説明

汚染土壌および汚染地下水の浄化方法

【課題】小規模で浄化工法後の後処理がほとんど不要であり、かつ効率のよい浄化ができる汚染土壌および汚染地下水の浄化方法を得る。
【解決手段】化学物質で汚染された土壌に井戸1を穿孔し、浄化材7を筒状容器内に収容してなる浄化器具9を井戸1の地下水内に設置し、浄化材7に井戸内の地下水を強制的に通水させる。浄化器具9は、浄化材7を収容する筒状容器11と、筒状容器11に設けられて該筒状容器内の浄化材7に地下水を強制的に通水するポンプ15を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学物質に汚染された土壌および地下水を浄化する汚染土壌および汚染地下水の浄化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学物質、例えば有機ハロゲン化合物は、優れた溶解力を持つ脱脂溶剤として、半導体製造業、金属加工業、クリーニング業などで広く使用されてきたが、使用後に工場などから排出され或いは投棄された有機ハロゲン化合物による土壌或いは地下水の汚染が社会的に深刻な問題となっている。
このような状況において、有機ハロゲン化合物に汚染された土壌或いは地下水の浄化方法について種々の提案が行われている。
【0003】
例えば、特許第3753644号(特許文献1)では土壌にボーリング孔を窄孔し、圧縮空気および鉄粉を吹き込み地下でフラクチャ-を発生させることで鉄粉を分散させ、鉄粉分散層を地下水と接触させることにより有機ハロゲン化合物を無害化する方法が開示されている。
【0004】
また、特開2005−161124号公報(特許文献2)には、浄化対象とする汚染領域(例えば、工場敷地)を高遮水性鋼矢板で囲い、敷地外からの汚染水の流入および敷地外への汚染水の流出を遮断し、次に、浄化機能材をその内部に充填し、かつ先端部に汚染水の流入する開口部を有する少なくとも1本以上の鋼管を地中に設置し、所定時間放置後、鋼管内部で汚染水を滞留させて浄化水とし、前記浄化水を、前記少なくとも1本以上の鋼管に接続したポンプで汲み上げ、その後、前記浄化水を前記汚染領域の地表面に散布する汚染地下水の浄化方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3753644号
【特許文献2】特開2005−161124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の方法は、土壌中或いは地下水中に鉄粉を混合させて有機ハロゲン化合物を分解・浄化する方法であり、混合した鉄粉は有機ハロゲン化合物を分解無害化した後も土壌又は地下水にそのまま放置するため放置された鉄粉による環境への影響が懸念される。
また、土壌と鉄粉の混合により地盤が攪乱され地盤強度が低下するという問題もある。
さらに、鉄粉の土壌への混合または注入のために大型機械または大規模な設備を要するという問題がある。
【0007】
この点、特許文献2に記載の方法では、鋼管内に鉄粉などの浄化機能部材を充填する構造であり、特許文献1のように残留鉄粉による環境汚染の問題はない。
しかしながら、特許文献2に記載のものは、その実施形態に記載されているように内径が1.2mという大径の鋼管を用いるものであり、鋼管の設置が大掛かりな工事となる。また、汚染地下水の浄化が終了した後、鋼管を撤去した後の地盤の処理も大掛かりとなり、コストが掛かるという問題がある。
【0008】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、小規模で浄化工法後の後処理がほとんど不要であり、かつ効率のよい浄化ができる汚染土壌および汚染地下水の浄化方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る汚染土壌および汚染地下水の浄化方法は、化学物質で汚染された土壌に井戸を穿孔し、浄化材を容器内に収容してなる浄化器具を前記井戸の地下水内に設置し、前記浄化材に井戸内の地下水を強制的に通水させることを特徴とするものである。
なお、汚染物質である化学物質としては、例えばテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエチレン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロペンおよび四塩化炭素などの有機ハロゲンや、ヒ素、セレン、六価クロム、鉛、カドミウムなどの重金属類が挙げられる。
浄化材は、浄化対象となる汚染源の化学物質に対して浄化作用のあるものを選択すればよい。
【0010】
