説明

汚染土の浄化方法

【課題】必要以上に土壌を掘削することなく微生物の生息環境を改善し、汚染土の浄化処理を促進させることができる汚染土の浄化方法を提供する。
【解決手段】汚染物質に汚染された汚染土Aの浄化方法であって、汚染土Aを粗粒分B及び細粒分Cに分級する分級工程2と、粗粒分B及び細粒分Cの比率を分級前の汚染土Aから変えて混合し調製土Dを調製する調製工程4と、調製土Dに栄養塩を供給して調製土Dを微生物処理する処理工程5とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油等の汚染物質で汚染された汚染土の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば油等の汚染物質を含有する汚染土の浄化方法の一つとして、微生物に汚染物質を分解させて汚染土を浄化処理する微生物処理がある。微生物処理は、他の工法に比べて処理速度こそ遅いものの、環境負荷が低く、二次処理が不要であり、施工コストが安い等のメリットがある。しかし、例えば汚染濃度が高い細粒の汚染土を対象とした場合、通水性及び通気性が悪く、また添加した栄養塩が汚染土中に行き渡り難いため、微生物が活性化し難く浄化処理が期待通りに進行しない恐れがある。
【0003】
そこで、まず処理すべき汚染土を掘削して仮置きしておき、この汚染土が存在していた敷地内の別の箇所で掘削した砂質土を汚染土に混合する工法が提唱されている(特許文献1等参照)。この工法は、処理対象の汚染土中のものと同種の微生物の生息が期待される砂質土を混ぜることで、汚染土中の微生物数の増加とともに、汚染土の通気性や通水性の改善を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−311257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の工法の場合、現場の汚染拡散の度合いによっては広範囲に土壌を掘削する必要がある。この場合、大量の汚染土に混ぜる相応量の砂質土を別途掘削する必要があり、全体で見れば膨大な量の土砂を掘削する必要があり多大な労力を要する。また、汚染拡散の度合いのみならず、敷地面積や地盤構造も現場によって様々であるため、十分量の砂質土が同一敷地内で調達できるとは必ずしも限らない。
【0006】
本発明はこうした事情に鑑みてなされたものであり、必要以上に土壌を掘削することなく微生物の生息環境を改善し、汚染土の浄化処理を促進させることができる汚染土の浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、汚染物質に汚染された汚染土の浄化方法であって、前記汚染土を粗粒分及び細粒分に分級する分級工程と、前記粗粒分及び前記細粒分の比率を分級前の汚染土から変えて混合し調製土を調製する調製工程と、前記調製土に栄養塩を供給して当該調製土を微生物処理する処理工程と
を有することを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、汚染物質に汚染された汚染土の浄化方法であって、前記汚染土を粗粒分及び細粒分に分級する分級工程と、前記粗粒分及び前記細粒分の汚染濃度を分析する分析工程と、汚染濃度の分析結果を基に前記粗粒分及び前記細粒分の比率を分級前の汚染土から変えて混合し、予め定めた汚染濃度の調製土を調製する調製工程と、前記調製土に栄養塩を供給して当該調製土を微生物処理する処理工程とを有することを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、分級前に汚染土を洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、前記調製土の汚染濃度が予め定めた基準値を下回るまで養生する養生工程をさらに有するとともに、前記調製工程において前記粗粒分の全部に対して前記細粒分の一部を混合する第1−第3のいずれかの発明であって、前記調製工程、前記処理工程及び前記養生工程を複数回繰り返すことを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、前記調製土の汚染濃度が予め定めた基準値を下回るまで養生する養生工程をさらに有するとともに、前記調製工程において前記細粒分の全部に対して前記粗粒分の一部を混合する第1−第3のいずれかの発明であって、前記調製工程、前記処理工程及び前記養生工程