説明

汚染土壌の不溶化材

【課題】複合汚染土壌中の鉛、砒素及びフッ素の3種類の全ての不溶化処理法が具体的でない
【解決手段】課題に鑑み、鉛及び砒素の濃度が0.06mg/L以下で、フッ素の濃度が6.0mg/L以下の汚染土壌を対象とする不溶化材であって、石膏と、生石灰又はセメントと、高炉スラグ微粉末とを混合した主材と、該主材による土壌の強アルカリ化を抑止するpH調整材との2種類からなり、汚染土壌に対する主材の重量比率を5%以下とし、且つ石膏、生石灰又はセメント、高炉スラグ微粉末の配合比を1.5〜2.0:1.75〜2.25:1.0〜1.25とし、pH調整材は、硫酸第一鉄水溶液又は酢醸造残渣液として、汚染土壌に対する重量比率を25%以下とした不溶化材を汚染土壌に添加混合することによって、汚染土壌に含有されている少なくとも鉛、砒素及びフッ素の3種類を不溶化処理可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛、砒素及びフッ素に汚染された土壌に添加混合して、それら全ての溶出量を抑える様にした汚染土壌の不溶化材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重金属類等で汚染された土壌の処理方法としては、汚染土壌に不溶化材を添加混合して難溶化・固定化することで、汚染物質の溶出を抑制する「不溶化技術」があり、具体的には、掘削した汚染土壌に地上で不溶化材を添加混合したり、或いは汚染土壌に原位置で深層機械攪拌工法などによって不溶化材を混合・攪拌して、汚染物質を不溶化することが行なわれている。
【0003】
そして、上記不溶化材としては、セメント、消石灰、生石灰、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム及び炭酸マグネシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である主材と、鉄の硫酸塩であるpH調整材とを、主材、pH調整材の順に汚染土壌に添加混合することによって、汚染土壌中の重金属などを効果的に不溶化してその溶出を確実に防止出来る様にしたものが見受けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、鉛汚染土壌にセメントと硫酸第二鉄を順次添加混合する場合、先ず鉛汚染土壌にセメント粉末を添加混合すると、土壌中の酸性物質はセメントから生成する消石灰、アルカリ性塩である炭酸カルシウムにより中和されるために、セメントが混合された後の土壌はpH10以上になるが、pH11以上になると両性化合物である鉛化合物が溶出してくるので、硫酸第二鉄水溶液を添加して、鉛の不溶化に適正なpH7.0〜11.5、好ましくは8.5〜10.5に調整し、セメント混合土壌中のアルカリ性物質と反応して、水酸化第二鉄の沈殿を形成し、これが重金属の水酸化物などと共沈して鉛が不溶化されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−8854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1には、不溶化処理の対象として、汚染土壌中のカドミウム、鉛、全シアン、砒素、六価クロム、総水銀、セレン、ホウ素、フッ素、銅、亜鉛等が挙げられているが、具体的には、鉛、全シアン、砒素、六価クロム、セレンの1種類か、鉛及び砒素の2種類を対象としたものしか例示されていないため、複合汚染土壌中の少なくとも鉛、砒素及びフッ素の3種類の全てを不溶化処理可能するための具体例が明確でないなど、解決せねばならない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記従来技術に基づく、複合汚染土壌中の鉛、砒素及びフッ素の3種類の全ての不溶化処理法が具体的でない課題に鑑み、鉛及び砒素の濃度が0.06mg/L以下で、フッ素の濃度が6.0mg/L以下の汚染土壌を対象とする不溶化材であって、石膏と、生石灰又はセメントと、高炉スラグ微粉末とを混合した主材と、該主材による土壌の強アルカリ化を抑止するpH調整材との2種類からなり、汚染土壌に対する主材の重量比率を5%以下とし、且つ石膏、生石灰又はセメント、高炉スラグ微粉末の配合比を1.5〜2.0:1.75〜2.25:1.0〜1.25とし、pH調整材は、硫酸第一鉄水溶液又は酢醸造残渣液として、汚染土壌に対する重量比率を25%以下とした不溶化材を汚染土壌に添加混合することによって、汚染土壌に含有されている少なくとも鉛、砒素及びフッ素の3種類を不溶化処理可能にして、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
要するに本発明は、鉛及び砒素の溶出量が0.06mg/L以下で、フッ素の溶出量が6.0mg/L以下の汚染土壌を対象とする不溶化材であって、石膏と、生石灰又はセメントと、高炉スラグ微粉末とを混合した主材と、該主材による土壌の強アルカリ化を抑止するpH調整材との2種類からなっているので、かかる不溶化材を汚染土壌に添加混合すれば、含有されている鉛、砒素及びフッ素の溶出量を不溶化出来、又汚染土壌の処理に当っては、掘削した汚染土壌に地上で不溶化材を混入したり、汚染土壌に原位置で深層機械攪拌工法など従来の地盤改良技術等を用いることが可能であるため、低コストで汚染土壌の不溶化処理を実施することが出来、更に主材に高炉スラグ微粉末が含まれているので、その特性であるOH- などによる刺激作用によって水と反応し水和物を生成し、この水和生成物がスラグの粒間を埋める結合材となって凝結、固化が長期間にわたり進行し、この水和過程においてOH- を消費するため、セメントの欠点である長期間にわたるpH12を超える強アルカリ性を水硬性の進展と共に改善することが出来る。