(2)また、化学物質で汚染された土壌に複数の井戸を穿孔し、浄化材を容器内に収容してなる浄化器具を前記複数の井戸のうち少なくとも一つの井戸の地下水内に設置し、前記浄化材に井戸内の地下水を強制的に通水させ、該通水させた地下水を前複数の井戸の他の井戸に移送することを特徴とするものである。
【0011】
(3)また、上記(1)または(2)に記載のものにおいて、浄化器具は、浄化材を収容する筒状容器と、該筒状容器に設けられて該筒状容器内の浄化材に地下水を強制的に通水するポンプとを備えてなることを特徴とするものである。
【0012】
(4)また、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のものにおいて、汚染源である化学物質が有機ハロゲン化合物の場合において、浄化材は、ステンレス鋼粉と鉄粉との混合粉を含み、混合粉におけるステンレス鋼粉の割合が0.5質量%〜50質量%であることを特徴とするものである。なお、鉄粉は純鉄粉である必要はない。
【0013】
(5)また、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のものにおいて、粒子径が0.1〜10mmの粒状の充填材を浄化材と共に容器に収容していることを特徴とするものである。
【0014】
(6)また、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のものにおいて、井戸の内径が40mm〜100mmであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、化学物質で汚染された土壌に井戸を穿孔し、浄化材を容器内に収容してなる浄化器具を前記井戸の地下水内に設置し、前記浄化材に井戸内の地下水を強制的に通水させるようにしたので、小径の井戸であっても浄化を効率的に行なうことができ、このことが小径の井戸での効率的な浄化作用を実現している。
したがって、本発明によれば、環境への負荷、地盤強度への影響が従来工法に比べて極めて低減でき、施工費用も大幅に削減できる。
また、浄化材を容器に収容しているので、汚染土壌および汚染地下水の浄化が終了した後は容器ごと回収することができ、浄化材を土壌内に残留させることによる環境への影響がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[実施の形態1]
図1は本発明の一実施の形態に係る汚染土壌および汚染地下水の浄化方法を説明する説明図である。図1に基づいて有機ハロゲン化合物で汚染された汚染土壌および汚染地下水の浄化方法を説明する。
【0017】
(1)有機ハロゲン化合物で汚染された土壌にボーリングマシンによって井戸1を穿孔する。穿孔する井戸1の径は、仕上げ径が40mm〜100mmとなるように、これらの径よりも若干大きめの径とする。
穿孔する井戸1の深さは、井戸1の底が遮水層3に到達する深さとする。井戸1の底が遮水層3に到達するようにすることにより、井戸内に地下水を滞留させることができる。
井戸1の穿孔が終了すると、地層の軟弱度等の地層状況に合わせて、井戸1の周囲にフィルタ・充填材5を充填する。フィルタ材としては、例えば珪砂を用いる。
なお、汚染物である有機ハロゲン化合物としては、例えばテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、ジクロロエチレン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロプロペンおよび四塩化炭素である。
【0018】
(2)次に浄化材7を充填した浄化器具9を井戸内に挿入して地下水内に浸漬する。浄化器具9を形成する容器としては、例えばアクリル製の筒状容器11を用いる。
浄化材7としては、浄化期間を短縮するためには有機ハロゲン化合物の分解速度が高い浄化材が好ましい。
有機ハロゲン化合物の分解速度が高い浄化材として、オーステナイト系SUS304やSUS316、フェライト系SUS430、マルテンサイト系SUS410などのステンレス鋼粉と鉄粉との混合粉が好ましく、特に混合粉におけるステンレス鋼粉の割合が0.5〜50質量%含有するものがより好ましく、さらにはステンレス鋼粉の割合が3〜20質量%含有するものがより好ましい。
ステンレス鋼粉の割合が0.5質量%未満では上記の分解速度はステンレス鋼粉を含有しない鉄と同程度になり分解反応は加速しない。
なお、ステンレス鋼粉の中でもオーステナイト系のステンレス鋼粉を混合粉として用いるのが、有機ハロゲン化合物の分解速度が特に高いので、より好ましい。
【0019】
上記の混合粉は、スチールショット(スチールグリットを含む)等を例えば、ステンレス鋼を含有する鋼材表面にブラストして、鋼材表面から剥離した鉄粉や研掃材の粉砕粉を集塵したショットブラストダストを用いることができる。スチールショットは鉄を主成分とするものであればよい。このショットブラストダストの粒径は、通常1〜250μm程度であり、平均粒径で20μm〜100μm程度である。
