説明

汚水処理システム及び微細気泡発生器

【課題】汚水を良好に浄化することができる汚水処理システム及び微細気泡発生器を提供すること。
【解決手段】本発明では、屋外に設置した上部を開口した浄化槽(1)に汚水を貯留するとともに、微細気泡発生器(7,25,37)で浄化槽(1)に微細気泡を供給して汚水を浄化し、浄化後の汚水を沈殿槽(11)に貯留して沈殿分離し、分離された固形物を前記浄化槽(1)に還元する一方、分離された液状物を超音波処理槽(15)に貯留し、超音波発生器(18)で超音波処理槽(15)に超音波振動させた微細気泡を供給して液状物を浄化することにした。微細気泡発生器(25,37)は、前後遥動自在の傾斜状の衝突板(28,39)に向けて圧縮空気を吹き付け、衝突板(28,39)を圧縮空気の脈動によって振動させるとともに衝突板(28,39)の表面で微細気泡を発生し、振動させた微細気泡を供給するように構成することにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水処理システム及び微細気泡発生器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場排水や生活排水は、汚水処理を施して浄化させた後に河川等に放流するようにしている。
【0003】
そのための汚水処理システムとしては、様々なものが考えられてきており、たとえば、特許文献1に開示された汚水処理システムでは、汚水を貯留した処理槽に微細気泡を供給するとともに超音波振動を同時に与えて微細気泡と超音波とが有するエネルギーで汚水を浄化させるようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−275694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の汚水処理システムでは、処理槽に微細気泡とともに超音波振動をも同時に付与していたために、処理槽の内部で汚水を浄化する作用を有するバクテリアまでをも死滅させてしまうことになり、却って汚水浄化の処理効率を低減させてしまうものであり、汚水処理に要する時間やコストを増大させてしまう原因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、請求項1に係る本発明では、汚水処理システムにおいて、屋外に設置した上部を開口した浄化槽に汚水を貯留するとともに、浄化槽に微細気泡を供給して汚水を浄化し、浄化後の汚水を沈殿槽に貯留して沈殿分離し、分離された固形物を前記浄化槽に還元する一方、分離された液状物を超音波処理槽に貯留し、超音波発生器で超音波処理槽に超音波振動させた微細気泡を供給して液状物を浄化することにした。
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記超音波発生器は、前後遥動自在の傾斜状の衝突板に向けて圧縮空気を吹き付け、衝突板を圧縮空気の脈動によって超音波振動させるとともに衝突板の表面で微細気泡を発生し、超音波振動させた微細気泡を供給するように構成することにした。
また、請求項3に係る本発明では、微細気泡を発生させるための微細気泡発生器において、前後遥動自在の傾斜状の衝突板に向けて圧縮空気を吹き付け、衝突板を圧縮空気の脈動によって振動させるとともに衝突板の表面で微細気泡を発生し、振動させた微細気泡を供給するように構成することにした。
【発明の効果】
【0007】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0008】
すなわち、本発明では、汚水処理システムにおいて、屋外に設置した上部を開口した浄化槽に汚水を貯留するとともに、微細気泡発生器で浄化槽に微細気泡を供給して汚水を浄化し、浄化後の汚水を沈殿槽に貯留して沈殿分離し、分離された固形物を前記浄化槽に還元する一方、分離された液状物を超音波処理槽に貯留し、超音波処理槽に超音波振動させた微細気泡を供給して液状物を浄化することにしているために、浄化槽の内部のバクテリアを死滅させることなく有効に機能させて汚水の浄化を行うことができるとともに、超音波振動させた微細気泡によって汚水中の油分を良好に分解することができるので、汚水を良好に浄化させることができる。
特に、微細気泡発生器を、前後遥動自在の傾斜状の衝突板に向けて圧縮空気を吹き付け、衝突板を圧縮空気の脈動によって振動させるとともに衝突板の表面で微細気泡を発生し、振動させた微細気泡を供給するように構成した場合には、汚水の浄化だけでなく、脱臭、殺菌、水素水化などを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る汚水処理システムを示す説明図。
【図2】微細気泡発生器を示す平面断面図(a)、側面断面図(b)。
【図3】微細気泡発生器を示す平面断面図(a)、側面断面図(b)、背面図(c)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る汚水処理システムの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0011】