又、汚染土壌に対する主材の重量比率を5%以下としたので、処理済土壌の過硬化を抑止することが出来、且つ石膏、生石灰又はセメント、高炉スラグ微粉末の配合比を1.5〜2.0:1.75〜2.25:1.0〜1.25としたので、固化機能の低下を抑止しつつ、強アルカリ化を抑止することが出来、pH調整材は、硫酸第一鉄水溶液又は酢醸造残渣液として、汚染土壌に対する重量比率を25%以下としたので、かかるpH調整材に水分が多く含まれているため、フッ素の不溶化を促進させることが出来る。
又、pH調整材を、汚染土壌に対する重量比が1.25〜5%の硫酸第一鉄の粉体を水で希釈して、汚染土壌に対する重量比が10〜25%の水溶液としたので、鉛、砒素及びフッ素の全ての溶出量の数値を環境基準値以下に抑えられれば良いのであって、各数値を各基準値より極端に低くする必要はなく、特に主材における高炉スラグ微粉末とpH調整材の添加量を可能な限り抑えつつ、鉛、砒素及びフッ素の全ての溶出量の数値を環境基準値以下に抑えることが出来る。
又、pH調整材酸性添加材を、汚染土壌に対する重量比が12.5〜25%の酢醸造残渣液としたので、自然由来の材料であるため、植物育成用の土壌として安全に利用することが出来る等その実用的効果甚だ大である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の汚染土壌の不溶化材は、基本的に、鉛及び砒素の溶出量が0.06mg/L以下で、フッ素の溶出量が6.0mg/L以下の汚染土壌を対象とする不溶化材であって、
石膏と、生石灰又はセメントと、高炉スラグ微粉末とを混合した主材と、該主材による土壌の強アルカリ化を抑止するpH調整材との2種類からなり、汚染土壌に対する主材の重量比率を5%以下とし、且つ石膏、生石灰又はセメント、高炉スラグ微粉末の配合比を1.5〜2.0:1.75〜2.25:1.0〜1.25とし、pH調整材は、硫酸第一鉄水溶液又は酢醸造残渣液として、汚染土壌に対する重量比率を25%以下とし、この不溶化材を汚染土壌に添加混合することにより、鉛、砒素及びフッ素を不溶化処理することを特徴とするものである。
石膏にあっては、半水石膏が望ましく、具体的には、二水石膏を160〜300℃で焼成し生成されたIII型無水石膏を大気中で放冷することで生成され、生石灰にあっては、土質強度の改善効果及び砒素の不溶化は共に高く、高アルカリ性を示し、高炉スラグ微粉末にあっては、主成分がSiO2 、CaO、Al2 O3 などで、土質強度の改善効果は高く、鉛を含む重金属類の溶出抑制効果を有し、水に接するとCaOが僅かに溶出してアルカリ性を示すことから、土壌の固化材としての主材を石膏、生石灰及び高炉スラグ微粉末の混合材とすることで、主材を生石灰単独とした場合と比較して、固化機能を低下させずにpH値を抑え、少なくとも砒素や重金属類の溶出を抑制する機能を備えている。
【0010】
これらにより構成された不溶化材を、対象汚染土壌1m3に対して50〜300kg添加することが好ましく、その理由は、50kg未満では不溶化材料が均一に混練し難く効果が得られ難く、一方300kgを越えると、不経済で、而も処理土壌の強度発現が大きくなって固化された汚染土壌の掘り起こし等に難がある場合もあるためである。
【0011】
本発明に係る不溶化材による汚染土壌中の鉛、砒素、フッ素の不溶化処理実験を下記の工程で行うこととする。
(1)試料と不溶化材を混合攪拌
鉛、砒素、フッ素の汚染土壌を500g量り取り、不溶化材を任意重量比で添加した後、汚染土壌と不溶化材をホバートミキサーにより5分間(2.5分で掻き落とし)練り混ぜる。
(2)養生
撹拌終了後、バットに入れ直射日光の当らない室内で7日間密閉養生を行う。
(3)風乾・篩分け
養生後の試料を風乾し、中小礫、木片等を除き、土塊、団粒を粗砕した後、非金属製の2mmの目のふるいを通過させた後十分混合する。
(4)溶媒混合
試料(単位g)と溶媒(純水に塩酸を加え、pHが5.8以上6.3以下となる様にしたもの)(単位ml)とを重量体積比10%の割合で混合する。
(5)振とう攪拌
調製した試料液を常温常圧で振とう機(予め振とう回数を毎分約200回に、振とう幅を4cm以上5cm以下に調整したもの)を用いて、6時間連続して振とうする。
(6)静置
振とう後、試料液を10分から30分程度静置する。
(7)遠心分離
静置後、試料液を毎分約3、000回転で20分間遠心分離する。
(8)上澄液濾過・濾液濃度測定
分離した上澄み液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過してろ液を取り、定量に必要な量を正確に計り取ってこれを検液とし、この検液中の鉛、砒素又はフッ素の濃度を測定する。
そして、その測定値が環境基準値(鉛及び砒素:0.01mg/L、フッ素:0.8mg/L)以下であれば合格となる。
【0012】
そこで、表1の汚染土壌a1〜a3、b1〜b4に、表2の不溶化材を適宜選択し添加混合した結果を表3〜表9に示す。
尚、表2中の「%」は、汚染土壌の重量に対する重量%で、『pH調整材の状態・混合方法』欄中の「同時混合」とは、主材とpH調整材を同時に(両者を事前混合後の添加混合を含む)、「二次混合」とは、主材−pH調整材の順で、「一次混合」とは、pH調整材−主材の順で、汚染土壌に添加混合することを示す。
特に、C−1〜3において、「二次混合」とは、下水汚泥を混合済の主材−pH調整材の順で、「一次混合」とは、下水汚泥とpH調整材の混合材−主材の順で、汚染土壌に添加混合することを示す。
【0013】
【表1】

