくり添加した。不均質な混合物を24時間かきまぜた後、揮発分を真空下で除去した。白色ポリマーを十分な量のヘキサンで洗い、真空下室温で乾燥した。1H−NMRから、繰り返し単位(12%ウレタン(PVA):88%尿素(PVAm))の約2%がグラフト性メタクリレート結合を含有することが確認された(5.40g、収率89%、転化率38%)。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) d 6.12 (0.13H, bs, CHH=CMe - urethane), 5.71 (0.13H, bs, CHH=CMe - urethane), 5.64 (1H, bm, CHH=CMe - urea), 5.33 (0.13H, bm, CHH=CMe - urea), 4.24 (0.26H, bm, CH2CH2 - urethane), 4.1-3.5 (51 H, bm, CH of PVA-PVAm), 3.61 (2H, t, CH2CH2 - urea), 4.24 (0.26H, bm, CH2CH2 - urethane), 3.24 (2H, bm, CH2CH2 - urea), 1.91 (3H, bs, CHH=CMe), 1.9-1.4 (82 H, bm, CH2 of PVA-PVAm)
実施例11
本実施例では、ePTFE(QM702シリーズメンブレン、GEエネルギー社製)に、実施例1,3及び実施例5〜10でそれぞれ製造した、高MwのPVA−MMA(2.4)、高MwのPVA−MMA(1.4)、高MwのPVA−MA(3.0)、高MwのPVA−MA(2.5)、高MwのPVA−MA(2.0)、低MwのPVA−MMA(3)、PVA−PVAm−mal及びPVA−PVAm−MMAを被覆した。PVA−MMA(2.4)を用いる例を説明すると、PVA−MMA(2.4)(2.00g)を50℃の脱イオン水(98g)に溶解した。高剪断速度のブレンダを用いて、混合している溶液にイソプロパノール(80mL)をゆっくり添加した。揮発分の蒸発により、1.22wt%のPVA−MMA(2.4)溶液であることが確認された(理論値1.23wt%)。BHA ePTFE Part#QM702に基づくBHA ePTFEメンブレンをこのPVA−MMA(2.4)溶液で十分に濡らし(湿潤し)、スクイージを用いて余分な溶液を除去した。透明な被覆ePTFEサンプルをポリプロピレンフープに張り、空気乾燥させた。付着分(重量%)を測定したところ6〜8重量%であった。また焼失分(重量%)を測定したところ6〜8%であった。高MwのPVA−MMA(1.4)、低MwのPVA−MMA(3)、PVA−PVAm−mal及びPVA−PVAm−MMAの皮膜も同様の性能であった。高MwのPVA−MA(3.0)、高MwのPVA−MA(2.5)及び高MwのPVA−MA(2.0)の皮膜も同様の性能であったが、イソプロパノール濃度が総コーティング溶液濃度の50%に増加した。
実施例12
本実施例では、ePTFE(QM702シリーズメンブレン、GEエネルギー社製)に、実施例2で製造した高MwのPVA−MMA(5.0)を被覆した。PVA−MMA(5.0)(4.00g)を50℃のDMSO(10g)及び脱イオン水(86g)に溶解した。高剪断速度のブレンダを用いて、混合している溶液にイソプロパノール(100mL)をゆっくり添加した。揮発分の蒸発により、2.2wt%のPVA−MMA(5.0)溶液であることが確認された(理論値2.24wt%)。BHA ePTFE Part#QM702に基づくBHA ePTFEメンブレンをこのPVA−MMA(5.0)溶液で十分に濡らし(湿潤し)、スクイージを用いて余分な溶液を除去した。透明な被覆ePTFEサンプルをポリプロピレンフープに張り、空気乾燥させた。付着分(重量%)を測定したところ10〜11重量%であった。
実施例13
本実施例では、ePTFE(QM702シリーズメンブレン、GEエネルギー社製)に、実施例4で製造したPVA−MA(3.8)を被覆した。PVA−MA(3.8)(4.00g)を50℃のDMSO(96g)に溶解した。高剪断速度のブレンダを用いて、混合している溶液にイソプロパノール(250mL)をゆっくり添加した。揮発分の蒸発により、1.3wt%のPVA−MA(3.8)溶液であることが確認された(理論値1.35wt%)。BHA ePTFE Part#QM702に基づくBHA ePTFEメンブレンをこのPVA−MA(3.8)溶液で十分に濡らし(湿潤し)、余分な溶液を搾り取った。透明な被覆ePTFEサンプルをポリプロピレンフープに張り、空気乾燥させた。被覆を繰り返して付着分を増やした。最終付着分(重量%)は10〜11重量%と測定された。
