説明

汚泥処理方法及び汚泥処理装置

【課題】廃水の生物処理工程から発生する汚泥やこの汚泥の消化汚泥にポリマーを添加して凝集処理した後濃縮処理し、濃縮汚泥を脱水処理する汚泥処理において、濃縮装置における濃縮効率を損なうことなく、脱水機におけるポリマー量を十分に確保すると共に、脱水分離液中の残留ポリマーを回収して、効率的な汚泥の凝集、濃縮、脱水処理を行う。
【解決手段】原泥は脱水機3からの脱水分離液と共にポリマーが添加された後、第1凝集槽1Aで攪拌下凝集処理され、第1凝集汚泥は、濃縮装置2に導入されて濃縮処理される。濃縮装置2の濃縮分離液は、原泥の発生源である廃水の生物処理工程の原水槽へ返送される。濃縮装置2の濃縮汚泥は、次いで第2凝集槽1Bに送給される過程でポリマーが添加され、第2凝集槽1Bにて攪拌下凝集処理される。第2凝集槽1Bの第2凝集汚泥は、脱水機3へ送給されて脱水処理される。脱水機3の脱水ケーキは系外へ排出される。脱水分離液は第1凝集槽1Aの原泥導入側へ返送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚泥処理方法及び汚泥処理装置に係り、詳しくは、廃水の生物処理工程から発生する汚泥或いはこの汚泥を消化槽で処理した消化汚泥、特に、繊維分が少ない有機汚泥を高分子凝集剤の添加により効率的に脱水処理する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃水の生物処理工程から発生する汚泥或いはこの汚泥を消化槽で処理した消化汚泥は、一般的に、図2に示す如く、汚泥(原泥)に高分子凝集剤(ポリマー)を添加して、凝集槽1内で攪拌下凝集処理し、凝集汚泥を脱水機3で脱水処理し、得られた脱水ケーキを廃棄又は焼却することにより処分されている。このポリマー添加による凝集機構は、汚泥にポリマーを添加すると、汚泥表面にポリマーが付着し、汚泥のマイナス荷電の一部が中和されてフロックが形成されることによる。この凝集フロックを更に濃縮して汚泥濃度を高めることにより、脱水機における水負荷を軽減して脱水効率を向上させるために、図3に示す如く、凝集槽1と脱水機3との間に濃縮装置2を設け、凝集汚泥を更に濃縮処理した後脱水処理する方法も行われている。この凝集汚泥の濃縮に適した濃縮装置として、特開2003−164899号公報には、二重円筒型汚泥濃縮装置が提案されている。
【0003】
ところで、汚泥の脱水に用いられる脱水機のうち、スクリューデカンター型の遠心脱水機や、スクリュープレス等の脱水機では、脱水の後半部の汚泥濃度が高くなった段階で、スクリューの動きによって汚泥を捏ねる作用が生じる。この時、フロック内部の汚泥の荷電が中和されていない部分と液中のポリマーが反応するが、液中のポリマーが不足すると、フロックの強度が低下して、脱水が不調になる。この傾向はスクリュープレス型脱水機において、より顕著である。このため、このような脱水機を用いる場合には、脱水分離液に所定量以上のポリマーが残留するような条件で運転する必要がある。
【0004】
従来の汚泥の処理法のうち、図3に示す如く、凝集汚泥を濃縮する濃縮装置を用いる方法の方が、より一層効率的な脱水処理を行うことができ、好適であるが、この方法で、脱水の後半部においても分離液に所定量のポリマーが残留するように運転すると、
(1) 脱水の初期において、濃縮装置ではポリマーが過剰となるため、フロックに粘性が生じて、濃縮効率が悪化する。
(2) 脱水の初期において、濃縮装置の濃縮分離液にポリマーが流出し、ポリマーの浪費となる。
等の問題が生じる。
【0005】
一方、特許第2620749号公報には、高分子凝集剤の添加量を低減すると共に、脱水性及び汚泥の回収率を向上させることを目的に、汚泥に凝集剤を添加・混合してフロックを生成するフロック生成工程と、その生成したフロックから母液を分離してフロックを濃縮凝集するフロック濃縮凝集工程と、濃縮凝集されたフロックを攪拌槽内で強制攪拌することにより凝集状態を壊して細分化しながら、該攪拌槽に連設した再生槽へオーバーフローさせるフロック細分化工程と、再生槽へオーバーフローしてきた細分化フロックに、前記フロック生成工程と同じ凝集剤を少量ずつ添加しながら、前記攪拌槽における強制攪拌よりも緩やかに攪拌して混合し、フロック生成工程よりも少ない凝集剤添加量でフロックをフロック生成時よりも強化粗大化して再生槽からオーバーフローさせるフロック再生粗大化工程と、再生槽からオーバーフローしてきた粗大フロックをスクリュープレス内に投入して脱水する脱水工程とを含む汚泥処理方法が記載されている。更にこの特許第2620749号公報には、濾液中に含まれる残留ポリマーを有効に利用するために、濃縮装置及び脱水機からの濾液をフロック生成工程に戻すことが記載されている。
