説明

汚泥処理方法

【課題】微生物によって、汚泥を安価に効率よく分解して、汚泥を減少させる汚泥処理方法を提供する。
【解決手段】汚泥10を、有効微生物12によって分解・減量する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種工場や下水処理場の排水処理は、通常、活性汚泥法により行なわれている。
そして、この処理にて発生した汚泥を産業廃棄物(余剰汚泥)として特許文献1記載のように乾燥させ焼却して処理していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−4812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
産業廃棄物として処理される汚泥は、例えば大阪府では、産業廃棄物量のうち全体の68%を占めるような場合もある。その汚泥のほとんどが、下水処理場や各種工場からの活性汚泥法により毎日膨大な量が産出される有機性の汚泥である。
これらの汚泥は、再利用率が最も低い産業廃棄物である。そして、汚泥の処理は、汚泥の脱水、乾燥、焼却、搬送、取引、設備維持等の莫大な費用や時間が必要という問題があった。また、膨大な熱エネルギを必要とするため二酸化炭素等を大量に発生させてしまうという問題があった。また、埋め立て地や焼却施設等の最終処分場の使用残余年数が少なく、処理(処分)費用が増加しているという問題があった。また、汚泥からの悪臭の問題もあった。
【0005】
そのため、汚泥(余剰汚泥)の処理に困っており、これを処理減量するために、超音波処理やオゾン処理等の物理・化学的な汚泥処理方法が用いられていたが、十分な効果を発揮するためには設備や運営費用等の膨大な処理費用が必要という問題があった。
また、建築資材や農業用肥料等にリサイクル処理する場合でも膨大な熱エネルギや膨大な処理費用が必要になるという問題があった。
つまり、汚泥を単に減量するだけでなく、少ない費用で効率よく汚泥を減量する処理方法が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明は、微生物によって、汚泥を安価に効率よく分解して、汚泥を減少させる汚泥処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の汚泥処理方法は、汚泥を、有効微生物によって分解・減量する方法である。
【0008】
また、分解・減量の対象となる汚泥を予め採取し、該汚泥に対する分解・減量作用につき好適性を有する有効微生物を作成又は検索して特定した後に、作成又は特定した該有効微生物を反応槽に収容された上記汚泥に付与し、該反応槽内の汚泥を分解・減量する方法である。
【0009】
また、上記有効微生物が、シュードモナス、プロテアバクテリア、フラボバクテリア、コリネバクテリア、アクチノバクテリア、サイトファーガ、ノカルデイア、アルカリジェネス、クロモバクテリア、ニトロソモナス、ニトロバクター、ゾーグレア、バシルス、アシネトバクター、オセアノバシルス、セルモナダシィ、デルフィア、サーモモナスの内の一種又は二種以上の組合せである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の汚泥処理方法によれば、排水処理により発生した汚泥を、有効微生物により、効率よく分解し、約50%〜90%減量できる。発生した汚泥の輸送費等の最終処分費用を削減できる。言い換えると、従来の活性汚泥法に比べて最大で約10倍の処理能力を得ることができる。また、焼却すべき汚泥(余剰汚泥)が減量されることで膨大な熱エネルギが必要なく、省エネ効果や二酸化炭素等の排出量削減効果を得ることができる。また、悪臭の原因となる臭気物質を分解・減量できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】反応槽の一例を示す簡略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
本発明の汚泥処理方法は、図1に示すように、家庭排水や工場排水等からの汚濁原水を活性汚泥法により発生した生汚泥や脱水ケーキ等の処理対象となる汚泥10を、反応槽15に収容する。例えば、脱水ケーキをベルトコンベアやバケットにて投入する。処理対象となる汚泥10は、従来、産業廃棄物として焼却処理や埋め立て処理又はリサイクル処理されていた生汚泥や脱水ケーキ等、あるいは、活性汚泥法により発生する余剰汚泥や返送汚泥等、様々な汚泥のことである。