【0014】
【表2】

【実施例1】
【0015】
上記汚染土壌a1と、上記不溶化材A−1、A−2、A−4とを用いて上記不溶化処理実験を実施し、その試験結果を表3に示す。
【0016】
【表3】

【0017】
〔不溶化材A−1、2、4について〕
A−1、2、4に関しては、鉛及び砒素の数値に関しては、全てが基準値以下で特にA−2が効果的であり、フッ素の数値に関しては、全てが基準値以上であるが、強いて言えばA−4がより基準値に近いことから、粉体は鉛の不溶化に極めて効果大であるがフッ素の不溶化には全く効果が無く、水溶液は鉛及びフッ素の両方の不溶化に効果的であるが、鉛の数値は粉体より劣る。
これは、A−2、4での鉛の数値を比較すると、Z1の添加量が同一で二次混合である点で共通するも、A−2が粉体であるのに対し、A−4は多量の水で希釈された水溶液として使用されている点で異なっており、よって水を添加することで、鉛の数値が高くなり、フッ素の数値が低くなったと考えられる。
つまり、鉛、砒素及びフッ素の全てを基準値以下にするためには、粉体のままでは効果的でないが水溶液にして使用すれば効果的であり、25%水溶液の二次混合の場合、Z1添加量の適正量域の上限は5%未満で、尚且つフッ素数値が基準値以下になる量になると考えられる。
【実施例2】
【0018】
上記汚染土壌a2と、上記不溶化材A−5、A−6、D−1、E−1、E−2、F−1、F−2とを用いて上記不溶化処理実験を実施し、その試験結果を表4に示す。
尚、Z3である酢醸造残渣液は、主に、水分、酢酸、有機物(もろみ等の残りかす)、有機酸類(プロピオン酸、ペンタノン酸、蟻酸、クエン酸等)、エタノールが含まれ、Z4である木酢液蒸留残渣液は、主に、水分、酢酸、植物性油、有機酸類(プロピオン酸、ペンタノン酸、蟻酸、クエン酸等)が含まれている。
【0019】
【表4】