実施例14
本実施例では、被覆PVA誘導体化ePTFEサンプルを拘束環境(即ちポリプロピレンフープ)にて、以下の2つの方法いずれかで電子線照射した。1)ドライ:サンプルをAEB電子線装置に入れ、窒素雰囲気に、酸素濃度が200ppm未満になるまで置いた。標準電圧125kVにてドライサンプルを所定の線量に照射した。2)ウェット:サンプルに脱イオン水を噴霧し、メンブレンの完全な濡れ(湿潤)が達成されるまで(即ち完全に透明になるまで)噴霧を続けた。過剰な水をスクイージ、拭き取りその他の通常の方法で除去し、メンブレン上に水の溜まりができないようにした。サンプルをAEB電子線装置に入れ、窒素雰囲気に、酸素濃度が200ppm未満になるまで置いた。標準電圧125kVにてウェットサンプルを所定の線量に照射した。
【0055】
実施例11〜13で製造したメンブレンサンプルの電子線照射後及びオートクレーブ処理後の流量を表1に示す。Celvol165(高分子量約146〜186kg/mol、超加水分解ポリビニルアルコール、セラネーズ社製)は対照品である。流量はmL/min−cm2@27”Hg単位で測定した。付着分(重量%)は(塗工後の膜重量−塗工前の膜重量)/塗工前の膜重量x100により計算した。
【0056】
【表1】

表1に示すように、対照のCelvol165の流量は試験したすべてのサンプルの中で最低であった。電子線照射前に親水性皮膜で被覆したePTFEを濡らすことで、いずれの親水性皮膜の場合でも、オートクレーブ処理後の流量が大幅に向上し、持久性が高くなった。
実施例15
本実施例では、被覆したPVA誘導体化ePTFEサンプルを拘束環境(即ちポリプロピレンフープ)にて、2つのドライ及びウェット方法いずれかで電子線照射した。すべての評価例で、ウェット法が完全なオートクレーブ処理性を保証するより有効な方法であることが確認された。オートクレーブ処理性は、オートクレーブ処理サイクル後に透明に濡れるメンブレンの性質として定義される。ウェット法は次のように行った。サンプルに脱イオン水を噴霧し、メンブレンの完全な濡れ(湿潤)が達成されるまで(即ち完全に透明になるまで)噴霧を続けた。過剰な水をスクイージ、拭き取りその他の通常の方法で除去し、メンブレン上に水の溜まりができないようにした。サンプルをAEB電子線装置に入れ、窒素雰囲気に、酸素濃度が200ppm未満になるまで置いた(但し酸素の存在は電子線性能に影響しない)。標準電圧125kVにてウェットサンプルを所定の線量に照射した。結果を図2に示す。
【0057】
図2及び表1には、低分子量PVA−MMA(3)で被覆したePTFEの2つのサンプルについての流量データを示す。サンプルをPVA−MMA(3)の付着分4.4重量%及び14.3重量%にて製造した。サンプル#の#は側鎖メタクリレート官能価を有するポリマー繰り返し単位のモル%(1H−NMR分光分析により測定)に対応する。流量は、電子線照射前、電子線照射(40kGy)後、及びスチームオートクレーブ処理(121℃/21psiで30分)後について報告する。各サンプルについて、すべての条件下で高い流量とメンブレンの完全な濡れが認められた。
実施例16
本実施例では、図3に示すように、電子線照射線量レベルの影響を5〜40kGyの範囲で調べた。PVA−MMA(2.4)について流量と付着分(重量%)を表1に報告する。僅か5kGyの線量レベルでも、オートクレーブ処理性と高い水流量が達成された。多数回のオートクレーブ処理サイクル後に、メンブレンの完全な濡れと高い水流量が認められた。
実施例17
本実施例では、2つの異なる化学品、即ち、PVA(Celvol165、セラネーズ社製)及びPVA−MMA(2.4)(メタクリレート官能価で誘導体化された高分子量PVA)を評価した。3つの異なる処理変数、即ち、電子線なし、ドライメンブレン条件での電子線照射、及び水濡らし条件での電子線照射を分析した。オートクレーブ処理前後の流量及び重量損失(%)を図4及び図5に示す。以下のいくつかの結論が導かれる。PVA被覆ePTFEについての流量が、線量40kGyの電子線照射後に、増加する。これは、PVA及びPVA−MMA(2.4)両方について見られる。PVAはオートクレーブ処理性、つまりオートクレーブ処理後の有意な流れを示さない。PVA−MMA(2.4)被覆ePTFEについて、ウェット電子線照射は、ドライ電子線照射より大きく向上した流量をもたらす。これは、オートクレーブ処理前後両方について言える。PVA−MMA(2.4)について、ウェット電子線照射は、ドライ電子線照射より劇的に低い抽出分量をもたらす。オートクレーブ処理前後両方について、非常に低い抽出分重量損失(重量%)が認められる。
