説明

汚染土壌の浄化処理方法

【課題】有機塩素化合物で汚染された掘削土壌を、処理剤の使用量を少なく、無害化処理することができる汚染土壌の浄化処理方法を提供する。
【解決手段】有機塩素化合物に汚染された掘削土壌に水を供給した後、混合してスラリー状土壌を得る混練ステップと、前記スラリー状土壌を、少なくとも粗粒分土壌と細粒分土壌の複数の粒径群とに分離する分離ステップと、前記分離した細粒分土壌と零価の鉄粉を含む金属還元剤と水を撹拌混合して混合物とする混合ステップを備え、前記混合物を容器に収納し、前記容器内で一定期間養生させて有機塩素化合物を無害化処理することを特徴とする汚染土壌の浄化処理方法としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害物質に汚染された土壌の浄化技術に関し、特にPCB(ポリ塩化ビフェニル)等の有機塩素化合物に汚染された土壌の浄化処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PCB等に代表される有機塩素化合物に汚染された土壌が、工場跡地等の地中にあまり分解されずに存在する。
【0003】
また、このPCB等は、土壌浄化のために地中から掘削してドラム缶等の容器に保管されている。
【0004】
特に掘削した汚染土壌が浄化処理されないままの状態で大量に保管されているのが実態で、その浄化処理が急がれている。
【0005】
従来知られている方法としては、例えば、熱分解法、鉄粉法、アルカリ触媒化学分解法、溶融固化法、鉄粉法がある。
【0006】
しかしながら、汚染土壌が環境基準値を満たすように浄化され、しかも処理工程数が少ない方法の開発が望まれている。
【0007】
前記各種処理方法のうち代表的な解決手段として下記のものが知られている。
【0008】
PCB、廃液、廃油などの難分解な有害物質を構成部材またはその一部として含有するトランスやコンデンサ等の電気部品がある。
【0009】
この有害物質をドラム缶や箱等の各種容器に収納して、溶融炉に燃料として投入し、高温で溶融処理することによって、前記有害物質を熱分解する処理方法である(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
また、有機ハロゲン系化合物で汚染された土壌を掘削した後、その掘削土壌に鉄粉を混合して地上に小山(パイル)状に積み上げて数日〜数ヶ月間静置する方法がある。
【0011】
また、掘削土壌に鉄粉を混合して地下に埋め戻すことにより、汚染物質を分解し、エタンやエチレン等の炭化水素に変換する方法もある。
【0012】
さらに周辺土壌に残留する汚染物質による汚染の再発を防止する処理方法もある(例えば、特許文献2参照)。
また、ダイオキシン類汚染固形物を粉砕機で粉砕し、破砕物質の雰囲気を不活性ガスと置換して、該粉砕物質中に還元性金属を投入して混合する。
【0013】
その粉砕物質と還元性金属とから得られた粉砕ダイオキシン類汚染混合物を、不活性ガス雰囲気を保った状態のままで、脱ハロゲン化処理反応装置に移して、粉砕物質を還元性金属で還元することによって、ダイオキシン類の脱ハロゲン化反応を行なう(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−154666号公報
【特許文献2】特開2001−577号公報
【特許文献3】特開2003−190932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載のものは、熱分解処理であり、高温焼却炉を必要とし、設備が複雑となり、大規模となる。
【0015】
この熱分解処理での有害物質とは、PCB、廃液、廃油などの難分解性の有害物質(以下、PCB等という。)を含有またはPCB等に汚染された装置、部品等の物品、PCB等が混入した汚染土壌、汚染水等と、または収納するドラム缶等の容器である。
【0016】
さらに、高温焼却炉で高温を維持して燃焼させるので、連続運転が必要となり、燃料等の消費量が増大する。
【0017】