【0020】
〔不溶化材A−5、6について〕
A−5、6を比較すると、A−6における鉛の数値だけが基準値以上で、而も汚染土壌a2の鉛の数値を大きく超えている。そして、Z1の添加量を減らすと、鉛及びフッ素の数値が高くなる傾向にあることが確認出来た。
よって、Z1の25%水溶液を二次混合する場合、Z1の添加量の適正量域の下限は2.5%未満で尚且つ2.5%に近い数値になると考えられる。

〔不溶化材D−1について〕
D−1に関しては、鉛及び砒素の数値が基準値より低いのに対しフッ素の数値は基準値より高く、Z2の添加量の減少に伴い鉛及び砒素の数値が高くフッ素の数値が低くなるため、5%未満の範囲に適正量域があると推測される。

〔汚染土壌a2における不溶化材D−1と汚染土壌a1における不溶化材A−1の比較〕
Z1、Z2の添加量は同一であるのに対し、
鉛濃度がa2<a1であるのに対し、溶出量は基準値>D−1>A−2
砒素濃度がa2<a1であるのに対し、溶出量はD−1<A−2<基準値
フッ素濃度がa2>a1であるのに対し、溶出量は基準値<D−1<A−2
となった。
よって、5%粉体同時混合の場合、総合的にはZ2の方が効果的であると推測されるが、鉛だけに関してはZ1の方が、フッ素だけに関してはZ2の方が断然効果的である。

〔不溶化材E−1、2について〕
E−1、2を比較すると、Z3の添加量の減少に伴い、鉛の数値は減少傾向で、砒素及びフッ素の数値が増加傾向にあると推測されるが、E−2では砒素の数値が基準値と同じであるため、12.5%以上で、鉛及びフッ素の数値が基準値を超えない量の範囲までが適正量域になると考えられる。

〔不溶化材F−1、2について〕
F−1、2に関しては、鉛の数値が極めて大きく悪化しているため、不溶化材としては不合格である。
【実施例3】
【0021】
上記汚染土壌a3と、上記不溶化材A−3、C−1、D−2とを用いて上記不溶化処理実験を実施し、その試験結果を表5に示す。
【0022】
【表5】

【0023】
〔不溶化材A−3について〕
A−3に関しては、全ての数値が基準値よりかなり低いため、3種全てを対象とする不溶化材としては合格である。

〔汚染土壌a3における不溶化材A−3と汚染土壌a1における不溶化材A−4の比較〕
Z1の添加量は同じであり、
鉛濃度がa3<a1であるのに対し、溶出量はA−3<A−4<基準値
砒素濃度がa3<a1であるのに対し、溶出量はA−3=A−4<基準値
フッ素濃度がa3>a1であるのに対し、溶出量はA−3<基準値<A−4
である。
よって、Z1の5%の25%水溶液の同時混合であれば全ての数値が良く、特にフッ素の不溶化に優れており、よって二次混合より同時混合の方が効果ありと推測される。

〔不溶化材C−1について〕
C−1に関しては、鉛の数値は極めて優れ、フッ素の数値が劣っているため、3種全てを対象とする不溶化材としては不合格であり、その理由はY1を加えたことか、主材の添加量をY1の分だけ減らしたことか、或いはこれら両方が原因であると推測される。

〔汚染土壌a3における不溶化材C−1と汚染土壌a1における不溶化材A−4の比較〕
Z1の添加量はC−1=A−4であり、
鉛濃度がa3<a1であるのに対し、溶出量はC−1<A−4<基準値
砒素濃度がa3<a1であるのに対し、溶出量はC−1=A−4<基準値
フッ素濃度がa3>a1であるのに対し、溶出量は基準値<A−4<C−1
である。
よって、Z1が5%の25%水溶液の同時混合の場合、総合的にはA−4の方が効果的であると推測されるが、鉛だけに関してはC−1の方が断然効果的である。

