説明

汚泥濃縮装置

【課題】濾過圧力を常に適正に保って濾過面の目詰まりや固形成分のリークの発生を抑えるとともに、逆洗を効率的に行って濾過面の目詰まりを防ぎ、更には濾過筒の内部状況を外部から目視で容易に観察でき、濾過筒内に汚泥中の夾雑物等が詰まった場合にはその夾雑物等を容易に取り除くことができる汚泥濃縮装置を提供すること。
【解決手段】濾過筒3の内部にスパイラルスクリュー4を回転可能に収容し、該スパイラルスクリュー4を回転駆動することによって、汚泥凝集槽12から前記濾過筒3内に導入される汚泥を搬送しながら、該汚泥に含まれる水分を前記濾過筒3の濾過面3aを通過させて前記外筒2内に収容し、該外筒2内の水分を排出部(分離液排出管)6から分離液として外部に排出して汚泥を濃縮する汚泥濃縮装置1において、前記濾過筒3を、長手方向を水平として設置された上部切欠き半円筒状とし、その上方を大気に開放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過筒内でスパイラルスクリューを回転駆動することによって、汚泥凝集槽から濾過筒内に導入される汚泥を搬送しながらこれを濃縮するスクリュープレス型の汚泥濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種汚泥を廃棄又は焼却するため、汚泥を脱水機にて脱水処理することが行われるが、脱水機の能力のみで汚泥の脱水を効率良く行うことはできない。このため、汚泥の脱水機による脱水処理に先立って、汚泥を凝集剤で凝集させ、この凝集された汚泥から水分を分離して汚泥を濃縮することが行われ、これを実施するための汚泥濃縮装置が種々提案されて実用に供されている。
【0003】
ところで、汚泥濃縮装置には、スクリュープレス型があるが、本出願人が先に提案したスクリュープレス型の汚泥濃縮装置の一例を図7と図8にそれぞれ示す(特許文献1参照)。
【0004】
即ち、図7及び図8は従来の汚泥濃縮装置101,101’の基本構成を示す概略図であり、図7に示す汚泥濃縮装置101は、密閉構造を有する円筒タンク状の外筒102の内部に、上下面が密閉された円筒状の濾過筒103を縦方向に配置し、該濾過筒103内にスパイラルスクリュー104を回転可能に収容して構成されている。
【0005】
ここで、上記濾過筒103の前記外筒102内に臨む部位の周面は、パンチングプレート又はウェッジワイヤー等から成る濾過面103aを構成しており、濾過筒103の上部側方からは濃縮汚泥排出管105が導出しており、その高さはh3 に設定されている。又、前記外筒102の下部側方からは分離液排出管106が導出しており、この分離液排出管106は、外筒102への接続部から上方へ立ち上げられ、その途中には流量計107と流量調整弁108が設けられている。ここで、分離液排出管106の排出部の高さはh2 に設定されている。
【0006】
又、前記スパイラルスクリュー104は、回転軸104aにスクリュー羽根104bを螺旋状に巻装して構成されており、回転軸104aには、駆動源としてのモータ109が連結されている。尚、スパイラルスクリュー104(スクリュー羽根104b)の外径は濾過筒103の濾過面103aの内径よりも僅かに小さく設定されており、スパイラルスクリュー104(スクリュー羽根104b)の外周縁と濾過筒103の濾過面103aとの間には微小隙間が形成されている。
【0007】
更に、前記外筒102の底部には、逆洗用の圧縮空気を供給するためのエアコンプレッサ110から導出する空気配管111が接続されている。
【0008】
他方、図7において、112は上面が開口した円筒タンク状の汚泥凝集槽であり、その内部には汚泥が収容されている。そして、この汚泥には凝集剤が添加され、モータ113によって回転駆動される攪拌機114によって汚泥と凝集剤が撹拌されることによって、汚泥は、これに含まれる固形成分が凝集されて凝集汚泥となり、その液位はh1 に設定されている。
【0009】
又、汚泥凝集槽112の上部側方から略水平に延びる凝集汚泥導入管115は、前記濾過筒103の下端部側方に接続されている。
【0010】
而して、前記濾過筒103の液位h3 は前記汚泥凝集槽112の液位h1 よりも低く(h3 <h1 )設定され、両液位h1 ,h3 の差(ヘッド差)Δh13(=h1 −h3 )に基づく差圧によって、汚泥凝集槽112内の凝集汚泥が凝集汚泥導入管115を通って濾過筒103内にその下部から導入される。
【0011】
