説明

汚泥処理方法

【課題】 汚泥に含まれる成分を利用して効率よくpH調整することができ、このためpH調整剤が不要であるか、あるいはその使用量が少なくてすみ、目標pHへの調整が容易であって、しかもpH調整剤を用いる場合よりも臭気防止効果を高めることができる汚泥処理方法を提案する。
【解決の手段】 排水処理場で発生する初沈汚泥10またはその濃縮汚泥と、余剰汚泥9またはその濃縮汚泥とを混合して脱水処理する汚泥処理方法において、最初沈澱池における引き抜き初沈汚泥の平均SS濃度を2重量%以上になるようにして酸性腐敗させ、生成有機酸によりpH5.3未満に調整し、調整汚泥に亜硝酸塩を添加して余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを混合するか、または混合汚泥に亜硝酸塩を添加し、亜硝酸塩添加汚泥を脱水処理することにより、臭気の発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機性排水の処理場で発生する初沈汚泥またはその濃縮汚泥と、濃縮余剰汚泥を混合して脱水処理する汚泥処理方法に関し、さらに詳細には、汚泥に亜硝酸塩を添加することにより、臭気の発生を効果的に防止することができる汚泥処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水、食品工業排水、紙パルプ工業排水などの有機性排水の処理方法として、活性汚泥処理方法のような好気性処理方法がある。このような好気性処理では、被処理排水はまず最初沈殿池で固液分離され、分離液は活性汚泥処理のような好気性生物処理を受け、好気性処理液は最終沈殿池で固液分離され、分離液は処理水として放流される。最初沈殿池では分離汚泥が初沈汚泥として排出される。最終沈殿池では分離汚泥の大部分は返送汚泥として、好気性処理工程に返送され、一部は余剰汚泥として排出される。このような好気性処理で発生する初沈汚泥および余剰汚泥は、通常混合して脱水処理されるが、一般的にはそれぞれを濃縮して混合し、脱水剤を加えて機械脱水される。
【0003】
このような汚泥処理においては、汚泥スラリーを脱水するまでの各工程、脱水ケーキの貯留、保管工程などで、硫化水素、メチルメルカプタンなどのイオウ化合物、アンモニア、トリメチルアミンなどの窒素化合物、吉草酸、イソ酪酸などの低級脂肪酸、アルデヒド類など悪臭物質が発生し、環境を悪化させている。このため汚泥処理工程において、防臭剤を添加して、悪臭物質の発生を防止する汚泥処理方法が検討されている。
【0004】
特許文献1(特開2000−202494号)には、好気性処理で発生する初沈汚泥および余剰汚泥の混合汚泥に、亜硝酸塩、亜硫酸塩または亜硫酸水素塩を添加し、15分間以上経過後、汚泥を脱水する方法が示されている。また特許文献2(特開2002−28696号)には、初沈汚泥および余剰汚泥の混合汚泥に、pH調整剤として有機性二塩基酸、第二鉄塩などを添加し、pH5.5以下に低下させた調整汚泥に、静菌剤として亜硝酸塩を存在させ、汚泥を脱水する方法が示されている。
【0005】
これらの方法は、汚泥スラリーおよび脱水ケーキの臭気分解および臭気発生防止をはかるもので、有効な脱臭効果が得られる汚泥の脱水技術である。しかしこれらの方法では、静菌剤としての亜硝酸塩の臭気防止効果を高めるために、有機性二塩基酸、第二鉄塩などのpH調整剤を多量に添加する必要があるため、処理コストが高くなる。また所定pHとするためのpH調整剤の必要量が、汚泥変化に伴い変動するため、pH低下が不足であったり、pH低下が行き過ぎて、脱水時の高分子凝集剤(高分子脱水剤)の凝集・脱水効果を低下させることがあるなどの問題点がある。
【特許文献1】特開2000−202494号
【特許文献2】特開2002−28696号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、汚泥に含まれる成分を利用して効率よくpH調整することができ、このためpH調整剤が不要であるか、あるいはその使用量が少なくてすみ、目標pHへの調整が容易であって、しかもpH調整剤を用いる場合よりも臭気防止効果を高めることができる汚泥処理方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、次の汚泥処理方法である。
(1) 排水処理で発生する初沈汚泥またはその濃縮汚泥と、余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを混合して脱水処理する汚泥処理方法であって、
初沈汚泥またはその濃縮汚泥を酸性腐敗させることにより、生成する有機酸によって汚泥の平均pHを5.3未満に調整する汚泥調整工程と、
調整汚泥と余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを混合する汚泥混合工程と、