【0006】
しかし、特許第2620749号公報の方法では以下の問題点がある。
(1) 濃縮分離液の全量と脱水分離液の一部との混合液が凝集工程であるフロック生成工程に返送されるが、この混合液の全量を凝集工程に戻すと、大量の濾液が凝集工程に返送されることにより汚泥が希釈され、汚泥を濃縮・脱水するという本来の目的が損なわれる。
(2) 上記(1)の問題を回避するため、混合液の一部を生物処理の原水槽に戻すか或いは放流すると、濾液に含まれる残留ポリマーを有効に回収できなくなる。水バランスを考慮すると、残留ポリマーの回収は高々3割程度が限界である。
(3) フロック再生粗大化工程で必要最低限のポリマーしか添加されないため、脱水工程後半で液中のポリマーがなくなり脱水ケーキの含水率を十分に低下させることができず、SSリークも多い。
【特許文献1】特開2003−164899号公報
【特許文献2】特許第2620749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、廃水の生物処理工程から発生する汚泥やこの汚泥の消化汚泥にポリマーを添加して凝集処理した後濃縮処理し、濃縮汚泥を脱水処理する汚泥処理において、濃縮装置における濃縮効率を損なうことなく、脱水機におけるポリマー量を十分に確保すると共に、脱水分離液中の残留ポリマーを回収して、効率的な汚泥の凝集、濃縮、脱水処理を行う汚泥処理方法及び汚泥処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)の汚泥処理方法は、廃水の生物処理工程から発生する汚泥及び/又は該汚泥の消化汚泥を含む原泥に高分子凝集剤を添加して凝集処理した後濃縮処理する凝集濃縮処理工程と、該凝集濃縮処理工程からの凝集濃縮汚泥を、遠心脱水機及びスクリュープレス型脱水機のいずれかの脱水機により脱水処理して脱水ケーキと脱水分離液とに分離する脱水処理工程とを有する汚泥処理方法において、更に、該脱水分離液を該凝集濃縮処理工程に返送する工程を有し、該凝集濃縮処理工程は、原泥に該脱水分離液を混合すると共に高分子凝集剤を添加して凝集処理する第一凝集工程と、該第一凝集工程の凝集汚泥を濃縮汚泥と濃縮分離液とに分離する汚泥濃縮工程と、該濃縮汚泥に高分子凝集剤を添加して凝集処理する第二凝集工程とを備え、前記濃縮分離液を系外へ排出することを特徴とする。
【0009】
請求項2の汚泥処理方法は、請求項1において、前記脱水分離液の残留高分子凝集剤濃度が5〜50mg/Lとなるように、前記凝集濃縮処理工程において高分子凝集剤を添加することを特徴とする。
【0010】
請求項3の汚泥処理方法は、請求項2において、前記濃縮分離液の残留高分子凝集剤濃度が0〜5mg/Lとなるように、前記凝集濃縮処理工程において高分子凝集剤を添加することを特徴とする。
【0011】
請求項4の汚泥処理方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記濃縮汚泥の濃度が3〜10重量%となるように前記汚泥濃縮工程における濃縮を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項5の汚泥処理方法は、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記濃縮分離液を前記廃水の生物処理工程に返送することを特徴とする。
【0013】
本発明(請求項6)の汚泥処理装置は、廃水の生物処理工程から発生する汚泥及び/又は該汚泥の消化汚泥を含む原泥に高分子凝集剤を添加して凝集処理した後濃縮処理する凝集濃縮処理手段と、該凝集濃縮処理手段からの凝集濃縮汚泥を脱水処理して脱水ケーキと脱水分離液とに分離する、遠心脱水機及びスクリュープレス型脱水機のいずれかの脱水機よりなる脱水処理手段とを備える汚泥処理装置において、更に、該脱水分離液を該凝集濃縮処理手段に返送する手段を備え、該凝集濃縮処理手段は、原泥に該脱水分離液を混合すると共に高分子凝集剤を添加して凝集処理する第一凝集手段と、該第一凝集手段の凝集汚泥を濃縮汚泥と濃縮分離液とに分離する汚泥濃縮手段と、該濃縮汚泥に高分子凝集剤を添加して凝集処理する第二凝集手段とを備え、前記濃縮分離液は系外へ排出されることを特徴とする。