を複数回繰り返すことを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、前記調製土の汚染濃度が予め定めた基準値を下回るまで養生する養生工程をさらに有するとともに、前記調製工程において前記粗粒分の一部と前記細粒分の一部とを混合する第1−第3のいずれかの発明であって、前記調製工程、前記処理工程及び前記養生工程を複数回繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、必要以上に土壌を掘削することなく微生物の生息環境を改善し、汚染土の浄化処理を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る汚染土の浄化方法のフローを模式的に表した図である。
【図2】本発明の実施例1に係る汚染土の浄化方法のフローを模式的に表した図である。
【図3】本発明の実施例2に係る汚染土の浄化方法のフローを模式的に表した図である。
【図4】本発明の実施例3に係る汚染土の浄化方法のフローを模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る汚染土の浄化方法のフローを模式的に表した図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る汚染土の浄化方法は、汚染土Aを洗浄する洗浄工程1と、洗浄された汚染土Aを粗粒分B及び細粒分Cに分級する分級工程2と、粗粒分B及び細粒分Cの汚染濃度をそれぞれ分析する分析工程3と、細粒分B及び粗粒分Cを混合して好適な汚染濃度の汚染土Dを調製する調製工程4と、調製土Dに栄養塩を供給して調製土Dを微生物処理する処理工程5とを有している。なお、本実施形態の浄化方法は、汚染物質として油を含有する油汚染土のほか、微生物により浄化され得る重金属その他の汚染物質を含有する汚染土等にも適用可能である。
【0018】
洗浄工程1では、洗浄装置(例えばドラム式撹拌機)を用いて汚染土Aを洗浄し、スラリー化する。そして、分級装置(例えばサイクロン分級機)を用いてスラリー化した汚染土Aを粗粒分Bと細粒分Cに分級する。ここで言う「粗粒分」とは細粒分に比して粒径の大きく汚染濃度が低い汚染土、「細粒分」とは粗粒分に比して粒径の小さく汚染濃度が高い汚染土である。これら粗粒分と細粒分の境界となる粒径は分級方法や汚染土Aの汚染の程度等にもよるので必ずしも限定されないが、例えば75μm程度が選別粒度の一例として挙げられる。
【0019】
ここで、分級工程2の前に洗浄工程1を置くことは、分級工程2において汚染土Aを粗粒分B及び細粒分Cに効率良く分級する上で有効である。但し、本発明の本質的効果を得る限りにおいて洗浄工程1は必ずしも必要な工程ではなく、汚染土の性状等によって分級前のスラリー化が不要な場合には、洗浄工程1は省略され得る。例えば、洗浄工程1を経ることなく、振動篩等の分級装置によって汚染土Aを乾式分級することもあり得る。また、湿式振動篩等を用いて汚染土Aを湿式分級する場合には、汚染土Aを粗粒分B及び細粒分Cに分級する際に汚染土Aの洗浄効果が併せて得られる。このように、洗浄工程1と分級工程2が同時に行われる場合もある。
【0020】
分析工程3では、例えばIR法(赤外分光法:infrared spectroscopy)等の適宜の測定方法によって粗粒分B及び細粒分Cの汚染物質濃度をそれぞれ測定し、後の調製工程4で粗粒分Bと細粒分Cをどの程度の比率で再混合すれば、微生物処理に供するのに好適な汚染濃度の調製土Dが得られるかを分析する。微生物処理に供する調製土Dの汚染濃度の好適値は予め定めておいた値であり、後で説明する実施例では、汚染物質として油を含有した汚染土を対象とした場合、汚染土1kg当たり10gの汚染物質(10,000mg/kg)を好適値とした場合を例に挙げているが、これは一例であって好適値はこれに限定されない。この好適値には、経験的に得られた値、文献等に基づく値、理論値等を用いることができる。以下、単に「好適値」と記載した場合には、ここで説明した“予め定めた微生物処理に好適な汚染濃度の値”を言うこととする。
【0021】
なお、汚染土Aの汚染濃度が好適値と大差ない場合等、調製土Dの汚染濃度を厳密に管理する必要性が低い場合には、分析工程3を省略する場合もあり得る。
【0022】