【0020】
上記のショットブラストダストは他のショットブラストダストあるいは鉄粉等と混合して用いることができる。混合する他のショットブラストダストの例としては普通鋼材、鉄鋳物等にスチールショットをブラストしたものが挙げられ、鉄粉の例としては、スチールショットの未使用品、その粉砕品、製造鉄粉等や鋼材切削粉、製鉄過程で発生する金属鉄を含有するダスト、スチールショット製造過程で発生するダスト等を挙げることができる。
【0021】
なお、亜鉛含有量の多いもの、例えば塗料の塗装鋼や亜鉛メッキ品をショットブラストした際のダストなどは亜鉛粉末を含有するため分解反応を大きく妨害するので好ましく、混合粉に含まれる亜鉛はその含有量が1質量%未満、好ましくは0.2質量%未満にすることが好ましい。
【0022】
混合粉を単体で収容すると通水性が悪くなるので、通水性を確保するために、粒子径が0.1〜10mmの粒状物からなる充填材を混合粉と共に筒状容器11に収容する。
充填材の種類は特に限定しないが、地下水の透水性に優れた中性から弱酸性の材料が好ましい。例えば、水処理のろ過材として使用されるアンスラサイト、ざくろ石、砂などで粒径は0.1〜10mm程度のものを用いる。
【0023】
筒状容器11の上下端面には浄化材7が筒状容器11から散逸しないようにするためのフィルタ13を設けてある。
筒状容器11の下端部には地下水を筒状容器内へ強制的に通水させる小型のポンプ15を取り付けてある。筒状容器11は水中に浸漬されているので揚程が必要なくポンプ15は小型のものでよい。
筒状容器11の井戸内における設置高さは、図1に示すように、汚染源の位置が想定できる場合には筒状容器11がその位置になるようにするのが好ましい。
筒状容器11は例えばワイヤ19などによって吊り下げて井戸内の所定の高さ位置に配置する。
【0024】
(3)浄化材7を充填した容器の設置が完了すると、ポンプ15を稼動する。ポンプ15を稼動することにより、地下水が筒状容器内の浄化材7に強制的に通水され、地下水が浄化材7に接触することにより、有機ハロゲン化合物が分解され、地下水の汚染濃度が低減する。
汚染濃度が低下した地下水は井戸1の周壁から滞水層へと透水し、新たな汚染水が井戸1に流れ込む。このような循環を繰り返すことにより、井戸1の周囲の汚染土壌及び地下水の浄化が行なわれる。
【0025】
汚染土壌及び地下水の汚染が低減して有機ハロゲン化合物の濃度が所定の値以下になると、浄化材7を収容した容器を井戸1から引き上げ、浄化を完了する。
【0026】
本実施の形態によれば、極めて小規模で簡易な構成で効果的な汚染土壌及び地下水の浄化が実現できる。
穿孔する井戸1の径が40mm〜100mmという極めて小径であり、穿孔による地盤への悪影響も極めて少ない。このような小径の井戸でありながら、効果的な浄化が実現できるのは、浄化材7に強制的に地下水を通水するようにしていること及び/又は強制的に通水した地下水を効率的に浄化する浄化材7の浄化能力の高さによるものである。
浄化材7に強制的に地下水を通水する手段として本実施の形態においては、筒状容器11の下端部に小型のポンプ15を設ける例を示したが、ポンプ15を設ける位置は特に限定されるものではなく、筒状容器11の上端側に設けてもよい。もっとも、ポンプ15を水中に配置することは、揚程が不要となり、小型のポンプを使用できるので、好ましい。
【0027】
なお、穿孔する井戸の数やその配置は浄化対象とする土壌の汚染度合いや広さによって適宜決定すればよい。
【0028】
[実施の形態2]
図2、図3は本実施の形態に係る汚染土壌および汚染地下水の浄化方法の説明図であり、図3は図2における矢視A−A断面図である。
本実施の形態に係る汚染土壌および汚染地下水の浄化方法は、実施の形態1で説明した浄化器具9を設置する井戸(以下本実施の形態において、「揚水井戸21」という)の周囲に、揚水井戸21から地下水を注水する複数の井戸(以下本実施の形態において、「注水井戸23」という)を穿孔し、揚水井戸21の浄化後の地下水を注水井戸23に移送するようにしたものである。
【0029】
本実施の形態においては、図3に示すように、筒状容器11の上端部に地下水を移送するためのホース連結部22を設け、このホース連結部22に連結したホース24によって注水井戸23に地下水を移送している。なお、本実施の形態のように、複数の注水井戸23に地下水を移送する場合には、連結部に注水井戸23の数だけの枝管を設けて、ホース24を連結する。
この例では、地下水を移送するためのポンプとして、筒状容器内へ地下水を通水させるポンプを共用しているが、移送用のポンプを別途設置するようにしてもよい。