【0014】
請求項7の汚泥処理装置は、請求項6において、前記濃縮分離液を前記廃水の生物処理工程に返送する手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の汚泥処理方法及び汚泥処理装置によれば、廃水の生物処理工程から発生する汚泥やこの汚泥の消化汚泥にポリマーを添加して凝集処理した後濃縮処理し、濃縮汚泥を脱水処理する汚泥処理において、次のような作用効果のもとに、濃縮装置における濃縮効率を損なうことなく、脱水機におけるポリマー量を十分に確保すると共に、脱水分離液中の残留ポリマーを回収して、効率的な汚泥の凝集、濃縮、脱水処理を行うことができる。
(1) 濃縮汚泥にポリマーを添加して、再度凝集処理して脱水機に供するため、脱水工程において、ポリマーが不足することがなく、十分なポリマー量のもとにフロック強度を維持して効率的な脱水を行える。
(2) 脱水分離液は、第一凝集工程(手段)に返送され、原泥の凝集処理に再利用されるため、脱水分離液中の残留ポリマーを無駄にすることなく、汚泥の凝集に有効に再利用することができる。しかも、脱水分離液を返送することで、脱水分離液中のSSも回収することができ、系全体のSS回収率を高めることができる。この脱水分離液の量は、原泥量に比べて少ないため、濃縮装置の負荷をそれほど高めることはない。
(3) 脱水機に必要なポリマー量は第二凝集工程(手段)で追加添加することができるため、濃縮装置では、汚泥が高粘性となって濃縮効率を損なうほどの高ポリマー濃度とする必要はなく、このため、効率的な濃縮を行える。
(4) 濃縮装置の濃縮分離液は、系外へ排出され、好ましくは、廃水の生物処理工程に返送されるため、この濃縮分離液を凝集工程に返送する場合のような、原泥の希釈による凝集効率、脱水効率の低下の問題はない。この濃縮装置におけるポリマー濃度は、それほど高くはなく、濃縮分離液中の残留ポリマー量は少ないため、濃縮分離液を系外へ排出することによるポリマーの損失の割合は低い。
【0016】
本発明において、脱水分離液の残留ポリマー濃度は5〜50mg/Lとなるようポリマーを添加することが、ポリマーの過剰添加を防止した上で、脱水機におけるポリマー量を十分に確保して脱水効率を高める上で好ましい。
【0017】
また、濃縮分離液の残留ポリマー濃度が0〜5mg/Lとなるようにすることが、濃縮装置における過剰なポリマーによる濃縮阻害を防止して効率的な濃縮を行うと共に、この濃縮分離液を汚泥の処理系外へ排出することによる、ポリマーの損失を防止する上で好ましい。
【0018】
この濃縮装置では、濃縮汚泥の濃度が3〜10重量%となるように濃縮を行うことが、濃縮装置の負荷を過度に高めることなく、十分な濃縮を行って、後段の脱水機における脱水性を向上させるために好ましい。
【0019】
本発明において、濃縮分離液は、廃水の生物処理工程に返送するのが有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に図面を参照して本発明の汚泥処理方法及び汚泥処理装置の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は本発明の汚泥処理方法及び汚泥処理装置の実施の形態を示す系統図である。図1において、1Aは第1凝集槽、2は濃縮装置、1Bは第2凝集槽、3は脱水機であり、原泥は、脱水機3からの脱水分離液と共にポリマーが添加された後、第1凝集槽1Aで攪拌下凝集処理され、第1凝集汚泥は、濃縮装置2に導入されて濃縮処理される。濃縮装置2の濃縮分離液は系外へ排出されるが、好ましくは、この濃縮分離液は、原泥の発生源である廃水の生物処理工程の原水槽へ返送される。濃縮装置2の濃縮汚泥は、次いで第2凝集槽1Bに送給される過程でポリマーが添加され、第2凝集槽1Bにて攪拌下凝集処理される。第2凝集槽1Bの第2凝集汚泥は、脱水機3へ送給されて脱水処理される。脱水機3の脱水ケーキは系外へ排出される。一方、脱水分離液は第1凝集槽1Aの原泥導入側へ返送される。
【0022】