調整汚泥、余剰汚泥、その濃縮汚泥または混合汚泥に亜硝酸塩を添加する亜硝酸塩添加工程と、
亜硝酸塩添加汚泥を脱水処理する脱水処理工程と
を含む汚泥処理方法。
(2) 汚泥調整工程が、最初沈澱池における引き抜き初沈汚泥の平均SS濃度が2重量%以上になるように滞留、濃縮して、濃縮汚泥を酸性腐敗させ、濃縮汚泥のpHを低下させる工程を含む上記(1)記載の方法。
(3) 汚泥調整工程が、引き抜き初沈汚泥を貯留し、さらに酸性腐敗を進行させてpH5未満に調整する工程を含む上記(1)または(2)記載の方法。
(4) 調整汚泥に亜硝酸塩を添加し、亜硝酸塩を添加した調整汚泥と余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを汚泥混合工程で混合する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の方法。
(5) 汚泥混合工程で調整汚泥と余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを混合した後、混合汚泥に亜硝酸塩を添加する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の方法。
(6) 調整汚泥、濃縮余剰汚泥または混合汚泥に第二鉄塩またはアルミニウム塩を添加する汚泥pH低下工程をさらに含む上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の方法。
【0008】
本発明において、処理の対象となる汚泥は、排水処理場で発生する初沈汚泥および余剰汚泥である。このような汚泥は、下水、し尿、食品工業排水、紙パルプ工業排水などの有機性排水の処理方法として一般に行われている活性汚泥処理方法等の好気性処理方法において、最初沈殿池で分離される初沈汚泥、および最終沈殿池で分離され、余剰汚泥として排出される余剰汚泥である。これらの汚泥は、濃縮汚泥の混合汚泥として脱水処理されるが、濃縮は混合の前でも、後でもよい。
【0009】
本発明では、汚泥調整工程において、これらの汚泥のうち初沈汚泥またはその濃縮汚泥を意図的に腐敗させて、pH5.3未満に調整する。ここでは汚泥の腐敗による有機酸生成により、pHが低下するが、腐敗とそれに伴うpH低下が起こり易いのは、炭水化物、脂肪等の有機酸を生成するような有機物を多量に含む初沈汚泥である。余剰汚泥は、微生物が主体であり、有機酸を生成するような有機物および有機酸自体はすでに分解しているため、pHは中性で、pH低下も起こり難い。このため本発明では、初沈汚泥またはその濃縮汚泥を腐敗させ、生成有機酸によりpH5.3未満に調整する。
【0010】
本発明において初沈汚泥とは、生物処理工程の最初沈澱池で分離される汚泥であるが、最終沈殿池から発生する余剰汚泥の30%程度以下を最初沈澱池に戻して、原水とともに固液分離する処理方法において、最初沈澱池で分離される汚泥も含む。余剰汚泥の全量を最初沈殿に戻す旧来型の処理の場合でも、本発明の方法は適用できるが、余剰汚泥分が多いので、余剰汚泥を含まない場合に比較して、最初沈澱池での汚泥濃縮が進み難く、pH低下速度も遅いため、臭気防止効果が減少し、あるいは亜硝酸の必要添加量が増加する。また、濃縮汚泥濃度が低いため、脱水すべき汚泥スラリー容量が増加する。
【0011】
初沈汚泥またはその濃縮汚泥と、余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを混合した後に、混合汚泥を腐敗させると、腐敗は進行しても有機酸生成が少なく、pH低下速度は遅く、不安定で、目的のpHに調整することが困難である。またこの場合は、腐敗させる過程での臭気発生が激しく、汚泥処理工程の臭気防止をはかる本来の目的に相反する。これに加え、汚泥腐敗の進行により汚泥の脱水性が悪化し、脱水ケーキ含水率が上昇し、ケーキ処分量、処分費用が増加する。このように汚泥を意図的に腐敗させ、pH低下させるには、酸性腐敗が起こり易い初沈汚泥が適している。このため本発明では、余剰汚泥もしはその濃縮濃縮汚泥と混合する前の、初沈汚泥を酸性腐敗させ、生成する有機酸によって汚泥の平均pHをpH5.3未満、好ましくはpH5.0未満に調整する。
【0012】
下水等の通常の有機性排水の処理場では、最初沈殿池で原水中の有機性固形物を沈殿させ、分離液を好気性反応槽(曝気槽)に送り、生物処理を行う。最初沈澱池から引き抜かれた汚泥(初沈汚泥)は、重力濃縮槽に送って濃縮を行うが、この際重力濃縮槽に投入する引抜き初沈汚泥の濃度は1.0重量%以下が一般的で、そのpHは流入下水よりやや低い程度、具体的にはpH6.0〜6.5である。引抜き初沈汚泥濃度を高くすると、炭酸ガス発生等の濃縮阻害が起こり、重力濃縮機能が低下し、好ましくない。以上の留意点は下水道維持管理指針2003年度版後編308、309ページに記載されている。
【0013】
