説明

汚泥消化装置

【課題】従来品と比較して設備コストが低い間接加熱式の汚泥消化装置を提供する。
【解決手段】この発明の汚泥消化装置の循環経路2は、槽1の内部から外部に渡って槽壁11を貫通して延びる第1の横管および第2の横管23,26を有する。これらの横管23,26の槽1の外部に配置された部分の外側に外管28を配置して、第1の横管23および第2の横管26と外管28との間に外側流路を形成する。各外管28の槽壁11側の端部を配管29で接続して、両外側流路を連通する。第2の横管26の外管28に熱媒体導入管41を接続し、第1の横管23の外管28に熱媒体導出管42を接続する。外管28が配置された部分で、第1の横管23および第2の横管26内に汚泥が通り、外側流路に熱媒体が通る。これにより、循環経路2内の汚泥が加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水処理等の過程で発生する汚泥の消化(有機物の嫌気性分解)工程で使用される汚泥消化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥消化槽で汚泥を消化する工程を行う際には、槽内の汚泥を底部に堆積させないように撹拌するとともに、槽内の汚泥を適温に加熱する必要がある。
消化槽内の汚泥の撹拌方法に関しては、下記の特許文献1に、消化槽内の汚泥を、槽外に配置したポンプで循環経路内に導いて、消化槽内に戻すことが記載されている。前記循環経路は、槽内に配置された上下に延びる一対の縦管と、各縦管と接続されて、槽内から槽外まで槽壁を貫通して延びる一対の横管と、両横管を槽外で接続するU字状管とで構成され、U字状管にポンプが設置されている。
【0003】
消化槽内の汚泥の加熱方法としては、例えば、特許文献2に記載されているように、槽内に熱源を入れて加熱する直接法と、槽内の汚泥を外部に出して槽内に戻す循環管を設けて、この循環管内の汚泥を熱交換器で加熱する間接法がある。
直接法は、例えば図7に示すように、汚泥5を入れた槽1の上部に吹き込み管6を設けて、ボイラ設備等から発生した蒸気を槽1内の汚泥5に吹き込む方法である。この方法には、蒸気を入れることで消化槽内の汚泥が水で薄められて、汚泥濃度が低下するという問題点がある。
【0004】
なお、図7において、符号2は、撹拌のために設けた循環経路を示す。この循環経路2は、槽1の内部と外部に渡って配置され、上方に開口する第1の縦管21と下方に開口する第2の縦管24を有している。また、循環経路2の槽1の外部に配置された部分にスクリューポンプ3が設けてある。
間接法では、例えば図8に示すように、撹拌のために設けた循環経路2とは別に、加熱のための循環経路7を設けている。この例では、槽壁11を貫通して槽内から槽外まで配置された一対の横管71,72と、両横管を槽外で接続する縦管73とを配置し、出側の横管72と縦管73との間にポンプ74を設け、縦管73のポンプ74と入側の横管71との間の部分に熱交換器4を設けている。
【0005】
図8の方法では、槽外に配置された配管内の汚泥を熱交換器で加熱しているため、熱交換器の熱源としてボイラ設備等から発生した蒸気を利用した場合でも、蒸気そのものは汚泥に入らないことから、消化槽内の汚泥濃度は低下しない。しかし、この方法には、直接法と比較して設備コストが高くなるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−173992号公報
【特許文献2】特開平5−269496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の課題は、消化槽内の汚泥を、槽内と槽外に渡って配置された循環経路内に導いて循環させることで撹拌が行われ、消化槽内の汚泥の加熱が間接法で行われる汚泥消化装置であって、従来の間接加熱式汚泥消化装置と比較して設備コストが低いものを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明の汚泥消化装置は、汚泥を入れる槽と、槽内と槽外に渡って配置された循環経路と、を備え、前記槽内の汚泥を前記循環経路内に導いて循環させることで、槽内の汚泥を撹拌する汚泥消化装置であって、前記循環経路の槽外に配置された部分に、内側に汚泥を通し、外側に熱媒体を通す二重管構造部を設けたことを特徴とする。