前記スパイラルスクリュー104は、モータ109によって濾過筒103内で所定の速度で回転駆動されており、濾過筒103内に導入された凝縮汚泥は、回転するスパイラルスクリュー104によって濾過筒103内を上方へと搬送されるとともに、これに含まれる水分が濾過筒103の濾過面103aを通過して外筒102内に分離液として収容される。ここで、前記分離液排出管106の排出部の高さh2 は濾過筒103の液位h3 よりも低く(h2 <h3 )設定されているため、両者h3 ,h2 の差(ヘッド差)Δh32(=h3 −h2 )に基づく差圧を濾過圧力として、凝集汚泥から分離された水分が濾過筒103の濾過面103aを通過して外筒102内に分離液として収容される。又、この場合、外筒102は、汚泥凝集槽112の液位h1 よりも下方に配置されているため、外筒102内に収容される分離液は外筒102内に充満し、この分離液中に濾過筒103の濾過面103aが埋没することとなる。
【0012】
そして、外筒102内に収容された分離液は、分離液排出管106を通って外部へと排出されるが、その流量は流量計107によって計測されるとともに、流量調整弁108によって調整される。又、スパイラルスクリュー104の回転によって濾過筒103内を上方へと搬送される凝集汚泥は、その途中で水分が分離されることによって濃縮されて濃縮汚泥となり、この濃縮汚泥は、濾過筒103の上部から濃縮汚泥排出管105を通って外部へと排出され、不図示の脱水機による脱水処理に供される。
【0013】
而して、以上説明した汚泥濃縮装置101においては、前述のように濾過筒103の濾過面103aが外筒102内の分離液中に埋没すると、該濾過面103aは、その全面が凝集汚泥から水分を分離するために供されるため、その分離能率が高められて濾過筒103、延ては汚泥濃縮装置101全体の小型化が図られる。
【0014】
又、濾過筒103の濾過面103aでの濾過圧力は、濾過筒103の液位h3 と分離液排出管106の排出部の高さh2 との差Δh32(=h3 −h2 )に基づく差圧によって決定されるため、分離液排出管106の排出部の高さh2 を任意に設定することによって濾過圧力を最適値に保つことができ、濾過筒103の濾過面103aにおける固形成分のリークが抑制され、この固形成分のリークを防止するために凝集剤の添加量を多くする必要もなくなる。
【0015】
更に、スパイラルスクリュー104は、濾過筒103の濾過面103aとの間に微小隙間を形成して濾過筒103内を回転するため、濾過面103aの内面がスパイラルスクリュー104によって清掃され、濾過面103aに固形成分が付着しても、この固形成分はスパイラルスクリュー104によって掻き取られ、従って、濾過面103aに目詰まりが発生せず、該濾過面103aは、その本来の濾過機能を安定的に果たすことができる。
【0016】
図8に示す汚泥濃縮装置101’も図7に示した汚泥濃縮装置101と同様に構成されているが、濃縮汚泥排出管105が濾過筒103の下端部側方から導出し、その途中に濃縮汚泥ポンプ116が設けられている点が異なっている。従って、図8においては、図7に示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0017】
而して、図8に示す汚泥濃縮装置101’においても、図7に示した汚泥濃縮装置101と同様の前記効果が得られるが、この汚泥濃縮装置101’においては、凝集汚泥は、スパイラルスクリュー104の回転によって濾過筒103内を下方へと搬送される間に水分が分離されることによって濃縮汚泥となり、この濃縮汚泥は、濃縮汚泥ポンプ116によって濾過筒103の下部から濃縮汚泥排出管105を通って外部へと排出され、不図示の脱水機による脱水処理に供される。
【0018】
【特許文献1】特開2003−164899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところで、図7及び図8に示すスクリュープレス型の汚泥濃縮装置101,101’においては、濾過圧力は、配管の圧力損失を無視すれば、汚泥凝集槽112の液位h1
と分離液排出管106の排出部の高さh2 との差(ヘッド差)Δh12(=h1 −h2 )に基づく差圧によって決定されるが、このヘッド差Δh12には、凝集汚泥導入管115を凝集汚泥が流れることによる圧力損失ΔP1 と分離液排出管106を分離液が流れることによる圧力損失ΔP2 が含まれているため、実際の透過圧力は、ヘッド差Δh12から圧力損失ΔP1
,ΔP2 を差し引いた値(Δh12−(ΔP1 +ΔP2 ))となる。
【0020】
