説明

汚れ止め被膜

【解決手段】
この発明は、長期間にわたる汚れ止め特性を有する被膜を供給できる多層の、自己研磨型海用汚れ止め塗料を提供する。繊維で強化されたアルデヒド樹脂である塗料バインダは、相乗的に作用する要素である、成分Aと成分Bとを含む。成分Aは、式(1):(R−O−)−Al−(CH−CO−CH−CO−O−R)で表わされるアルミニウムジ−2級アルコキシドアセト酢酸エステルキレートである。ここで、Rは、3から10の炭素原子を有する2級アルキル基、または、環状アルキル基を表わし、Rは、1〜10の炭素原子を有するアルキル基、または環状アルキル基を表わす。成分Bは、式(2):R−O−Ti(−X)で表わされるモノアルコキシ有機チタン酸塩−IVである。ここで、Rは、2〜30の炭素原子を有する一価の有機族、または、それの置換可能な派生物である。上記式のXは、単独でアシル化族、スルホン酸残留物、リン酸残留物、またはピロリン酸エステル残留物、若しくは、その混合物である。被膜成分は、(a)少なくとも一つの控えめに溶ける金属を含む色素,(b)色素としてまた機能し得る少なくとも一つの殺生剤、および、選択的に、(c)一以上の、高度に溶解性のない色素、および、選択的に、(d)被膜消費調整剤を含む。上記汚れ止め被膜成分から形成された、船体や水中構造物の上の被膜は、長期に亘って優れた汚れ止め特性を有し、消費特性も優れている(自己研磨作用を有している)。さらに、これらの汚れ止め被膜成分は、優れた貯蔵安定性を有している。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
この発明は汚れ止め被膜に関する。
【0002】
海の有機体に対する殺生剤の放出によって一般に発生する、フジツボや、藻のような、海の有機体の付着や成長を禁止するために、船体または、他の水中構造物の上に、汚れ止め被膜が上塗りとして使用される。
【0003】
船底、港湾施設、ブイ、パイプライン、橋、潜水艦基地、水産養殖ネット、定置網、海底油田関連の設備、発電所の導水管または取水設備、防波堤や碇のような海洋構造物は、フジツボや、貝や、コケムシや、藻のような付着生のある水中有機体によって汚され、かなりの経済的損失となっている。
【0004】
そのような付着性の水中有機体の定着を防ぐために、海洋構造物は、汚れ止め塗料で一般に被覆されており、そのような汚れ止め塗料は、無機銅化合物の防汚剤から主として準備されている。
【0005】
水溶性のマトリックス防汚塗料は、塗料のバインダの主成分としてロジンを含んでおり、防汚剤は、付着性のある水中有機体の定着を防ぐために、松脂を混合されている。
【0006】
ロジンは安価で容易に入手可能な原材料であるが、その欠点は、空気によって容易に悪化する点である。それによって、分子構造が変化して、塗料の研磨率は低下し、使用可能時間は、滅多に18から24ヶ月にはならない。十分な殺生作用を発揮するのに低自己研磨率で十分な場合であっても、不可避のロジンの酸化が、汚れ止め塗料の機械的悪化を引き起こし、恒久的に不良になる。
【0007】
水溶性マトリックス汚れ止め塗料の使用期間を増やす一つの方法は、塗料のバインダとしてロジンの使用量を減らすことである。シャイバ,J、センディグ,K、(1929)「人工樹脂」,スタットガルト,ヴィッセンンシャフトリッセ,フェルラーグスゲゼルシャフトm.b.Hp.205は、海水に徐々に溶ける汚れ止め塗料の使用によって良い結果がもたらされたと報告している。これは繊維強化されたアルデヒド樹脂バインダに基づくもので、このバインダは、ロジンをほとんど含んでいない。特に、シャイバとセンディグの汚れ止め塗料バインダの構造は、WACKER SCHELLACEWC、すなわち、100樹脂のうち約14部をリン酸トリクレシルによって可塑化したアルデヒド樹脂と、アルデヒド樹脂100部のうち約3から6部のワックスの疎水化物からなる。ロジン(未蒸留)は、テルペンチンの形でアルデヒド塗料バインダの一部であった。天然のテルペンチンは、典型的に、蒸留後ロジンを形成する75%〜85%の固形物と、25〜15%の揮発性のテルペン溶液とからなる。
【0008】
このように、シャイバとセンディグは、以下に示す(標準)混合物を、良い作用を及ぼす汚れ止め塗料として述べている。
シャイバとセンディグの処方
アルデヒド樹脂(塗料バインダ) 10.1部
ミルされたアスベスト(繊維強化剤) 6.3部
リン酸トリクレシル(可塑剤) 1.5部