【0009】
この発明の汚泥消化装置では、汚泥を撹拌するために設けた循環経路の前記二重管構造部で、熱媒体により汚泥が加熱されるため、撹拌のための循環経路とは別に加熱のための循環経路を設けている従来の間接加熱式汚泥消化装置と比較して、設備コストが低く抑えられる。また、加熱された汚泥が槽内に戻されて撹拌流を形成するため、槽内全体の加熱が効率よく行われる。
【発明の効果】
【0010】
この発明の汚泥消化装置は、消化槽内の汚泥を、槽内と槽外に渡って配置された循環経路内に導いて循環させることで撹拌が行われ、消化槽内の汚泥の加熱が間接法で行われる汚泥消化装置であって、従来の間接加熱式汚泥消化装置と比較して設備コストが低く、槽内全体の加熱効率が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第1実施形態に相当する汚泥消化装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】この発明の第2実施形態に相当する汚泥消化装置の一部を示す図であって、図1の部分拡大図に対応する図である。
【図5】図4のA−A断面図(a)とB−B断面図(b)である。
【図6】この発明の第3実施形態に相当する汚泥消化装置の一部を示す図であって、図1の部分拡大図に対応する図である。
【図7】従来の直接加熱式の汚泥消化装置を示す概略構成図である。
【図8】従来の間接加熱式の汚泥消化装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について説明する。
図1は第1実施形態の汚泥消化装置を示す概略構成図であって、汚泥を入れる槽が奥行き方向中心での断面図となっている。図2は図1の部分拡大図であって、槽外の部分と、横管が槽壁を貫通している部分を示している。図3は図2のA−A断面図である。
これらの図に示すように、第1実施形態の汚泥消化装置は、汚泥を入れる槽1と、槽1の内部と外部に渡って配置された汚泥の循環経路2と、スクリューポンプ3と、を備えている。
【0013】
循環経路2は、槽1の内部に配置されて上側が開口する第1の縦管21と、槽1の内部に配置されて第1の縦管21から斜め下方に延びる第1の斜め管22と、槽1の内部で斜め管22から水平方向に延びて、槽1の槽壁11を貫通して槽1の外部に達する第1の横管23を有する。
循環経路2は、また、槽1の内部に配置されて下側が開口する第2の縦管24と、槽1の内部に配置されて第2の縦管24から斜め上方に延びる第2の斜め管25と、槽1の内部で斜め管25から水平方向に延びて、槽1の槽壁11を貫通して槽1の外部に達する第2の横管26を有する。第2の横管26は第1の横管23と同じ高さに配置されている。
【0014】
循環経路2は、さらに、槽1の外部で、第1の横管23と第2の横管26を接続するU字状管27を有する。第1の横管23、第2の横管26、U字状管27は、同じ水平面内に配置されている。
U字状管27内に、スクリューポンプ3を構成するスクリュー羽根付きの回転軸31が配置されている。このスクリューポンプ3は可逆転式であり、回転軸31の回転方向に応じて流れの方向が矢印A方向とその反対方向に変わるが、性能は変わらない。
【0015】
また、槽1の外部に配置されている部分において、第1の横管23および第2の横管26の外側に外管28が配置されている。これにより、図3に示すように、第1の横管23および第2の横管26と外管28との間に外側流路20が形成されている。外側流路20の両端部は閉塞されている。
また、第2の横管26に配置された外管28のU字状管27側の端部に熱媒体導入管41が接続され、第1の横管23に配置された外管28のU字状管27側の端部に熱媒体導出管42が接続されている。各外管28の槽壁11側の端部は、両外側流路20を連通する配管29で接続されている。
【0016】
これにより、第1の横管23および第2の横管26の外管28が配置されている部分は、第1の横管23および第2の横管26内に汚泥を通し、外側流路20に熱媒体を通す二重管構造部となっている。