本発明において、初沈汚泥またはその濃縮汚泥を酸性腐敗させ、pH5.3未満、好ましくはpH5.0未満に調整するためには、前述の下水道維持管理指針で推奨される処理と逆に、最初沈澱池における引抜き汚泥のSS濃度が2重量%以上、好ましくは2.5重量%以上になるように滞留、濃縮して初沈汚泥を引き抜くのが好ましい。これにより最初沈澱池内の堆積汚泥相内では、汚泥が高濃度に濃縮されるとともに、主として炭水化物系有機物が腐敗して有機酸を生成し、これが汚泥相内に留まり、蓄積してpHが低下する。流入下水有機物の基質の相違にもよるが、多くの引き抜き汚泥はこの操作でpH5.3未満に調整される。
【0014】
一般的には引抜き初沈汚泥を重力濃縮槽で重力濃縮させるが、本発明においてSS濃度が2重量%以上になるように濃縮された初沈汚泥を、重力濃縮槽で濃縮することは、前述の下水道維持管理指針に記載されている通り困難である。したがって本発明では、従来の重力濃縮槽は濃縮した初沈汚泥の中継、貯留槽として使用することができる。また初沈汚泥のpH低下が不十分な場合でも、重力濃縮槽を利用した貯留槽で貯留時間を調整して、汚泥をpH5.3未満に調整することができる。
【0015】
汚泥混合工程は、pH5.3未満に調整された調整汚泥と、余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを混合する工程である。この汚泥混合は、次の亜硝酸塩添加工程の前に行っても、後で行ってもよい。亜硝酸塩添加工程の前に汚泥混合を行う場合は、混合汚泥に亜硝酸塩添加を行う。亜硝酸塩添加工程の後に汚泥混合を行う場合は、調整汚泥、余剰汚泥、またはその濃縮汚泥に亜硝酸塩添加し、その後亜硝酸塩添加調整汚泥と余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを混合することになる。
【0016】
亜硝酸塩添加工程は、調整汚泥、余剰汚泥、その濃縮汚泥または混合汚泥に亜硝酸塩を添加する工程である。亜硝酸塩添加を汚泥混合工程の前に行う場合は、調整汚泥、余剰汚泥、またはその濃縮汚泥に亜硝酸塩を添加することができ、汚泥混合工程の後に行う場合は、混合汚泥に亜硝酸塩を添加することができる。これらの中では、調整汚泥または混合汚泥に亜硝酸塩を添加するのが好ましい。亜硝酸塩としては、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム等が挙げられる。亜硝酸塩の添加量は、初沈汚泥またはその濃縮汚泥と濃縮余剰汚泥の合計容量に対して、亜硝酸イオンとして20〜200mg/L、好ましくは40〜150mg/Lである。
【0017】
引き抜き初沈汚泥のpHが5.3未満に調整された調整汚泥に亜硝酸塩を添加する場合は、引抜き汚泥およびその汚泥が導かれる貯留槽、あるいは、中継・貯留槽に転用した重力濃縮槽等に、亜硝酸塩を添加することができる。貯留槽、あるいは中継・貯留槽に転用した重力濃縮槽でさらに調整汚泥のpH低下を図る場合は、これらの槽、これらの槽からの引抜き汚泥、あるいはその投入先である濃縮余剰汚泥との混合汚泥の貯留槽等に亜硝酸塩を添加することができる。調整汚泥と濃縮余剰汚泥との混合汚泥に亜硝酸塩を添加する場合は、混合汚泥の貯留槽等に亜硝酸塩を添加することができる。
【0018】
亜硝酸塩の添加時(さらにpH低下調整剤を添加する場合は、両者の添加時)から脱水処理に至るまでの時間は、0.3〜48時間、好ましくは3〜12時間とすることができる。一般的に初沈汚泥と余剰汚泥の混合汚泥の貯留槽の汚泥平均滞留時間は1時間以上あるが、昼間のみの脱水運転の場合、添加した亜硝酸塩が夜間に消費、分解される場合があるが、この場合には脱水開始1時間程度前に、亜硝酸塩を一括して追加添加することができる。
【0019】
pH5程度5.3未満の調整汚泥と濃縮余剰汚泥を混合すると、一方の濃縮余剰汚泥のpHは6程度であるため、混合汚泥はpH5未満からpH5.5程度となる。混合汚泥のpHが5.5程度でも亜硝酸による汚泥スラリー、およびその脱水ケーキの消臭効果が発揮されるが、特に脱水ケーキの消臭効果を高めるためには、混合汚泥をpH5未満に調整することが好ましい。混合汚泥をpH5未満に調整するためには、汚泥調整工程における腐敗時間を長くして、調整汚泥をpH4.7程度とすると良い。このほか調整汚泥、濃縮余剰汚泥または混合汚泥にpH低下調整剤として第二鉄塩またはアルミニウム塩を添加して、混合汚泥をpH5未満に調整することもできる。
【0020】
このpH低下調整剤には、第二鉄塩として、具体的には塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄、およびアルミニウム塩として、具体的には塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどを使用することができる。これらの第二鉄塩、アルミニウム塩は、混合汚泥のpH低下作用による亜硝酸塩による消臭効果強化のほか、余剰汚泥中の溶解性りんを金属塩として固定するので、汚泥処理返流水として水処理工程に戻るりんを削減し、結果として、放流水のりん汚濁量を軽減することができる。第二鉄塩、アルミニウム塩の添加量は、いずれも液体製品として、対濃縮余剰汚泥に対し1000−10000mg/Lである。