ここで、特に凝集汚泥導入管115を凝集汚泥が流れることによる圧力損失ΔP1 は、凝集汚泥の濃度、粘度、流量(流速)等によって変化するため、ヘッド差Δh12を所定値に設定して汚泥濃縮装置101,101’を運転している間に、凝集汚泥導入管115を流れる凝集汚泥の濃度や粘度が低下し、或は流量(流速)が減少した場合には、凝集汚泥導入管115での圧力損失ΔP1 が小さくなって濾過面103aでの実際の濾過圧力が大きくなってしまい、このために濾過面103aの目詰まりや固形成分のリークが発生するという不具合が生ずる。
【0021】
又、図7及び図8に示す汚泥濃縮装置101,101’においては、濾過面103aの目詰まりを防ぐために、エアコンプレッサ110から空気配管111を経て圧縮空気を濾過筒103と外筒102との間の分離液中に瞬間的に吹き込み、濾過面103aの孔に分離液を逆流させて孔の周りに付着した固形成分を除去する逆洗が行われている。この逆洗では、分離液の逆流の勢いが重要であり、勢いが弱いと十分な効果が得られず、又、濾過面103aの目詰まりが部分的にしか解消されない。
【0022】
そして、図7及び図8に示す汚泥濃縮装置101,101’においては、逆洗によって分離液が濾過筒103内に流入し、濾過筒103内の汚泥は凝集汚泥導入管115を逆流して汚泥凝集槽112に戻されるが、凝集汚泥導入管115での抵抗が大きいために汚泥が凝集汚泥導入管115をスムーズに逆流することができず、効率的な逆洗を行うことができないばかりか、逆洗後に濾過筒103内及び濾過筒103と外筒102との間に溜った空気をスムーズに抜くことができないという問題があった。
【0023】
更に、図7及び図8に示す汚泥濃縮装置101,101’においては、濾過筒103の上下面が密閉されているため、濾過筒103の内部状況を目視にて観察することができないという問題があった。又、濾過筒103内が汚泥中の夾雑物等で詰まった場合には、濾過筒103を外筒102内から取り出して夾雑物等を取り除く必要があるが、濾過筒103は密閉構造を有しているため、これを分解する必要があり、その作業が大変であるという問題もあった。
【0024】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、濾過圧力を常に適正に保って濾過面の目詰まりや固形成分のリークの発生を抑えるとともに、逆洗を効率的に行って濾過面の目詰まりを防ぎ、更には濾過筒の内部状況を外部から目視で容易に観察でき、濾過筒内に汚泥中の夾雑物等が詰まった場合にはその夾雑物等を容易に取り除くことができる汚泥濃縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、外筒内に設置された濾過筒の内部にスパイラルスクリューを回転可能に収容し、該スパイラルスクリューを回転駆動することによって、汚泥凝集槽から前記濾過筒内に導入される汚泥を搬送しながら、該汚泥に含まれる水分を前記濾過筒の濾過面を通過させて前記外筒内に収容し、該外筒内に収容された水分を外筒に接続された排出部から分離液として外部に排出して汚泥を濃縮する汚泥濃縮装置において、前記濾過筒を、長手方向を水平として設置された上部切欠きの半円筒状とし、その上方を大気に開放したことを特徴とする。
【0026】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記分離液の排出部の液位を前記濾過筒の液位よりも下方に位置せしめ、両液位の差を濾過圧力として、汚泥に含まれる水分を前記濾過筒の濾過面を通過させてこれを分離することを特徴とする。
【0027】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記濾過筒の濾過面を前記汚泥凝集槽の液位よりも下方に配置し、該濾過筒の少なくとも濾過面を前記外筒内の分離液中に埋没させたことを特徴とする。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記外筒を半円筒状とするとともに、該外筒と前記濾過筒の間の部分に収容された分離液中に圧縮空気を瞬間的に吹き込むことを特徴とする。
【0029】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記外筒と前記濾過筒の間の部分とコンプレッサとを配管で接続するとともに、該配管に少なくとも空気室と電磁弁を設け、前記外筒から導出する分離液排出管に自動閉止弁を設けたことを特徴とする。