本発明において、処理する原泥は、廃水の生物処理工程から発生する汚泥、或いはこの汚泥を消化処理して得られる消化汚泥であるが、特に、本発明は、ポリマーによる荷電中和作用を効率的に発揮するため、繊維分15重量%以下の繊維分の少ない難脱水性の有機汚泥に有効であり、このような汚泥としては、廃水の生物処理工程の余剰汚泥、余剰汚泥含有量の高い混合生汚泥、或いは消化汚泥が挙げられる。また、原泥の濃度としては0.3〜2重量%、特に0.4〜1.5重量%、とりわけ0.5〜1.0重量%であることが好ましい。
【0023】
本発明において、第1凝集槽1Aでの凝集処理に用いるポリマーと、第2凝集槽1Bでの凝集処理に用いるポリマーとは同一であっても良く、異なるものであっても良いが、同一である方が、薬剤の管理等の面で好ましい。
【0024】
第1凝集槽1Aと第2凝集槽1Bとで同一のポリマーを使用する場合、好適なポリマーは汚泥の種類や性状によって異なるが、通常、高凝集性を付与したポリマーが好ましく、このように高凝集性を付与したポリマーとしては、後述する架橋型ポリマーや、或いはジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート4級アンモニウム塩との共重合物を挙げることができる。
架橋型ポリマーは次式によって求めたΔUVが0.3以上のポリマーをいう。
ΔUV=(B−A)/B
ここで、Aは10モルNaCl中にポリマー濃度0.5重量%となるように溶解し、これを13000rpmで1時間超遠心分離を行ったときの上部液の215nmにおける紫外線吸光度であり、Bは超遠心処理をしない場合の先のポリマー溶液の215nmにおける紫外線吸光度である。
因みに架橋型ポリマーでない通常のカチオン系高分子凝集剤であるポリマーのΔUVは0.1未満である。
【0025】
第1凝集槽1Aにおけるポリマー添加量は、濃縮装置2の濃縮に必要なフロック強度を形成する程度で、汚泥種や濃縮装置の仕様、濃縮の程度によって異なるが、後述する濃縮分離液のポリマー濃度が検出される程度に添加することが好ましく、およその目安として原泥SSに対して、0.3〜2.0重量%/SS、特に0.8〜1.2重量%/SSとすることが好ましい。ポリマー添加量が少な過ぎると後段の濃縮装置2で十分に汚泥を濃縮することができず、SSのリークも多くなる。ポリマー添加量が多過ぎるとポリマーが過剰となり後段の濃縮装置2での分離効率が悪化すると共に、ポリマーが濃縮分離液側に過剰に移行するため、回収されずに系外へ排出されるポリマーが増え、ポリマーの消費量が多くなると共に、濃縮分離液が導入される水処理系の負荷が増大するおそれがある。
【0026】
なお、第1凝集槽1A及び後段の第2凝集槽1Bとしては、攪拌機等を備える通常の凝集槽を用いることができる。また、濃縮装置2としてスクリューデカンター型遠心濃縮装置を使用する場合には、濃縮装置自体が凝集槽を兼ねるため、第1凝集槽を設ける必要はなく、この場合においてポリマーは遠心濃縮装置内に注入することが好ましい。
【0027】
濃縮装置2としては、浮上濃縮装置、スクリューデカンター型遠心濃縮装置、濾布、ドラムスクリーン、多重円盤などの濾材を有した重力濃縮装置、特開2003−164899号公報に記載の二重円筒型汚泥濃縮装置などを使用することができる。
【0028】
この濃縮装置2における濃縮の程度は、濃縮汚泥濃度として、3〜10重量%、特に4〜8重量%となるように濃縮するのが好ましい。3重量%以上、特に4重量%以上の汚泥濃度に十分に濃縮することにより、後段の脱水機3での脱水性の向上を図ると共に、第2凝集槽1Bで新たに添加するポリマーの必要添加量を低減することができる。しかし、汚泥濃度10重量%以上に濃縮すると、濃縮装置2での負荷が大き過ぎ、本工程におけるSSリークが多くなる。
【0029】
また、濃縮装置2の濃縮分離液中のポリマー濃度は0〜5mg/L、特に0.2〜2mg/L、とりわけ0.5〜1.5mg/Lであることが好ましい。濃縮分離液中のポリマー濃度が高過ぎると、この濃縮分離液を系外へ排出することによるポリマーの無駄が多くなる。ただし、この濃縮分離液中のポリマー量が過度に少ないと、凝集汚泥を十分に濃縮できない場合がある。従って、第1凝集槽1Aの原泥導入側では、上記の適度な濃縮分離液中のポリマー濃度が得られるようにポリマー添加量を調整することが好ましい。この濃縮分離液は、前述の如く、好ましくは、廃水の生物処理工程等の水処理系へ返送して処理される。