【0021】
pH低下調整剤の添加場所は、濃縮余剰汚泥槽、濃縮余剰汚泥の汚泥混合槽への移送ライン、汚泥混合槽のいずれでも良い。ただし、汚泥混合槽に亜硝酸塩と第二鉄塩またはアルミニウム塩の両者を添加する場合は、両薬品が直接、あるいは高濃度で接触しないように、添加場所等に留意するのが好ましい。
【0022】
脱水処理工程では、上記の亜硝酸塩添加汚泥を脱水処理する。ここで脱水処理する亜硝酸塩添加汚泥は、亜硝酸塩添加工程で調整汚泥に亜硝酸塩を添加し、亜硝酸塩を添加した調整汚泥と余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを汚泥混合工程で混合した混合汚泥、汚泥混合工程で調整汚泥と余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを混合し、混合汚泥に亜硝酸塩添加工程で亜硝酸塩を添加した混合汚泥、さらにこれらの汚泥に塩添加工程で第二鉄塩またはアルミニウム塩を添加した混合汚泥などが挙げられる。
【0023】
亜硝酸塩添加汚泥を脱水処理方法としては公知の方法が採用できる。例えば汚泥スラリーを、遠心脱水機、ベルトプレス脱水機、スクリュープレス脱水機、フィルタープレス脱水機、真空脱水機などを用いて脱水することができる。汚泥スラリーには、脱水性を向上するために、脱水機に投入する前段に、または脱水機内に脱水剤として、例えばアニオン系高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤、両性高分子凝集剤、消石灰などを添加して脱水することができる。
【0024】
上記の処理では、初沈汚泥またはその濃縮汚泥を腐敗させ、生成有機酸によりpH5.3未満に調整した調整汚泥、または余剰汚泥、その濃縮汚泥との混合汚泥に亜硝酸塩を添加しているので、亜硝酸添加後汚泥から脱水工程、およびその脱水ケーキ貯留までの臭気発生を防止することができる。この場合、汚泥に含まれる成分を利用してpH調整するので、効率よくpH調整することができ、このためpH調整剤が不要であるか、あるいはその使用量が少なくてすむ。そして目標pHへの調整が容易であり、しかもpH調整剤を用いる場合よりも臭気防止効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上の通り、本発明によれば、初沈汚泥またはその濃縮汚泥を腐敗させ、生成有機酸によりpH5.3未満に調整し、調整汚泥、余剰汚泥、その濃縮汚泥または混合汚泥に亜硝酸塩を添加し、臭気の発生を防止して脱水処理するようにしたので、汚泥に含まれる成分を利用して効率よくpH調整することができ、このためpH調整剤が不要であるか、あるいはその使用量が少なくてすみ、目標pHへの調整が容易であって、しかもpH調整剤を用いる場合よりも臭気防止効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面により説明する。なお、%は重量%である。図1は本発明の実施形態の汚泥処理方法を示すフロー図であり、従来の下水処理装置をそのまま使用する構成となっている。図1において、1は最初沈澱池、2は好気性反応槽(曝気槽)、3は最終沈澱池であり、これらは好気性生物処理装置を構成している。好気性生物処理は、原水4を最初沈澱池1で固液分離し、分離液5を好気性反応槽2で好気性生物処理し、反応液6を最終沈澱池3で固液分離し、分離液を処理水7として放流し、分離汚泥の一部を返送汚泥8として返送し、残部を余剰汚泥9として取出す。最初沈澱池1の分離汚泥は初沈汚泥10として取出す。
【0027】
11は重力濃縮槽であり、ここで初沈汚泥10を重力濃縮し、重力濃縮汚泥貯槽12へ送って貯留する。これらは初沈汚泥の中継・貯留層として使用し、ここで初沈汚泥のpH低下を図る。13は余剰汚泥貯槽であり、ここで余剰汚泥9を貯留する。14は余剰汚泥濃縮装置で、遠心濃縮装置等が使用され、ここで余剰汚泥貯槽13の余剰汚泥を濃縮し、濃縮余剰汚泥貯槽15へ送って貯留する。16は汚泥混合貯槽であり、ここで重力濃縮汚泥貯槽12の重力濃縮汚泥と、濃縮余剰汚泥貯槽15の濃縮余剰汚泥を混合して貯留する。17は汚泥脱水装置で、遠心脱水機、ベルトプレス脱水機等が使用され、ここで汚泥混合貯槽16の混合汚泥を脱水処理し、脱水ケーキを脱水ケーキ貯槽18へ送って貯留する。脱水ケーキ貯槽18の脱水ケーキは焼却炉19で焼却されるか、あるいは他の処理のため搬出される。
【0028】