【0030】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記前記スパイラルスクリューを、軸が無く中心部が空洞状のシャフトレススクリューで構成したことを特徴とする。
【0031】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、前記シャフトレススクリューの中心空洞部の外径をスクリュー外径の40%〜70%に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
請求項1及び2記載の発明によれば、濾過筒の上方を大気に開放したため、該濾過筒の液面には常に大気圧が作用することとなり、この場合の濾過圧力は、濾過筒の液位と分離液の排出部の液位との差に基づく差圧となり、この濾過圧力には、凝集汚泥導入管を凝集汚泥が流れることによる圧力損失は含まれないため、凝集汚泥の濃度や粘度、流量(流速)等が変化しても濾過圧力を常に一定に保つことができ、濾過圧力の上昇に伴う濾過面の目詰まりや固形成分のリークの発生を抑えることができる。
【0033】
又、濾過筒の上方が大気に開放されているため、逆洗によって濾過筒内の汚泥が汚泥導入管を凝集汚泥槽側へと逆流することがなく、逆洗が勢い良く効率的になされて濾過面の目詰まりが確実に防がれる。そして、逆洗に供された空気は、濾過筒の液面から大気中に容易に放出されて分離液中からスムーズに抜かれる。
【0034】
更に、濾過筒の上方が大気に開放されているため、濾過筒の内部状況を目視にて容易に観察することができ、濾過筒内が汚泥中の夾雑物等で詰まった場合には、濾過筒を分解することなく夾雑物等を容易に取り除くことができる。
【0035】
請求項3記載の発明によれば、濾過筒の濾過面を汚泥凝集槽の液位よりも下方に配置して該濾過筒の少なくとも濾過面を外筒内の分離液中に埋没させたため、濾過面は、その全面が凝集汚泥から水分を分離するために供され、その分離能率が高められて濾過筒、延ては汚泥濃縮装置全体の小型化が図られる。
【0036】
請求項4記載の発明によれば、外筒と濾過筒の間の部分に収容された分離液中に瞬間的に吹き込まれる圧縮空気によって分離液が濾過面を逆流し、孔の周りに付着した固形成分を除去するため、濾過面の目詰まりが確実に防がれる。
【0037】
請求項5記載の発明によれば、空気室に貯留された圧縮空気が電磁弁の開動作と同時に空気配管から外筒と濾過筒の間の分離液中に噴射され、これに伴う圧力上昇によって自動閉止弁が自動的に閉じて分離液排出管への分離液の流れを阻止するため、分離液が濾過面を勢い良く逆流して孔の周りに付着した固形成分を効果的に除去し、これによって濾過面の目詰まりが一層確実に防がれる。
【0038】
請求項6記載の発明によれば、スパイラルスクリューを、軸が無く中心部が空洞状のシャフトレススクリューで構成したため、汚泥の濃縮が進む出口付近において汚泥の濃度が高くなってスクリューの搬送力が強くなり、或はスクリューの回転速度を濾過面の清掃に必要な速度まで上げたために濾過筒内の圧力が高くなった場合には、濾過筒内の汚泥がシャフトレススクリューの中心空洞部を出口から入口側に向かって逆流するため、濾過筒内での圧力上昇が抑えられ、固定成分のリークの発生が抑えられて濃縮汚泥濃度と固形物回収率の向上が図られるとともに、スクリューを濾過面の清掃に必要な速度で回転させて濾過面の目詰まりを防ぐことができる。
【0039】
請求項7記載の発明によれば、シャフトレススクリューの中心空洞部の外径をスクリュー外径の40%〜70%に設定したため、中心空洞部の横断面積のスクリューの全横断面積に対する比率が16%〜49%となり、この中心空洞部を汚泥がスムーズに逆流して濾過筒内での圧力上昇が効果的に抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0041】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る汚泥濃縮装置の基本構成を示す概略図、図2は図1のA−A線拡大断面図である。
【0042】
本実施の形態に係る汚泥濃縮装置1は、密閉構造を有する半円筒状の外筒2を略水平に設置し、この外筒2の内部に、上面が大気に開放された上部切欠きの半円筒状の濾過筒3を長手方向を水平として配置し、該濾過筒3内にシャフトレススクリュー4を回転可能に収容して構成されている。
【0043】