また、燃焼による未分解、分解途中のダイオキシン類の課題もある。
【0018】
次に特許文献2に記載のものは、掘削土壌に鉄粉を混合し、得られた混合物を地上に小山(パイル)状に積み上げてシートを掛けて数日〜数ヶ月間静置するものである。
【0019】
この汚染土壌を掘削するにあたって、汚染場所から掘削した土壌には、石、ガラ等の大型混入物や粒径が大きく異なる成分が混在している。
【0020】
このため掘削土壌に鉄粉を混合する際に、掘削土壌中に鉄粉を均一に分散させることが困難である。
【0021】
また、掘削箇所の近傍に鉄粉を混合した混合物を地上に小山(パイル)状に積み上げてシートを掛けて静置するものであるが、小山の下部が地上に接触している為に山の下部から混合物が漏洩する恐れがある。
【0022】
また、混合物で形成された小山が風化等により、くずれて初期の形状を維持することが難しく、シートから混合物が露出しやすい。
【0023】
さらに、鉄粉の空気との接触による酸化防止および有機ハロゲン系化合物の還元分解促進に必要な混合物中の必要とする水量の維持ができない。
【0024】
いわば、混合物の乾燥による水分の蒸発により、鉄粉の酸化速度、PCB等の脱塩反応速度のバランスが変化し、一定期間に亘る安定した有機塩素化合物の還元分解が困難である。
【0025】
また、特許文献3に記載のものは、汚染固形物を粉砕する粉砕機が必要であり、さらに金属ナトリウムの還元性金属を破砕機で粉砕した粉砕物質と混合させ、脱ハロゲン化処理反応をさせる。
【0026】
このとき不活性ガスあるいは還元性雰囲気に保つ装置が必要で、これらによって全体のシステムが複雑となり、結果として運転コストも高くなる課題を有している。
【0027】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、PCB等で汚染された掘削土壌を、確実(ここでいう確実とは、環境基準に適合する基準値以下ということ)に、さらに零価の鉄粉を含む金属還元剤である処理剤の使用量を効果的に投入することで、結果的にランニングコストを低減でき、かつ環境基準に適合する(無害化)汚染土壌の浄化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、有機塩素化合物に汚染された掘削土壌に水を供給した後、混合してスラリー状土壌を得る混練ステップと、前記スラリー状土壌を、少なくとも粗粒分土壌と細粒分土壌の複数の粒径群とに分離する分離ステップと、前記分離した細粒分土壌と零価の鉄粉を含む金属還元剤と水を撹拌混合して混合物とする混合ステップを備え、前記混合物を容器に収納し、前記容器内で一定期間養生させて前記有機塩素化合物を無害化処理するというものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の汚染土壌の浄化処理装置によれば、PCB等の有機塩素化合物で汚染された掘削土壌を、処理剤の使用量を少なく、環境基準に適合する汚染土壌の浄化処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
第1の発明は、有機塩素化合物に汚染された掘削土壌に水を供給した後、混合してスラリー状土壌を得る混練ステップと、前記スラリー状土壌を、少なくとも粗粒分土壌と細粒分土壌の複数の粒径群とに分離する分離ステップと、前記分離した細粒分土壌と零価の鉄粉を含む金属還元剤と水を撹拌混合して混合物とする混合ステップを備え、前記混合物を容器に収納し、前記容器内で一定期間養生させて前記有機塩素化合物を無害化処理するものである。
【0031】
これによって、表面積が大きく単位質量当たりの汚染濃度の高い細粒分土壌を分離し、この細粒分土壌と零価の鉄粉を含む金属還元剤と水とを均一に撹拌混合することができる。
【0032】
さらに土壌表面に付着した有機塩素化合物と金属還元剤との接触を促進し、密閉された容器内で養生させることで安定した分解反応を生じさせることができる。
【0033】
したがってPCB等に代表される有機塩素化合物で汚染された掘削土壌を、確実に、さらに零価の鉄粉を含む金属還元剤の量を最小限に抑えた処理により、鉄粉の酸化反応及びスラリー状混合物の脱塩素化反応を効率よくする作用することができる。