ワックス(被膜消費調整剤) 0.3部
ロジン(未蒸留、テルペンチン前) 5.0部
エタノールとテルペン蒸留液(溶剤) 43.5部
酸化亜鉛(有毒色素) 11.7部
酸化鉄(顔料色素) 6.9部
亜鉛粒子2部および他の有毒色素 14.7部
上記塗料成分は、物理−機械的に最適化されたものと考えられている。というのは、まだ比較的脆い、全無機顔料に対する有機バインダ成分の体積比が与えられると、アスベスト繊維強化の上記数値で表わされた体積濃度は、脆い混合物を強化するために推奨されている最適範囲である、2〜9体積%の十分範囲内であるからである。たとえば、ボードイン ジェームス J.(1990)「繊維強化されたコンクリートハンドブック」ニュージャージ,ノイス出版(ISBN0−8155−1236−8),pp1−46,pp206−262およびpp309−322を参照のこと。
【0009】
注意深く再検査すると、この塗料成分は、高く積み上げられた汚れ止め塗料の優れた機械的特性を示しており、不利な長期間の風化作用下においても、割れや剥がれが生じる傾向もない。他の無機物または有機繊維は、この優れた被膜処方の柔軟性や耐衝撃性における損失なしに、ミルされたアスベストの代用品になりうる。
【0010】
汚れ止め作用の面においては、シャイバとセンディグの処方は、酸化水銀HgOまたはトリブチルフッ化スズが「他の毒性顔料」として使用されたとき、うまく作用する。酸化水銀HgOまたはトリブチルフッ化スズは、ともに、汚れ止め塗料において現在、完全に使用が禁止されている。
【0011】
しかしながら、酸化第一銅、銅(I)チオシアネートまたは銅ピリチオン(copper-pyrithione)がシャイバとセンディグの処方において「他の有毒顔料」として使用されたらアルデヒド樹脂と銅化合物との間で一種の遅い化学反応が生じ、有用な汚れ止め作用を行なう350−400μmの被膜が水中下において、18−20ヶ月以上保てない。この否定的な結果は、塗料中にロジンがあるか否かに関係しない。
【0012】
ドイツ特許第394946号は、アルデヒド樹脂を、たとえば、水酸化アルミニウムのような水酸化金属の少量で加熱することによって、アルデヒド樹脂を改良する方法を提案している。しかしながら、シャイバとセンディグの処方の未処理のアルデヒド樹脂が、上記特許のよって提案されているように、金属水酸化物で予備処理されたアルデヒド樹脂の任意のもので置換されると、汚れ止め能力は長続きせず、被膜の特性は不十分になり、水ぶくれや剥がれが生じやすくなる。
【0013】
この発明の目的は、上記の特定の問題を解決する、繊維強化されたアルデヒドバインダベースの汚れ止め塗料成分を提供することである。この発明のさらなる目的は、たとえば、船体の喫水の上の乾燥状態や、海水中への水没および乾燥状態への相互の繰り返しが生じる環境に長期間置かれても、汚れが実際的には問題ないレベルにしかならないような、すぐれた汚れ止め特性を有する被膜を形成できる多層の汚れ止め被膜成分を提供することである。
【0014】
この発明の発明者は広範囲の研究を行ない、その結果、この発明の目的は、2つの特別なバインダ−可溶金属−有機化合物を含む繊維強化されたアルデヒド樹脂汚れ止め塗料バインダによって達成されるということを発見した。この発明は、この発見に基づいて完成した。
【0015】
このように、この発明は、(a)繊維強化アルデヒド樹脂、バインダ可溶アルミニウムジー2級−アルコキシド ジーイソプロポキシエステルキレート(化合物A)およびバインダ可溶性モノアルコキシ有機チタン酸塩(IV)化合物(B)を含む媒体と、
(b)汚れ止め海用殺生剤および他の塗料添加物とを含む汚れ止め被膜成分を提供する。
【0016】
汚れ止め塗料成分は、形成された塗膜の、長期に亘る貯蔵安定性および持続性の一定の腐食率によって、改善された汚れ止め特性を証明する。さらに、その優れた接着特性によって再塗布が可能である。
【0017】
この発明による汚れ止め物質は、環境問題を生じさせない。すなわち、それ自体は、低い毒性と低い保持力しか有さず、エコシステムまたは作業環境に悪い影響を与えることなく、長期に亘って性能を発揮する。
【0018】
出願人は、2つの特別な化合物AとBを使用することによって、アルデヒド樹脂が銅の海用殺生剤と緩やかに反応し、長期に亘る汚れ止め能力を発揮することを予期せず、発見した。これは本当に予期できなかった。というのは、先行技術は、アルデヒド樹脂と銅ベースの顔料とを相互作用させるいかなる方法も教示または提供しなかったからである。このように、この発明にかかる汚れ止め塗料の組成は、以下の成分と含有物とからなる。