ここで、上記濾過筒3の下半部の前記外筒2内に臨む半円筒状部分の周面は、パンチングプレートから成る濾過面3aを構成しており、外筒2の側部の濾過筒3に開口する部位に形成された接続部からは濃縮汚泥排出管5が導出しており、この濃縮汚泥配管5は、外筒への接続部から上方へ立ち上げられ、その高さはh3 に設定されている。
【0044】
又、前記外筒2の下端側部(外筒2と濾過筒3との間に開口する部位)に形成された接続部からは分離液排出管6が導出しており、この分離液排出管6は、外筒2への接続部から上方へ立ち上げられ、その途中には流量計7と流量調整弁8が設けられている。ここで、分離液排出管6の排出部の高さはh2 に設定されている。
【0045】
更に、前記外筒2の底部には、逆洗用の圧縮空気を供給するためのエアコンプレッサ10から導出する空気配管11が接続されている。
【0046】
ところで、前記シャフトレススクリュー4は、前記濾過筒3内に略水平に配されており、その両端部は、一対の軸受17を介して外筒2に回転可能に支承されている。そして、このシャフトレススクリュー4の一端には、駆動源としてのモータ9が連結されている。
【0047】
ここで、シャフトレススクリュー4の構成を図3及び図4に基づいて説明する。尚、図3はシャフトレススクリューの斜視図、図4は同シャフトレススクリューの横断面図である。
【0048】
図3及び図4に示すように、シャフトレススクリュー4は、図7及び図8に示した従来のスパイラルスクリュー104とは異なり、中心部に回転軸が無く、螺旋状のスクリュー羽根4bのみによって構成され、その中心部には横方向に長い円筒状の空洞部Sが形成されている。ここで、図4に示すシャフトレススクリュー4の中心空洞部Sの外径φD2は、スクリュー4(スクリュー羽根4b)の外径φD1の40%〜70%(=(0.4〜0.7)φD1)に設定されており、従って、中心空洞部Sの横断面積A2のスクリュー4の全横断面積A1に対する比率A2/A1は16%〜49%に設定されている。尚、シャフトレススクリュー4(スクリュー羽根4b)の外径は濾過筒3の濾過面3aの内径よりも僅かに小さく設定されており、シャフトレススクリュー4(スクリュー羽根4b)の外周縁と濾過筒3の濾過面3aとの間には微小隙間が形成されている。
【0049】
而して、図3に示すように、シャフトレススクリュー4の両端部にはパイプ状のスクリューシャフト4aが溶着されており、シャフトレススクリュー4は、その一端がスクリューシャフト4a及び不図示のユニバーサルジョイントを介して前記モータ9に連結されている。
【0050】
他方、図1において、12は上面が開口した円筒タンク状の汚泥凝集槽であり、その内部には汚泥が収容されている。そして、この汚泥には凝集剤が添加され、モータ13によって回転駆動される攪拌機14によって汚泥と凝集剤が撹拌されることによって、汚泥は、これに含まれる固形成分が凝集されて凝集汚泥となり、その液位はh1 に設定されている。
【0051】
又、汚泥凝集槽12の上部側方から略水平に延びる凝集汚泥導入管15は、前記濾過筒3の上部側方に接続されている。
【0052】
而して、前記濾過筒3の液位h3 は前記汚泥凝集槽12の液位h1 よりも低く(h3 <h1 )設定され、両液位h1 ,h3 の差(ヘッド差)Δh13(=h1 −h3 )に基づく差圧によって、汚泥凝集槽12内の凝集汚泥が凝集汚泥導入管15を通って濾過筒3内にその上部から導入される。
【0053】
前記シャフトレススクリュー4は、モータ9によって濾過筒3内で所定の速度で回転駆動されており、濾過筒3内に導入された凝縮汚泥は、回転するシャフトレススクリュー4によって濾過筒3内を一端から他端に向かって(図1の右方に向かって)略水平に搬送されるとともに、これに含まれる水分が濾過筒3の濾過面3aを通過して外筒2内に分離液として収容される。ここで、前記分離液排出管6の排出部の高さh2 は濾過筒3内の液位h3 よりも低く(h2 <h3 )設定されているため、両者h3 ,h2 の差(ヘッド差)Δh32(=h3 −h2 )に基づく差圧を濾過圧力として、凝集汚泥から分離された水分が濾過筒3の濾過面3aを通過して外筒2内に分離液として収容される。又、この場合、外筒2は、汚泥凝集槽12の液位h1 よりも下方に配置されているため、外筒2内に収容される分離液は外筒2内に充満し、この分離液中に濾過筒2の濾過面が埋没することとなる(図2)。
【0054】
そして、外筒2内に収容された分離液は、分離液排出管6を通って外部へと排出されるが、その流量は流量調整弁8によって調整されるとともに、流量計7によって計測される。又、シャフトレススクリュー4の回転によって濾過筒3内を搬送される凝集汚泥は、その途中で水分が分離されることによって濃縮されて濃縮汚泥となり、この濃縮汚泥は、濾過筒3の端部から濃縮汚泥排出管5を通って外部へと排出され、不図示の脱水機による脱水処理に供される。