実施例18
本実施例では、官能化PVAを合成した。これを高MwのPVA−UMA(2.6)とする。無水のDMSO(220g)を入れた500mL三ツ口丸底フラスコにPVA(20.0g、456mmol、Celvol165、セラネーズ社製)を添加し、75℃で激しくかきまぜ、均質な溶液を得た。ラジカル開始剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT、10mg)を添加した。反応混合物を40℃に冷却し、激しくかきまぜ(400rpm)ながら2−イソシアナトエチルメタクリレート(1.83g、11.8mmol)を溶液にゆっくり添加、即ち5分間にわたって滴下した。粘稠な溶液を15分間撹拌した後、室温に冷却した。DMSO−d6中の1H−NMR分光分析で完全転化が確認された。ポリマーをイソプロパノール(合計1200mL)に投入し析出させた。凝集した白色固体を真空下室温で乾燥した。1H−NMRから、繰り返し単位の約2.6%がグラフト性メタクリレート結合を含有することが確認された(21.7g、収率100%、転化率100%)。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) d 7.21 (1H, bm, NH) 6.07 (1H, bs, CHH=CMe), 5.67 (1H, bs, CHH=CMe), 4.94 (1H, bm, OH of PVA) 4.68 (8H, bm, OH of PVA), 4.49 (19H, bm, OH of PVA), 4.24 (13H, bm, OH of PVA), 4.07 (2H, bm, CH2CH2), 3.9-3.6 (38 H, CH of PVA, 3.25 (2H, bm, CH2CH2), 1.88 (3H, bs, CHH=CMe), 1.8-1.2 (80 H, bm, CH2 of PVA)
実施例19
本実施例では、官能化PVAを合成した。これを6kgにスケールアップした高MwのPVA−UMA(2.6)とする。プロセス開発施設(PDF=Process Development Facility)における、後退翼型攪拌機、バッフル、蓄熱井戸付きのPfaudlerガラス内張50ガロン鉄鋼製反応容器にDMSO(30kg)を添加した。50rpm程度で撹拌しながら、PVA(6.0kg、136mol、Celvol165、セラネーズ社製)をゆっくり添加した。撹拌している混合物に追加のDMSO(36kg)を添加した。混合液を空気中で60℃にゆっくり加熱し、撹拌し、均質な溶液を得た。ラジカル開始剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT、6g)を添加した。激しくかきまぜ(126rpm)ながら2−イソシアナトエチルメタクリレート(550g、11.8mol)を溶液に195分間にわたって滴下した。粘稠な溶液をさらに15分間撹拌し、分析用の少量のサンプルをとった。DMSO−d6中の1H−NMR分光分析で100%転化が確認された。反応容器とその中味を一晩で室温まで冷却した。ポリマー(1度に5Lの溶液)をHenschelホモゲナイザーを用いて激しく撹拌しているイソプロパノール(25L)溶液に投入し析出させた。凝集した白色固体を遠心分離し、イソプロパノールで再スラリー化し、Henschelホモゲナイザーで細断した。次に大型ポリプロピレンドラムにてポリマーを過剰のイソプロパノールに4日間浸漬し(200Lのイソプロパノールに約6kg)、ポリマー中の残留DMSOを除去した。上記工程をもう一度繰り返し、ポリマーをさらに5日間再浸漬した。ポリマーを高速で遠心分離して乾燥し、Henschelホモゲナイザーで再細断した。1H−NMRから、繰り返し単位の約2.6%がグラフト性メタクリレート結合を含有することが確認された(6.5kg、収率99%、転化率100%)。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) d 7.21 (1H, bm, NH), 6.07 (1H, bs, CHH=CMe), 5.67 (1H, bs, CHH=CMe), 4.94 (1H, bm, OH of PVA), 4.68 (8H, bm, OH of PVA), 4.49 (19H, bm, OH of PVA), 4.24 (13H, bm, OH of PVA), 4.07 (2H, bm, CH2CH2), 3.9-3.6 (38 H, CH of PVA, 3.25 (2H, bm, CH2CH2), 1.88 (3H, bs, CHH=CMe), 1.8-1.2 (80 H, bm, CH2 of PVA)