【0013】
反応槽15に収容した生汚泥や脱水ケーキ等の汚泥10を溶解し、分解・減量・浄化等の処理に最適な有効微生物12を付(投)与する。
付与すべき有効微生物12は予め開発する。つまり、予め採取した分解・減量・浄化等の処理の対象となる汚泥10に対して最も良く処理作用・効果を有する好適な有効微生物12を開発する。
【0014】
有効微生物12を開発するとは、好気的、嫌気的をも勘案して、別途、培養槽等で効率よく培養・育成されたシュードモナス、プロテアバクテリア、フラボバクテリア、コリネバクテリア、アクチノバクテリア、サイトファーガ、ノカルデイア、アルカリジェネス、クロモバクテリア、ニトロソモナス、ニトロバクター、ゾーグレア、バシルス、アシネトバクター、オセアノバシルス、セルモナダシィ、デルフィア、サーモモナス、の内の一種又は二種以上の組合せを作成又は検索して特定することである。
【0015】
処理対象となる汚泥10の種類を分析し、その汚泥10に含まれている自然発生的に増殖した微生物に関係なく有効微生物12を開発する。また、処理対象の汚泥や汚濁原水等で馴致した微生物とは関係なく有効微生物12を開発する。つまり、処理対象の汚泥10の処理作用
・効果につき最も好適性を有する微生物を意図的(人為的)に作成又は意図的に培養・育成した内から検索して特定し、有効微生物(オーダーメイド微生物)12を開発する。汚泥処理場のように様々な成分が複合した汚泥10に対応するように、複数の微生物から成る有効微生物12の組合せ(群)を作成又は特定する。
【0016】
そして、開発した有効微生物12を、汚泥10が収容されている反応槽15内に入れる。有効微生物12によって汚泥10及び汚泥10内の臭気物質を反応槽15内で分解・減量・浄化等の処理をする。また、汚泥10内の臭気物質を分解・減量する。この反応槽15をビオファームとも言う。
【0017】
反応槽15は、図2の二点鎖線内に示すように、散水噴射式濾過方式(バイオジェット方式とも言う)であって、吸着物質担体と濾床と反応槽用曝気槽と、循環散水装置と、を備えている。有効微生物12及び汚泥10を、循環散水装置によって還流させている。
反応槽15に於ては、pHの調整(pH7付近が望ましい)、空気による酸素の供給、活性剤の投与、温度調整等、有効微生物12の分解活動がより促進されるような環境づくり(条件設定)を必要に応じておこなう。また、有効微生物12を安定供給するのが望ましい。
また、反応槽15へ有効微生物12を自動供給可能なポンプや有効微生物保管槽を設けるも望ましい。
【0018】
汚泥10は、反応槽15で処理されて僅かな量となる。僅かな量の汚泥10は、反応槽15から次の凝集沈殿槽や、膜分離槽での再処理や、産業廃棄物処理業者や埋め立て処理業者等の最終処分場への引取り先に搬送される。
【0019】
上述した本発明の汚泥処理方法は、活性汚泥法により発生する汚泥10に付着しているような(従来の活性汚泥法で用いる微生物)よりも、分解作用の優れた有効微生物12を汚泥10に付与することで大幅に汚泥10を削減する。つまり、最終的に廃棄又はリサイクル処理されていた余剰汚泥を減量する。
例えば、従来の活性汚泥法で発生した生汚泥から成る汚泥10に、有効微生物12を投与した場合は1日処理90%の減量(容)が可能となる。脱水ケーキから成る汚泥10では、水に溶解して有効微生物12で処理すると80%の減量が可能となる。
【0020】
以上のように、本発明は、汚泥10を、有効微生物12によって分解・減量するので、従来大量に発生した汚泥10を著しく減少できる。従って、産業廃棄物(余剰汚泥)処理のための装置が不要となる。最終的に発生する汚泥(余剰汚泥)を少なくし、脱水、乾燥、焼却、取引等の最終処理費用(経費)を大幅に削減できる。薬液を使用しないと共に有効微生物12は浄化後に自己分解して自然消滅するので、二次公害の虞れがなく周囲(環境)への安全性を向上できる。大型で高価な設備を増加することなく、広い設置空間を要さないため、大幅なコスト削減を可能にする。小規模な設備と有効微生物12を追加するだけで、浄化能力を容易に強化(実質的な増設)することができる。また、処理設備からの悪臭を軽減できる。
【0021】