【0034】
第2の発明は、第1の発明において、細粒分土壌と金属還元剤と水を撹拌混合した後、前記細粒分土壌よりも粒径の大きい粗粒分土壌を混合して容器内で養生させて有機塩素化合物を環境基準値以下に処理するものである。
【0035】
これによって、適量の粗粒分土壌を混合させることにより、細粒分土壌が微細な土壌粒子であっても、容器内で粘土質となって団粒化又は固形化することを防止して、養生期間における細粒分の土壌粒子に付着している有機塩素化合物の分解効率をより向上させることができる。
【0036】
また養生期間終了後に掘削場所に埋め戻す際に、地中で粘土質にならないようにすることもできる。
【0037】
第3の発明は、有機塩素化合物に汚染された掘削土壌に水を供給した後、混合してスラリー状土壌を得る混練ステップと、前記スラリー状土壌を、少なくとも粗粒分土壌と細粒分土壌の複数の粒径群とに分離する分離ステップと、前記分離した前記細粒分土壌と零価の鉄粉を含む金属還元剤と水を撹拌混合して混合物とする細粒分土壌混合ステップと、前記粗粒分土壌と前記金属還元剤と前記水を撹拌混合して前記混合物とする粗粒分土壌混合ステップを備え、前記金属還元剤と前記水を混合した前記細粒分土壌および前記粗粒分土壌の前記混合物の各々を異なる容器に収納し、前記容器内で一定期間養生させて前記有機塩素化合物を無害化処理するものである。
【0038】
これによって、掘削した土壌を複数の粒径群に分離し、この粒径群ごとに金属還元剤および水の最適な供給量を選択して均一に撹拌混合することができる。
【0039】
さらに土壌表面に付着した有機塩素化合物と零価の鉄粉を含む金属還元剤との接触を促進し、粒径群ごとに異なる密閉された容器内で養生させることで安定した脱塩素化反応を生じさせることができる。
【0040】
したがってPCB等に代表される有機ハロゲン化合物で汚染された掘削土壌を、確実に、さらに零価の鉄粉を含む金属還元剤の量を最小限に抑えた処理により、鉄粉の酸化反応及びスラリー状混合物の脱塩素化反応を効率よくする作用することができる為、PCB等に代表される有機ハロゲン化合物で汚染された掘削土壌を環境基準値以下(無害化)にすることができる。
【0041】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明において、有機塩素化合物に汚染された前記掘削土壌から石、ガラ等の大型混入物を分離して取り除く1次分離ステップと、前記1次分離ステップで石、ガラ等の大型混入物を取り除いた大型混入物除去土壌に水を供給して混合したスラリー状土壌から小石、砂利等の小型混入物と、篩を通過した篩通過水を含む小型混入物除去土壌とに分離する2次分離ステップと、2次分離ステップで分離した前記篩通過水を含む前記小型混入物除去土壌を、砂等の粗粒分土壌と水を含む粘性土等の細粒分土壌とに分離する3次分離ステップと、3次分離ステップで分離した3次ステップ分離水を含む前記細粒分土壌を貯留して上澄み水と細粒分土壌に分離する凝集沈殿ステップを備えて、前記掘削土壌を前記粗粒分土壌と前記細粒分土壌の複数の粒径群とに分離して前記有機塩素化合物を無害化処理するものである。
【0042】
これによって、掘削土壌から石、ガラ等の大型混入物を分離して取り除くとともに、この土壌に水を供給、混合したスラリー状として塊状の土壌を解すとともに、複数の分離ステップを経ることで、少なくとも粗粒分土壌と細粒分土壌の複数の粒径群ごとに確実に分離することができる。また水中に含まれる微細粒子の土壌を分離、捕捉し、これらに付着しているPCB等の有機塩素化合物も無害化処理することができる。
【0043】
尚、ここで有無害化とは、汚染物質の環境基準値以下のことを言う。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の一実施例の土壌浄化処理方法を図1、図2を参照しながら説明する。
【0045】