調製工程4では、汚染濃度の分析結果を基に細粒分B及び粗粒分Cの比率を分級前の汚染土Aから変えて混合し、好適な汚染濃度の汚染土Dを調製する。この工程における細粒分B及び粗粒分Cの混合の方法は限定されず、例えば油圧ショベル等を用いて粗粒分Bと細粒分Cとを混合する方法もあるし、撹拌翼を有するパドルミキサを備えた混合装置、高速回転する打撃子を備えた混合装置、ロータリミキサのようなドラム式の混合装置等、適宜の混合装置で粗粒分Bと細粒分Cとを混合する方法もある。油圧ショベルを用いる場合には、別途混合装置を用意することなく、掘削作業に用いる油圧ショベルで兼用できるメリットがある。他方、混合装置を用いる場合には、粗粒分Bと細粒分Cとをより均一に混合する上で有利である。
【0023】
処理工程5では、調製工程4で調製した調製土Dに栄養塩(例えば、窒素やリン等)を供給して調製土D中の微生物を活性化させ、微生物処理の促進を図る。栄養塩を供給するにあたっては、例えば調製土Dに栄養塩を添加して油圧ショベルや混合装置等で混合し、栄養塩を調製土D中に均一に行き渡らせることが好ましい。栄養塩の供給及び混合については、調製工程4とは別に行っても良いが、例えば粗粒分Bと細粒分Cとを混合する際に併せて栄養塩を供給すれば、調製土Dの調製工程4と同時に行うこともできる。また、この処理工程5では、例えば調製土D中の微生物が好気性である場合等、微生物の種類によって望ましければ、栄養塩の他、空気を調製土Dに供給する場合もある。この場合、油圧ショベルや混合装置を用いた混合によっても調製土D中に空気が取り込まれ得るが、コンプレッサやエアボンベ等に接続したパイプを調製土D中に挿し込んで、パイプにより調製土D中に積極的に空気を供給することもできる。
【0024】
この処理工程5で栄養塩等を混合し、養生後、汚染濃度が基準値以下に低下した際、処理すべき粗粒分Bや細粒分Cがまだ残っていれば、処理すべき粗粒分Bや細粒分Cを当該処理土に混合し、その調製土Dを再度処理工程5に供する。すなわち、調製工程4と処理工程5を繰り返し行う。ここで言う汚染濃度の「基準値」とは、細粒分や粗粒分を複数回に分けて混合する場合、処理工程5を経た処理土の汚染濃度がこの値以下に低下していれば、次回の調製工程4で処理土をベースにして調製される調製土Dの汚染濃度が上記の好適値を超えないという値である。以下、単に「基準値」と記載した場合には、ここで説明した“次の調製工程4に供した場合に前述した好適値以下の汚染濃度の調整土が得られる処理土の汚染濃度”を言うこととする。処理工程5を施行した時点で処理すべき粗粒分Bや細粒分Cが他にない場合には、汚染濃度を測定し一定の値(埋め戻しが許容される値)まで汚染濃度が低下したことを必要に応じて確認した上で、処理土を埋め戻し土Eとして、掘削箇所又はその他の埋め戻し箇所に埋め戻す。
【0025】
なお、埋め戻し後も微生物処理は継続的に進行し得る。また、必要であれば、埋め戻した箇所に栄養塩を撒いたり空気を供給したりして、その後の微生物処理の促進を図ることもできる。
【0026】
本実施形態によれば、例えば汚染土Aの汚染濃度が高くそのままでは微生物処理に適さない場合であっても、一旦粗粒分Bと細粒分Cに分級した後、元の汚染土Aとは比率を変えて粗粒分Bと細粒分Cを再混合することで、微生物処理に好適な汚染濃度の調製土Dを調製することができる。また、例えば粗粒分Bの汚染濃度がそのまま埋め戻しても構わない程度に低く、細粒分Cのみに浄化処理の必要性があるような場合にも、細粒分Cに粗粒分Bを再混合する(粗粒分Bを一部調製材料として利用する)ことで細粒分Cを微生物処理に適当な汚染濃度の調製土Dに調製することができる。この場合、粗粒分Bは全量処理しても良いし、場合によって余剰分をそのまま埋め戻し土Eとすることもあり得る。
【0027】
加えて、汚染土Aのまま、或いは分級後の細粒分Cのみでは、通気性や通水性が悪く空気や水分もしくは供給した栄養塩が微生物に行き渡り難い場合でも、汚染土Aを分級して細粒分Cに粗粒分Bを混合し、汚染土Aのときとは組成の異なる調整土Dを調製することによって、微生物処理に供する土砂の通気性及び通水性を改善することができる。これにより、空気や栄養塩等が調製土D内の微生物に行き渡り易くなり、微生物の活性化によって処理速度を向上させることができる。
【0028】