また、分解・減量の対象となる汚泥10を予め採取し、汚泥10に対する分解・減量作用につき好適性を有する有効微生物12を作成又は検索して特定した後に、作成又は特定した有効微生物12を反応槽15に収容された汚泥10に付与し、反応槽15内の汚泥10を分解・減量するので、従来大量に発生した汚泥10を著しく減少できる。従って、産業廃棄物(余剰汚泥)処理のための装置のコンパクト化が可能となる。最終的に発生する汚泥(余剰汚泥)の脱水、乾燥、焼却、取引等の最終処理費用(経費)を大幅に削減できる。有効微生物12は浄化後に自己分解して自然消滅するので、二次公害の虞れがなく周囲(環境)への安全性を向上できる。大型で高価な設備を増加することなく、広い設置空間を要さないため、大幅なコスト削減を可能にする。小規模な設備と有効微生物12を追加するだけで、浄化能力を容易に強化(実質的な増設)することができる。汚れの種類や工場に応じて意図的(人為的)に有効微生物12を作成又は特定するため無駄がなく従来よりもはるかに効率の高い分解・減量・浄化率を確保することができる。また。速い処理(分解・減量・浄化)速度を得ることができる。汚泥10及び臭気物質や未分解物の発生を大幅に削減できると共に、既存設備への適応が容易にでき、施設や工場ごとの複雑な成分に対応して汚泥10を減量できる。有効微生物12を投与するので安定した分解効率を保持できる。最適化な有効微生物12を用いることで従来の活性汚泥法のみと比較した場合に10倍近くの処理能力を得ることができる。二酸化炭素の排出量削減や省エネ化に貢献できる。また、処理設備からの悪臭を軽減できる。
【0022】
また、有効微生物12が、シュードモナス、プロテアバクテリア、フラボバクテリア、コリネバクテリア、アクチノバクテリア、サイトファーガ、ノカルデイア、アルカリジェネス、クロモバクテリア、ニトロソモナス、ニトロバクター、ゾーグレア、バシルス、アシネトバクター、オセアノバシルス、セルモナダシィ、デルフィア、サーモモナスの内の一種又は二種以上の組合せであるので、より汚泥10の減量化に最適な有効微生物12を迅速に特定できる。処理すべき汚泥10に含まれている微生物とは関係なく減量・分解に最適な有効微生物12を得ることができる。様々な工場や施設の廃水から発生する汚泥10に各々最適な有効微生物12をその施設や工場単位で開発でき、各工場や施設ごとの独自の問題(油分の除去や悪臭等)と共に最終的に発生する余剰汚泥(産業廃棄物)の減量化に迅速に対応できる。
【符号の説明】
【0023】
10 汚泥
12 有効微生物
15 反応槽


【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥(10)を、有効微生物(12)によって分解・減量することを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項2】
分解・減量の対象となる汚泥(10)を予め採取し、該汚泥(10)に対する分解・減量作用につき好適性を有する有効微生物(12)を作成又は検索して特定した後に、作成又は特定した該有効微生物(12)を反応槽(15)に収容された上記汚泥(10)に付与し、該反応槽(15)内の汚泥(10)を分解・減量することを特徴とする汚泥処理方法。
【請求項3】
上記有効微生物(12)が、シュードモナス、プロテアバクテリア、フラボバクテリア、コリネバクテリア、アクチノバクテリア、サイトファーガ、ノカルデイア、アルカリジェネス、クロモバクテリア、ニトロソモナス、ニトロバクター、ゾーグレア、バシルス、アシネトバクター、オセアノバシルス、セルモナダシィ、デルフィア、サーモモナスの内の一種又は二種以上の組合せである請求項1又は2記載の汚泥処理方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−269208(P2010−269208A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120629(P2009−120629)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(595075610)株式会社大阪生物環境科学研究所 (3)
【出願人】(504471023)
【出願人】(504471241)
【Fターム(参考)】