図1は本発明の実施例の土壌処理システムの概念図、図2は図1に対応させた処理ステップを示すフロー図である。以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0046】
先ず、容器中の掘削土壌を少なくとも粗粒分土壌と細粒分土壌の複数の粒径群に分離する分離ステップを説明する。
【0047】
図1、図2において、PCB等の有機塩素化合物に汚染された容器1中の掘削土壌は、振動篩2a、ベッセル2bを有する1次分離装置2に搬送される。
【0048】
この1次分離装置2は、振動篩2aの網目が例えば30mm程度に設定されており、振動篩2a上には土壌中に混入している比較的大サイズの石、ガラ等の大型混入物3が残り分離される。振動篩2aを通過して下に振るい落とされた有機塩素化合物に汚染された掘削土壌はベッセル2b内に収容する(図2、S100)。
【0049】
なお1次分離装置2は、スクリーンマット面を波動運動させるジャンピングスクリーン、徐々に網目を細かくした多層スクリーンを用いてもよい。
【0050】
また掘削土壌の状態によっては目視による分離であってもよい。また1次分離装置2は、篩を固定して篩上で掘削土壌を移動させる手段や土壌に振動を加える手段を用いてもよい。
【0051】
次に、前記石、ガラ等の大型混入物3を取り除いたベッセル2b内の土壌を、ミキサーである混練装置4に搬送する。
【0052】
この混練装置4内の土壌に給水ライン5から水を供給して強制的に湿潤させて混練する(S101)。
【0053】
これによって、土壌はスラリー状となり、塊状の土壌や小石等を包み込んでいた土壌塊が離脱し解れて微細化するものである。
【0054】
また混練装置4は、モータで駆動される回転翼(図示なし)を備えており、前記回転翼を例えば一分間に5〜10回転程度で回転させる。
【0055】
これにより、土壌塊に衝撃を与えることになり、解れやすくなる。
【0056】
土壌に供給する水量は、少なすぎると微細化できず、石等を包み込んでいた土壌塊が解れない状態が発生する、また水量が多すぎると全体量を増加させることになり好ましくない。
【0057】
また土壌への水の供給量は、掘削した土壌の含水状態に応じて調節すればよい。
【0058】
最適な土壌と水の混合割合を求めた結果、土壌の含水率によって異なるが、例えば含水率60%の土壌に対しては、重量比で1.5倍の水を供給することで、スラリー状土壌を得ることができる。また、含水率が85%を超える土壌に対しては、重量比で1倍の水を供給することで、スラリー状土壌を得ることができる。
【0059】
さらに、含水率が15%以下の土壌に対しては、重量比で3倍の水を供給することでスラリー状土壌を得ることができる。
【0060】
また、供給水に用いられる水には、河川水、地下水、水道水等の一般的にいう水の他、土壌分散剤を含む水も含まれる。
【0061】
土壌分散剤は、土壌の種類や圧縮程度など土壌の状態に応じて適宜選定できる。
【0062】
次に、混練装置4で混練したスラリー状土壌を2次分離装置6に搬送する。この2次分離装置6は円筒状に構成した回転篩6aを有する回転式の分離機(トロンメル)で、円筒状の回転篩6aは土壌の投入口側6bが出口側6cよりも高い位置になるよう傾斜させてある。
【0063】
また回転篩6aは減速機構を有する駆動手段(図示なし)で駆動し、前記回転篩6aを例えば一分間に5回転程度の低速で回転させる。
【0064】
本実施例においては、回転篩6aの網目が例えば5mm程度に設定されており、円筒状の回転篩6aの内部に投入されたスラリー状土壌は、傾斜した円筒状の回転篩6a内を移動し、回転篩6aの網目を通過せず回転篩6a内に残った小石、砂利等の混入物7を出口側6cから排出し分離される。
【0065】
また網目を通過した水を含む土壌は、2次分離装置6の下部に溜まる。
【0066】
このとき水を含むスラリー状土壌が網目を通過することによって小石、砂利等の表面に付着した土壌が除去される(S102)。
【0067】
前記したように、先ず1次分離装置2で石、ガラ等の大型混入物3を取り除き、次に水を供給してスラリー状土壌とし、さらに低速回転で駆動する混練装置4、回転篩6aによる2次分離装置6によって、より塊状の土壌や小石、砂利等を包み込んでいた土壌塊がより離脱し解れて微細化するものである。