〔不溶化材D−2について〕
D−2に関しては、鉛及びフッ素の数値が基準値以上のため、3種全てを対象とする不溶化材としては不合格であり、汚染土壌a2におけるD−1と比較すると、汚染土壌a2、3における鉛及びフッ素の数値は略同じであるが、D−1、2での数値はD−2の方が劣っているため、Z2が5%で粉体の場合、同時混合は適切でなく二次混合が良いと推測される。
【実施例4】
【0024】
上記汚染土壌b1と、上記不溶化材A−5、A−6、D−1、E−1、E−2、F−1、F−2とを用いて上記不溶化処理実験を実施し、その試験結果を表6に示す。
【0025】
【表6】

【0026】
〔不溶化材A−5、6について〕
A−5、6を比較すると、両者の鉛の数値だけが基準値以上で、而もA−6における鉛の数値が汚染土壌b1の鉛の数値を超えている。そして、Z1の添加量の減少に伴い全ての数値が増加傾向にあり、特に鉛の増加率が大きいと考えられる。
よって、Z1の添加量の減少に伴い、全ての数値が悪化し、且つA−5における鉛の数値は基準値以上であるが僅差で、砒素及びフッ素の数値は基準値より充分低いため、Z1の25%水溶液の二次混合の場合、Z1の下限値は2.5%超になると推測される。

〔汚染土壌b1における不溶化材A−5と汚染土壌a1における不溶化材A−4の比較〕
Z1の添加量はA−5<A−4であり、
鉛濃度がb1<a1であるのに対し、溶出量はA−4<基準値<A−5
砒素濃度がb1<a1であるのに対し、溶出量はA−4<A−5<基準値
フッ素濃度がb1<a1であるのに対し、溶出量はA−5<基準値<A−4
である。
よって、Z1の添加量の減少に伴い、鉛の数値は増加傾向で、砒素の数値は微増傾向で、フッ素の数値は減少傾向であると推測される。

〔不溶化材D−1について〕
D−1に関しては、鉛及び砒素の数値が基準値より低いのに対し、フッ素の数値は基準値より高いため、このままでは3種全てを対象とする不溶化材としては不合格であるが、Z2の添加量を変えることで対応可能になると推測される。

〔不溶化材E−1、2について〕
E−1、2に関しては、添加量の減少に伴い、鉛及び砒素の数値が減少傾向にあるのに対し、フッ素の数値は増加傾向にあり、而もE−2での砒素の数値は基準値と同じであるため、Z3は12.5%を上限とし、フッ素の数値が基準値を超えない様に下限を設定することが可能であると推測される。

〔不溶化材F−1、2について〕
F−1、2に関しては、鉛の数値が極めて大きく悪化しているため、3種全てを対象とする不溶化材としては不合格である。
【実施例5】
【0027】
上記汚染土壌b2と、上記不溶化材A−3、C−1、D−2とを用いて上記不溶化処理実験を実施し、その試験結果を表7に示す。
【0028】
【表7】

【0029】
〔不溶化材A−3について〕
A−3に関しては、砒素及びフッ素の数値が基準値より低いのに対し、鉛の数値は基準値以上のため、3種全てを対象とする不溶化材としては不合格であるが、鉛の数値は基準値と僅差のため、Z1の添加量の適正量域の上限は5%未満で尚且つ5%に近い数値になると考えられる。

〔不溶化材C−1について〕
C−1に関しては、鉛の数値は極めて優れ、フッ素の数値が劣っているため、3種全てを対象とする不溶化材としては不合格であり、その理由はY1を加えたことか、主材の添加量をY1の分だけ減らしたことか、或いはこれら両方が原因であると推測される。

〔不溶化材D−2について〕
不溶化材D−2に関しては、3種全てを対象とする不溶化材としては不合格であり、Z2の添加量を変えることで対応する可能性はあるも極めて低いと推測される。
【実施例6】
【0030】
上記汚染土壌b3と、上記不溶化材A−7、A−8、A−9、D−3〜5、F−3、F−4とを用いて上記不溶化処理実験を実施し、その試験結果を表8に示す。
【0031】
【表8】