【0019】
1)成分A
この発明の必須成分として使用される成分Aは、アルミニウム ジー(2級)アルコキシド ジーイソポロポキシエステルキレートである。成分Aは、以下の式(1)で表わされる。
(R−O−)−Al−(CH−CO−CH−CO−O−R)・・・(1)
ここで、Rは、3〜10の炭素原子を有する2級のアルキル基、または、環状アルキル基を表わし、Rは、1〜10の炭素原子を有するアルキル基、または、環状アルキル基を表わす。
【0020】
市場で入手可能な2級のアルコキシドアルミニウムの例として、ジーイソプロポキシエステルキレートを述べることができる。
【0021】
アルミニウム ジ(イソプロポキサイド)アセト酢酸エチルエステルキレート
CAS番号14782−75−3
テクニカルグレードAl%=9.6min
アルミニウム ジ(2級ブトキシド)アセト酢酸エチルエステルキレート
CAS番号24772−51−8
テクニカルグレードAl%=8.4min

2)成分B
この発明の被膜成分の他の必須成分として、成分B、モノアルコキシ有機チタン酸塩(IV)が使用される。成分Bは、以下の式(2)で表わされる。
−O−Ti(−X)・・・(2)
ここで、Rは、2〜30の炭素原子を有する1価の有機グループまたは、その置換可能派生物であり、上記式中のXは、独立して表されるアシル化族、スルホン酸残留物、リン酸残留物、またはその混合物を表わす。
【0022】
この発明にとって有用な、商業的に入手可能な、モノアルコキシ有機チタン酸塩−IV化合物の例は、
チタン(IV)2−プロパノレート、トリイソオクタデカノエート−O
CAS番号61417−49−0
ケンリッヒ石油化学会社によって、KEN-REACT(登録商標)TTSとして販売されている。
【0023】
チタン(IV)2−プロパノレート、トリ(ドデシル)ベンゼンスルホナート−O
ケンリッヒ石油化学会社によって、KEN-REACT(登録商標)9Sとして販売されている。
【0024】
チタン(IV)2−プロパノレート、トリ(ジオクチル)フォスファト−O
CAS番号68585−79−5
ケンリッヒ石油化学会社によって、KEN-REACT(登録商標)12として販売されている。
【0025】
チタン(IV)2−プロパノレート、トリ(ジオクチル)ピロフォスファト−O
CAS番号67691−13−8
ケンリッヒ石油化学会社によって、KEN-REACT(登録商標)38Sとして販売されている。
【0026】
チタンIV2,2(ビス2プロペノレートメチル)ブタノレート−トリ−ネオデカノエート−O
ケンリッヒ石油化学会社によって、LICA(登録商標)01として販売されている。
【0027】
チタンIV2、2(ビス2−プロペノレートメチル)ブタノレート−トリ−(ドデシル)ベンゼンスルホナート−O
ケンリッヒ石油化学会社によって、LICA(登録商標)09として販売されている。
【0028】
チタンIV2、2(ビス2プロペノレートメチル)ブタノレート−トリ(ジオクチル)ホスファト−O
ケンリッヒ石油化学会社によって、LICA(登録商標)12として販売されている。
【0029】
チタンIV2、2(ビス2プロペノレートメチル)ブタノレート−トリ(ジオクチル)ホスファト−O
ケンリッヒ石油化学会社によって、LICA(登録商標)38として販売されている。
【0030】
3)アルデヒド樹脂
アルデヒド樹脂は、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドまたはこれらアルデヒドの混合物のアルカリ自己凝縮によって容易に準備できる。
【0031】
この発明において媒体として有用なアルデヒド樹脂は、一般式として、Ra−CH-(OH)−Rb−CH=Oで表わされる開始化合物をアルカリ凝縮することによって好ましくは準備される。ここで、RaとRbは、芳香族ではない有機残留物であり、それによって、水と他の揮発性物質を除去した凝縮が行なわれる。ここで、これらの除去は、凝縮物の最終製品が、樹脂分子において、酸素原子の存在ごとに、好ましくは、約4〜6の炭素原子を含むように行なう。
【0032】
4)繊維強化
アスペクト比で15より大きく、弾性率が約60,000N/mm2より大きい、無機および有機の繊維が、この発明の汚れ止め塗料組成の強化成分として有用である。