実施例20
本実施例では、ePTFE(QM702シリーズメンブレン、GEエネルギー社製)に、実施例18で製造したPVA−UMA(2.6)を被覆した。PVA−UMA(2.6)(2.50g)を50℃の脱イオン水(98g)に溶解した。高剪断速度のブレンダを用いて、混合している溶液にイソプロパノール(100mL)をゆっくり添加した。揮発分の蒸発により、1.20wt%のPVA−UMA(2.6)溶液であることが確認された(理論値1.25wt%)。BHA ePTFE Part#QM702に基づくBHA ePTFEメンブレンをこのPVA−UMA(2.6)溶液で十分に濡らし(湿潤し)、スクイージを用いて余分な溶液を除去した。透明な被覆ePTFEサンプルをポリプロピレンフープに張り、空気乾燥させた。付着分(重量%)を測定したところ6〜10重量%であった。
実施例21
本実施例では、ePTFE(QM702シリーズメンブレン、GEエネルギー社製)に、実施例18で製造したPVA−UMA(2.6)を、所定の重量%の所定の親水性添加剤と組み合わせて被覆した。特定の添加剤及びその量(重量%)を下記の表2に示す。
【0058】
上記1.20wt%PVA−UMA(2.6)溶液に、PVA−UMAの重量に対して所定の量(重量%)の所定の親水性添加剤を添加した。PVA−UMAとPVA−UMAに基づいて10または30重量%の親水性添加剤とを含有する調製溶液からなる付着分合計約7〜10重量%を有するサンプルを製造した。例えば、10重量%の親水性添加剤の場合、1gのPVA−UMAを含有する溶液100g(1.0重量%溶液)では0.1gの親水性添加剤を溶液に添加している。そして、例えば、30重量%親水性添加剤サンプルは、120mgのPVA−UMAで作った1.2%PVA−UMA溶液に36mgのPEG−DA(平均Mn700)を添加することにより調製した。BHA ePTFE Part#QM702に基づくBHA ePTFEメンブレンをこのPVA−UMA(2)溶液で十分に濡らし(湿潤し)、スクイージを用いて余分な溶液を除去した。透明な被覆ePTFEサンプルをポリプロピレンフープに張り、空気乾燥させた。付着分(重量%)を測定したところ6〜8重量%であった。
実施例22
本実施例では、被覆PVA誘導体化ePTFEサンプルを拘束環境(即ちポリプロピレンフープ)にて、電子線照射した。サンプルに脱イオン水を噴霧し、メンブレンの完全な濡れ(湿潤)が達成されるまで(即ち完全に透明になるまで)噴霧を続けた。過剰な水をスクイージ、拭き取りその他の通常の方法で除去し、メンブレン上に水の溜まりができないようにした。サンプルをAEB電子線装置に入れ、窒素雰囲気に、酸素濃度が200ppm未満になるまで置いた。標準電圧125kVにてウェットサンプルを所定の線量、即ち5kGy又は10kGyに照射した。
【0059】
実施例18〜22で製造したメンブレンサンプルの電子線照射後及びオートクレーブ処理後の流量を表2に示す。PVA−UMA(2.6)のみで被覆したメンブレンを対照として用いる。ePTFE(GEエネルギー社パーツ番号QM702、Roll73965−1LB)に、親水性添加剤と1.2重量%PVA−UMA(2.6)溶液との混合物を1:1の水:イソプロパノールに予め溶解した溶液を被覆した。流量は、121℃/1.5気圧30分間のオートクレーブ処理サイクルの前後両方で測定した。図6及び図7は、電子線に10kGy及び5kGy照射した被覆メンブレンの流量を示すグラフである。
【0060】
【表2】

表2及び図6,7に示すように、ジアクリレート(PEG−DA)及びトリアクリレート(TMPET)添加剤を含有するPVA−UMA被覆ePTFEメンブレンはどちらもオートクレーブ処理可能であり、オートクレーブ処理後に高い水流量が得られた。比較的高分子量のPEG−DA(Mn700及び2000)を含有するサンプルは、比較的低分子量のPEG−DA(Mn258)を含有するサンプルより性能が良好であった。5kGyで、10重量%のPEG−DA(Mn700)は、均一なオートクレーブ処理性メンブレンを得るのに必要な限界値より低かった。しかし、10kGyで、10重量%の親水性添加剤は、均一なオートクレーブ処理性メンブレン及び有意な流量を与えるのに適切であった。5及び10kGy両方で、30重量%のPEG−DA(Mn700)は、優れたメンブレン濡れ性とオートクレーブ処理後の極めて速い水流量を実現するのに十分に適切であった。5kGyで、TMPETを添加剤として用いるサンプルは、10重量%及び30重量%両方で、良好な水濡れ性と優れたオートクレーブ処理性とを示した。
