説明

汚泥処理方法

【課題】脱水汚泥の含水率を十分に低減させる。
【解決手段】脱水効果を高めるための脱水助剤を汚泥に添加し、これを脱水機5で脱水して脱水汚泥を得る汚泥処理方法において、脱水助剤の表面を疎水性にすることにより、汚泥に添加されることで汚泥の流動性を低下させ脱水機5の脱水効果を高め得る脱水助剤のその表面に水分が付着し、保持されるのを防ぎ、この結果、汚泥の水分が、脱水助剤の内部に含まれないようにし、従って、当該水分を脱水機5で十分に脱水でき、脱水汚泥の含水率を十分に低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水効果を高めるための脱水助剤を汚泥に添加し、これを脱水機で脱水して脱水汚泥を得る汚泥処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、下水汚泥や工場排水汚泥などの汚泥を処理する際には、汚泥に凝集剤を加えて凝集汚泥とし、この凝集汚泥を脱水機で脱水し、脱水機で得られた脱水汚泥を焼却するという処理が一般的に行われている。この脱水汚泥の含水率は80%程度と高く、当該脱水汚泥を焼却処理するために多くの助燃料が必要とされる。このため、脱水汚泥の含水率を低下させることが望まれている。
【0003】
脱水汚泥の含水率を低下させるためには、汚泥を凝集汚泥にする過程で、例えばパルプ、木片、木粉、古紙のような繊維状物質などの脱水助剤を汚泥に添加して混和するのが有効であることが知られている。例えば、以下の特許文献1には、古紙粉砕物を水に分散させて古紙粉砕物スラリーとして汚泥に添加した後、凝集剤を加え凝集汚泥とし、この凝集汚泥を、重力脱水部と加圧脱水部とを循環走行する濾布を備えたベルトプレス型脱水機に供給して脱水処理する方法が開示されている。この方法では、脱水助剤によって凝集汚泥が滑りにくくなり流動性が低下し、ベルトプレスによる圧搾効果が強められるため、脱水助剤を添加しない場合に比べて脱水汚泥の含水率は低下する。
【特許文献1】特開平9−21600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように汚泥に古紙粉砕物などの脱水助剤を添加して脱水処理を行う汚泥処理方法では、含水率低減効果がさほど大きくなく、脱水汚泥の含水率を十分に低減させることができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、脱水汚泥の含水率を十分に低減させることができる汚泥処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、脱水汚泥の含水率には、脱水助剤の表面に保持される水分が影響していることを見出した。
【0007】
そこで、本発明に係る汚泥処理方法は、上記課題を解決するために、脱水効果を高めるための脱水助剤を汚泥に添加し、これを脱水機で脱水して脱水汚泥を得る汚泥処理方法において、脱水助剤の表面を疎水性にすることを特徴とする。
【0008】
この方法によれば、汚泥に添加されることで汚泥の流動性を低下させ脱水機の脱水効果を高め得る脱水助剤のその表面が疎水性とされるため、その表面に水分が付着し、保持されるのを防ぐことができる。この結果、汚泥の水分が、脱水助剤の内部に含まれることはなく、従って、当該水分を脱水機で十分に脱水でき、脱水汚泥の含水率を十分に低減させることができる。
【0009】
ここで、疎水性を示す物質を脱水助剤の表面にコーティングして、脱水助剤の表面を疎水性にすることが好適であり、疎水性を示す物質が油状物質であることがさらに好適である。また、油状物質が、工場内の機械設備で用いた廃油又は食用廃油であると、油状物質を買入する必要がなく、又は安価で購入できるので、低コスト化を図ることができる。
【0010】
また、油状物質が表面にコーティングされた脱水助剤を含む脱水汚泥を焼却することが好適である。この構成により、脱水助剤の表面にコーティングされた油状物質が脱水汚泥の発熱量を高めるので、助燃料を低減させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る汚泥処理方法によれば、脱水汚泥の含水率を十分に低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明による汚泥処理方法の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法を適用した汚泥処理装置を示す概略構成図である。
【0013】
汚泥処理装置100は、繊維状物質などの脱水助剤を油状物質でコーティングして添加材(助剤)とする油状物質コーティング装置1と、余剰汚泥にこの添加材を添加して混合する助剤混合槽2と、助剤混合槽2からの混合物に無機凝集剤(ポリ鉄など)を加え混合する無機凝集剤混合槽3と、無機凝集剤混合槽3からの混合物に高分子凝集剤(カチオン系など)を加え混合する高分子凝集剤混合槽4と、高分子凝集剤混合槽4からの混合物を脱水処理する脱水機5と、脱水処理により得られた脱水汚泥を焼却処理する焼却炉6と、を備えて構成される。
【0014】
脱水助剤の一例としての繊維状物質は、木片または古紙粉砕物など、その内部に水分を吸収可能であり、個々の最大長が約5ミリメートル以下のものである。なお、繊維状物質以外の脱水助剤を用いることもできる。
【0015】
油状物質コーティング装置1は、本実施形態の特徴を成すものであり、脱水助剤に油状物質をコーティングするためのものである。この油状物質コーティング装置1は、スプレーや刷毛等により脱水助剤に油状物質を塗布するものであっても、また、油状物質が溜まる槽に脱水助剤を浸漬することにより油状物質を皮膜するものであってもよく、要は脱水助剤を油状物質でコーティングできるものであればよい。
【0016】
油状物質コーティング装置1で用いられる油状物質は、シリコンオイル、汚泥処理を行う工場内の機械設備で用いた廃油、廃グリス、または廃重油などを始めとして、脱水助剤の表面をコーティングし、疎水性にすることができる物質である。なお、油状物質が汚泥処理設備で用いた廃油等又は食用廃油であると、油状物質を買入する必要がなく、又は安価で購入できるため好適である。ここで、油状物質は脱水助剤の表面を疎水性にすることができる物質の一例であり、油状物質以外の疎水性を示す物質を適用することも可能である。
【0017】
そして、脱水機5としては、ベルトプレス型、スクリュープレス型など圧搾脱水するタイプ、または、回転円板を用いて遠心脱水するタイプなどが用いられる。ここで、汚泥脱水に適するベルトプレス型などの圧搾タイプを用いるのが特に好適である。
【0018】
このように構成された汚泥処理装置100により実施される汚泥処理方法は以下のとおりである。まず、油状物質コーティング装置1により、脱水助剤が、油状物質でコーティングされ、添加材として助剤混合槽2に導入される。助剤混合槽2では、余剰汚泥に添加材が添加され、これらが撹拌されて、汚泥中に添加材が十分に分散され、次いで、この混合物に、無機凝集剤混合槽3において無機凝集剤が、高分子凝集剤混合槽4において高分子凝集剤が順に加えられ、これにより添加材を含む凝集汚泥が得られ、この凝集汚泥は脱水機5に導入される。
【0019】
ここで、本実施形態では、汚泥に添加されることで汚泥の流動性を低下させ脱水機5の脱水効果を高め得る脱水助剤のその表面が、油状物質コーティング装置1のコーティングにより疎水性とされているため、脱水助剤の表面に汚泥の水分が付着し保持されることはない。従って、脱水機5では、汚泥の水分を十分に脱水でき、得られる脱水汚泥の含水率を十分に低減させることができるという本発明の特徴を成す作用・効果を奏する。
【0020】
そして、この脱水汚泥は、焼却炉6において燃焼処理されるが、このとき、前述したように、油状物質がコーティングされているため、この油状物質が脱水汚泥の燃焼を促進し、助燃料を低減させることができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の効果を確認するために行った脱水試験について、実施例1及び比較例1として説明する。
【0022】
(実施例1)
多孔板の上に配された後述の凝集汚泥を上方から円板で圧搾するハイパープレス試験機を用いて、脱水試験を行った。ハイパープレス試験機の多孔板及び円板の直径は60ミリメートルとし、圧搾圧力は0.6MPa、圧搾時間は10秒とした。また、多孔板及び円板の対向面にはフェルト材のろ布を貼着した。汚泥濃度は12000mg/l以下とした。添加材は木屑とし、その最大長が0.25mm以下、及び0.5〜1.0mmの2種類を用い、市販のシリコン系防水スプレーを添加材表面にスプレーして各種に対して表面を疎水性とする防水処理を行った。無機凝集材はポリ鉄とし、添加量は汚泥中の固形物量に対して11%とした。また、高分子凝集材はカチオン系高分子凝集剤とし、添加量は汚泥中の固形物量に対して0.16%とした。脱水試験は、汚泥に添加材と無機凝集剤を加えた汚泥にさらに高分子凝集剤を加え凝集汚泥としてハイパープレス試験機に供し、脱水汚泥の厚みが1mmとなるよう、すなわち多孔板と円板とのろ布間の距離が1mmとなるように凝縮汚泥を圧搾した。
【0023】
(比較例1)
添加材の防水処理を行わない点以外は実施例1と同様とした。
【0024】
実施例1、比較例1とも、上記2種類の添加材(最大長0.25mm以下、及び0.5〜1.0mm)を2通りの添加量(50%、100%)で汚泥に添加したときの脱水汚泥の含水率をそれぞれ測定した。脱水汚泥の含水率は、105℃に温調した乾燥機で2時間乾燥後の重量を測定して乾燥前後の重量差から算出した。この測定結果を表1に示す。なお、添加材の添加量は、乾燥汚泥基準、すなわち乾燥汚泥重量に対する割合で表示した。すなわち、添加量100%とは、乾燥汚泥重量と同じ重量の木屑(乾燥ベース)を添加した状態である。
【表1】