【0055】
ところで、汚泥濃縮装置1の運転中において、タイマー等によって所定時間毎(例えば5分に1回)にエアコンプレッサ10から空気配管11を経て圧縮空気を外筒2と濾過筒3の間の分離液中に瞬間的に吹き込む逆洗が行われる。すると、吹き込まれた圧縮空気によって分離液が濾過面3aを逆流し、分離液が濾過面3aの孔の周りに付着した固形成分を除去するため、濾過面3aの目詰まりが確実に防がれる。
【0056】
而して、以上説明した汚泥濃縮装置1においては、濾過筒3の上方を大気に開放したため、該濾過筒3の液面には常に大気圧が作用することとなり、この場合の濾過圧力は、濾過筒3の液位h3 と分離液排出管6の排出部の液位h2 との差に基づく差圧Δh32(=h3 −h2 )となり、この濾過圧力には、凝集汚泥導入管15を凝集汚泥が流れることによる圧力損失は含まれないため、凝集汚泥の濃度や粘度、流量(流速)等が変化しても濾過圧力を常に一定に保つことができ、濾過圧力の上昇に伴う濾過面3aの目詰まりや固形成分のリークの発生を抑えることができる。
【0057】
又、濾過筒3の上方が大気に開放されているため、逆洗によって濾過筒3内の汚泥が凝集汚泥導入管15を凝集汚泥槽12側へと逆流することがなく、逆洗が勢い良く効率的になされて濾過面3aの目詰まりが確実に防がれる。そして、逆洗に供された空気は、濾過筒3の液面から大気中に容易に放出されて分離液中からスムーズに抜かれる。
【0058】
更に、濾過筒3の上方が大気に開放されているため、濾過筒3の内部状況を目視にて容易に観察することができ、濾過筒3内が汚泥中の夾雑物等で詰まった場合には、該濾過筒3を分解することなく夾雑物等を容易に取り除くことができる。
【0059】
又、本実施の形態に係る汚泥濃縮装置1においては、汚泥の搬送手段として、軸が無く中心部が空洞状のシャフトレススクリュー4を使用したため、汚泥の濃縮が進む出口付近において汚泥の濃度が高くなってスクリュー4の搬送力が強くなり、或はスクリュー4の回転速度を濾過面3aの清掃に必要な速度まで上げたために濾過筒3内の圧力が高くなった場合には、濾過筒3内の汚泥がシャフトレススクリュー4の中心空洞部Sを出口から入口側に向かって逆流するため、濾過筒3内での圧力上昇が抑えられ、固形成分のリークの発生が抑えられて濃縮汚泥濃度と固形物回収率の向上が図られるとともに、シャフトレススクリュー4を濾過面3aの清掃に必要な速度で回転させて濾過面3aの目詰まりを防ぐことができる。
【0060】
その他、本実施の形態に係る汚泥濃縮装置1においては、前述のように濾過筒3の濾過面3aが外筒2内の分離液中に埋没しているため、該濾過面3aは、その全面が凝集汚泥から水分を分離するために供されることとなり、その分離能率が高められて濾過筒3、延ては汚泥濃縮装置1全体の小型化が図られる。
【0061】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図5及び図6に基づいて説明する。
【0062】
図5は本発明の実施の形態2に係る汚泥濃縮装置の基本構成を示す概略図、図6(a),(b)は自動閉止弁の形態とその作用を示す断面図である。
【0063】
図5に示す本実施の形態に係る汚泥濃縮装置1’も図1に示した汚泥濃縮装置1と同様に構成されているが、濃縮汚泥排出管5が濾過筒3の下端部側方から導出し、その途中に濃縮汚泥ポンプ16が設けられている点と、逆洗の構成が異なっている。従って、図5においては、図1に示したものと同一要素には同一符付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0064】
而して、本実施の形態に係る汚泥濃縮装置1’においても、図1に示した汚泥濃縮装置1と同様の前記効果が得られるが、こ泥濃縮装置1’においては、凝集汚泥は、シャフトレススクリュー4の回転によって濾過筒3内を出口側へと搬送される間に水分が分離されることによって濃縮汚泥となり、この濃縮汚泥は、濃縮汚泥ポンプ16によって濾過筒3の下部から濃縮汚泥排出管5を通って外部へと排出され、不図示の脱水機による脱水処理に供される。
【0065】
次に、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明するが、本発明は以下に挙げる実施例に限定される趣旨のものではない。
【実施例1】