【0068】
次に、前記2次分離装置6の回転篩6aを通過して分離した水を含む土壌を、振動篩8a、ベッセル8bを有する3次分離装置8に搬送する。前記3次分離装置8は、振動篩8aの網目が例えば0.75mm程度に設定されており、振動篩8a上には砂等の粗粒土壌9が残り保管される。網目が0.75mmの振動篩8aを通過して下に振るい落とされた水を含む粘性土等の細粒土壌はベッセル8b内に収容する(S103)。
【0069】
なお、3次分離装置8は、篩面を波動運動させるジャンピング篩、徐々に網目を細かくした多層篩を用いてもよい。
【0070】
また、前記1次分離装置2の振動篩2a、2次分離装置6の回転篩6aの網目サイズ、3次分離装置8の振動篩8aの網目は、掘削土壌の種類や特性、混入物のサイズおよび土壌の汚染状態等に応じて適宜最適条件に設定すればよい。
【0071】
次に、3次分離装置8で分離したベッセル8b内の水を含む粘性土等の細粒分土壌を凝集沈殿装置10に搬送する。凝集沈殿装置10内で、比重差により細粒分土壌が下部に沈降し、上澄み水と細粒分土壌に分離する(S104)。
【0072】
前記上澄み水を供給管11、ポンプ12を介して貯水槽13に供給し一定量貯留する(S105)。さらに貯水槽13内の貯留水を供給管14、ポンプ15を介して活性炭を有する濾過装置16に供給し無害化処理するとともに排出管17より放流するものである(S106)。前記貯留水は貯水槽13内の水位を検出して連続または間欠的に濾過装置16に供給する。濾過装置16は、主に掘削土壌中の水分に含まれる有機塩素化合物を無害化処理するものである。
【0073】
また、貯水槽13内の貯留水を供給管18、ポンプ19を介して混練装置4に供給し、前記1次分離装置2で石、ガラ等の大型混入物3を取り除いた土壌を強制的に湿潤させて混練する。さらに濾過装置16で処理した処理水を混練装置4に供給してもよい。これによって、給水ライン5からの水道水等の水の供給量を少なくすることができる。
【0074】
また、貯留槽13内の貯留水、濾過装置16で処理した貯留水または給水ライン5からの水を適宜選択して土壌に供給するか、事前に各々の水を混合させて供給させてもよい。
【0075】
なお、貯水槽13と混練装置4、貯水槽13と濾過装置16、凝集沈殿装置10と貯水槽13、凝集沈殿装置10の各々の接続は供給管およびポンプにより構成したが、装置の高低落差を与えて供給してもよく、容器に入れて搬送してもよい。
【0076】
さらに1次分離装置2と混練装置4、混練装置4と2次分離装置6、2次分離装置6と凝集沈殿装置10等の各々間の搬送は、容器に収納して移動手段で搬送、装置の高低落差を与えて搬送、吸引手段等の方法を適宜用いてもよい。
【0077】
このことから掘削土壌から汚染物質を含まない石、ガラ等の大型混入物3を分離して取り除くとともに、この土壌に水を供給、混合したスラリー状として塊状の土壌を解し、さらに複数の分離ステップを経ることで、すくなくとも粗粒分土壌と細粒分土壌の複数の粒径群ごとに選別して分離することができる。
【0078】
また水中に含まれる微細粒子の土壌を分離、捕捉することができる。
【0079】
以上のように、容器1中の掘削土壌を少なくとも粗粒分土壌と細粒分土壌の複数の粒径群に分離する基本的な分離ステップを説明したが、次に分離した細粒分土壌と金属還元剤、水を撹拌混合して容器に収納する基本的な処理ステップを説明する。
【0080】
前記凝集沈殿装置10で沈降して分離した細粒分土壌を、供給管20を介してポンプ21により還元剤混合槽22に供給する。前記還元剤混合槽22内の細粒分土壌と零価の微粒子鉄粉をベースとし金属還元剤および給水ライン24より水を供給し、モータで駆動される回転翼で構成した撹拌手段23で撹拌混合してこれらの混合物とする(S107)。供給する水は、金属還元剤の酸化を防止し、且つ金属還元剤を土壌全体に均一に分散させるために土壌の飽和水量以上を含有させる。
【0081】