【0030】
第2凝集槽1Bにおけるポリマー添加量は、処理する原泥種によっても異なるが、後述する脱水分離液のポリマー濃度が検出される程度であることが好ましく、およその目安として濃縮汚泥SSに対して0.1〜2.0重量%/SS、特に0.2〜1.5重量%/SS、とりわけ0.3〜1.0重量%/SSとするのが好ましい。この第2凝集槽1Bにおいては、汚泥濃度が高く、荷電中和が更に進むため、生成するフロックの強度は第1凝集槽1Aの場合に比べて強くなる。なお、脱水機3としてスクリューデカンター型の遠心脱水機を使用する場合には、脱水機自体が凝集槽を兼ねるため、第2凝集槽を設ける必要はなく、この場合において、ポリマーは遠心脱水機の機内に注入することが好ましい。
【0031】
脱水機3としては、汚泥を捏ねる作用を有する脱水機であって、スクリューデカンター型の遠心脱水機又はスクリュープレス型脱水機が用いられるが、特にスクリュープレス型脱水機を用いるのが好ましい。
【0032】
この脱水機で得られる脱水分離液の残留ポリマー濃度は、5〜50mg/L、特に10〜30mg/L、とりわけ15〜25mg/Lであることが好ましい。この脱水分離液中の残留ポリマー量が少な過ぎると、前述の如く、脱水の後半部で汚泥濃度が高くなったときに、フロックの強度が低下して脱水不良となるおそれがある。脱水分離液中の残留ポリマー量が過度に多いとポリマー量が徒に増えるのみであり、好ましくない。
【0033】
この脱水分離液の少なくとも一部、好ましくは全量が、第1凝集槽1A或いは第1凝集槽1Aに供給される原泥ラインに返送され、脱水分離液中の残留ポリマーは第1凝集槽1Aでの汚泥の凝集処理に有効利用される。
【0034】
なお、図1は、本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明はその要旨を超えない限り、何ら図示のものに限定されるものではない。例えば、前述の如く、濃縮装置として凝集槽を兼ねるスクリューデカンター型遠心濃縮装置を用いる場合には、第1凝集槽を省略することができ、また、脱水機として凝集槽を兼ねるスクリューデカンター型遠心脱水機を用いる場合には、第2凝集槽を省略することができる。また、ポリマーは、汚泥の移送ラインに導入する他、凝集槽に直接添加することもでき、汚泥の移送ラインと凝集槽との両方に添加することもできる。脱水分離液についても原泥ラインに導入する他、第1凝集槽に直接添加しても良く、また、原泥ラインと第1凝集槽との両方に添加しても良い。また、ポリマーを原泥ラインに添加し、脱水分離液を第1凝集槽に添加しても良く、逆に脱水分離液を原泥ラインに添加し、ポリマーを第1凝集槽に添加しても良い。
【実施例】
【0035】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0036】
実施例1
下水をオキシデーションディッチで処理する生物処理工程からの余剰汚泥(濃度:1.0重量%,繊維分5重量%)を、図1に示す汚泥処理装置で凝集、濃縮、脱水処理する試験を行った。
【0037】
濃縮装置2としては、2重円筒型濃縮機(φ250mm)を用い、脱水機3としては、スクリュープレス型脱水機(φ500mm)を用いた。
【0038】
第1凝集槽1A及び第2凝集槽1Bに添加するポリマーとしては中ないし高カチオンの高凝集性を付与したポリマーである「クリフィックスCP566」(栗田工業(株)製)を用いた。各槽のポリマー添加量は表1に示す通りである。
【0039】
このときの原泥処理量、濃縮装置2の濃縮汚泥及び濃縮分離液、脱水機3の脱水ケーキ及び脱水分離液の分析結果と、系全体のSS回収率、ポリマー放流率(添加ポリマー量に対する系外へ放流されたポリマー量の割合)は表1に示す通りであった。
【0040】
比較例1
図2に示す汚泥処理装置で、実施例1で処理したと同様の原泥の凝集、脱水処理試験を行った。用いた脱水機は実施例1で用いたものと同仕様であり、ポリマーも同一のものを用い、その添加量は表1に示す通りとした。脱水機3の脱水分離液は系外へ排出した。
【0041】
このときの原泥処理量、脱水機3の脱水ケーキ及び脱水分離液の分析結果と、系全体のSS回収率、ポリマー放流率は表1に示す通りであった。
【0042】
比較例2