【0066】
図5に示す本発明に係る汚泥濃縮装置1’と図8に示す従来の汚泥濃縮装置101’を並設し、下水混合生汚泥を濃縮する運転を下記条件にて行った。
【0067】
<運転条件>
原汚泥濃度:平均1.5%
濃縮汚泥濃度:平均4.0%
高分子凝集剤添加率:0.6%/TS
<運転結果>
本実施例及び比較例について表1に示す運転結果が得られた。
【0068】
【表1】

本実施例では、汚泥の濃度が変動しても濾過圧力となるヘッド差Δh32の変化が小さいため、濾過面3aの目詰まりが発生することがなく、濾過筒3の濾過面3aの清掃と更新が促進されたために処理量を増やすことができた。又、濾過筒3の出口付近の圧力上昇が抑えられたため、高い固形物回収率を確保しながら濃縮汚泥濃度を高めることができた。
【0069】
更に、濾過筒3内に詰まった夾雑物を運転時間30時間毎に1回程度取り除いたが、清掃に要する時間は比較例の120分に対して10分と大幅に短縮することができた。
【0070】
ここで、逆洗の構成について説明する。
【0071】
図5に示すように、汚泥濃縮装置1’の近くに空気室18が設けられ、この空気室18とエアコンブレッサ10とが空気配管19で接続され、該空気配管19の途中に減圧弁20が設けられている。又、空気室18と外筒2の底部とは、短くて抵抗の小さな空気配管21によって接続されており、この空気配管21の途中には電磁弁22が設けられている。
【0072】
更に、分離液排出管6の途中には、自動閉止弁23が設けられている。この自動閉止弁23としては、例えば図6(a)に示すボールタイプのもの、或は同図(b)に示すスイングタイプのものが使用される。
【0073】
図6(a)に示すボールタイプの自動閉止弁23は、分離液排出管6の途中に設けられたボックス24内にボール25を収容して構成され、逆洗を行わない通常運転時には開状態にあり、分離液は、ボール25を支持する支持部材24bの間を通って分離液排出管6を図示矢印方向に流れる。
【0074】
又、図6(b)に示すスイングタイプの自動閉止弁23は、分離液排出管6の途中に形成された隔室26内に、一端を中心として揺動可能な板状の弁体27を収容して構成され、逆洗を行わない通常運転時には開状態にあって弁体27は図示実線位置にあり、分離液は、弁体27を通過して分離液排出管6を図示矢印方向に流れる。
【0075】
而して、エアコンプレッサ10から空気配管へと吐出される圧縮空気は、減圧弁20によって所定圧に減圧されて空気室18に貯留されており、汚泥濃縮装置1’の運転中にタイマー等によって所定時間毎(例えば5分に1回)に電磁弁22が開けられると、空気室18に貯留されている圧縮空気が空気配管21を通って外筒2と濾過筒3の間の分離液中に瞬間的に吹き込まれる。
【0076】
すると、吹き込まれた圧縮空気によって分離液が濾過面3aを逆流し、分離液が濾過面3aの孔の周りに付着した固形成分を除去するが、分離液排出管6を流れる分離液の圧力が高められるため、自動閉止弁23が分離液の圧力によって自動的に閉じ、分離液排出管6を閉止して分離液の排出を阻止する。即ち、図6(a)に示すボールタイプの自動閉止弁23においては、ボール25が分離液の圧力によって押し上げられて鎖線にて示すように弁座24aに押圧されて分離液排出管6の流路を閉止する。又、図6(b)に示すスイングタイプの自動閉止弁23においては、弁体27が分離液の圧力によって鎖線位置までスイングして分離液排出管6の流路を閉止する。
【0077】
以上のように、逆洗時には、汚泥濃縮装置1’の近くに設けられた空気室18に貯留されていた圧縮空気が、短くて抵抗の小さな空気配管21を通って外筒2内に勢い良く噴射されるとともに、自動閉止弁23が分離液の圧力によって自動的に閉じて分離液排出管6を閉止するため、分離液の逆流の勢いが高められ、濾過面3aの孔の周りに付着した固形成分が効果的に除去されて濾過面3aの目詰まりが一層確実に防がれる。
【0078】
次に、本実施例における逆洗の効果を比較例と対比して具体的に説明する。
【実施例2】
【0079】
図5に示す本発明に係る汚泥濃縮装置1’と図8に示す従来の汚泥濃縮装置101’を並設し、下水をオキシデーションで処理した余剰汚泥を濃縮する運転を下記条件にて行った。
【0080】
<運転条件>
原汚泥濃度:平均1.5%
高分子凝集剤添加率:0.7%/TS
処理量:20m3 /h
濃縮汚泥濃度:4.0%
逆洗:5分に1回/0.1秒間
<運転結果>
本実施例及び比較例について表2に示す運転結果が得られた。
【0081】
【表2】