なお、濾過装置16で処理した処理水を還元剤混合槽22に供給してもよい。
【0082】
これによって、給水ライン24からの水道水等の水の供給量を少なくすることができる。
【0083】
また、貯留槽13内の貯留水、濾過装置16で処理した処理水または給水ライン24からの水を適宜選択して土壌に供給するか、事前に各々の水を混合させて供給させてもよい。
【0084】
次に、前記混合物を容器25に収納し、容器25の上部開口部を蓋体25aで密閉して一定期間(例えば数ヶ月間静置)養生させて脱塩素化反応により無害化処理するものである(S108)。有機塩素化合物は鉄粉表面で電子を受け取り(還元され)、アセチレンのような塩素を含まない化合物に変化して無害化される。
【0085】
容器25としては、例えばステンレス材料または内面を樹脂コーティングしたドラム缶を用いることが好ましく、これによって腐食による収納した前記混合物の漏洩を防止することができる。
【0086】
またドラム缶の内側に樹脂製の袋体を介して混合物を収納してもよい。
【0087】
この収納においては、金属還元剤による汚染物質の分解作用の阻害要因である酸素源を断つため、混合物が外気と直接接触しないよう密閉することが望ましく、また不活性ガス、還元性ガスを容器25の上部空間部に充填しておくことが好ましい。
【0088】
前記したように還元剤混合槽22内において撹拌手段23で撹拌混合して混合物とし、容器25内に搬送したが、容器25内で細粒土壌、金属還元剤、水を撹拌、混合してもよい。
【0089】
この場合には容器25の蓋体25aとは別体の部材に撹拌手段23を設けて撹拌混合し、撹拌混合後に容器25の上部開口部を蓋体25aで密閉する。これにより全体の装置を簡略することができる。
【0090】
金属還元剤としては、零価の微粒子鉄粉を主成分として用いる。鉄粉は例えば平均粒径70μm程度の微粒子とし、零価の微粒子鉄粉の表面積を大きくすることで有機塩素化合物の分解反応性を向上させることができる。
【0091】
またニッケル合金、カーボンコーティングした鉄粉等を配合して用いてもよい。
【0092】
また、土壌への金属還元剤の添加量は、土壌に対して1〜10重量%程度で、添加量が1重量%より少ないときには分解速度が著しく低下する。
【0093】
また、細粒分土壌に金属還元剤、水とともに、界面活性剤、アルコール等の溶剤を供給、混合してもよい。この場合には土壌表面からの有機塩素化合物の離脱、溶出を促進し分解効率をより向上させることができる。
【0094】
以上のように、有機塩素化合物に汚染された掘削土壌に水を供給した後、混合してスラリー状土壌を得る混練ステップと、前記スラリー状土壌を、少なくとも粗粒分土壌と細粒分土壌の複数の粒径群に分離する分離ステップと、前記分離した細粒分土壌に金属還元剤と水を撹拌混合して混合物とする混合ステップを備え、前記混合物を容器に収納し、前記容器内で一定期間養生させて前記有機塩素化合物を無害化処理することを特徴とする汚染土壌の浄化処理方法としたものである。
【0095】
また、汚染場所から掘削した土壌には、石、ガラ等の大型混入物や粒径が大きく異なる成分が混在している。
【0096】
このため前記掘削土壌に微粒子鉄粉である金属還元剤を混合する際に、掘削土壌中に金属還元剤を均一に分散させることが困難であるが、本実施例においては、表面積が大きく単位質量当たりの汚染濃度の高い細粒分土壌を分離し、この細粒分土壌と金属還元剤、水とを均一に混合することができる。
【0097】
さらに土壌表面に付着した有機塩素化合物と金属還元剤との接触を促進し、密閉された容器内で養生させることで安定した分解反応を生じさせることができる。
【0098】
したがってPCB等に代表される有機塩素化合物で汚染された掘削土壌を、零価の微粒子鉄粉の使用量を効果的に使用することができ、無害化処理することができる。
【0099】
理由として、金属還元剤である零価の微粒子鉄粉がスラリー状土壌の水分と反応し、水素イオンを放出する。
【0100】
この水素イオンとPCB等に代表される有機塩素化合物の塩素とが置換する(脱塩素化反応)ことにより、PCB等に代表される有機塩素化合物が低分子化し、無害化処理ができる。