【0033】
ミルされたアスベストおよび他の高い弾性率を有する繊維が、船体の塗料において、曲げ弾性率、張力、引張強度において改善を提供する強化塗料充填物として長期に知られている。
【0034】
ミルされたアスベストは、シャイバーおよびセンディグ(1929)の汚れ止め塗料処方における原料である。ヘイデルト,H.(1952)ノイエスレプツトブッフフュールーティングディファーベンウントラックインダストリエ1.バンド,ハノーバ,カート R.ビンセンツフェラーグ371頁は、ミルされたアスベスト21%で強化された、リンシード−油バインダの含まれるオーストラリア特許22262号に基づく汚れ止め海用塗料について述べている。ケミカルフォーミュラリ(1951,p389)は、11%のアスベスト繊維を強化材とした船体塗料について述べている。モーガンズ,W.M.(1984)「塗料技術の概要」第1巻:材料[最初の出版は1969年]チャールズグリフィンとカンパニー,ハイ ワイコム イングランド第76頁は、「アスベストがある種の塗膜の機械的強度を上げる」と述べている。
【0035】
1μより小さい径の鉱物繊維強化材の使用は、今日では、健康の観点から多くの領域で禁止されており、それゆえ、多くの他の無機および有機の繊維がアスベストの代用物として使用されている。
【0036】
レンプ H(1988)ケミレキシコン 6.Ed(シュツットガルト、フランク フェラーグ)ISBN3−440−4510−2は、「ウォラストニット」の入口で、カルシウムシリケート繊維であるウォラストナイトは、アスベストの代替品として推奨されている。ミルされた鉱物繊維は、そのほつれがミルされたアスベスト繊維に似ている。米国特許第5008146号(1989)には、1000μより短い炭素繊維がカルシウムロジネートと亜鉛ロジネートベースの汚れ止め塗料に使用される。「細断されたグラファイトファイバは、丈夫で長持ちする被膜を達成するために形成時に加えられる」。炭素繊維の弾性率は、アスベストに似ているが、利点として、炭素繊維は、アスベストの密度の約半分である。そのため、炭素繊維を使用すると、その重量が約半分で効果を得ることができる。
【0037】
ポリマー接着繊維強化の分野における、70年代や80年代初期の体系的な研究により、エンジニアリングにおける数学表現が、脆い塗料バインダマトリックスに耐衝撃性を付与し、多かれ少なかれ柔軟にするために必要な繊維強化の形式や量を計算するのに利用できる。たとえば、ボードイン ジェームス J.(1990)繊維強化コンクリートのハンドブック、ニュージャージ、ノイス出版ISBN0−8155−1236−8、複合材料百科事典(1993)、第1−8巻、ニューヨーク、De,S.K.、ホワイト J.R.(eds.),短繊維ポリマ複合材料,ウッドランド出版,1996、および、カードス,J.L.,短繊維強化ポリマ複合材料構造−特性の関係,複合材料の国際百科事典,第5巻Ed,s.M.Lee,VCH,ニューヨーク,1991を参照のこと。
【0038】
この発明による汚れ止め塗料の成分は以下の従来の添加物を含んでもよい。
【0039】
(5)汚れ止め物質
銅、亜鉛、ニッケルの粉末またはフレーク、銅、亜鉛、特に第1銅または銅ロダン化物、亜鉛ナフテン酸塩、銅ナフテン酸塩、または、銅ステアリン酸塩のような、殺菌性の金属カルボン酸塩、亜鉛ジメチルジチオカルバミン酸塩、亜鉛ビス(ジメチルジチオカルバミン酸塩)、または、亜鉛エチレンビス−ジチオカルバミン酸塩のような、金属(たとえば、Na,K,Zn,Pb,Cu,Fe,Ni,Mg,Se)ジチオカルバミン酸塩、テトラメチルチラウムジスルフィド二硫化物のような、シウラム(thiuram)ジスルフィド二硫化物、フタリルスルファチゾール、スルファエチドール、スルファニリドピリジン、スルファメチオキシン、または、N,N−ジメチル−N’−フェニール−N−フルオロダイクロメチルシオサルファミドのような、スルファミド、ニカバジン、3,4,5−トリブロモサリシラニライド、Nトリクロロメチル−メルカプトフタリマイド、3,5−ジニトロベンザマイド、2,4,6−トリクロロマレイマイド、または、N−フルオロジクロメチルシオフタリマイドのような、イミドおよびアミド化合物、2−メチルチオ−4−tブチラミノ−6−サイクルプロピルアミノ−s−トリアジン、2,4,5,6−テトラクロロフタルオリトライル、N,N-ジメチル−N−ジクロロフェニルウレア、4,5−ジクロロ−2-n−オクチル−3−(2H)イソシアゾリン、2−ピリジアンシオル−1−酸化亜鉛、2−ピリジンシオル−1−酸化物銅、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メチルスルフォニルピリジン、3−イオデ−2−プロピルブチルカルバメイト、または、ジオドメチル p−トリルサルフォンのような、硫黄、またはハロゲンを含む有機化合物、および他の公知の、汚れ止め物質、殺虫剤、殺菌剤および防かび剤である。