上記のフローは、従来の下水処理装置をそのまま使用する構成となっているが、最初沈澱池1では初沈汚泥10を貯めて濃縮する運転条件とし、引抜き汚泥量を少なくする。この結果、引抜き汚泥濃度は2%から3%と濃縮され、pHも5.3未満となる。重力濃縮槽11は、中継槽、または初沈汚泥pHを更に下げるための貯留、調整槽として使用する。初沈汚泥10が引抜きの段階で、pH5.3未満に安定してなっている場合は、重力濃縮槽11で亜硝酸塩を添加することができる。重力濃縮汚泥貯槽12は中継槽として用いられており、ここで重力濃縮汚泥を貯留して酸性腐敗させ、pH低下させて調整することもできる。初沈汚泥10が引抜きの段階で、pH5.3未満に安定してなっている場合は、重力濃縮汚泥貯槽12を省略することもできるが、これがある場合は、ここで亜硝酸塩を添加することもできる。これらは、処理施設の設備状況、最初沈殿汚泥の貯留・腐敗によるpH低下度合によって適切な運用を決めることができる。
【0029】
余剰汚泥9は、余剰汚泥貯槽13を経て、遠心、浮上、および重力方式の余剰汚泥濃縮装置14で濃縮され、濃縮余剰汚泥貯槽15に送られて貯留される。汚泥混合貯槽16では、重力濃縮汚泥貯槽12の初沈汚泥またはその濃縮汚泥と、濃縮余剰汚泥貯槽15の濃縮余剰汚泥が混合されて貯留される。この工程までに亜硝酸塩を添加していない場合は、汚泥混合貯留槽16に亜硝酸塩を添加する。
【0030】
亜硝酸塩を添加した濃縮調整汚泥に第二鉄塩、アルミニウム塩を添加する場合は、濃縮余剰汚泥貯槽15、汚泥混合貯槽16へ投入する途中の汚泥、および汚泥混合貯槽16のいずれかに添加し、混合することができる。
【0031】
通常の汚泥処理工程で特に臭気発生が大きい場所は、重力濃縮槽11、重力濃縮汚泥貯槽12、汚泥混合貯槽16、汚泥脱水装置17の初沈汚泥が存在する処理プロセスであり、余剰汚泥処理系、特に余剰汚泥濃縮装置14以前では、臭気問題は少ない。、重力濃縮槽11、重力濃縮汚泥貯槽12、汚泥混合貯槽16等は密閉構造とすることにより、消臭が可能であるが、汚泥脱水装置17は密閉構造とすることは困難であり、臭気が発生する。これに対し本発明では、pH調整と亜硝酸塩添加により、臭気発生問題の大きい汚泥処理プロセスのほとんどで消臭が可能となる。
【0032】
亜硝酸塩の消臭作用は、(a)すでに発生している硫化水素、メチルメルカプタンなど、下水汚泥系の悪臭主因の硫黄系化合物の分解作用のほか、(b)腐敗細菌類の活動を停止させる静菌作用と考えられる。
汚泥スラリーの臭気発生防止、脱水ケーキの臭気発生防止は上記(b)の作用によると考えられる。このため脱水ケーキの臭気発生防止には、その脱水前の汚泥スラリーで、20mg/L程度以上の亜硝酸イオン濃度を少なくとも1時間、好ましくは3時間保持することが重要である。
【0033】
一方亜硝酸イオンは汚泥中の微生物で生物化学的に分解されるため、時間とともにその濃度は消費、減少し、消失する。この亜硝酸の消費速度はpHに依存し、pH中性では速く、pH低下に伴い速度低下し、pH4.5−4.7程度で最小値を記録する。 pH4.5以下では、再び速度上昇に転じるが、これは、生物化学的分解ではなく、亜硝酸の不安定化による化学分解と考えられる。初沈汚泥の腐敗・有機酸生成によるpH低下は、pH4.7程度まで速やかに進行し、その後のpH低下はほとんどなく、最低pHでも4.4程度である。したがって、本発明の初沈汚泥処理法で、亜硝酸塩の効果を最適化できる条件が初沈汚泥自体の性質を利用して得られる。
【0034】
初沈汚泥を腐敗させpH5.3未満とした汚泥では、人為的に酸あるいは第二鉄塩でpH5.3未満とした汚泥に対し、pHが同じでも、前者の方が亜硝酸塩添加による臭気発生防止効果が優れる。この臭気防止効果向上の理由としては、次のことが考えられる。
1)pHは同じであっても酸の当量が多く、その分亜硝酸の生物分解速度を更に低下させている。
2)腐敗、酸性化の段階で、汚泥の微生物相の優先種等の変化を生じ、これが、亜硝酸塩の腐敗菌等の静菌作用を受けた後の微生物相の構成にも、人為的酸性化の場合との違いを生じ、結果として特に脱水ケーキの臭気発生防止効果を更に向上させた。
【実施例】
【0035】
A下水処理場の最初沈殿汚泥および余剰汚泥を用いて、本発明の汚泥処理方法を実施した。A処理場は、図1のフローにおいて、余剰汚泥濃縮装置14は遠心濃縮機、汚泥脱水装置17はベルトプレス脱水機であり、脱水ケーキは焼却処理される処理プロセスとなっている。
【0036】
上記の処理プロセスにおいて、通常運転における初沈汚泥は、引抜きポンプをタイマーにより間欠運転して引抜いている。ポンプ稼動は2時間毎に5分間である。この初沈汚泥を、ポンプ稼動直後の0.5分後から1.0分後までに引抜かれる高濃度汚泥(以下、高濃度初沈汚泥(A1)と記す)と、同ポンプ稼動3.5分後から5分後のほとんど固形分のない汚泥(以下、低濃度初沈汚泥(A2)と記す)の両方の引抜き初沈汚泥を採取した。高濃度初沈汚泥の採取時pHは5.34、水温23℃、試験時分析SS濃度は3.03%であった。低濃度初沈汚泥の採取時pHは6.61、水温22℃、試験時分析SS濃度は0.14%であった。ポンプ稼動後半の汚泥固形分がなくなっている低濃度初沈汚泥の採取時の運転状況は、一般に最初沈殿池、およびこの汚泥が投入される重力濃縮槽の管理として推奨されている条件である。なおポンプ稼動5分間の平均濃度(算術平均値)は0.93%、同pH6.13であった。