この実施形態の汚泥消化装置では、流れの方向が図2の矢印A方向になるようにスクリューポンプ3を作動させることで、槽1内の汚泥5は、第1の縦管21から循環経路2内に導かれ、第1の斜め管22、第1の横管23、U字状管27、第2の横管26、第2の斜め管22の順に移動し、第2の縦管24から槽1内に戻される。これにより、槽1内の汚泥5が撹拌される。また、循環経路2内に導かれた汚泥は、第1の横管23の二重管構造部を通る際に、外側流路20を通る熱媒体で加熱され、さらに、U字状管27を通った後に第2の横管26の二重管構造部を通る際に、外側流路20を通る熱媒体で加熱される。
【0017】
なお、流れの方向が図2の矢印Aとは反対方向になるようにスクリューポンプ3を作動させた場合、槽1内の汚泥5は、第2の縦管24から循環経路2内に導かれて、上記とは反対の順に循環系路2内を移動して、第1の縦管21から槽1内に戻される。
この実施形態の汚泥消化装置によれば、汚泥を撹拌するために設けた循環経路2を構成する第1および第2の横管23,26の二重管構造部で、熱媒体により汚泥が加熱されるため、図8に示すような、撹拌のための循環経路2とは別に加熱のための循環経路7を設けている、従来の間接加熱式汚泥消化装置と比較して、設備コストを低く抑えることができる。また、循環経路2で加熱された汚泥が槽1内に戻されて撹拌流を形成するため、槽1内全体の汚泥5が効率よく加熱される。
【0018】
第2実施形態の汚泥消化装置は、第1の横管23および第2の横管26の二重管構造部が異なるが、それ以外は第1実施形態の汚泥消化装置と同じ構成である。この実施形態では、図4に示すように、槽1の外部に配置されている部分において、第1の横管23および第2の横管26の外側に外管28が配置されている。また、各外管28のU字状管27側の端部に、熱媒体導入管41と熱媒体導出管42が接続されている。
【0019】
この二重管構造部において、槽1側の端部を除いた部分は、図5(a)に示すように、第1の横管23および第2の横管26と外管28との間が、仕切り板28aで半分に仕切られて、第1の外側流路20aと第2の外側流路20bとに分けられている。槽1側の端部は、図5(b)に示すように、第1の横管23および第2の横管26と外管28との間に仕切り板28aが配置されず、第1の外側流路20aと第2の外側流路20bをつなぐ第3の外側流路20cとなっている。また、第1および第2の外側流路20a,20bのU字状管27側の端部と外側流路20の槽1側の端部は閉塞されている。
【0020】
これにより、熱媒体導入管41から第1の外側流路20aに入った熱媒体は、第3の外側流路20cで折り返して第2の外側流路20bを通った後に、熱媒体導出管42から排出される。このように移動する熱媒体により、外管28が配置されている部分で、第1の横管23および第2の横管26内を通る汚泥が加熱される。
図6に示す第3実施形態の汚泥消化装置は、第1の横管23および第2の横管26の二重管構造部とする範囲が異なるが、それ以外は第1実施形態の汚泥消化装置と同じ構成である。すなわち、この実施形態では、第1の横管23および第2の横管26の二重管構造部とする範囲を、槽1の外部だけでなく内部に至るまでとしている。そして、槽1の内部で、第1の横管23および第2の横管26の両外管28の端部を配管29により接続することで、両外側流路20を連通している。
【符号の説明】
【0021】
1 槽
2 循環経路
20 外側流路
20a 第1の外側流路
20b 第2の外側流路
20c 第3の外側流路
21 第1の縦管
22 第1の斜め管
23 第1の横管
24 第2の縦管
25 第2の斜め管
26 第2の横管
27 U字状管
28 外管
28a 仕切り板
29 配管
3 スクリューポンプ
31 回転軸
41 熱媒体導入管
42 熱媒体導出管
5 汚泥
6 吹き込み管
7 加熱のための循環経路
71 横管
72 横管
73 縦管
74 ポンプ
81 枝管
82 枝管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を入れる槽と、槽内と槽外に渡って配置された循環経路と、を備え、
前記槽内の汚泥を前記循環経路内に導いて循環させることで、槽内の汚泥を撹拌する汚泥消化装置であって、
前記循環経路の槽外に配置された部分に、内側に汚泥を通し、外側に熱媒体を通す二重管構造部を設けたことを特徴とする汚泥消化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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