【0040】
(6)可塑剤
ジオクチルフタレートや、ジメチルフタレートまたはジクロロネキシルフタレートのようなフタレート可塑剤、ジイソブチルアジぺートまたはブチルセバケートのような脂肪族のジカルボキシレート可塑剤、ジエチレングリコールジベンゾエートまたは、ペンタエリトリトールアルカノイックエステルのようなグリコールエステル可塑剤、トリクレジルリン酸塩またはトリクロエチルリン酸塩のような、リン酸可塑剤、エポキシ化された大豆油またはエポキシ化されたオクチルステアリン酸塩のようなエポキシ可塑剤、およびトリオクチルトリメリテートまたはトリアセチンのような他の可塑剤である。
【0041】
(7)被膜消費調整剤
塩素処理されたパラフィン、オイル、ワックス、ワセリン、および、液体パラフィン、ポリビニルエーテル、ポリプロピレンセバケート、部分的に水素化されたターフェニール、ポリビニールアセテート、ポリアルキル(メタ)アクリレート、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニールクロライド、シリコン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレア樹脂および、たとえば、塗料の溶解率を遅らせる、日本特許第8528456号、または、日本特許第50135125号に開示されたような、十分な互換性および低いガラス転移温度を有する他の疎水性のポリマーである。
【0042】
(8)顔料
凝集性のバリウム硫酸塩、タルク、クレイ、シリカホワイト、アルミナホワイト、または、ベントナイトのような、増量顔料、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、塩基性の硫酸鉛、酸化スズ、カーボンブラック、グラファイト、酸化赤鉄、クロムイエロー、エメラルドグリーン、フタロシアンブルー、またはキナクリドン(quinacridone)のような色顔料である。
【0043】
(9)溶剤
キシレン、トルエン、エチルベンゼン、シクロベンゼン、シクロペンタン、オクタン、へプタン、シクロヘキサン、または、ホワイトスピリットのような炭化水素、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、モノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、または、ジエチレングリコールモノエチルエーテルのようなエーテル、ブチルアセテート、プロピルアセテート、ベンゾイルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、または、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートのようなエステル、メチルイソブチルケトン、または、エチルイソブチルケトン、のようなケトン、およびnブタノールまたはプロピルアルコールのようなアルコールである。
【0044】
(10)被膜消費を促進する他の添加物
ロジン、モノブチルフタレートまたはモノオクチル琥珀酸塩のような一塩基性の環状有機酸、オレイン酸、ひまし油酸である。増量顔料としてチョークが使用されると、前記一塩基酸のカルシウム塩が、好ましくは、代わりに使用されるべきである。
【0045】
この発明の汚れ止め塗料は、当該技術分野において、それ自体が公知の方法で準備されても良い。ボールミルや、ペブルミルやロールミルや、サンドグラインドミルのような任意の公知の機械が各種成分を混合するために使用されても良い。
【0046】
船や魚網、海洋構造物に適用されたこの発明の汚れ止め塗料の塗膜は、海水の弱い無機物雰囲気において徐々に加水分解され溶け出す。したがって、この発明の汚れ止め塗料は、船に塗布された時、長期間に亘って制御された汚れ止め効果という点で、優れた性能を有する膜を生成する。このように、この発明の汚れ止め塗料は、タンカーやフェリーボートや、魚釣りボートや鋼鉄製のボートやFRPボートだけでなく、海洋構造物や、漁網および海水導管にも使用可能である。