本発明に係る汚水処理システムは、屋外に設置した上部を開口した浄化槽に汚水を貯留するとともに、浄化槽に微細気泡を供給して汚水を浄化する汚水浄化工程と、汚水浄化工程で浄化した後の汚水を沈殿槽に貯留して沈殿分離する沈殿分離工程と、沈殿分離工程で分離された固形物を前記浄化槽に還元する汚水還元工程と、分離された液状物を超音波処理槽に貯留し、超音波処理槽に超音波振動させた微細気泡を供給して液状物を浄化する超音波処理工程とから構成している。
【0012】
汚水浄化工程では、図1(a)に示すように、屋外に設置した上部を開口して直射日光を照射させた浄化槽1に排水管2から供給された汚水を沈砂槽22を介して貯留し、微細気泡供給機構3を用いて浄化槽1及び沈砂槽23の内部に微細気泡を供給している。なお、汚水浄化工程では、浄化槽1を複数段階に連設させてもよい。
【0013】
ここで、微細気泡供給機構3は、ロータリーブロア4に供給管5を接続するとともに、供給管5に複数本の分岐管6を接続し、各分岐管6の先端部を浄化槽1の底部に配置するとともに、各分岐管6の先端に微細気泡発生器7を接続している。
【0014】
微細気泡発生器7は、浄化槽1の底部に上流側から下流側に間隔をあけて配置しており、図1(b)に示すように、左右一対の側壁8の間に板状の触媒(亜鉛)からなる衝突板9を傾斜状に取付けるとともに、衝突板9に向けて分岐管6の先端のノズル10からロータリーブロア4で圧縮した圧縮空気を吹き付けて、衝突板9の表面で微細気泡を発生し、浄化槽1に貯留した汚水の内部に微細気泡を供給するように構成している。
【0015】
この汚水浄化工程では、微細気泡供給機構3を用いて供給した微細気泡の作用で汚水中に酸素を供給するとともに汚水中の汚物を分解して汚水の浄化を行うようにしている。
【0016】
しかも、汚水浄化工程では、浄化槽1の内部で汚物を餌とするバクテリアを繁殖させ、バクテリアの作用で汚物を分解するとともに、浄化槽1の内部で珪藻を繁殖させ珪藻の光合成により汚物の分解や汚水の浄化を行うようにしている。
【0017】
沈殿分離工程では、図1(a)に示すように、屋外に設置した上部を開口して直射日光を照射させた沈殿槽11に連通管12を介して浄化槽1から供給された浄化槽1で浄化された後の汚水を貯留し、所定時間静置して沈殿槽11で上澄み液からなる液状物と沈殿物からなる固形物とに沈殿分離するようにしている。
【0018】
ここで、沈殿槽11には、供給管5から供給される空気を利用したエアレーション型のポンプ13が浸漬されており、このポンプ13を用いて移送管14で沈殿槽11の底部に沈殿した固形物を浄化槽1に移送することができるようになっている。
【0019】
汚水還元工程では、図1(a)に示すように、沈殿槽11に貯留された汚水を撹拌しながらポンプ13を用いて移送管14で沈殿槽11から浄化槽1の上流側に移送することによって、沈殿分離工程で分離されて沈殿槽11の底部に沈殿した固形物を液状物とともに浄化槽1に還元するようにしている。
【0020】
なお、汚水還元工程で浄化槽1に還元された汚水は再度汚水浄化工程で浄化されることになる。
【0021】
超音波処理工程では、図1(a)に示すように、沈殿槽11に貯留された汚水の上澄みである液状物を連通管12で沈殿槽11から超音波処理槽15に移送することによって、沈殿分離工程で分離された液状物を超音波処理槽15に貯留し、超音波供給機構16を用いて超音波処理槽15の内部に超音波振動させた微細気泡を供給するようにしている。
【0022】
ここで、超音波供給機構16は、ロータリーブロア4に供給管17を接続し、供給管17の先端部を超音波処理槽15の底部に配置するとともに、供給管17の先端に超音波発生器18を接続している。
【0023】
超音波発生器18は、図1(c)に示すように、超音波処理槽15の底部に配置しており、左右一対の側壁19の間に板状の触媒(亜鉛)からなる衝突板20を傾斜状に前後遥動自在に取付けるとともに、衝突板20に向けて供給管17の先端のノズル21からロータリーブロア4で圧縮した圧縮空気を吹き付けて、衝突板20を圧縮空気の脈動によって超音波振動させるとともに衝突板20の表面で微細気泡を発生し、超音波処理槽15に貯留した液状物の内部に超音波振動させた微細気泡を供給するように構成している。
【0024】
この超音波処理工程では、超音波供給機構16を用いて供給した超音波振動させた微細気泡の作用で液状物中に酸素を供給するとともに液状物中の油分を分解して液状物の浄化を行うようにしている。
【0025】
そして、汚水浄化工程、沈殿分離工程、汚水還元工程、超音波処理工程を経て処理した汚水は、超音波処理槽15から放流槽24へと移送し、その後、放流槽24の放水管22から外部に放流する。
【0026】
以上に説明したように、上記汚水処理システムでは、屋外に設置した上部を開口した浄化槽1に汚水を貯留するとともに、浄化槽1に微細気泡を供給して汚水を浄化し、浄化後の汚水を沈殿槽11に貯留して沈殿分離し、分離された固形物を前記浄化槽1に還元する一方、分離された液状物を超音波処理槽15に貯留し、超音波処理槽15に超音波振動させた微細気泡を供給して液状物を浄化するように構成している。
【0027】