【0101】
次に、細粒分土壌に金属還元剤と水を撹拌混合した後、前記細粒土壌よりも粒径の大きい粗粒分土壌を混合して容器25内で養生させて有機塩素化合物を無害化処理する方法について説明する。
【0102】
凝集沈殿装置10で沈降して分離した細粒土壌を、供給管20を介してポンプ21により還元剤混合槽22に供給する。
【0103】
前記還元剤混合槽22内の細粒土壌に金属還元剤と水を供給し、モータで駆動される回転翼で構成した撹拌手段23で撹拌混合してこれらの混合物とする。細粒分土壌に金属還元剤と水を撹拌混合した後、還元剤混合槽22に3次分離ステップで分離した粗粒分土壌の一部を供給し撹拌混合して、この混合物を容器25に収納し、容器25の上部開口部を蓋体25aで密閉して一定期間養生させて脱塩素化反応により無害化処理するものである。
【0104】
これによって、細粒分土壌に金属還元剤と水を均一に撹拌混合した混合物に適量の粗粒分土壌を混合させることにより、細粒分土壌が微細な土壌粒子であっても、容器25内で粘土質となって団粒化、固形化することを防止し、土壌粒子と金属還元剤との接触を促進させて養生期間における細粒分土壌粒子に付着している有機塩素化合物の分解効率をより向上させることができる。また養生期間終了後に掘削場所に埋め戻す際に、地中で粘土質にならないようにすることができる。粗粒分土壌の混合量は、容器25内で粘土質となって団粒化、固形化を防止できる最小量でよい。
【0105】
次に、前記分離した細粒分土壌に金属還元剤と水を撹拌混合して混合物とし、さらに前記粗粒分土壌に金属還元剤と水を撹拌混合して混合物として、金属還元剤と水を混合した細粒分土壌および粗粒分土壌の混合物の各々を異なる容器25に収納し、容器25内で一定期間養生させて有機塩素化合物を無害化処理する方法について説明する。
【0106】
凝集沈殿装置10で沈降して分離した細粒土壌を、供給管20を介してポンプ21により還元剤混合槽22に供給する。前記還元剤混合槽22内の細粒土壌に金属還元剤と水を供給し、モータで駆動される回転翼で構成した撹拌手段23で混合してこれらの混合物する。また3次分離ステップで分離した粗粒分土壌を還元剤混合槽22に供給する。
【0107】
前記還元剤混合槽22内の粗粒分土壌に金属還元剤と水を供給し、モータで駆動される回転翼で構成した撹拌手段23で混合してこれらの混合物する。
【0108】
そして金属還元剤と水を混合した細粒分土壌および粗粒分土壌の混合物の各々を異なる容器25に収納し、各々の容器25内で一定期間養生させて有機塩素化合物を無害化処理するものである。
【0109】
これによって、掘削した土壌を、比表面積、汚染濃度の異なる粒径群に分離し、粒径群ごとに還元金属と水の最適な供給量を選択して均一に撹拌混合することができる。
【0110】
さらに土壌表面に付着した有機塩素化合物と金属還元剤との接触を促進し、粒径群ごとに異なる密閉された容器内で養生させることで安定した分解反応を生じさせることができる。
【0111】
したがってPCB等に代表される有機塩素化合物で汚染された掘削土壌を、確実に処理し、無害化することができる。
【0112】
なお、前記した凝集沈殿装置10で沈降して分離した細粒土壌に還元剤である鉄粉と水を供給し、混合して混合物とし、前記混合物を容器25に収納し、容器25の上部開口部を蓋体で密閉して一定期間養生させるようにしたが、3次分離装置8で分離したベッセル8b内の水を含む粘性土等の細粒土壌に金属還元剤を供給し、撹拌混合して混合物とし、前記混合物を容器25に収納し、容器25の上部開口部を蓋体で密閉して一定期間養生させるようにしてもよい。
【0113】
また、3次分離ステップで分離した水を含む細粒土壌に金属還元剤と水を撹拌混合して混合物とし、さらに3次分離ステップで分離した粗粒分土壌に金属還元剤と水を撹拌混合して混合物として、金属還元剤と水を混合した細粒分土壌および粗粒分土壌の混合物の各々を異なる容器25に収納し、各々の容器25内で一定期間養生させさせるようにしてもよい。
【0114】