【0037】
上記の試験結果より、最初沈澱池で適度に滞留、濃縮し、汚泥pH低下させる設定条件として、最初沈殿池での滞留時間を想定して、高濃度初沈汚泥を22−23℃で所定時間保管して、調整汚泥とした。3時間保管したもの(以下、高濃度初沈3(A3)と記す)、8時間保管したもの(以下、高濃度初沈8(A4)と記す)、16時間保管したもの(以下、高濃度初沈16(A5)と記す)、24時間保管したもの(以下、高濃度初沈24(A6)と記す)を調整汚泥として用いた。
【0038】
汚泥の準備:
高濃度最初沈殿汚泥(A1)1容量と、低濃度初沈汚泥(A2)2容量を混合し、300mmΦ、1.5m高さの試験重力濃縮槽で12時間濃縮し、濃縮汚泥(以下、室内重力濃縮汚泥(B)と記す)を得た。上記混合汚泥の重力濃縮前のpHは6.01、SS濃度は0.96%であり、重力濃縮後の汚泥pHは5.64、SS濃度は3.01%であった。またA処理場の重力濃縮槽引抜き汚泥(以下、実機重力濃縮汚泥(C)と記す)を採取した。その採取時pHは5.57、水温24℃で、SS濃度は3.17%であった。
【0039】
一方、濃縮余剰汚泥貯槽15から濃縮余剰汚泥(D)を採取し、前記高濃度初沈汚泥(A1)、高濃度初沈(A3)〜(A6)、室内重力濃縮汚泥(B)、または実設備重力濃縮汚泥(C)と混合して混合汚泥とした。濃縮余剰汚泥(D)採取時のpHは6.14、水温24℃で、SS濃度は3.32%であった。濃縮余剰汚泥(D)と、前記高濃度初沈汚泥(A1)、高濃度初沈(A3)〜(A6)、室内重力濃縮汚泥(B)、または実設備重力濃縮汚泥(C)との混合条件は、実設備実績に合わせて、容量比で濃縮余剰汚泥(D)35%、後7種の初沈系汚泥65%とした。
【0040】
上記の混合汚泥について、脱水試験を行った。汚泥採取から脱水試験開始までの時間は、高濃度最初沈殿汚泥が短い時間でpH低下が起こるので、採取後できるだけ早く試験を開始した。採取から試験開始までの時間は3時間であった。
【0041】
試験、評価方法:
1)試験汚泥、薬注汚泥の保管条件;
汚泥を気体不透過性の容量0.85Lの食品等保管袋(商品名:マイティーパック)に採取、密封し、振盪器で緩やかな攪拌を行った。室温は23℃に設定した。
【0042】
2)汚泥スラリー臭気試験;
マイティーパック内の汚泥を約60mL取り出し、内50mLをシリンジで採取し、500mLポリエチレン瓶(全容積630mL)に取り、蓋をして、振盪器で2分間激しく振盪後、硫化水素およびメチルメルカプタン検知管にて、容器内のガス濃度を測定した。
【0043】
3)脱水ケーキ調整条件;
所定の薬注、保管が完了した汚泥200mLを採取し、カチオン系高分子凝集剤クリフィックスCP111(栗田工業(株)製)溶液で凝集フロックを形成させ、重力ろ過を行い、その全量を、ろ布を介して0.04Mpaの圧力で120秒間圧搾脱水し、脱水ケーキを得た。なお、比較例10、11ではカチオン系凝集剤の凝集力が減退するため、両性高分子凝集剤クリベストP359(栗田工業(株)製)を併用して凝集操作を行った。
【0044】
4)脱水ケーキの保管条件;
脱水ケーキ全量(26gから28gの範囲)を、気体不透過性のガス採取袋(商品名:テドラーバック)の一端を切って入れ、切り口をヒートシーラーで塞ぎ、袋内には200mLの空気と500mLの窒素ガスを封入した。封入口を密閉し、この袋を30℃恒温器に保管した。
5)脱水ケーキ臭気の測定;
所定時間保管ケーキの袋内の硫化水素、メチルメルカプタンを検知管にて測定した。
【0045】
6)添加薬剤の内容;
亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウム38%溶液を用い、初沈系汚泥に添加する場合は、亜硝酸イオンとして100mg/Lを添加し、混合汚泥に添加する場合は、65mg/Lを添加した。初沈系汚泥への添加量100mg/Lは、混合汚泥に対しては65mg/Lとなる。
塩化第二鉄(記載記号FC)、ポリ硫酸第二鉄(同PFS)、塩化アルミニウム(LAC)はいずれも液体製品を使用した。FCは鉄13%、PFSは鉄11%、LACはアルミナ(A1203)を10%含む製品である。添加は濃縮余剰汚泥に対して行い、実施例4、5、6について、汚泥pHがほぼ同じになるよう設定した。
【0046】
7)亜硝酸イオンの分析;
前記2)のスラリー臭気試験の残り汚泥を前記カチオン系高分子凝集剤クリフィックスCP111で凝集し、清澄水を得て、亜硝酸イオン測定キット(メルク社製、商品名RQフレックス;日本での販売会社関東化学(株))にて計測した。
【0047】