【0025】
表1に示すように、添加材の表面を疎水性とすると脱水汚泥の含水率は大きく低下することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法を適用した汚泥処理装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1…油状物質コーティング装置、2…助剤混合槽、3…無機凝集剤混合槽、4…高分子凝集剤混合槽、5…脱水機、6…焼却炉、100…汚泥処理装置。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水効果を高めるための脱水助剤を汚泥に添加し、これを脱水機で脱水して脱水汚泥を得る汚泥処理方法において、
前記脱水助剤の表面を疎水性にすることを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項2】
疎水性を示す物質を前記脱水助剤の表面にコーティングして、前記脱水助剤の表面を疎水性にすることを特徴とする、請求項1に記載の汚泥処理方法。
【請求項3】
前記疎水性を示す物質が油状物質であることを特徴とする、請求項2に記載の汚泥処理方法。
【請求項4】
前記油状物質が、機械設備で用いた廃油又は食用廃油であることを特徴とする、請求項3に記載の汚泥処理方法。
【請求項5】
前記油状物質が表面にコーティングされた脱水助剤を含む前記脱水汚泥を焼却することを特徴とする、請求項3又は4に記載の汚泥処理方法。


【図1】
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【公開番号】特開2010−131498(P2010−131498A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308680(P2008−308680)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】