【0030】
本実施の形態によれば、注水井戸23を設けた領域の土壌全体の浄化を効率よく行なうことができる。
なお、浄化対象となる領域が広い場合には、図2に示した揚水井戸21と注水井戸23の組合せのものを別途施工するようにすればよい。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
実施例1は実施の形態1の効果を確認するための実験例を示すものであり、図4はこの実験例を説明する図である。この実験例は、仕上口径5cmの井戸に浄化器具9を設置し、井戸内の有機ハロゲン化合物濃度(cis-1,2-DCE)を定期的に観測したものである。また、浄化器具9を設置した井戸(実施例において、「浄化井戸25」という。)の周囲に約1m離れた南北東に観測用の井戸A,B,Cを設け、この観測用の井戸内の有機ハロゲン化合物濃度も合わせて定期的に観測したものである。
【0032】
用いた浄化材は、普通鋼をショットブラストした時に発生する鋼粉(以下、「普通鋼粉」)にオーステナイト系SUS304をショットブラストした時に発生する鋼粉(以下、「ステンレス鋼粉」)を混合した混合粉を用いた。
また、浄化材と共に浄化器具9に充填する充填材としては、アンスラサイト(有効系:0.7mm)を用いた。
アンスラサイトと浄化材との割合は、アンスラサイト100重量部に対し、普通鋼粉にステンレス鋼粉5質量%混合した混合粉を20重量部とした。
【0033】
浄化器具9の筒状容器11としては、口径4cm、長さ1mの円筒アクリルパイプを用い、パイプ両端を径0.1mmのフィルタで塞ぎ浄化材がこぼれないようにした。
また、通水用のポンプは流量が5L/分の能力のものを用い、10秒運転し、100秒停止を繰り返した。
【0034】
観測結果を図5のグラフに示す。図5は縦軸がcis-1,2-DCEの濃度(mg/l)、横軸が経過日数を示している。
図5に示すように、浄化井戸25の有機ハロゲン化合物濃度は急激に減少している。また、浄化井戸25の上流側に位置する観測井戸A以外の観測井戸B,Cにおいても有機ハロゲン化合物濃度の減少が見られる。
【0035】
図5の結果から、実施の形態1で示したように、井戸内に浄化器具9を設置して浄化材7への通水を行なうことで、浄化井戸25及びその周辺の井戸での地下水を浄化できることが確認できた。
【0036】
[実施例2]
実施例2は実施の形態2の効果を確認するための実験例を示すものであり、図6はこの実験例を説明する図である。
本実験例では、浄化井戸25の上流側約1.5mに注水井戸23を設け、浄化井戸25で浄化材を通過した地下水を注水井戸23に移送するようにした。
そして、浄化井戸25の東西南北約1mの位置に観測井戸A,B,C,Dを設け、浄化井戸25、注水井戸23および観測井戸A,B,C,Dにおける有機ハロゲン化合物濃度(cis-1,2-DCE)を定期的に観測した。
【0037】
本実験例で用いた浄化器具は実施例1のものと同様のものである。また、用いたポンプの能力も実施例1のものと同じであり流量が5L/分のものである。ただし、ポンプの運転を、60秒運転し、300秒停止を繰り返す運転とした。
【0038】
観測結果を図7のグラフに示す。
図7に示すように、浄化井戸25および注水井戸23の有機ハロゲン化合物濃度は急激に減少している。また、観測井戸A,B,C,Dにおいても有機ハロゲン化合物濃度が急減に減少している。
【0039】
図7に示す結果から、実施の形態2で示したように、井戸内に浄化器具を設置して浄化材への通水を行なうと共に上流側に注水井戸23を設け、注水井戸23に浄化井戸25の浄化水を移送することで、浄化井戸25及びその周辺の井戸での地下水の浄化を効果的にできることが確認できた。
【0040】
[比較例]
比較例は実施の形態1、2の効果の顕著性を示すための実験例であり、図8はこの実験例を説明する図である。
本実験例は、浄化井戸25には実施例1、2と同じ浄化器具を設置するものの、ポンプによる通水を行なわない場合における浄化作用を確認するものである。
浄化井戸25の東西南北約1mの位置に観測井戸A,B,C,Dを設け、浄化井戸25および観測井戸A,B,C,Dにおける有機ハロゲン化合物濃度(cis-1,2-DCE)を定期的に観測した。
【0041】
観測結果を図9のグラフに示す。
図9に示すように、浄化井戸25の有機ハロゲン化合物濃度は急激に減少しているものの、観測井戸A,B,C,Dにおいては有機ハロゲン化合物濃度の減少は緩やかである。
【0042】
図9に示す結果から、実施の形態1、2で示したように、井戸内に浄化器具を設置して浄化材への通水を行なうことが汚染土壌及び汚染地下水の効率的な浄化に効果的であることが確認できた。
【0043】