さらには、分級・再混合の工程2,4を経ることによって、浄化目的で掘削した汚染土Aを、何も足すことなく微生物処理に適した汚染濃度、通気性及び通水性の調製土Dに調製するので、敷地内の他の箇所や別の現場から非汚染の砂質土等を掘削してきたり購入してきたりする必要がない。したがって、処理対象の汚染土以外に必要以上に土砂を掘削する必要がなく、調製土Dの調製のために掘削作業の労力が増大することもない。また、非汚染の砂質土等を混合しないので、基本的に掘削した汚染土Aの重量以上に処理量が増加することもない。本実施形態の浄化方法は、浄化対象以外の土砂をあまり掘削することができない現場にも適用可能である。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、必要以上に土壌を掘削することなく微生物の生息環境を改善し、汚染土の浄化処理を促進させることができる。
【0030】
また、調製工程4に先駆けて分析工程3で粗粒分B及び細粒分Cの汚染濃度を分析することにより、微生物処理に好適な汚染濃度の調製土Dを調製するための粗粒分B及び細粒分Cの混合比率を精度良く求めることができる。したがって、分析工程3を置いた場合には、工程全体の信頼性をより向上させることができる。
【0031】
また、分級工程2の前に洗浄工程1を置いた場合には、洗浄工程1によって汚染土Aの汚染濃度を低下させる他、汚染土Aをスラリー化することによって、分級工程2における分級効率向上の効果も期待できる。
【0032】
さらに、汚染土Aや細粒分Cの汚染濃度、粗粒分Bや細粒分Cの処理量によって、粗粒分B、細粒分Cを1回の調製工程4で混合しきれない場合でも、処理工程5の後に適宜養生工程を経て、残りの粗粒分B又は細粒分Cを追って混合し、調製工程4及び処理工程5を複数回繰り返すことで、結果として処理対象の全量を処理することができる。
【0033】
以下に実施例を幾つか説明する。
【実施例1】
【0034】
図2は本発明の実施例1に係る汚染土の浄化方法のフローを模式的に表した図である。
【0035】
本実施例は、例えば、高濃度の汚染土を浄化対象とする場合に適している。ここでは、例えば50,000mg/kgの油汚染濃度の汚染土を浄化対象とし、分級工程を経て細粒分の油分濃度が極めて高くなる場合を例に挙げて説明する。
【0036】
図2に示すように、実施例1の浄化方法は、汚染土Aを解砕し洗浄する洗浄工程1と、スラリー化した汚染土Aを粗粒分Bと細粒分Cに分級する分級工程2と、粗粒分B及び細粒分Cの油分濃度を分析する分析工程3と、微生物処理に適当な好適値(例えば10,000mg/kg)以下の汚染濃度の調製土Dが得られるように油分濃度に応じて細粒分Cの一部を粗粒分Bの全量に混合する調製工程4Aと、調製土Dに空気と栄養塩を供給して微生物処理を行う処理工程5とを有する。
【0037】
例えば、まず洗浄工程1としてドラム式撹拌機等を用いて汚染土Aを洗浄しスラリー化し、分級工程2としてサイクロン分級機等を用いて75μm以上の粗粒分Bと75μm未満の細粒分Cに分級した後、粗粒分Bと細粒分Cの油分濃度をIR法で分析し、全量の粗粒分Bに対して混合して好適濃度の調製土Dを得るための細粒分Cの混合量を決定する。そして処理工程5では、調製土D敷をき広げ、定期的に窒素やリン等の栄養塩を供給し、油圧ショベルで調製土Dを撹拌して空気を供給(ランドファーミング)する。あるいは微生物処理タンク等に調製土Dを入れて空気や栄養塩を供給しても良い。
【0038】
本実施例では、処理工程5後の調製土D(処理土)の汚染濃度が予め定めた基準値を下回るまで処理土を養生する養生工程6をさらに有している。1回目の調製工程4Aにおいて細粒分Cの全量を混合しないので、処理工程5及び養生工程6を経て調製工程4Aに戻り、処理土に残りの一部の細粒分Cを混合して調製土Dを再び調製する。すなわち、細粒分Cが無くなるまで、調製工程4A、処理工程5、養生工程6を複数回繰り返し、細粒分Cを全量処理することとしている。
【0039】
ここで、調製工程4Aの後、まだ細粒分Cの残量がある場合に、養生工程6を経て次に細粒分Cを投入する際の処理土の汚染濃度の基準値の設定の一例を次のモデルケースで検討した。
【0040】
まず、含水率5.7%の土砂100gに5gの油を混合しておよそ50,000mg/kgの模擬汚染土をラボスケールで作製した。続いて、作製した模擬汚染土を500mLの蒸留水に浸漬し、薬さじで撹拌した後、75μmの篩で分級した。そして、分級した細粒分と粗粒分を乾燥させ、それぞれ重量を計測するとともにIR法で油分濃度の分析を行った。この測定の結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1より、粗粒分と比較して細粒分の油分濃度は極めて高く、微生物処理には適さない土壌環境であることが分かる。そこで、微生物処理に適当な油分濃度(好適値)を10,000mg/kg、粗粒分全量(86.7g)に混合して10,000mg/kgの調製土を得るための細粒分の重量をX[g]とすると、Xについて以下の式(1)が成立する。