そのため、上記構成の汚水処理システムでは、浄化槽1の内部のバクテリアを死滅させることなく有効に機能させて汚水の浄化を行うことができるとともに、超音波振動させた微細気泡によって汚水中の油分を良好に分解することができるので、汚水を良好に浄化させることができる。
【0028】
上記汚水処理システムにおいて、微細気泡発生器7として、図2又は図3に示す微細気泡発生器25,37を利用することもできる。
【0029】
図2に示す微細気泡発生器25は、上下を開放させた矩形箱型のケーシング26の左右側壁27,27の間に衝突板28を傾斜状に前後遥動自在に取付けるとともに、ケーシング26の前側壁29に分岐管6の先端のノズル10を衝突板28と対向させて取付けている。
【0030】
衝突板28は、ケーシング26に回動自在に支持した回転軸30に基板31を取付け、基板31の表裏に一対の多孔状の触媒板(亜鉛とステンレス)32,33を間隔をあけるとともに孔34,35の位置をずらして取付けている。また、衝突板28は、下端部で裏側から支持棒36で傾斜状に支持されている。
【0031】
また、図3に示す微細気泡発生器37は、円筒状のケーシング38の内部に衝突板39を上下遥動自在に取付けるとともに、ケーシング38の前端壁40に分岐管6の先端のノズル10を衝突板39と対向させて取付けている。
【0032】
衝突板39は、ケーシング38に回動自在に支持した回転軸41に多孔状の亜鉛製の触媒板42とステンレス製の触媒板43とを後方に向けて上下に傾斜状に取付けている。
【0033】
また、微細気泡発生器37は、ケーシング38の上部に吸入口44を形成し、吸入口44から汚水を内部に吸入するようにしている。なお、吸入口44にポンプを接続してポンプの作用で強制的に汚水を内部に吸引するようにしてもよい。
【0034】
さらに、微細気泡発生器37は、ケーシング38の後端開口部に螺旋翼45を円周方向に間隔をあけて取付け、後端開口部から浄化した汚水を旋回流として拡散させて放出するようにしている。
【0035】
そして、微細気泡発生器25,37は、衝突板28,39に向けてノズル10からロータリーブロア4で圧縮した圧縮空気を吹き付けることで、衝突板28,39の表面で微細気泡を発生し、浄化槽1に貯留した汚水の内部に微細気泡を供給し、しかも、衝突板28,39を圧縮空気の脈動によって振動させるとともに衝突板28,39の表面で微細気泡を発生し、浄化槽1に貯留した液状物の内部に振動させた微細気泡を供給するようにしている。
【0036】
この微細気泡発生器25,37では、汚水の浄化だけでなく、汚水の脱臭、殺菌、水素水化を行うことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 浄化槽 2 排水管
3 微細気泡供給機構 4 ロータリーブロア
5 供給管 6 分岐管
7 微細気泡発生器 8 側壁
9 衝突板 10 ノズル
11 沈殿槽 12 連通管
13 ポンプ 14 移送管
15 超音波処理槽 16 超音波供給機構
17 供給管 18 超音波発生器
19 側壁 20 衝突板
21 ノズル 22 放水管
23 沈砂槽 24 放流槽
25 微細気泡発生器 26 ケーシング
27 側壁 28 衝突板
29 側壁 30 回転軸
31 基板 32,33 触媒板
34,35 孔 36 支持棒
37 微細気泡発生器 38 ケーシング
39 衝突板 40 前端壁
41 回転軸 42,43 触媒板
44 吸入口 45 螺旋翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置した上部を開口した浄化槽に汚水を貯留するとともに、微細気泡発生器で浄化槽に微細気泡を供給して汚水を浄化し、浄化後の汚水を沈殿槽に貯留して沈殿分離し、分離された固形物を前記浄化槽に還元する一方、分離された液状物を超音波処理槽に貯留し、超音波発生器で超音波処理槽に超音波振動させた微細気泡を供給して液状物を浄化することを特徴とする汚水処理システム。
【請求項2】
前記微細気泡発生器は、前後遥動自在の傾斜状の衝突板に向けて圧縮空気を吹き付け、衝突板を圧縮空気の脈動によって振動させるとともに衝突板の表面で微細気泡を発生し、振動させた微細気泡を供給するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の汚水処理システム。
【請求項3】
微細気泡を発生させるための微細気泡発生器において、
前後遥動自在の傾斜状の衝突板に向けて圧縮空気を吹き付け、衝突板を圧縮空気の脈動によって振動させるとともに衝突板の表面で微細気泡を発生し、振動させた微細気泡を供給するように構成したことを特徴とする微細気泡発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−72982(P2011−72982A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273062(P2009−273062)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【特許番号】特許第4523671号(P4523671)
【特許公報発行日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(508356593)
【Fターム(参考)】