【0061】
表3及び図8,9に、上で説明し、流量を図3,4に示した材料と同じ組合せの材料について抽出分データを報告する。抽出分は、80℃の脱イオン水中で24時間の抽出後にメンブレンから除去された非結合材料の割合(%)として定義される。抽出分(重量%)は、抽出前後の乾燥サンプルの重量差から求めた。目的は、抽出分レベルをできるだけゼロに近づけることである。PVA−UMA(2.6)及びMw700のPEG−DA(PVA−UMAに対して10重量%又は30重量%のPEG−DA)の溶液で被覆したePTFEに、電子線を10kGy照射した。抽出分を電子線照射後及び1オートクレーブ処理サイクル後に測定した(図8)。電子線照射後に、約0.3重量%の抽出分が認められ、一方オートクレーブ処理後には抽出分が検出されなかった。
【0062】
【表3】

電子線は、線量が増加するにつれて、次第にePTFEの機械的一体性を損なうので、オートクレーブ処理サイクル後に存続する親水メンブレンを実現することができる最低の電子線照射線量が望ましい。したがって、電子線を5kGy照射した親水サンプルについて抽出分データをとった。親水性添加剤なしでPVA−UMA(2.6)で被覆したePTFEを対照とした。Mw700のPEG−DA及びMw912のTMPET両方をPVA−UMAに対して10重量%及び30重量%で調べた。10重量%のTMPETを例外として、すべてのサンプルが電子線照射後に抽出分0.3〜0.4重量%であった。5kGyで照射したMw700のPEG−DAと10kGyで照射した同様のサンプルとを比較すると、電子線照射後の抽出分にほぼ差がなかった。オートクレーブ処理後に、抽出分は通例0.2重量%以下に低下した。興味深いことに、親水性添加剤を含まない対照サンプルとPEG−DAやTMPETを含有するサンプルとの間に有意な差は認められなかった。したがって、親水性添加剤は高い抽出分レベルには寄与していないと結論された。
【0063】
本明細書で用いる用語「含む(含有する)」は、種々の組成物、化合物、成分、層、工程などを本発明に共同使用できることを意味する。したがって、用語「含む(含有する)」は、より限定的な用語「のみからなる」及び「本質的にのみからなる」を包含する。
【0064】
特別に定義されない限り、本明細書で用いられる科学技術用語は、当業者が一般に理解するのと同様な意味を有する。単数表現は、数量を限定するものではなく、記載要素が存在することを表す。
【0065】
本明細書全体を通して言及した「1実施形態」、「別の実施形態」、「他の実施形態」などは、その実施形態に記載された特定要素(例えば、特徴、構造及び/又は特性)が、本明細書の少なくとも1つの実施形態に含まれ、別の実施形態には存在してもしなくてもよいことを意味する。さらに、記載された要素を任意適当な方法で種々の実施形態に取り入れてもよい。
【0066】
引用した特許、特許出願その他の文献はすべて本発明の先行技術として援用する。しかし、本明細書の用語が引用文献の用語と矛盾するような場合には、本明細書の用語が引用文献からの相反する用語より優先する。
【0067】
本明細書では、具体例を挙げて、最良の形態を含む本発明を開示するとともに、装置やシステムを作製・使用したり、方法を実施したりすることを含めて、当業者が本発明を実施できるようにしている。本発明の要旨は、特許請求の範囲に規定された通りで、当業者が想起できる他の例を含むことができる。このような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有するか、特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない均等な構造要素を含むならば、特許請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ベースメンブレンとこの多孔質ベースメンブレンに結合された親水性皮膜とを含み、
前記親水性皮膜が親水性添加剤及び親水ポリマーを含有し、
前記親水ポリマーは、平均分子量2500ドルトン超であり、電子線反応性基で誘導体化されており、この電子線反応性基は高エネルギー線を照射されると親水性皮膜を多孔質ベースメンブレンに永久結合するように設計されている、
メンブレン。