尚、表2中の開口率は、濾過筒の濾過面の孔を観察し、開口している割合を%にて示したものである。
【0082】
表2に示す結果から明らかなように、本実施例では、濾過面の目詰まりの問題が効率良く解消され、安定した運転が可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、スクリュープレス型の汚泥濃縮装置に対して適用可能であって、その処理対象である汚泥の種類を問わない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態1に係る汚泥濃縮装置の基本構成を示す概略図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】本発明に係る汚泥濃縮装置のシャフトレススクリューの斜視図である。
【図4】本発明に係る汚泥濃縮装置のシャフトレススクリューの横断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る汚泥濃縮装置の基本構成を示す概略図である。
【図6】(a),(b)は本発明の実施の形態2に係る汚泥濃縮装置に用いられる自動閉止弁の形態とその作用を示す断面図である。
【図7】従来例1に係る汚泥濃縮装置の基本構成を示す概略図である。
【図8】従来例2に係る汚泥濃縮装置の基本構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0085】
1,1’ 汚泥濃縮装置
2 外筒
3 濾過筒
3a 濾過面
4 シャフトレススクリュー
5 濃縮汚泥排出管
6 分離液排出管
7 流量計
8 流量調整弁
9 モータ
10 エアコンプレッサ
11 空気配管
12 汚泥凝集槽
13 モータ
14 撹拌機
15 凝集汚泥導入管
16 汚泥濃縮ポンプ
17 軸受
18 空気室
19 空気配管
20 減圧弁
21 空気配管
22 電磁弁
23 自動閉止弁
24 ボックス
25 ボール
26 隔室
27 弁体
1 汚泥凝集槽の液位
2 分離液排出管の液位
3 濾過筒の液位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒内に設置された濾過筒の内部にスパイラルスクリューを回転可能に収容し、該スパイラルスクリューを回転駆動することによって、汚泥凝集槽から前記濾過筒内に導入される汚泥を搬送しながら、該汚泥に含まれる水分を前記濾過筒の濾過面を通過させて前記外筒内に収容し、該外筒内に収容された水分を外筒に接続された排出部から分離液として外部に排出して汚泥を濃縮する汚泥濃縮装置において、
前記濾過筒を、長手方向を水平として設置された上部切欠の半円筒状とし、その上方を大気に開放したことを特徴とする汚泥濃縮装置。
【請求項2】
前記分離液の排出部の液位を前記濾過筒の液位よりも下方に位置せしめ、両液位の差を濾過圧力として、汚泥に含まれる水分を前記濾過筒の濾過面を通過させてこれを分離することを特徴とする請求項1記載の汚泥濃縮装置。
【請求項3】
前記濾過筒の濾過面を前記汚泥凝集槽の液位よりも下方に配置し、該濾過筒の少なくとも濾過面を前記外筒内の分離液中に埋没させたことを特徴とする請求項1又は2記載の汚泥濃縮装置。
【請求項4】
前記外筒を半円筒状とするとともに、該外筒と前記濾過筒の間の部分に収容された分離液中に圧縮空気を瞬間的に吹き込むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の汚泥濃縮装置。
【請求項5】
前記外筒と前記濾過筒の間の部分とコンプレッサとを配管で接続するとともに、該配管に少なくとも空気室と電磁弁を設け、前記外筒から導出する分離液排出管に自動閉止弁を設けたことを特徴とする請求項4記載の汚泥濃縮装置。
【請求項6】
前記前記スパイラルスクリューを、軸が無く中心部が空洞状のシャフトレススクリューで構成したことを特徴とする請求項1記載の汚泥の濃縮装置。
【請求項7】
前記シャフトレススクリューの中心空洞部の外径をスクリュー外径の40%〜70%に設定したことを特徴とする請求項6記載の汚泥濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−75672(P2006−75672A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259663(P2004−259663)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】