【0047】
以下に、製造例および比較例を示す。他に表示が無い限り、全ての部分および%は重量を表わす。
【0048】
媒体樹脂の生産
この発明において媒体として役立つアルデヒド樹脂は、一般式として、Ra−CH-(OH)−Rb−CH=Oで表わされる初期化合物のアルカリ凝縮によって、好ましくは準備される。ここで、RaおよびRbは、芳香族ではない有機残留物であり、それによって、凝集後の最終製品は、樹脂分子において存在する酸素原子ごとに、約4〜6の炭素原子を好ましくは含むように、水と他の揮発性物質が除去された凝集が行なわれる。
【0049】
アルデヒド樹脂A
スタラー、環流冷却器ヘッド、窒素ガスチューブおよびデカンタが備えられた反応器を、以下の組成の、3−ヒドロキシブチルアルデヒド、CAS番号107−89−1で安定された、工業的には1000部の水で充填する。
3−ヒドロキシブチルアルデヒド 75%
アセトアルデヒド 7%
クロトンアルデヒド 1%
水 17%
合計 100%

これに対して、水66部にジエチルアミンの11部の溶液を加える。単位は、大気圧で環流にセットされ、穏やかに加熱され、混合物は約4時間環流するように窒素雰囲気で加熱される。
【0050】
環流ヘッドは、除去され、加熱が続行され、それによって、環流によって製造された水を蒸留するが、デカンタに集められた全ての油状物は、反応器に戻される。液体の温度が摂氏180度になると、それはその温度にさらに7時間保持され、その後、攪拌を続けながら、且つ窒素ガスが供給された状態で、溶けた樹脂のバッチは、摂氏186度まで加熱され、そこにさらに45分間保持される。一方、溶けた樹脂を通して窒素が供給され、油状物の約28部が蒸留され、これは捨てられる。
【0051】
溶けた樹脂は、反応器から水冷回転ドラムクーラに供給され、軟化点が摂氏105〜110度である黄色を帯びた、「アルデヒド樹脂A」のフレークが627部得られる(歩留まり98%)。
【0052】
以下の例は、代表的な汚れ止め塗料成分の準備の詳細、およびこの発明の原理に従う、その適用方法をより詳細に示すものである。しかしながら、いかなる点においても、発明の範囲を限定するものではない。
【0053】
以下の例において、pbwは、重量で表わされた部分である。テルペンチン77%は、天然のポルトガル(portugese)原産であり、23%の揮発性のテルペン蒸留物を有することが分析の結果わかった。アスベストは、ブチルアセテートの下で、カナダアスベストの湿式ミルによって準備される。銅ピリチオン(pyrithione)CAS番号14915−37−8は、ナトリウムピリチオン40%水溶液を、水中で、銅-II-アセテートの5%溶液に加え、フィルタ上でオリーブグリーンの沈殿物を集め、繰り返し水で洗浄し、最終的に真空中で乾燥することによって準備される。ロジンWWは、ポルトガル原産である。カルシウムロジネート(rosinate)CAS番号9007−13−0は、酸価として、50mgKOH/グラムを有している。
【0054】
例1
塗料準備:アルデヒド樹脂Aの101pbwを101pbwのブチルアセテートを溶かし、50.0%の水溶液を202pbw得る。この溶液に対して、8pbwのアルミニウムジ(イソプロポキサイド)アセト酢酸エチルエステルキレート(化合物A)、15pbwのリン酸トリクレシルと6pbwのチタンIV2プロパノレート、トリ(ジオクチル)フォスファト−O(化合物B)を加え、溶液は1時間攪拌される。その後、溶液は、酸化亜鉛117pbw、69pbwの酸化鉄(赤)CAS番号1309−37−1、350pbwのジ酸化銅Cu2O、それに、30pbwの銅ピリチオンと混合され、一晩中ミルされ、最後に、65pbwのテルペンチン(77%固体、ポルトガル原産)、3pbwのモンタンワックス、63pbwのアスベスチン、およびさらに、340pbwのブチルアセテートで混合する。
【0055】
汚れ止め特性の評価
このようにして得られた塗料は、それを、ビニール樹脂/タールの耐腐食塗料を介してプラークの上に、乾燥した360〜400μmの厚みのフィルムに塗布し、それを、ドイツのハンブルグのライヘルシュティーグ港の筏から沈めることによって、汚れ止め作用のテストを行なった。30ヶ月沈めたまま放置した後も例1の塗料が塗布されたプラークには、海草も動物の汚れも観察できず、藻類のヘドロも実際存在しなかった。