【0032】
〔不溶化材A−7〜9について〕
A−7、8に関しては、全ての数値が基準値以下であるため、3種全てを対象とする不溶化材としては合格である。
A−8、9を比較すると、A−9による鉛の数値だけが基準値以上であるため、Z1の12.5%水溶液の二次混合であれば、1.25%超で2.5%未満の範囲内に適正量域の下限値があると考えられる。

〔汚染土壌b3における不溶化材A−7と汚染土壌b1における不溶化材A−5の比較〕
Z1の添加量がA−7=A−5であり、
鉛濃度がb3<b1であるのに対し、溶出量は基準値=A−7<A−5であるが、A−5の数値は基準値に極めて近く、
砒素濃度がb3>b1であるのに対し、溶出量はA−5<A−7<基準値
フッ素濃度がb3<b1であるのに対し、溶出量はA−7<A−5<基準値
である。
よって、Z1が2.5%の12.5%水溶液では、b3とb1での鉛、砒素及びフッ素の濃度の違いを勘案すると、同時混合より二次混合が効果的であると推測される。

〔汚染土壌b3における不溶化材A−8と汚染土壌b1における不溶化材A−5の比較〕
水の添加量がA−8<A−5であり、
鉛濃度がb3<b1であるのに対し、溶出量はA−8<基準値<A−5
砒素濃度がb3>b1であるのに対し、溶出量はA−5<A−8<基準値
フッ素濃度がb3<b1であるのに対し、溶出量はA−8<A−5<基準値
である。
よって、Z1の水溶液では、水量の減少に伴い、鉛の数値は増加傾向で、砒素及びフッ素の数値は減少傾向であると推測される。

〔不溶化材D−3〜5について〕
D−3、4を比較すると、両者共に鉛及びフッ素の数値が基準値以上であるが、強いていえばD−3の方が良く、D−3、5を比較すると、D−3では砒素のみ基準値以下であるのに対し、D−5では鉛及びフッ素が基準値以下であるため、Z2の10%水溶液の二次混合であれば、2.5%超で5%未満の範囲内に適正量域があると推測される。

〔汚染土壌b3における不溶化材D−3と汚染土壌b1における不溶化材D−1の比較〕
Z2の添加量はD−3=D−1であり、
鉛濃度がb3<b1であるのに対し、溶出量はD−1<基準値<D−3
砒素濃度がb3>b1であるのに対し、溶出量は基準値<D−1<D−3
フッ素濃度がb3<b1であるのに対し、溶出量は基準値<D−1<D−3
である。
よって、Z2を5%二次混合する場合、粉体の方が水溶液より効果的であると推測される。

〔汚染土壌b3における不溶化材D−4と汚染土壌b2における不溶化材D−2の比較〕
Z2の添加量はD−4=D−2であり、
鉛濃度がb3<b2であるのに対し、溶出量はD−2<基準値<D−4
砒素濃度がb3<b2であるのに対し、溶出量は基準値<D−2<D−4
フッ素濃度がb3<b2であるのに対し、溶出量は基準値<D−4≒D−2
である。
よって、Z2を5%同時混合する場合、粉体の方が水溶液より効果的であると推測される。

〔不溶化材F−3、4について〕
F−3、4に関しては、鉛の数値が極めて大きく悪化しているため、3種全てを対象とする不溶化材としては不合格である。
【実施例7】
【0033】
上記汚染土壌b4と、上記不溶化材A−10、A−11、C−2、D−6、D−7、F−5、F−6とを用いて上記不溶化処理実験を実施し、その試験結果を表9に示す。
【0034】
【表9】

【0035】
〔不溶化材A−10、11について〕
A−10、11を比較すると、鉛及びフッ素の数値はA−10の方が良く、砒素の数値はA−11の方が良く、更に不溶化材A−10における砒素の数値だけが基準値以上であることから、3種全てを対象とする不溶化材として、A−10は不合格、A−11は合格であるため、Z1が2%の10%水溶液であれば、同時混合より一次混合の方が良いと推測される。

〔不溶化材C−2、3について〕
C−2、3を比較すると、不溶化材C−2におけるフッ素の数値が基準値以上であり、全ての数値が不溶化材C−3の方が良いことから、
同時混合より一次混合の方が良いと推測される。