以下、参考例1〜2、比較例1〜2、実施例1〜7の脱水試験について述べるが、その試験条件および結果は表1〜2に示されている。
【0048】
【表1】

【0049】
〔参考例1〜2〕:
参考例1は、濃縮余剰汚泥(D)と実設備重力濃縮汚泥(C)との混合汚泥、参考例2は、濃縮余剰汚泥(D)と室内重力濃縮汚泥(B)との混合汚泥を、亜硝酸イオンの添加なしで脱水処理した例である。臭気発生防止対策を行わない場合、初沈汚泥の重力濃縮汚泥からは振盪法で200−400ppmの硫化水素および10−20ppmのメチルメルカプタンが発生する。脱水ケーキでは1日以内に100ppm以上のメチルメルカプタンを発生し、耐えられない臭気となる。なお、臭気強度3(楽に感知できる臭い)となる濃度は硫化水素0.063ppm、メチルメルカプタン0.0041ppmで、メチルメルカプタンの方が硫化水素の15倍の悪臭影響がある。
【0050】
〔比較例1〜2〕:
比較例1は実設備重力濃縮汚泥(C)、比較例2は室内重力濃縮汚泥(B)のいずれも濃度約3%の初沈濃縮汚泥に亜硝酸イオン100mg/Lを添加して、5時間貯留、保管後に、濃縮余剰汚泥(D)を混合し5時間貯留、保管し、脱水処理を行った。
比較例1〜2では亜硝酸イオン100mg/L添加後5時間で、亜硝酸イオンは消失し、濃縮余剰汚泥混合後の汚泥スラリーからは臭気発生する。脱水ケーキは、1日後は無処理の参考例1〜2に対し臭気が低減するものの、2日目以降では無処理と優位差がなく、激しい臭気発生を見る。
【表2】

【0051】
〔実施例1、2、3、4〕:
実施例1は高濃度初沈3(A3)、実施例2は高濃度初沈8(A4)、実施例3は高濃度初沈16(A5)、実施例4は高濃度初沈24(A6)のいずれも濃度約3%の初沈汚泥に亜硝酸イオン100mg/Lを添加して、5時間貯留、保管後に、濃縮余剰汚泥(D)を混合し5時間貯留、保管し、脱水処理を行った。
実施例1では、最初沈殿汚泥のpHが5.28まで下がり、5時間後に亜硝酸イオンが残留し、濃縮汚泥混合後の臭気発生防止、脱水ケーキ臭気防止効果がある程度得られる。
初沈汚泥のpHを5未満とした実施例2〜4では、上記比較例1〜2に比し、5時間後に62mg/L以上の亜硝酸イオンが残留し、濃縮余剰汚泥混合後の汚泥スラリーの臭気発生を完全に防止する。そして脱水ケーキ臭気発生も1日以上防止、その効果は最初沈殿汚泥のpHを低くしておくほど大きい。
なお、硫化水素、メチルメルカプタンとも、10ppm以下を良好な臭気防止ができている評価、一方メチルメルカプタン100ppm以上を甚だしい悪臭が生じている状況と評価される。
【0052】
〔実施例5、6、7〕:
実施例5、6、7は、実施例2において、それぞれ濃縮余剰汚泥のpHを、塩化第二鉄(FC)、ポリ硫酸第二鉄(PFS)、塩化アルミニウム(LAC)にて下げ、初沈汚泥混合後のpHを5未満とした例である。この場合は、特に脱水ケーキの臭気発生防止効果が向上し、臭気発生防止期間が5日以上となる。
【0053】
以下、比較例3〜8、実施例8〜14の脱水試験について述べるが、その試験条件および結果は表3、表4に示されている。
【0054】
【表3】

【0055】
〔比較例3、4〕:
比較例3は実設備重力濃縮汚泥(C)、比較例4は室内重力濃縮汚泥(B)のいずれも濃度約3%の初沈濃縮汚泥に、それぞれ濃縮余剰汚泥(D)を混合した後、混合汚泥に亜硝酸イオン65mg/Lを添加して、5時間貯留、保管し、脱水処理を行った。
比較例1、2の最初沈殿汚泥に亜硝酸塩を添加し、その後濃縮余剰汚泥を混合した場合と比較すると、やや改善するが、混合汚泥スラリー5時間保管、脱水ケーキ1日保管とも臭気が発生し、効果は不満足である。
【0056】
〔実施例8、9、10、11〕:
実施例8は高濃度初沈3(A3)、実施例9は高濃度初沈8(A4)、実施例10は高濃度初沈16(A5)、実施例11は高濃度初沈24(A6)のいずれも濃度約3%の初沈濃縮汚泥に、それぞれ濃縮余剰汚泥(D)を混合した後、混合汚泥に亜硝酸イオン65mg/Lを添加して、5時間貯留、保管し、脱水処理を行った。
初沈汚泥pHを5未満とした実施例9、10、11では実施例3、4と同様に、ケーキ臭気発生防止期間が2日以上となった。
初沈濃縮汚泥がpH5.18の実施例8では、混合汚泥スラリー臭気を5時間以上防止し、脱水ケーキ臭気発生も1日まで防止するが、pH5未満とした実施例9、10、11では、ケーキ臭気発生防止期間が2日以上となり、効果が大きく向上する。
【表4】

【0057】
〔実施例12、13、14〕:
実施例12、13、14は、実施例9において、それぞれ混合汚泥のpHを、塩化第二鉄(FC)、ポリ硫酸第二鉄(PFS)、塩化アルミニウム(LAC)にて下げ、初沈汚泥混合後のpHを5未満とした例である。すなわち濃縮余剰汚泥のpHをFC、PFS、LACで4.7とし、pH5未満の最初沈殿汚泥と混合し、混合汚泥pH5未満で亜硝酸塩を添加した場合であり、脱水ケーキ臭気発生を5日以上防止した。