【0056】
この汚れ止め塗料の準備は、元のシャイバーおよびシェンディグの処方と似ているが、その汚れ止め特性は化合物Aおよび化合物Bの追加により改良されている。以下の比較例D1を参照のこと。
【0057】
例2
塗料準備:100pbwのアルデヒド樹脂Aが100pbwのブチルアセテートに溶かされ、200pbwの50.0%溶液を得る。この溶液に、4pbwのアルミニウムジ(イソプロポキサイド)アセト酢酸エチルエステルキレート(化合物A)、20pbwのリン酸トリクレシルを加え、溶液は1時間攪拌される。その後、溶液は、銅チオシアン酸塩500pbw、3pbwのチタンIV2プロパノレート、トリ(ジオクチル)ベンゼンサルフォネート−O(化合物B)、30pbwの銅ピリチオンと混合され、一晩中ミルされ、最後に、50pbwの松脂ww、30pbwの250μmの長さに細断された炭素繊維、およびさらに、160pbwのブチルアセテートを混合する。
【0058】
汚れ止め特性の評価
このようにして得られた塗料は、それを、ビニール樹脂/タールの耐腐食塗料を介してプラークの上に、乾燥した360〜400μmの厚みのフィルムに塗布し、それを、ドイツのハンブルグのライヘルシュティーグ港の筏から沈めることによって、汚れ止め作用のテストを行なった。36ヶ月沈めたまま放置した後も例2の塗料が塗布されたプラークには、海草も動物の汚れも観察できず、藻類のヘドロも実際存在しなかった。
【0059】
例3
塗料準備:100pbwのアルデヒド樹脂Aが100pbwのブチルアセテートに溶かされ、200pbwの50%溶液を得る。この溶液に、7pbwのアルミニウムジ(2級−ブトキシド)アセト酢酸エチルエステルキレート(化合物A)、20pbwのリン酸トリクレシル、6pbwのチタンIV2プロパノレート、トリ(ジオクチル)ベンゼンサルフォネート−O(化合物B)を加え、溶液は1時間攪拌される。その後、溶液は、350pbwのジ酸化銅Cu2O、それに、150pbwの炭酸カルシウムCAS番号1317−65−3、および30pbwの銅ピリチオンと混合され、一晩中ミルされ、最後に、60pbwのカルシウムロジネートおよび30pbwの250μmの長さに細断された炭素繊維、およびさらに、150pbwのブチルアセテートを混合する。
【0060】
汚れ止め特性の評価
このようにして得られた塗料は、それを、ビニール樹脂/タールの耐腐食塗料を介してプラークの上に、乾燥した360〜400μmの厚みのフィルムに塗布し、それを、ドイツのハンブルグのライヘルシュティーグ港の筏から沈めることによって、汚れ止め作用のテストを行なった。36ヶ月沈めたまま放置した後も例3の塗料が塗布されたプラークには、海草も動物の汚れも観察できず、藻類のヘドロも実際存在しなかった。
【0061】
例4〜12
汚れ止め被膜成分の生産例は表1(各要素の量は重量部である)に規定された構成にしたがって、例1から3と同様に形成される。
【0062】
表1において、ポリメチルアクリレートは、平均分子量が4000のアクリルアミドメチルエステルである。アルミニウムキレート1は、アルミニウムジ−(イソプロポキシ)アセト酢酸エチルエステルキレートである。アルミニウムキレート2は、アルミニウムジ−(2級ブトキシド)アセト酢酸エチルエステルキレートである。チタン化合物1は、チタンIV 2−プロパノレート、トリ(ジオクチル)フォスファト−Oである。チタン化合物2は、チタンIV 2−プロパノレート、トリイソオクタデカノエート−Oである。チタン化合物3は、チタンIV 2−プロパノレート、トリ(ジオクチル)ピロフォスファト−Oである。チタン化合物4は、チタンIV 2−プロパノレート、トリ(ジオクチル)ベンゼンスルファネート−Oである。チタン化合物5は、チタンIV 2−ブタノレート、トリ(ジオクチル)フォスファト−Oである。チタン化合物6は、チタンIV 2−ブタノレート、トリイソオクタデカノエート−Oである。
【0063】
【表1】

【0064】
比較例D1
塗料準備:アルデヒド樹脂Aの101pbwを101pbwのブチルアセテートを溶かし、50%の水溶液を202pbw得る。その後、この溶液に対して、15pbwのリン酸トリクレシルと酸化亜鉛117pbw、69pbwの酸化鉄(赤)CAS番号1309−37−1、350pbwのジ酸化銅Cu2O、それに、30pbwの銅ピリチオンと混合され、一晩中ミルされ、最後に、65pbwのテルペンチン(77%固形物、ポルトガル原産)、3pbwのモンタンワックス、63pbwのアスベスチン、およびさらに、340pbwのブチルアセテート混合する。