【請求項2】
前記多孔質ベースメンブレンが、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、置換ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル)、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、アクリル及びメタクリルポリマー、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタル酸エステル、ポリブチレンテレフタル酸エステル)、ポリエーテルスルホン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンスルホン、セルロースポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド(例えばナイロン、ポリフェニレンテレフタルアミド)及びこれらの2種以上の組合せの1つ又は2つ以上を含む、請求項1に記載のメンブレン。
【請求項3】
前記多孔質ベースメンブレンがフルオロポリマーを含む、請求項2に記載のメンブレン。
【請求項4】
前記電子線反応性基が、メタクリレート、アクリレート、アクリルアミド、ビニルケトン、スチレン、ビニルエーテル、ビニル又はアリル含有部分、及び/又はベンジル炭素及び三級炭素(CHR3)材料を含む、請求項3に記載のメンブレン。
【請求項5】
前記親水性添加剤が、アクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート又は他の多アクリレート、アクリルアミド、ビニルケトン、スチレン、ビニルエーテル、ビニル又はアリル含有部分、及び/又はベンジル炭素及び三級炭素(CHR3)を含む、請求項1に記載のメンブレン。
【請求項6】
前記親水性添加剤が、ポリエチレングリコールジアクリレート、テトラ(エチレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレート、メチルエーテルジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、グリセロール1,3−ジグリセロレートジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールエトキシレートジアクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)グリセロレートジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載のメンブレン。
【請求項7】
親水性添加剤及び平均分子量2500ドルトン超であり、電子線反応性基で誘導体化されている親水ポリマーを含有する親水性皮膜を多孔質ベースメンブレンに塗工し、
被覆された多孔質ベースメンブレンに高エネルギー線源から照射し、
電子線反応性基を多孔質ベースメンブレンに共有グラフトして多孔質ベースメンブレン上に永久親水性皮膜を形成する
工程を含む、多孔質メンブレン上に永久親水表面を形成する方法。
【請求項8】
さらに、照射前に、被覆された多孔質ベースメンブレンに水を適用し該メンブレンを濡らす工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記メンブレンにおいて、親水性皮膜の付着分及び/又は焼失分(重量%)が3〜15重量%である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
被覆された多孔質ベースメンブレンに高エネルギー線源から照射する工程で、被覆された多孔質ベースメンブレンに電子線を約0.1kGy〜2000kGyの範囲の線量で照射する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
被覆された多孔質ベースメンブレンに高エネルギー線源から照射する工程で、被覆された多孔質ベースメンブレンに電子線を約5kGy〜約40kGyの範囲の線量で照射する、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−121127(P2010−121127A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251576(P2009−251576)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】