【0058】
〔比較例5、6、7、8〕:
比較例5、6、7、8は、室内重力濃縮汚泥(B)のいずれも濃度約3%の初沈濃縮汚泥に、それぞれ濃縮余剰汚泥(D)を混合した後、濃縮余剰汚泥にFCまたはLACを添加し、混合汚泥pHを低下させた比較例である。混合汚泥pH5未満とした、比較例6、7、8では、脱水ケーキの臭気発生防止効果は2日までである。これに対し、前記実施例10、11は、濃縮余剰汚泥混合後pHが5.05、4.97と、比較例6、7、8よりやや高いか同等であるのに、3日および5日以上の臭気発生防止効果がある。
【0059】
〔実施例5、6、7の溶解性りん固定効果〕
参考例2、比較例2ならびに実施例2〜7における溶解性りん(PO−P) 測定した結果を表5、表6に示し、実施例5〜7の固定りん(PO−P)を測定した結果を表6に示す。
実施例5、6、7において、混合汚泥pHを5未満とするために添加したFC、PFS、LACは、pH低下効果のみならず、汚泥中の溶解性りん(PO−P)を固定する効果を有することが示されている。
この結果、汚泥脱水ろ液の溶解性りんを削減する目的で、上記無機凝集剤を使用する場合の除去効率(添加金属1モル当たりで固定削減できるりんモル数)は概ね0.65であるが、本発明はそれと同等以上のりん削減効果を有することが分かる。
【0060】
【表5】

【0061】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0062】
有機性排水の処理場で発生する初沈汚泥またはその濃縮汚泥と、濃縮余剰汚泥を混合して脱水処理する汚泥処理方法、特に汚泥に亜硝酸塩を添加することにより、臭気の発生を効果的に防止することができる汚泥処理方法に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施形態の汚泥処理方法を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0064】
1 最初沈澱池、2 好気性反応槽、3 最終沈澱池、4 原水、5 分離液、6 反応液、7 処理水、8 返送汚泥、9余剰汚泥、10 初沈汚泥、11 重力濃縮槽、12 重力濃縮汚泥貯槽、13 余剰汚泥貯槽、14 余剰汚泥濃縮装置、15 濃縮余剰汚泥貯槽、16 汚泥混合貯槽、17 汚泥脱水装置、18 脱水ケーキ貯槽、19 焼却炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水処理で発生する初沈汚泥またはその濃縮汚泥と、余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを混合して脱水処理する汚泥処理方法であって、
初沈汚泥またはその濃縮汚泥を酸性腐敗させることにより、生成する有機酸によって汚泥の平均pHを5.3未満に調整する汚泥調整工程と、
調整汚泥と余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを混合する汚泥混合工程と、
調整汚泥、余剰汚泥、その濃縮汚泥または混合汚泥に亜硝酸塩を添加する亜硝酸塩添加工程と、
亜硝酸塩添加汚泥を脱水処理する脱水処理工程と
を含む汚泥処理方法。
【請求項2】
汚泥調整工程が、最初沈澱池における引き抜き初沈汚泥の平均SS濃度が2重量%以上になるように滞留、濃縮して、濃縮汚泥を酸性腐敗させ、濃縮汚泥のpHを低下させる工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
汚泥調整工程が、引き抜き初沈汚泥を貯留し、さらに酸性腐敗を進行させてpH5未満に調整する工程を含む請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
調整汚泥に亜硝酸塩を添加し、亜硝酸塩を添加した調整汚泥と余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを汚泥混合工程で混合する請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
汚泥混合工程で調整汚泥と余剰汚泥またはその濃縮汚泥とを混合した後、混合汚泥に亜硝酸塩を添加する請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
調整汚泥、濃縮余剰汚泥または混合汚泥に第二鉄塩またはアルミニウム塩を添加する汚泥pH低下工程をさらに含む請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−196141(P2007−196141A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18108(P2006−18108)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】