もっとも、比較例で用いた浄化材は実施例1、2のものと同じであり、この浄化材が有機ハロゲン化合物の浄化に効果的であることは、比較例における浄化井戸25の有機ハロゲン化合物濃度の減少をみればわかる。
【0044】
なお、上記の実施の形態、実施例においては汚染源として有機ハロゲン化合物の例を挙げ、浄化材として鉄粉とステンレス鋼粉の混合粉を用いる場合について説明したが、汚染源が他の化学物質の場合には対象となる化学物質に対して浄化作用のある浄化材を用いればよい。
【0045】
例えば、ヒ素、セレン、六価クロム、鉛、カドミウムなどの重金属類には鉄粉を浄化材として用いることができる。これらの重金属類に対する鉄粉の浄化作用を概説すると以下の通りである。
鉄粉は水中で酸化され酸化鉄の皮膜が生成される。ヒ素は水中でAsO43-、AsO33-などの酸素酸イオンとして溶解しており、酸化鉄に共沈またはヒ酸鉄FeAsO4として鉄酸化皮膜上に捕捉される。
また、セレンは水中でSeO42-、SeO32-などの酸素酸イオンとして溶解し、六価のSeO42-は鉄の酸化により4価のSeO32-に還元され、4価の亜セレン酸イオンは酸化鉄に共沈捕捉される。
また、六価クロムは水中でCrO42-、Cr2O72-などの酸素酸として溶解し、鉄の酸化により3価に還元されCr(OH)3として沈殿分離される。
また、鉛やカドミウムも同様に酸化鉄皮膜上に共沈捕捉される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施の形態に係る汚染土壌および汚染地下水の浄化方法を説明する説明図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る汚染土壌および汚染地下水の浄化方法の説明図である。
【図3】図2における矢視A−A断面図である。
【図4】実施例1の説明図である。
【図5】実施例1の結果を示すグラフである。
【図6】実施例2の説明図である。
【図7】実施例2の結果を示すグラフである。
【図8】比較例の説明図である。
【図9】比較例の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1 井戸
3 遮水層
5 フィルタ・充填材
7 浄化材
9 浄化器具
11 筒状容器
15 ポンプ
21 揚水井戸
23 注水井戸
25 浄化井戸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学物質で汚染された土壌に井戸を穿孔し、浄化材を容器内に収容してなる浄化器具を前記井戸の地下水内に設置し、前記浄化材に井戸内の地下水を強制的に通水させることを特徴とする汚染土壌および汚染地下水の浄化方法。
【請求項2】
化学物質で汚染された土壌に複数の井戸を穿孔し、浄化材を容器内に収容してなる浄化器具を前記複数の井戸のうち少なくとも一つの井戸の地下水内に設置し、前記浄化材に井戸内の地下水を強制的に通水させ、該通水させた地下水を前複数の井戸の他の井戸に移送することを特徴とする汚染土壌および汚染地下水の浄化方法。
【請求項3】
浄化器具は、浄化材を収容する筒状容器と、該筒状容器に設けられて該筒状容器内の浄化材に地下水を強制的に通水するポンプとを備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の汚染土壌および汚染地下水の浄化方法。
【請求項4】
汚染源である化学物質が有機ハロゲン化合物の場合において、浄化材は、ステンレス鋼粉と鉄粉との混合粉を含み、混合粉におけるステンレス鋼粉の割合が0.5質量%〜50質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の汚染土壌および汚染地下水の浄化方法。
【請求項5】
粒子径が0.1〜10mmの粒状の充填材を浄化材と共に容器に収容していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の汚染土壌および汚染地下水の浄化方法。
【請求項6】
井戸の内径が40mm〜100mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の汚染土壌および汚染地下水の浄化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−50818(P2009−50818A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221920(P2007−221920)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000200301)JFEミネラル株式会社 (79)
【Fターム(参考)】