【0043】
2,645×86.7+195,146×X=10,000×(86.7+X)・・・(式1)
この(式1)を解くと、X=3.4となるので、粗粒分全量に3.4gの細粒分を混合すれば、10,000mg/kgの調製土が得られることになる。したがって、細粒分7.7gを、1回目3.4g、2回目3.4g、3回目0.9gと3回に分けて混合することによって、細粒分を全量処理することができる。また、このケースでは、細粒分の混合重量が3.4gを超えなければ良いので、例えば約2.6gずつ等分に3回に分けて細粒分を混合することとしても良い。なお、厳密に毎回の混合の度にXの値を算出すれば、細粒分の混合回数が増すことによって処理土の重量が増加するためXの値は回を追う毎に僅かずつ増加する。したがって、細粒分が多い場合には、調製工程4Aの度に細粒分の混合量を僅かずつ増やしていって処理の効率化を図ることもできる。
【0044】
ここで、2回目に3.4gの細粒分を処理土に混合した場合に得られる調製土の汚染濃度が上記の好適値(10,000mg/kg)となるためには、処理土の汚染濃度がどの程度低下するまで養生すれば良いか、処理土の汚染濃度の基準値について決定する。この場合、処理土の汚染濃度の基準値をY[mg/kg]とすると、以下の(式2)が成立する。
【0045】
Y×(86.7+3.4)+195,146×3.4=10,000×(86.7+3.4)・・・(式2)
この(式2)を解くと、Y=3,013となるので、1回目の処理工程5、養生工程6を経た処理土の残存油分濃度が3,013mg/kgを下回ってから2回目の細粒分の混合を行うことで、微生物処理に適当な油分濃度(10,000mg/kg以下)を維持することができる。
【0046】
なお、3回目に細粒分を混合する場合も処理の汚染濃度に同じ基準値を設定すれば、混合後の調製土の汚染濃度が好適値を超えることはない。しかし、3回目に混合する細粒分の重量は0.9gと1,2回目の混合量に比して少量であるため、上記と同様に算出すれば、3回目の細粒分を混合する際の処理土の汚染濃度の基準値は上記Y(=3,013mg/kg)よりも高くなることは言うまでもない。また、混合する細粒分の重量が同じでも細粒分の混合回数が増えるにつれて調製土の重量が増すため、同様にその都度基準値を算出すれば、徐々に基準値は高くなっていく。したがって、混合回毎の基準値を厳密に計算すれば、回を追う毎に養生工程6は僅かずつ短縮され、全体の処理期間も短縮される。
【実施例2】
【0047】
図3は本発明の実施例2に係る汚染土の浄化方法のフローを模式的に表した図である。
【0048】
本実施例の汚染土の浄化方法は、例えば、比較的汚染濃度の低い汚染土(油汚染土であれば、例えば50,000mg/kg以下)を処理対象とする場合に適している。分級した結果、大量の粗粒分Bが得られた場合にも適用され得る。本実施例の一連の工程は、調製工程4Bにおいて細粒分Cの全部に対して粗粒分Bの一部を混合する点を除き、実施例1の浄化方法とほぼ同じである。
【0049】
すなわち、図3に示すように、実施例2の汚染土の浄化方法は、汚染土Aを解砕し洗浄する洗浄工程1と、スラリー化した汚染土Aを粗粒分Bと細粒分Cに分級する分級工程2と、粗粒分B及び細粒分Cの汚染濃度を分析する分析工程3と、汚染濃度に応じて細粒分Cの全量に粗粒分Bの一部を混合する調製工程4Bと、調製土Dに空気と栄養塩を供給して微生物処理を行う処理工程5とを有している。加えて、1回目の調製工程4Bにおいて粗粒分Bの全量を混合しないので、処理工程5後の調製土D(処理土)の汚染濃度が予め定めた基準値を下回るまで処理土を養生する養生工程6をさらに有しており、調製工程4B、処理工程5、養生工程6を複数回繰り返し、細粒分Cを全量処理することとしている。また、粗粒分Bの汚染濃度が十分に低い場合には、細粒分Cの全量の処理が必要十分に進行した時点で未混合の残りの粗粒分Bは、調製工程4B及び処理工程5を介さず、埋め戻し土Eに混合して埋め戻す場合もあり得る。
【0050】
その他の点は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0051】