【0065】
汚れ止め特性の評価
このようにして得られた塗料は、それを、ビニール樹脂/タールの耐腐食塗料を介してプラークの上に、乾燥した360〜400μmの厚みのフィルム塗布し、それを、ドイツのハンブルグのライヘルシュティーグ港の筏から沈めることによって、汚れ止め作用のテストを行なった。18ヶ月沈めたまま放置した後、例D1の塗料が塗布されたプラークには、その15%に藻、海草、動物の汚れが観察された。比較例D2からD7においては、汚れ止め塗料成分は、表2(各要素の量は重量部である)に規定されている構成にしたがって、比較例1と同様に形成した。
【0066】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化された汚れ止め塗料用のアルデヒド樹脂バインダであって、
a)アルデヒド樹脂100部に対して、以下の式(1)によって表わされるアルミニウムジ−2級アルコキシドアセト酢酸エステルキレート(化合物A)を2から20部と、
(R−O)−Al−(CH−CO−CH−CO−O−R)・・・(1)
ここで、Rは3から10の炭素原子を有する2級のアルキル基または環状アルキル基を表わし、Rは1から10の炭素原子を有するアルキル基または環状アルキル基を表わし、
b)アルデヒド樹脂100部に対して以下の式(2)で表わされるモノアルコキシ有機チタン酸塩−IV(化合物B)を0.5から8部と、
−O−Ti(−X) ・・・(2)
ここで、Rは、2から30の炭素原子を有する1価の有機族または、その置換可能派生物であり、上記式中のXは、独立して表されるアシル化グループ、スルホン酸残留物、ピロリン酸エステル残留物、リン酸残留物、または、その混合物を表わす、アルデヒド樹脂バインダ。
【請求項2】
前記繊維強化されたアルデヒド樹脂と前記添加化合物Aとの全量は、塗料または塗料ベースの組成の全重量に対して約15%から約45%の間である、請求項1に記載の塗料または、塗料ベース。
【請求項3】
前記繊維強化されたアルデヒド樹脂と前記添加化合物Bとの全量は、塗料または塗料ベースの組成の全重量に対して約15%から約45%の間である、請求項1に記載の塗料または、塗料ベース。
【請求項4】
多層の海用汚れ止め塗料または塗料ベースを提供する方法であって、繊維強化されたアルデヒド樹脂をバインダとし、海水において少しずつ溶ける金属を含む色素を含むことを特徴とし、
前記方法は、
(a)前記アルミニウムジ−2級アルコキシドアセト酢酸エステルキレート(化合物A)を加えるステップと、その後、
(b)塗料または塗料ベースを提供するために、前記アルデヒド樹脂に対してモノアルコキシ有機チタン酸塩−IV(化合物B、請求項1で規定したもの)を加えるステップとを含み、
塗料または塗料ベースの全重量に対して、前記添加化合物Aは、約0.4から約4%存在し、請求項1で規定された前記添加化合物Bは約0.2から約2%存在し、前記添加化合物Aおよび添加化合物Bの全量は、約0.5から約5%の間である、方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)とステップ(b)とは同時に行なわれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項4によって準備されたバインダを含む汚れ止め被膜成分であって、
顔料、凝結阻止剤、可塑剤、溶剤、殺生剤、繊維、安定剤、およびフィルム消費調整剤からなる群から、1以上の補助添加剤が選択される、汚れ止め被膜成分。


【公表番号】特表2006−516667(P2006−516667A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501734(P2006−501734)
【出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001032
【国際公開番号】WO2004/069940
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505294975)ケミカル インベストメンツ エルティーディー. (1)
【Fターム(参考)】