以上のように、本発明によれば、PCB等に代表される有機塩素化合物で汚染された掘削土壌を、処理剤の使用量を少なく、無害化処理することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
有害物質の汚染された土壌の浄化処理における広範囲の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の実施例1の土壌処理システムのブロック構成図
【図2】図1に対応させた処理ステップを示すフロー図
【符号の説明】
【0117】
1 容器
2 1次分離装置
2a 振動篩
2b ベッセル
3 石、ガラ(大型混入物)
4 混練装置
5 給水ライン
6 2次分離装置
6a 回転篩
6b 投入口側
6c 出口側
7 小石、砂利(混入物)
8 3次分離装置
8a 振動篩
8b ベッセル
9 砂(粗粒土壌)
10 凝集沈殿装置
11 供給管
12 ポンプ
13 貯水槽
14 供給管
15 ポンプ
16 濾過装置
17 排出管
18 供給管
19 ポンプ
20 供給管
21 ポンプ
22 混合槽
23 撹拌手段
24 給水ライン
25 容器
25a 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機塩素化合物に汚染された掘削土壌に水を供給した後、混合してスラリー状土壌を得る混練ステップと、前記スラリー状土壌を、少なくとも粗粒分土壌と細粒分土壌の複数の粒径群とに分離する分離ステップと、前記分離した細粒分土壌と零価の鉄粉を含む金属還元剤と水を撹拌混合して混合物とする混合ステップを備え、前記混合物を容器に収納し、前記容器内で一定期間養生させて前記有機塩素化合物を無害化処理することを特徴とする汚染土壌の浄化処理方法。
【請求項2】
前記細粒分土壌と前記金属還元剤と前記水を撹拌混合した後、前記細粒分土壌よりも粒径の大きい前記粗粒分土壌を混合して前記容器内で養生させて前記有機塩素化合物を無害化処理することを特徴とする請求項1に記載の汚染土壌の浄化処理方法。
【請求項3】
有機塩素化合物に汚染された掘削土壌に水を供給した後、混合してスラリー状土壌を得る混練ステップと、前記スラリー状土壌を、少なくとも粗粒分土壌と細粒分土壌の複数の粒径群とに分離する分離ステップと、前記分離した前記細粒分土壌と零価の鉄粉を含む金属還元剤と水を撹拌混合して混合物とする細粒分土壌混合ステップと、前記粗粒分土壌と前記金属還元剤と前記水を撹拌混合して前記混合物とする粗粒分土壌混合ステップを備え、前記金属還元剤と前記水を混合した前記細粒分土壌および前記粗粒分土壌の前記混合物の各々を異なる容器に収納し、前記容器内で一定期間養生させて前記有機塩素化合物を無害化処理することを特徴とする汚染土壌の浄化処理方法。
【請求項4】
前記有機塩素化合物に汚染された前記掘削土壌から大型混入物を分離して取り除く1次分離ステップと、前記1次分離ステップで大型混入物を取り除いた大型混入物除去土壌に水を供給して混合したスラリー状土壌から小型混入物と、篩を通過した篩通過水を含む小型混入物除去土壌とに分離する2次分離ステップと、2次分離ステップで分離した前記篩通過水を含む前記小型混入物除去土壌を、粗粒分土壌と細粒分土壌とに分離する3次分離ステップと、3次分離ステップで分離した3次ステップ分離水を含む前記細粒分土壌を貯留して上澄み水と細粒分土壌に分離する凝集沈殿ステップを備えて、前記掘削土壌を前記粗粒分土壌と前記細粒分土壌の複数の粒径群とに分離することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の汚染土壌の浄化処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−209826(P2007−209826A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290958(P2005−290958)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】