図3に示す汚泥処理装置で、実施例1で処理したと同様の原泥の凝集、脱水処理試験を行った。用いた濃縮装置及び脱水機は実施例1で用いたものと同仕様であり、ポリマーも同一のものを用い、その添加量は表1に示す通りとした。濃縮装置2の濃縮分離液及び脱水機3の脱水分離液は系外へ排出した。
【0043】
このときの原泥処理量、濃縮装置2の濃縮汚泥及び濃縮分離液、脱水機3の脱水ケーキ及び脱水分離液の分析結果と、系全体のSS回収率、ポリマー放流率は表1に示す通りであった。
【0044】
【表1】

【0045】
表1より、本発明によれば、ポリマーの無駄を低減した上で、高いSS回収率で汚泥を効率的に処理することができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の汚泥処理方法及び汚泥処理装置の実施の形態を示す系統図である。
【図2】従来例を示す系統図である。
【図3】従来例を示す系統図である。
【符号の説明】
【0047】
1 凝集槽
1A 第1凝集槽
1B 第2凝集槽
2 濃縮装置
3 脱水機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水の生物処理工程から発生する汚泥及び/又は該汚泥の消化汚泥を含む原泥に高分子凝集剤を添加して凝集処理した後濃縮処理する凝集濃縮処理工程と、該凝集濃縮処理工程からの凝集濃縮汚泥を、遠心脱水機及びスクリュープレス型脱水機のいずれかの脱水機により脱水処理して脱水ケーキと脱水分離液とに分離する脱水処理工程とを有する汚泥処理方法において、
更に、該脱水分離液を該凝集濃縮処理工程に返送する工程を有し、
該凝集濃縮処理工程は、
原泥に該脱水分離液を混合すると共に高分子凝集剤を添加して凝集処理する第一凝集工程と、
該第一凝集工程の凝集汚泥を濃縮汚泥と濃縮分離液とに分離する汚泥濃縮工程と、
該濃縮汚泥に高分子凝集剤を添加して凝集処理する第二凝集工程とを備え、
前記濃縮分離液を系外へ排出することを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項2】
請求項1において、前記脱水分離液の残留高分子凝集剤濃度が5〜50mg/Lとなるように、前記凝集濃縮処理工程において高分子凝集剤を添加することを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項3】
請求項2において、前記濃縮分離液の残留高分子凝集剤濃度が0〜5mg/Lとなるように、前記凝集濃縮処理工程において高分子凝集剤を添加することを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記濃縮汚泥の濃度が3〜10重量%となるように前記汚泥濃縮工程における濃縮を行うことを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記濃縮分離液を前記廃水の生物処理工程に返送することを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項6】
廃水の生物処理工程から発生する汚泥及び/又は該汚泥の消化汚泥を含む原泥に高分子凝集剤を添加して凝集処理した後濃縮処理する凝集濃縮処理手段と、該凝集濃縮処理手段からの凝集濃縮汚泥を脱水処理して脱水ケーキと脱水分離液とに分離する、遠心脱水機及びスクリュープレス型脱水機のいずれかの脱水機よりなる脱水処理手段とを備える汚泥処理装置において、
更に、該脱水分離液を該凝集濃縮処理手段に返送する手段を備え、
該凝集濃縮処理手段は、
原泥に該脱水分離液を混合すると共に高分子凝集剤を添加して凝集処理する第一凝集手段と、
該第一凝集手段の凝集汚泥を濃縮汚泥と濃縮分離液とに分離する汚泥濃縮手段と、
該濃縮汚泥に高分子凝集剤を添加して凝集処理する第二凝集手段とを備え、
前記濃縮分離液は系外へ排出されることを特徴とする汚泥処理装置。
【請求項7】
請求項6において、前記濃縮分離液を前記廃水の生物処理工程に返送する手段を備えることを特徴とする汚泥処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−35166(P2006−35166A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−222076(P2004−222076)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】