〔不溶化材D−6、7について〕
D−6、7に関しては、鉛の数値が極めて大きく悪化しているため、3種全てを対象とする不溶化材としては不合格である。

〔不溶化材F−5、6について〕
F−5、6に関しては、鉛の数値が極めて大きく悪化しているため、3種全てを対象とする不溶化材としては不合格である。
【0036】
以下、上記実施例1〜7の結果を総括する。
〔Z1に関する総括〕
・粉体混合より水溶液混合が効果的。
・二次混合より同時混合が、同時混合より一次混合が効果的。
・添加量の減少に伴い、鉛の数値は増加傾向、砒素の数値は微増傾向、フッ素の数値は減 少傾向。
・水溶液では、水量減少に伴い鉛の数値は増加傾向、砒素及びフッ素の数値は減少傾向。
・条件によっても異なるが、1.25〜5%の粉体を水で希釈して10〜25%の水溶液とする。
つまり、硫酸第一鉄にあっては、土質強度の改善効果は無く、砒素の不溶化は高く、弱酸性を示して、処理済みの汚染土壌のpH値を下げることで鉛の溶出を抑止するが、水溶液にすることで完全にイオン化し、フッ素の溶出抑制を速やかに行うものと考えられるが、反面鉛を溶出しやすい状態にしてしまう。
〔Z2に関する総括〕
・水溶液混合より粉体混合が効果的
・同時混合より二次混合が効率的。
・条件によっても異なるが、添加量域は2.5〜5%。
〔Z3に関する総括〕
・添加量の減少に伴い、鉛の数値は減少傾向で、フッ素の数値が増加傾向(砒素の数値の 傾向は特定不可)。
・添加量域は12.5〜25%で、条件によっては12.5%未満でも可。
【0037】
尚、C−1以外の不溶化材における主材にあっては、石膏:生石灰:高炉スラグ微粉末=2.0:1.75:1.25であるが、この配合比を変えた主材だけを汚染土壌に添加混合して不溶化処理実験を実施し、その試験結果を表10に示す。
【0038】
【表10】

【0039】
そして、汚染土壌に対する主材の重量%は0.5%であるが、配合比がC−1以外の不溶化材と同じであるNo.1の数値が最も良いが、石膏の割合が小さくなるのに従いフッ素の数値が良くなることから、2.0を上限に、1.5を下限に設定し、生石灰の割合が大きくなるのに従いフッ素の数値が良くなることから、1.75を下限に、2.25を上限に設定し、高炉スラグ微粉末は、なるべく少量にするのが好ましいことから、1.25を上限に、1.0を下限に設定し、よって石膏:生石灰:高炉スラグ微粉末=1.5〜2.0:1.75〜2.25:1.0〜1.25となる。
【0040】
以上、本発明の汚染土壌の不溶化方法について複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛及び砒素の溶出量が0.06mg/L以下で、フッ素の溶出量が6.0mg/L以下の汚染土壌を対象とする不溶化材であって、
石膏と、生石灰又はセメントと、高炉スラグ微粉末とを混合した主材と、該主材による土壌の強アルカリ化を抑止するpH調整材との2種類からなり、汚染土壌に対する主材の重量比率を5%以下とし、且つ石膏、生石灰又はセメント、高炉スラグ微粉末の配合比を1.5〜2.0:1.75〜2.25:1.0〜1.25とし、pH調整材は、硫酸第一鉄水溶液又は酢醸造残渣液として、汚染土壌に対する重量比率を25%以下としたことを特徴とする汚染土壌の不溶化材。
【請求項2】
pH調整材を、汚染土壌に対する重量比が1.25〜5%の硫酸第一鉄の粉体を水で希釈して、汚染土壌に対する重量比が10〜25%の水溶液としたことを特徴とする請求項1記載の汚染土壌の不溶化材。
【請求項3】
pH調整材を、汚染土壌に対する重量比が12.5〜25%の酢醸造残渣液としたことを特徴とする請求項1記載の汚染土壌の不溶化材。

【公開番号】特開2012−55819(P2012−55819A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200873(P2010−200873)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000245852)矢作建設工業株式会社 (38)
【出願人】(505344605)寺沢建設株式会社 (2)
【Fターム(参考)】