図4は本発明の実施例3に係る汚染土の浄化方法のフローを模式的に表した図である。
【0052】
本実施例の汚染土の浄化方法は、汚染土Aの汚染濃度に関わらず、敷地面積が狭く、例えばランドファーミングをするだけの場所を確保できない条件下において大量の汚染土Aが存在するような場合に好適な例である。本実施例の一連の工程は、調製工程4Cにおいて粗粒分Bと細粒分Cを互いに一部ずつ混合する点を除き、実施例1の浄化方法とほぼ同じである。
【0053】
すなわち、図4に示すように、実施例3の汚染土の浄化方法は、汚染土Aを解砕し洗浄する洗浄工程1と、スラリー化した汚染土Aを粗粒分Bと細粒分Cに分級する分級工程2と、粗粒分B及び細粒分Cの汚染濃度を分析する分析工程3と、汚染濃度に応じて粗粒分Bの一部と細粒分Cの一部とを混合する調製工程4Cと、調製土Dに空気と栄養塩を供給して微生物処理を行う処理工程5とを有している。加えて、1回目の調製工程4Cにおいて粗粒分B、細粒分Cとも全量を混合しないので、処理工程5後の調製土D(処理土)の汚染濃度が予め定めた基準値を下回るまで処理土を養生する養生工程6をさらに有しており、調製工程4C、処理工程5及び養生工程6を複数回繰り返し、粗粒分B及び細粒分Cを全量処理することとしている。また、粗粒分Bの汚染濃度が十分に低い場合には、細粒分Cの全量の処理が必要十分に進行した時点で未混合の残りの粗粒分Bは、調製工程4C及び処理工程5を介さず、埋め戻し土Eに混合して埋め戻す場合もあり得る。
【0054】
その他の点は実施例1と同様である。
【符号の説明】
【0055】
1 洗浄工程
2 分級工程
3 分析工程
4,4A−C 調製工程
5 処理工程
6 養生工程
A 汚染土
B 粗粒分
C 細粒分
D 調製土
E 埋め戻し土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質に汚染された汚染土の浄化方法であって、
前記汚染土を粗粒分及び細粒分に分級する分級工程と、
前記粗粒分及び前記細粒分の比率を分級前の汚染土から変えて混合し調製土を調製する調製工程と、
前記調製土に栄養塩を供給して当該調製土を微生物処理する処理工程と
を有することを特徴とする汚染土の浄化方法。
【請求項2】
汚染物質に汚染された汚染土の浄化方法であって、
前記汚染土を粗粒分及び細粒分に分級する分級工程と、
前記粗粒分及び前記細粒分の汚染濃度を分析する分析工程と、
汚染濃度の分析結果を基に前記粗粒分及び前記細粒分の比率を分級前の汚染土から変えて混合し、予め定めた汚染濃度の調製土を調製する調製工程と、
前記調製土に栄養塩を供給して当該調製土を微生物処理する処理工程と
を有することを特徴とする汚染土の浄化方法。
【請求項3】
請求項1又は2の汚染土の浄化方法において、分級前に汚染土を洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする汚染土の浄化方法。
【請求項4】
前記調製土の汚染濃度が予め定めた基準値を下回るまで養生する養生工程をさらに有するとともに、前記調製工程において前記粗粒分の全部に対して前記細粒分の一部を混合する請求項1−3のいずれかの汚染土の浄化方法であって、
前記調製工程、前記処理工程及び前記養生工程を複数回繰り返すことを特徴とする汚染土の浄化方法。
【請求項5】
前記調製土の汚染濃度が予め定めた基準値を下回るまで養生する養生工程をさらに有するとともに、前記調製工程において前記細粒分の全部に対して前記粗粒分の一部を混合する請求項1−3のいずれかの汚染土の浄化方法であって、
前記調製工程、前記処理工程及び前記養生工程を複数回繰り返すことを特徴とする汚染土の浄化方法。
【請求項6】
前記調製土の汚染濃度が予め定めた基準値を下回るまで養生する養生工程をさらに有するとともに、前記調製工程において前記粗粒分の一部と前記細粒分の一部とを混合する請求項1−3のいずれかの汚染土の浄化方法であって、
前記調製工程、前記処理工程及び前記養生工程を複数回繰り返すことを特徴とする汚染土の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−98319(P2011−98319A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256101(P2009−256101)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】